(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20221108BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221108BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 N
E02F9/22 Q
(21)【出願番号】P 2018162052
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133225(WO,A1)
【文献】特開2016-098535(JP,A)
【文献】特開平07-197489(JP,A)
【文献】特開平08-105077(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記バケットの底面と前記設計面とのなす角が所定値以上であり、前記操作信号が前記作業装置を前記設計面に近づけることを指示する操作信号のとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定
し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくすることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記バケットの底面における後端が前記バケットの底面における先端よりも前記設計面に近いとき、かつ、前記操作信号が前記作業装置を前記設計面に近づけることを指示する操作信号のとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定
し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくすることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記バケットの底面と前記設計面とのなす角が所定値以上であり、前記操作信号がブーム下げ、アームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号のとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定
し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくすることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1の作業機械において、
前記コントローラは、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、かつ、前記設計面の上方に設定した第1境界と、前記設計面上または前記設計面の下方に設定した第2境界とで囲まれた第1領域に前記作業装置の先端が位置するとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記操作装置によって前記設計面に前記作業装置を近づけることが指示される場合の前記設計面に対する前記バケットの姿勢に基づいて、前記作業装置による作業局面が転圧作業であるか否かを判定し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくし、
前記制限速度の速度方向に関して、前記作業装置が前記設計面の下方に侵入する方向を正とするとき、
前記コントローラは、前記操作信号がアームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号のときに前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定された場合、前記設計面の下方に設定した第2境界の上方かつ前記設計面の下方に設定した第3境界と前記設計面とで囲まれた第2領域に前記作業装置が位置するとき、前記制限速度の方向を正に設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1の作業機械において、
前記複数の油圧アクチュエータには前記ブームを駆動するブームシリンダが含まれており、
前記コントローラは、前記作業装置によるによって作業局面が転圧作業であると判定された場合、前記ブームシリンダのロッド側の圧力に基づいて前記制限速度の大きさを変更する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記操作装置によって前記設計面に前記作業装置を近づけることが指示される場合の前記設計面に対する前記バケットの姿勢に基づいて、前記作業装置による作業局面が転圧作業であるか否かを判定し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくし、
前記複数の油圧アクチュエータには前記ブームを駆動するブームシリンダが含まれており、
前記コントローラは、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定された場合、前記ブームシリンダのロッド側の圧力の増加に応じて前記制限速度の大きさを低減する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記操作装置によって前記設計面に前記作業装置を近づけることが指示される場合の前記設計面に対する前記バケットの姿勢に基づいて、前記作業装置による作業局面が転圧作業であるか否かを判定し、
前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくし、
前記複数の油圧アクチュエータには前記ブームを駆動するブームシリンダが含まれており、
前記制限速度の速度方向に関して、前記作業装置が前記設計面の下方に侵入する方向を正とするとき、
前記コントローラは、前記操作信号がアームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号のときに前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定された場合、前記設計面の下方に設定した第2境界の上方かつ前記設計面の下方に設定した第3境界と前記設計面とで囲まれた第2領域に前記作業装置の先端が位置するとき、前記制限速度の方向を正に設定するとともに、前記ブームシリンダのロッド側の圧力に基づいて前記制限速度の大きさを変更する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1の作業機械において、
前記バケットの底面と前記設計面とのなす角は、前記バケットの底面が基準面となす角から前記設計面が前記基準面となす角を減じた値であり、前記基準面から反時計回りの角度を正とすることを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項1の作業機械において、
前記コントローラによって前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記
コントローラによって作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくする処理の有効と無効とを切り換え可能なスイッチをさらに備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一形態である油圧ショベルにおいて、多関節型のフロント作業装置(単に作業装置と称することがある)の制御点(例えばバケット爪先)が設計面へ侵入することを防止するように作業装置の制御を行う領域制限機能が知られている。
【0003】
このような領域制限機能では、作業装置の制御点と設計面との距離が小さくなるほど作業装置が設計面に向かう速度を小さくし、作業装置の制御点と設計面との距離が0であるときに作業装置が設計面に向かう速度を0にすることで、作業装置の制御点を設計面上に保持することが可能である。
【0004】
しかしながら、実際の作業においては設計面に沿って制御点(バケット爪先)を移動させて平坦な面を形成する仕上げ作業だけでなく、ブーム下げ動作によってバケットの背面を地面に押し付けて土砂を締め固める土羽打ちなどの転圧作業が必要となることがある。そのため、転圧作業が必要な場面で上記のような領域制限機能により設計面方向の速度が設計面付近で小さくされると、バケットの背面で地面を押し付ける力が弱くなりオペレータの意図する作業ができない又は操作に違和感が生じるという問題が発生する。
【0005】
例えば特許文献1は、実際のブーム操作信号(A1)に対するローパスフィルタ処理されたブーム操作信号(a1)の比(a1/A1)が1未満の定数(r1)より小さい場合に作業局面が転圧作業であると判定している。そして、転圧作業と判定された時は、転圧作業以外のときに比べて作業装置の制限速度を大きくする、または制限を解除することで良好な転圧作業が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/133225号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ではブーム操作信号のみによって作業局面が転圧作業か否かを判定いる。そのため、ブーム操作信号が上記条件を満たせば、例えばバケット背面と設計面のなす角が直角でバケット爪先が設計面に対して垂直に立っている場合であっても転圧作業と判定され作業装置の速度制限(すなわち領域制限機能)が緩和又は解除される可能性がある。この状態において作業装置の速度制限が緩和又は解除されるとバケット爪先が設計面の下方に侵入しオペレータの作業意図に反して実際の施工面が傷つく可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、作業局面を精度良く判定するとともに、転圧作業を良好に行うことが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、オペレータの操作に応じた操作信号を出力して前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、前記操作装置の操作時に前記作業装置が所定の設計面上またはその上方に位置するように前記作業装置が前記設計面に近づく速度を所定の制限速度以下に制限するコントローラとを備える作業機械において、前記コントローラは、前記バケットの底面と前記設計面とのなす角が所定値以上であり、前記操作信号が前記作業装置を前記設計面に近づけることを指示する操作信号のとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定し、前記作業装置による作業局面が転圧作業であると判定されたとき、前記作業装置による作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも前記制限速度を大きくするものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業局面を精度良く判定するとともに、転圧作業を良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベル1の側面図。
【
図2】ブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、車体前後傾斜角θ4等の説明図。
【
図3】油圧ショベル1の車体制御システム23の構成図。
【
図4】コントローラ25のハードウェア構成の概略図。
【
図6】第1実施形態に係るコントローラ25の機能ブロック図。
【
図8】角度αと転圧作業判定フラグとの関係を示すテーブル。
【
図9】本発明の第1実施形態におけるバケット先端P4と設計面60の距離Dと速度補正係数k1,k2との関係を表すグラフ。
【
図10】バケット先端P4における距離Dに応じた補正前後の速度ベクトルを表す模式図。
【
図11】通常作業時と転圧作業時のバケット先端P4における距離Dに応じた補正後の速度ベクトルを表す模式図。
【
図12】第1実施形態のコントローラ25による制御フローを表すフローチャート。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る作業機械のコントローラ25の機能ブロック図。
【
図14】本発明の第2実施形態におけるバケット先端P4と設計面60の距離Dと速度補正係数k1,k2,k3との関係を表すグラフ。
【
図15】ブームロッド圧が高圧のときの転圧作業時のバケット先端P4における補正後の速度ベクトルを表す模式図。
【
図16】第2実施形態のコントローラ25による制御フローを表すフローチャート。
【
図17】第3実施形態に係るコントローラ25の機能ブロック図。
【
図18】バケット先端又はバケット後端から設計面までの距離の説明図。
【
図19】第3実施形態のコントローラ25による制御フローを表すフローチャート。
【
図20】第1実施形態の変形例におけるコントローラ25による制御フローを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械について図に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベル1の側面図である。油圧ショベル1は、左右側部のそれぞれに設けられる履帯を油圧モータ(図示せず)により駆動させて走行する走行体(下部走行体)2と、走行体2上に旋回可能に設けられる旋回体(上部旋回体)3とを備えている。
【0013】
旋回体3は、運転室4、機械室5、カウンタウェイト6を有する。運転室4は、旋回体3の前部における左側部に設けられている。機械室5は、運転室4の後方に設けられている。カウンタウェイトは、機械室5の後方、すなわち旋回体3の後端に設けられている。
【0014】
また、旋回体3は、多関節型の作業装置7を装備している。作業装置7は、旋回体3の前部における運転室4の右側、すなわち旋回体3の前部における略中央部に設けられている。作業装置7は、ブーム8と、アーム9と、バケット(作業具)10と、ブームシリンダ11と、アームシリンダ12と、バケットシリンダ13とを有する。ブーム8の基端部は、ブームピンP1(
図2参照)を介して、旋回体3の前部に回動可能に取り付けられている。アーム9の基端部は、アームピンP2(
図2参照)を介して、ブーム8の先端部に回動可能に取り付けられている。バケット10の基端部は、バケットピンP3(
図2参照)を介して、アーム9の先端部に回動可能に取り付けられている。ブームシリンダ11と、アームシリンダ12と、バケットシリンダ13とはそれぞれ作動油によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ11は伸縮してブーム8を駆動し、アームシリンダ12は伸縮したアーム9を駆動し、バケットシリンダ13は伸縮してバケット10を駆動する。なお、以下では、ブーム8、アーム9及びバケット(作業具)10をそれぞれフロント部材と称することがある。
【0015】
機械室5の内部には可変容量型の第1油圧ポンプ14及び第2油圧ポンプ15(
図3参照)と、第1油圧ポンプ14及び第2油圧ポンプ15を駆動するエンジン(原動機)16(
図3参照)とが設置されている。
【0016】
運転室4の内部には車体傾斜センサ17、ブーム8にはブーム傾斜センサ18、アーム9にはアーム傾斜センサ19、バケット10にはバケット傾斜センサ20が取り付けられている。例えば、車体傾斜センサ17、ブーム傾斜センサ18、アーム傾斜センサ19、バケット傾斜センサ20はIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)である。車体傾斜センサ17は水平面に対する旋回体(車体)3の角度(対地角度)を、ブーム傾斜センサ18はブーム8の対地角度を、アーム傾斜センサ19はアーム9の対地角度を、バケット傾斜センサ20はバケット10の対地角度を計測する。
【0017】
旋回体3の後部の左右に第1GNSSアンテナ21(GNSS:Global Navigation Satellite System)と第2GNSSアンテナ22が取り付けられている。第1GNSSアンテナ21と第2GNSSアンテナ22がそれぞれ複数の航法衛星(好ましくは4基以上の航法衛星)から受信した航法信号からグローバル座標系における所定の2点(例えば、アンテナ21,22の基端部の位置)の位置情報が算出できる。そして、算出した2点のグローバル座標系における位置情報(座標値)により、油圧ショベル1に設定したローカル座標系(車体基準座標系)の原点P0(
図2参照)のグローバル座標系における座標値と、ローカル座標系を構成する3軸のグローバル座標系における姿勢(すなわち
図2の例では走行体2及び旋回体3の姿勢・方位)を計算することが可能である。このような航法信号に基づく各種位置の演算処理は後述するコントローラ25で行うことができる。
【0018】
図2は油圧ショベル1の側面図である。
図2に示すように、ブーム8の長さ、つまり、ブームピンP1からアームピンP2までの長さをL1とする。また、アーム9の長さ、つまり、アームピンP2からバケットピンP3までの長さをL2とする。また、バケット10の長さ、つまり、バケットピンP3からバケット先端(バケット10の爪先)P4までの長さをL3とする。また、グローバル座標系に対する旋回体3の傾斜、つまり、水平面鉛直方向(水平面に垂直な方向)と車体鉛直方向(旋回体3の旋回中心軸方向)のなす角度をθ4とする。以下、車体前後傾斜角θ4という。ブームピンP1とアームピンP2を結んだ線分と車体鉛直方向のなす角度をθ1とし、以下、ブーム角度θ1という。アームピンP2とバケットピンP3を結んだ線分と、ブームピンP1とアームピンP2からなる直線とのなす角度をθ2とし、以下、アーム角度θ2という。バケットピンP3とバケット先端P4を結んだ線分と、アームピンP2とバケットピンP3からなる直線とのなす角度をθ3とし、以下、バケット角度θ3という。
【0019】
図3は油圧ショベル1の車体制御システム23の構成である。車体制御システム23は、作業装置7を操作するための操作装置24と、第1,第2油圧ポンプ14,15を駆動するエンジン16と、第1,第2油圧ポンプ14,15からブームシリンダ11、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13に供給する作動油の流量と方向を制御する流量制御弁装置26と、流量制御弁装置26を制御する制御装置であるコントローラ25とを備えている。
【0020】
操作装置24は、ブーム8(ブームシリンダ11)を操作するためのブーム操作レバー24aと、アーム9(アームシリンダ12)を操作するためのアーム操作レバー24bと、バケット10(バケットシリンダ13)を操作するためのバケット操作レバー24cとを有する。例えば、各操作レバー24a,24b,24cは電気レバーであり、各レバーの傾倒量(操作量)に応じた電圧値をコントローラ25に出力する。ブーム操作レバー24aはブームシリンダ11の目標動作量をブーム操作レバー24aの操作量に応じた電圧値として出力する(以下、ブーム操作量とする)。アーム操作レバー24bはアームシリンダ12の目標動作量をアーム操作レバー24bの操作量に応じた電圧値として出力する(以下、アーム操作量とする)。バケット操作レバー24cはバケットシリンダ13の目標動作量をバケット操作レバー24cに応じた電圧値として出力する(以下、バケット操作量とする)。また、各操作レバー24a,24b,24cを油圧パイロットレバーとし、各レバー24a,24b,24cの傾倒量に応じて生成されるパイロット圧力を圧力センサ(図示せず)で電圧値に変換してコントローラ25に出力することで各操作量を検出してもよい。
【0021】
コントローラ25は、操作装置24から出力された操作量と、作業装置7に予め設定した所定の制御点であるバケット先端P4の位置情報(制御点位置情報)と、コントローラ25内に予め記憶された設計面60(
図2参照)の位置情報(設計面情報)とに基づいて制御指令を演算し、その制御指令を流量制御弁装置26に出力する。本実施形態のコントローラ25は、操作装置24の操作時に、作業装置7の動作範囲が設計面60上及びその上方に制限されるようにアームシリンダ12及びブームシリンダ11の目標速度をバケット先端P4(制御点)と設計面60の距離(設計面距離)D(
図2参照)に応じて演算する。なお、本実施形態では作業装置7の制御点としてバケット先端P4(バケット10の爪先)を設定したが、作業装置7上の任意の点を制御点に設定でき、例えば作業装置7においてアーム9より先の部分で設計面60に最も近い点を制御点に設定しても良い。
【0022】
ブームシリンダ11には、ブームシリンダ11のロッド圧力を取得するブームロッド圧センサ61と、同じくボトム圧を取得する取得するブームボトム圧センサ62が取り付けられている。アームシリンダ12には、アームシリンダ12のロッド圧力を取得するアームロッド圧センサ63と、同じくボトム圧を取得する取得するアームボトム圧センサ64が取り付けられている。バケットシリンダ13には、バケットシリンダ13のロッド圧力を取得するバケットロッド圧センサ65と、同じくボトム圧を取得する取得するバケットボトム圧センサ66が取り付けられている。これら圧力センサ61-66の検出信号はコントローラ25に出力されている。
【0023】
図4はコントローラ25のハードウェア構成の概略図である。
図4においてコントローラ25は,入力インターフェース91と,プロセッサである中央処理装置(CPU)92と,記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と,出力インターフェース95とを有している。入力インターフェース91には,作業装置7の姿勢を検出する作業装置姿勢検出装置50である傾斜センサ17,18,19,20からの信号と,各操作レバー24a,24b,24cの操作量を示す操作装置24からの電圧値(信号)と、作業装置7による掘削作業や盛土作業の基準となる設計面60を設定するための装置である設計面設定装置51からの信号と、各油圧シリンダ11,12,13のロッド圧及びボトム圧を検出する圧力センサ61-66からの信号が入力され,CPU92が演算可能なように変換する。ROM93は,後述するフローチャートに係る処理を含めコントローラ25が各種制御処理を実行するための制御プログラムと,当該各種制御処理の実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体である。CPU92は,ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力インターフェース91及びROM93,RAM94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インターフェース95は,CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成して出力する。出力インターフェース95の出力用の信号としては電磁弁32,33,34,35(
図5参照)の制御指令があり、電磁弁32,33,34,35はその制御指令に基づいて動作して油圧シリンダ11,12,13を制御する。なお,
図4のコントローラ25は,記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが,記憶装置であれば特に代替可能であり,例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
【0024】
流量制御弁装置26は、電磁駆動可能な複数のスプールを備えており、コントローラ25により出力された制御指令に基づいて各スプールの開口面積(絞り開度)を変化させることで、油圧シリンダ11,12,13を含む油圧ショベル1に搭載された複数の油圧アクチュエータを駆動する。
【0025】
図5は油圧ショベル1の油圧回路27の概略図である。油圧回路27は、第1油圧ポンプ14と、第2油圧ポンプ15と、流量制御弁装置26と、作動油タンク36a、36bを備えている。
【0026】
流量制御弁装置26は、第1油圧ポンプ14からアームシリンダ12に供給する作動油の流量を制御する第1流量制御弁である第1アームスプール28と、第2油圧ポンプ15からアームシリンダ12に供給する作動油の流量を制御する第3流量制御弁である第2アームスプール29と、第1油圧ポンプ14からバケットシリンダ13に供給する作動油の流量を制御するバケットスプール30と、第2油圧ポンプ15からブームシリンダ11に供給する作動油の流量を制御する第2流量制御弁であるブームスプール(第1ブームスプール)31と、第1アームスプール28を駆動する第1アームスプール駆動電磁弁32a、32bと、第2アームスプール29を駆動する第2アームスプール駆動電磁弁33a、33bと、バケットスプール30を駆動するバケットスプール駆動電磁弁34a、34bと、ブームスプール31を駆動するブームスプール駆動電磁弁(第1ブームスプール駆動電磁弁)35a、35bとを備えている。
【0027】
第1アームスプール28とバケットスプール30は第1油圧ポンプ14に並列接続されており、第2アームスプール29とブームスプール31は第2油圧ポンプ15に並列接続されている。
【0028】
流量制御弁装置26はいわゆるオープンセンタ式(センタバイパス式)である。各スプール28,29,30,31は、中立位置から所定のスプール位置に達するまで油圧ポンプ14,15から吐出された作動油を作動油タンク36a,36bへ導く流路であるセンタバイパス部28a,29a,30a,31aを有している。本実施形態では、第1油圧ポンプ14と、第1アームスプール28のセンタバイパス部28aと、バケットスプール30のセンタバイパス部30aと、タンク36aは、この順序で直列接続されており、センタバイパス部28aとセンタバイパス部30aは第1油圧ポンプ14から吐出される作動油をタンク36aに導くセンタバイパス流路を構成している。また、第2油圧ポンプ15と、第2アームスプール29のセンタバイパス部29aと、ブームスプール31のセンタバイパス部31aと、タンク36bは、この順序で直列接続されており、センタバイパス部29aとセンタバイパス部31aは第2油圧ポンプ15から吐出される作動油をタンク36bに導くセンタバイパス流路を構成している。
【0029】
各電磁弁32,33,34,35には、エンジン16によって駆動されるパイロットポンプ(図示せず)が吐出した圧油が導かれている。操作装置24の操作と連動してコントローラ25から制御信号が出力されると、各電磁弁32,33,34,35は、その制御指令に基づいて適宜動作してパイロットポンプからの圧油を各スプール28,29,30,31の駆動部に作用させ、これにより各スプール28,29,30,31が駆動されて油圧シリンダ11,12,13が動作する。
【0030】
例えば、オペレータによりアーム操作レバー24aがアームクラウド方向に操作される等して、コントローラ25からアームシリンダ12の伸長方向に指令が出た場合は、第1アームスプール駆動電磁弁32aと、第2アームスプール駆動電磁弁33aとに指令が出力されてアーム9がクラウド動作する。反対にアームシリンダ12の短縮方向(アームダンプ方向)に指令が出た場合は、第1アームスプール駆動電磁弁32bと、第2アームスプール駆動電磁弁33bとに指令が出力されてアーム9がダンプ動作する。同様にバケット操作レバー24cがバケットクラウド方向に操作される等してバケットシリンダ13の伸長方向に指令が出た場合は、バケットスプール駆動電磁弁34aに指令が出力されてバケット10がクラウド動作し、反対にバケットシリンダ13の短縮方向(バケットダンプ方向)に指令が出た場合は、バケットスプール駆動電磁弁34bに指令が出力されてバケット10がダンプ動作する。また同様にブーム操作レバー24aがブーム上げ方向に操作される等してブームシリンダ11の伸長方向に指令が出力された場合は、ブームスプール駆動電磁弁35aに指令が出力されてブーム8が上げ動作し、反対にブームシリンダ11の短縮方向(ブーム下げ方向)に指令が出力された場合は、ブームスプール駆動電磁弁35bに指令が出力されてブーム8が下げ動作する。
【0031】
図6に本実施形態に係るコントローラ25が実行する処理を機能的側面から複数のブロックに分類してまとめた機能ブロック図を示す。この図に示すようにコントローラ25になされる処理は、制御点位置演算部53と、設計面記憶部54と、距離演算部37と、角度演算部71と、作業局面判定部72と、制限速度決定部38と、流量制御弁制御部40とに区分できる。
【0032】
制御点位置演算部53は,グローバル座標系における本実施形態の制御点であるバケット先端P4の位置と、グローバル座標系における作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢を演算する。演算は公知の方法に基づけば良いが、例えば、まず、第1,第2GNSSアンテナ21,22で受信された航法信号から、ローカル座標系(車体基準座標系)の原点P0(
図2参照)のグローバル座標系における座標値と、グローバル座標系における走行体2と旋回体3の姿勢情報・方位情報を計算する。そして、この演算結果と、作業装置姿勢検出装置50からの傾斜角θ1,θ2,θ3,θ4の情報と、ローカル座標系におけるブームフートピンP1の座標値と、ブーム長さL1及びアーム長さL2及びバケット長さL3を利用して、グローバル座標系における本実施形態の制御点であるバケット先端P4の位置と、グローバル座標系における作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢を演算する。なお、作業装置7の制御点の座標値は、レーザー測量計などの外部計測機器により計測し、その外部計測機器との通信により取得されてもよい。
【0033】
設計面記憶部54は,運転室4内にある設計面設定装置51からの情報に基づき演算された設計面60のグローバル座標系における位置情報(設計面データ)を記憶している。本実施形態では,
図2に示すように,作業装置7の各フロント部材8,9,10が動作する平面(作業装置7の動作平面)で設計面の3次元データを切断した断面形状を設計面60(2次元の設計面)として利用する。なお,
図2の例では設計面60は1つだが,設計面が複数存在する場合もある。設計面が複数存在する場合には,例えば,作業装置7の制御点から距離の最も近いものを設計面と設定する方法や,バケット先端P4の鉛直下方に位置するものを設計面とする方法や,任意に選択したものを設計面とする方法等がある。また、設計面60の位置情報は、グローバル座標系における作業装置7の制御点の位置情報に基づいて、油圧ショベル1の周辺の設計面60の位置情報を外部サーバから通信により取得して設計面記憶部54に記憶してもよい。また、設計面60はオペレータが設定しても良い。
【0034】
距離演算部37は、制御点位置演算部53で演算された作業装置7の制御点(例えば作業装置7の先端に位置するバケット爪先)の位置情報と、設計面記憶部54から取得した設計面60の位置情報とから作業装置7の制御点と設計面60との距離D(
図2参照)を演算する。
【0035】
角度演算部71は、作業装置姿勢検出装置50と設計面記憶部54から入力する情報に基づいて、所定の基準面に対するバケット底面の角度(対地角度)αbkと同じ基準面に対する設計面60の角度αsfとのなす角αを演算する部分である。本実施形態の基準面は水平面であり、バケット底面の角度αbkと設計面60の角度αsfは水平面上に設定されたx軸を基準として
図7のように設定される。バケット底面と設計面60のなす角αは、バケット底面が水平面となす角αbkから設計面が水平面となす角αsfを減じた値、すなわち「α=αbk-αsf」で定義される。
図7に示すように、角度αは基準面(x軸)から反時計回りの角度を正としている。すなわち、xz平面における+x軸を始線(0度)として、そこから反時計回りに回転する方向の角度を正とし、時計回りに回転する方向の角度を負としている。本実施形態では+x軸を基準として±180度の範囲で角度を定義し、1つの角度に対して正負2つの表記(例えば、+α、-180+α)があるが絶対値の小さい方を選択するものとする。なお、
図7の角度αbk,αsfは始線(+x軸)から時計回りにとっているのでいずれも負の角度となる。
【0036】
バケット底面の対地角度αbkは、車体前後傾斜角θ4と、ブーム角度θ1と、アーム角度θ2と、バケット角度θ3と、バケットピン位置P3と爪先座標P4とを結ぶ線分とバケット底面を側面視したときの線分とのなす角βとから計算できる。角度βはバケット形状から規定される角度であり事前に把握可能である。設計面60の角度αsfは、設計面記憶部54に記憶された設計面60上の2点の位置から計算できる。
【0037】
作業局面判定部72は、角度演算部71で演算した角度αと、操作装置24から出力される操作信号と基づいて作業装置7による作業局面が転圧作業であるか否かを判定する部分である。作業局面判定部72は角度αに応じて転圧作業判定フラグを出力する。転圧作業判定フラグは、作業局面判定部72が作業局面が転圧作業であると判定する条件の1つである。転圧作業フラグは角度αが所定値φ0以上であるときに1と出力され、所定値φ0未満であるときには0と出力される。所定値φ0はゼロまたはゼロに近い値が好ましく、負の値でも良い。すなわちバケット底面と設計面60が平行または平行に近い状態で転圧作業フラグとして1が出力される設定であれば良い。転圧作業と判定され得る範囲(フラグが1と出力される範囲)を大きくする場合にはφ0をゼロに近い負の値に設定することが好ましい。本実施形態では
図8に示すようにゼロに設定している。
図8は本実施形態における角度αと転圧作業判定フラグとの関係を示すテーブルである。
【0038】
作業局面判定部72は、上記の転圧作業フラグが1であり、さらに、操作信号が作業装置7を設計面60に近づけることを指示する操作信号のときに、作業装置7による作業局面が転圧作業であると判定する。ここで「操作信号が作業装置7を設計面60に近づけることを指示する操作信号」とは、ブーム下げ、アームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号である。すなわち、ブーム操作レバー24aからブーム下げの操作信号か、アーム操作レバー24bからアーム9の操作信号が入力されている場合である。ブーム下げの操作信号はブーム下げでバケット底面を地面(施工面)に打ち付ける土羽打ち動作と判定し、アームダンプ又はアームクラウドの操作信号はアームダンプ又はクラウドでバケット底面を設計面60の近傍で地面(施工面)に押し付けながら設計面60に沿ってバケット10を移動させる床付け転圧動作と判定する。
【0039】
制限速度決定部38は、操作装置24の操作時に、作業装置7の動作範囲が設計面60上及びその上方に制限されるように各油圧シリンダ11,12,13の目標速度(制限速度)を距離Dに応じて演算する部分である。本実施の形態では下記の演算を行う。
【0040】
まず、制限速度決定部38は、まず、操作レバー24aから入力される電圧値(ブーム操作量)からブームシリンダ11への要求速度(ブームシリンダ要求速度)を計算し、操作レバー24bから入力される電圧値(アーム操作量)からアームシリンダ12への要求速度を計算し、操作レバー24cから入力される電圧値(バケット操作量)からバケットシリンダ13への要求速度を計算する。この3つの要求速度と制御点位置演算部53で演算された作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット先端P4における作業装置7の速度ベクトル(要求速度ベクトル)V0を計算する。そして、速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも計算する。
【0041】
次に、制限速度決定部38は、距離Dに応じて決定される補正係数k1,k2を演算する。
図9はバケット先端P4と設計面60の距離Dと速度補正係数k1,k2との関係を表すグラフである。バケット爪先座標P4(作業装置7の制御点)が設計面60の上方に位置している時の距離を正、設計面60の下方に位置している時の距離を負として、速度補正係数k1,k2は距離Dが小さくなるにつれて単調に減少するように設定されている。目標速度(制限速度)の速度方向に関して、作業装置7が設計面60の下方に侵入する方向を正としており、例えば設計面60が水平面の場合には鉛直下向き成分を有する速度の方向は正となる。
【0042】
速度補正係数kには通常作業時(転圧作業時以外の作業時)の値k1と転圧作業時の値k2の2つの設定がある。通常作業時の速度補正係数k1は、図中に実線で示しており、距離Dが0のときに0になるように設定されている。
【0043】
一方、転圧作業時の速度補正係数k2は、図中の破線で示すように、距離Dが所定の範囲(
図9の例ではD2≦D≦D1で規定される第1領域)に含まれるときに通常作業時の速度補正係数k1よりも大きくなるように設定されている。これにより転圧作業時の制限速度(目標速度)は通常作業時に比べて大きくなる。本実施形態では「所定の範囲」として、設計面の上方の距離D1(例えば+数十センチ程度)の位置に設定した第1境界と、設計面の下方の距離D2(例えば-5センチ程度)の位置に設定した第2境界とで囲まれた領域(「第1領域」と称する)を採用している。なお、設計面60の下方に制御点(バケット爪先)が侵入しない作業を行う場合等はD2をゼロ、すなわち設計面60上に第2境界を設定しても良い。
【0044】
また、アーム操作が入っている場合(すなわち、操作信号がアームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号の場合)の転圧作業(床付け転圧作業)のために、転圧作業時の速度補正係数k2は、通常作業時の速度補正係数k1が負に設定されている所定の範囲(
図9の例ではD3≦D≦0で規定される第2領域)に距離Dが含まれるときに正の値になるように設定されている。これにより設計面60の下方に制御点が移動した場合の制限速度が正となるので、概ね設計面60を形成した後の仕上げ作業時等にアームによる床付け転圧動作で設計面60を転圧することが可能となる。本実施形態では「所定の範囲」として、設計面60の下方の距離D2の位置に設定した第2境界の上方かつ設計面60の下方の距離D3の位置に設定した第3境界と設計面60で囲まれた領域(「第2領域」と称する)を採用している。なお、土羽打ちのような作業を行わない場合等には、第2領域における第3境界と反対側の境界(
図9の例では設計面60)は設計面の上方に設定しても良い。
【0045】
なお、第1領域外(D<D2,D1<D)の転圧作業時の速度補正係数k2は、通常作業時の速度補正係数k1と同じ値に設定されている。
【0046】
次に、制限速度決定部38は、距離Dに応じて決定される補正係数k1,k2を、速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度(Va1)と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。この目標速度の演算の際には、制御点位置演算部53で演算された作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢を利用しても良い。
【0047】
図10はバケット先端P4における距離Dに応じた補正前後の速度ベクトルを表す模式図である。要求速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の成分V0z(
図8の左の図参照)に速度補正係数k1,k2を乗じることにより、V0z以下の設計面鉛直方向の速度ベクトルV1z(
図8の右の図参照)が得られる。V1zと要求速度ベクトルV0の設計面水平方向の成分のV0xとの合成速度ベクトルV1を計算し、V1を出力可能なアームシリンダ目標速度Va1と、ブームシリンダ目標速度と、バケットシリンダ目標速度とが計算される。
【0048】
図11は通常作業時と転圧作業時のバケット先端P4における距離Dに応じた補正後の速度ベクトルを表す模式図である。通常作業時(図中左)は、バケット爪先座標P4と設計面60との距離Dがゼロのとき、速度補正係数k1が
図9のテーブルによりゼロとなるため、V1zはゼロとなる。しかし、転圧作業時(図中右)は、速度補正係数k2が
図9のテーブルによりゼロから正の値に変更されるので、V1zは正の値となる。
【0049】
流量制御弁制御部40は、制限速度決定部38で演算された各油圧シリンダ11,12,13の目標速度に基づいて、電磁弁32,33,34,35への制御指令を演算し、その制御指令を対応する電磁弁32,33,34,35に出力することで各流量制御弁(各スプール)28,29,30,31を制御する部分である。
【0050】
アームシリンダ12の制御に関して、流量制御弁制御部40は、制限速度決定部38で演算されたアームシリンダ12の目標速度を入力し、その目標速度に対応する第1アームスプール駆動電磁弁32a、32bと第2アームスプール駆動電磁弁33a,33bの制御指令(具体的には第1アームスプール駆動電磁弁32a、32bと第2アームスプール駆動電磁弁33a,33bの弁開度を規定する指令電流値)を演算して出力する。第1アームスプール駆動電磁弁32a、32bと第2アームスプール駆動電磁弁33a,33bの制御指令の演算に際して、本実施形態では、アームシリンダ12の目標速度と、第1アームスプール駆動電磁弁32a、32b及び第2アームスプール駆動電磁弁33a,33bの制御指令との相関関係が一対一で規定されたテーブルを利用する。このテーブルには、まず、アームシリンダ12を伸長する場合に利用される2つのテーブルとして、第1アームスプール駆動電磁弁32a用のテーブルと、第2アームスプール駆動電磁弁33a用のテーブルがある。また、アームシリンダ12を縮短する場合に利用される2つのテーブルとして、第1アームスプール駆動電磁弁32b用のテーブルと、第2アームスプール駆動電磁弁33b用のテーブルがある。これらの4つのテーブルでは,あらかじめ実験やシミュレーションで求めた電磁弁32a,32b,33a,33bへの電流値とアームシリンダ12の実速度の関係に基づいて,アームシリンダ目標速度の大きさの増加とともに電磁弁32a,32b,33a,33bへの電流値が単調に増加するように目標速度と電流値の相関関係が規定されている。
【0051】
ブームシリンダ11の制御に関して、流量制御弁制御部40は、制限速度決定部38で演算されたブームシリンダ11の目標速度を入力し、その目標速度に対応するブームスプール駆動電磁弁35a、35bの制御指令(具体的にはブームスプール駆動電磁弁35a、35bの弁開度を規定する指令電流値)を演算して出力する。ブームスプール駆動電磁弁35a、35bの制御指令の演算に際して、本実施形態では、ブームシリンダ11の目標速度とブームスプール駆動電磁弁35a、35bの制御指令の相関関係が一対一で規定されたテーブルを利用する。テーブルは、ブームシリンダ11を伸長する場合に利用されるブームスプール駆動電磁弁35a用のテーブルと、ブームシリンダ11を短縮する場合に利用されるブームスプール駆動電磁弁35b用のテーブルがある。これらの2つのテーブルでは,あらかじめ実験やシミュレーションで求めた電磁弁35a,35bへの電流値とブームシリンダ11の実速度の関係に基づいて,ブームシリンダ目標速度の大きさの増加とともに電磁弁35a,35bへの電流値が単調に増加するように目標速度と電流値の相関関係が規定されている。
【0052】
バケットシリンダ13の制御に関して、流量制御弁制御部40は、制限速度決定部38で演算されたバケットシリンダ13の目標速度を入力し、その目標速度に対応するバケットスプール駆動電磁弁34a、34bの制御指令(具体的にはバケットスプール駆動電磁弁34a、34bの弁開度を規定する指令電流値)を演算して出力する。バケットスプール駆動電磁弁34a、34bの制御指令の演算に際して、本実施形態では、バケットシリンダ13の目標速度とバケットスプール駆動電磁弁34a、34bの制御指令の相関関係が一対一で規定されたテーブルを利用する。テーブルは、バケットシリンダ13を伸長する場合に利用されるバケットスプール駆動電磁弁34a用のテーブルと、バケットシリンダ13を短縮する場合に利用されるバケットスプール駆動電磁弁34b用のテーブルがある。これらの2つのテーブルでは,あらかじめ実験やシミュレーションで求めた電磁弁34a,34bへの電流値とバケットシリンダ13の実速度の関係に基づいて,バケットシリンダ目標速度の大きさの増加とともに電磁弁34a,34bへの電流値が単調に増加するように目標速度と電流値の相関関係が規定されている。
【0053】
流量制御弁制御部40は、例えば、アームシリンダ目標速度とブームシリンダ目標速度の指令があるときは、電磁弁32,33,35の制御指令を生成して、第1アームスプール28と第2アームスプール29とブームスプール31とを駆動する。
【0054】
図12はコントローラ25による制御フローを表すフローチャートである。コントローラ25は操作装置24がオペレータにより操作されると
図12の処理を開始し,作業局面判定部72と制限速度決定部38はその操作装置24の操作によって出力された操作信号を取得する(手順S1)。
【0055】
手順S2では、まず、制御点位置演算部53は、作業装置姿勢検出装置50から傾斜角θ1,θ2,θ3,θ4の情報や、GNSSアンテナ21,22の航法信号から演算される油圧ショベル1の位置情報、姿勢情報(角度情報)及び方位情報や、予め記憶されている各フロント部材の寸法情報L1,L2,L3等に基づきグローバル座標系におけるバケット先端P4(制御点)の位置情報を演算する。次に、距離演算部37が,制御点位置演算部53で演算されたグローバル座標系におけるバケット先端P4の位置情報(油圧ショベル1の位置情報を利用しても良い)を基準として所定の範囲に含まれる設計面の位置情報(設計面データ)を設計面記憶部54から抽出・取得する。そして、その中からバケット先端P4に最も近い位置に在る設計面を制御対象の設計面60、すなわち距離Dを演算する設計面60として設定する。
【0056】
そして、距離演算部37は、バケット先端P4の位置情報と設計面60の位置情報に基づいて距離Dを演算し、手順S3に処理を移行する。
【0057】
手順S3では、バケット底面の対地角度αbkと設計面60の角度αsfのなす角αが演算される。それに際し、角度演算部71は、まず、作業装置姿勢検出装置50から取得した情報とコントローラ25の記憶装置に予め記憶したバケットの角度βからバケット底面の対地角(バケット角度)αbkを演算する。次に、角度演算部71は、設計面記憶部54に記憶された距離Dを演算する設計面60上の2点の位置に基づいて設計面60の角度αsf(設計面角度)を演算する。そして、バケット底面の対地角度αbkから設計面60の角度αsfを減じることで両者のなす角αを演算する。
【0058】
手順S4では、作業局面判定部72は、手順S3で演算した角度αと、手順S1で取得した操作信号と基づいて作業装置7による作業局面が転圧作業であるか否かを判定する。この作業局面の判定に際して、作業局面判定部72は、まず手順S3で演算した角度αが所定値φ0(=0)以上であるか否かを判定し、角度αが所定値φ0以上の場合には転圧作業フラグとして1を出力し、所定値φ0未満の場合には転圧作業フラグとして0を出力する。転圧作業フラグとして1が出力された場合には、作業局面判定部72は、手順S1で取得した操作信号がブーム下げ、アームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号であるか否かを判定し、操作信号がこれらのいずれか1つに該当する場合には、現在の作業局面が転圧作業であると判定し、手順S6に進む。一方、転圧作業フラグが0の場合や、1であっても操作信号が先述の3種以外の場合には、現在の作業局面は通常作業であると判定し、手順S5に進む。
【0059】
手順S5では、制限速度決定部38は、手順S2で演算した距離Dに対応する通常作業時の速度補正係数k1を
図9のテーブル(実線)を利用して演算する。そして、制限速度決定部38は、手順S1で取得した操作装置24から入力される各操作レバーの操作信号(電圧値)と各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット先端P4における作業装置7の速度ベクトルV0を演算し、その速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも演算する。次に、制限速度決定部38は、先に演算した通常作業時の速度補正係数k1を設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。
【0060】
手順S6では、制限速度決定部38は、手順S2で演算した距離Dに対応する転圧作業時の速度補正係数k2を
図9のテーブル(破線)を利用して演算する。そして、制限速度決定部38は、手順S1で取得した操作装置24から入力される各操作レバーの操作信号(電圧値)と各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット先端P4における作業装置7の速度ベクトルV0を演算し、その速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも演算する。次に、制限速度決定部38は、先に演算した転圧作業機の速度補正係数k2を設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。
【0061】
手順S7では、流量制御弁制御部40は、手順S5または手順S6で演算した各シリンダ11,12,13の目標速度(制限速度)から対応する流量制御弁28-31を駆動する信号を演算し、その信号を対応する電磁弁32-35に出力する。具体的には、流量制御弁制御部40は、アームシリンダ速度の目標速度から、第1流量制御弁(第1アームスプール)28と第3流量制御弁(第2アームスプール)29を駆動する信号を演算し、その信号を電磁弁32a及び電磁弁33aまたは電磁弁32b及び電磁弁33bに出力する。ブームシリンダ速度の目標速度からは、第2流量制御弁(ブームスプール)31を駆動する信号を演算し、その信号を電磁弁35aまたは電磁弁35bに出力し、手順S12に進む。バケットシリンダ速度の目標速度からは、流量制御弁(バケットスプール)30を駆動する信号を演算し、その信号を電磁弁34aまたは電磁弁34bに出力する。
【0062】
手順S7の処理が終了したら、操作装置24の操作が継続していることを確認してはじめに戻り手順S1以降の処理を繰り返す。なお、
図12のフローの途中であっても操作装置24の操作が終了した場合には処理を終了して次回の操作装置24の操作が開始されるまで待機する。
【0063】
<動作・効果>
(1)通常作業時(掘削作業時)
通常作業に含まれる掘削作業時には、一般的に、アームダンプ操作によりショベルの前方に位置する掘削開始位置までバケット10を移動させバケット爪先を設計面60に対して立てた状態からアームクラウド操作を入力することで掘削作業を開始する。このとき、バケット底面と設計面60のなす角αは-90度に近い値であり転圧作業判定フラグは0となる。そのため操作信号に関わらず
図12の手順S4で通常作業と判定されるため、通常作業時の速度補正係数k1に基づいて各シリンダ11,12,13の速度が制限される(手順S5)。すなわち、設計面60にバケット先端P4が近づくほど作業装置7の速度の設計面鉛直成分が0に近づくように制御され、作業装置7が設計面60上またはその上方に保持される。
【0064】
(2-1)転圧作業時(土羽打ち)
転圧作業に含まれる土羽打ち作業時には、バケット底面と設計面60のなす角αがゼロに近い状態(すなわちバケット底面と設計面60が平行に近い状態)にバケット10の姿勢を固定してブーム下げ操作を入力することで作業を開始する。本実施形態ではバケット底面と設計面60のなす角αが0以上のとき(すなわち、バケット底面が設計面60と平行のとき、または、バケット爪先がバケット底面よりも上方に位置する姿勢のとき)に転圧作業判定フラグが1となる。転圧作業判定フラグが1でさらにブーム下げ操作が入力された場合には
図12の手順S4で作業局面が転圧作業と判定され、距離Dが第1領域(D2≦D≦D1)にある場合には通常作業時よりも大きな速度補正係数k2(転圧作業時の速度補正係数)に基づいて各シリンダ11,12,13の速度が制限される(手順S6)。すなわち、設計面60上で作業装置7の速度の設計面鉛直成分が正の値となることが許容されるため、土羽打ち時にバケット底面で地面(施工面)を良好に転圧できる。特に本実施形態では作業局面の判定にバケット底面と設計面60のなす角αを利用しており、なす角αが0未満でバケット爪先が設計面60に突き刺さり得る姿勢の場合には通常作業時と同じ制御を行う。すなわち設計面60にバケット先端P4が近づくほど作業装置7の速度の設計面鉛直成分が0に近づくように作業装置7が制御されるので、施工面を傷つけることを防止できる。
【0065】
(2-2)転圧作業時(床付け転圧)
転圧作業に含まれる床付け転圧作業時は、設計面60を概ね形成した後にバケット背面を地面に接触させた状態(すなわちバケット底面と設計面60のなす角αはゼロに近い状態)でアームクラウド操作またはアームダンプ操作を入力することで作業を開始する。そして、そのアーム操作によりバケット背面を地面に押し付けながらバケット10を移動させることで設計面60を転圧していく。床付け転圧作業では、設計面形成後に行われることが多いという作業の性質上、転圧開始時に既にバケット爪先が設計面60上に位置していることが少なくなく、その場合には転圧動作(アーム操作)によりバケット爪先が設計面60の若干下方に移動することが通常である。本実施形態では、転圧作業判定フラグが1でさらにアーム操作が入力された場合には
図12の手順S4で作業局面が転圧作業と判定され、距離Dが第2領域(D3≦D≦0)にある場合には、通常作業時に負の値である速度補正係数が正の値に変更される。すなわち、設計面60の直下の第2領域での作業装置7の速度の設計面鉛直成分が正の値となることが許容されるため、設計面60上またはその極めて近傍にバケット爪先が位置する状態からアーム操作を開始してもバケット底面で地面(施工面)を良好に転圧できる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、バケット底面と設計面60のなす角αが所定値φ0以上であり、かつ、アーム操作信号またはブーム下げ操作信号が出力されているときに転圧作業と判定するため、精度良く転圧作業を判定することが可能である。また、ブーム下げ操作による転圧作業時(土羽打ち時)には、距離Dが第1領域(D2≦D≦D1)にあるときに通常作業時に比して作業装置7の速度補正係数を大きくすることにより、土羽打ちによる転圧作業を良好に行うことが可能である。また、アーム操作による転圧作業時(床付け転圧作業時)には距離Dが第2領域(D3≦D≦0)にあるときに速度補正係数kを正の値とすることで、設計面鉛直方向の速度を生成することが可能であり、床付け転圧作業を良好に行うことが可能である。
【0067】
本発明の第2実施形態について説明する。ハードウェア構成は第1実施形態と同じであるため説明は省略し、ここでは異なる点について説明していく。
図13は本発明の第2実施形態におけるコントローラ25の機能ブロック図である。制限速度決定部38がさらにブームシリンダのロッド圧(ブームロッド圧と称することがある)を考慮して制限速度を演算している点に特徴がある。本実施形態の制限速度決定部38は圧力センサ61から取得するブームロッド圧情報を利用して転圧作業判定を実施している。
【0068】
また、本実施形態の制限速度決定部38は、
図14に示すように、ブームロッド圧が所定の圧力P1以上の高いとき(以下、単に「高圧時」と称することがある)における転圧作業時の速度補正係数k3を通常の転圧作業時の値k2(図中の破線(すなわち第1実施形態の転圧作業時の速度補正係数))よりも小さくなるように補正している。
【0069】
図15はブームロッド圧が高圧のときの転圧作業時のバケット先端P4における補正後の速度ベクトルを表す模式図である。この図に示すように、例えば距離Dが0となる設計面60上の点では、通常の転圧作業時の速度ベクトルの設計面鉛直方向成分V1z(図中左)に比べて、ブームロッド圧高圧時の速度ベクトルの設計面鉛直方向成分V1z(図中右)は小さくなる(すなわち制限速度が小さくなる)。
【0070】
図16に本実施形態のコントローラ25による制御フローを表すフローチャートである。
図12と同じ手順については同じ符号を付して説明を省略し、ここでは異なる手順について説明する。
【0071】
手順S11では、制限速度決定部38は、ブームロッド圧センサ61の検出信号を入力してブームシリンダ11のロッド圧力を取得する。
【0072】
手順S14では、制限速度決定部38は、手順S11で取得したブームロッド圧が所定値P1未満かどうかを判定し、ブームロッド圧がP1未満の場合には手順S6へ、P1以上の場合には手順S16に進む。
【0073】
手順S16では、制限速度決定部38は、手順S2で演算した距離Dに対応するブームロッド圧が高圧のときの転圧作業時の速度補正係数k3を
図14のテーブル(一点鎖線)を利用して演算する。そして、制限速度決定部38は、手順S1で取得した操作装置24から入力される各操作レバーの操作信号(電圧値)と各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット先端P4における作業装置7の速度ベクトルV0を演算し、その速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも演算する。次に、制限速度決定部38は、先に演算した速度補正係数k3を設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。
【0074】
<動作・効果>
アーム操作によりバケット底面を現況地形に押し付けて締め固める床付け転圧作業時には、アーム9による転圧を支持する力がブームシリンダ11のロッド側の油圧室に作用するためブームロッド圧が上昇する。そのためアーム9による転圧力が過大になった場合にはショベルの走行体2が地面から浮き上がるおそれがある。そこで本実施形態においてはブームロッド圧がP1以上となった場合には転圧作業時の速度補正係数k3をP1未満の場合よりも小さく設定するようにした。このように速度補正係数を変更すると床付け転圧作業時に転圧力が過大になって走行体2が地面から浮き上がることを防止できる。
【0075】
なお、走行体2の浮き上がりが問題となるのはアーム操作による床付け転圧作業時であるため、ブームロッド圧がP1以上となった場合に速度補正係数k3を小さくするのは第2領域(すなわちD3≦D≦0のとき)に限定し、その他の領域では第1実施形態と同じ速度補正係数k2を利用する構成を採用しても良い。
【0076】
また、上記の説明ではブームロッド圧がP1以上となった場合のみ転圧作業時の速度補正係数k3を小さくしたが、ブームロッド圧の増加に応じて転圧作業時の速度補正係数k3を徐々に小さくする,すなわちブームロッド圧の増加に応じて各シリンダの制限速度の大きさを低減するように設定しても良い。さらに換言すれば、転圧作業時にはブームロッド圧の圧力に基づいて各シリンダの制限速度の大きさを変更する構成としても良い。
【0077】
また、
図14の例では、高圧のときの転圧作業時の速度補正係数k3を、転圧作業時の速度補正係数k2が正となる範囲(D3≦D≦D1)のみでk2よりも小さくしたが、第1領域(D2≦D≦D1)の全域にわたってk2よりも小さくして良い。
【0078】
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では,操作装置24によって設計面60に作業装置7を近づけることが指示される場合の設計面60に対するバケット10の姿勢に基づいて作業局面が転圧作業か否かを判定している点に特徴がある。具体的には,本実施形態では,バケット先端P4に加えてバケット後端P5(
図18参照)も制御点としており,コントローラ25はこの2つの制御点P4,P5と設計面60との距離Dp4,Dp5(
図18参照)をそれぞれ演算し,距離Dp4が距離Dp5以上の場合(つまりバケット後端P5がバケット先端P4よりも設計面60に近い場合)には転圧作業と,距離Dp4が距離Dp5より小さい場合(つまりバケット先端P4がバケット後端P5よりも設計面60に近い場合)には通常作業(掘削作業)と判定している。バケット後端P5は,バケット先端P4から開始する略平坦な部分の終点であり,この略平坦な部分がバケット底面と称されることがある。つまり,バケット底面の先端が先端P4であり,バケット底面の後端が後端P5である。ハードウェア構成は第1実施形態と同じであるため説明は省略し、ここでは異なる点について主に説明していく。
【0079】
図17は本発明の第3実施形態におけるコントローラ25の機能ブロック図である。この図のコントローラ25は,制御点位置演算部53Aと,距離演算部37Aと,作業局面判定部72Aと,制限速度決定部38Aを備えている。
【0080】
制御点位置演算部53Aは,グローバル座標系における本実施形態の制御点であるバケット先端P4及びバケット後端P5(
図18参照)の位置と、グローバル座標系における作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢を演算する。演算は公知の方法及び先述の方法に基づけば良い。
【0081】
距離演算部37Aは、制御点位置演算部53で演算された作業装置7の2つの制御点P4,P5の位置情報と、設計面記憶部54から取得した設計面60の位置情報とから作業装置7の制御点P4,P5と設計面60との距離Dp4,Dp5(
図18参照)を演算する。
【0082】
作業局面判定部72Aは、距離演算部37Aで演算された距離Dp4,Dp5と、操作装置24から出力される操作信号とに基づいて作業装置7による作業局面が転圧作業であるか否かを判定する。作業局面判定部72Aは距離Dp4,Dp5に応じて転圧作業判定フラグを制限速度決定部38Aに出力する。転圧作業判定フラグは、作業局面判定部72が作業局面が転圧作業であると判定する条件の1つである。転圧作業フラグは距離Dp4が距離Dp5以上であるとき(つまりバケット後端P5がバケット先端P4よりも設計面60に近いとき)に1と出力され、距離Dp4が距離Dp5未満であるとき(つまりバケット先端P4がバケット後端P5よりも設計面60に近いとき)には0と出力される。
【0083】
作業局面判定部72Aは、上記の転圧作業フラグが1であり、さらに、操作信号が作業装置7を設計面60に近づけることを指示する操作信号のときに、作業装置7による作業局面が転圧作業であると判定する。
【0084】
制限速度決定部38Aは、操作装置24の操作時に、作業装置7の動作範囲が設計面60上及びその上方に制限されるような各油圧シリンダ11,12,13の目標速度(制限速度)を2つの距離Dp4,Dp5のうち小さい方の距離に基づいて演算する部分である。すなわち,2つの制御点P4,P5のうち設計面60に近い方を基準として目標速度を算出する。さらに換言すると,作業局面判定部72Aから転圧作業フラグとして1が入力されている場合には距離Dp5を利用し,転圧作業フラグとして0が入力されている場合には距離Dp4を利用する。
【0085】
まず、制限速度決定部38は、まず、操作レバー24aから入力される電圧値(ブーム操作量)からブームシリンダ11への要求速度(ブームシリンダ要求速度)を計算し、操作レバー24bから入力される電圧値(アーム操作量)からアームシリンダ12への要求速度を計算し、操作レバー24cから入力される電圧値(バケット操作量)からバケットシリンダ13への要求速度を計算する。この3つの要求速度と制御点位置演算部53で演算された作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢から、制御点P4又はP5における作業装置7の速度ベクトル(要求速度ベクトル)V0を計算する。そして、速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも計算する。
【0086】
次に、制限速度決定部38は、2つの距離Dp4,Dp5のうち小さい方の距離に応じて決定される補正係数k1,k2を演算する。補正係数k1,k2の演算に利用される距離が2つの距離Dp4,Dp5のうち小さい方の距離になる点以外は第1実施形態と演算プロセスは同じである。
【0087】
次に、制限速度決定部38は、2つの距離Dp4,Dp5のうち小さい方の距離に応じて決定される補正係数k1,k2を、速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度(Va1)と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。この目標速度の演算の際には、制御点位置演算部53Aで演算された作業装置7の各フロント部材8,9,10の姿勢を利用しても良い。
【0088】
図19は本実施形態のコントローラ25による制御フローを表すフローチャートである。ここでは
図12と異なる手順についてのみ説明する。
【0089】
手順S2では、まず、制御点位置演算部53Aは、作業装置姿勢検出装置50から傾斜角θ1,θ2,θ3,θ4の情報や、GNSSアンテナ21,22の航法信号から演算される油圧ショベル1の位置情報、姿勢情報(角度情報)及び方位情報や、予め記憶されている各フロント部材の寸法情報L1,L2,L3等に基づきグローバル座標系におけるバケット先端P4(第1制御点)の位置情報を演算する。次に、距離演算部37Aが,制御点位置演算部53Aで演算されたグローバル座標系におけるバケット先端P4の位置情報(油圧ショベル1の位置情報を利用しても良い)を基準として所定の範囲に含まれる設計面の位置情報(設計面データ)を設計面記憶部54から抽出・取得する。そして、その中からバケット先端P4に最も近い位置に在る設計面を制御対象の設計面60、すなわち距離Dp4を演算する設計面60として設定する。そして、距離演算部37Aは、バケット先端P4の位置情報と設計面60の位置情報に基づいて距離Dp4を演算し、手順S21に処理を移行する。
【0090】
手順S21では、制御点位置演算部53Aは、手順S2と同様に,傾斜角θ1,θ2,θ3,θ4の情報や、油圧ショベル1の位置情報、姿勢情報(角度情報)及び方位情報や、各フロント部材の寸法情報L1,L2,L3等に基づきグローバル座標系におけるバケット後端P5(第2制御点)の位置情報を演算する。次に、距離演算部37Aが,制御点位置演算部53Aで演算されたバケット後端P5の位置情報を基準として所定の範囲に含まれる設計面の位置情報(設計面データ)を設計面記憶部54から抽出・取得する。そして、その中からバケット後端P5に最も近い位置に在る設計面を制御対象の設計面60として設定する。そして、距離演算部37Aは、バケット後端P5の位置情報と設計面60の位置情報に基づいて距離Dp5を演算し、手順S22に処理を移行する。
【0091】
手順S22では、作業局面判定部72は、手順S2で演算した距離Dp4と、手順S21で演算した距離Dp5と、手順S1で取得した操作信号と基づいて作業装置7による作業局面が転圧作業であるか否かを判定する。この作業局面の判定に際して、作業局面判定部72Aは、まず距離Dp4が距離Dp5以上であるか否かを判定し、距離Dp4が距離Dp5以上の場合には転圧作業フラグとして1を出力し、距離Dp4が距離Dp5より小さい場合には転圧作業フラグとして0を出力する。転圧作業フラグとして1が出力された場合には、作業局面判定部72Aは、手順S1で取得した操作信号がブーム下げ、アームダンプ及びアームクラウドのいずれか1つを指示する操作信号であるか否かを判定し、操作信号がこれらのいずれか1つに該当する場合には、現在の作業局面が転圧作業であると判定し、手順S24に進む。一方、転圧作業フラグが0の場合や、1であっても操作信号が先述の3種以外の場合には、現在の作業局面は通常作業であると判定し、手順S23に進む。
【0092】
手順S23では、制限速度決定部38Aは、手順S2で演算した距離Dp4に対応する通常作業時の速度補正係数k1を
図9のテーブル(実線)を利用して演算する。そして、制限速度決定部38Aは、手順S1で取得した操作装置24から入力される各操作レバーの操作信号(電圧値)と各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット先端P4における作業装置7の速度ベクトルV0を演算し、その速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも演算する。次に、制限速度決定部38Aは、先に演算した通常作業時の速度補正係数k1を設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。
【0093】
手順S24では、制限速度決定部38Aは、手順S21で演算した距離Dp5に対応する転圧作業時の速度補正係数k2を
図9のテーブル(破線)を利用して演算する。そして、制限速度決定部38Aは、手順S1で取得した操作装置24から入力される各操作レバーの操作信号(電圧値)と各フロント部材8,9,10の姿勢から、バケット後端P5における作業装置7の速度ベクトルV0を演算し、その速度ベクトルV0の設計面鉛直方向の速度成分V0zと設計面水平方向の速度成分V0xも演算する。次に、制限速度決定部38Aは、先に演算した転圧作業機の速度補正係数k2を設計面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1zを計算する。この速度成分V1zと、速度ベクトルV0の設計面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し、この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と、アームシリンダ速度と、バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度(制限速度)として演算する。
【0094】
以上のように構成した本実施形態によれば、距離Dp4が距離Dp5以上であり、かつ、アーム操作信号またはブーム下げ操作信号が出力されているときに転圧作業と判定するため、第1実施形態と同様に精度良く転圧作業を判定することが可能である。また、ブーム下げ操作による転圧作業時(土羽打ち時)には、距離Dp5が第1領域(D2≦D≦D1)にあるときに通常作業時に比して作業装置7の速度補正係数を大きくすることにより、土羽打ちによる転圧作業を良好に行うことが可能である。また、アーム操作による転圧作業時(床付け転圧作業時)には距離Dp5が第2領域(D3≦D≦0)にあるときに速度補正係数kを正の値とすることで、設計面鉛直方向の速度を生成することが可能であり、床付け転圧作業を良好に行うことが可能である。
【0095】
ここで第1実施形態の変形例について説明する。
図3,
図4及び
図6に示すように,第1実施形態で説明した油圧ショベル1の車体制御システム23は,
図12等を利用して説明した,作業局面判定部72によって作業局面が転圧作業であると判定されたとき、作業局面判定部72によって作業局面が転圧作業以外であると判定されたときよりも制限速度を大きくする処理(制限速度変更処理)の有効と無効とを切り換えるON/OFFスイッチ80をさらに備えても良い。ON/OFFスイッチ80は,例えば運転室4内において油圧ショベル1の操作中のオペレータの手の届く範囲に設けられたスイッチであり,ON/OFFスイッチ80がONに切り換えられているとコントローラ25による制限速度変更処理が実行可能(有効)になり,OFFに切り換えられているとコントローラ25による制限速度変更処理が実行不能(無効)になる。
【0096】
図20はON/OFFスイッチ80からの入力信号がある場合のコントローラ25の制御フローを表す図である。ここでは
図12と異なる手順についてのみ説明する。
【0097】
コントローラ25は,手順S31において,ON/OFFスイッチ80から入力されるON/OFF信号に基づいてON/OFFスイッチ80がONか否かを判定する。ここでON/OFFスイッチ80がONの場合には手順S3に進んで
図12の場合と同様に手順S3以降の処理が実行される。一方,OFFの場合には手順S5に進むため制限速度変更処理は実行されない。
【0098】
このように油圧ショベル1を構成した場合には,オペレータの希望に応じて制限速度変更処理の実行の有無を変更することができる。これにより様々な作業ニーズに柔軟に対応できるようになる。なお,ここでは第1実施形態にON/OFFスイッチ80を搭載する場合について説明したが,他の実施形態にもON/OFFスイッチ80を搭載することでオペレータの要望に応じて制限速度変更処理をON/OFFすることが可能であることはいうまでもない。
【0099】
<その他>
本発明は,上記の実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば,本発明は,上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず,その構成の一部を削除したものも含まれる。また,ある実施の形態に係る構成の一部を,他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0100】
上記の
図9,14の例では、速度補正係数k2を、D=0の前後で傾きの異なる2つの直線を接続した形状で設定したが、速度補正係数k2の設定は直線に限られず種々の変更が可能である。例えば曲線状に設定しても良い。他の速度補正係数k1,k3についても同様である。
【0101】
上記では、速度補正係数k1,k2,k3の設定に関し、土羽打ち作業と床付け転圧作業の双方が可能な作業機械を構成するために、作業局面に応じて速度補正係数kが変化する第1領域の下端(D2)を、速度補正係数k1が負に設定された範囲で速度補正係数k2を正に設定する第2領域の下端(D3)より小さくすることで、第1領域内に第2領域が含まれるようにしたが、第1領域と第2領域は個別に設けることが可能である。例えば、第1領域の下端を第2領域の上端(0)に一致させ、両者に包含関係がないようにすることが可能である。また、土羽打ち作業と床付け転圧作業のいずれか一方に特化した作業機械を構成する場合には、第1領域と第2領域のいずれか一方を設けることも可能である。
【0102】
上記のコントローラ25に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は,それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また,上記のコントローラ25に係る構成は,演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該コントローラ25の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は,例えば,半導体メモリ(フラッシュメモリ,SSD等),磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク,光ディスク等)等に記憶することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…走行体、3…旋回体、4…運転室、5…機械室、6…カウンタウェイト、7…作業装置、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、11…ブームシリンダ、12…アームシリンダ、13…バケットシリンダ、14…第1油圧ポンプ、15…第2油圧ポンプ、16…エンジン(原動機)、17…車体傾斜センサ、18…ブーム傾斜センサ、19…アーム傾斜センサ、20…バケット傾斜センサ、21…第1GNSSアンテナ、22…第2GNSSアンテナ、23…車体制御システム、24…操作装置、25…コントローラ、26…流量制御弁装置、27…油圧回路、28…第1アームスプール(第1流量制御弁)、29…第2アームスプール(第3流量制御弁)、30…バケットスプール、31…ブームスプール(第2流量制御弁)、32a、32b…第1アームスプール駆動電磁弁、33a、33b…第2アームスプール駆動電磁弁、34a、34b…バケットスプール駆動電磁弁、35a、35b…ブームスプール駆動電磁弁、36a、36b…作動油タンク、37…距離演算部、38…制限速度決定部、40…流量制御弁制御部、50…作業装置姿勢検出装置、51…設計面設定装置、53…制御点位置演算部、54…設計面記憶部、60…設計面、61…ブームシリンダロッド圧検出センサ、71…角度演算部、72…作業局面判定部