(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221108BHJP
H05G 1/04 20060101ALI20221108BHJP
H01J 35/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B6/03 320C
H05G1/04
H01J35/00 Z
A61B6/03 321B
(21)【出願番号】P 2018163488
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017178171
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 豊正
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0039795(KR,A)
【文献】特開2013-229328(JP,A)
【文献】特開2000-157532(JP,A)
【文献】特開2002-345804(JP,A)
【文献】特開2015-032512(JP,A)
【文献】特表2017-504147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
H05G 1/00-2/00
H01J 35/00-35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な架台ベースと、
前記架台ベースに固定され、開口を有するハウジングと、
前記架台ベースに固定されたハウジングの内部に着脱可能に配置され、熱電子を発生する陰極と前記熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極とを備えるインサートと、
前記開口側に着脱可能に固定され、前記ハウジング内に空気を流入させる送風部と、
を備える、X線CT装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記架台ベースに対向する側の反対側に前記開口を有する、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記インサートは、前記ハウジング内に配置され、一端に設けられた固定部を介して前記架台ベースに着脱可能に固定される、請求項1又は2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記ハウジング内に配置され、前記陽極を回転させるステータコイルを更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記インサートは、外面に、前記空気の流れ方向と直交する溝を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、内面に、前記空気の流れ方向と直交する溝を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記開口側の内面又は外面に螺旋状の溝を有し、
前記送風部は、前記開口側の内面又は外面に当接する面に螺旋状の溝を有し、
前記ハウジングにおける螺旋状の溝と前記送風部における螺旋状の溝とが螺合することで、前記送風部が前記ハウジングに固定される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記インサートは、外面に、前記空気の流れ方向に沿った溝を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、内面に、前記空気の流れ方向に沿った溝を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記ハウジングは、耐熱性を有する樹脂により構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置及びインサートに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置がX線の発生に用いるインサートには、陽極(ターゲット)やベアリングといった部品が含まれる。これら部品には寿命があり、長期間使用されれば劣化していくため、いずれはインサートの故障が生じる。そして、故障したインサートについては、交換する必要がある。また、インサートはX線発生時に発熱があるため、通常、冷却液に満たされたハウジング内に配置される。
【0003】
ここで、インサートが故障した場合、インサートを交換すれば十分ではあるものの、冷却液に満たされたハウジング内のインサートのみを交換することは困難であり、通常、ハウジング等の周辺部品と併せて交換されていた。即ち、インサートのみが故障した場合でも、故障していない部品までもが交換され、部品代が高額となっていた。また、交換部品が大きく且つ重くなり、交換作業の負担が大きくなっていた。例えば、X線遮蔽のための鉛板を有するハウジングや冷却液をも交換するとなれば、交換部品は数十kgになる場合があり、交換作業に人手を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-74361号公報
【文献】特開2016-18687号公報
【文献】特開2004-146295号公報
【文献】特開2016-162525号公報
【文献】特開2000-157532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、インサートの交換を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CT装置は、回転可能な架台ベースと、ハウジングと、インサートと、送風部とを備える。ハウジングは、前記架台ベースに固定され、開口を有する。インサートは、前記ハウジング内に着脱可能に配置され、熱電子を発生する陰極と前記熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極とを備える。送風部は、前記開口側に着脱可能に固定され、前記ハウジング内に空気を流入させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の回転部の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るインサート及びステータコイルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るハウジングの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る送風部の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るインサート、ハウジング、ステータコイル及び送風部の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態におけるインサートの空冷について説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、第1の実施形態に係るインサートの交換手順の一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第1の実施形態に係るインサートの交換手順の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る溝の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、X線CT装置及びインサートの実施形態について詳細に説明する。以下では、一例として、インサートを含んだX線CT装置について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。X線CT装置1は、
図1に示すように、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。なお、
図1においては、非チルト状態での回転フレーム16の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。
【0010】
架台装置10は、インサート11と、X線検出器15と、回転フレーム16と、X線高電圧装置17と、制御装置18と、ウェッジ19と、コリメータ20と、データ収集回路21とを有する。
【0011】
インサート11(X線管)は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。インサート11は、X線高電圧装置17から供給される高電圧により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射する。また、インサート11は、架台装置10の回転フレーム16(架台ベース)との着脱を可能とする固定部を有し、図示しないハウジング12内に配置される。なお、インサート11及びハウジング12については後述する。
【0012】
X線検出器15は、インサート11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をデータ収集回路21へと出力する。X線検出器15は、例えば、インサート11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器15は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0013】
回転フレーム16(架台ベース)は、インサート11とX線検出器15とを対向支持し、制御装置18によってインサート11とX線検出器15とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム16は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム16は、インサート11及びX線検出器15に加えて、X線高電圧装置17やデータ収集回路21を更に支持することもできる。更に、回転フレーム16は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置10において、回転フレーム16と共に回転移動する部分及び回転フレーム16を回転部とも記載する。
【0014】
なお、データ収集回路21が生成した検出データは、回転フレーム16に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム16を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム16から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0015】
X線高電圧装置17は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、インサート11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、インサート11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置17は、回転フレーム16に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0016】
制御装置18は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、この機構を制御する回路とを含む。制御装置18は、入力インターフェース43や架台装置10に設けられた入力インターフェース等からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置18は、回転フレーム16の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置18は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム16を回転させる。なお、制御装置18は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0017】
ウェッジ19は、インサート11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ19は、インサート11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、インサート11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ19は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して構成される。
【0018】
コリメータ20は、ウェッジ19を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ20は、図示しないコリメータ調整回路によって、開口度及び位置が調整される。これにより、インサート11が発生させたX線の照射範囲が調整される。
【0019】
データ収集回路21は、DAS(Data Acquisition System)である。データ収集回路21は、X線検出器15の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。データ収集回路21は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0020】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0021】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。
【0022】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、投影データや再構成画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0023】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成されたCT画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。
【0024】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等により実現される。
【0025】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、スキャン制御機能441、画像生成機能442、表示制御機能443及び制御機能444を有する。処理回路44は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0026】
例えば、処理回路44は、メモリ41からスキャン制御機能441に相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線CT装置1を制御してスキャンを実行する。ここで、スキャン制御機能441は、例えば、コンベンショナルスキャンやヘリカルスキャン、ステップアンドシュート方式といった種々の方式でのスキャンを実行することができる。
【0027】
具体的には、スキャン制御機能441は、寝台駆動装置32を制御することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内へ移動させる。また、スキャン制御機能441は、X線高電圧装置17を制御することにより、インサート11へ高電圧を供給させる。また、スキャン制御機能441は、コリメータ9の開口度及び位置を調整する。また、スキャン制御機能441は、制御装置18を制御することにより、回転フレーム16を含む回転部を回転させる。また、スキャン制御機能441は、データ収集回路21に投影データを収集させる。
【0028】
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から画像生成機能442に相当するプログラムを読み出して実行することにより、データ収集回路21から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理を施す前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、例えば、画像生成機能442は、CT画像データを生成する。具体的には、画像生成機能442は、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。また、画像生成機能442は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。
【0029】
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から表示制御機能443に相当するプログラムを読み出して実行することにより、CT画像をディスプレイ42に表示する。また、例えば、処理回路44は、メモリ41から制御機能444に相当するプログラムを読み出して実行することにより、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。
【0030】
なお、
図1においては、スキャン制御機能441、画像生成機能442、表示制御機能443及び制御機能444の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0031】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0032】
次に、
図2を用いて、X線CT装置1における回転部について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の回転部の一例を示す図である。
図2に示す回転部は、架台装置10において回転移動する部分であり、例えば、図示しない固定フレームにより支持される。
【0033】
図2に示すように、回転部は、回転フレーム16の他、ハウジング12、送風部14、X線検出器15、データ収集回路21、冷却装置22、電源ユニット23、電源ユニット24、電源制御ユニット25及び放熱口26等を含む。更に、回転部は、図示しないインサート11、ステータコイル13等を含む。
【0034】
電源ユニット23及び電源ユニット24は、X線高電圧装置17の一例であり、インサート11に管電圧を供給する。また、電源制御ユニット25は、電源ユニット23及び電源ユニット24を制御する。
【0035】
冷却装置22は、
図2に示すように、ハウジング12に隣接して設けられ、ハウジング12内のインサート11がX線を発生する際に生じる熱を冷却する。例えば、冷却装置22は、ポンプとラジエターを含み、インサート11に冷却液L1を供給する。ここで、冷却液L1は、例えば、水やオイル等である。一例を挙げると、まず、インサート11は、X線発生時に、冷却装置22から供給された冷却液L1を用いて
図3の陽極112を冷却し、温度が上昇した冷却液L1を冷却装置22に送る。冷却装置22は、温度が上昇した冷却液L1をラジエターにより冷却した後、再度、インサート11に冷却液L1を供給する。放熱口26は、冷却装置22において発生した熱を外部に放出する。
【0036】
図2に示すように、送風部14は、ハウジング12に固定され、ハウジング12内に空気を流入させる。ハウジング12は、内部にインサート11及びステータコイル13が配置される。ここで、ハウジング12は、
図2に示すように、X線検出器15に対向する位置にX線窓122を有する。インサート11から照射されたX線は、X線窓122を通って被検体Pに照射され、被検体Pを透過したX線はX線検出器15により検出される。なお、インサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14については後述する。
【0037】
回転部におけるインサート11は、スキャン制御機能441による制御の下、回転部の回転に伴って、被検体Pの周囲を回転移動しながらX線の照射を行う。例えば、架台装置10が非チルト状態の場合、回転部はZ軸に平行な軸を回転軸として回転し、インサート11は、回転中心に位置する被検体Pに対して連続的にX線を照射する。また、回転部におけるX線検出器15は、回転部の回転に伴って、被検体Pの周囲を回転しながら、被検体Pを透過したX線を検出し、電気信号をデータ収集回路21に出力する。更に、回転部におけるデータ収集回路21は、X線検出器15から出力された電気信号に基づいて、投影データを生成し、処理回路44に送信する。そして、画像生成機能442は、回転部から送信された投影データに基づいて、CT画像データを生成する。
【0038】
次に、
図3を用いて、インサート11及びステータコイル13について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るインサート11及びステータコイル13の一例を示す図である。なお、
図3においては、後述する回転軸Zr及びX線窓115を含んだ平面におけるインサート11及びステータコイル13の断面を示す。
図3に示すように、インサート11は、陰極111と、陽極112と、ベアリング113と、筐体114と、X線窓115と、冷却液L1が通る空洞116と、固定部117aと、固定部117bと、固定部117cとを有する。
【0039】
陰極111は、
図3に示すように、熱電子Eを発生する。陰極111は、例えば、タングステンで作製されたフィラメントである。ここで、熱電子とは、フィラメントに流れる電流により発生した熱により励起され、フィラメントの外に飛び出す電子である。
【0040】
陽極112は、陰極111が放出する熱電子Eの衝突を受けてX線Rを発生させる。具体的には、まず、陰極111と陽極112との間に電位差が設けられる。例えば、陽極112を接地し、陰極111の電位をマイナスとすることにより、陰極111と陽極112との間に電位差が設けられる。この電位差により、陰極111が放出した熱電子Eは加速されて陽極112に衝突し、X線Rが発生する。
【0041】
ここで、陽極112は、回転軸Zrを軸として回転する回転体であり、回転軸Zrの軸方向から見ると円形となっている。また、陽極112は、
図3に示すように、半径が大きな部分及び半径が小さな部分を有する。ここで、陽極112の半径とは、回転軸Zrに垂直な平面において、陽極112の外周から回転軸Zrまでの距離である。半径が大きな部分は陽極112の+Z方向側に位置し、陰極111が放出する熱電子Eを受けてX線Rを発生する。ここで、半径が大きな部分は、
図3に示すように、陰極111に近づくにつれて半径が次第に小さくなる傘状の形状を有する。また、半径が小さな部分は、陽極112の-Z方向側に位置し、ベアリング113により支持される。
【0042】
ここで、陽極112は、ベアリング113により回転可能に支持されており、ステータコイル13が発生させる回転磁界により回転する。陽極112は、回転することにより、熱電子Eの衝突によって発熱する位置を分散させ、発熱による陽極112の溶解を回避する。
【0043】
筐体114は、
図3に示すように、陰極111、陽極112及びベアリング113を収納する。筐体114は、例えば、金属で作製される。また、筐体114は、X線窓115及び冷却液L1が通る空洞116を有する。X線窓115は、陽極112が発生させたX線Rを通過させる。また、冷却液L1が通る空洞116は、熱電子Eの衝突によって発熱する陽極112を冷却する。更に、筐体114は、外面に、溝114aを有する。なお、溝114aについては後述する。また、固定部117a、固定部117b及び固定部117cは、回転フレーム16に対して着脱される。これにより、インサート11が回転フレーム16に対して着脱される。
【0044】
次に、
図4を用いて、ハウジング12について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るハウジング12の一例を示す図である。なお、
図4においては、後述するX線窓122及び放熱口123を含んだ平面におけるハウジング12の断面を示す。
図4に示すように、ハウジング12は、筐体121、X線窓122、放熱口123及び開口124を有する。また、ハウジング12は、インサート11及びステータコイル13を内部に収納することができる。
【0045】
筐体121は、内部にインサート11が配置された場合に、陽極112が発生させたX線Rを遮蔽することができる材料で作製される。例えば、筐体121は、鉛を含んだ金属により作製される。更に、筐体121は、内面に、溝121a及び溝121bを有する。なお、溝121a及び溝121bについては後述する。
【0046】
X線窓122は、陽極112が発生させ、X線窓115を通過したX線Rを通過させる。放熱口123は、後述する送風部14によってハウジング12内に流入し、インサート11を冷却した空気を外部に流出させる。開口124は、インサート11及びステータコイル13を筐体121内に出し入れしたり、送風部14を取り付けたりするためのスペースである。
【0047】
次に、
図5を用いて、送風部14について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る送風部14の一例を示す図である。なお、
図5においては、ファン141の回転軸に沿った平面における送風部14の断面を示す。
図5に示すように、送風部14は、ファン141と、溝142とを有する。ファン141は、羽根及びモータ等から構成される。例えば、ファン141は、電力の供給を受けて、モータが駆動して羽根が回転することにより、送風を行う。なお、溝142については後述する。
【0048】
ここで、送風部14が有する羽根は、陽極112が発生させたX線Rを遮蔽するものであってもよい。例えば、送風部14が有する複数の羽根は、X線Rを遮蔽することができる材料で作製されるとともに、陽極112から見て互いに重なるように構成される。一例を挙げると、送風部14が有する複数の羽根は、X線遮蔽金属を含んだ樹脂により作製される。ここで、X線遮蔽金属としては、例えば、鉛やタングステン等の金属を選択することができる。また、樹脂としては、耐熱性を有する任意の樹脂を選択することができる。例えば、送風部14が有する複数の羽根は、ポリエーテルサルフォン(polyethersulfone:PES)や、ポリサルフォン、ポリイミド等の樹脂により作成される。また、送風部14が有する複数の羽根は、耐熱性を有する樹脂であって、炭素繊維により強化した樹脂(CFPR:Carbon Fiber Reinforced Plastics)により作製されてもよい。
【0049】
以上、インサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14の各々について説明した。次に、
図6を用いて、インサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14の取付け状態及び使用状態について説明する。
図6は、第1の実施形態に係るインサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14の一例を示す図である。なお、
図6においては、回転軸Zr、X線窓115及びX線窓122を含んだ平面におけるハウジング12及びステータコイル13の断面と、インサート11及び送風部14の外観とを示す。
【0050】
ハウジング12は、回転フレーム16に対して固定される。例えば、ハウジング12は、図示しないボルトやナット等を用いて、回転フレーム16に対して固定される。ここで、ハウジング12は、
図6に示すように、回転フレーム16に対向する側と反対側に開口124が位置するように固定される。
【0051】
インサート11及びステータコイル13は、ハウジング12内に配置される。なお、インサート11は、熱電子Eが陽極112に衝突する位置(X線焦点)と、X線窓115と、X線窓122とが一列に並ぶようにして固定される。これにより、インサート11内で発生したX線Rが、ハウジング12の外部に位置する被検体Pに対して照射される。
【0052】
ここで、インサート11は、固定部117a、固定部117b及び固定部117cを介して、回転フレーム16に固定される。例えば、インサート11は、固定部117aが回転フレーム16におけるホース16a及びホース16bと接続され、固定部117bが回転フレーム16におけるケーブル16cと接続され、固定部117cが回転フレーム16におけるケーブル16dと接続されることにより、回転フレーム16に固定される。
【0053】
例えば、固定部117aと、ホース16a及びホース16bとは、ホースを接続して流体の流れを確保するコネクタの端子を有する。この場合、固定部117aの端子をホース16a及びホース16bの端子に押し付けることにより、固定部117aがホース16a及びホース16bと接続される。
【0054】
ここで、固定部117aと接続されたホース16aは、空洞116に冷却液L1を供給する。一例を挙げると、まず、
図2に示した冷却装置22が、ラジエターを用いて冷却した冷却液L1をホース16aに供給する。次に、ホース16aから固定部117aを介してインサート11に冷却液L1が供給され、空洞116は、冷却液L1を用いて陽極112を冷却する。その後、陽極112を冷却して温度が上昇した冷却液L1は、ホース16bを通って冷却装置22に送られ、再度冷却される。なお、固定部117aは、ホースを接続して冷却液L1の流れを確保することに加え、インサート11の重量を支える構造を有してもよい。
【0055】
また、例えば、固定部117b及びケーブル16cは、配線を接続するコネクタの端子を有する。この場合、固定部117bの端子をケーブル16cの端子に押し付けることにより、固定部117bがケーブル16cと接続される。ここで、固定部117bと接続されたケーブル16cは、例えば、ステータコイル13に電力を供給する。なお、固定部117bは、ケーブル16cとの間で電気的な接続を確保することに加え、インサート11の重量を支える構造を有してもよい。
【0056】
また、例えば、固定部117c及びケーブル16dは、配線を接続するコネクタの端子を有する。この場合、固定部117cの端子をケーブル16dの端子に押し付けることにより、固定部117cがケーブル16dと接続される。ここで、固定部117cと接続されたケーブル16dは、例えば、陰極111が熱電子Eの発生に用いる電力を供給する。なお、固定部117cは、ケーブル16dとの間で電気的な接続を確保することに加え、インサート11の重量を支える構造を有してもよい。
【0057】
ここで、固定部117a、固定部117b、固定部117c、ホース16a、ホース16b、ケーブル16c及びケーブル16dが有する端子は、対の端子に押し付けられることで接続され、対の端子から引き抜くことで接続が解除される。例えば、固定部117aの端子をホース16a及びホース16bの端子に押し付けることによって固定部117aとホース16a及びホース16bとが接続され、固定部117aの端子をホース16a及びホース16bの端子から引き抜くことによって固定部117aとホース16a及びホース16bとの接続が解除される。また、例えば、固定部117bの端子をケーブル16cの端子に押し付けることによって固定部117bとケーブル16cとが接続され、固定部117bの端子をケーブル16cの端子から引き抜くことによって固定部117bとケーブル16cとの接続が解除される。また、例えば、固定部117cの端子をケーブル16dの端子に押し付けることによって固定部117cとケーブル16dとが接続され、固定部117cの端子をケーブル16dの端子から引き抜くことによって固定部117cとケーブル16dとの接続が解除される。即ち、固定部117a、固定部117b及び固定部117cは、回転フレーム16に対して着脱される。
【0058】
なお、上述した固定部117a、固定部117b及び固定部117cは、特許請求の範囲における固定部の一例である。
図6に示したように、固定部117a、固定部117b及び固定部117cは、インサート11の一端に設けられ、インサート11を回転フレーム16に取り付ける。
【0059】
また、
図6においては、固定部117a、固定部117b及び固定部117cの3つの固定部を示したが、固定部の数は任意である。例えば、インサート11は、固定部117a、固定部117b及び固定部117cと同じ一端に、インサート11の重量を支える固定部を更に有する場合であってもよい。また、例えば、インサート11は、
図6における複数の固定部を集約してもよい。
【0060】
また、
図6においては、インサート11が、ハウジング12の筐体121を間に挟んで、回転フレーム16に固定される場合を示した。しかしながら、インサート11は、ハウジング12の筐体121を間に挟むことなく、回転フレーム16に直接的に固定される場合であってもよい。即ち、ハウジング12は、回転フレーム16と接する面を開口としてもよい。
【0061】
送風部14は、ハウジング12の開口124側において固定される。例えば、
図6に示すように、ハウジング12は、開口124側の内面に螺旋状の溝121bを有し、送風部14は、開口124側の内面に当接する面に螺旋状の溝142を有する。この場合、溝121bと溝142とが螺合することにより、送風部14がハウジング12に固定される。より具体的には、ハウジング12における開口124に対し、-Z方向側から送風部14を押し付けつつ回転させることで、雌ねじとしての溝121bと、雄ねじとしての溝142とが螺合し、送風部14がハウジング12に固定される。なお、
図6においては、ハウジング12の内面に溝121bが設けられ、送風部14の外面に溝142が設けられる場合を示すが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ハウジング12の外面に溝121bが設けられ、送風部14の内面に溝142が設けられる場合であってもよい。また、送風部14及びハウジング12は、溝121b及び溝142を有しないこととしてもよい。例えば、送風部14は、ボルトやナット等を用いて、ハウジング12の開口124側に固定されてもよい。
【0062】
更に、送風部14は、陽極112が発生させたX線Rを遮蔽するものであってもよい。例えば、送風部14は、空気を送り出す面及び空気を吸入する面の少なくとも一方に、空気の流れを許容しつつ、X線Rを遮蔽する部材を有する。かかる部材は、例えば、鉛を含んだ金属板により構成した複数の羽根(スラット)を、陽極112から見て互いに重なるように、かつ、羽根と羽根との間に空気が流れるための隙間を設けて構成される。
【0063】
図6を用いて説明したようにして、インサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14がそれぞれ取り付けられる。かかる取付け状態の下、インサート11はX線Rの照射を行う。また、インサート11がX線Rを発生させている間、冷却液L1が通る空洞116は、陽極112を冷却する。ここで、冷却液L1が通る空洞116による陽極112の冷却に加えて、インサート11全体としての冷却が必要となる場合がある。さらに、ステータコイル13からの発熱についても、冷却を行う必要がある。
【0064】
そこで、X線CT装置1においては、送風部14がハウジング12内に流入させる空気を用いて、インサート11及びステータコイル13の空冷を行う。例えば、送風部14がハウジング12内に流入させた空気は、
図7における矢印のように流れて、インサート11及びステータコイル13を冷却する。なお、
図7は、第1の実施形態におけるインサート11の空冷について説明するための図である。以下では、送風部14から放熱口123までの間における空気の流れが示す方向を、流れ方向Zfと記載する。即ち、流れ方向Zfは、
図7における矢印が示す方向であり、概ねZ方向と一致するものの、位置によって変化する方向である。
【0065】
具体的には、送風部14がハウジング12内に流入させた空気は、
図7に示すように、ハウジング12の内面と、インサート11及びステータコイル13の外面との間を流れ、インサート11及びステータコイル13を冷却した後、ハウジング12の放熱口123から外部に排出される。
【0066】
ここで、インサート11の筐体114は、
図7に示すように、空気の流れ方向Zfと直交する溝114aを有する。また、ハウジング12の筐体121は、
図7に示すように、空気の流れ方向Zfと直交する溝121aを有する。ハウジング12内を流れる空気は、空気の粘度及び流れる経路の断面積や形状等に応じて、層流又は乱流となって流れるが、流れる経路の壁面が粗い場合、壁面が滑らかである場合と比較して乱流となりやすい。即ち、
図7に示すように、溝114a及び溝121aが設けられている場合、送風部14により送風された空気は、容易に乱流となって、ハウジング12内を流れる。
【0067】
流れが乱流となっている場合、流れが層流となっている場合と比較して、空気の熱伝達係数が実質的に大きくなる。即ち、流れが乱流となっている場合、発熱するインサート11により温度が上昇したインサート11近傍の高温の空気と、インサート11から離れた位置にある低温の空気とが撹拌され、インサート11近傍に低温の空気が供給されるため、インサート11の抜熱が促進される。
【0068】
なお、インサート11及びハウジング12は、溝114a及び溝121aを有しない場合であってもよい。例えば、ハウジング12内を流れる空気は、流れる経路の断面積や形状等によっては、壁面が滑らかでも乱流となる場合がある。この場合、インサート11及びハウジング12は、溝114a及び溝121aを有することなく乱流を発生させ、インサート11を冷却することができる。
【0069】
上述したように、インサート11、ハウジング12、ステータコイル13及び送風部14は取り付けられて、X線Rの発生に使用される。ここで、インサート11における陽極112やベアリング113は消耗品であり、長く使用されれば次第に劣化する。そして、陽極112やベアリング113の劣化に起因してインサート11が故障した場合には、インサート11の交換が必要となる。以下、インサート11の交換について、説明する。
【0070】
まず、インサート11の交換作業を行う者(以下、作業者)は、
図8Aに示すように、開口124に設けられた送風部14を取り外す。例えば、作業者は、送風部14をハウジング12に固定した際と反対方向に送風部14を回転させることによって、
図8Aの矢印に示すように送風部14を取り外す。なお、
図8Aは、第1の実施形態に係るインサート11の交換手順の一例を示す図である。送風部14を取り外した後、作業者は、開口124からステータコイル13を引き抜く。
【0071】
次に、作業者は、
図8Bに示すように、開口124から、インサート11を引き抜く。ここで、固定部117a、固定部117b、固定部117c、ホース16a、ホース16b、ケーブル16c及びケーブル16dが有する端子は、例えば、対の端子から引き抜くことで接続が解除されるコネクタである。更に、固定部117a、固定部117b及び固定部117cは、インサート11における回転フレーム16側(
図8Bの+Z方向側)の一端に設けられている。従って、作業者は、
図8Bの-Z方向側にインサート11を引くことによって、インサート11を回転フレーム16から容易に取り外すことができる。なお、
図8Bは、第1の実施形態に係るインサート11の交換手順の一例を示す図である。
【0072】
その後、作業者は、取り外したインサート11とは別の新たなインサート11、或いは、取り外して修理したインサート11を、回転フレーム16に取り付ける。具体的には、作業者は、インサート11における固定部117a、固定部117b及び固定部117cが有する端子を、回転フレーム16におけるホース16a、ホース16b、ケーブル16c及びケーブル16dが有する端子に押し付けることで、インサート11を回転フレーム16に取り付ける。次に、作業者は、取り外したステータコイル13を、再度、ハウジング12内に配置する。そして、作業者は、取り外した送風部14を、再度、ハウジング12の開口124側に取り付ける。
【0073】
上述したように、第1の実施形態によれば、ハウジング12は、回転可能な回転フレーム16に固定され、回転フレーム16に対向する側の反対側に開口124を有する。インサート11は、ハウジング12内に配置され、一端に設けられた固定部を介して回転フレーム16に着脱可能に固定される。また、インサート11は、熱電子Eを発生する陰極111と、熱電子Eの衝突を受けてX線Rを発生する陽極112とを備える。ステータコイル13は、ハウジング12内に配置され、陽極112を回転させる。送風部14は、ハウジング12の開口124側に着脱可能に固定され、ハウジング12内に空気を流入させる。
【0074】
従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、ハウジング12の開口124側からインサート11を引き抜くことでインサート11を回転フレーム16から取り外し、ハウジング12内にインサート11を押し込むことでインサート11を回転フレーム16に取り付けることができる。即ち、X線CT装置1においては、ハウジング12が有する開口124を通して、インサート11を容易に交換することができる。
【0075】
また、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、インサート11を、送風部14がハウジング12内に流入させる空気によって空冷する。従って、X線CT装置1においては、インサート11の周囲を冷却液で満たした構造ではないため、インサート11を容易に交換することができる。
【0076】
更に、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、インサート11が故障した際にインサート11のみを容易に交換することができる。即ち、X線CT装置1においては、インサート11が故障した際に、ハウジング12と併せて交換する必要がない。従って、X線CT装置1は、インサート11の交換に際して、部品代を低く抑えることができる。
【0077】
また、インサート11の周囲を充たす冷却液や、ハウジング12と併せてインサート11を交換する場合と比較し、インサート11のみを交換する場合には、交換部品が軽くなる。従って、X線CT装置1は、交換作業を行う作業者の負担を軽減し、作業費用を低く抑えることができる。
【0078】
また、第1の実施形態に係るX線CT装置1において、ハウジング12は、陽極112から見て回転フレーム16側へのX線遮蔽を行う必要がない。即ち、回転フレーム16はアルミニウム等の金属材料で作製されており、回転フレーム16自体がX線遮蔽を行うため、ハウジング12は、回転フレーム16と接する面に鉛を用いる必要がない。或いは、ハウジング12は、回転フレーム16と接する面を開口としてもよい。従って、X線CT装置1は、鉛の使用量を低減して、回転部を軽量化するとともに、環境負荷を低減することができる。
【0079】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、インサート11の外面及びハウジング12の内面に、空気の流れ方向Zfと直交する溝が設けられる場合について説明した。これに対して、第2の実施形態では、インサート11の外面及びハウジング12の内面に、空気の流れ方向Zfに沿った溝を有する場合について説明する。なお、第2の実施形態に係る空気の流れ方向Zfに沿った溝は、空気の流れ方向Zfと直交する溝に加えて設けられてもよいし、空気の流れ方向Zfと直交する溝に代えて設けられてもよい。
【0080】
第2の実施形態に係るX線CT装置1は、
図1に示したX線CT装置1と同様の構成を有する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、
図1と同一の符号を付し、説明を省略する。以下、
図9を用いて、インサート11及びハウジング12が有する溝について具体的に説明する。
図9は、第2の実施形態に係る溝の形状の一例を示す図である。
【0081】
図9の左図は、
図6に示した溝114a及び溝121aの一部を拡大した図である。送風部14がハウジング12内への送風を行なっている場合、
図9の左図の矢印(空気の流れ方向Zf)に示す方向に空気が流れる。即ち、溝114a及び溝121aは、空気の流れ方向Zfと直交する溝である。具体的には、溝114aは、尾根R11と谷V11とを交互に繰り返すようにして構成される。また、溝121aは、尾根R12と谷V12とを交互に繰り返すようにして構成される。
【0082】
図9の右図は、空気の流れ方向Zfに直交する平面における、溝114a及び溝121aの断面図である。
図9の右図においては、尾根R11と谷V11とからなる溝114a、及び、尾根R12と谷V12とからなる溝121aを破線で示し、尾根R21と谷V21とからなる溝114b、及び、尾根R22と谷V22とからなる溝121cを実線で示す。
図9の右下図に示すように、溝114bは、尾根R11と谷V11とからなる溝114aと交差するように形成される。また、
図9の右上図に示すように、溝121cは、尾根R12と谷V12とからなる溝121aと交差するように形成される。
【0083】
具体的には、インサート11が外面に有する溝114bは、
図9の右下図に示すように、空気の流れ方向Zfに沿った溝であり、尾根R21と谷V21とを交互に繰り返すようにして構成される。また、ハウジング12が内面に有する溝121cは、空気の流れ方向Zfに沿った溝であり、尾根R22と谷V22とを交互に繰り返すようにして構成される。
【0084】
ここで、溝114bには、冷却液L21が充填される。また、溝121cには、冷却液L22が充填される。ここで、冷却液L21及び冷却液L22は、同種の液体でもよいし、異なる液体でもよい。冷却液L21及び冷却液L22としては、例えば、ホース16aを通って送られる冷却液L1の一部を利用してもよいし、冷却液L1と別に、ホース16aと異なる経路で送られる液体を用いてもよい。
【0085】
一例を挙げると、まず、ホース16aを通って送られる冷却液L1の一部が、固定部117aにおいて分流され、インサート11の外面に冷却液L21として付着する。次に、冷却液L21は、溝114bの中に入り込む。ここで、冷却液L21は、毛細管現象によって溝114bの中を移動し、インサート11の外面において拡散する。
【0086】
なお、溝114bは、溝114bにおいて毛細管現象が発生するように、溝の幅W1が決定される。また、ぬれ性が良くなるように、冷却液L21の種類に応じてインサート11(筐体114)の材質が決定され、或いは、インサート11(筐体114)の材質に応じて冷却液L21の種類が決定される。また、
図9に示すように、溝114bを溝114aよりも深く形成することにより、インサート11の外面に溝114a及び溝114bの双方を交差するように設けても、冷却液L21は、溝114aによって途絶されることなく、溝114bの中を移動することができる。
【0087】
冷却液L21は、インサート11の外面において拡散しつつ、蒸発する。この際、冷却液L21は、インサート11から気化熱を吸収し、インサート11を冷却する。即ち、溝114bにより、インサート11の抜熱が促進される。
【0088】
また、一例を挙げると、まず、放熱口123を通ってハウジング12の内部に到達するホースを介して、ハウジング12内部に冷却液L22が送られ、ハウジング12の内面に冷却液L22が付着する。次に、冷却液L22は、溝121cの中に入り込む。ここで、冷却液L22は、毛細管現象によって溝121cの中を移動し、ハウジング12の内面において拡散する。
【0089】
なお、溝121cは、溝121cにおいて毛細管現象が発生するように、溝の幅W2が決定される。また、ぬれ性が良くなるように、冷却液L22の種類に応じてハウジング12(筐体121)の材質が決定され、或いは、ハウジング12(筐体121)の材質に応じて冷却液L22の種類が決定される。また、
図9に示すように、溝121cを溝121aよりも深く形成することにより、ハウジング12の内面に溝121a及び溝121cの双方を交差するように設けても、冷却液L22は、溝121aによって途絶されることなく、溝121cの中を移動することができる。
【0090】
冷却液L22は、ハウジング12の内面において拡散しつつ、蒸発する。この際、冷却液L22は、ハウジング12から気化熱を吸収し、ハウジング12を冷却する。更に、ハウジング12が低温となることにより、ハウジング12内を流れる空気が冷却され、インサート11近傍にも低温の空気が供給される。即ち、溝121cにより、インサート11の抜熱が促進される。
【0091】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0092】
上述した実施形態では、ハウジング12の筐体121が、鉛により作製されるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、筐体121は、耐熱性を備えた樹脂により作製されてもよい。かかる樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォンや、ポリサルフォン、ポリイミド等が挙げられる。これにより、筐体121の加工が容易になり、溝121aや溝121b、溝121c等を容易に設けることができる。なお、この場合、筐体121は、溝121aや溝121b、溝121c等を有するPESと、X線遮蔽を行う鉛との二層構造であっても良い。
【0093】
また、例えば、筐体121は、X線遮蔽金属を含んだ樹脂により作製されてもよい。これにより、筐体121は、陽極112が発生させたX線Rを遮蔽することができる。ここで、X線遮蔽金属としては、例えば、鉛やタングステン等の金属を選択することができる。また、樹脂としては、耐熱性を有する任意の樹脂を選択することができる。例えば、筐体121は、ポリエーテルサルフォンや、ポリサルフォン、ポリイミド等の樹脂により作成される。また、筐体121は、耐熱性を有する樹脂であって、炭素繊維により強化した樹脂(CFPR)により作製されてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、ハウジング12が、回転フレーム16(架台ベース)に対抗する側の反対側に開口124を有する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ハウジング12が円柱形状を有する場合において、ハウジング12はその側面に開口124を有してもよい。一例を挙げると、ハウジング12は、
図4に示したX線窓122を側面に有するとともに、X線窓122の反対側の側面に開口124を有してもよい。
【0095】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、インサートの交換を容易にすることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
1 X線CT装置
11 インサート
111 陰極
112 陽極
117a 固定部
117b 固定部
117c 固定部
12 ハウジング
13 ステータコイル
14 送風部
16 回転フレーム