(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/24 20160101AFI20221108BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
B60J10/24
B60J10/86
(21)【出願番号】P 2018213713
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 良太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利文
(72)【発明者】
【氏名】村上 寛和
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-223435(JP,A)
【文献】特開平09-267637(JP,A)
【文献】特開2010-208514(JP,A)
【文献】実開平04-037053(JP,U)
【文献】実開平03-009921(JP,U)
【文献】特開平01-109145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0113482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアにおける外周部に沿って取り付けられる取付基部と、
前記ドアを閉じる過程で、前記自動車のボディにおけるドア開口部の周縁に弾接する中空シール部と、を備え、
前記中空シール部は、前記ドア開口部の前記周縁に直接弾接する車内側壁と、該車内側壁のドア外周側の端部から車外側に延設する車外側壁と、を有し、
前記取付基部と、前記車外側壁とは、車外側連結壁を介して連結されており、
前記取付基部と、前記車内側壁とは、車内側連結壁を介して連結されており、
前記車内側連結壁は、ドア外周側部分が車内側に屈折した車内側屈折部を有し、
前記車内側屈折部は、前記車内側壁のドア中央側の端部からドア中央側に凸となるように湾曲し、連続してドア外周側に凸となるように湾曲しながら、車内側から車外側に向けて延設されており、
前記車外側壁の車内側の端部から、車外側の端部に至るまでの、前記車外側壁の全長において、前記車内側の端部から車外側に向かって、曲率を変えた湾曲点が、少なくとも1箇所、設定され、
前記車外側壁の車外側の端部から前記湾曲点までの長さをX、前記湾曲点から前記車外側壁の車内側の端部までの長さをY、とするとき、X:Yが、おおよそ1:2の関係を満たし、
前記ドア開口部の周縁に前記中空シール部が弾接していない状態において、前記車内側壁の前記ドア外周側の端部は、前記車内側壁の前記ドア中央側の端部よりも、車内側に位置している、ことを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項2】
前記車外側連結壁は、ドア外周側の端部から車内側に屈折した車外側屈折部を有し、
該車外側屈折部に前記車外側壁が連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項3】
前記車内側連結壁と前記車外側連結壁とは、中央連結壁で連結されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項4】
前記車外側壁は、ドア外周側に凸に湾曲する円弧状である、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のドアウェザーストリップ。
【請求項5】
前記車内側壁の長さと、前記車外側壁の長さとが同程度の長さである、ことを特徴とする請求項1から
4の何れか1項に記載のドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアの外周部におけるシール性や遮音性などの向上を図るために、様々な構造を有するドアウェザーストリップの研究・開発が進められている。このような従来のウェザーストリップは、大きく分けてベンディングタイプのウェザーストリップ(特許文献1参照)と、コンプレッションタイプのウェザーストリップ(特許文献2参照)との2種類のウェザーストリップに分けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-18818号公報(1983年2月5日公開)
【文献】特開2003-175729号公報(2003年6月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のベンディングタイプのウェザーストリップには、中空シール部の撓み時における中空領域の面積の変化量が小さいというメリットはあるものの、中空シール部の撓み時における滑り量が大きく動的エネルギーが大きくなる。一方、前記従来のコンプレッションタイプのウェザーストリップには、中空シール部の撓み時における滑り量が小さいというメリットはあるものの、中空シール部の撓み時における中空領域の面積の変化量が多いため、中空内エアタイトにより動的エネルギーが大きくなる。
【0005】
動的エネルギーが大きくなると、ドアを閉じる際にウェザーストリップに生じる反発力が大きくなることから、従来のベンディングタイプのウェザーストリップおよび従来のコンプレッションタイプのウェザーストリップのいずれについても、ドアの閉じ易さを示すドア閉じ性が悪化するという問題点があった。
【0006】
ここで、動的エネルギーとは、速い速度(例えば1.2m/sec)でドアを閉じる際における、ウェザーストリップがドアに対して反撥するエネルギーのことである。一方、静的エネルギーとは、遅い速度(例えば20mm/min)でドアを閉じる際における、ウェザーストリップがドアに対して反撥するエネルギーのことである。
【0007】
また、滑り量とは、ドアのロックセクションおよびサイドシルセクションの各位置における中空シール部の、ドア開口部の周縁に対する当たり始めの位置が、基準圧縮状態に至るまでにズレる大きさを示す量である。
【0008】
また、中空内エアタイトとは、ウェザーストリップの中空の両端部を塞いだ場合において、速い速度(例えば1.2m/sec)でドアを閉じる際に、ウェザーストリップの中空内の空気が、圧縮に対して反撥することである。
【0009】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来品よりも良好なドア閉じ性を有するドアウェザーストリップを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、自動車のドアにおける外周部に沿って取り付けられる取付基部と、前記ドアを閉じる過程で、前記自動車のボディにおけるドア開口部の周縁に弾接する中空シール部と、を備え、前記中空シール部は、前記ドア開口部の前記周縁に直接弾接する車内側壁と、該車内側壁のドア外周側の端部から車外側に延設する車外側壁とを有し、前記取付基部と、前記車外側壁とは、車外側連結壁を介して連結されており、前記取付基部と、前記車内側壁とは、車内側連結壁を介して連結されており、前記車内側連結壁は、ドア外周側部分が車内側に屈折した車内側屈折部を有し、前記車内側屈折部は、前記車内側壁のドア中央側の端部からドア中央側に凸となるように湾曲し、連続してドア外周側に凸となるように湾曲しながら、車内側から車外側に向けて延設されており、前記ドア開口部の周縁に前記中空シール部が弾接していない状態において、前記車内側壁の前記ドア外周側の端部は、前記車内側壁の前記ドア中央側の端部よりも、車内側に位置している。
【0011】
前記構成によれば、取付基部と車内側壁とが、車内側連結壁を介して連結されている。また、車内側連結壁は、ドア外周側部分が車内側に屈折した車内側屈折部を有し、前記車内側屈折部は、車内側壁のドア中央側の端部からドア中央側に凸となるように湾曲し、連続してドア外周側に凸となるように湾曲しながら、車内側から車外側に向けて延設されている。これにより、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも中空シール部における車内側の断面周長が長くなる。そのため、中空シール部がドア開口部の周縁に当たり始めてからドアが完全に閉じた状態になるまでの過程において、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも、ドアの車内側への侵入の程度に応じて中空シール部の車内側壁が撓み易くなる。
【0012】
よって、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも、中空シール部の、ドア開口部の周縁に対する当たり始めの位置がずれることを抑制することができ、中空シール部の撓み時における滑り量を小さくすることができる。
【0013】
また、前記構成によれば、車内側連結壁における、車内側壁のドア中央側の端部からドア中央側に凸となるように湾曲した部分が、ドア開口部の周縁に中空シール部が弾接する際に折れ点として機能する。さらに、ドア開口部の周縁に中空シール部が弾接していない状態において、車内側壁のドア外周側の端部は、車内側壁のドア中央側の端部よりも、車内側に位置している。
【0014】
そのため、中空シール部がドア開口部の周縁に当たり始めてからドアが完全に閉じた状態になるまでの過程において、車内側壁が折れ点を起点として車外側に倒れ込むような挙動を示す。よって、従来のコンプレッションタイプのウェザーストリップよりも中空シール部の車内側壁の撓みを抑制することができ、中空シール部の撓み時における中空領域の面積の変化量を小さくすることができる。以上により、従来品よりも動的エネルギーの増加が抑制され、良好なドア閉じ性を有するドアウェザーストリップを実現することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、前記車外側連結壁は、ドア外周側の端部から車内側に屈折した車外側屈折部を有し、該車外側屈折部に前記車外側壁が連結されていることが好ましい。前記構成によれば、車外側屈折部に前記車外側壁が連結された部分もドア開口部の周縁に中空シール部が弾接する際に、折れ点として機能するため、断面形状(中空シール部)の撓み時における中空領域の面積の変化量をより小さくすることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、前記車内側連結壁と前記車外側連結壁とは、中央連結壁で連結されていることが好ましい。前記構成によれば、車内側連結壁と車外側連結壁とが、中央連結壁により位置規制されることにより、車内側の折れ点と車外側の折れ点とがともに、より機能を発揮することができるため、ドア開口部の周縁に中空シール部が弾接する際に、断面形状(中空シール部)の撓み時における中空領域の面積の変化量をより小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、前記車外側壁は、ドア外周側に凸に湾曲する円弧状であることが好ましい。前記構成によれば、車内側壁がドアに弾接したときに、車外側壁の一部分に応力が集中し、ドア外周側に屈曲して、撓みやすくなるため、従来品よりも、動的エネルギーの増加がより抑制される。
【0018】
また、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、前記車外側壁の車内側の端部から、車外側の端部に至るまでの、前記車外側壁の全長において、前記車内側の端部から車外側に向かって、全長の1/4から3/4までの長さまでの区間に、曲率を変えた湾曲点が、少なくとも1箇所、設定されていることが好ましい。前記構成によれば、湾曲点も明確な折れ点になるため、断面形状の撓み時の中空内の面積の変化量をさらに小さくすることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るドアウェザーストリップは、前記車内側壁の長さと、前記車外側壁の長さとが同程度の長さであることが好ましい。前記構成によれば、車内側壁と車外側壁とが、元の形状を保ちながら変形し易くなるため、断面形状の撓み時の中空内の面積の変化量をさらに小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、従来品よりも良好なドア閉じ性を有するドアウェザーストリップを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係るドアウェザーストリップが取り付けられる自動車の外観を示す斜視図であり、(b)は、フロントドアの外周部に閉ループ状に装着されるウェザーストリップの全体形状を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の実施の一形態に係るウェザーストリップの断面の構造を示す断面図である。
【
図3】ベンディングタイプ、コンプレッションタイプ、および本発明の実施例に係る各ウェザーストリップの物理的特性の比較結果を示す表である。
【
図4】(a)は、ベンディングタイプ、コンプレッションタイプ、および本発明の実施例に係る各ウェザーストリップのエネルギー比率の算出結果を示す表であり、(b)は、前記各ウェザーストリップのエネルギー比率の比較結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図4に基づき、本発明の実施の一形態に係るドアウェザーストリップ10について説明する。
【0023】
〔ドアウェザーストリップの取り付け例〕
図1を参照して、本発明に係るドアウェザーストリップ10が取り付けられた自動車1における、ドア開口部2の周辺の構造について説明する。
図1の(a)に示すように、自動車1には、フロントドア3が設けられている。また、自動車1のボディにおける、ドア閉時においてフロントドア3がヒンジ(図示は省略)によりボディに一体化される箇所にはドア開口部2が形成されている。フロントドア3は、ドア開口部2を閉じるための開閉可能な自動車部品である。
【0024】
また、フロントドア3のドア外周部(外周部)3aには、その全周にわたって、閉ループ状にドアウェザーストリップ10が取り付けられている〔
図1の(b)参照〕。ドアウェザーストリップ10は、ドア開口部2の周縁2aとドア外周部3aとの間をシールするための自動車部品である。ドア外周部3aに取り付けられたドアウェザーストリップ10が、ドア開口部2の周縁2aに弾接することで、ドア開口部2の周縁2aとドア外周部3aとの間がシールされる。
【0025】
また、通常、ドアウェザーストリップ10は少なくとも一種類以上の押出成形部と少なくとも一種類以上の型成形部の一体化部品として形成されている。ドアウェザーストリップ10は、ゴム様弾性体の発泡体によって形成されている。ゴムの材料としては、例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)を用いることができる。但し、成形材料として、熱可塑性エストラマー(オレフィン系またはスチレン系熱可塑性エストラマー)、その他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を用いてもよい。なお、ドアウェザーストリップ10の部分ごとに異なる材料を用いてもよい。また、部分的に、または全体を非発泡材で構成してもよい。
【0026】
図1の(b)に示すように、ドアウェザーストリップ10は、ルーフセクション、ヒンジセクション、サイドシルセクション、またはロックセクションにおいて、ドア外周部3aにおける各セクションの形状に応じた位置に取り付けられる。
【0027】
なお、ドア開口部2の周縁2aの上側の部位を、ルーフ側の部位と言い、下側の部位をサイドシル側の部位と言い、前側の部位をヒンジ側の部位と言い、後側の部位をロック側の部位と言う。
【0028】
また、同様に、ドア外周部3aの上側の部位を、ルーフ側の部位と言い、下側の部位をサイドシル側の部位と言い、前側の部位をヒンジ側の部位と言い、後側の部位をロック側の部位と言う。ドアウェザーストリップ10は、ドア外周部3aの取り付けられる部位に応じて、ルーフ側、サイドシル側、ヒンジ側、およびロック側の各部位に対応する部分に分けられる。
【0029】
また、ドア開口部2の周縁2aが弾接する、ドアウェザーストリップ10における部分は、ドアウェザーストリップ10が取り付けられるドア外周部3aの位置によって変化する。
【0030】
上述したドアウェザーストリップ10の取り付け態様は、あくまで一例であり、ドアウェザーストリップ10を、例えば、自動車1のリアドア4の外周部(図示せず)に取り付けてもよい。また、例えば、自動車1に設けられたバックドアまたは観音開きドア(車両サイド部に設けられたフロントドアやリアドアと同様な場合)の外周部(図示せず)に、ドアウェザーストリップ10を取り付けてもよい。換言すれば、ドアウェザーストリップ10をはじめとする、本発明に係るドアウェザーストリップの適用対象となるドア等の開閉体の種類、およびドア外周部の構造等については、特に限定されない。
【0031】
また、ドアウェザーストリップ10は、ドア外周部3aの全周にわたって取り付けられる必要はなく、ドア外周部3aの一部にのみ取り付けられてもよい。例えば、ドア外周部3aにおけるサイドシルセクションのみに取り付けられてもよい。
【0032】
〔ドアウェザーストリップの構造〕
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るドアウェザーストリップ10の構造について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係るドアウェザーストリップ10は、取付基部11、中空シール部12、および背面シールリップ部14を備える。
【0033】
取付基部11と、中空シール部12における車内側に形成された車内側壁12aとは、取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁16aを介して連結されている。また、車内側連結壁16aは、ドア外周側部分が車内側に屈折した車内側屈折部16cを備えている。
【0034】
車内側壁12aは、ドアウェザーストリップ10の延伸する方向に垂直な断面が、車内側壁12aのドア中央側の端部Hからドア外周側の端部Pの位置まで、略直線状に延伸している。
【0035】
なお、本明細書において、取付基部11がドア外周部3aの取付面3a-1に当接する面の側を、ドアウェザーストリップ10における“ドア中央側”と呼び、反対側を“ドア外周側”と呼ぶこととして、定義する。
【0036】
取付基部11は、自動車1におけるドア外周部3aの取付面3a-1に当接して固定される部分である。取付基部11における、ドア外周部3aの取付面3a-1に当接する面は、略平板状に形成される。このような形状であれば、ドア外周部3aとドアウェザーストリップ10との間に隙間がなくなり、高いシール性および遮音性を実現できる。
【0037】
中空シール部12は、取付基部11と押出一体成形される部分である。中空シール部12の内部には、中空部15が形成される。これにより、ドアを閉じる過程においてドア開口部2の周縁2aと中空シール部12とが弾接した際に、中空シール部12が撓み変形することができる。そのため、ドアウェザーストリップ10によって、フロントドア3を閉める際の衝撃が緩和され、かつ、ドア外周部3aとドア開口部2の周縁2aとが良好にシールされる。
【0038】
上述したように、取付基部11と中空シール部12における車内側に形成された車内側壁12aとは、取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された車内側連結壁16aを介して連結されている。また、車内側連結壁16aは、ドア外周側部分が車内側に屈折した車内側屈折部16cを備えており、車内側壁12aのドア中央側の端部Hと、連結している。
【0039】
車内側屈折部16cは、ドア外周部3aの取付面3a-1に対向する、ドア開口部2の周縁2aにおける第1面2a-1よりもドア中央側に位置させている。また、車内側屈折部16cは、ドアウェザーストリップ10における、少なくともドア開口部2の周縁2aのサイドシル側(サイドシルセクション)およびロック側(ロックセクション)と対応する部位に取付されている。
【0040】
また、車内側屈折部16cは、車内側壁12aのドア中央側の端部Hとの連結箇所からドア中央側に凸となるように湾曲し、連続してドア外周側に凸となるように湾曲しながら、車内側から車外側に向けて延設されている。
【0041】
これにより、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも中空シール部12における車内側の断面周長が長くなる。そのため、中空シール部12がドア開口部2の周縁2aに当たり始めてからドアが完全に閉じた状態になるまでの過程において、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも、ドアの車内側への侵入の程度に応じて中空シール部12の車内側壁12aが撓み易くなる。
【0042】
よって、従来のベンディングタイプのウェザーストリップよりも、中空シール部12の、ドア開口部2の周縁2aに対する当たり始めの位置がずれることを抑制することができ、中空シール部12の撓み時における滑り量を小さくすることができる。
【0043】
また、車内側屈折部16cにおける、車内側壁12aのドア中央側の端部Hとの連結箇所からドア中央側に凸となるように湾曲した部分が、ドア開口部2の周縁2aに中空シール部12が当たる際に折れ点として機能する。さらに、ドア開口部2の周縁2aに中空シール部12が弾接していない状態において、車内側壁12aのドア外周側の端部Pは、車内側壁12aのドア中央側の端部Hよりも、車内側に位置している。
【0044】
そのため、中空シール部12がドア開口部2の周縁2aに当たり始めてからドアが完全に閉じた状態になるまでの過程において、車内側壁12aが折れ点を起点として車外側に倒れ込むような挙動を示す。よって、従来のコンプレッションタイプのウェザーストリップよりも中空シール部12の車内側壁12aの撓みを抑制することができ、中空シール部12の撓み時における中空領域の面積の変化量を小さくすることができる。以上により、従来品よりも動的エネルギーの増加が抑制され、良好なドア閉じ性を有するドアウェザーストリップ10を実現することができる。
【0045】
また、車外側壁12bは、ドア外周側に凸に湾曲する円弧状をしている。そのため、車内側壁12aがドアに弾接したときに、車外側壁12bの一部分に応力が集中し、ドア外周側に屈曲して、撓みやすくなるため、従来品よりも、動的エネルギーの増加がより抑制される。
【0046】
次に、背面シールリップ部14の配置位置は、特に限定されないが、ドア外周部3aの取付面3a-1に対向する、ドア開口部2の周縁2aにおける第1面2a-1よりもドア外周側にずれた位置にあることが好ましい。このように、背面シールリップ部14の位置を第1面2a-1よりもドア外周側に位置させることで、ドアを閉じる過程において中空シール部12が撓み変形する際に、取付基部11の車内側の一端が浮く可能性が少なくなる。
【0047】
中央連結壁17は、中空シール部12と押出一体成形される。中央連結壁17は、(取付基部11のドア外周側面の車内側に連結された)車内側連結壁16aの車外側面と、車外側連結壁16bの車内側面と(より具体的には車外側連結壁16bのドア外周側の端部から車内側に屈折した車外側屈折部16dのドア中央側面)に連結される。また、中央連結壁17により中空部15がシール用中空部15aおよびクリップ取付用中空部15bに分割される。
【0048】
中央連結壁17が形成されることにより、ドアを閉じる過程において、中空シール部12がドア開口部2の周縁2aと弾接する際に、中空シール部12が、取付基部11との境界の近辺から大きく撓み、ドアウェザーストリップ10が過剰に潰れることが抑制される。すなわち、中央連結壁17によって、主に撓み変形が生じる中空シール部12の大きさが、シール用中空部15aを囲む範囲まで狭くなる。
【0049】
クリップ取付用中空部15bを囲む範囲については、中央連結壁17が車内側連結壁16aおよび車外側連結壁16bを支持することによって、撓み変形が抑制される。これにより、中空シール部12とドアウェザーストリップ10が過剰に潰れることによる、シール性および遮音性の低減を抑制できる。
【0050】
次に、ドアウェザーストリップ10においては、車外側壁12bの車内側の端部Pから車外側の端部Tに至るまでの、車外側壁12bの全長において、前記車内側の端部Pから前記車外側の端部Tに向かって、全長の1/4から3/4までの長さまでの区間に、曲率を変えた(より具体的には、曲率を他の部位よりも小さくした)湾曲点Wが、少なくとも1箇所、設定されていることが好ましい。これにより、湾曲点Wが明確な折れ点になるため、断面形状の撓み時の中空内の面積の変化量をより小さくすることができる。なお、車外側壁12bの全長は、車外側壁12bの車内側の端部Pの位置から車外側壁12bの車外側の端部Tまでの長さである。
【0051】
なお、ドアウェザーストリップ10においては、車外側壁12bの車外側の端部Tから湾曲点Wまでの長さをX、湾曲点Wから頂点Pまでの長さをY、頂点Pから端部Hまでの長さをZとするとき、X:Y:Zが、おおよそ1:2:3の関係を満たすことがより好ましい。また、ドアウェザーストリップ10においては、車内側壁12aの長さと、車外側壁12bの長さとが同程度の長さであることが好ましい。これにより、車内側壁12aと車外側壁12bとが、元の形状を保ちながら変形し易くなるため、断面形状の撓み時の中空内の面積の変化量をより小さくすることができる。
【0052】
〔物理的特性の比較結果〕
次に、
図3に基づき、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102、および本発明の実施例のドアウェザーストリップ10の物理的特性の比較結果について説明する。(a)~(c)は、それぞれ、ドアウェザーストリップ101、ドアウェザーストリップ102およびドアウェザーストリップ10の物理的特性を示す。
【0053】
まず、中空シール部12の設計基準撓み時における滑り量(A)(mm)については、ドアウェザーストリップ10の滑り量(A)は0.05mmであり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101の滑り量(A)の1.00mm、およびコンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の滑り量(A)の0.20mmの何れよりも小さくなっている。すなわち、本実施例のドアウェザーストリップ10によれば、従来品よりも中空シール部12の滑り量(A)を小さくすることができることが判明した。
【0054】
次に、滑り量(A)に伴う、静的エネルギー(B)と動的エネルギー(C)とを測定し、その比率である静動比(D=C/B-1)を算出した。なお、ここで動的エネルギー(C)の測定は、中空シール部の両端を塞がずに(エアタイト無)測定した。
【0055】
結果は、ドアウェザーストリップ10の滑り量(A)にともなうエネルギー静動比(D=C/B-1)は54%であり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101の滑り量(A)に伴うエネルギー静動比(D=C/B-1)は88%であり、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の滑り量(A)に伴うエネルギー静動比(D=C/B-1)は49%であった。
【0056】
すなわち、本実施例のドアウェザーストリップ10によれば、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102には、わずかにおよばないものの、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101よりも中空シール部12の滑り量(A)に伴うエネルギー静動比(D=C/B-1)を小さくすることができることが判明した。
【0057】
次に、撓み前における中空内の面積(E)(mm2)と、撓み後における中空内の面積(F)(mm2)を測定し、その変化量(G=E-F)(mm2)を算出した。
【0058】
なお、ここで中空内の面積変化を測定する条件は、動的で、中空シール部の両端を塞がずに(エアタイト無)測定した。
【0059】
結果は、ドアウェザーストリップ10の変化量(G=E-F)は11.4mm2であり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101の変化量(G=E-F)の15.5mm2、およびコンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の変化量(G=E-F)の35.9mm2の何れよりも小さくなっている。すなわち、本実施例のドアウェザーストリップ10によれば、従来品よりも中空シール部12の撓み時における中空領域の面積の変化量を小さくすることができることが判明した。
【0060】
また、それぞれの中空内面積の変化率(H=1-F/E)は、ドアウェザーストリップ10の変化率(H=1-F/E)は14.6であり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101の変化率(H=1-F/E)は14.8であり、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の変化率(H=1-F/E)は25.4であった。すなわち、ドアウェザーストリップ10は、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101と同等で、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102よりも小さくなっていることが判明した。
【0061】
次に、エネルギーの変化に対する、中空内面積の変化による影響の度合いを確認するため、動的エネルギー(エアタイト有)(I)を測定し、滑り量(A)に伴うエネルギーの確認時に測定済の動的エネルギー(エアタイト無)(C)の測定値を使用して、エアタイト比(J=I/C-1)を算出した。
【0062】
なお、ここで動的エネルギー(エアタイト有)(I)の測定は、中空シール部12の両端を塞いで(エアタイト有)測定した。
【0063】
結果は、ドアウェザーストリップ10のエアタイト比(J=I/C-1)は32%であり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101のエアタイト比(J=I/C-1)は27%であり、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102のエアタイト比(J=I/C-1)は100%であった。すなわち、本実施例のドアウェザーストリップ10によれば、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101には、わずかに及ばないものの、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102よりもエアタイト比(J=I/C-1)を小さくすることができることが判明した。
【0064】
〔エネルギー比率の比較結果〕
次に、
図3および
図4に基づき、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102、および本発明の実施例のドアウェザーストリップ10のエネルギー比率の比較結果について説明する。
【0065】
図4の(a)は、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101、コンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102、および本発明の実施例のドアウェザーストリップ10の算出結果を示す表である。
【0066】
まず、ここで、
図3に示した静的エネルギー(B)の測定値は、断面のタイプによって、差が存在するので、比較可能にするため、
図4に示すように、それぞれの静的エネルギー(B)の測定値を、静的エネルギーのエネルギー比率(B´)として、それぞれを100%として、読み替えた。
【0067】
次に、ドアウェザーストリップ101の場合、静的エネルギーのエネルギー比率(B´)を100%とするとき、滑り量の静動比のエネルギー比率(D=C/B-1)は、88%であり、中空内面積のエアタイト比のエネルギー比率(J=I/C-1)は、27%であり、各エネルギー比率の合計(T=B´+D+J)は、215%となった。
【0068】
また、ドアウェザーストリップ102の場合、静的エネルギーのエネルギー比率(B´)を100%とするとき、滑り量の静動比のエネルギー比率(D=C/B-1)は、49%であり、中空内面積のエアタイト比のエネルギー比率(J=I/C-1)は、100%であり、各エネルギー比率の合計(T=B´+D+J)は、249%となった。
【0069】
次に、本実施例のドアウェザーストリップ10の場合、静的エネルギーのエネルギー比率(B´)を100%とするとき、滑り量の静動比のエネルギー比率(D=C/B-1)は、54%であり、中空内面積のエアタイト比のエネルギー比率(J=I/C-1)は、32%であり、各エネルギー比率の合計(T=B´+D+J)は、186%となった。
図4の(b)は、以上のエネルギー比率の比較結果をグラフ化したものである。
【0070】
以上のように、エネルギー比率の合計(T=B´+D+J)については、ドアウェザーストリップ10の合計は186%であり、ベンディングタイプのドアウェザーストリップ101の合計の215%、およびコンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の合計の249%の何れよりも小さくなっている。
【0071】
これにより、本実施例のドアウェザーストリップ10は、中空シール部12の撓み時における滑り量と、および中空シール部12の撓み時における中空領域の面積の変化量の両方の観点を加算した、より実車に近い条件化において、動的エネルギーが良好であることが判明した。
【0072】
つまり、測定結果および算出結果から、従来公知のベンディングタイプのドアウェザーストリップ101とコンプレッションタイプのドアウェザーストリップ102の両方の良い部分を、本実施例のドアウェザーストリップ10は盛り込んでいると言うことができる。すなわち、ドアウェザーストリップ10によれば、従来品よりも動的エネルギーの増加が抑制され、良好なドア閉じ性を有するドアウェザーストリップ10を実現することができる。
【0073】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 自動車
2 ドア開口部
2a 周縁
2a-1 第1面
3 フロントドア
3a ドア外周部
3a-1 取付面
4 リアドア
10 ドアウェザーストリップ
11 取付基部
12 中空シール部
12a 車内側壁
12b 車外側壁
14 背面シールリップ部
15 中空部
15a シール用中空部
15b クリップ取付用中空部
16a 車内側連結壁
16b 車外側連結壁
16c 車内側屈折部
16d 車外側屈折部
17 中央連結壁