(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20221108BHJP
H02K 5/00 20060101ALI20221108BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K5/00 B
G01D5/245 110X
(21)【出願番号】P 2018217408
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-114209(JP,A)
【文献】特開2012-112707(JP,A)
【文献】特開2018-042332(JP,A)
【文献】特開2015-021741(JP,A)
【文献】特開2010-060488(JP,A)
【文献】実開平02-150586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00-11/40
H02K 5/00- 5/26
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極とS極とが1極ずつ着磁された第1磁石と、N極とS極とが複数着磁された第2磁石と、を有し、前記第1磁石および前記第2磁石の両方の磁石と共に回転可能な磁石ホルダと、
前記磁石ホルダの回転軸線方向において前記第1磁石と対向して設けられた第1感磁素子と、前記回転軸線方向において前記第2磁石と対向して設けられた第2感磁素子とを実装した基板と、
を備え、
前記第2感磁素子は、前記第1感磁素子よりも前記磁石側に向けて突出し
、
前記回転軸線方向における前記磁石側において前記基板を覆う基板ホルダを備え、
前記基板は、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子のグランド端子と接続されるシグナルグランドを有し、
前記基板ホルダは、前記回転軸線方向から見た前記第2感磁素子の位置に開口部を有し、
前記開口部は、前記回転軸線方向における厚みが前記基板ホルダよりも薄いシールド部材で覆われ、
前記基板ホルダおよび前記シールド部材は、共に、導電性部材で形成されており、前記シグナルグランドと接続され、
前記第1感磁素子の前記第1磁石と対向する位置は、前記基板ホルダで覆われていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項
1に記載のモータにおいて、
前記第2感磁素子は、前記基板ホルダを超えて前記第2磁石側に突出していないことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のモータにおいて、
前記第2感磁素子と前記第2磁石との間隔は、前記第1感磁素子と前記第1磁石との間隔よりも狭いことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記第2感磁素子は感磁膜を有し、
前記回転軸線方向における前記第2感磁素子での前記感磁膜の位置は、前記回転軸線方向における前記第2感磁素子の中央よりも前記第2磁石側であることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記第2磁石は、前記第1磁石の周囲に亘り配置され、
前記第1磁石と前記第2磁石との間には、全周に亘ってシールド壁が設けられており、
前記シールド壁は、前記第2磁石を超えて前記基板側に突出していないことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項
5に記載のモータにおいて、
前記シールド壁は、前記第1磁石を超えて前記基板側に突出していることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記第2磁石は、前記磁石ホルダに固定された状態で着磁されていることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々なモータが使用されている。このうち、例えば、特許文献1には、N極とS極とが1極ずつ着磁された第1マグネットと、該第1マグネットの周囲に設けられ、着磁数の多い(N極とS極とが複数着磁された)第2マグネットと、を有し、第1マグネットおよび第2マグネットの両方の磁石と共に回転可能なマグネットホルダを備え、さらに、第1マグネットと対向する第1感磁素子と、第2マグネットと対向する第2感磁素子と、を有する基板ユニットを備える、モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のモータは、第1感磁素子を基板に、第2感磁素子を基板とは別の異なる部材である基板ホルダに、設けているため、該基板および該基板ホルダからなる基板ユニットの組み立てが面倒な場合がある。また、第2マグネットは着磁数が多く磁束が遠くまで至らないので、第2感磁素子での磁気検出は、第2感磁素子と第2マグネットとの間隔が広い場合には高感度で磁気検出することが困難な場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡単に形成でき、且つ、感度の高いモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータは、N極とS極とが1極ずつ着磁された第1磁石と、N極とS極とが複数着磁された第2磁石と、を有し、前記第1磁石および前記第2磁石の両方の磁石と共に回転可能な磁石ホルダと、前記磁石ホルダの回転軸線方向において前記第1磁石と対向して設けられた第1感磁素子と、前記回転軸線方向において前記第2磁石と対向して設けられた第2感磁素子とを実装した基板と、を備え、前記第2感磁素子は、前記第1感磁素子よりも前記磁石側に向けて突出していることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、第1感磁素子と第2感磁素子とが共に基板に実装されているので、基板ユニットの組み立てを簡単にできる。また、第2感磁素子は第1感磁素子よりも磁石側に向けて突出しているので、第2感磁素子と第2磁石との間隔を簡単に狭くすることができる。したがって、簡単に形成でき、且つ、磁気検出感度の高いモータを提供できる。
【0008】
本発明のモータは、前記回転軸線方向における前記磁石側において前記基板を覆う基板ホルダを備え、前記基板は、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子のグランド端子と接続されるシグナルグランドを有し、前記基板ホルダは、前記回転軸線方向から見た前記第2感磁素子の位置に開口部を有し、前記開口部は、前記回転軸線方向における厚みが前記基板ホルダよりも薄いシールド部材で覆われ、前記基板ホルダおよび前記シールド部材は、共に、導電性部材で形成されており、前記シグナルグランドと接続されていることが好ましい。第2感磁素子を薄いシールド部材でシールドすることで、第2感磁素子と第2磁石との間隔を狭くしたまま、第2感磁素子に磁石側からノイズ(フレームグランドノイズや電源ノイズなど)が侵入して磁気検出結果に影響が出ることを抑制できるためである。
【0009】
本発明のモータにおいは、前記第1感磁素子の前記第1磁石と対向する位置は、前記基板ホルダで覆われていることが好ましい。第1感磁素子に磁石側からノイズが侵入して磁気検出結果に影響が出ることを簡易な構成で抑制できるためである。
【0010】
本発明のモータにおいては、前記第2感磁素子は、前記基板ホルダを超えて前記第2磁石側に突出していないことが好ましい。第2感磁素子が他の部材などに接触することを抑制できるためである。また、基板ホルダにシールド部材を取り付ける場合において、簡単にシールド部材を変形させることなく取り付けることができる。
【0011】
本発明のモータにおいては、前記第2感磁素子と前記第2磁石との間隔は、前記第1感磁素子と前記第1磁石との間隔よりも狭いことが好ましい。第2磁石は第1磁石よりも着磁数が多く第1磁石に比べて磁束が遠くまで至らないので、第2感磁素子と第2磁石との間隔を第1感磁素子と第1磁石との間隔よりも狭くすることで、第1感磁素子および第2感磁素子の両方において高感度で磁気検出することが可能になるためである。
【0012】
本発明のモータは、前記第2感磁素子は感磁膜を有し、前記回転軸線方向における前記第2感磁素子での前記感磁膜の位置は、前記回転軸線方向における前記第2感磁素子の中央よりも前記第2磁石側であることが好ましい。感磁膜の位置を磁石に近づけることができ、特に高感度で磁気検出することが可能になるためである。
【0013】
本発明のモータにおいては、前記第2磁石は、前記第1磁石の周囲に亘り配置され、前記第1磁石と前記第2磁石との間には、全周に亘ってシールド壁が設けられており、前記シールド壁は、前記第2磁石を超えて前記基板側に突出していないことが好ましい。第1磁石と第2磁石との間に第2磁石を超えないシールド壁を設けることで、第1磁石から第2磁石に向かう磁束の影響を抑制しつつ、シールド壁が第2磁石を超えている場合と比較すると第2磁石の磁束がシールド壁に向かい、第2感磁素子に向かう磁束が弱くなるということを抑制できる。
【0014】
本発明のモータにおいては、前記シールド壁は、前記第1磁石を超えて前記基板側に突出していることが好ましい。第1磁石を超えて基板側に突出しているシールド壁により、第1磁石から第2磁石に向かう磁束の影響を抑制できるためである。
【0015】
本発明のモータにおいては、前記第2磁石は、前記磁石ホルダに固定された状態で着磁されていることが好ましい。第2磁石の回転軸に対する中心ずれを抑制できるためである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、簡単に形成でき、且つ、磁気検出感度の高いモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用したモータのエンコーダ側の端部を示す外観斜視図である。
【
図2】エンコーダおよび軸受ホルダを反出力側から見た分解斜視図である。
【
図3】エンコーダおよび軸受ホルダを出力側から見た分解斜視図である。
【
図4】エンコーダおよび軸受ホルダの断面図(
図1のA-A断面図)である。
【
図5】エンコーダおよび軸受ホルダの断面図(
図1のB-B断面図)である。
【
図6】基板ユニット、磁石、および磁石ホルダを反出力側から見た分解斜視図である。
【
図7】基板ユニット、磁石、および磁石ホルダを出力側から見た分解斜視図である。
【
図8】本発明を適用したモータのエンコーダの回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウトを示す平面図である。
【
図9】本発明を適用したモータのエンコーダの回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウトを示す斜視図である。
【
図10】本発明を適用したエンコーダにおける検出原理を説明するための位相図である。
【
図11】本発明を適用したエンコーダにおける検出原理を説明するための図である。
【
図12】本発明を適用したモータのエンコーダの回転磁石および感磁素子センサ部のレイアウトを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータの実施形態を説明する。
図1は本発明を適用したモータ1のエンコーダ10側の端部を示す外観斜視図である。また、
図2および
図3はエンコーダ10および軸受ホルダ42の分解斜視図であり、
図2は反出力側から見た分解斜視図、
図3は出力側から見た分解斜視図である。
図4および
図5はエンコーダ10および軸受ホルダ42の断面図であり、
図4は
図1のA-A断面図、
図5は
図1のB-B断面図である。
【0019】
(全体構成)
モータ1は、回転軸2(
図4および
図5参照)を備えるモータ本体3と、回転軸2の回転を検出するエンコーダ10を備える。モータ本体3は、ロータおよびステータ(図示省略)を収容するモータケース4を備える。ロータは回転軸2と一体に回転する。回転軸2の一方の端部は、モータケース4から外部へ突出する出力軸(図示省略)となっている。本明細書において、回転軸2の中心軸線(回転軸線)を符号Lで示す。なお、回転軸線Lは、磁石ホルダ15の回転軸線に対応する。また、モータケース4から出力軸が突出する方向を出力側L1とし、出力側の反対側を反出力側L2とする。エンコーダ10は、モータ本体3の反出力側L2の端部に固定される。
【0020】
(回転軸)
図4および
図5に示すように、回転軸2は、モータ側回転軸21と、モータ側回転軸21の反出力側L2の端部に固定されるエンコーダ側回転軸22を備える。モータ側回転軸21とエンコーダ側回転軸22は一体に回転する。本形態では、モータ側回転軸21は磁性材からなり、エンコーダ側回転軸22は非磁性材からなる。エンコーダ側回転軸22を非磁性材とすれば、エンコーダ側回転軸22を経由してモータ本体3側からエンコーダ10側へ侵入する磁気ノイズを減らすことができる。なお、エンコーダ側回転軸22は磁性材であってもよい。この場合には、エンコーダ側回転軸22とモータ側回転軸21を一体にしてもよい。すなわち、回転軸2を1部材で形成してもよい。
【0021】
(モータケース)
図1に示すように、モータケース4は、回転軸線L方向に延びる筒状ケース41と、筒状ケース41の反出力側L2の端部に固定される軸受ホルダ42を備える。筒状ケース41および軸受ホルダ42は、回転軸線L方向に見た場合に略矩形である。
図2から
図5に示すように、軸受ホルダ42の内周側には軸受43が保持される。軸受43は、エンコーダ側回転軸22の出力側L1の端部を回転可能に支持する。
図2に示すように、軸受ホルダ42の反出力側L2の面には出力側L1に凹む円形凹部44が形成され、円形凹部44の外周側にはフランジ45が形成されている。フランジ45の内周縁には、円形凹部44の縁に沿って反出力側L2に突出する環状壁46が形成されている。
【0022】
円形凹部44の底部には、軸受43の外周部分を反出力側L2から押さえるように環状のプレート47が取り付けられる。エンコーダ側回転軸22は、プレート47の中心に設けられた貫通孔48を通って反出力側L2に突出する。プレート47は、3本のねじによって円形凹部44の底部に固定される。プレート47の外周縁には、等角度間隔の3箇所に切り欠き49が形成されている。この切り欠き49には、後述するエンコーダホルダ14の脚部143が配置される。
【0023】
(エンコーダ)
図2から
図5に示すように、エンコーダ10は、軸受ホルダ42に固定される外側ケース11と、外側ケース11の内側に配置されるエンコーダカバー12と、エンコーダカバー12の内側に配置される基板ユニット13と、基板ユニット13を支持するエンコーダホルダ14と、エンコーダホルダ14の内周側に配置される磁石ホルダ15と、磁石ホルダ15に保持される磁石16(回転磁石)を備える。磁石ホルダ15は、エンコーダ側回転軸22の反出力側L2の先端に固定される。従って、磁石16はエンコーダ側回転軸22と一体に回転する。基板ユニット13は、磁石16と対向する感磁素子17(感磁素子センサ部)を備える。本形態では、感磁素子17としてMR素子を用いる。
【0024】
(外側ケース)
図2および
図3に示すように、外側ケース11は、回転軸線L方向に見た場合に略矩形の端板部111と、端板部111の外周縁から出力側L1へ立ち上がる側板部112を備える。側板部112には、基板ユニット13に接続する配線を通すための切り欠き113が形成されている。外側ケース11と軸受ホルダ42は、側板部112の出力側L1の端面とフランジ45との間にシール部材114を介在させて、4箇所の角部に図示しないねじ等の固定部材を締め込むことによって固定される。本形態では、外側ケース11およびモータケース4はアルミなどの非磁性材からなる。なお、本形態では、外側ケース11は以下に説明するエンコーダカバー12と別部材であるが、外側ケース11をエンコーダカバー12と同一素材で一体に形成してもよい。
【0025】
(エンコーダカバー)
図2および
図3に示すように、エンコーダカバー12は、回転軸線L方向に見た場合に円形の端板部121と、端板部121の外周縁から出力側L1へ立ち上がる筒状部122を備える。筒状部122には、外側ケース11の切り欠き113と径方向に重なる位置に、基板ユニット13に接続する配線を通すための切り欠き123が形成されている。
図4および
図5に示すように、エンコーダカバー12は、軸受ホルダ42の円形凹部44の縁に沿って形成された環状壁46の内周側に筒状部122の縁を嵌合させるように軸受ホルダ42に組み付けられる。筒状部122の出力側L1の端面は、切り欠き123が形成された箇所を除き、円形凹部44の底部に配置されたプレート47に当接する。ここで、環状壁46は周方向の一部が切り欠かれているが、環状壁46が切り欠かれた箇所は、プレート47の外周縁に形成された切り欠き49とは異なる角度位置である。従って、エンコーダカバー12と軸受ホルダ42との隙間は、切り欠き123を除いて塞がれている。
【0026】
エンコーダカバー12は導電性を有する磁性材からなる。例えば、エンコーダカバー12は鉄、パーマロイなどで形成されている。より具体的には、エンコーダカバー12は、SPCCやSPCEなどの磁性金属板をプレス加工して形成されている。このように、磁性材で形成されたエンコーダカバー12によって感磁素子17を保持する基板ユニット13を覆うことにより、感磁素子17およびエンコーダ回路を外乱磁界などの磁気ノイズから遮蔽することができる。また、エンコーダカバー12は、軸受ホルダ42との間に隙間がほとんどできないように取り付けられている。従って、軸受ホルダ42との隙間から基板ユニット13側に電磁波ノイズが侵入することを抑制できる。
【0027】
なお、別の手段としてエンコーダカバー12を基板ユニット13のうち基板ホルダ50に対し隙間が無いように取り付ける形状とし電磁波ノイズの浸入を抑制させてもよい。具体的には、エンコーダカバー12の筒状部122は基板ユニット13の外周側まで延びており、筒状部122の先端は、基板ホルダ50の外周端部より出力側L1に突出させる。つまり、筒状部122は、基板60に搭載された感磁素子17より出力側L1の位置まで延びており、筒状部122は、感磁素子17の外周側を囲むことにより電磁波ノイズの浸入を抑制させることができる。その場合には導電性の固定部材70および基板ホルダ50を介して、基板60上のエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続することが望ましい。
【0028】
エンコーダカバー12は、軸受ホルダ42と接触するように取り付けられているので、モータ本体3のフレームグランドと電気的に接続されている。すなわち、軸受ホルダ42はアルミ等の導電性金属からなるモータケース4の一部を構成する。従って、軸受ホルダ42に設けられた環状壁46の内側にエンコーダカバー12の筒状部122を嵌合させることにより、エンコーダカバー12は、モータ本体3のフレームグランドと電気的に接続される。このように、エンコーダ10をフレームグランド電位に接続することにより、電磁波ノイズの遮蔽効果を高めることができる。なお、環状壁46の内側にエンコーダカバー12の筒状部122を嵌合させていなくても、エンコーダカバー12の筒状部122の端面を円形凹部44の底部に接触するように固定すれば、エンコーダカバー12とモータ本体3のフレームグランド電位に接続することができる。
または、エンコーダカバー12は基板ユニット13に固定され、導電性の固定部材70および基板ホルダ50を介して、基板60上のエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続されていてもよい。
【0029】
(エンコーダホルダ)
図2および
図3に示すように、エンコーダホルダ14は、円形の磁石配置孔141が形成された胴部142と、胴部142の出力側L1の端部から外周側に突出する脚部143を備える。
図3に示すように、脚部143の出力側L1の端面は、胴部142の出力側L1の端面よりも出力側L1に突出している。脚部143は、周方向に等角度間隔で3箇所に形成されている。エンコーダホルダ14は、軸受ホルダ42の中央で回転可能に保持されるエンコーダ側回転軸22の回転軸線Lと磁石配置孔141とが同軸に配置されるように位置決めされるとともに、上述したプレート47の外周縁に形成された切り欠き49に脚部143を配置するように位置決めされる。
図5に示すように、エンコーダホルダ14は、脚部143を介して軸受ホルダ42と当接する。エンコーダホルダ14は、図示しない固定ねじによって脚部143が円形凹部44の底面にねじ止めされることにより、軸受ホルダ42に固定される。
【0030】
エンコーダホルダ14において、胴部142の反出力側L2の端面には、基板ユニット13を固定するための固定孔144が3か所に形成されている。基板ユニット13は、胴部142の反出力側L2の端面に当接するように位置決めされて、図示しないねじ等の固定部材を介してエンコーダホルダ14に固定される。
【0031】
(磁石)
図6および
図7は基板ユニット13、磁石16および磁石ホルダ15の分解斜視図であり、
図6は反出力側L2から見た図、
図7は出力側から見た図である。
図6および
図7に示すように、磁石ホルダ15は、略円板状の磁石保持部151と、磁石保持部151の中心から出力側L1に突出する筒状の固定部152を備える。固定部152には、エンコーダ側回転軸22の先端が圧入もしくは接着剤により固定される。または出力側L1に垂直となる方向からセットビスにより固定される。そして、磁石保持部151と固定部152との間にはシールド壁153が設けられている。磁石16は、磁石保持部151の中央に形成された凹部に嵌合する円形の第1磁石161、および、第1磁石の外周縁に形成された段部に嵌合する環状の第2磁石162を備える。第1磁石161は周方向にN極とS極が1極ずつ着磁されている。一方、第2磁石162はN極とS極が周方向に交互に複数極ずつ着磁されている。なお、エンコーダホルダ14、磁石16および磁石ホルダ15からなる回転体18の構成の詳細については後述する。
【0032】
図4および
図5に示すように、エンコーダホルダ14が軸受ホルダ42に固定されると、エンコーダホルダ14の磁石配置孔141の中央にエンコーダ側回転軸22の先端が配置される。従って、エンコーダ側回転軸22の先端に固定される磁石ホルダ15は磁石配置孔141の中央に配置される。第1磁石161および第2磁石162は、磁石配置孔141内において反出力側L2を向いて配置されるとともに、エンコーダ側回転軸22の回転軸線Lを中心として同軸に配置される。
【0033】
(基板ユニット)
図6および
図7に示すように、基板ユニット13は、基板ホルダ50と、基板ホルダ50に取り付けられる基板60と、基板60に搭載される感磁素子17と、基板ホルダ50に基板60を固定する固定部材70と、基板ホルダ50に出力側L1から取り付けられるシールド部材80を備える。基板60は略円形であり、外周縁の2箇所を直線状に切り欠いた切り欠き61を備える。また、基板60には、基板ホルダ50に対する固定用の固定孔62が2箇所に形成されている。2箇所の固定孔62は、基板ホルダ50の中心を挟んで反対側に配置される。また、2箇所の固定孔62のうちの一方は、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランド5(
図12参照)と電気的に接続されたグランドスルーホール621である。なお、2箇所の固定孔62のどちらをグランドスルーホール621にしても良い。また、固定孔62を3か所以上設け、3か所で基板60と基板ホルダ50を固定してもよい。
【0034】
基板ホルダ50は、基板60と対向する端板部53と、端板部53の外周縁から反出力側L2に立ち上がる側板部54を備える。基板ホルダ50は、基板60の切り欠き61と回転軸線L方向で重なる部位において、端板部53が直線状にカットされた形状になっており、側板部54は直線状に延在する。端板部53には、基板60の固定孔62に対応するボス部51が2箇所に形成されている。固定部材70が固定孔62およびボス部51に挿入されることにより、基板ホルダ50に基板60が固定される。固定部材70はスプリングピンである。固定部材70としてスプリングピンを用いることにより、基板ホルダ50に対する基板60のがたつきが防止される。また、固定部材70は導電性の金属、例えばSUSで形成され、基板ホルダ50は導電性の金属、例えばアルミで形成されている。従って、固定部材70を介して基板ホルダ50に基板60が取り付けられると、固定部材70およびグランドスルーホール621を介して、基板ホルダ50が基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランド5と電気的に接続される。
【0035】
基板ホルダ50には、エンコーダホルダ14の固定孔144に対応する3か所に不図示の固定ねじを通すためのボス部52が形成されている。ボス部52は側板部54と繋がっている。本形態では、ボス部52の先端面が、基板60と当接する当接面となっている。また、基板60には、ボス部52および固定孔144に対応する3か所に固定ねじを通すための固定孔63が形成されている。なお、
図2では省略されて表されているが、胴部142の反出力側L2の端面からは、基板ユニット13を位置決めするための2本の位置決めピンが突出して設けられている。
【0036】
基板ユニット13は、3本の固定ねじをそれぞれ基板60の固定孔63および基板ホルダ50ボス部52に通して、その先端を固定孔144にねじ止めすることにより、エンコーダホルダ14に固定される。また、エンコーダホルダ14は脚部143が軸受ホルダ42に当接して固定されるため、エンコーダホルダ14を介して、基板ユニット13が軸受ホルダ42に固定される。本形態では、エンコーダホルダ14は樹脂などの絶縁材で形成されている。従って、エンコーダホルダ14を介して軸受ホルダ42に基板ユニット13を固定すると、基板ホルダ50は軸受ホルダ42から絶縁される。ただし、基板60にはフレームグランド用の配線パターンが準備されており、図示されない金属部材がフレームグランド用の配線パターンと接続した状態で、エンコーダホルダ14の脚部143のうちの1つと、ネジにより共締めされ軸受けホルダ42と電気的に接続されている。そのため、フレームグランド用の配線パターンは、基板ユニット13に接続されるエンコーダケーブルのシールドと電気的に接続するよう配線するので、ケーブルにかかるノイズが抑制されることになる。
【0037】
基板60は、反出力側L2を向く反出力側基板面60a、および、出力側L1を向く出力側基板面60bを備える。
図6に示すように、反出力側基板面60aには、エンコーダ回路を構成する図示しない回路素子およびエンコーダケーブルを接続するためのコネクタ65などが搭載されている。
図7に示すように、感磁素子17は、出力側基板面60bの中央に配置される第1感磁素子171と、第2感磁素子172と、を備える。第1感磁素子171および第2感磁素子172は、それぞれ、基板60上に構成されたエンコーダ回路のシグナルグランド5と接続されるグランド端子6および7(
図12参照)を備える。また、出力側基板面60bには、第1感磁素子171の近傍に2つのホール素子175が搭載されている。2つのホール素子175は、90度離れた角度位置に配置されている。なお、第1感磁素子171、第2感磁素子172および2つのホール素子175はいずれも基板60に実装されている。
【0038】
基板ホルダ50において、端板部53の出力側L1の面には、略矩形の貫通孔(開口部58)が形成されている。基板ホルダ50に基板60を固定したとき、開口部58には第2感磁素子172が配置される。
【0039】
基板ユニット13をエンコーダホルダ14に対して固定すると、第1感磁素子171と第1磁石161が対向する(
図4および
図5参照)。また、基板ホルダ50の開口部58に配置される第2感磁素子172と第2磁石162が対向する。エンコーダ10は、第1感磁素子171の出力側L1の表面と第1磁石161との間、および、第2感磁素子172の出力側L1の表面と第2磁石162の間に所定のギャップが形成される。
【0040】
第1感磁素子171およびその近傍に配置される2個のホール素子175と第1磁石161は、1回転で得られる第1感磁素子171の出力の周期を2個のホール素子175により判別することでアブソリュートエンコーダとして機能する。一方、第2感磁素子172と第2磁石162は、1回転で複数周期の出力が得られるため、インクリメンタルエンコーダとして機能する。エンコーダ10は、これらの2組のエンコーダの出力を処理することにより、高分解能で、且つ、高精度な位置検出を行うことができる。
【0041】
(シールド部材)
シールド部材80は、基板ホルダ50のシールド部材取付位置57に出力側L1から取り付けられる。本形態のシールド部材80は可撓性のシート材であり、開口部58を完全に塞ぐ大きさである。本実施形態のシールド部材取付位置57はなっていないが、シールド部材取付位置57にシールド部材80を取り付けるための段差を設けてもよい。シールド部材80は出力側L1を向くシールド取付面59に当接する。シールド部材80は、基板ホルダ50と同様に、導電性の非磁性金属、例えばアルミで形成されている。そして、シールド部材80は、導電性の接着剤を介してシールド取付面59に接着されている。このため、シールド部材80は、基板ホルダ50を介して、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランド5と電気的に接続される。
【0042】
シールド部材80は、開口部58に配置された第2感磁素子172と、を覆うように基板ホルダ50に取り付けられる。基板ホルダ50にシールド部材80を取り付けたことにより、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シグナルグランド電位の部材(基板ホルダ50およびシールド部材80)によってモータ本体3から遮蔽される。従って、第1磁石161および第2磁石162との隙間から回り込んでくるフレームグランドノイズや電源ノイズを効果的に遮蔽できる。なお、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シールド部材80を介して第1磁石161および第2磁石162と対向するが、シールド部材80および基板ホルダ50は非磁性金属であるため、電磁波ノイズについては良好に遮蔽しつつ、磁気式のエンコーダとしての機能を損なわないようにすることができる。
【0043】
(磁石および感磁素子のレイアウト概要)
図8は、本実施形態のエンコーダ10における磁石16(第1磁石161および第2磁石162)および感磁素子17(第1感磁素子171および第2感磁素子172)等のレイアウトを示す説明図であり、磁石16等の平面的なレイアウトを示す平面図である。
図9から
図11は、本実施形態のエンコーダ10における原理を示す説明図であり、
図9は感磁素子17に対する信号処理系の説明図、
図10は感磁素子17から出力される信号の説明図、
図11はかかる信号と回転体18(磁石ホルダ15および磁石16)の角度位置θ(電気角)との関係を示す説明図である。なお、
図8および
図9では、磁石16および感磁素子17等の構成を模式的に示してあり、第2磁石162における磁極についてはその数を減らして模式的に示してある。また、第2感磁素子172における磁気抵抗パターンと第2磁石162の磁極との位置関係についても互いの位置をずらして模式的に示してあり、第2感磁素子172の磁気抵抗パターンは、周方向において極めて狭い範囲に形成されている。
【0044】
図8および
図9に示すように、本実施形態のエンコーダ10において、回転体18の側には、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面221を回転軸線方向Lの出力側L1に向ける第1磁石161と、第1磁石161に対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面231を回転軸線方向Lの出力側L1に向ける第2磁石162とが保持されている。かかる第1磁石161および第2磁石162は回転体18と一体に回転軸線周りに回転する。なお、
図8および
図9では簡略化されて表されているが、本実施形態の第2磁石162は、内側と外側とで1対をなすN極とS極の磁極対が周方向に32対設けられている。
【0045】
本形態において、第1磁石161は円盤状の永久磁石からなる。第2磁石162は円筒状であり、第1磁石161に対して径方向の外側で離間する位置に配置されている。第1磁石161および第2磁石162はボンド磁石等からなる。本形態では例えばフェライト焼結磁石を用いる。本形態において、第2磁石162の着磁面231には、周方向においてN極とS極とが交互に多極に着磁されたトラック310が径方向で複数、並列している。本形態では、トラック310が2列形成されている。かかる2つのトラック310の間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、本形態では、2つのトラック310の間においてN極およびS極は周方向に1極分ずれている。
【0046】
基板ユニット13には、第1磁石161の着磁面221に対して回転軸線方向Lの出力側L1で対向する第1感磁素子171と、第2磁石162の着磁面231に対して回転軸線方向Lの出力側L1で対向する第2感磁素子172とが設けられている。本形態において、第1感磁素子171および第2感磁素子172は何れも、
図7などで表されるように、基板60の回転軸線方向Lの出力側L1の出力側基板面60bに保持されている。
【0047】
また、基板60には、第1磁石161に対向する位置に、第1ホール素子175aと、第1ホール素子175aに対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子175bとが設けられている。本形態において、第1ホール素子175aおよび第2ホール素子175bは共に、基板60の出力側基板面60bに保持されており、第1磁石161に対して回転軸線方向Lの出力側L1で対向している。
【0048】
図8および
図9に示すように、第1感磁素子171は、第1磁石161の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子である。かかる第1感磁素子171において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体18の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン243および-a相(SIN-)の磁気抵抗パターン241を備えており、B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体18の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン244および-b相(COS-)の磁気抵抗パターン242を備えている。
【0049】
ここで、+a相の磁気抵抗パターン243および-a相の磁気抵抗パターン241は、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の磁気抵抗パターン243の中点位置には、+a相が出力される端子(+a)が設けられ、-a相の磁気抵抗パターン241の中点位置には、-a相が出力される端子(-a)が設けられている。また、+b相の磁気抵抗パターン244および-b相の磁気抵抗パターン242も、+a相の磁気抵抗パターン244および-a相の磁気抵抗パターン241と同様、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+b相の磁気抵抗パターン244の中点位置には、+b相が出力される端子(+b)が設けられ、-b相の磁気抵抗パターン242の中点位置には、-b相が出力される端子(-b)が設けられている。
【0050】
第2感磁素子172は、第2磁石162の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた第2磁気抵抗素子である。かかる第2感磁素子172において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体18の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン264および-a相(SIN-)の磁気抵抗パターン262を備えており、B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体18の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン263および-b相(COS-)の磁気抵抗パターン261を備えている。
【0051】
ここで、+a相の磁気抵抗パターン264および-a相の磁気抵抗パターン262は、第1感磁素子171と同様、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の磁気抵抗パターン264の中点位置には、+a相が出力される端子(+a)が設けられ、-a相の磁気抵抗パターン262の中点位置には、-a相が出力される端子(-a)が設けられている。また、+b相の磁気抵抗パターン263および-b相の磁気抵抗パターン261は、+a相の磁気抵抗パターン264および-a相の磁気抵抗パターン262と同様、ブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+b相の磁気抵抗パターン263の中点位置には、+b相が出力される端子(+b)が設けられ、-b相の磁気抵抗パターン261の中点位置には、-b相が出力される端子(-b)が設けられている。
【0052】
かかる構成の第2感磁素子172は、
図8および
図9に示すように、第2磁石162において隣接するトラック310の境界部分に回転軸線方向Lで重なる位置に配置されている。このため、第2感磁素子172の磁気抵抗パターン261~264は、各々の磁気抵抗パターン261~264の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラック310の面内方向で向きが変化する回転磁界を検出することができる。すなわち、第2磁石162は、複数のトラック310を備えているので、隣接するトラック310の境界線部分では、各々の磁気抵抗パターン261~264の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラック310の面内方向の向きが変化する回転磁界が発生する。ここで、飽和感度領域とは、一般的に、抵抗値変化量kが、磁界強度Hと近似的に「k∝H2」の式で表すことができる領域以外の領域をいう。また、飽和感度領域以上の磁界強度で回転磁界(磁気ベクトルの回転)の方向を検出する際の原理は、強磁性金属からなる各々の磁気抵抗パターン261~264に通電した状態で、抵抗値が飽和する磁界強度を印加したとき、磁界と電流方向がなす角度θと、各々の磁気抵抗パターン261~264の抵抗値Rとの間には、下式
R=R0-k×sin2θ
R0:無磁界中での抵抗値
k:抵抗値変化量(飽和感度領域以上のときは定数)
で示す関係があることを利用するものである。このような原理に基づいて回転磁界を検出すれば、角度θが変化すると抵抗値Rが正弦波に沿って変化するので、波形品質の高いA相およびB相を得ることができる。
【0053】
かかる構成のエンコーダ10において、第1感磁素子171、第1ホール素子175a、第2ホール素子175b、および第2感磁素子172には、増幅回路291~296や、これらの増幅回路291~296から出力される正弦波信号sin、cosに補間処理や各種演算処理を行うCPU290(演算回路)等が構成されており、第1感磁素子171、第1ホール素子175a、第2ホール素子175b、および第2感磁素子172からの出力に基づいて、基板ユニット13に対する回転体18の回転角度位置が求められる。
【0054】
より具体的には、エンコーダ10において、回転体18が1回転すると、第1感磁素子171からは、
図10に示す正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、正弦波信号sin、cosを増幅回路291および増幅回路292により増幅した後、CPU290において、
図11に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan-1(sin/cos)を求めれば、回転出力軸の角度位置θが分かる。また、本形態では、第1磁石161の中心からみて90°ずれた位置に第1ホール素子175aおよび第2ホール素子175bが配置されている。このため、現在位置が正弦波信号sin、cosのいずれの区間に位置するかが分かる。従って、エンコーダ10は、第1感磁素子171での検出結果、第1ホール素子175aでの検出結果、および第2ホール素子175bでの検出結果に基づいて回転体18の第1絶対角度位置情報を生成することができ、アブソリュート動作を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態のエンコーダ10では、N極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面231を備えた第2磁石162が用いられており、かかる第2磁石162に対向する第2感磁素子172からは、回転体18が第2磁石162の磁極の1周期分を回転する度に、
図10に示すような正弦波信号sin、cosが出力される。従って、第2感磁素子172から出力された正弦波信号sin、cosを増幅回路293および増幅回路294により増幅した後、CPU290において、パルス信号等に変換すれば、第2磁石162の磁極に対応する信号が得られる。従って、CPU290において、第1感磁素子171での検出結果、第1ホール素子175aでの検出結果、および第2ホール素子175bでの検出結果に基づいて得られた回転体18の第1絶対角度位置情報と、第2感磁素子172での検出結果とを用いれば、回転体18の第2絶対角度位置情報を得ることができ、かかる第2絶対角度位置情報は、第1絶対角度位置情報に比して分解能が高い。すなわち、第1感磁素子171での検出結果、第1ホール素子175aでの検出結果、および第2ホール素子175bでの検出結果に基づいて回転体18の第1絶対角度位置情報を検出し、かかる第1絶対角度位置情報、および第2感磁素子172での検出結果を用いて、回転体18のさらに高い精度の絶対角度位置(第2絶対角度位置情報)を得る。
【0056】
(回転軸線方向における磁石および感磁素子の配置)
次に、
図12の本実施形態のエンコーダ10の側面方向からのレイアウトを示す概略図を用いて、回転軸線方向Lにおける磁石16(第1磁石161および第2磁石162)および感磁素子17(第1感磁素子171および第2感磁素子172)の配置について説明する。なお、
図12は概略図であり、磁石16および感磁素子17以外の構成部材の多くは省略して表している。
【0057】
図12で表されるように、第2感磁素子172の出力側基板面60bからの回転軸線方向Lの出力側L1における長さは、第1感磁素子171の出力側基板面60bからの回転軸線方向Lの出力側L1における長さよりも長い。別の表現をすると、第2感磁素子172は、回転軸線方向Lにおいて、第1感磁素子171よりも磁石側である出力側L1に向けて突出している。このため、着磁数が多く磁束が遠くまで至らないことで狭いことが要求される第2感磁素子172と第2磁石162との間隔を簡単に狭くすることができる構成になっている。また、第1感磁素子171と第2感磁素子172とが共に基板60に実装されているので、基板ユニット13の組み立てを簡単にできる構成になっている。したがって、本実施形態のモータ1は、簡単に形成でき、且つ、磁気検出感度が高い。なお、第1感磁素子171および第2感磁素子172は、樹脂モールドにより基板60に実装されたものや基板60にフリップチップ実装されたものであることが好ましい。
【0058】
なお、
図12で表されるように、第1感磁素子171と第1磁石161との間隔は第2感磁素子172と第2磁石162との間隔よりも広い。第2磁石162は第1磁石161よりも着磁数が多く第1磁石161に比べて磁束が遠くまで至らないので、本実施形態のモータ1のように、第2感磁素子172と第2磁石162との間隔を第1感磁素子171と第1磁石161との間隔よりも狭くすることで、第1感磁素子171および第2感磁素子172の両方において高感度で磁気検出することが可能になる。
【0059】
また、上記のように、基板60は、第1感磁素子171および第2感磁素子172のグランド端子6および7と接続されるシグナルグランド5を有しており、基板ホルダ50は、回転軸線方向Lから見た第2感磁素子172の位置に開口部58を有している。また、
図12で表されるように、開口部58は、回転軸線方向Lにおける厚みが基板ホルダ50よりも薄いシールド部材80で覆われている。そして、上記のように、基板ホルダ50およびシールド部材80は、共に、導電性部材(導電性の金属)で形成されており、シグナルグランド5と接続されている。このように、第2感磁素子172を薄いシールド部材80でシールドすることで、第2感磁素子172と第2磁石162との間隔を狭くしたまま、第2感磁素子172に磁石16側からノイズ(フレームグランドノイズや電源ノイズなど)が侵入して磁気検出結果に影響が出ることを抑制できる。また、シールド部材80を基板ホルダ50と別部材とすることで、シールド効果を簡単に調整できる。
【0060】
また、
図12で表されるように、第1感磁素子171の第1磁石161と対向する位置は、基板ホルダ50で覆われている。このような構成となっていることで、本実施形態のモータ1は、第1感磁素子171に磁石16側からノイズが侵入して磁気検出結果に影響が出ることを抑制している。
【0061】
なお、本実施形態においては、第1感磁素子171の位置に開口部が設けられておらず、開口部が無いために第1感磁素子171の位置はシールド部材80で覆われていないが、第1感磁素子171の位置に開口部が設けられ、該開口部を覆うシールド部材80を備えていてもよい。そのような構成とする場合、第1感磁素子171の位置の開口部と第2感磁素子172の位置の開口部58とを1つのシールド部材80で覆う構成としてもよい。
【0062】
ここで、第2感磁素子172は、基板ホルダ50を超えて第2磁石162側に突出していないことが好ましい。第2感磁素子172が他の部材などに接触することを抑制できるためである。また、基板ホルダ50にシールド部材80を取り付ける場合において、簡単にシールド部材80を変形させることなく取り付けることができる。本実施形態においては、第2磁石162側における第2感磁素子172の表面は、第2磁石162側における基板ホルダ50の表面(正確にはシールド取付面59)と略面一となっている。
【0063】
また、
図12で表されるように、本実施形態の第2感磁素子172は感磁膜172aを有している。そして、感磁膜172aの回転軸線方向Lにおける第2感磁素子172での配置は、第2磁石162側(出力側L1寄り)である。すなわち、回転軸線方向Lにおける第2感磁素子172での感磁膜172aの位置は、回転軸線方向Lにおける第2感磁素子172の中央よりも第2磁石162側である。このように、感磁膜172aの位置を磁石16に近づけることがで、特に高感度で磁気検出することが可能になる。
【0064】
本実施形態のモータ1においては、
図6及び
図8等で表されるように、第2磁石162は、第1磁石161の周囲に亘り配置され、第1磁石161と第2磁石162との間には、全周に亘ってシールド壁153が設けられている。シールド壁153は、磁石保持部151および固定部152と共に一体成型されており、第1磁石161から第2磁石162に向かう磁束の影響を抑制するものである。ここで、シールド壁153は、
図12で表される本実施形態のモータ1のように、第2磁石162を超えて基板60側に突出していないことが好ましい。第1磁石161と第2磁石162との間に第2磁石162を超えないシールド壁153を設けることで、第1磁石161から第2磁石162に向かう磁束の影響を抑制しつつ、第2磁石162の磁束がシールド壁153に向かい、第2感磁素子172に向かう磁束が弱くなるということを抑制できるためである。なお、本実施形態においては、シールド壁153と第2磁石162の反出力側L2の表面が面一となっているが、第2磁石162の反出力側L2の表面がシールド壁153の反出力側L2の表面よりも反出力側L2に突出していてもよい。
【0065】
また、シールド壁153は、
図12で表される本実施形態のモータ1のように、第1磁石161を超えて基板60側である反出力側L2に突出していることが好ましい。第1磁石161を超えて反出力側L2に突出しているシールド壁153により、第1磁石161から第2磁石162に向かう磁束の影響を抑制できるためである。
【0066】
なお、第2磁石162は、予め着磁されたものを磁石ホルダ15に固定してもよいが、磁石ホルダ15に固定された状態で着磁されている方がより好ましい。第2磁石162の回転軸2(エンコーダ側回転軸22)に対する中心ずれを抑制できるためである。ここで、着磁性を向上するために、本実施形態のように、シールド壁153は回転軸線方向Lにおいて第2磁石162を超えて突出していないことが好ましい。なお、磁石ホルダ15に対する第2磁石162の配置がずれているにもかかわらず、第2磁石162の回転軸2に対する中心ずれがない第2磁石162は、磁石ホルダ15に固定された状態で着磁されたものであると判断できる。
【0067】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。
また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…モータ、2…回転軸、3…モータ本体、4…モータケース、5…シグナルグランド、6…グランド端子、7…グランド端子、10…エンコーダ、11…外側ケース、12…エンコーダカバー、13…基板ユニット、14…エンコーダホルダ、15…磁石ホルダ、16…磁石、17…感磁素子、18…回転体、21…モータ側回転軸、22…エンコーダ側回転軸、41…筒状ケース、42…軸受ホルダ、43…軸受、44…円形凹部、45…フランジ、46…環状壁、47…プレート、48…貫通孔、49…切り欠き、50…基板ホルダ、51…ボス部、52…ボス部、53…端板部、54…側板部、57…シールド部材取付位置、58…開口部(貫通孔)、59…シールド取付面、60…基板、60a…反出力側基板面、60b…出力側基板面、61…切り欠き、62…固定孔、63…固定孔、65…コネクタ、70…固定部材、80…シールド部材、111…端板部、112…側板部、113…切り欠き、114…シール部材、121…端板部、122…筒状部、123…切り欠き、141…磁石配置孔、142…胴部、143…脚部、144…固定孔、151…磁石保持部、152…固定部、153…シールド壁、161…第1磁石、162…第2磁石、171…第1感磁素子、172…第2感磁素子、172a…感磁膜、175…ホール素子、175a…第1ホール素子、175b…第2ホール素子、221…着磁面、231…着磁面、241…磁気抵抗パターン、242…磁気抵抗パターン、243…磁気抵抗パターン、244…磁気抵抗パターン、261…磁気抵抗パターン、262…磁気抵抗パターン、263…磁気抵抗パターン、264…磁気抵抗パターン、290…CPU、291…増幅回路、292…増幅回路、293…増幅回路、294…増幅回路、295…増幅回路、296…増幅回路、310…トラック、621…グランドスルーホール、L…回転軸線、L1…出力側、L2…反出力側