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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】紙葉類仕分けシステム
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/60 20060101AFI20221108BHJP
   G07D 11/165 20190101ALI20221108BHJP
   G07D 11/50 20190101ALI20221108BHJP
   B65H 31/36 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B65H29/60 D
G07D11/165
G07D11/50
B65H31/36
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018222633
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020083581
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】塩見 英介
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 聖史
(72)【発明者】
【氏名】上野 正康
(72)【発明者】
【氏名】蒋 キ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】府内 克好
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016461(JP,A)
【文献】特開2018-020853(JP,A)
【文献】特開2015-096945(JP,A)
【文献】特開2018-055204(JP,A)
【文献】特開平07-267513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/60
B65H 31/00-31/40
G07D 11/00-11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類仕分け装置と当該紙葉類仕分け装置に接続された増設スタッカユニットとを備えた紙葉類仕分けシステムであって、
前記紙葉類仕分け装置は、左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個又は複数の本体スタッカと、1個又は複数の増設搬送路とを有し、
各本体スタッカは、当該本体スタッカへと仕分けられた紙葉類をスタックするスタッカであり、
各増設搬送路は、前記増設スタッカユニットへ、前記1個又は複数の本体スタッカ以外のスタッカへ仕分けられる紙葉類を搬送する搬送路であり、
前記増設スタッカユニットは、上側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個又は複数の上段増設スタッカと、下側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個以上の下段増設スタッカと、前記1個又は複数の上段増設スタッカのいずれかへ仕分けられる紙葉類を搬送する左右方向に延びた上部搬送路と、前記1個又は複数の下段増設スタッカのいずれかへ仕分けられる紙葉類を搬送する左右方向に延びた下部搬送路とを有し、
前記1個又は複数の増設搬送路の少なくとも1つが、前記上部搬送路及び前記下部搬送路の少なくとも1つに接続され、
各増設スタッカは、当該増設スタッカへと仕分けられた紙葉類をスタックするスタッカであり、
前記1個又は複数の下段増設スタッカの各々の少なくとも前側が上方に傾いており、
各下段増設スタッカの底面の前端は、当該下段増設スタッカの上方にある上段増設スタッカの底面の前端よりも相対的に前方にあり、
紙葉類仕分けシステムは、
前記増設スタッカユニットを最も右側とし左右方向に連結された1個又は複数の増設スタッカユニットと、
前記1個又は複数の増設スタッカユニットの最も左側の増設スタッカユニットの左に接続された増設搬送ユニットと
を備え、
前記増設搬送ユニットは、
前記最も左側の増設スタッカユニットの前記上部搬送路及び前記下部搬送路のうちの一方から搬送された紙葉類を受け取り、前記最も左側の増設スタッカユニットの前記上部搬送路及び前記下部搬送路の他方へ搬送する、上下方向に長い折り返し搬送路
を有し、
前記折り返し搬送路は、前記最も左側の増設スタッカユニットの前記上部搬送路に接続される左右方向に延びた上部接続搬送路と、前記最も左側の増設スタッカユニットの前記下部搬送路に接続される左右方向に延びた下部接続搬送路と、前記上部接続搬送路の左端から前記下部接続搬送路の左端にかけて上下方向に延びた垂直搬送路とで構成されており、
前記垂直搬送路の少なくとも途中から前記下部接続搬送路にかけて、前記下部接続搬送路に近くなるにつれて徐々に大きく捻られている、
紙葉類仕分けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、紙葉類仕分けシステムに係り、例えば、金融機関において用いられる紙幣の精査、分類又は整理のための紙幣仕分けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関では、紙葉類仕分け装置の一例として、紙幣の精査のために紙幣仕分け装置が使用されている。この紙幣仕分け装置は、紙幣の枚数の確認、紙幣の真偽判定、正券紙幣と損券紙幣とを仕分けする正損分離処理や帯封処理、等の機能を有している。ここで、正券紙幣とは精査処理後に再度市場に流通させても問題のない綺麗な紙幣をいい、損券紙幣とは汚れや破れ、落書きなどがある損傷紙幣をいう。
【0003】
例えば、特許文献1には、この種の紙幣仕分け装置が開示されている(例えば、図8図10、明細書の段落0059以降)。すなわち、ホッパ220に投入された紙幣は、紙幣識別部210で真偽が判定されて、その結果に応じて、紙幣は、スタッカ245A,又は245B、又はリジェクトスタッカ240に振り分けられる。
【0004】
また、特許文献2には、紙葉類処理装置を、基本モジュールと、基本モジュールに連結された拡張モジュールとによって構成し、拡張モジュールでは複数の集積部を垂直方向に配置することによって、装置全体の水平距離を大きくすることなく、集積部を増設可能とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-198612号公報
【文献】特開2018-16461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙葉類仕分け装置はその処理量(紙幣数、仕分け種類)によって、係員の机上で使用する小型の装置から専用のエリアを占有するような大型の装置まで、顧客のニーズに応じて使い分けられている。ここで、紙葉類仕分け装置を金融機関等の既設の机上に設置して使用する場合、装置の全高が高くなり過ぎると、装置上部に配置されたスタッカへ排出された紙幣を取り出し難くなり操作性が低下するとともに、排出された紙葉類(例えば紙幣)が見え難く紙葉類の取り残しが発生しやすいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明に係る紙葉類仕分けシステムは、紙葉類仕分け装置と、当該紙葉類仕分け装置に接続された増設スタッカユニットとを備える。紙葉類仕分け装置は、左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個以上の本体スタッカと、1個以上の増設搬送路とを有する。増設スタッカユニットは、上側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個以上の上段増設スタッカと、下側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた1個以上の下段増設スタッカと、1個以上の上段増設スタッカのいずれかへ仕分けられる紙葉類を搬送する左右方向に延びた上部搬送路と、1個以上の下段増設スタッカのいずれかへ仕分けられる紙葉類を搬送する左右方向に延びた下部搬送路とを有する。1個以上の増設搬送路の少なくとも1つが、上部搬送路及び下部搬送路の少なくとも1つに接続される。各増設スタッカは、当該増設スタッカへと仕分けられた紙葉類をスタックするスタッカである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙葉類仕分けシステムによれば、スタック容量を増設可能な構成において装置全体の全高を抑えるとともに、操作性の良好な紙葉類仕分けシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る紙幣仕分けシステムの模式的な外観斜視図である。
図2図1の模式的なP-P断面図である。
図3】紙幣の流れを示す模式図である。
図4】紙幣仕分け装置と増設スタッカユニットとの間(接続部分)の模式的な拡大図である。
図5】4個の増設スタッカユニットを備えた紙幣仕分けシステムの模式的な内部構造図である。
図6】実施例2に係る増設スタッカユニットの右半分の模式的な外観斜視図である。
図7図6の模式的なQ-Q断面図である。
図8】実施例2に係る折り返し搬送路の模式的な外観斜視図である。
図9】実施例2に係る折り返し搬送路を流れる紙幣の姿勢の遷移の模式図である。
図10】実施例2に係る折り返し搬送路の右方からの平面視の模式図である。
図11】実施例2に係る折り返し搬送路の下方からの平面視の模式図である。
図12】実施例3に係る増設スタッカユニットが有する高さ調整部の模式的な拡大図である。
図13】実施例3に係る高さ調整部の変形例を示す模式的に示す図である。
図14】実施例4に係る紙幣仕分けシステムのyz平面に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、幾つかの実施例を説明する。なお、以下の実施例では、「紙葉類」は、紙幣とするが、本発明は、紙幣以外の紙葉類についても適用可能である。また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通符号を使用し、同種の要素を区別する場合は、参照符号を使用することがある。例えば、増設スタッカユニットを区別しない場合には、「増設スタッカユニット200」と言い、増設スタッカユニットを区別する場合には、「増設スタッカユニット200A」、「増設スタッカユニット200B」のように言う。また、以下の説明において、「搬送路」は、例えば、搬送方向及びそれに直交する方向の各々について長さを持っていてよい。例えば、搬送路は、搬送方向に沿って一つ以上の搬送ローラを含み、各搬送ローラは、搬送方向と直交する方向に沿って延びた軸を有していてよい。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る紙幣仕分けシステムの模式的な外観斜視図である。図2は、図1の模式的なP-P断面図である。図3は、太い破線の矢印にて紙幣の流れを示す模式図である。なお、本実施例の説明において、「+x方向」が「前方」に相当し、「-x方向」が「後方」に相当し、「+y方向」が「右方」に相当し、「-y方向」が「左方」に相当し、「+z方向」が「上方」に相当し、「-z方向」が「下方」に相当する。
【0012】
紙幣仕分けシステム170は、紙幣仕分け装置100と、1個以上の増設スタッカユニット200と、増設搬送ユニット300とを備える。紙幣仕分け装置100に対して、例えば、2個の増設スタッカユニット200A及び200Bが左右方向に連結し、更に、最も左の(末尾の)増設スタッカユニット200Bに増設搬送ユニット300が接続されている。
【0013】
紙幣仕分け装置100は、その右側に、仕分け対象の1枚以上の紙幣がセットされるホッパ110(入金部と呼ばれてもよい)を有する。ホッパ110から1枚ずつ装置100内へ紙幣が取り込まれる。
【0014】
また、紙幣仕分け装置100は、ホッパ110から取り込まれ搬送された紙幣の金種や状態(損傷状態、向き、表裏等)を鑑別する鑑別部140を有する。鑑別部140は、例えば、センサ、メモリ及びプロセッサを含んだコンピュータでよい。メモリからロードされプロセッサにより実行されるプログラムが、センサによる検出結果を基に、紙幣の仕分けを制御してよい。
【0015】
また、紙幣仕分け装置100は、左右方向に沿って並んだ1個以上の本体スタッカ120、例えば4個の本体スタッカ120a~120dを有する。各本体スタッカ120は、当該本体スタッカ120へと仕分けられ水平になった状態の紙幣をスタックする。各本体スタッカ120は、前面が開放されており、ユーザ(例えば係員)が手を挿入して、仕分けられ水平状態の紙幣をまとめて取り出すことができる。なお、本実施例において、集積された紙幣の状態に関しての「水平」とは、全く傾きのない状態のことではなく、紙幣が立位状態でなく、手に取ったときに紙幣の表裏がほぼ上下となっていること(言い換えれば、上方又は下方からの平面視における紙幣の面が右方、左方、前方又は後方からの平面視における紙幣の面よりも大きいこと)をいう。このため、「水平になった状態の紙幣」は、正確には、「水平又は水平面寄りになった状態の紙幣」と言うことができる。
【0016】
また、紙幣仕分け装置100は、その右側に(例えばホッパ110の上方に)、1個以上のリジェクト部130(例えば上下に並んだ2個のリジェクト部130a及び130b)を有する。仕分けの過程において、鑑別部140により仕分け不能と判定された紙幣は、リジェクト部130a及び130bのいずれかへ排出される。
【0017】
紙幣仕分け装置100は、複数の搬送路151を有する。複数の搬送路151は、具体的には、ホッパ110から当該装置100内を左方へと延びた下部本体搬送路151aと、当該搬送路151aの終端から当該装置100内を上方へと延びた垂直本体搬送路151bと、当該搬送路151bの終端から当該装置100内を右方へと延びた上部本体搬送路151cと、当該搬送路151cの終端から当該装置100内をリジェクト部130a及び130bへと延びたリジェクト搬送路151dと、垂直本体搬送路151bの終端から当該装置100内を左方(増設スタッカユニット200が接続される方)へ延びた増設搬送路151eとを含む。
【0018】
また、複数の搬送路151に関し、複数のゲート部5が備えられる。複数のゲート部5は、具体的には、本体スタッカ120a~120dにそれぞれ対応したゲート部5a~5dと、リジェクト部130に対応したゲート部5eと、搬送先を装置100内と増設スタッカユニット200かを切り換えるゲート部5fとを含む。鑑別部140による制御の下で、ゲート部5a~5fの各々は、搬送されて来た紙幣の搬送先を切り換える。
【0019】
ホッパ110にセットされた紙幣は、下端側から1枚ずつ装置100内へ引き込まれ、鑑別部140にて、紙幣の金種や状態(損傷状態、向き、表裏等)を鑑別された後、仕分け先のスタッカが決定される。仕分け先が、いずれかの本体スタッカ120の場合、紙幣は、下部本体搬送路151a、垂直本体搬送路151b、及び上部本体搬送路151cを経て当該本体スタッカ120へ搬送される。
【0020】
各本体スタッカ120は、搬送されて来た紙幣を1枚ずつ整列して集積させるための円盤状のホイール183と、底面が水平(又は水平面寄り)であるため当該ホイール183からの紙幣が水平状態で載置される集積エリア2とを有する。つまり、本体スタッカ120a~120dは、ホイール183a~183dと、集積エリア2a~2dとを有する。各ホイール183は、放射状の羽根部により搬送されてきた紙幣を1枚ずつ受け取り、下方の集積エリア2へ紙幣を整列させた状態で放出する。各スタッカ120の集積エリア2の底面が水平(又は水平面寄り)となっているため、ユーザは、紙幣の表裏が水平となった状態で紙幣を取り出すことができる。
【0021】
鑑別部140にてリジェクト紙幣であると判別された紙幣は、リジェクト搬送路151dへ搬送され、リジェクト部130a若しくは130bへ放出される。なお、いずれのリジェクト部130も、紙幣整列用のホイール186を有している。つまり、リジェクト部130a及び130bは、ホイール186a及び186bを有する。
【0022】
また、増設搬送路151eは、増設スタッカユニット200に接続される。紙幣の仕分け先が、本体スタッカ120a~120d以外のスタッカ、つまり、いずれかの増設スタッカ21の場合は、ゲート部5fにより、垂直本体搬送路151bを流れる紙幣の搬送先が増設搬送路151eに切り替えられる。それによって、当該紙幣が、増設スタッカユニット200へ搬送される。
【0023】
いずれの増設スタッカユニット200も同一の構造である。すなわち、増設スタッカユニット200では、4個の増設スタッカ21が左右方向と上下方向(垂直方向)へ2個ずつ並んだ構造となっている。より具体的には、増設スタッカユニット200は、上側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた2個の上段増設スタッカ21ua及び21ub(1個以上の上段増設スタッカの一例)と、下側に設けられ左右方向に沿って並びそれぞれ前側に開いた2個の下段増設スタッカ21da及び21db(1個以上の下段増設スタッカの一例)とを有する。このため、全ての増設スタッカ21を垂直方向に並べた構造と比較して増設スタッカユニット200の高さを低くすることが期待できる。また、システム170が机上等に設置された場合においても紙幣の取り出しにおいて良好な操作性が期待できる。図1及び図2によれば、増設スタッカユニット200Aは、増設スタッカ21uaA、21ubA、21daA及び21dbAを有し、増設スタッカユニット200Bは、増設スタッカ21uaB、21ubB、21daB及び21dbBを有する。
【0024】
また、増設スタッカユニット200は、上段増設スタッカ21ua及び21ubのいずれかへ仕分けられる紙幣を搬送する左右方向に延びた上部搬送路19uと、下段増設スタッカ21da及び21dbのいずれかへ仕分けられる紙幣を搬送する左右方向に延びた下部搬送路19dとを有する。増設スタッカユニット200は、上段増設スタッカ21uと下段増設スタッカ21dのいずれにも繋がる上下方向に延びた搬送路を必要としない(有しない)。このため、増設スタッカユニット200は、上下方向に延びた搬送路で生じ得る紙ジャム解消のために左方又は右方に開く扉を必要としない。これにより、増設スタッカユニット200の左右方向に沿った長さの肥大化の低減と、良好な操作性とが期待できる。図1及び図2によれば、増設スタッカユニット200Aは、上部搬送路19uA及び下部搬送路19dAを有し、増設スタッカユニット200Bは、上部搬送路19uB及び下部搬送路19dBを有する。また、上部搬送路19uA及び19uBに関し、上段増設スタッカ21uaA、21ubA、21uaB及び21ubBにそれぞれ対応したゲート部6uaA、6ubA、6uaB及び6ubBがあり、下部搬送路19dA及び19dBに関し、下段増設スタッカ21daA、21dbA、21daB及び21dbBにそれぞれ対応したゲート部6daA、6dbA、6daB及び6dbBがある。
【0025】
なお、増設スタッカユニット200は1個でもよいし2個より多くてもよい。2個以上の増設スタッカユニット200は、左右方向に連結される。ニーズに応じて増設スタッカユニット200の数を増やしていくことが可能である。
【0026】
図1及び図2に例において、最も右側の増設スタッカユニット200Aが、先頭の増設スタッカユニットであり、最も左側の増設スタッカユニット200Bが、末尾の増設スタッカユニットである。最も左側の増設スタッカユニット200Bの左に、増設搬送ユニット300が接続される。増設搬送ユニット300は、最も左側の増設スタッカユニット200Bの上部搬送路19uBから搬送された紙幣を受け取り、最も左側の増設スタッカユニット200Bの下部搬送路19dBへ搬送する、上下方向に長い折り返し搬送路29を有する。このように、増設搬送ユニット300は、増設スタッカユニット200の数によらず1個で共通的に使用できる。このため、増設スタッカユニット200を4個、8個と増やしていった場合においても、システム170全体の左右方向に沿った長さがむやみに大きくなることを抑制することが期待できる。
【0027】
増設スタッカユニット200では、上段増設スタッカ21ua及び21ubが左右方向に並んで配置され、下段増設スタッカ21da及び21dbも左右方向に並んで配置されている。各増設スタッカ21の紙幣スタック容量は、システム170の高さを抑えるために各本体スタッカ120よりも少なくしているが、システム170の高さが許される範囲で容量を大きくしてもよい。例えば、各増設スタッカ21の紙幣スタック容量は、各本体スタッカ120と同容量でもよい。
【0028】
また、各本体スタッカ120と同様に、各増設スタッカ21は、搬送されてきた紙幣を1枚ずつ整列して集積させるための円盤状のホイール7と、底面が水平(又は水平面寄り)であるため当該ホイール7からの紙幣が水平状態で載置される集積エリア4とを有する。増設スタッカユニット200に2個を超える増設スタッカ21が設けられる場合、当該2個を超える全ての増設スタッカ21が上下方向に並ぶのではなく、上段と下段の各々において左右方向に並ぶ。このため、ユニット200の高さを抑えつつ、各増設スタッカ21の姿勢(具体的には、増設スタッカ21に集積される紙幣の姿勢)を、各本体スタッカ120の姿勢と同様にすることができる。このため、各増設スタッカ21のホイール7として、各本体スタッカ120のホイール183と同一サイズのホイール(例えば、ホイール183と同じホイール)を採用することができる。また、各増設スタッカ21の集積エリア4の底面が水平(又は水平面寄り)となっているため、各増設スタッカ21において紙幣が立位状態とならず、ユーザは、各本体スタッカ120と同様に、水平となった状態の紙幣を取り出すことができる。図1図3の例によれば、上段増設スタッカ21uaA、21ubA、21uaB及び21ubBは、ホイール7uaA、7ubA、7uaB及び7ubBと、集積エリア4uaA、4ubA、4uaB及び4ubBとを有し、下段増設スタッカ21daA、21dbA、21daB及び21dbBは、ホイール7daA、7dbA、7daB及び7dbBと、集積エリア4daA、4dbA、4daB及び4dbBとを有する。
【0029】
また、上述したように、増設スタッカユニット200は、左右方向に延びた上部搬送路19uと、左右方向に延びた下部搬送路19dとを備える。上部搬送路19uは、ユニット200の右側の外部から搬送された紙幣を受け入れていずれかの上段増設スタッカ21uに紙幣を搬送するか或いはユニット200の左側の外部へ紙幣を排出する搬送路である。また、下部搬送路19dは、ユニット200の左側の外部から搬送された紙幣を受け入れていずれかの下段増設スタッカ21dに紙幣を搬送するか或いはユニット200の右側の外部へ紙幣を排出する搬送路である。従って、増設スタッカユニット200の上部搬送路19uに関し、右端は、紙幣仕分け装置100の増設搬送路151eの左端、又は、別の増設スタッカユニット200の上部搬送路19uの左端に接続され、左端は、増設搬送ユニット300の折り返し搬送路29の上端、又は、別の増設スタッカユニット200の上部搬送路19uの右端に接続される。増設スタッカユニット200の下部搬送路19dに関し、右端は、別の増設スタッカユニット200の下部搬送路19dの左端に接続され、左端は、増設搬送ユニット300の折り返し搬送路29の下端、又は、別の増設スタッカユニット200の上部搬送路19uの右端に接続される。なお、このような搬送路同士の接続は、ユニット200と装置100同士、ユニット200同士、又は、ユニット200とユニット300同士の相対的な位置が正しいときに可能である。相対的に正しい位置を実現するための位置決めは、後述の実施例で述べる高さ調整部により支援される。
【0030】
ホッパ110にセットされた紙幣は下部本体搬送路151aにて搬送されながら鑑別部140にてどのスタッカへ仕分けされるべきかが判定される。例えば、増設スタッカユニット200Aの増設スタッカ21uaAへ仕分けされると判定された紙幣は、増設搬送路151eを経てユニット200Aの上部搬送路19uAへ搬送され、紙幣の搬送方向を切り替えるゲート部6uaAによって増設スタッカ21uaAへ搬送される。増設スタッカ21uaAに搬送された紙幣は、前述のようにホイール7uaAによって1枚ずつ整列されてスタッカ21uaAの集積エリア4uaAに水平状態で集積される。
【0031】
また、増設スタッカ21dbAへ仕分けされると判定された紙幣は、同様にして、増設搬送路151e、増設スタッカユニット200Aの上部搬送路19uA、増設スタッカユニット200Bの上部搬送路19uB、増設搬送ユニット300の折り返し搬送路29、増設スタッカユニット200Bの下部搬送路19dB、増設スタッカユニット200Aの下部搬送路19dAを介して増設スタッカ21dbAへ搬送され、集積エリア4dbAに水平状態で集積される。
【0032】
また、図4に示すように、紙幣仕分け装置100と当該装置100に接続された増設スタッカユニット200Aとの間(接続部分)には、扉開閉スペース179が設けられる。具体的には、紙幣仕分け装置100の左側には、垂直本体搬送路151bでの紙ジャムを除去するために左方へ開く扉160を有しているが、増設スタッカユニット200Aが接続されても、扉160の開閉ができるように、紙幣仕分け装置100と増設スタッカユニット200Aとの間に、扉開閉スペース179がある。例えば、紙幣仕分け装置100の左面と増設スタッカユニット200Aの右面とのうち扉160に対応した部分が非接触となるよう突起又は凹みが設けられる等の方法により、扉開閉スペース179がある。
【0033】
また、前述のように、増設スタッカユニット200は2個以上、さらに追加して増設することも可能である。例えば、図5によれば、4個の増設スタッカユニット200A、200B、200C及び200Dが増設されているが、この場合も、増設搬送ユニット300は1個であり、結果として、左右方向の長さの増大を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施例では、例えば図2及び図3に示すように、増設搬送ユニット300は、更に、オプション搬送路311を有してよい。オプション搬送路311は、折り返し搬送路29の上端から増設搬送ユニット300の左面へと延びている搬送路であり、オプションとして使用可能な搬送路である。具体的には、例えば、増設搬送ユニット300の左方に、図示しない他のオプションユニットが接続された場合に、オプション搬送路311は、そこへ向けて紙幣を搬送するために使用され得る(例えば図3の灰色実線矢印を参照)。上記のオプションユニットとは、例えば、紙幣束毎に紙テープ等で結束を行う紙幣束巻機等がある。
【実施例2】
【0035】
実施例2を説明する。その際、少なくとも1つの上述の実施例との相違点を主に説明し、当該実施例との共通点については説明を省略又は簡略する。
【0036】
図6は、実施例2に係る増設スタッカユニットの右半分の模式的な外観斜視図である。図7は、図6の模式的なQ-Q断面図である。
【0037】
前述の増設スタッカユニット200は、上段増設スタッカ21uと、下段増設スタッカ21dとを備えるが、紙幣仕分け装置100が机上に設置された場合、机(又はユーザが座る椅子)の高さによっては、下段増設スタッカ21dはユーザの顔の位置よりかなり下方に位置することがあり得る。この場合、下段増設スタッカ21dの開口の上側がユーザの視線の妨げとなって、スタッカ21dの開口より後方(奥)が見え難くなり、スタッカ21d内に紙幣の取り残し等が起こる可能性がある。
【0038】
そこで、本実施例では、各下段増設スタッカの各々の少なくとも前側(例えば全体)が上方に傾いている。具体的には、図6及び図7に示すように、本実施例に係る増設スタッカユニット2000では、下段増設スタッカ21d(図6では右側の下段増設スタッカ21dbが例示)の開口部の前側が、当該開口部の後側に対して相対的に上方に所定の角度(例えば10~20度)傾いている(説明の便宜上、図6は、上段増設スタッカ21u及び下段増設スタッカ2d共に1個のみ図示されているが、実際には上段と下段のいずれにも左右方向に2個のスタッカが併設されている)。なお、増設スタッカ及び本体スタッカに関し、スタッカの「開口部」は、当該スタッカの前側から当該スタッカの後側へかけた開口(スペース)を形成しており、当該開口内に、集積エリアが存在する。
【0039】
ここで、下段増設スタッカ21dを傾けるにあたり(つまり、下段増設スタッカ21dを採用するにあたり)、当該スタッカ内の上部から紙幣を水平状態で放出させて、当該スタッカの底面のみを上方へ傾けて紙幣の重力によって斜め下方向に揃えるようにしてもよいが、仕分けされた紙幣の状態(傷み具合や折れや皺の状態など)によっては、紙幣の位置がバラバラになって仕分け紙幣の整列性が悪化する可能性がある。
【0040】
また、下段増設スタッカ21dの底面を傾けるだけでなく、上方からの平面視において、上段増設スタッカ21uの底面の前端よりも下段増設スタッカ21dの底面の前端を相対的により前方(ユーザ側)に突出させることによって、下段増設スタッカ21d内部の視認性をより向上させることができる。
【0041】
そこで、図7に示すように、増設スタッカ21dの全体が、開口部側(前側)が上方となるように傾けられている。それに合わせて、下段増設スタッカ21dへ紙幣を搬送する下部搬送路19dもその全体が上方に傾き、更に、ホイール7d及び集積エリア4dの各々も全体が上方に傾いている。
【0042】
また、このような傾いた下部搬送路19dへ紙幣を搬送させるため、図8図11に示すように(特に図10に示すように)、本実施例に係る折り返し搬送路3100において、増設スタッカユニット2000の下部搬送路19dに近い範囲(下部搬送路19と接続される箇所を含む)の前側が上方に傾いている。具体的には、折り返し搬送路3100は、増設スタッカユニット2000の上部搬送路19uに接続される左右方向に延びた上部接続搬送路と、増設スタッカユニット2000の下部搬送路19dに接続される左右方向に延びた下部接続搬送路と、上部接続搬送路の左端から下部接続搬送路の左端にかけて上下方向に延びた垂直搬送路とで構成されているが、それらのうちの下部接続搬送路が、上方に傾いている下部搬送路19dと接続されるため上方に傾いている。
【0043】
さらに、折り返し搬送路3100の下部接続搬送路を単純に傾けるだけであると、当該下部接続搬送路において、上方に傾いている側(つまり前側)が下方に傾いている側(つまり後側)に比較して搬送距離が短くなるため、上方に傾いている側が先行するような形で紙幣のスキュー(傾き)が発生する。
【0044】
そこで、本実施例では、予めスキューの発生を見越してそれを打ち消す方向に折り返し搬送路3100の垂直搬送路の少なくとも途中から下部接続搬送路にかけて徐々に大きく上下方向を軸に捻ることによって紙幣スキューを防止する。具体的には、折り返し搬送路3100は、搬送方向80に沿って例えばその中央が等間隔に並んだ複数の搬送ローラ31a~31eを有するが、垂直搬送路の前側が下方にあるほど徐々に大きく右側に傾き垂直搬送路の後側が下方にあるほど徐々に大きく左側に傾くよう、垂直搬送路の少なくとも途中から下方にかけてその搬送面が少しずつ捻られている。別の言い方をすれば、図9に示すように、増設スタッカユニット2000から出て折り返し搬送路3100を通って増設スタッカユニット2000に戻る搬送において、増設スタッカユニット2000から出た紙幣の前側角91Aの軌跡の長さと、当該紙幣の後側角91B(前側角91Aと同じ辺上の角)の軌跡の長さが同じとなるように、折り返し搬送路3100が構成されている(例えば垂直搬送路が上方から下方にかけて少しずつ捻られている)。また別の言い方をすれば、垂直搬送路の下部範囲の前側が垂直搬送路の下部範囲の後側に比べて下方になるにつれて相対的に左側に徐々に膨らむことで、紙幣の前側角91Aの軌跡の長さ(搬送距離)が、紙幣の後側角91Bの軌跡の長さと同じとなるよう確保される。
【0045】
以上により、下段増設スタッカ21dに仕分け済み紙幣がスタックされた場合であっても、ユーザは開口部の奥まで視線が届きやすくなるため、紙幣の取り残しを防止することができる。また、下段増設スタッカ21dにスタックされる紙幣にスキューが発生することもない。
【実施例3】
【0046】
前述のように、増設スタッカユニットは多数(例えば、8個など)、接続することも可能であるが、そのような場合、増設された装置全体が複数の異なる机上に跨って設置されることがある。このような場合、各机の微妙な高さのバラつき等により、増設ユニットの各々の高さが微妙にずれることがあり得る。また、システム170全体の重量による机の天板の撓みにより、増設ユニットの各々の高さが微妙にずれることがあり得る。
【0047】
そこで、図12に示すように、本実施例において、各増設スタッカユニット4200は、当該増設スタッカユニット4200の高さ(上下方向における位置)を調整するための高さ調整部12を備える。これにより、ユニット4200と装置100同士、ユニット4200同士、又は、ユニット4200とユニット300同士の相対的な位置を正しく決めるための位置決めがし易く、以って、ユニット4200と装置100同士、ユニット4200同士、又は、ユニット4200とユニット300同士の接続が容易である。
【0048】
高さ調整部12は、例えば、増設スタッカユニット4200の下部に水平方向に沿って設けられた複数の高さアジャスタ400を含む。各高さアジャスタ400は、増設スタッカユニット4200の下部の所定の位置に設けられ、設置面に対する増設スタッカユニット4200の高さを調整できる。高さアジャスタ400は、ユニット4200に固定された部位に取り付けられた調整フット420と、当該調整フット420の上下方向における位置を調整する調整ピン410と、調整ピン410の左右方向における位置を調整するねじ430とから構成される。調整ピン410(スライダの一例)は、ねじ430が通る貫通孔を有し、ねじ430の回転に伴いねじ430に対して相対的に左右方向に移動する。調整フット420(足の一例)は、ねじ430が通る貫通孔を有し、ねじ430の回転に伴い調整ピン410との相対的な位置が変化することでねじ430に対して相対的に上下方向に移動する。つまり、ねじ430を回すことによって調整ピン410が左右方向に移動し、その移動に伴って調整フット420へ押し下げ力が働く。例えば、ねじ430を回して調整ピン410を左方に移動させることによって調整フット420を下方に押し下げ、ユニット全体高さを高くする方向へ調整することができる。
【0049】
高さ調整部12の構成は、図12に例示の構成に限られない。例えば、図13に例示するように、高さ調整部は、増設スタッカユニット5200の下側に水平方向に沿って配されそれぞれ上下方向に付勢力(弾性力)が働く複数のバネ1301を含んでもよい。増設スタッカユニット5200は、複数のバネ1301の下に、机等との設置面を形成するプレート1300を有してもよい。これにより、一層容易に増設スタッカユニット5200の適切な位置決めが可能である。
【実施例4】
【0050】
図14は、実施例4に係る紙幣仕分けシステムのyz平面に沿った模式的な断面図である。
【0051】
紙幣仕分け装置6100において、垂直本体搬送路151bには、増設スタッカユニット6200の上部搬送路19uの右端に接続される増設搬送路151e1の他に、増設スタッカユニット6200の下部搬送路19dの右端に接続される増設搬送路151e2が接続されている。ゲート部5gにより、紙幣を垂直本体搬送路151bに沿って上方に搬送するか、或いは、増設搬送路151e2へと搬送するかが切り換えられる。
【0052】
本実施例によれば、各増設スタッカユニット6200において、下部搬送路19dにおける搬送方向は、上部搬送路19uと同じ左方となる。
【0053】
また、本実施例によれば、折り返し搬送路を有する増設搬送ユニットは不要である。図14の例によれば、最も左側の増設スタッカユニット6200Bの左側面のカバー6400が増設搬送ユニットに代えて取り付けられる。
【0054】
以上、幾つかの実施例を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0055】
例えば、増設搬送ユニット300の折り返し搬送路29における搬送方向は、上から下への折り返しに代えて、下から上への折り返しでもよい。具体的には、例えば、増設搬送路151e1に代えて増設搬送路151e2(図14参照)が採用されてよい。その場合、例えば、紙幣が、増設搬送路151e2から左方へ下部搬送路19dA及び下部搬送路19dBを通り、下部搬送路19dBから折り返し搬送路29を介して上方へと搬送され、折り返し搬送路29から上部搬送路19uBへと搬送されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100:紙幣仕分け装置
200:増設スタッカユニット
300:増設搬送ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14