IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7171393光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置
<>
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図1
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図2
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図3
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図4
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図5
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図6
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図7
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図8
  • 特許-光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
G01B11/24 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018223287
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020085754
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】矢木 実
(72)【発明者】
【氏名】野元 博文
(72)【発明者】
【氏名】白子 未来
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-203006(JP,A)
【文献】特公平5-43246(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムの中心部を支持装置に支持させ、
前記支持装置で支持している前記光学フィルムの上方又は下方であり且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に、前記光学フィルムまでの距離を測定する測定装置を配置し、
前記距離の測定対象とする領域が前記光学フィルムの前記中心部を起点とする円周のラインとなるように前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させるか、前記縦軸線を中心とする周方向に沿って前記測定装置を移動させながら、前記測定装置で前記距離を測定し、
前記測定装置で測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出する、
光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項2】
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムを上下方向に対して交差する交差方向に向けたうえで、該光学フィルムの中心部を支持装置に支持させ、
前記支持装置で支持している前記光学フィルムに対して前記交差方向において対向配置され且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に、前記光学フィルムまでの距離を測定する測定装置を配置し、
前記距離の測定対象とする領域が前記光学フィルムの前記中心部を起点とする円周のラインとなるように前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ前記交差方向に延びる交差軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させつつ、配置位置を固定した状態の前記測定装置で前記距離を測定し、
前記測定装置で測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出する、
光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項3】
前記測定装置により、前記光学フィルムの外周側であり且つ前記光学フィルムの外周端よりも内側の位置の前記距離を測定する、
請求項1又は請求項2に記載の光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項4】
前記カール情報に基づいて、前記カールの曲率を示す曲率情報を導出する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項5】
前記光学フィルムの直径を10mm~100mmとする、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項6】
前記支持装置が有する、前記光学フィルムを配置する支持基部と、該支持基部に前記光学フィルムを固定するための固定部であって、磁力により前記光学フィルムを介して前記支持基部に吸着可能な固定部とによって、前記光学フィルムを挟持する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析方法。
【請求項7】
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムの中心部を支持する支持装置と、
前記支持装置で支持している前記光学フィルムの上方又は下方であり且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に配置される測定装置であって、前記光学フィルムまでの距離を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出するカール導出手段とを備え、
前記距離の測定対象とする領域が前記光学フィルムの前記中心部を起点とする円周のラインとなるように前記支持装置が支持している前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記光学フィルムを回転させるか、前記縦軸線を中心とする周方向に沿って前記測定装置を移動させながら、前記測定装置で前記距離を測定するように構成される、
光学フィルムのカールの分析装置。
【請求項8】
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムを上下方向に対して交差する交差方向に向けた状態で支持する支持装置であって、該光学フィルムの中心部を支持する支持装置と、
前記支持装置が支持している前記光学フィルムに対して前記交差方向において対向配置され且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に配置される測定装置であって、光学フィルムまでの距離を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出するカール導出手段とを備え、
前記距離の測定対象とする領域が前記光学フィルムの前記中心部を起点とする円周のラインとなるように前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させつつ、配置位置を固定した状態の前記測定装置で前記距離を測定するように構成される、
光学フィルムのカールの分析装置。
【請求項9】
前記測定装置は、前記光学フィルムの外周側であり且つ前記光学フィルムの外周端よりも内側の位置を測定位置とするように構成される、
請求項7又は8に記載の光学フィルムのカールの分析装置。
【請求項10】
前記カール情報に基づいて、前記カールの曲率を示す曲率情報を導出する曲率導出手段を備える、
請求項7乃至9の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析装置。
【請求項11】
前記光学フィルムの直径は、10mm~100mmである、
請求項7乃至10の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析装置。
【請求項12】
前記支持装置は、
前記光学フィルムを配置する支持基部と、
該支持基部に前記光学フィルムを固定するための固定部であって、磁力により前記光学フィルムを介して前記支持基部に吸着可能な固定部とを有する、
請求項7乃至11の何れか1項に記載の光学フィルムのカールの分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに生じているカールを分析する光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材(例えば、紙やプラスチックフィルム等)の品質を検査する際に、該シート材のカール(反り具合)を分析することがある。
【0003】
シート材のカールの分析には、例えば、特許文献1の第1図に図示されているように、測定対象となる光学フィルムを載置するターンテーブルと、該ターンテーブルの上方からシート材の端部に向けて光を照射する第1の扇形光束投射装置と、上下方向において第1の扇形光束投射装置と並ぶ位置に配置され且つ第1の扇形光束投射装置からの光を受光する第1の光扇形光束受光装置と、シート材の中心部上から該シート材の端部に向けて光を照射する第2の扇形光束投射装置と、水平方向において前記第2の扇形光束投射装置と並ぶ位置に配置され且つ第1の扇形光束投射装置からの光を受光する第2の扇形光束受光投射装置と、第1の光扇形光束受光装置で受光した第1の扇形光束投射装置の光の情報及び第2の光扇形光束受光装置で受光した第2の扇形光束投射装置の光の情報に基づいてシート材のカールを評価する評価装置と、を備えたカール評価装置が用いられることがある。
【0004】
ターンテーブルには長方形状のシート材が載置される。また、ターンテーブルは載置されたシート材の中心部を保持した状態で、該シート材を回転させるように構成されている。
【0005】
そして、第1の扇形光束投射装置と第2の扇形光束投射装置とは、異なる位置に設置されているが、シート材の端部の同じ場所に光を投射できるように構成されている。
【0006】
そのため、前記カール評価装置によれば、ターンテーブルでシート材を回転させながら第1の光扇形光束受光装置で受光した第1の扇形光束投射装置の光の情報と、第2の光扇形光束受光装置で受光した第2の扇形光束投射装置の光の情報とを取得し、これらの光の情報に基づいて評価装置によりシート材のカールを評価することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭62-203006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成のカール評価装置では、長方形状のシート材をターンテーブルの中心部に保持させているため、シート材の保持位置から外周端部の各位置までの距離がそれぞれ異なっており、例えば、シート材の保持位置と短辺との間、保持位置と長辺との間と、保持位置と角部との間とでは、自重による撓み方(変形量)が異なる。
【0009】
そのため、上記構成のカール評価装置では、シート材の自重がカールに与える影響が場所によって異なるため、計測したカールとシート材に実際に生じているカールとの差異が大きくなる。そのため、計測したカールの正確度が低下することが問題となっている。また、このような問題は、光学フィルムのカールを分析する場合にも同様に起こり得る。
【0010】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、光学フィルムのカールの分析結果の正確度を高めることができる光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光学フィルムのカールの分析方法は、
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムの中心部を支持装置に支持させ、
前記支持装置で支持している前記光学フィルムの上方又は下方であり且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に、前記光学フィルムまでの距離を測定する測定装置を配置し、
前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させるか、前記縦軸線を中心とする周方向に沿って前記測定装置を移動させながら、前記測定装置で前記距離を測定し、
前記測定装置で測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出する。
【0012】
上記構成の光学フィルムのカールの分析方法によれば、円形状に形成した光学フィルムの中心部を支持装置に支持しているため、光学フィルムの中心部から外周端の各位置までの自重による変形量のばらつきを抑えることができる。
【0013】
従って、前記光学フィルムのカールの分析方法は、光学フィルムの測定箇所の測定条件を揃えたうえで測定装置で測定した前記距離に基づいてカール情報を導出することで、正確度の高いカールの分析結果を導出できるようになっている。
【0014】
本発明の別の光学フィルムのカールの分析方法は、
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムを上下方向に対して交差する交差方向に向けたうえで、該光学フィルムの中心部を支持装置に支持させ、
前記支持装置で支持している前記光学フィルムに対して前記交差方向において対向配置され且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に、前記光学フィルムまでの距離を測定する測定装置を配置し、
前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ前記交差方向に延びる交差軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させつつ、配置位置を固定した状態の前記測定装置で前記距離を測定し、
前記測定装置で測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出する。
【0015】
上記構成の光学フィルムのカールの分析方法によれば、円形状に形成した光学フィルムを前記交差方向に向けた状態で該光学フィルムの中心部を支持装置に支持しているが、支持装置で回転させている光学フィルムに対して、定位置にある測定装置によって前記距離を測定するため、光学フィルムにおける測定装置による測定点に到達した部分にかかる荷重が一定又は略一定となり、変形量のばらつきが抑えられる。
【0016】
従って、前記光学フィルムのカールの分析方法においても、光学フィルムの測定箇所の条件を揃えたうえで測定装置で測定した前記距離に基づいてカール情報を導出することで、正確度の高いカールの分析結果を導出できるようになっている。
【0017】
本発明の光学フィルムのカールの分析方法において、
前記測定装置により、前記光学フィルムの外周側であり且つ前記光学フィルムの外周端よりも内側の位置の距離を測定するようにしてもよい。
【0018】
上記構成によれば、支持装置に支持させることによる変形が起こる光学フィルムの中心部側と、光学フィルムの外周端とを避けた位置を測定装置の測定対象とすることができるため、測定装置の測定結果の精度が高まる。
【0019】
本発明の光学フィルムのカールの分析方法は、
前記カール情報に基づいて、前記カールの曲率を示す曲率情報を導出する、ようにしてもよい。
【0020】
このようにすれば、光学フィルムのサイズによらず、光学フィルムに生じているカールの状態を正しく把握することができる。
【0021】
本発明の光学フィルムのカールの分析方法において、
前記光学フィルムの直径を10mm~100mmとしてもよい。
【0022】
このようにすれば、光学フィルムが自重で変形しにくく、また、支持装置に支持させることによる変形もしにくくなる。
【0023】
また、本発明の光学フィルムのカールの分析方法において、
前記支持装置が有する、前記光学フィルムを配置する支持基部と、該支持基部に前記光学フィルムを固定するための固定部であって、磁力により前記光学フィルムを介して前記支持基部に吸着可能な固定部とによって、前記光学フィルムを挟持するようにしてもよい。
【0024】
このようにすれば、支持装置に支持させる光学フィルムが傷付きにくくなる。
【0025】
本発明の光学フィルムのカールの分析装置は、
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムの中心部を支持する支持装置と、
前記支持装置で支持している光学フィルムの上方又は下方であり且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に配置される測定装置であって、光学フィルムまでの距離を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出するカール導出手段とを備え、
前記支持装置が支持している前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記光学フィルムを回転させるか、前記縦軸線を中心とする周方向に沿って前記測定装置を移動させながら、前記測定装置で前記距離を測定するように構成される。
【0026】
本発明の別の光学フィルムのカールの分析装置は、
カールの分析対象とする円形状の光学フィルムを上下方向に対して交差する交差方向に向けた状態で支持する支持装置であって、該光学フィルムの中心部を支持する支持装置と、
前記支持装置が支持している前記光学フィルムに対して前記交差方向において対向配置され且つ前記中心部から前記光学フィルムの径方向外側にずれた位置に配置される測定装置であって、光学フィルムまでの距離を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記距離に基づいて前記光学フィルムのカールの状態を示すカール情報を導出するカール導出手段とを備え、
前記光学フィルムの前記中心部を通り且つ上下方向に延びる縦軸線を中心として前記支持装置が支持している前記光学フィルムを回転させつつ、配置位置を固定した状態の前記測定装置で前記距離を測定するように構成される。
【0027】
本発明の光学フィルムのカールの分析装置において、
前記測定装置は、前記光学フィルムの外周側であり且つ前記光学フィルムの外周端よりも内側の位置を測定位置とするように構成されていてもよい。
【0028】
本発明の光学フィルムのカールの分析装置は、
前記カール情報に基づいて、前記カールの曲率を示す曲率情報を導出する曲率導出手段を備えるようにしてもよい。
【0029】
本発明の光学フィルムのカールの分析装置において、
前記光学フィルムの直径は、10mm~100mmであってもよい。
【0030】
本発明の光学フィルムのカールの分析装置において、
前記支持装置は、前記光学フィルムを配置する支持基部と、該支持基部に前記光学フィルムを固定するための固定部であって、磁力により前記光学フィルムを介して前記支持基部に吸着可能な固定部とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の光学フィルムのカールの分析方法、及び分析装置によれば、光学フィルムのカールの分析結果の正確度を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置の概略図である。
図2図2は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置における、支持装置の部分拡大図である。
図3図3は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置における、支持基部上に配置されている試料フィルムを上方から見た図である。
図4図4は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置における、処理装置のブロック図である。
図5図5は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置で導出したカール情報(カール曲線)の説明図である。
図6図6は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置における、曲率導出処理の説明図である。
図7図7は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置における、曲率導出処理の説明図であり、測定装置による測定ライン上での計測の軌跡から半径の円に基づいて作成した円筒をy軸において上方から見た図である。
図8図8は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析方法における、試料フィルムの形成の仕方の説明図である。
図9図9は、同実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置の主要な動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る光学フィルム用のカールの分析装置、及び分析方法について添付図面を参照しつつ説明を行う。
【0034】
光学フィルム用のカールの分析装置(以下、分析装置と称する)は、光学フィルム(例えば、偏光フィルム)に生じるカール(曲がり)を分析するシステムである。
【0035】
分析装置1は、図1に示すように、分析対象とする光学フィルム(以下、試料フィルムと称する)Fの状態を測定する測定ユニット2と、該測定ユニット2で測定した試料フィルムFの状態に基づいて、該試料フィルムFに生じるカールを分析する処理を行う処理装置3と、を備えている。なお、光学フィルムFとは、例えば、偏向フィルムや、位相差フィルムである。また、光学フィルムFの厚みは、例えば、1~100μmである。
【0036】
測定ユニット2は、試料フィルムFを支持する支持装置20と、該支持装置20で支持している試料フィルムFの状態を測定する測定装置21と、支持装置20、及び測定装置21が設置されるベース22と、を備えている。
【0037】
なお、支持装置20で支持する試料フィルムFは、円形状(より具体的には、中心から外周端の各位置までの距離(半径)が同一又は略同一の円形状)に形成されている。また、試料フィルムFの直径は、10mm~100mmであることが好ましく、10mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmがさらに好ましい。
【0038】
支持装置20は、円形状の試料フィルムFの中心部を支持するように構成されている。
【0039】
本実施形態に係る支持装置20は、ベース22(より具体的にはベース22の後述する設置面)から延出する支持基部200と、該支持基部200の先端面に試料フィルムF(試料フィルムFの中心部)を固定するための固定部201と、支持基部200を、該支持基部200で支持している試料フィルムFの中心に交差(本実施形態では直交)する方向に沿って延びる交差軸線(本実施形態では中心軸線と称する)を中心(回転中心)として回転させるための回転駆動部202と、を備えている。
【0040】
支持基部200は、図2に示すように、長手方向を上下方向に対応させた姿勢となっている。すなわち、支持基部200は、縦向きに設置されている。また、支持基部200の先端面は、試料フィルムFの一面が当接する当接面200aとなっている。本実施形態では、上述の通り支持基部200が縦向きに設置されているため、試料フィルムFが支持基部200の当接面200a上に載置されるようになっている。
【0041】
固定部201は、支持基部200の当接面200aと協働して試料フィルムFを挟持するように構成されている。より具体的に説明すると、固定部201は、試料フィルムFを介して支持基部200の当接面200aに対して着脱可能となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、磁力で固定部201を支持基部200の当接面200aに吸着するように構成することにより、固定部201と支持基部200の当接面200aとによって、試料フィルムFの中心部を一方の面側と他方の面側とから挟持できるように構成されている。そのため、試料フィルムFは、中心軸線が上下方向に一致又は略一致するようにして支持基部200に固定される。
【0043】
本実施形態に係る回転駆動部202は、縦向きに設置された支持基部200を前記中心軸線を中心として回転させるように構成されている。そのため、前記中心軸線は、支持基部200で支持している試料フィルムFの中心を通り、且つ上下方向に延びる縦軸線に一致しており、回転駆動部202は、この縦軸線を中心として試料フィルムFを回転させるように構成されている。
【0044】
測定装置21は、試料フィルムFまでの距離を測定するように構成されたものであり、例えば、試料フィルムFにレーザーを照射することで前記距離を測定できるように構成された非接触式の変位計であってもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、支持基部200の当接面200aに固定している試料フィルムFの前記中心軸線が上下方向に一致又は略一致するため、測定装置21は、試料フィルムFよりも上下方向における上方側に配置(対向配置)されている。そのため、測定装置21が測定する試料フィルムFまでの距離とは、測定装置21から試料フィルムFの上側に配置されている一面までの距離であるが、例えば、測定装置21は、試料フィルムFの上側に配置されている一面上で測定した地点での高さであってもよい。
【0046】
また、測定装置21は、図3に示すように、前記中心軸線が延びる方向と同方向で試料フィルムFと対向する位置に合わせて配置変更可能であり、本実施形態においては、試料フィルムFの外周側であり且つ外周端よりも内側の領域に対向する位置に合わせて配置変更可能である。
【0047】
測定装置21は、試料フィルムFの測定中においては配置位置を固定するように構成されており、これにより、試料フィルムFの外周側であり且つ外周端よりも内側の領域において、該試料フィルムFの中心を起点とする円周上(以下、測定ラインと称する)Rを測定対象とするようになっている。
【0048】
なお、試料フィルムFの外周側であり且つ外周端よりも内側の領域とは、例えば光学フィルムの半径の中点よりも外側であり且つ外周端よりも内側の領域のことである。また、試料フィルムFの外周側であり且つ外周端よりも内側とは、例えば、光学フィルムの半径が20mm以上である場合においては、光学フィルムの外周端を基準として径方向における光学フィルムの中心側へのずれ(変位量)が10mm以内となる位置のことである。
このように、測定装置21は、光学フィルムの中心部から光学フィルムの(光学フィルムの径方向外側)にずれた位置に配置可能である。
【0049】
なお、測定装置21は、測定ラインRを前記周方向に沿って断続的に(つまり、周方向に沿って複数点)測定してもよいし、測定ラインRを前記周方向に沿って全周に亘って連続的に測定してもよい。また、測定装置21は、少なくとも前記中心軸線に直交する方向で配置位置を変更できるように構成されていればよいが、前記中心軸線に沿う方向での配置位置変更もできるように構成されていてもよい。
【0050】
ベース22は、図1に示すように、支持装置20を設置するステージ220と、ステージ220に固定され且つ測定装置21が取り付けられるフレーム221と、を備えている。
【0051】
ステージ220には、支持装置20が設置される設置面220aが含まれており、この設置面220aは、上下方向における上方側に向いた面である。また、設置面220aには、支持基部200に固定する試料フィルムFの向き(周方向における向き)を合わせるための支持装置側表示部220bが形成されている。支持表示側表示部は、例えば、直線や点等のマークで構成することができるが、本実施形態では直線で構成されている。
【0052】
処理装置3は、測定装置21で測定した前記距離が測定情報として入力され、且つ該測定情報に基づいて試料フィルムFのカールの状態を示すカール情報を導出するカール情報導出手段30と、該カール情報導出手段30で導出したカール情報に基づいて試料フィルムFの曲率を示す曲率情報を導出する曲率情報導出手段31と、を備えている。
【0053】
なお、処理装置3は、例えば、パソコンのようなCPUや、記憶装置等を備えたもので構成でき、測定ユニット2(測定装置21)と無線通信若しくは有線通信可能に構成されていればよい。
【0054】
カール情報導出手段30は、測定情報が測定装置21から直接的に入力されるように構成されていてもよいし、測定情報が測定装置21から間接的に入力されるように構成されていてもよい(すなわち、ハードディスク等に記憶されている測定情報が入力されるように構成されていてもよい)。
【0055】
また、カール情報導出手段30は、試料フィルムFの中心を起点とする周方向において、測定情報の一周に亘る連続的な変化を示す情報をカール情報として導出する。
【0056】
なお、測定装置21が測定ラインRを前記周方向に沿って断続的に測定する(すなわち、前記周方向に沿う円周上の複数の地点(測定点)において測定する)ように構成されている場合、カール情報導出手段30は、不連続な複数の測定情報が入力されることになるが、該複数の測定情報に基づいて、測定していない場所の測定情報を導出(近似)して補填するように構成されていればよい。また、測定装置21が測定ラインRを断続的に測定する場合、測定ラインR全周のうちの10%~30%の領域を測定すればカール情報導出手段30が正確なカール情報を導出することができる。
【0057】
カール情報は、例えば、図5に示すように、測定始点から測定終点までの一周分に亘る試料フィルムFの高さの連続的な変化を表す曲線(以下、カール曲線と称する)Cとして表すことができ、図5においては、測定装置21が測定した測定情報に該当する部分を「D1」で示し、測定情報に基づいてカール導出手段30が導出した(近似した)測定情報を「D2」で示している。上述のように、本実施形態の測定装置21は、前記周方向に沿う円周上の複数の測定点において測定情報を取得するように構成されているため、D1は、各測定点で取得した測定情報をプロットした点である。
【0058】
カール情報には、試料フィルムFの測定領域の前記周方向における各地点を示す複数の測定位置情報と、各測定位置情報ごとの測定情報(高さ)とが関連付けられている。
【0059】
また、カール情報には、測定情報が示す測定値が上昇から下降に切り替わる変曲点である2つの頂部側変曲点P1と、測定情報が示す測定値が下降から上昇に切り替わる変曲点である2つの谷部側変曲点P2とが含まれている。
【0060】
試料フィルムFが測定装置21側に向かって反るようにカールしている場合(定装置21側とは反対側に向かって凸となるようにカールしている場合)、頂部側変曲点P1は、試料フィルムFのカールの谷部の最下部(カールの底部)の位置、具体的には、測定装置21から谷部の最下部までの距離と、試料フィルムFの前記周方向における該最下部の位置とを示し、谷部側変曲点P2は、試料フィルムFのカールの山部の頂部の位置、具体的には、測定装置21から山部の頂部までの距離と、試料フィルムFの前記周方向における該頂部の位置とを示す。
【0061】
一方、試料フィルムFが測定装置21側とは反対側に向かって反るようにカールしている場合(定装置21側に向かって凸となるようにカールしている場合)、頂部側変曲点P1は、試料フィルムFのカールの山部の頂部の位置、具体的には、測定装置21から山部の頂部までの距離と、試料フィルムFの前記周方向における該頂部の位置とを示し、谷部側変曲点P2は、試料フィルムFのカールの谷部の最下部(カールの底部)の位置、具体的には、測定装置21から谷部の最下部までの距離と、試料フィルムFの前記周方向における該最下部の位置とを示す。
【0062】
そのため、試料フィルムFが測定装置21側に向かって反るようにカールしている場合、試料フィルムFの中心点と、2つの頂部側変曲点P1が示す試料フィルムFの前記周方向における頂部の位置とを結ぶ直線の向きを確認することで、カールの方向を特定することができ、また、頂部側変曲点P1が示す測定装置21から頂部までの距離と、谷部側変曲点P2が示す測定装置21から最下部までの距離との差異を確認することで、カールの強さ(曲がり具合)を特定することができる。
【0063】
一方、試料フィルムFが測定装置21側とは反対側に向かって反るようにカールしている場合、試料フィルムFの中心点と、2つの谷部側変曲点P2が示す試料フィルムFの前記周方向における頂部の位置とを結ぶ直線の向きを確認することで、カールの方向を特定することができまた、頂部側変曲点P1が示す測定装置21から谷部までの距離と、谷部側変曲点P2が示す測定装置21から頂部までの距離との差異を確認することで、カールの強さ(曲がり具合)を特定することができる。
【0064】
続いて、曲率情報導出手段31が曲率情報を導出する曲率導出処理について図6図7を参照しつつ説明する。まず、図6に示すように、カールサンプルを曲率(半径)Rの円(xy平面における円)に近似した円に基づいて円筒Aを作成し、レーザー計測による計測の軌跡(測定装置21による測定ラインR上での計測の軌跡)から半径rの円(xy平面における円)に基づいて円筒Bを作成する。なお、円筒Aの曲面と円筒Bの曲面の交差線上の点Pが、カールサンプルの測定値となる。
【0065】
円筒Aは、下式(1)で表される。

【数1】
【0066】
カールサンプルの配置時や、測定装置21の設置時には、カールサンプルの配置位置や、測定装置21の設置位置、すなわち、計測位置のずれ(レーザーによる計測位置のずれ)が生じる。
【0067】
そのため、カールサンプルの配置位置のX方向でのずれ量を「δ」、測定装置21の設置位置のずれによる計測位置のずれ量(レーザーによる計測位置のずれ量)を「φ」とすると、中心線がx方向にδ分傾き、且つx軸を中心とする周方向でφ分回転した状態の円筒Bは、下式(2)で表される。なお、図6においては、カールサンプルの配置位置のずれ量δ、測定装置21の設置位置のずれ量φを反映した座標系を座標軸x、y´、z´としている。

【数2】
【0068】
そして、AとBとの交差線上の点Pの位置を下式(3)とする場合、この式(3)のX,Zは、式(2)に基づいて下式(4)、(5)となる。

【数3】

【数4】

【数5】
【0069】
また、Yは、式(1)に基づく下式(6)によって表される。

【数6】
【0070】
従って、点Pの位置は、下式(7)で表される。

【数7】
【0071】
そして、座標軸x、y´、z´で表される座標系での点Pの位置は、下式(8)となり、Y´は、下式(9)となる。

【数8】

【数9】
【0072】
このように、レーザー計測により得られる曲線は式(9)により近似できる。
【0073】
ここで、式(9)、固定ピンの高さをd、位相ズレをφを用いると、計測値の理論式は下式(10)となる。

【数10】
【0074】
さらに、フィッティングパラメータを成分とするベクトルuを下式(11)で定義し、式(10)のyをuの各成分で偏微分すると下式(12)~(16)となる。

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】
【0075】
計測データを(Y,θ)とし、該計測データに対する理論値をyとし、計測誤差F
と、この計測誤差Fの平方和Jとをそれぞれ下式(17)、(18)で定義する。

【数17】

【数18】
【0076】
この場合、平方和Jの各フィッティングパラメータにおける勾配ベクトル∇Jは、下式(19)となる。

【数19】
【0077】
そして、ガウスニュートン近似を用いたヘッセ行列Hは、下式(20)となる。

【数20】
【0078】
また、曲率情報導出手段31は、論理式(LM法)によるフィッティングを以下1~10の手順に沿って実行可能である。

1.cを0.0001とする(なお、cはLM法の係数である)。
2.uの初期値を与える。
3.J(式(18))を計算する。
4.▽J(式(19))とH(式(20))を計算する。
5.下式(21)の連立方程式を解いてΔuを求める。

【数21】

6.次のようにu´をu+Δuにより計算する。
7.u´で式(18)を計算しJ´とする。
8.J´>Jであれば、cを10cに更新し、上記5の手順に戻る。
9.J´>Jでなければ、cをc/10、JをJ´、uをu´に更新する。
10.||Δu||<ε(εは収束判定値)であれば、uを式(11)に返して終了し、||Δu||<εでなければ上記4の手順に戻る。
【0079】
本実施形態に係る分析装置1の構成は、以上の通りである。続いて、添付図面を参照しつつ分析方法を説明する。
【0080】
本実施形態に係る分析方法は、試料フィルムFの周方向全周に亘って連続的に変化する位置情報(本実施形態では高さ)に基づいて、カールの状態を把握できる情報を導出する。
【0081】
より具体的に説明すると、分析方法は、試料フィルムFを作成し、該試料フィルムFを支持装置20に設置し、測定装置21により試料フィルムFの測定を行った後に、処理装置3でカール情報、曲率情報を導出する。
【0082】
試料フィルムFは、図8に示すように、ロール状の原反から光学フィルムを繰り出した繰出部分Sを円形状に切り出すことにより形成される。なお、図8では、繰出部分Sから3枚の試料フィルムFを切り出しているが、試料フィルムFを切り出す枚数は適宜変更可能であり、試料フィルムFを切り出す位置もまた適宜変更可能である。
【0083】
また、本実施形態では、試料フィルムFを切り出す前に、繰出部分Sにおける試料フィルムFを切り出す予定の領域に対して支持表示側表示部と合わせて支持基部200に固定する試料フィルムFの向きを定めるためのフィルム側表示部Mを形成している。
【0084】
なお、図8では、試料フィルムFを切り出す予定の領域を通る直線をフィルム側表示部Mとしている。
【0085】
続いて、試料フィルムFを支持基部200の当接面200aに固定する。本実施形態では、試料フィルムFの中心部の一方側の面を支持基部200の当接面200aに当接させた後に(載せた後に)、試料フィルムFの上方側から固定部201を支持基部200の当接面200aに取り付ける。
【0086】
これにより、試料フィルムFは、前記中心軸線を上下方向に対応させた状態で、固定部201と支持基部200の当接面200aとにより中心部が一方の面側と他方の面側とから挟持される。
【0087】
なお、試料フィルムFを支持基部200に固定する際、支持装置側表示部220bとフィルム側表示部Mとの位置関係を確認することによって試料フィルムFの向きを定めることができるため、カールの発生方向を確実に特定できる。
【0088】
続いて、測定装置21を前記中心軸線が延びる方向(本実施形態では上下方向)において試料フィルムFの外周側と対向する場所、より具体的には、上下方向において、試料フィルムFの外周側であり且つ該試料フィルムFの外周端よりも内側の位置と対向する場所に配置する
【0089】
これにより、試料フィルムF、測定装置21の準備が完了し、続いて、図9に示すように、測定装置21による資料フィルムFの測定地点θ(前記縦軸線(上下方向に延び且つ前記中心軸線を通る軸線)を中心とする周方向における測定位置)と、該測定地点θで測定装置21が測定した試料フィルムFまでの距離yを計測し(S1)、測定装置21による計測半径rを導出し(S2)、支持装置20による試料フィルムFの支持位置(支持位置の高さ)dを導出し(S3)、しかる後に、得られたθ、y、r、dを用いて前記論理式のフィッティングを実行し(S4)、曲率情報導出手段31が曲率導出処理を実行する(S5)。その結果、式(11)からR, φ, ψ, δ の値がフィッティングより算出される。1/R が曲率を示し、ψがカールの方向を示す。つまり、曲率導出処理ではカールの方向も導出される。
【0090】
測定地点θで測定装置21が測定した試料フィルムFまでの距離yを計測する際(S1)、回転駆動部202により、支持基部200を回転させることで、試料フィルムFを前記縦軸線(上下方向に延び且つ前記中心軸線を通る軸線)を中心として回転させる。
【0091】
このとき、測定装置21の位置は固定されているが、試料フィルムFの回転に伴い、測定装置21による測定箇所が変化する。
【0092】
そして、測定装置21が測定ラインR上で試料フィルムFまでの距離yを測定し、測定地点θに測定装置21が測定した試料フィルムFまでの距離yを関連付けた情報を測定情報として得る。さらに、計測半径rと、支持装置20による試料フィルムFの支持位置dとを順番に導出する。
【0093】
測定装置21で測定された測定情報は、カール導出手段30に入力される。測定装置21が測定ラインR内の測定を断続的に実行した場合、カール導出手段30には不連続な複数の測定情報が導入されるが、カール導出手段30は、入力された複数の測定情報に基づいて測定されていない測定情報を近似することで、カール情報を導出する(S4)。
【0094】
続いて、曲率情報導出手段31が曲率導出処理によりカールの曲率を示す曲率情報、及びカールの方向を導出する(S5)。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る分析装置1、及び分析方法によれば、円形状に形成した試料フィルムFの中心部を支持装置20に支持しているため、試料フィルムFの中心部から外周端の各位置までの自重による変形量(撓み方)が略均一になる。また、本実施形態の試料フィルムFは、中心から外周端の各位置までの距離(半径)が同一又は略同一であるため、自重による変形量がより均一になり易い。
【0096】
従って、試料フィルムFの測定箇所(測定ラインR全体)の測定条件を揃えたうえで測定装置21で測定した前記距離に基づいてカール情報を導出することができるため、処理装置3(より具体的にはカール情報導出手段30)が正確度の高いカールの分析結果(カール情報)を導出できるようになっている。
【0097】
また、試料フィルムFは、直径が10mm~100mmとなっているため、自重で変形しにくく、また、支持装置20に支持させることによる変形もしにくくなる。
【0098】
さらに、測定装置21により、試料フィルムFの外周側であり且つ試料フィルムFの外周端よりも内側の位置までの距離を測定するため、支持装置20に支持させることによる変形が起こる試料フィルムFの中心部側と、試料フィルムFの形成時にバリが生じやすい外周端とを避けた位置を測定対象(測定ラインR)とすることができるため、測定装置21による測定精度を高めることができる。
【0099】
そして、本実施形態では、磁力により試料フィルムFを介して支持基部200に固定部201を取り付けることができるため、支持基部200と固定部201とで試料フィルムFを挟持することで、支持装置20で支持する試料フィルムFを傷付けにくくすることもできる。
【0100】
さらに、本実施形態では、曲率導出手段31により試料フィルムFのカールの曲率を示す曲率情報を導出している。カールの曲率は、試料フィルムFのサイズにより変化するパラメータではないため、例えば、サイズ違いの試料フィルムFのカールの状態を比較する場合であっても、それぞれの曲率情報同士を比較すれば、カールの状態を正確に比較することができる。これにより、例えば、光学フィルムを製造する工程の中で、別々の工程で形成した試料フィルムF同士を比較する際においても、該試料フィルムF同士の正確な比較結果を得ることができるようになる。
【0101】
なお、本発明の分析装置、及び分析方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0102】
上記実施形態において、試料フィルムFは、中心から外周端の各位置までの距離(半径)が同一又は略同一の円形状に形成されていたが、この構成に限定されるものではない。試料フィルムFは、例えば、楕円形状であってもよい。
【0103】
上記実施形態において、支持基部200は、長手方向を上下方向に対応させた姿勢、すなわち、縦向きに設置されていたが、この構成に限定されない。例えば、支持基部200は、長手方向を水平方向に対応させた姿勢、すなわち、横向きに設置されていてもよい。この場合、試料フィルムFの中心軸線は、試料フィルムFの中心を通り、且つ水平方向に延びる横軸線に一致しており、回転駆動部202は、この横軸線を中心として試料フィルムFを回転させることになる。
【0104】
また、支持基部200は、長手方向を上下方向と水平方向とに交差した方向である交差方向に対応させた姿勢、すなわち、斜め向きに設置されていてもよい。この場合、試料フィルムFの中心軸線は、試料フィルムFの中心を通り、且つ前記斜め方向に沿って延びる斜め軸線に一致しており、回転駆動部202は、この斜め軸線を中心として試料フィルムFを回転させることになる。
【0105】
支持基部200が横向きに設置される場合であっても、斜め向きに設置される場合であっても、測定装置21の配置位置を固定し且つ試料フィルムFを回転させた状態で測定を行えば、試料フィルムFにおける測定装置21による測定点に到達した部分にかかる荷重を揃えることができるため、試料フィルムFの分析結果の正確度を高めることができる。
【0106】
上記実施形態において、固定部201は、支持基部200の当接面200aと協働して該試料フィルムFを挟持するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、固定部201は、支持基部200の当接面200aから延出する針状に形成されており、この針状の固定部201を試料フィルムFに突き刺すように構成されていてもよい。
【0107】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、処理装置3は、例えば、カールの方向や、大きさを導出する手段や、カール情報や曲率情報に基づいて測定対象とした試料フィルムFの良否(光学フィルムの良否)を判定する手段を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…分析装置、2…測定ユニット、3…処理装置、20…支持装置、21…測定装置、22…ベース、30…カール情報導出手段、31…曲率情報導出手段、31…曲率導出手段、200…支持基部、200a…当接面、201…固定部、202…回転駆動部、220…ステージ、220a…設置面、220b…支持装置側表示部、221…フレーム、F…試料フィルム、M…フィルム側表示部、P1…頂部側変曲点、P2…谷部側変曲点、R…測定ライン、S…繰出部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9