(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】街路灯システムおよび緊急車両通行支援システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/12 20200101AFI20221108BHJP
G08G 1/087 20060101ALI20221108BHJP
F21S 8/08 20060101ALI20221108BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20221108BHJP
F21W 131/103 20060101ALN20221108BHJP
F21Y 113/10 20160101ALN20221108BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221108BHJP
【FI】
H05B47/12
G08G1/087
F21S8/08 100
F21V23/00 110
F21W131:103
F21Y113:10
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018225760
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】久保庭 拓也
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130680(JP,A)
【文献】特開平06-251286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
G08G 1/087
F21S 8/08
F21V 23/00
F21W 131/103
F21Y 113/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路に沿って設置され、少なくとも1つの警戒色を含む複数の灯色で点灯可能であり、それぞれが、周囲から収音して収音データを生成する音センサを有する複数の街路灯と、
前記収音データを受け、前記収音データに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、前記緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データを生成する音響信号処理部と、
前記緊急車両進路データに基づいて、前記緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯について前記警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号を生成する灯色制御部と、を備え
、
前記音響信号処理部は、前記目的音が非反射音であるか反射音であるかを判別し、非反射音、または反射音、またはその両方に基づいて前記目的音の発生位置を検出することを特徴とする街路灯システム。
【請求項2】
前記警戒色点灯信号は、前記警戒色での点滅を指示することを特徴とする請求項1に記載の街路灯システム。
【請求項3】
前記街路灯は、複数の警戒色で点灯可能であり、
前記灯色制御部は、前記緊急車両進路データに基づいて、前記緊急車両の進路上に設置された少なくとも2つの街路灯について前記緊急車両と街路灯との距離に応じて異なる警戒色での点灯を指示することを特徴とする請求項1または2に記載の街路灯システム。
【請求項4】
車両が走行する道路に沿って設置され、少なくとも1つの警戒色を含む複数の灯色で点灯可能であり、それぞれが、周囲から収音して収音データを生成する音センサを有する複数の街路灯と、
前記収音データを受け、前記収音データに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、前記緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データを生成する音響信号処理部と、
前記緊急車両進路データに基づいて、前記緊急車両の通行を支援するように、前記緊急車両の進路上に設置された信号機を制御する信号機システムと、を備え
、
前記音響信号処理部は、前記目的音が非反射音であるか反射音であるかを判別し、非反射音、または反射音、またはその両方に基づいて前記目的音の発生位置を検出することを特徴とする緊急車両通行支援システム。
【請求項5】
前記緊急車両進路データに基づいて、前記緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯について前記警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号を生成する灯色制御部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の緊急車両通行支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、街路灯システムおよび緊急車両通行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
街路灯の付加価値を高める観点から、いろいろな提案がなされている。たとえば、照明光によって道路に広告宣伝情報や道路案内情報などを投射する情報表示機能をもたせた街路灯や(例えば、特許文献1参照。)、接近する自動車が近傍の駐車スペースに収まるサイズであるかをチェックする街路灯が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-145718号公報
【文献】特表2018-517228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、車両が走行する道路に沿って設置された街路灯について検討したところ、以下の課題を認識するに至った。自動車の運転中に救急車など緊急車両の緊急走行に出会うことがある。緊急車両が後方から接近し追い抜こうとしている等、状況に応じて、緊急車両に道を譲らなければならない。緊急車両はサイレンを鳴らし警光灯を照らしているが、実際の交通状況のなかでは、ドライバーが緊急車両の進行方向、自車との位置関係を的確に把握しにくいこともしばしばあるのが実情である。しかしながら、このような問題に対処した既存の街路灯はない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、緊急車両の通行を円滑にすることに役立つ街路灯システム、緊急車両通行支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の街路灯システムは、車両が走行する道路に沿って設置され、少なくとも1つの警戒色を含む複数の灯色で点灯可能であり、それぞれが、周囲から収音して収音データを生成する音センサを有する複数の街路灯と、収音データを受け、収音データに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データを生成する音響信号処理部と、緊急車両進路データに基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯について警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号を生成する灯色制御部と、を備える。
【0007】
警戒色点灯信号は、警戒色での点滅を指示してもよい。
【0008】
街路灯は、複数の警戒色で点灯可能であり、灯色制御部は、緊急車両進路データに基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも2つの街路灯について緊急車両と街路灯との距離に応じて異なる警戒色での点灯を指示してもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、緊急車両通行支援システムである。このシステムは、車両が走行する道路に沿って設置され、少なくとも1つの警戒色を含む複数の灯色で点灯可能であり、それぞれが、周囲から収音して収音データを生成する音センサを有する複数の街路灯と、収音データを受け、収音データに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データを生成する音響信号処理部と、緊急車両進路データに基づいて、緊急車両の通行を支援するように、緊急車両の進路上に設置された信号機を制御する信号機システムと、を備える。
【0010】
緊急車両通行支援システムは、緊急車両進路データに基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯について警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号を生成する灯色制御部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緊急車両の通行を円滑にすることに役立つ街路灯システム、緊急車両通行支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る街路灯システムのブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る街路灯を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る街路灯システムにおいて実行される音認識に基づく緊急車両通行支援の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る街路灯システムの動作を説明するための模式図である。
【
図5】実施の形態2に係る緊急車両通行支援システムを示す模式図である。
【
図6】実施の形態2に係る緊急車両通行支援システムにおいて実行される音認識に基づく緊急車両通行支援の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る街路灯システムのブロック図である。街路灯システム100は、車両が走行する道路に沿って設置された複数の街路灯101を備える。街路灯システム100は、道路を走行する車両が発する音をリアルタイムに解析することによって道路状況を監視するように構成されている。たとえば、街路灯システム100は、サイレン音などの緊急車両が発する音を検知し、緊急車両の現在位置および進行方向を監視する。街路灯システム100は、緊急車両通行支援システムであるとも言える。
【0015】
複数の街路灯101は、それぞれが、音センサ102、街路灯制御部104、灯具106を備える。街路灯制御部104は、音響信号処理部110、灯色制御部112を備える。
【0016】
音センサ102は、周囲から収音して収音データSDを生成する。音センサ102は、収音データSDを街路灯制御部104に出力する。各街路灯101に設置される音センサ102の数はたとえば1つであるが、その限りでない。複数の音センサ102が街路灯101に設置される場合には、収音データSDは、複数の音センサ102の出力データの総称として把握される。収音データSDには、走行車両の挙動を示す音(以下、目的音ともいう)と雑音が含まれる。
【0017】
音センサ102は、たとえば、可聴音(たとえば約20~20000Hz)を収音する無指向性のマイクロフォンであるが、これに限定されず、指向性を有するマイクロフォンまたはその他の音センサであってもよい。
【0018】
複数の街路灯101に設けられた複数の音センサ102は、全体として、いわゆる音センサアレイ(たとえば、マイクロフォンアレイ)を形成する。
【0019】
走行車両などの音源から音センサ102に到達する音には、音源から直線的に向かってくる直接音、道路近辺の構造物や地形によって回折された回折音、反射された反射音がある。本書では説明の便宜上、直接音と回折音を非反射音と総称することがある。
【0020】
灯具106は、複数の灯色で点灯可能であり、複数の灯色には、通常色(たとえば白色)と、通常色と異なる少なくとも1つの警戒色(たとえば、赤、橙、黄色など)が含まれる。灯具106は、複数の警戒色で点灯可能であってもよい。灯具106は、そのほか任意の色(たとえば、青、緑など)で点灯可能であってもよい。灯具106の灯色、点滅の有無、明るさなど発光の態様は、灯色制御部112によって制御される。灯具106の構成は特に限定されず、たとえば、LED(発光ダイオード)などの光源と、光源を駆動して点灯させる点灯回路とを含みうる。目的とする態様で光源が発光するように点灯回路が灯色制御部112によって制御されてもよい。光源は、光の三原色で発光可能であり、赤、緑、青のLEDチップを有してもよい。
【0021】
音響信号処理部110は、収音データSDを受け、目的音およびその発生位置を検出し、目的音の発生位置データを生成する。そこで音響信号処理部110には、収音データSDから目的音の少なくとも1つの特性を示す目的音データを生成する音認識アルゴリズムと、目的音データから目的音の発生位置を示す発生位置データを生成する音源定位アルゴリズムとが実装されている。音響信号処理部110は、こうした音響信号処理をリアルタイムに行う。
【0022】
音認識アルゴリズムは、目的音を認識可能な既存の音認識アルゴリズムを適宜採用することができ、たとえば、深層学習などの機械学習に基づく音認識アルゴリズムであってもよい。音認識アルゴリズムは、様々な車種および様々な走行場面についてあらかじめ準備された多数のサンプル音データと収音データSDとのパターンマッチングに基づいてもよい。
【0023】
音源定位アルゴリズムは、目的音の発生位置を特定可能な既存の音源定位アルゴリズムを適宜採用することができ、たとえば、音源から各音センサ102への音の到達時間差から音源位置を特定する音源定位法に基づいてもよい。音源から各音センサ102までの音の到達時間は、音源の位置の関数となることが知られている。ある2つの音センサ102から得られる到達時間差から音源方位を推定し、別の2つの音センサ102から得られる到達時間差からも音源方位を推定できる。2つの推定された音源方位から、三角測量の原理により、音源の位置が測定される。よって、2つの音センサ102があれば音源の方向、3つあれば音源の位置を特定できる。
【0024】
たとえば、街路灯101が道路の両側に設置されている場合には、上述の3つの音センサ102として、道路の片側で互いに隣接する2本の街路灯101それぞれの音センサ102と、これら2つの音センサ102とは道路の反対側の街路灯101の音センサ102を使用することができる。
【0025】
音センサ102の数が増えるほど音源位置の測定精度は向上するから、音響信号処理部110は、4本またはそれより多数の街路灯101それぞれの音センサ102からの収音データSDを使用して目的音の発生位置を検出してもよい。
【0026】
音響信号処理部110は、収音データSDを受け、収音データSDに基づいて緊急車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、緊急車両の現在位置および進行方向を示す緊急車両進路データD1を生成する。緊急車両を示す目的音としては、たとえば、サイレン音が挙げられる。ある車種の緊急車両が特有の走行音を発生させる場合には、そうした走行音が、緊急車両を示す目的音として使用されてもよい。緊急車両の進行方向、すなわち緊急車両が街路灯101に近づく方向に走っているのか遠ざかる方向に走っているのかは、緊急車両の現在位置の時間変化から把握される。サイレン音の周波数が既知であれば、その既知の周波数に対するドップラー効果による周波数の変化に基づいて、緊急車両の進行方向が把握されてもよい。
【0027】
音響信号処理部110は、目的音が直接音または回折音である非反射音であるか反射音であるかを判別し、非反射音に基づいて目的音の発生位置を検出する。音響信号処理部110は、非反射音のみに基づいて目的音の発生位置を検出してもよい。音響信号処理部110は、非反射音および反射音の両方に基づいて目的音の発生位置を検出してもよい。あるいは、音響信号処理部110は、反射音のみに基づいて目的音の発生位置を検出してもよい。
【0028】
反射音と非反射音がひとつの音源からひとつの音センサ102に到来するとき、反射音のほうが非反射音に比べて音の伝搬経路が長くなるから、若干遅れて届くことになる。したがって、収音データSDにおいて、同一または類似の特性をもつ複数の目的音が時間的に近接している場合には、音響信号処理部110は、最初に届いた音を非反射音と判断し、他の音を反射音と判断することによって、反射音と非反射音を判別することができる。
【0029】
あるいは、直接音に比べて、回折音では高周波成分が減衰し、反射音では反射体の物性により周波数成分が変化することを利用して、音響信号処理部110は、収音データSDの周波数分析により、直接音、回折音、反射音を判別してもよい。
【0030】
回折音は、物体の角部から音センサ102へと届き、反射音は、反射面(つまり角部ではない)から届く。この違いを利用して、音響信号処理部110は、回折音と反射音を判別してもよい。
【0031】
灯色制御部112は、緊急車両進路データD1に基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも1つの街路灯101について警戒色での点灯を指示する警戒色点灯信号S1を生成する。警戒色点灯信号S1は、警戒色での点滅を指示してもよい。灯色制御部112は、緊急車両進路データD1に基づいて、緊急車両の進路上に設置された少なくとも2つの街路灯101について緊急車両と街路灯101との距離に応じて異なる警戒色での点灯を指示してもよい。灯色制御部112は、緊急車両進路データD1に基づいて、通常色での点灯を指示する信号を生成してもよい。
【0032】
街路灯制御部104は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。たとえば、音響信号処理部110は、デジタルシグナルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUやマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0033】
また、街路灯101は、通信機器114を有する。街路灯制御部104は、通信機器114を通じて、収音データSD、緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1を他の街路灯101の街路灯制御部104に送信しまたは他の街路灯101の街路灯制御部104から受信することができる。通信機器114はアンテナ114aを有し、街路灯101どうしは無線通信可能である。なお、通信機器114の構成は特に限定されず、街路灯101どうしは有線により通信可能であってもよい。
【0034】
よって、ある街路灯101の街路灯制御部104は、自身に設けられた音センサ102によって収音された収音データSDに加えて、他の街路灯101(たとえばとなりの街路灯101)によって収音された収音データSDを利用して緊急車両進路データD1を生成することができる。また、ある街路灯101の街路灯制御部104は、警戒色点灯信号S1を、他の街路灯101によって生成された緊急車両進路データD1、または警戒色点灯信号S1に応じて生成することができる。
【0035】
なお、音響信号処理部110、灯色制御部112は各街路灯101に設けられているが、それに限られない。複数の街路灯101、たとえば近接するいくつかの街路灯101(1セットの街路灯101)についてひとつの音響信号処理部110、ひとつの灯色制御部112が設けられてもよい。よって、音響信号処理部110は、1セットの街路灯101からの収音データSDから緊急車両進路データD1を生成し、灯色制御部112は、緊急車両進路データD1からその1セットの街路灯101のそれぞれについて警戒色点灯信号S1を生成してもよい。音響信号処理部110、灯色制御部112は、いずれかの街路灯101に設けられてもよいし、あるいは、街路灯101とは別体として道路の近傍またはその他の場所(たとえば信号機)に設けられてもよい。
【0036】
図2は、実施の形態1に係る街路灯101を模式的に示す図である。街路灯101は、道路の側方の地面に設置された支柱120を有し、音センサ102、街路灯制御部104、灯具106、通信機器114は支柱120に取り付けられている。支柱120には、道路側に突き出したセンサ設置台122が取り付けられている。センサ設置台122は灯具106より低い高さに位置するが、その限りではない。音センサ102は、センサ設置台122に設置され、それにより、道路の上方に配置されている。
【0037】
灯具106、通信機器114は、支柱120の上部または上端に設置されている。もう1つの音センサ102が灯具106に設けられ、ひとつの街路灯101について2つの音センサ102が異なる高さに設けられてもよい。あるいは、灯具106とセンサ設置台122のいずれか一方に音センサ102が設けられるだけでもよい。ひとつの街路灯101に3つ以上の音センサ102が設けられてもよい。複数の音センサ102は、たとえば、それぞれ異なる高さに設けられ、及び/または、それぞれ異なる水平位置に設けられてもよい。
図2に示される音センサ102、街路灯制御部104、灯具106、通信機器114の配置場所は一例であり、他の配置も可能である。
【0038】
図3は、実施の形態1に係る街路灯システムにおいて実行される音認識に基づく緊急車両通行支援の一例を示すフローチャートである。このルーチンは、街路灯制御部104によって、所定周期(たとえば数ミリ秒から数十ミリ秒の周期)で繰り返し実行される。
【0039】
まず、街路灯システム100は、それぞれの街路灯101において周囲から収音する(S10)。各街路灯101の音センサ102は、収音データSDを生成し、街路灯制御部104は、収音データSDを取得する。各街路灯101に複数の音センサ102が設けられている場合には、街路灯制御部104は、それら音センサ102の収音データSDを取得する。街路灯101ごとに音センサ102が1つだけ設けられている場合には、街路灯制御部104は、通信機器114を介して、他の街路灯101の音センサ102で収音された収音データSDを取得する。
【0040】
緊急車両を示す目的音が検知される(S11)。音響信号処理部110は、収音データSDを受け、収音データSDを音認識アルゴリズムにより解析することによって、緊急車両を示す目的音を検知する。
【0041】
次に、目的音の発生位置が特定される(S12)。音響信号処理部110は、検知された目的音について、音源定位アルゴリズムを適用し、目的音の発生位置を特定する。音響信号処理部110は、緊急車両の現在位置と進行方向を示す緊急車両進路データD1を生成する。
【0042】
続いて、街路灯101の灯色を変更するか否かが判定される(S13)。たとえば、灯色制御部112は、緊急車両進路データD1に基づいて街路灯101から緊急車両の現在位置までの距離を求め、この距離を所定の距離しきい値と比較する。あるいは、灯色制御部112は、他の街路灯101(たとえば、となりの街路灯101)からの緊急車両進路データD1または警戒色点灯信号S1に基づいて、緊急車両の現在位置までの距離を求め、この距離を所定の距離しきい値と比較する。灯色制御部112は、緊急車両までの距離が距離しきい値より小さければ、その街路灯101の灯色を変更すべきと判定する。灯色制御部112は、緊急車両までの距離が距離しきい値より大きければ、その街路灯101の灯色を変更すべきでないと判定する。
【0043】
街路灯101の灯色を変更すべきと判定される場合には(S13のY)、灯色制御部112は、その街路灯101について警戒色点灯信号S1を生成する。灯色制御部112は、灯具106に警戒色点灯信号S1を出力する。灯具106は、警戒色点灯信号S1を受けると、警戒色で点灯する(S14)。警戒色点灯信号S1が点滅を指示する場合には、灯具106は、警戒色で点滅する。
【0044】
街路灯101の灯色を変更すべきでないと判定される場合には(S13のN)、灯色制御部112は、その街路灯101について警戒色点灯信号S1を生成しないか、または通常色での点灯を指示する信号を生成する。よって、灯具106は、通常色で点灯する(S15)。この場合において、たとえば昼間など街路灯101を点灯しなくてもよいときは、灯具106は、消灯してもよい。
【0045】
こうして緊急車両進路データD1に基づく灯色制御が行われ、本ルーチンは終了する。
【0046】
複数の街路灯101は互いに連携した点灯パターンで点灯してもよい。たとえば、複数の街路灯101は、緊急車両までの距離に応じて異なる色で点灯してもよい。複数の警戒色を用いることにより、表現の幅が広がる。たとえば、緊急車両に最も近い第1グループの街路灯101が第1警戒色で点灯し、緊急車両の進路上で第1グループの街路灯101に隣接する第2グループの街路灯101が第1警戒色と異なる第2警戒色で点灯してもよい。第1警戒色は、第2警戒色に比べて高い警戒レベルを示す色が選択される。たとえば、第1警戒色は、赤色であり、第2警戒色は、橙色または黄色である。3種類またはそれより多くの警戒色が使用され、複数の街路灯101が緊急車両までの距離に応じて3以上のグループに分けられ、グループごとに異なる灯色が割り当てられてもよい。
【0047】
連続点灯だけでなく、点滅を用いることによっても、表現の幅を広げることができる。たとえば、複数の街路灯101は、緊急車両の進行方向を示すようにシーケンシャルに点灯してもよい。
【0048】
ステップS13において、灯色制御部112は、緊急車両の進行方向における前方(つまり、緊急車両がこれから通過しようとしている側)と後方(緊急車両が既に通過した側)で異なる距離しきい値を使用してもよい。進行方向前方では第1距離しきい値が使用され、進行方向後方では第1距離しきい値より小さい第2距離しきい値が使用されてもよい。このようにすれば、緊急車両がこれから通過しようとしている側で、警戒色での点灯範囲をより広くとることができる。進行方向後方に比べて、進行方向前方でより多数の街路灯101が警戒色で点灯する。
【0049】
図4は、実施の形態1に係る街路灯システムの動作を説明するための模式図である。
図4には、街路灯システム100が設置された道路を緊急車両130が緊急走行しているケースが示されている。緊急車両130は図における左側から右側にむかって走行している。緊急車両130の進行方向において緊急車両130の上流側(前方)には、一般車両132a、132bが走行している。
【0050】
緊急車両130はサイレン音134を鳴らしながら走っている。サイレン音134は周囲の街路灯101の音センサ102によって収音される。上述のように、街路灯システム100は、サイレン音134の音響信号処理によって、緊急車両130の現在位置と進行方向をリアルタイムに検出する。街路灯システム100は、緊急車両130の現在位置と進行方向に基づいて、各街路灯101について警戒色点灯信号S1を生成する。
【0051】
その結果、緊急車両130の進路上において緊急車両130に最も近い第1グループの街路灯101aは、第1警戒色(たとえば赤色)で点灯する。緊急車両130の進路上で第1グループの街路灯101aよりも前方に隣接する第2グループの街路灯101bは、第2警戒色(たとえば橙色)で点灯する。その他の街路灯101cは、通常色(たとえば白色)で点灯し、または消灯する。
【0052】
このとき、緊急車両130の近くに位置する街路灯101(たとえば第1グループの街路灯101a)はサイレン音134に応答して警戒色で点灯することができる。しかし、緊急車両130からの距離が大きくなると、サイレン音134が聞こえにくくなる。そこで、緊急車両130からある程度離れている街路灯101(たとえば第2グループの街路灯101b)は、サイレン音134に応答する代わりに、となりの街路灯101から送信された警戒色点灯信号S1(矢印136で示す)に応答して、警戒色で点灯している。さらに緊急車両130から離れている街路灯101c(たとえば、
図4において右端の街路灯)は、通常色で点灯し、または消灯する。また、緊急車両130が既に通過した街路灯101c(たとえば、
図4において左端の街路灯)は、通常色で点灯し、または消灯する。
【0053】
街路灯システム100によれば、緊急車両130の現在位置と進行方向を街路灯101の灯色の変更によって一般車両132a、132bのドライバーに通知することができる。こうして緊急車両130に気づいたドライバーは、緊急車両130に道を譲ることができる。よって、街路灯システム100は、緊急車両130の通行を円滑にすることに役立つ。
【0054】
街路灯101は一般に、道路に沿って多数設置されている。各街路灯101に音センサ102を搭載することにより、道路に沿って多数の収音位置でサイレン音または緊急車両130を示すその他の目的音を検知し、その発生位置と進行方向を精度よく特定することができる。
【0055】
緊急車両130を検知するために、道路に沿って多数のカメラを配置し、カメラで撮像した画像データを利用するという方法も考えられる。しかし、こうしたカメラは監視カメラともみなされうるので、街中に多数配置することにはプライバシーに対する懸念もある。これに対して、街路灯システム100は、音認識を利用するので、そのような懸念が生じないという利点もある。
【0056】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る緊急車両通行支援システムを示す模式図である。緊急車両通行支援システム200は、実施の形態1に係る街路灯システム100に加えて、複数の信号機202aを有する信号機システム202を備える。
【0057】
信号機システム202は、緊急車両進路データD1に基づいて、緊急車両の通行を支援するように、緊急車両の進路上に設置された信号機202aを制御する。信号機システム202は、交通管制システム204(たとえば交通局または警察)によって制御される。信号機システム202は、無線または有線の通信回線206を介して交通管制システム204と通信可能である。街路灯101および信号機202aはひとつの地域内に設置されているのに対し、交通管制システム204は、遠隔地に設けられ、この地域を含む複数の地域の緊急車両通行支援システム200を統合的に制御する。
【0058】
信号機202aには、信号機制御部203が設けられている。信号機制御部203は、通信機器208を有し、信号機202aは、交通管制システム204と街路灯システム100との間の通信の中継装置として使用される。街路灯101および信号機202aは、複数のグループに分けられ、個々のグループには、少なくとも1つの信号機202aとその信号機202aの近隣に設置された複数の街路灯101が含まれる。信号機制御部203は、同じグループの街路灯101から情報を集約して交通管制システム204に送信する。また、信号機制御部203は、交通管制システム204からの制御信号またはその他の情報を受け、それをグループの街路灯101に送信する。
【0059】
図6は、実施の形態2に係る緊急車両通行支援システムにおいて実行される音認識に基づく緊急車両通行支援の一例を示すフローチャートである。
【0060】
まず、信号機202aは街路灯101から情報を取得する(S20)。実施の形態1に係る街路灯システム100と同様にして、緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1が街路灯101によって生成される。街路灯101は、緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1を信号機202aに送る。このとき、信号機202aには、同じグループに属する複数の街路灯101から緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1が集約される。
【0061】
次に、信号機202aは、複数の街路灯101から集約した情報を交通管制システム204に送る(S22)。信号機202aが属する地域の情報が交通管制システム204に送られる。
【0062】
交通管制システム204は、情報に基づいて信号機202aを制御する(S24)。交通管制システム204は、信号機202aを制御する制御信号を生成し、信号機制御部203に送る。信号機制御部203は、制御信号に応じて信号機202aを制御する。こうして、信号機システム202は、交通管制システム204による制御のもと、緊急車両の通行を支援するように、信号機202aを制御する。たとえば、緊急車両の進路上に設置された信号機202aは、緊急車両の通行を許可すべく青信号とされる。あるいは、緊急車両の進路上の交差点に設置された信号機202aがすべて赤信号とされる。そうすれば、交差点への一般車両の進入が禁止され、緊急車両のみが進入できるようになり、緊急車両の通行が支援されうる。
【0063】
また、交通管制システム204から送られる制御信号は、信号機202aを介して街路灯101に送られる。よって、信号機システム202だけでなく、街路灯システム100も、交通管制システム204によって制御されることができる。
【0064】
実施の形態2に係る緊急車両通行支援システム200によれば、実施の形態1に係る街路灯システム100と同様に、街路灯101の灯色の変更によって一般車両のドライバーに緊急車両の接近を通知することができる。加えて、緊急車両通行支援システム200は、緊急車両の通行を支援するように、信号機202aを制御することができる。
【0065】
なお、実施の形態2においては、実施の形態1とは異なり、音響信号処理部110、灯色制御部112が信号機制御部203に設けられてもよく、その場合、信号機制御部203は、街路灯101の音センサ102から収音データSDを収集し、緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1を生成してもよい。信号機制御部203は、警戒色点灯信号S1を街路灯101に送信し、それにより各街路灯101は、警戒色点灯信号S1に従って警戒色で点灯する。それとともに、信号機制御部203は、緊急車両進路データD1、警戒色点灯信号S1を交通管制システム204に送信してもよい。
【0066】
また、信号機202aに音センサ102が設けられてもよい。それとともに、またはそれに代えて、信号機202aにカメラが設けられてもよい。
【0067】
ところで、収音データSDは、緊急車両のサイレン音だけでなく、一般車両の走行音(たとえば、エンジンまたはモータの動作音、タイヤと路面の摩擦音など)も含みうる。そこで、音響信号処理部110は、収音データSDを受け、収音データSDに基づいて一般車両を示す目的音およびその発生位置を検出し、付近の交通量(走行台数、走行速度など)を示す交通量データを生成してもよい。信号機制御部203は、交通量データを交通管制システム204に送信してもよい。
【0068】
交通管制システム204は、交通量データに基づいて、緊急車両通行支援システム200を制御してもよい。交通管制システム204は、緊急車両の進路における交通量を増加させまたは最大化するように、緊急車両の進路上に設置された信号機202aの信号色、街路灯101の灯色を制御してもよい。緊急車両の進路における交通量が十分に確保されれば、緊急車両は他の走行車両とともに円滑に走行できる。
【0069】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0070】
街路灯101は、カメラを有してもよい。街路灯制御部104は、収音データSDおよびカメラで撮像した画像データに基づいて緊急車両進路データD1を生成してもよい。
【0071】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0072】
100 街路灯システム、 101 街路灯、 102 音センサ、 110 音響信号処理部、 112 灯色制御部、 130 緊急車両、 200 緊急車両通行支援システム、 202 信号機システム、 202a 信号機、 D1 緊急車両進路データ、 S1 警戒色点灯信号、 SD 収音データ。