(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】排水処理用袋
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20060101AFI20221108BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20221108BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20221108BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20221108BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20221108BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20221108BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20221108BHJP
C02F 3/10 20060101ALI20221108BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C02F3/06
B01D71/10
B01D71/48
B01D71/54
B01D71/56
B01D71/70
B01D63/08
C02F3/10 Z
C02F1/44 F
(21)【出願番号】P 2018232052
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017239813
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 葵生
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033681(JP,A)
【文献】特開2010-274233(JP,A)
【文献】特開2017-087191(JP,A)
【文献】特開2010-104900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F
B01D 53/22
61/00-71/82
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の非熱融着性フィルムと、前記一対の非熱融着性フィルムの外縁で熱融着された熱融着性フィルムとを有し、
前記非熱融着性フィルムの透水圧は0.20MPaを超え、
前記非熱融着性フィルムの外縁の一部に、前記熱融着性フィルムが熱融着されていない開口部を有する、排水処理用袋。
【請求項2】
前記熱融着性フィルムは、ポリオレフィン樹脂フィルム、エチレン系共重合体フィルム、及び、繊維強化フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の排水処理用袋。
【請求項3】
前記非熱融着性フィルムは、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、セロハン、及び[Si(R1)(R2)-O]n(nは整数を示し、R1、R2は独立して、それぞれ置換されていてもよい水素、炭素数1~8のアルキル基、アリール基を示す。)で示される構造単位を有するポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の排水処理用袋。
【請求項4】
前記非熱融着性フィルムと前記熱融着性フィルムとの接合部の幅が1~20mmである、請求項1~3のいずれかに記載の排水処理用袋。
【請求項5】
前記非熱融着性フィルムに縫製、切削加工、及び接着剤塗布がされていない、請求項1~4のいずれかに記載の排水処理用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体から有機物などの物質を除去する技術が、様々な分野で用いられている。例えば、廃液処理においては、廃水中の様々な物質を除去するために微生物の物質分解能力が利用されており、このような微生物の中でも、特に好気性菌が用いられている。
【0003】
上述の好気性菌を用いた排水処理方法では、好気性菌の活動を活発にするために、排水中に空気を送り込む必要があるが、従来の排水処理方法では排水中に空気を送り込むためにポンプ等を用いる必要があり、多大な電気エネルギーが必要であるという問題がある。
【0004】
電気エネルギーを用いずに排水中に空気を送り込み、好気性菌の活動を活発にする排水処理方法として、廃水処理用袋を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような排水処理用袋は、袋内部に排水が透過せず、且つ、空気を袋の内側から袋の外側へ透過するので、複数の排水処理用袋を、排水処理用袋の開口部が排水の水面から大気中に出た状態で排水中に浸漬することで、排水中に空気が取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている排水処理用袋は、排水処理性能については十分に検討されていない。排水処理用袋には防水性が求められるため、端面を縫製し、防水性を示す接着剤でコーティングされる。この際、接着剤の塗り斑による接着不良が生じたり、接着剤が劣化することがある。その結果、排水処理用袋に水が染み込み、結果的に排水処理能力が低下するという問題がある。
【0007】
また、排水処理用袋により多量の排水を処理するためには、排水処理用袋の容量を大きくする必要がある。大容量の排水処理用袋を、開口部を水面から出したまま排水処理用袋の内部に水が無い状態で浸漬して固定しようとすると、排水処理用袋が浮力を受け、浮上してしまうという問題がある。特許文献1に記載されている排水処理用袋は、排水中に固定するために、端部に固定部材が設けられている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の排水処理用袋は、固定部材を取り付けるために、廃水処理機能を示すフィルム部分に穴開け、縫製、接着剤等の加工を行う必要がある。このため、排水処理用袋に浮力がかかり、固定部材が引っ張られた際に、加工された箇所から破れが生じ、水漏れが発生するという問題がある。
【0009】
従って、固定部材を取り付けた際に、浮力を受けることによる廃水処理機能を示すフィルムの破損が抑制されており、廃水処理能力の低下が抑制された排水処理用袋の開発が求められている。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、固定部材を取り付けた際に、浮力を受けることによる廃水処理機能を示すフィルムの破損が抑制されており、廃水処理能力の低下が抑制された排水処理用袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、対向する一対の非熱融着性フィルムと、上記一対の非熱融着性フィルムの外縁に沿って接合された熱融着性フィルムとを有する排水処理用袋によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の排水処理用袋に関する。
1.対向する一対の非熱融着性フィルムと、前記一対の非熱融着性フィルムの外縁で熱融着された熱融着性フィルムとを有し、
前記非熱融着性フィルムの外縁の一部に、前記熱融着性フィルムが熱融着されていない開口部を有する、排水処理用袋。
2.前記熱融着性フィルムは、ポリオレフィン樹脂フィルム、エチレン系共重合体フィルム、及び繊維強化フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の排水処理用袋。
3.前記非熱融着性フィルムは、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、セロハン、及び[Si(R1)(R2)-O]n(nは整数を示し、R1、R2は独立して、それぞれ置換されていてもよい水素、炭素数1~8のアルキル基、アリール基を示す。)で示される構造単位を有するポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1又は2に記載の排水処理用袋。
4.前記非熱融着性フィルムと前記熱融着性フィルムとの接合部の幅が、1~20mmである、項1~3のいずれかに記載の排水処理用袋。
5.前記非熱融着性フィルムに縫製、切削加工、及び接着剤塗布がされていない、項1~4のいずれかに記載の排水処理用袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排水処理用袋は、固定部材を取り付けた際に、浮力を受けることによる廃水処理機能を示すフィルムの破損が抑制されており、廃水処理能力の低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の排水処理用袋の一例を示す平面模式図である。
【
図2】本発明の排水処理用袋の一例を示す上面模式図である。
【
図4】非熱融着性フィルムを折り目で折り返し、半折した状態を示す模式図である。
【
図5】半折した非熱融着性フィルムに、熱融着性フィルムを半折して被せ、二重袋構造とした状態を示す平面模式図である。
【
図6】半折した非熱融着性フィルムに、熱融着性フィルムを半折して被せ、二重袋構造とした状態を示す上面模式図である。
【
図7】本発明の排水処理用袋の熱融着性フィルムにハトメ穴を2ケ所開けた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の排水処理用袋について詳細に説明する。
【0016】
1.排水処理用袋
本発明の排水処理用袋は、対向する一対の非熱融着性フィルムと、上記一対の非熱融着性フィルムの外縁で熱融着された熱融着性フィルムとを有し、上記非熱融着性フィルムの外縁の一部に、上記熱融着性フィルムが熱融着されていない開口部を有する排水処理用袋である。
【0017】
上記構成の本発明の排水処理用袋は、水が浸透せず、且つ、空気を透過させて、廃水処理機能を示す非熱融着性フィルムが一対となって対向しており、当該非熱融着性フィルムに、熱融着性フィルムが熱融着されている。従って、接着剤を用いて接合した場合のように、接着剤の塗り斑による接着不良が生じたり、接着剤が劣化したりすることによる水漏れの発生が抑制されている。また、本発明の排水処理用袋は、廃水処理機能を示す非熱融着性フィルムの外縁で熱融着性フィルムが接合されており、当該熱融着性フィルムに固定部材を取り付けることができる。従って、排水処理用袋が浮力を受け、固定部材が引っ張られて、熱融着性フィルムが破損しても、廃水処理機能を示す非熱融着性フィルムの破損が抑制されており、廃水処理能力の低下が抑制されている。更に、本発明の排水処理用袋は、非熱融着性フィルムの外縁の一部に、熱融着性フィルムが熱融着されていない開口部を有している。当該構成により、本発明の排水処理用袋を、開口部から排水が入らない深さまで排水中に浸漬させて用いることで、排水処理用袋の表面から空気(特に酸素)が供給され、排水中の汚染物質を浄化することができる。
【0018】
本発明の排水処理用袋を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の排水処理用袋の一例を示す平面模式図であり、
図2(a)及び
図2(b)(以下、単に「
図2」とも表わす。)は、本発明の排水処理用袋の一例を示す上面模式図である。
図1及び
図2において、本発明の排水処理用袋1は、対向する一対の非熱融着性フィルム2と、一対の非熱融着性フィルム2の外縁で熱融着された熱融着性フィルム3とを有している。また、
図1において、非熱融着性フィルム2の外縁のうち、紙面の上側に位置する端部2cには熱融着性フィルム3が熱融着されておらず、
図2に示すように、開口部6が形成されている。
【0019】
図1において、排水処理用袋の幅W1は、100~5000mmが好ましく、400~2000mmがより好ましい。排水処理用袋の幅W1の下限が上記範囲であることにより、加工・運搬がより一層容易となる。排水処理用袋の幅W1の上限が上記範囲であることにより、既存の排水処理槽への適用が可能となり、且つ、排水処理用袋の各側面の廃水処理能力がより一層向上する。
【0020】
図1において、排水処理用袋の長さL1は、100~6000mmが好ましく、1000~6000mmがより好ましい。排水処理用袋の長さL1の下限が上記範囲であることにより、排水処理用袋の製造がより一層容易となる。排水処理用袋の長さL1の上限が上記範囲であることにより、既存の排水処理槽への適用が可能となり、且つ、排水処理用袋の各側面の廃水処理能力がより一層向上する。
【0021】
図2において、排水処理用袋の厚みT1は、5~300mmが好ましく、10~50mmがより好ましい。排水処理用袋の厚みT1の下限が上記範囲であることにより、排水処理用袋の各側面の廃水処理能力がより一層向上する。排水処理用袋の厚みT1の上限が上記範囲であることにより、排水処理用袋を製造する際の加工コストが低減でき、排水処理用袋の運搬がより一層容易となる。
【0022】
また、
図1及び
図2において、本発明の排水処理用袋1は、非熱融着性フィルム2の外縁で、熱融着部4において熱融着性フィルム3が熱融着されて、接合されている。熱融着部4の幅は、1~20mmが好ましく、2~18mmがより好ましく、3~17mmが更に好ましい。熱融着部4の幅の下限が上記範囲であることにより、熱融着した際の接合面積が十分となり、熱融着部が剥がれることによる水の浸透をより一層抑制することができる。熱融着部4の幅の上限が上記範囲であることにより、空気が透過することができる面積が十分となり、排水処理用袋の排水処理能力がより一層向上する。
【0023】
また、
図1及び
図2(a)において、本発明の排水処理用袋1は、熱融着性フィルム3の外縁部の熱融着部4’において、熱融着性フィルム3同士が熱融着されて接合されている。熱融着部4’の幅は、1~20mmが好ましく、2~18mmがより好ましい。熱融着部4’の幅の下限が上記範囲であることにより、熱融着した際の接合面積が十分となることで、熱融着部が剥がれることによる水の浸透をより一層抑制することができる。熱融着部4’の幅の上限が上記範囲であることにより、接着強度がより一層向上する。
【0024】
図2(a)では、熱融着性フィルム3は、外縁部の熱融着部4’のみにおいて熱融着性フィルム3同士が熱融着されて接合されている。これに対し、
図2(b)では、熱融着性フィルム3は、外縁部の熱融着部4’に加え、熱融着部4の近傍に熱融着部4’’を有しており、当該熱融着部4’’において熱融着性フィルム3同士を熱融着することにより、袋内部を形成している。熱融着部4’’の幅は、1~20mmが好ましく、2~18mmがより好ましい。熱融着部4’’の幅の下限が上記範囲であることにより、熱融着した際の接合面積が十分となることで、熱融着部が剥がれることによる水の浸透をより一層抑制することができる。熱融着部4’’の幅の上限が上記範囲であることにより、接着強度がより一層向上する。
【0025】
図1において、開口部の幅W3は、80~6000mmが好ましく、980~4000mmがより好ましい。開口部の幅W3の下限が上記範囲であることにより、排水処理用袋の内部への異物混入を抑制できる。開口部の幅W3の上限が上記範囲であることにより、熱融着した際の接合面積が十分となり、熱融着部が剥がれることによる水の浸透をより一層抑制することができる。
【0026】
(非熱融着性フィルム)
非熱融着性フィルムは、所定温度以下の温度で加熱しても溶融しないフィルムである。上記所定温度は、350℃未満が好ましく、200℃未満がより好ましく、150℃未満が更に好ましい。
【0027】
本発明の排水処理用袋において、上記非熱融着性フィルムは、水が浸透せず、且つ、空気を透過させる。このような非熱融着性フィルムに含まれる樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、セロハン等が挙げられる。
【0028】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール変性物をエマルション化したもの、又はディスパージョン化したものが好ましい。例えば、乳化剤の存在下、予めジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるプレポリマーを水中に分散させながら、強制または自己乳化して得られるディスパージョンが挙げられる。当該ディスパージョンは、分散性を高めるために、カルボキシル基を有するジメチロールブタン酸等、スルホン酸基を有する5-スルホソジウムイソフタル酸ジメチル等を含んでいてもよい。
【0029】
上記ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等が挙げられる。
【0030】
上記ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0031】
上記セロハンとしては、酢酸セルロース等が挙げられる。セロハンは、普通セロハンでを用いてもよいし、防湿セロハンを用いてもよい。防湿セロハンとしては、防湿剤の主体樹脂が塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である塩化ビニル系防湿セロハンと同じく主体樹脂が塩化ビニリデンアクリルニトリル共重合体である塩化ビニリデン系防湿セロハンが挙げられる。
【0032】
また、上記非熱融着性フィルムに含まれる樹脂としては、下記一般式(1)
[Si(R1)(R2)-O]n (1)
で示される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0033】
上記一般式(1)において、nは整数を示し、R1、R2は独立して、それぞれ置換されていてもよい水素、炭素数1~8のアルキル基、アリール基を示す。
【0034】
上記炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が、低コストであり、且つ、水の浸透を抑制できるため好ましい。
【0035】
上記一般式(1)で示される構造単位を有するポリマーとしては、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0036】
上記非熱融着性フィルムに含まれる樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
非熱融着性フィルムは、一層であってもよいし、二層以上が積層された層構成であってもよい。非熱融着性フィルムが一層である場合、シリコーン樹脂層であることが好ましい。非熱融着性フィルムがシリコーン樹脂層であると、より一層水の浸透が抑制され、空気をより一層透過させることができる。
【0038】
非熱融着フィルムが二層以上積層された層構成である場合、非熱融着性フィルムの層構成としては、上述の非熱融着性フィルムに含まれる樹脂からなる樹脂層が複数層積層されている層構成が挙げられる。例えば、非熱融着性フィルムが、上述の樹脂層が二層積層された層構成である場合、非熱融着性フィルムは、ベースフィルム上に気体透過性無孔層が形成された層構成が挙げられる。
【0039】
ベースフィルムとしては特に限定されず、ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0040】
気体透過性無孔層としては、シリコーン樹脂層、ウレタン樹脂層が好ましく、シリコーン樹脂層がより好ましい。気体透過性無孔層としてこれらの樹脂層を用いる場合、気体透過性無孔層の水の浸透がより一層抑制され、空気をより一層透過させることができる。
【0041】
ベースフィルム上に気体透過性無孔層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、ベースフィルムの一方の面に、気体透過性無孔層を形成する樹脂組成物を塗布する方法が挙げられる。ベースフィルムの一方の面に樹脂組成物を塗布することにより、排水処理用袋中に骨材を入れた場合に、排水処理用袋と骨材との接合を抑制することができる。
【0042】
気体透過性無孔層がシリコーン樹脂層である場合、ベースフィルムの一方の面に塗布されるシリコーン樹脂組成物としては、熱硬化性のシリコーン樹脂組成物が好ましい。このようなシリコーン樹脂組成物をベースフィルムの一方の面に塗布することで、塗布後に加熱して乾燥させることにより、容易にシリコーン樹脂層を形成することができる。
【0043】
上記シリコーン樹脂組成物の市販品としては、例えば、熱硬化性付加型シリコーン組成物 信越化学工業社製、商品名「KS-847T」(有効成分30質量%のトルエン溶液、粘度15000mPa・s(25℃))を用いることができる。
【0044】
気体透過性無孔層の厚みは、10μm~1mmが好ましく、20μm~200μmがより好ましい。気体透過性無孔層の厚みは、JIS L1913:2010 一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0045】
非熱融着性フィルムは、水が浸透せず、且つ、空気を透過させるために、細孔を有していてもよい。このような細孔の細孔径としては、0.0001~3μmが好ましく、0.0004~0.1μmがより好ましい。
【0046】
非融着性フィルムの気体透過量は、後述する測定方法により測定される酸素供給速度が、15g/m2/day以上であることが好ましく、25g/m2/day以上であることがより好ましく、30g/m2/day以上であることがより好ましい。また、酸素供給速度の上限は特に限定されず、100g/m2/dayであってもよく、80g/m2/dayであってもよく、60g/m2/dayであってもよい。
【0047】
本明細書において、上記酸素供給性は、以下の測定方法により測定される値である。
【0048】
<酸素供給性能測定方法>
内寸7cmの密閉された立方体の評価槽を用意する。評価槽の側面に、シート状の試料を配置する。次いで、評価槽内に、スターラー用の回転子、及び亜硫酸ナトリウム100mg/Lを入れて、塩化コバルトを1.5mg/L以上の濃度で添加したイオン交換水を添加し、測定用溶液を調製する。次いで、測定用溶液を常温環境下で撹拌しながら評価槽内の酸素濃度を連続的に測定する。
【0049】
測定した酸素濃度の時系列データを基に、時間t(h)に対する酸素不足量の常用対数Y=log10(Cs-C)との相関から近似直線を求め、当該近似直線の時間tに対するYの傾きZを求める。なお、上記式において、Csは測定温度における液相の飽和酸素濃度、Cは測定時間tにおける液相の酸素濃度測定値である。傾きZから、酸素供給速度Q(gO2/(m2・d))を、下記演算式1に従い算出する。
[演算式1]
Q=-2.303×24×0.00884×V×Z×(1.028)^(20-T)/Sなお、上記演算式1において、V、S、Tは、以下の値を示す。
V:測定用溶液の液量(L)
S:測定に用いたシート状の試料の有効面積(m2)
T:測定時の測定用溶液の液温の平均値(℃)
【0050】
非熱融着性フィルムの厚みは、0.0001~5mmが好ましく、0.001~1mmがより好ましい。
【0051】
非熱融着性フィルムには、縫製、切削加工、接着剤塗布等の加工がされていないことが好ましい。非熱融着性フィルムに上記加工がされていないことにより、非熱融着性フィルムに固定部材が接続されておらず、排水処理用袋に浮力がかかって固定部材が引っ張られた場合であっても、非熱融着性フィルムの破れの発生が抑制されているため、破れに起因する水漏れの発生を抑制することができる。
【0052】
(熱融着性フィルム)
熱融着性フィルムは、所定温度を超える温度での加熱により溶融し、他の部材と熱融着して、接合することができるフィルムである。上記所定温度は、350℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましく、80℃以上が最も好ましい。
【0053】
本発明の排水処理用袋において、上記熱融着性フィルムは、水が浸透せず、且つ、熱融着性を示し、対向する一対の非熱融着性フィルムと熱融着することにより、本発明の排水処理用袋を形成する。このような熱融着性フィルムとしては、ポリオレフィン樹脂フィルム、エチレン系共重合体フィルム、繊維強化フィルム等が挙げられる。
【0054】
上記ポリオレフィン樹脂フィルムを形成するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0055】
上記エチレン系共重合体フィルムを形成するエチレン系共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
【0056】
上記繊維強化フィルムは、合成繊維と熱融着性樹脂とから構成されるフィルムである。合成繊維としては、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維;アラミド繊維等の芳香族ポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維;芳香族ポリエステル繊維;ポリパラフェニン・ベンゾビス・オキサゾール繊維(PBO繊維);超高分子量ポリエチレン繊維;ポリフェニレンサルファイド繊維;ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。これらの中でも、経済性に優れる点で、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が好ましく、ポリアミド6,6がより好ましい。これらの繊維はその一部または全部が再利用された原料より得られるものであってもよい。
【0057】
上記熱融着性フィルムに含まれる樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記熱融着性フィルムは、上述のポリオレフィン樹脂フィルム、ナイロンフィルム、エチレン系共重合体フィルム、繊維強化フィルム等を単層で用いてもよいし、複数層積層して用いてもよい。
【0058】
熱融着性フィルムの厚みは、10μm~1mmが好ましく、20μm~80μmがより好ましい。
【0059】
熱融着フィルムには、
図7のように、少なくとも一つのハトメ穴5が形成されていることが好ましい。熱融着フィルムにハトメ穴が形成されていることにより、排水処理用袋に浮力がかかり、ハトメ部に接続された固定部材が引っ張られて、ハトメ部から熱融着性フィルムに破れが生じても、非熱融着性フィルムには破れが生じておらず、排水処理用袋の排水処理能力の低下を抑制することができる。ハトメ穴は、
図7のように、2ケ所に成されていてもよいし、4ケ所に形成されていてもよい。
【0060】
(骨材)
本発明の排水処理用袋の内部には、排水中に浸漬した際に、容量を大きく保ち、排水中に空気をより一層多量に送りこむことができるように、骨材が収容されていてもよい。
【0061】
骨材としては、水圧がかかった際に形状を保つことができれば特に限定されず、プラスチック、紙、樹脂、金属等が挙げられる。これらの中でも、材料コストを安価に抑えられる点で、プラスチックが好ましく、プラスチック段ボールがより好ましい。
【0062】
骨材は、例えば、(1)基材の両面に複数のリブが突出した構成であってもよく、(2)複数の基材を複数のリブで保持し、リブと基材との間に形成されている空間を気体が通過する構成であってもよい。また、上記基材は、複数の貫通孔を有することが好ましい。基材が複数の貫通孔を有することで、基材の表面から裏面へ空気がより一層透過し易くなる。
【0063】
骨材の大きさは特に限定されず、本発明の排水処理用袋よりも小さく、内部に収容できればよい。骨材の縦、横、厚みは、縦が20~500cm、横が20~500cm、厚みが0.1~3cmの範囲であることが好ましい。
【0064】
(排水処理用袋の使用方法)
本発明の排水処理用袋は、開口部から排水が入らない深さ(開口部を構成する排水用袋の端面が水面より上位に位置する)まで排水中に浸漬させて用いる。本発明の排水処理用袋は、複数を積層して、モジュールを形成し、当該モジュールを浸漬させて使用してもよい。
【0065】
本発明の排水処理用袋の表面(排水と接する面)には微生物(酸素と排水中の汚染物質を養分とする好気性細菌)が付着し、排水処理用袋の表面から供給される空気(特に酸素)により、排水中の汚染物質を浄化する。
【0066】
2.排水処理用袋の製造方法
上記排水処理用袋の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本発明の排水処理用袋の製造方法としては、例えば、
対向する一対の非熱融着性フィルムと、前記一対の非熱融着性フィルムの外縁で熱融着された熱融着性フィルムとを有し、
前記非熱融着性フィルムの外縁の一部に、前記熱融着性フィルムが熱融着されていない開口部を有する排水処理用袋の製造方法であって、
(1)重ねた一対の非熱融着性フィルムを、上記非熱融着性フィルムの大きさよりも大きい一対の熱融着性フィルムで挟んで積層し、積層体を形成する工程1、
(2)上記積層体の上記熱融着性フィルムの上から、上記非熱融着性フィルムの外縁部に沿って、上記開口部となる箇所以外の箇所を熱融着して、上記熱融着性フィルムと非熱融着性フィルムとを熱融着部において接合し、且つ、上記熱融着性フィルムの外縁部に沿って、開口部となる箇所以外の箇所の上記熱融着性フィルム同士を熱融着して接合する工程2、
(3)上記非熱融着性フィルムと積層されている上記熱融着性フィルムを切除して、上記非熱融着性フィルムを露出させる工程3、
を有する排水処理用袋の製造方法が挙げられる。以下、上記製造方法について説明する。
【0067】
(工程1)
工程1は、重ねた一対の非熱融着性フィルムを、上記非熱融着性フィルムの大きさよりも大きい一対の熱融着性フィルムで挟んで積層し、積層体を形成する工程である。
【0068】
非熱融着性フィルム及び熱融着性フィルムは、上記排水処理用袋の説明において説明したものを用いることができる。
【0069】
上記非熱融着性フィルムは、一対となっていればよく、2枚の非熱融着性フィルムを用意して積層して用いてもよいし、
図3のように、1枚の非熱融着性フィルムを裁断位置2aにおいて切断して、1枚の非熱融着性フィルム2を用意し、折り目2bで折り返して、
図4のように半折してもよい。このようにして一対の非熱融着性フィルムを用意することにより、四辺のうち一辺が折り目であることから水が浸透し難く、また、
図4の紙面の上部の一辺を開口部とすることにより、容易に排水処理用袋を製造することができる。
【0070】
非熱融着性フィルムの一方の面にシリコーン樹脂組成物を塗布する場合、シリコーン樹脂組成物としては、上記排水処理用袋で説明したシリコーン樹脂組成物を用いることができる。
【0071】
シリコーン樹脂組成物の塗布方法としては特に限定されず、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スロットオリフィスコーター、エアドクタコーター、キスコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スプレーコーター、スピンコーター、押出コーター、ホットメルトコーター等を用いる塗布方法が挙げられる。また、粉体コーティング、電着コーティング等の従来公知の方法によって塗布してもよい。
【0072】
シリコーン樹脂組成物は、非熱融着性フィルムに塗布後に、加熱することが好ましい。加熱により、容易にシリコーン樹脂層を形成することができる。加熱温度としては、50~200℃が好ましく、70~180℃がより好ましい。また、加熱時間は、10~120秒が好ましく、20~60秒がより好ましい。
【0073】
熱融着性フィルムの大きさは、非熱融着性フィルムよりも大きいものを用いる。工程1において、重ねた一対の非熱融着性フィルムは、一対の非熱融着性フィルムで挟むように積層され、全面に亘って被覆され、覆い隠される。
【0074】
以上説明した工程1により、積層体が形成される。
【0075】
(工程2)
工程2は、積層体の熱融着性フィルムの上から、非熱融着性フィルムの外縁部に沿って、開口部となる箇所以外の箇所を熱融着して、熱融着性フィルムと非熱融着性フィルムとを熱融着部において接合し、且つ、熱融着性フィルムの外縁部に沿って、開口部となる箇所以外の箇所の熱融着性フィルム同士を熱融着して接合する工程である。
【0076】
熱融着は、開口部となる箇所以外の箇所において行われる。
図5においては、熱融着部4及び熱融着部4’において熱融着が行われ、紙面の上部の一辺は熱融着されず、開口部が形成される。
【0077】
熱融着性フィルムと非熱融着性フィルムとを熱融着する方法としては特に限定されず、従来公知の熱融着方法を用いることができる。このような熱融着方法としては、例えば、加熱ロールによる熱融着方法、インパルス式オートシーラーによる熱融着方法等が挙げられる。
【0078】
熱融着の際の熱融着温度は、熱融着性フィルム及び非熱融着性フィルム、又は、熱融着性フィルム同士を熱融着できれば特に限定されず、80~250℃が好ましく、120~220℃がより好ましい。また、熱融着の際の熱融着時間は、0.2~10秒が好ましく、1~9秒がより好ましい。
【0079】
以上説明した工程2により、熱融着性フィルムと非熱融着性フィルムとが熱融着部において接合され、且つ、熱融着性フィルムの外縁部に沿って、開口部となる箇所以外の箇所の熱融着性フィルム同士が熱融着して接合される。
【0080】
(工程3)
工程3は、非熱融着性フィルムと積層されている熱融着性フィルムを切除して、非熱融着性フィルムを露出させる工程である。図を用いて説明する。
【0081】
図5は、工程3の状態を示す平面模式図であり、
図6は、工程3の状態を示す上面模式図である。
図6において、非熱融着性フィルム2は、熱融着性フィルム3と熱融着部4において熱融着されており、それ以外の部分では熱融着性フィルム3と積層され、被覆されている。工程3では、非熱融着性フィルム2と積層されている熱融着性フィルム3が、熱融着部4を残して切除される。
【0082】
熱融着性フィルム3を切除する方法としては特に限定されず、カッター等を用いて従来公知の方法により切除すればよい。
【0083】
以上説明した工程3により、非熱融着性フィルムと積層されている熱融着性フィルムが切除されて、非熱融着性フィルムが露出した状態となり、排水処理用袋が製造される。
【0084】
本発明の排水処理用袋が骨材を収容している場合、上記製造方法は、更に、骨材を挿入する工程を有していてもよい。骨材を挿入する方法としては特に限定されず、排水処理用袋の開口部から骨材を挿入すればよい。
【0085】
以下は、有機性の被処理水を好気性生物処理する方法についての説明であり、特に酸素透過膜(酸素溶解膜、防水性透気性シート、防水性酸素透過性フィルム、透気シート、防水透気シート等と同義)を用いて反応槽内の被処理水(廃水、排水とも言う)、もしくは、酸素溶解膜表面に存在する微生物やバイオフィルムに酸素を溶解させるようにした生物処理方法に関する(以下、酸素溶解膜を含む槽をMABR槽と呼ぶ。また、MABR槽を用いた廃水処理方式をMABR方式と呼ぶ)、廃水処理の方法、廃水処理装置、廃水処理システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法等を開示するものである。下記に開示した廃水処理装置システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法は、本発明に限定されるものではなく、MABR方式の廃水処理において、広く適用可能な例である。したがって、下記に示す例において、特に記載のない限り、被処理水の組成や性状、被処理水に含まれる特定の組成物の処理方法、処理水量、酸素溶解膜の素材、酸素溶解膜の形式(平板型、中空糸型、スパイラル型等)、酸素溶解膜構造体の構成・構造、廃水と酸素溶解膜との接触方法(酸素溶解膜構造体の内部に被処理水を保持するか、同外部に被処理水が存在するか)、酸素溶解膜の設置方法、栄養塩の添加、水温やORP、pH等の調整、酸素溶解膜への酸素(空気)の供給方式や供給手順や方法、酸素溶解膜を含む槽の容積や設置方法、その他の廃水処理方法、酸素透過膜への有機物面積負荷、酸素透過膜を含む槽への有機物容積負荷、被処理水のモニタリング等は特に限定されず、特に記載のない限り、下記に開示した例のすべてに適用することができる。
【0086】
被処理水に含まれる組成物としては、例えば、有機物(BOD、COD、TOC、TOD等で表される成分、脂質、タンパク質、多糖類、アミノ酸、単糖類、高級脂肪酸、炭水化物、有機化合物(鎖式又は環式の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等の炭化水素類;アルコール系化合物;エーテル系化合物;アミン系化合物;ハロゲン系化合物;アルデヒド系化合物;ケトン系化合物;カルボン酸系化合物;エステル系化合物;アミド系化合物;酸クロライド系化合物;ニトロ系化合物;スルホ系化合物等))、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、硝酸化合物、有機リン化合物、チラウム、シマジン、チオベンカルブ、ジオキサン、塩素化炭化水素、ベンゼン、クロロフィルa、ノルマルヘキサン抽出物、油分、重金属類(銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、六価クロム、カドミウム、鉛、ひ素、水銀、アルキル水銀(金属有機化合物)、セレン)、ホウ素及びその化合物、フッ素及びその化合物、シアン化合物、フェノール類、ダイオキシン類、内分泌攪乱物質、農薬、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレンなど低沸点有機ハロゲン化合物、ジオキサン、固形分(SS、MLSS、VSSなど)が挙げられる。
【0087】
栄養塩としては例えば、窒素化合物、リン化合物等が挙げられる。
【0088】
その他の廃水処理方法としては例えば、沈降分離、沈砂池、沈殿池、傾斜板により沈降促進した沈殿分離方法、凝集分離(硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸鉄等を凝集剤として使用)、浮上分離、油水分離装置、加圧浮上分離装置、清澄ろ過、砂ろ過、多層ろ過、上向流ろ過、凝集ろ過、pH調整、化学的酸化・還元(次亜酸化、オゾン酸化、フェントン酸化、化学還元)、活性炭吸着、撹拌槽吸着、固定層吸着、移動層吸着、イオン交換、膜分離(精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透、拡散透析膜)、電気透析、汚泥の脱水(ろ過助剤使用、凝集剤使用、水洗、熱処理、凍結・融解、真空ろ過、加圧ろ過、加圧ロール脱水、スクリュープレス、遠心脱水、多重円盤型脱水)、汚泥焼却(流動焼却炉、立形多段炉、横形回転炉、階段式ストーカー炉)、標準活性汚泥法、モディファイドエアレーション法、長時間エアレーション法、プラグフロー法、ステップエアレーション法、完全混合法、接触酸化法、オキシデーションディッチ法、回分式活性汚泥法、酸素活性汚泥法、深層・超深層曝気法、膜分離活性汚泥法、散水ろ床法、接触曝気法、好気ろ床法、担体添加法(結合固定化法、包括固定化法)、嫌気ろ床法、嫌気流動床法、上向流式嫌気汚泥床、EGSB法、二相発酵システム、循環式硝化脱窒法、HAP法、MAP法、生物安定池法、曝気式ラグーン、スクリーン、水酸化物法、共沈法、置換法、硫化物法、フェライト法、鉄粉法、亜硫酸塩還元法、鉄(II)塩還元法、電解還元、吸着法、生物還元法、難溶性塩凝集沈殿法(フッ化カルシウム法、水酸化物共沈法)、アルカリ塩素法、電解酸化法、難溶性錯化合物沈殿法、酸分解燃焼法、煮詰高温焼却法、湿式加熱分解法、アンモニアストリッピング法、不連続点塩素処理法、揮散法、晶析、酸析、塩析、ストリッピング、加水分解、副産物・有価物回収工程等が挙げられる。また、上記に例示される廃水処理方法を実施する複数の槽を含む廃水処理装置において、任意の槽から槽内容物を引き抜き、別の任意の槽に添加、返送するようにしてもよい。
【0089】
生物処理に利用される生物としては例えば、細菌類(Zoogloea属、Beggiatoa属、Sphaerotilus属、Thiothrix属、Nocardia属、アルカリゲネス属、シュウドモナス属、バチルス属、アエロバクター属、フラボバクテリウム属)、藍藻類(Microcystis属、Phormidium属、Coelosphaerium属、Oscillatoria属、Anabaena属)、緑藻類(Chlamydomonas属、Dictyosphaerium属、Scenedesmus属、Closterium属)、珪藻類(Melosira属、Cyclotella属、Fragilaria属、Synedra属、Cymbella属)、菌類(Fusarium属、Zoophagus属、Mucor属、Saprolegnia属、Rhodotorula属、Leptomitus属、Trichoderma属、Geotricum属、Sepedomium属、Ascoidea属、Trichosporon属、Phona属、Pythium属、Arthrobotorys属)、原生動物としては、例えば、繊毛虫類(裸口目、毛口目、吸管虫目、膜口目、緑毛目、異毛目、下毛目)、鞭毛虫類(原鞭毛虫目、ユーグレナ目)、肉質虫類(太陽虫目、アメーバ目、有殻アメーバ目)、後生動物としては例えば、扁形動物、袋形動物、軟体動物、環形動物、緩歩動物、節足動物等が挙げられる。
【0090】
酸素透過膜への有機物面積負荷としては、例えば、3~2000gCODCr/m2/day、もしくは、2~1500gBOD/m2/dayが好適である。酸素透過膜を含む槽への有機物容積負荷は0.1~20kgCODCr/m3/day、又は0.1~15kgBOD/m3/dayが好適である。
【0091】
被処理水のモニタリングの対象となる手法としては、例えば、水温、pH、ORP(酸化還元電位)、BOD、COD(CODCr、CODMn)、TOC、TOD、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、全窒素、リン、クロロフィルa、ノルマルヘキサン抽出物、油分、重金属類(銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、六価クロム、カドミウム、鉛、ひ素、水銀、アルキル水銀(金属有機化合物)、シアン)、フェノール類、ダイオキシン類、内分泌攪乱物質、農薬、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレンなどの低沸点有機ハロゲン化合物、電気伝導度、塩濃度、DO、固形分濃度(SS、MLSS、VSSなど)、濁度、透視度、透明度、異臭味物質、生体毒性物質、大腸菌群、O157、クリプトスポリジウム、微生物の活性度、微生物の菌叢、内部に存在する微生物の遺伝子指標、微生物由来のタンパク質濃度等が挙げられる。モニタリングする場所はMABR槽内でもよいし、MABR槽の流入経路、流出経路、又は、MABR槽を含む一連の廃水処理装置における任意の場所でよい。
【0092】
以下に、酸素透過膜を用いた廃水処理の方法、廃水処理装置、廃水処理システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法等の具体例を説明する。
【0093】
(固液分離の方法)
下記に示すMABR方式と組み合わされる固液分離は、固液分離の効率化に効果的である。効率化とは、例えば、固液分離性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0094】
固液分離を効率よく行うために、MABRを設置した槽に傾斜板を設置したり、酸素透過膜自体を傾斜版として用いたり、酸素透過膜の裏側を傾斜板にしたりすることができる。
【0095】
生物処理水中の汚泥を酸素透過膜を含む生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.01~10m/hで上向流通水してもよい。また、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法を用いることができる。さらに、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けてもよい。これにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成することができる。これにより、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法は特に、固液分離を効率よく行うため、もしくは、汚泥および微小動物を安定して維持することができ、また、発生汚泥量を大幅に減量化することができる。また、高負荷運転による処理効率の向上と、処理水質の安定化を図るためにも効果的である。
【0096】
導入される1~20ppmの微量有機物含有水をMABR方式で生物処理を行い、TOC成分を分解し、表面から水が流通可能な連続空間を備え、該連続空間中に微生物を保持すると共に、合成樹脂製の連続気泡構造を有するスポンジ体からなる微生物の担体と、微生物を保持した上記担体を流動化し、且つ微生物に必要酸素を供給する曝気手段と、上記担体の大きさより小さい開口を有し、処理水に混ざって担体が排出するのを阻止する担体流出防止材を設けた生物処理槽と、上記生物処理槽から排出される処理水から微生物を分離すると共に、上記生物処理槽内の流動化により生じた上記担体の微粉を捕捉するマイクロフィルター装置又は限外濾過装置とを有することを特徴とする超純水製造装置におけるTOC成分除去装置。前記の方法は特に、超純水を製造すべき微量有機物含有水のTOC成分が増加しても、TOC成分を確実に資化、分解し、超純水を製造するために効果的である。
【0097】
BOD成分を含む有機性排水をMABR方式により生物処理する反応槽と、前記反応槽で得られた処理水を膜によって汚泥と分離する分離機構と、を有する排水処理装置であって、前記反応槽は、無酸素生物処理槽と、生物処理に必要な酸素が供給される第1生物処理槽及び第2生物処理槽と、を含み、前記有機性排水は前記第1生物処理槽に連続的に流入され、前記第1生物処理槽及び前記第2生物処理槽で生物処理され、前記第2生物処理槽内において、槽内に設置された膜により、処理水と汚泥とが分離され、前記第2生物処理槽内の汚泥の少なくとも一部は前記無酸素生物処理槽へ返送され、前記無酸素生物処理槽内の汚泥の少なくとも一部は、少なくとも前記第1生物処理槽に供給され、前記第1生物処理槽のMLSS負荷は、前記第2生物処理槽のMLSS負荷より高く、前記第1生物処理槽及び前記第2生物処理槽における下記式Aの値が1未満であることを特徴とする排水処理装置。
[数1]
(第1生物処理槽の汚泥保持量×滞留時間)/(第2生物処理槽の汚泥保持量×滞留時間) (式A)
前記の装置は、特に連続式の膜分離活性汚泥法において汚泥のろ過性を高めるために効果的である。
【0098】
排水流入口と処理水流出口が設けられた槽内に、生物汚泥と酸素透過膜を収容した生物処理槽を用いて、排水を生物処理する排水処理方法であって、前記排水流入口からの前記排水の導入及び前記処理水流出口からの処理水の排出が停止された状態で、前記生物処理槽内の排水を撹拌して、前記生物汚泥により前記排水を生物処理する生物処理工程と、前記生物処理槽内の排水の撹拌を停止してから前記生物処理槽内に前記生物汚泥のスラッジブランケットが形成されるまでの間に、前記排水流入口からの前記排水の導入を開始すると共に、前記処理水流出口からの前記処理水の排出を開始する排水導入処理水排出工程と、を備え、前記生物処理工程及び前記排水導入処理水排出工程を順次繰り返し行うことを特徴とする排水処理方法。前記の方法は特に、沈降性の高い生物汚泥を得ることが可能な排水処理方法として効果的である。
【0099】
(窒素成分除去の方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。特に、窒素成分除去の効率化に効果的である。
【0100】
被処理液を受入れて生物学的に硝化を行う酸素透過膜を含むプラグフロー型の硝化槽と、この硝化槽の一端部から被処理液の一部を供給する第一の給液装置と、この第一の給液装置から供給する被処理液のpHを5~9.7に調整する第一のpH調整装置と、前記プラグフロー型の硝化槽の中間部から被処理液の他の一部を供給する第二の給液装置と、この第二の給液装置から供給する被処理液のpHを6.5~11.5に調整する第二のpH調整装置とを備えていることを特徴とする硝化装置。前記の装置は特に、プラグフロー型の硝化槽を用いて生物学的に硝化する際、被処理液のpH、NH4
+濃度またはアルカリ度などが変動する場合でも、硝化槽内のpHを硝化細菌の活性が高くなる範囲に維持するために効果的である。酸素透過膜表面にスポンジ等の微生物担体を保持することがさらに効果的である。
【0101】
酸素透過膜から供給される酸素を用いてアナモックス細菌によりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を反応させて脱窒する窒素含有液の処理方法。前記の方法は特に、多量のアナモックス細菌を保持し、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を効率よく反応させて脱窒することができ、発生する窒素ガスを効率よく分離して脱窒を継続することために効果的である。酸素透過膜の表面にスポンジ等の担体を設置することがさらに効果的である。
【0102】
酸素透過膜を含む反応槽中に散気管を境界にして浮上担体からなる無酸素ゾ―ンと好気ゾーンとをに設け、廃水の原水と処理水の循環水を混合して前記無酸素ゾーンに流入させ、無酸素ゾーンで前記原水中の有機体を利用して脱窒素反応をおこし、好気ゾーンで散気管からの酸素を利用して硝化反応をおこし、もって廃水中の脱窒素処理を行う有機廃水の処理方法において、散気管から注入する空気量、もしくは酸素透過膜へ供給する空気量を流入する原水の量に応じて制御することを特徴とする有機廃水の処理方法。前記の方法は特に、反応槽中に散気管を境界にして浮上担体からなる無酸素ゾ―ンと好気ゾーンとを上下方向に設け、廃水の原水と処理水の循環水を混合して前記無酸素ゾーンに流入させ、無酸素ゾーンで前記原水中の有機体を利用して脱窒素反応をおこし、好気ゾーンで散気管からの酸素を利用して硝化反応をおこし、もって廃水中の脱窒素処理を行う有機廃水の処理方法において、下水の流入量が変動すると脱窒反応が充分に起らなくなり、その結果として窒素が充分に除去されないという課題の解決に効果的である。
【0103】
酸素透過膜を含む生物反応槽において、下部から原水を流入させ、生物反応槽の上部から下部に返流させる流路を有する生物反応槽を含む廃水処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0104】
A2O法において、好気槽にMABR方式を用いた廃水処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。また、A2O法の任意の槽において発生した汚泥の一部を引抜き、A2O法の任意の槽に投入することも効果的である。
【0105】
生物担体粒子の流動床を形成した、酸素透過膜を含む生物処理槽と、この生物処理槽に上向流速を与えるように液を循環する循環系路と、この循環系路に設けられた循環ポンプと、前記循環系路の循環水量を間欠的に変える手段とを備え、前記流動床を通常は低展開率で運転するとともに、間欠的にオ高展開率で運転するようにしたことを特徴とする有機性廃棄物の生物処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0106】
MABR方式を用いて被処理水中の窒素成分を硝酸または亜硝酸に硝化させた後、硝酸及び亜硝酸を含む排水に水素供与体を添加する水素供与体添加手段と、前記水素供与体が添加された前記排水を嫌気的に生物処理する脱窒槽と、前記排水中の前記硝酸及び前記亜硝酸濃度を測定する紫外線吸光度法式センサと、前記排水中の前記硝酸濃度を測定するイオン電極法式センサと、前記紫外線吸光度法式センサにより測定された前記硝酸及び前記亜硝酸濃度と、前記イオン電極法式センサにより測定された前記硝酸濃度とにより求められる前記排水中の硝酸濃度及び亜硝酸濃度に基づいて、前記水素供与体添加手段により前記排水中に添加される前記水素供与体の添加量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする硝酸及び亜硝酸を含む排水の処理装置。前記の装置は特に、被処理水中の硝酸濃度及び亜硝酸濃度を迅速に測定することが可能とし、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0107】
MABR方式を用いたアンモニア性窒素の亜硝酸化の後に、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体として反応させて窒素ガスを生成させる独立栄養性の脱窒微生物汚泥を、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む液中で、連続気泡を有する比重0.8~1.5、連続気泡の孔径5~5000μm、空隙率10~90%、比表面積500~10000m2/m3、粒径0.1~2cmの粒状担体を投入して処理を行うことにより、前記粒状担体の内部に前記脱窒微生物汚泥を入り込ませて付着させ、三次元的に担持させた担持汚泥と、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理液とを、脱窒槽に保持し嫌気状態で接触させて反応させる方法であって、前記被処理液のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合はモル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒素0.5~2、被処理液中のアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素の濃度はそれぞれ5~1000mg/l、5~200mg/lであり、前記脱窒槽に保持される担体の量は、槽内液中に投入する担体の量として10~75容量%であることを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、独立栄養性の微生物を大量に保持できるとともに、汚泥量あたりの脱窒活性を高めることができ、しかも溶存酸素等の阻害性物質に対する耐性を高めることができ、これにより小型の装置で効率よく脱窒を行うことができ、新設の装置の立ち上げも容易であり、また厳密な酸素除去も不要になる脱窒方法および装置を得るために効果的である。前記粒状担体と同様の性状の担体を酸素透過膜の表面に担持、もしくは積層させてもよい。
【0108】
アンモニア性窒素を含有する原水を脱窒槽に導入し、該脱窒槽内の、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする脱窒微生物の作用により、亜硝酸性窒素の存在下に脱窒する方法において、該脱窒槽に炭酸ガスを供給することにより、該脱窒槽内のpHを制御して脱窒を行い、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得て、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得ることを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、アンモニア性窒素を含有する原水を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする脱窒微生物の作用により、亜硝酸性窒素の存在下に脱窒する処理に当たり、pH調整用の酸を用いることなく、厳密な添加制御を行うことなく、容易に好適なpH範囲に調整するために効果的である。
【0109】
アンモニア性窒素含有排水を、アンモニア酸化細菌を保持している曝気槽兼MABR槽に導入して曝気することにより亜硝酸型硝化処理する方法において、酸素を含有する第1のガスを酸素透過膜を用いて供給し、実質的に酸素を含有しないか或いは該第1のガスよりも酸素分圧の低い第2のガスとを曝気する方法であって、 該第1のガスを、必要とする曝気槽内DO濃度が得られる程度に供給し、不足する攪拌力を第2のガスの曝気風量により補うことで、該曝気槽内の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御することを特徴とする排水の処理方法。前記の方法は特に、排水を好気性細菌を保持している曝気槽に導入して曝気することにより酸化処理する方法において、曝気槽内の設定DO濃度が低い場合であっても、曝気による十分な槽内撹拌作用を得た上で曝気槽内のDO濃度を任意に制御可能とするために効果的である。
【0110】
アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体として反応させて窒素ガスを生成させる独立栄養性の脱窒微生物汚泥を、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む液中で、連続気泡を有する比重0.8~1.5、連続気泡の孔径5~5000μm、空隙率10~90%、比表面積500~10000m2/m3、粒径0.1~2cmの粒状担体を投入して処理を行うことにより、前記粒状担体の内部に前記脱窒微生物汚泥を入り込ませて付着させ、三次元的に担持させた担持汚泥と、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理液とを、脱窒槽に保持し嫌気状態で接触させて反応させる方法であって、前記被処理液のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合はモル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒素0.5~2、被処理液中のアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素の濃度はそれぞれ5~1000mg/l、5~200mg/lであり、 前記脱窒槽に保持される担体の量は、槽内液中に投入する担体の量として10~75容量%であり、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得るうことを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、独立栄養性の微生物を大量に保持できるとともに、汚泥量あたりの脱窒活性を高めることができ、しかも溶存酸素等の阻害性物質に対する耐性を高めることができ、これにより小型の装置で効率よく脱窒を行うことができ、新設の装置の立ち上げも容易であり、また厳密な酸素除去も不要になる脱窒方法として効果的である。前記粒状担体と同様の性状の担体を酸素透過膜の表面に担持、もしくは積層させてもよい。
【0111】
窒素およびカルシウムを含有する排水を、排水中のカルシウム濃度を100mg/L以下まで低減させた後に独立栄養性細菌と接触させて少なくとも排水中のアンモニウムイオンの一部を亜硝酸イオンまで酸化するアンモニア酸化工程、および、アンモニウムイオンと亜硝酸イオンを含む排水を、無機炭素を供給した状態で独立栄養性のANAMMOX細菌と接触させて脱窒を行う脱窒工程を含む窒素含有排水の処理方法であって、酸素透過膜より供給される酸素を用いて好気性条件下で前記アンモニア酸化工程を行い、嫌気性条件下で前記脱窒工程を行い、前記アンモニア酸化工程において、pH調整のために炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを供給することを特徴とする、窒素含有排水の処理方法。前記の方法は特に、カルシウムおよび窒素を含有した排水を処理するに際し、排水中に残留しているカルシウム成分による不具合を除去し、安定した窒素処理を行うことができるようにした、窒素含有排水の処理方法を得るために効果的である。
【0112】
MABR方式を用いた有機性窒素やアンモニア性窒素の処理において、酸素透過膜への酸素を含有する気体の供給量を断続的に停止することにより、硝化脱窒を行う廃水処理装置。前記の装置は、小さい設置面積や槽容積で硝化脱窒を行うために効果的である。
【0113】
MABR方式を用いた有機性窒素やアンモニア性窒素の処理において、MABR槽内の被処理水における硝酸濃度、もしくは亜硝酸濃度を測定し、測定値から酸素透過膜への酸素を含有する気体の供給量をフィードバック制御することにより、硝化脱窒を行う廃水処理装置。前記の装置は特に、硝化脱窒に関連する微生物相を維持し、硝化脱窒性能を向上、維持、安定化するために効果的である。
【0114】
硝酸若しくは亜硝酸を含む被処理水が流入する脱窒反応槽に、水素供与体を間欠添加して、前記硝酸若しくは前記亜硝酸を窒素ガスに還元する窒素含有水の生物処理方法であって、前記反応槽に流入する被処理水中の硝酸若しくは亜硝酸の濃度と前記反応槽に流入する被処理水量との積から求められる硝酸若しくは亜硝酸量の増加又は減少に応じて、以下の式(B)を満たすように、水素供与体添加速度(v)、単位時間当たりに必要な水素供与体の添加量(X)、前記反応槽の総容量/前記反応槽に流入する水流量で求められる水理学的滞留時間(T)、前記水理学的滞留時間(T)を水素供与体の添加及び停止からなる間欠添加1サイクル当たりの時間で除した水素供与体の間欠添加サイクル数(N)、添加する水素供与体の濃度(M)、前記間欠添加1サイクル当たりの時間に対する水素供与体添加時間の割合(D)、及び前記間欠添加1サイクル当たりの時間における水素供与体供給停止時間(ST)を設定することを特徴とする窒素含有水の生物処理方法。前記硝酸若しくは亜硝酸は、前記脱窒反応槽とは別に設置したMABR槽からの排出水であってもよく、脱窒反応槽の後段に設置したMABR槽からの返送水であってもよく、前記脱窒反応槽の前段に設置したMABR槽の排出水であってもよい。また、脱窒反応槽に酸素透過膜を設置することで、有機性窒素、アンモニア性窒素の酸化により硝酸若しくは亜硝酸を得てもよい。前記の方法は特に、被処理水中の窒素濃度や流量等が変動しても、安定な処理水質を確保することができる窒素含有水の処理方法及び処理装置を提供するために効果的である。
[数2]
v=X・T・(100-D)/(N・ST・D・M) (式B)
【0115】
原水中のアンモニア性窒素を、硝化槽を用いてグラニュール法で硝化菌により生物学的に亜硝酸性窒素または硝酸性窒素へ硝化する硝化処理方法であって、酸素透過膜を用いて酸素を供給し、前記硝化槽へ無機炭素として二酸化炭素ガスを気体状態で供給し、前記硝化槽へ流入する1日あたり単位槽体積あたりの前記アンモニア性窒素の前記亜硝酸性窒素または前記硝酸性窒素への転換負荷が、0.5kg-N/m3/day以上であることを特徴とする硝化処理方法。前記の方法は特に、原水中のアンモニア性窒素の硝化処理に必要な無機炭素を安価で簡便に供給することができる硝化処理方法を得るために効果的である。
【0116】
(MABR槽内の廃水組成物や添加物を均一化する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR槽内を均一化することで廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0117】
酸素透過膜の構造体を動力を用いて動かすことで槽内を均一化することが可能である。動力源としては例えば、エアシリンダーや振動モーターを用いることができるし、それら動力源を偏心カム等を用いて往復運動に変換して酸素透過膜の構造体に伝えてもよい。
【0118】
被処理水の流入経路を工夫することで槽内を撹拌することができる。例えば、サイフォンの原理を用いて被処理水の流速を上げ、その流れを用いて槽内を撹拌することができる。また、導水板を用いて槽内が均一に撹拌されるように流れを制御してもよいし、酸素透過膜に被処理水の流れが接触するようにしてもよい。また、被処理水の出口にマニホールドやヘッダを接続することで、槽内が均一に撹拌されるように流れを制御してもよいし、酸素透過膜に被処理水の流れが接触するようにしてもよい。
【0119】
ステップ流入を用いることで槽内の処理対象の有機物の濃度を均一化させることもできる。
【0120】
MABR方式の生物処理装置において、該槽体内周面の上部にのみ邪魔板を設けた生物処理装置であって、該邪魔板は上下方向に延在すると共に、該槽体内周面から求心方向に延出し、該邪魔板の求心方向の幅tは該槽体の直径D1の5~20%であり、該邪魔板の水面位以下の上下長さH2は該槽体の水深H1の5~20%であり、前記回転翼の上縁の、前記槽体底面からの高さH3は前記槽体の水深H1の50~70%であり、該回転翼の下縁の、該槽体底面からの高さH5は該槽体の水深H1の30~50%であることを特徴とするMABR方式の生物処理装置。前記の装置を用いることで特に、被処理水の流動性が良好であり、生物処理効率が高いMABR方式の生物処理装置を効果的に得ることができる。
【0121】
動力を用いた撹拌では、廃水を撹拌する装置として、エアの上向流を用いたエアリフト、翼を持つ撹拌機、水中ポンプ、ポンプを槽外に設置し、配管をMABR槽に設置したもの等を用いることができる。
【0122】
MABR槽と活性汚泥法や流動担体法に用いられる曝気槽を組み合わせた生物処理装置で、曝気槽で得られる上向流により、MABR槽と曝気槽の被処理水を循環、撹拌する生物処理装置。もしくは、有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する装置であって、第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、後段のMABR槽である第二生物処理槽において、第二生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理装置において、第一生物処理槽及び第二生物処理槽は同一形状及び同一大きさの塔体を有しており、塔体の高さが1~11mであり、最終段の生物処理槽から生物処理液が循環導入される膜分離槽を備えたことを特徴とする有機性排水の生物処理装置を構築することが可能である。なお、第一生物処理槽と第二生物処理槽は順序を逆にして設置してもよい。前記の装置を用いることで特に、施工が容易であると共に、高所作業の低減及び省スペース化を図ることができる有機性排水の生物処理装置を効果的に得ることができる。
【0123】
槽内を均一化する方法として、酸素透過膜を保持する槽に、1時間~30日毎に原水を上向流と下向流に交互に切換えて通水する方法を用いることもできる。
【0124】
槽内を撹拌する時期として、酸素透過膜表面にバイオフィルムが付きすぎた場合のみ、循環ポンプを作動させ、バイオフィルムをはがすようにする廃水処理装置を運転することもできる。また、1時間~30日毎に1分~1日の間だけ循環ポンプを作動させ、バイオフィルムの付きすぎを防止するように廃水処理装置を運転することもできる。
【0125】
(MABR槽と他の廃水処理装置を組み合わせる方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR方式と他の廃水処理方式組み合わせることで廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0126】
MABR槽を直列に接続することで、効率よく処理水中の有機物濃度を低減することができる。
【0127】
好気性の第一生物処理槽に有機性排水を通水し、該第一生物処理槽からの第一生物処理水を、好気性の第二生物処理槽に導入する有機性排水の生物処理方法。具体的には、全体のBOD容積負荷を0.5~5kg/m3/dayとし、 第一生物処理槽のBOD容積負荷を1kg/m3/day以上として、第一生物処理槽において、有機性排水中の有機成分の10~90%を除去し、 第一生物処理水中の分散菌由来SSの、第二生物処理槽内の担体に対する負荷(以下、分散菌担体負荷という)を8kg-SS/m3-担体/day以下とすることが好ましい。また、第一生物処理槽と第二生物処理槽の少なくとも1つはMABR槽であり、第二生物処理槽には汚泥を捕食する微小動物が含まれていることが好ましい。前記の方法を用いることで特に、第一生物処理槽から流出する菌が適切に捕食され、安定した生物処理を行うことができる有機性排水の生物処理方法を効果的に得ることができる。
【0128】
全生物処理槽の負荷を、CODCr容積負荷1.0kg/m3/day以上又はBOD容積負荷0.5kg/m3/day以上として、好気条件下に生物処理を行う有機性排水の生物処理方法であって、該好気性生物処理槽を二段以上の多段に設け、第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、該第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽以降の生物処理槽に通水して生物処理し、該第二生物処理槽以降の生物処理槽の処理水を沈殿槽で固液分離し、分離汚泥の一部を該第二生物処理槽以降の生物処理槽に返送する有機性排水の生物処理方法において、該第二生物処理槽以降の生物処理槽に微小動物を保持する担体もしくは酸素透過膜を設けること、及び前記第二生物処理槽以降の生物処理槽内に設けられた担体は、合成樹脂発泡体よりなる、一辺の長さが100~400cmで、それと直交する辺の長さが5~200cmで、厚さが0.5~5cmのシート状であり、該担体の少なくとも一部が該生物処理槽に直接または固定具を介して鉛直方向に固定された担体であり、第一生物処理槽と第二生物処理槽の少なくともどちらか一方に酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法により、CODCr容積負荷1.0kg/m3/day以上又はBOD容積負荷0.5kg/m3/day以上の高負荷処理を行うに当たり、濾過捕食型の微小動物を積極的に優先させると共に処理水質悪化を引き起こす凝集体捕食型の微小動物の増殖を抑制し、処理効率、処理水質の向上及び汚泥の減容化の効果が得られる。
【0129】
MABR槽より前段の任意の位置に、夾雑物や固形物を除去するためのスクリーンを用いることにより、処理水質の向上と夾雑物や固形物による酸素透過膜の破損を防止する効果が得られる。
【0130】
MABR槽より後段の任意の位置に、凝集沈殿装置及び凝集沈殿槽を用いることで、良好な処理水質を得ることが可能である。
【0131】
またMABR槽より後段の任意の位置に活性炭を充填した槽を設置し、被処理水を通水させることでも良好な処理水質を得ることができる。
【0132】
2槽以上の生物処理槽を直列に接続し、第1生物処理槽に有機性排水を通水し、細菌により生物処理し、第1生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第1処理水を第2生物処理槽に導入し、生物処理すると共にこの第2生物処理槽に微小動物を存在させる生物処理方法において、第1生物処理槽の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御し、該第1および第2生物処理槽にそれぞれ担体を存在させるようにした方法であって、該第1生物処理槽をMABR槽もしくは担体充填率40%以下の流動床もしくは酸素透過膜と充填率40%以下の担体を含む槽とし、該第2生物処理槽をMABR槽もしくは担体充填率10%以上の流動床もしくは酸素透過膜と充填率10%以下の担体を含む槽とし、第2生物処理槽の処理水を固液分離処理する有機性排水の生物処理方法であって、第1生物処理槽において排水BODの30%以上を分解することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の補食作用を利用した多段活性汚泥法における汚泥減量効果を効果的に安定させることができる。
【0133】
有機性排水中のBODを高負荷処理して菌体に変換する第1の生物処理工程と、変換された菌体を該菌体を捕食する微小動物と共存させる第2の生物処理工程とを有する有機性排水の生物処理方法において、基準となる前記有機性排水中のBODの70%以上100%未満が菌体に変換されるに要する前記第1の生物処理工程における水理学的滞留時間(HRT)を求めて、この値を基準HRTとし、前記第1の生物処理工程におけるHRTが該基準HRTの0.75~1.5倍の範囲となるように、該第1の生物処理工程に導入される前記有機性排水に液体を添加し、第1と第2の生物処理工程の少なくとも1つがMABR方式であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の捕食作用を利用した多段法において、安定した処理水質を維持した上でより一層の処理効率の向上と余剰汚泥発生量の低減を効果的に実現することができる。
【0134】
生物難分解性有機物及び生物易分解性有機物を含有する有機排水の処理方法であって、2つ以上の工程から構成されており、前記工程が、生物処理、オゾン処理、逆浸透膜処理、生物活性炭処理のいずれかであり、少なくとも1つの工程がMABR方式である有機排水の処理方法。具体的には前記有機排水をMABR方式により生物処理する第1処理工程と、前記生物難分解性有機物の少なくとも一部をオゾン処理によって分解して分解物を得る第2処理工程と、前記分解物に対して逆浸透膜処理を行う第3処理工程と、生物処理を行う第4処理工程とを含み、前記第4処理工程における生物処理がMABR処理もしくは生物活性炭を用いて行われ、前記生物難分解性有機物が界面活性剤であることをが好ましい。前記の方法を用いることで特に、生物難分解性有機物が含まれる有機排水を効果的に処理でき、得られる処理水中のTOC濃度を十分に低減できる有機排水の処理装置を効果的に得ることができる。
【0135】
MABR槽の蓋に生じた結露水がMABR槽の被処理水に落下しないことが効果的である。例えば、蓋に傾斜をつけること、もしくは、蓋を二重構造にすることで、蓋の結露水が落下しないようにすること、結露防止用の換気装置を用いることが効果的である。結露防止用の換気装置は、装置の気体空間に湿度計を設置し、湿度に応じて換気装置を運転したり、換気量を制御することが好適である。
【0136】
MABR槽において、流入する被処理水の水量と有機物濃度に応じて、酸素透過膜に供給する酸素を含有する気体の流量を制御することを特徴とする生物処理槽の運転方法。前記の方法を用いることで特に、最低限の気体流量で運転できるので、省エネルギー効果が大きくなる。
【0137】
(有機物負荷の変動に対応する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、被処理水の有機物濃度や水量の変動に対して、廃水処理を効率化するため効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0138】
生物処理装置を並列に設置し、負荷変動に応じて各生物処理装置への分配量を制御し、前記生物処理装置の少なくとも1つがMABR方式である廃水処理装置の運転方法。
【0139】
流量調整槽と生物反応槽を少なくとも含み、前記流量調整槽が前記生物反応槽より上流側に設置されており、生物処理により有機物除去が可能であり、前記生物反応槽と前記流量調整槽の少なくとも一方がMABR槽である、廃水処理装置。前記廃水処理装置において、被処理水の水量や有機物濃度に応じて、生物反応槽に流入する被処理水の量を制御することが好適である。
【0140】
有機性排水に窒素またはリンを含む栄養物質の量が適正量になるように栄養剤を添加してMABR方式で好気性生物処理を行う有機性排水の生物処理装置において、処理対象排水の有機物濃度を測定する有機物濃度測定手段と、測定された有機物濃度が所定値未満の場合に有機物に対する栄養物質の量がほぼ理論的適正量となるように栄養剤を添加し、測定された有機物濃度が所定値以上の高濃度である場合には有機物濃度に対する栄養物質の量が前記理論的な適正量より少なくなるように栄養剤を添加する栄養剤添加制御手段と、を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。前記装置において、前記有機物濃度の所定値は、BODとして2000mg/Lであり、前記理論的な適正量より少ない量とは、BODを100とした場合に、窒素が3以下、リンが0.7以下であることが好適である。前記の装置を用いることで特に、高濃度有機性排水を効率的に処理することができる。
【0141】
有機物含有水をMABR方式により処理する生物処理装置において、リンを欠乏させることにより集積される貧栄養細菌によって、該有機物含有水を生物処理することを特徴とする、有機物含有水の処理方法。前記処理装置において、膜ろ過を組み合わせることが好適である。また、前記装置が有機物濃度と前記装置に流入する被処理水の流量を測定する手段を有し、リンを少なくとも含む栄養塩を生物処理装置に添加する手段を有し、有機物濃度と被処理水の流量に応じて栄養塩の添加量を制御することが好適である。前記の方法を用いることで特に、有機物濃度と有機物含有水の生物処理、もしくは膜処理において、殺菌剤を用いることなく、膜面のスライム、それによるバイオファウリングを効果的に防止して、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行うことができる。
【0142】
(有機物を高濃度に含む被処理水を処理する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、有機物を高濃度に含む被処理水を処理する場合において、廃水処理を効率化するため効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0143】
MABR方式より前段の任意の位置に、有機物濃度の高い濃厚有機性廃水を混合し、混合液を高温好気性発酵もしくは嫌気消化させる発酵槽を有することを特徴とする廃水処理装置。具体的には、濃厚有機性廃水がし尿系廃水、活性汚泥法から発生する余剰汚泥、工場廃水(食品工場、化学工場、エレクトロニクス分野の加工工場等)であることが好適であり、甜菜糖ピークカット廃水、焼ちゅうもろみ廃水、酵母製造廃水、廃糖密廃水または大豆加工廃水であることがさらに好適である。また、混合液がC0Dcr10000以上であることが好適である。前記の装置を用いることで特に、濃厚有機性廃水を効率よく処理することが可能となる。
【0144】
有機性排水を嫌気槽で嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程と、その後少なくとも1段の好気槽で好気性生物処理する好気性生物処理工程とを有し、該好気性生物処理工程では、第1好気槽において好気性細菌により生物処理して分散性細菌を生成し、前記嫌気性生物処理工程では、前記好気性生物処理工程全体のCODcr容積負荷が10kg/m3/day以下、かつ溶解性CODcr容積負荷が5kg/m3/day以下となるように嫌気処理し、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/day以下となるように第1好気槽で好気性処理し、生物処理工程の少なくとも1つに酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法では、該第1好気槽からの分散性細菌を含む第1好気処理水を、担体を有した第2好気槽に導入し、該第2好気槽において、原生動物又は後生動物に該細菌を捕食させることが好ましい。前記の方法を用いることで特に、有機性排水を嫌気処理した後、好気処理することで、嫌気処理由来の難凝集性SSを効果的に削減することができる。さらに、嫌気処理した後に好気処理し、次いで第2好気槽において原生動物や後生動物に細菌を捕食させる有機性排水の生物処理方法及び装置において、第2好気槽において原生動物や後生動物を優占化させることで、嫌気処理由来の難凝集性SSをさらに効果的に削減することができる。
【0145】
(汚泥を低減する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、生物処理から発生する余剰汚泥や、沈殿、凝集沈殿、加圧浮上、膜分離、ろ過等の固液分離工程で発生する汚泥を低減することで廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0146】
セレン含有排水中に存在するセレン酸化物を嫌気性生物処理によりSeに還元して不溶化し、除去する生物学的処理手段を備えた排水処理装置において、前記生物学的処理手段が、MABR方式、好気性処理、嫌気性処理を含む生物処理を順次行う複数の生物処理工程を有することを特徴とするセレン含有排水の処理装置。前記セレン酸化物は好ましくはSeO3
2-及び/又はSeO4
2-である。前記の装置を用いることで特に、セレン含有排水中に存在するセレン酸化物を嫌気性生物処理により単体セレンに還元して不溶化する場合において、セレン酸化物の還元反応の効率向上及び安定化を図る上で効果的である。
【0147】
有機物を含有する排水を嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理工程を含む生物処理方法であって、ゲル状の担体の存在下で、水温50℃未満、好ましくは35℃未満で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含み、前記嫌気性生物処理工程、もしくは、その前後の工程において、酸素透過膜が用いられることを特徴とする生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、有機物を含有する排水を嫌気性下で、低水温の条件においても高負荷で安定してメタン発酵する嫌気性生物処理方法が効果的に得られる。
【0148】
二段以上の多段に設けられた好気性生物処理槽の、BOD容積負荷が1kg/m3/day以上の第一生物処理槽に有機性排水を導入し、一過式で通水して細菌により生物処理して有機成分の30~99%、好ましくは70~95%を分解して菌体に変換し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を、溶解性BOD汚泥負荷が0.25~0.50kg-BOD/kg-MLSS/dayの第二生物処理槽以降の生物処理槽に通水して生物処理する有機性排水の生物処理方法において、該第二生物処理槽以降の生物処理槽に微小動物を保持する担体を充填率0.5~40%で設けると共に、該第二生物処理槽以降の生物処理槽内の汚泥の一部を引き抜いて無酸素槽で処理した後該第二生物処理槽以降の生物処理槽に返送し、少なくとも1つの生物処理槽の酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。担体としてはポリウレタンフォームよりなる固定床板状担体が好ましい。前記の方法を用いることで特に微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法において、濾過捕食型の微小動物を優先させて、処理効率の向上及び汚泥の減容化と共に、処理水質の向上を効果的に実現することができる。
【0149】
(生物処理装置の立ち上げ方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0150】
有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理工程であって、前記生物処理を立ち上げる際には、前記反応槽内に、非嫌気性もしくは嫌気性の微生物が生物膜となって付着している担体を投入することを特徴とする有機性排水の処理工程を含み、その他にMABR槽を含むことを特徴とする有機性廃水の処理方法。もしくは、有機性排水をMABR槽により生物処理する有機性排水の処理工程であって、前記生物処理を立ち上げる際には、前記MABR槽内に、非嫌気性もしくは嫌気性の微生物が生物膜となって付着している担体もしくは酸素透過膜を投入することを特徴とする有機性排水の処理工程を含む、有機性廃水の処理方法。これらの方法を用いることで特に、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑制することが可能な有機性排水の処理方法を提供することができる。
【0151】
有機物を含有する排水をMABR方式で処理する排水処理方法であって、担体を生物反応槽内に存在させながら運転することを特徴とする排水処理方法。前記の方法を用いることで特に、酸素透過膜の閉塞を抑制した安定運転を可能とする排水処理方法および排水処理装置を効果的に得ることができる。担体は密度35kg/m3以上のスポンジ状であることが好ましい。
【0152】
有機性窒素もしくはアンモニア等の窒素源の含有水を硝化槽に通水して窒素源を分解する方法において、該硝化槽内に、メタン菌グラニュールを核として、アンモニア性窒素を電子供与体とし亜硝酸性窒素を電子受容体として脱窒反応を行う脱窒細菌を自己造粒させた一次生物膜体を保持し、該硝化槽内にて、該一次生物膜体の表面をアンモニア酸化細菌で覆った生物膜二重構造体を生成させ、酸素透過膜を含むことを特徴とする窒素源含有水の処理方法。前記の方法を用いることで特に、アンモニア含有水の硝化脱窒処理に、ANAMMOX菌を有効に利用して処理コストの大幅な低減を図った上で、高水質の処理水を安定に得ることができる。また、酸素透過膜に前記一次生物膜体を保持することが好ましい。
【0153】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを繰り返して行って微生物を育成もしくはグラニュールを形成する半回分式反応槽を用いた廃水処理装置の運転方法であって、前記運転サイクルは、第1汚泥負荷で前記生物処理工程を行う第1運転サイクルと、前記第1運転サイクル後に、第2汚泥負荷で前記生物処理工程を行う第2運転サイクルと、を有し、前記第1汚泥負荷は、前記第1運転サイクルの生物処理工程終了時における前記半回分式反応槽内の溶解性BOD濃度が閾値以下まで低下しないように設定される汚泥負荷であり、前記第2汚泥負荷は、前記第2運転サイクルの生物処理工程終了時における前記半回分式反応槽内の溶解性BOD濃度が閾値以下となるように設定される汚泥負荷であることを特徴とする廃水処理装置の運転方法。前記の方法を用いることで特に、微生物の育成もしくはグラニュールの形成を効果的に実施することができる。
【0154】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを繰り返して行って微生物の育成、もしくは、グラニュールの形成を行う半回分式反応槽を用いた微生物の育成、もしくは、グラニュールの形成方法であって、前記生物処理工程では、前記半回分子反応槽内のpHをモニタリングし、該モニタリングしたpHに関する情報に基づいて、前記生物処理工程の時間を調整し、前記生物処理工程の内部に酸素透過膜を含むことを特徴とする微生物の育成、もしくはグラニュールの形成方法。前記の方法を用いることで特に、有機物含有排水のBOD濃度が変動しても、良好なグラニュールを形成することが可能な微生物の育成方法、もしくは、グラニュールの形成方法、またその装置を提供することができる。
【0155】
窒素含有排水を硝化反応槽内で好気的に生物処理する硝化工程と、前記排水を脱窒反応槽内で嫌気的に生物処理する脱窒工程と、前記硝化工程及び前記脱窒工程から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離工程と、分離された汚泥を前記硝化工程又は前記脱窒工程へ返送する汚泥返送工程と、を有する排水の処理方法であって、生物処理立ち上げ時に、前記硝化工程において前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する工程を有するとともに、前記脱窒工程において前記排水にグラニュール化していない脱窒汚泥のみを投入する工程を有し、前記汚泥返送工程による汚泥の返送を行いながら、前記脱窒工程における脱窒処理を継続することで、前記硝化能力を有するグラニュールと前記脱窒反応槽内の脱窒菌とにより、硝化能力と脱窒能力を有する硝化脱窒グラニュールを作成する工程を含み、硝化工程、脱窒工程、固液分離工程が行われる各槽のうちの少なくとも1つに酸素透過膜を含むことを特徴とする排水の処理方法。酸素透過膜は少なくとも硝化工程に含まれることが好ましい。硝化工程、脱窒工程、固液分離工程の各工程は、各工程のうち2つ以上の任意の組合せで同一の槽内において実施されてもよい。前記の方法を用いることで特に、生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理において、汚泥の沈降性を改善し、処理速度(負荷)を向上させることができる排水の処理方法及び処理装置を効果的に提供することができる。
【0156】
酸素透過膜、もしくは、微生物を保持する担体を収容し、有機物含有水を処理する生物処理槽と、前記担体の肥大化が確認された際に、前記生物処理槽に鉄塩を添加する鉄塩添加手段と、を備え、前記鉄塩添加手段は、前記担体の肥大化確認後の前記担体に付着している生物汚泥のMLVSS/MLSS(%)が10%ポイント以上低下するように、前記生物処理槽に前記鉄塩を添加することを特徴とする生物処理装置。前記生物処理槽は酸素透過膜を含む流動床式生物処理槽であることが好ましい。前記の装置を用いることで特に、担体の肥大化を改善することが可能な生物処理装置及び生物処理方法を効果的に提供することができる。
【0157】
有機物および鉄イオンを0.1mg-Fe/L以上含有する原水を反応槽の下部から連続的に導入して前記反応槽中の微生物と接触させる、好気性グラニュールの形成方法であって、前記原水のC/N比を7以下となるように調整して前記反応槽に導入し、前記反応槽において、好気性条件下、硝化菌の共存下で前記グラニュールを形成することを特徴とする好気性グラニュールの形成方法。前記の方法を用いることで特に、連続通水式で好気性条件下において安定的にグラニュールを形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法を効果的に提供することができる。
【0158】
(酸素透過膜の洗浄方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、酸素透過膜に付着したバイオフィルムやゴミ、夾雑物、SS等を取り除き、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0159】
長期間の使用により酸素透過膜の表面に過剰なバイオフィルムや固形物等の付着物が付着し、処理性能の低下が発生した場合、酸素透過膜の洗浄が必要である。洗浄の際は、酸素透過膜をユニットごと被処理水中から引き上げ、付着物を取り除くことが効果的である。
【0160】
好気性微生物をその表面に着生させた酸素透過膜、もしくは、充填材を充填し(以下、充填材層と呼ぶ)、当該充填材層の下部あるいは上部からBOD成分を含む被処理水を流入し、BOD成分を除去する方法において、断面積がほぼ等しい複数の室に分割した槽であって、分割した複数の室の合計の処理流量と、一つの室の洗浄流量とがほぼ等しくなるように槽を分割するとともに、各室の下部あるいは上部に被処理水供給管と空気供給管をそれぞれ設けたことを特徴とするBOD成分を除去する方法。
【0161】
表面に好気性微生物を着生させた酸素透過膜を充填し、当該酸素透過膜層に有機物を含む原水と酸素を含む気体とを流入させて生物学的処理によって原水中の有機物を除去するMABR槽と、当該MABR槽の処理水中に含まれる濁質を沈殿分離によって除去する沈殿分離槽と、当該沈殿分離槽内の上澄水を当該槽内から直接抜き出すとともに抜き出した上澄水を前記MABR槽の下部に供給する洗浄ポンプとを備えてなり、前記MABR槽内の酸素透過膜層が目詰りした際に、前記洗浄ポンプにより沈殿分離槽内の上澄水を抜き出してMABR槽の下部に供給することによって前記酸素透過膜層の洗浄を行い、かつ当該洗浄時にMABR槽から排出される洗浄排水の全量を、前記沈殿分離槽内に直接導入して処理する構成としたことを特徴とする好気性生物処理装置。
【0162】
処理槽内に生物膜を付着した酸素透過膜による酸素透過膜層を設け、該酸素透過膜層に原水を下向流で通水して原水中のBOD等を生物膜の微生物により処理する生物処理装置における酸素透過膜の洗浄方法において、槽内底部からの水抜きと、槽底への洗浄空気の供給を同時に行ない、槽内で次第に下降する液面を洗浄空気により乱し、酸素透過膜に付着した生物膜の剥離を行なうことを特徴とする生物処理装置における酸素透過膜の洗浄方法。
【0163】
(省スペースを目的とした酸素透過膜の使用方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR槽の槽容積や設置スペースを小さくすることを目的としたMABR槽の例であり、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0164】
MABR槽において、酸素透過膜が槽の上部に設置されており、下部に空間がある場合、MABR槽の下部に水流を発生させ、被処理水を撹拌することで被処理水と酸素透過膜との接触効率が向上する。前記の方法を用いることで特に、設置スペースの低減や廃水処理の効率の向上を効果的に実現することができる。水流を起こす方法としては、水中撹拌機を設置することが好ましい。別の例として、例えば、被処理水の流入口側のように負荷量が大きい部位の酸素透過膜においては鉛直方向の長さが長い酸素透過膜を設置し、負荷量が小さい側に鉛直方向の長さが短い酸素透過膜を設置することで酸素透過膜の数量を減らすことができ、コスト低減や設置の手間の軽減が可能となる。なお、負荷量が大きい部位と負荷量が小さい部位とはそれぞれ別のMABR槽であってもよい。
【0165】
沈殿槽に酸素透過膜を設置し、被処理水の流入部に潜り堰を設け、被処理水の流出部に越流堰を設けることを特徴とする、MABR槽。前記の槽を用いることで特に、沈殿槽でも有機物の処理ができるため、廃水処理装置全体としての処理の効率化が可能となる。酸素透過膜は被処理水の流下方向の水流を妨げないように設置することが好ましい。具体的には、酸素透過膜を流下方向と平行に設置することが好ましい。また、廃水処理装置が最初沈殿槽と最終沈殿槽を有する場合には、負荷が大きい最初沈殿池に設置した方が好ましいが、両方の沈殿池に酸素透過膜を設置することもできる。
【0166】
流量調整槽に酸素透過膜を設置した流量調整槽。前記の槽を用いることで、流量調整槽の好気化を図ることができ、また、流量調整槽から発生する臭気の抑制や汚泥の低減が可能となり、同時に、散気装置に空気を供給するための、ブロワーの電力も不要になり省エネルギーになる。さらに、散気装置を用いる場合は、流量調整槽の水位が低い場合には、ばっ気効率が悪くなるが、酸素透過膜を用いることで水位の影響が軽減でき、ばっ気装置と比較して、効果的に前記の効果が得られる。
【0167】
(その他の適用方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0168】
担体の存在下で、有機性排水を生物処理する生物処理工程と、懸濁物質含有排水を汚泥と処理水とに固液分離する固液分離工程と、前記汚泥を可溶化処理する可溶化処理工程と、前記可溶化処理した可溶化汚泥を前記生物処理工程に供給する可溶化汚泥供給工程と、を備え、前記生物処理工程、もしくは、可溶化処理工程において、酸素透過膜を用いることを特徴とする有機性排水の処理方法。前記の方法を用いることで特に、余剰汚泥の減量化が可能な有機性排水の処理方法及び処理装置を効果的に提供することができる。
【0169】
グリセリン含有廃液を、オーランチオキトリウム属に属し、炭素数14以上の脂肪酸を生産しうる微生物(以下「オーランチオキトリウム属微生物」と称す。)で処理した後固液分離する一次処理工程と、該一次処理工程の処理水中に残留する有機物を除去する二次処理工程とを有し、一次処理工程と二次処理工程の少なくともいずれか一方に酸素透過膜を用いることを特徴とするグリセリン含有廃液の処理方法。前記の方法を用いることで特に、バイオディーゼル製造工程で副生する粗グリセリン等のグリセリン含有廃液を処理する方法及び装置であって、有価物生産型の処理方法と処理装置を効果的に提供することができる。
【0170】
有機物およびヒドロキシルアミンまたはその塩が含まれている排水に3価の鉄塩を、ヒドロキシルアミンを酸化するための理論量と同量から2倍の量を添加混合して反応させ、排水中のヒドロキシアミンを酸化し3価の鉄を2価の鉄に還元する鉄塩反応手段と、鉄塩が添加混合されヒドロキシルアミンと反応された後の排水に過酸化水素を添加混合して還元された2価の鉄を利用したフェントン酸化反応により有機物を分解する過酸化水素反応手段と、過酸化水素が添加混合された後の排水をMABR槽により生物処理する生物処理手段と、を有することを特徴とする排水処理装置。前記の装置を用いることで特に、還元剤および難分解性有機物を含む排水を効率的に処理することが可能となる。
【0171】
ノルマルヘキサン抽出物質に対するカルシウムの濃度比が0.02以上である油脂含有排水をMABR槽を用いて生物処理する油脂含有排水の生物処理方法であって、前記油脂含有排水中の前記カルシウムに対して鉄の濃度比が0.1以上となるように、前記油脂含有排水に鉄塩を添加することを特徴とする油脂含有排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を分解すると共に、オイルボールの発生を抑制することが可能な油脂含有排水の生物処理方法及び生物処理装置を効果的に提供することができる。
【0172】
油脂含有排水を好気性生物処理する第1処理槽及び第2処理槽を少なくとも有する処理槽ユニットと、前記第1処理槽に鉄塩を供給する鉄塩供給手段と、を備え、前記鉄塩供給手段は、油脂含有排水単位体積当たりの鉄の総量が、同じ油脂含有排水単位体積当たりのノルマルヘキサン抽出物質の負荷量に対する鉄の重量比で1.0×10-3以上となるように、前記第1処理槽に鉄塩を供給し、第1処理槽及び第2処理槽の少なくともいずれか一方がMABR槽であることを特徴とする油脂含有排水の生物処理装置。前記装置を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を効率的に生物処理することができる油脂含有排水の生物処理装置及び生物処理方法を効果的に提供することができる。
【0173】
スポンジ担体の存在下で、油脂含有排水を生物処理する生物処理工程を有し、前記スポンジ担体は、セル数が8~20個/25mmの範囲であり、前記生物処理工程がMABR方式であることを特徴とする油脂含有排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を安定して生物処理することができる油脂含有排水の生物処理方法及び生物処理装置を効果的に提供することができる。前記スポンジ担体はMABR方式の生物処理槽に含まれる酸素透過膜の表面に担持されていてもよい。
【0174】
揮発性有機塩素化合物で汚染された汚染土壌及び前記汚染土壌を流れる汚染地下水を微生物によって浄化処理する汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法であって、前記汚染土壌を流れる汚染地下水に設けられた井戸内に、酸素透過膜と細孔を有する担体と前記微生物の栄養剤を添加することを特徴とする汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法。前記方法を用いることで特に、汚染物質である揮発性有機塩素化合物を効率的に分解することができる汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法、浄化促進材、及びその製造方法を効果的に提供することが可能となる。
【実施例】
【0175】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0176】
排水処理用袋の製造
以下の原料を用いて、廃水処理用袋を製造した。
・ベースフィルム:ポリエチレンフィルム(積水フィルム社製、品名 セルポア NW07H 30g/m2、厚み160μm、透気度50秒/100cc、透過度6000~9000g/m2/day)
・気体透過性無孔層形成用樹脂組成物-1:シリコーン樹脂組成物;熱硬化性付加型シリコーン組成物(信越化学工業社製、商品名「KS-847T」、有効成分30質量%のトルエン溶液、粘度15000mPa・s(25℃)
・気体透過性無孔層形成用樹脂組成物-2:ウレタン樹脂組成物
・熱融着性フィルム-1:汎用包装フィルム(中本パックス社製、ナイロン/ポリエチレンフィルム、厚み0.5mm)
・熱融着性フィルム-2:汎用包装フィルム(ナイロン66フィルム、厚み0.6mm)・骨材:プラスチック段ボール((株)ヤマコー製、厚み5mm、目付量800g/m2、開口率2%)
【0177】
また、熱融着は、以下の熱融着装置を用いて以下の条件で行った。
・熱融着装置:DM-SHTA210-10W(富士インパルス社製)、熱融着温度180℃、熱融着時間2sec
【0178】
(実施例1)
図1及び
図2(b)に示す排水処理用袋1を製造した。具体的には、非熱溶着性フィルムを形成するベースフィルムとして、上述のポリエチレンフィルムを用意した。ポリエチレンフィルムの一方の面に、排水処理用袋中に入れる骨材を排水処理用袋に付着させないようにするために、リバースロールコーターで上述のシリコーン樹脂組成物を塗布した。塗布されたシリコーン樹脂組成物の厚みは、0.05mmであった。次いで、100℃で1分間熱乾燥し、シリコーン樹脂層を形成し、非熱溶着性フィルムを調製した。
【0179】
非熱溶着性フィルムを、
図3のように裁断位置2aで裁断し、非熱融着性フィルム2及び2’を調製した。非熱融着性フィルム2は、長さ3600mm、幅900mmであった。当該非熱融着性フィルム2を
図3の折り目2bで折り返し、
図4のように半折した。また、非熱融着性フィルム2’は、他の排水処理用袋の製造に供した。
【0180】
図5及び6のように、半折した非熱融着性フィルム2に、ポリエチレン及びナイロンを含有する、長さ3700mm、幅980mmの熱融着性フィルム3を半折して被せ、二重袋構造とした。上述の熱融着装置を用いて、熱融着部4において非熱溶着性フィルム2と熱融着性フィルム3とをインパルス式シーラーを用いて180℃で融着させて接合した。また、熱融着性フィルム3の外縁部の熱融着部4’において、熱融着性フィルム3同士を熱融着させて接合した。熱融着部4及び熱融着部4’の幅は10mmであった。
【0181】
次いで、
図1及び
図2(b)のように、非熱融着性フィルム2と重なっている熱融着性フィルム3を、熱溶着部4を残して切除して、排水処理用袋を製造した。排水処理用袋は、
図1において上部の一辺が開口しており、他の三辺が接合されていた。
【0182】
上述のようにして製造された排水処理用袋に、骨材として、縦×横×厚みが600mm×860mm×10mmのプラスチック段ボールを収容した。
【0183】
(実施例2)
熱溶着部の幅を5mmにしたこと以外は実施例1と同様にして排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0184】
(実施例3)
シリコーン樹脂組成物の塗布厚みを80μmとした以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0185】
(実施例4)
非熱溶着性フィルムと熱融着性フィルムとを熱融着させて、熱融着部を形成する際の熱融着時間を10secにした以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0186】
(実施例5)
熱融着性フィルムをナイロン66を含有するフィルムにした以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0187】
(実施例6)
シリコーン樹脂組成物をウレタン樹脂組成物に変更した。ウレタン樹脂組成物の塗布厚みは、40μmであった。次いで、100℃で1分間熱乾燥し、ウレタン樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0188】
(比較例1)
非熱融着性フィルムと、熱融着性フィルムとの接合方法、及び、熱融着性フィルムの外縁部の熱融着部における熱融着性フィルム同士の接合方法を、シリコーン接着剤による接着としたこと以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0189】
(比較例2)
非熱融着性フィルムと、熱融着性フィルムとの接合方法、及び、熱融着性フィルムの外縁部における熱融着性フィルム同士の接合方法を、縫製及びシリコーン接着剤コーティングにした以外は実施例1と同様にして、排水処理用袋を製造し、骨材を収容した。
【0190】
実施例1~6、及び比較例1、2の排水処理用シートを用いて、以下の透水圧試験、及び処理性能評価を行った。
【0191】
<透水圧試験>
JIS K6404-7:1999、A21:高水圧-小形試料法(動圧法)に準拠した測定方法により、測定条件を以下のように変更して、透水圧試験を測定した。なお、透水圧は、試験片を通して水が最初に現れた際の圧力計の値である。
【0192】
試験片である熱融着性フィルム面を水面に接触するようにし、接着面が中心にくるように設置した。測定は、膜伸張による破裂を抑制するため、不織布でカバーし、不織布を通して漏水した際の水圧を透水圧とした。不織布は、以下の不織布を使用した。
不織布:ユニチカ(株)製、マリックス 82607WSO(商品名)、厚さ0.65mm、目付260g/m2
【0193】
上記不織布を1枚用いた。試験片を通して現れた水が確認しやすいように、試験には、食紅を添加したイオン交換水を用いた。水圧を上げる速度は、1分間あたり0.1MPaとした。なお、透水圧が0.20MPaを超えると、実使用において問題ないと評価される。
【0194】
<処理性能評価>
実施例及び比較例で製造した排水処理用袋から、シート状の試料を切り出した。具体的には、当該シート状の試料は、
図1に示す廃水処理用袋の片側の面の、2点鎖線で囲まれて示される箇所tを、廃水処理用袋を切り出すことにより作成した。
【0195】
次いで、内寸7cmの密閉された立方体の評価槽を用意した。評価槽の四つの側面のうち一つの側面上に、シート状の試料を配置した。当該側面上において、シート状の試料は、
図1のtにおいて示される、非熱融着性フィルム2と熱融着性フィルム3とが熱融着されて形成されている熱溶着部4の幅が10mmであった。また、熱融着部4以外の、非熱融着性フィルム2及び熱融着性フィルム3の幅は、それぞれ30mmであった。
【0196】
次いで、評価槽内に、CODCr濃度が1.3g/Lのタンパク質、炭水化物、及び、適切な栄養塩を含む有機物含有水を入れ、更に、有機物の分解を担う微生物として、土壌微生物を入れた。
【0197】
3日毎に槽内の液をすべて排出し、有機物含有水を入れ替えた。シート積層体の有効面積は、熱融着されていない非熱融着性フィルム2の部分に相当する3×7cmであった。有機物含有水はスターラーで撹拌した。
【0198】
評価槽は30℃の恒温槽内に設置した。CODCr濃度測定に先立ち、4週間の馴養期間を設けた。有機物含有水入れ替えから3日経過後の有機物含有水のCODCr濃度を測定した。処理前のCODCr濃度A(mg/L)、処理後のCODCr濃度B(mg/L)から、有機物除去率R(%)を下記式(1)に従って算出した。
R=(1-B/A)×100 (1)
【0199】
15日目及び60日目の測定値により処理性能を評価した。評価はそれぞれ3槽ずつ用意して評価を行い、その平均値を測定値とした。なお、15日目及び60日目の両方で30gCOD/m2・dayであれば実使用において問題ないと評価される。
【0200】
<ヒートシール強さ試験>
排水処理用袋は、排水中に固定するために、端部に固定部材が設けられ、固定部材によって袋が下部に引っ張られる力と、浮力により上部に引っ張られる力の両方がかかることとなる。そのため、非熱融着性フィルムおよび熱融着性フィルムの境界部分に当たる熱融着部に力が加わり、融着面破断を生じたり、融着境界面が剥がれたりして、水漏れにつながるおそれがある。上記理由から、以下に記載する方法によりヒートシール強さ試験を行い、非熱融着性フィルムおよび熱融着性フィルムの境界部分にあたる熱融着部のヒートシール強さを評価した。
【0201】
JIS Z0238:1998、4a):袋のヒートシール強さ試験に準拠した測定方法により、以下の試験片を用いてヒートシール強さ試験を行った。上述の<処理性能評価>に記載の方法の処理前のシート状の試料を試験片とし、また、60日後のシート状の試料を1日間乾燥した後のものを試験片として、ヒートシール強さ試験を行った。
【0202】
なお、本評価において、試験片は、非熱融着性フィルム及び熱融着性フィルムの双方を含む部分で、その境界に熱融着部を含むものを使用した。また、試験片は原則として同一ロットから4袋を採取し、熱融着部に対して直角の方向に幅 15.0±0.1mm、長さ100mmの大きさで切り出したものを試験片とした。なお、処理性能評価試験60日目の試験片は処理性能評価試験後の試料3枚について、1枚から4個または3個を切り出し試験片とすることで、合計 10 個作成して測定し、平均値を測定値とした。また、試験の際には、試験片の熱融着部を中央にしてつかみの間隔を 50mm 以上とし、試験片の、熱融着部とは垂直方向の両端を引張試験機のつかみに取り付けた。熱融着部が破断するまで引張荷重を加え、その間の最大点試験力 (N/15mm) を求め、ヒートシール強さとした 。
【0203】
結果を表1に示す。
【0204】
【符号の説明】
【0205】
1…排水処理用袋
2,2’…非熱融着性フィルム
3…熱融着性フィルム
4…熱融着部
4’…熱融着性フィルムの外縁部の熱融着部
5…ハトメ穴
6…開口部
t…処理性能評価における、
図1に示す廃水処理用袋の片側の面の、2点鎖線で囲まれて示される箇所