(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】スラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法
(51)【国際特許分類】
B02C 1/00 20060101AFI20221108BHJP
C10J 3/52 20060101ALI20221108BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B02C1/00 A
C10J3/52
C10J3/46 K
(21)【出願番号】P 2018239672
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】豊丸 誠
(72)【発明者】
【氏名】北田 昌司
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132141(JP,A)
【文献】中国実用新案第201823424(CN,U)
【文献】国際公開第2017/149807(WO,A1)
【文献】特開2015-117373(JP,A)
【文献】特開昭52-103756(JP,A)
【文献】特開昭52-055053(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104903(WO,A1)
【文献】特開2015-059340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
C10J 3/00-3/86
F02C 6/00-6/20
F01K 23/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有固体燃料をガス化させるガス化炉のコンバスタで生成され前記コンバスタの鉛直下方側に設置されたスラグホッパに貯留された冷却水中で固化したスラグを破砕するスラグクラッシャであって、
前記スラグの落下方向と交差するように設けられるとともに複数の開口部が形成されている多孔状の部材のスクリーンと、
前記スクリーンの鉛直方向上側の上面に沿って所定方向に進退移動され、前記スクリーンに堆積した前記スラグを破砕するスプレッダと、
前記所定方向に沿った軸線を有する棒状の部材であり、前記スプレッダに接続され、前記スプレッダの移動方向を規制するガイドロッドと、
を備え、
前記ガイドロッドは、前記スプレッダに接続されるスプレッダ側部材と、該スプレッダ側部材に接続される軸部材とを有し、
前記スプレッダ側部材と前記軸部材とは前記軸線方向において突き合せ溶接によって接続され、
突き合せ溶接されている位置において、前記軸線方向に直交する断面形状が、前記スプレッダ側部材と前記軸部材とで同一形状とされているスラグクラッシャ。
【請求項2】
前記スプレッダ側部材は、前記軸線方向に沿って形成されたスプレッダ側中空部を有し、
前記軸部材は、前記スプレッダ側部材との接続部側の一部が前記軸線方向に沿って形成された軸側中空部を有している請求項1に記載のスラグクラッシャ。
【請求項3】
前記軸部材は、前記軸側中空部と該軸側中空部に隣接する中実部との境界が滑らかな曲面形状とされている請求項2に記載のスラグクラッシャ。
【請求項4】
前記スプレッダ側部材は、前記軸線方向に沿って形成されたスプレッダ側中空部を有し、
前記軸部材は、前記軸線方向に沿って形成された軸側中空部を有している請求項1に記載のスラグクラッシャ。
【請求項5】
前記スプレッダに接続され、前記スプレッダを前記所定方向に進退移動させる駆動部を備え、
前記ガイドロッドは、少なくとも4本とされ、
前記所定方向から見た前記スプレッダに対する前記ガイドロッドの接続位置は、前記スプレッダに対する前記駆動部の接続位置を中心として、周方向に対称的に位置している請求項1から請求項4のいずれかに記載のスラグクラッシャ。
【請求項6】
前記ガイドロッドが摺動可能に支持される貫通孔が形成されたケーシングを備えている請求項1から請求項5のいずれかに記載のスラグクラッシャ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のスラグクラッシャを備えたガス化炉。
【請求項8】
請求項7に記載のガス化炉と、
前記ガス化炉で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンから排出されるタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、
前記ガスタービンおよび/または前記蒸気タービンと回転連結された発電機と、
を備えているガス化複合発電設備。
【請求項9】
炭素含有固体燃料をガス化させるガス化炉のコンバスタで生成され前記コンバスタの鉛直下方側に設置されたスラグホッパに貯留された冷却水中で固化したスラグを、所定方向に進退移動するスプレッダによって破砕するスラグクラッシャの組立方法であって、
前記所定方向に沿った軸線を有する棒状の部材とされ、前記スプレッダに接続されるスプレッダ側部材と該スプレッダ側部材に接続される軸部材とを有し、前記スプレッダの移動方向を規制するガイドロッドにおいて、
前記スプレッダ側部材と前記軸部材とを、前記軸線方向に直交する断面形状が同一形状とされている個所にて、前記軸線方向に突き合わせ溶接する工程を備えているスラグクラッシャの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス化炉設備として、石炭等の炭素含有固体燃料をガス化炉内に供給し、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化することで、可燃性ガスを生成する炭素含有燃料ガス化設備(石炭ガス化設備)が知られている。
【0003】
石炭ガス化複合発電設備(以下「IGCC」という。)は、一般的に、給炭設備、石炭ガス化炉、チャー回収装置(サイクロン、ポーラスフィルタ等)、ガス精製設備、ガスタービン、蒸気タービン、発電機、排熱回収ボイラ、ガス化剤供給装置等を具備して構成されている。
【0004】
このような石炭ガス化複合発電設備では、石炭ガス化炉に対し、給炭設備から石炭(微粉炭)が供給されるとともに、ガス化剤供給装置からガス化剤(空気、酸素富化空気、酸素、水蒸気など)が供給される。
石炭ガス化炉内では、石炭がガス化剤により部分酸化されてガス化され、可燃性ガス(石炭ガス)が生成される。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されているように、石炭ガス化炉の鉛直方向下部には、コンバスタ部で微粉炭が高温燃焼されることによって、可燃性ガスである石炭ガスが生成されるとともに、微粉炭中の灰分が溶融して落下したスラグ(溶融スラグ)を集めるスラグホッパが備えられている。
【0006】
スラグホッパにはスラグ水(冷却水)が貯留されており、スラグはこのスラグ水中に落下して急冷されることにより固化した後に破砕される。すなわち、スラグホッパの鉛直下方側には、コンバスタ部から落下したスラグをスプレッダによって破砕するスラグクラッシャが設けられる。
【0007】
コンバスタから落下するスラグは、スラグホッパに貯められた冷却水で急速に冷却されて固化し、スラグクラッシャが備えるスクリーンの鉛直方向上面に落下する。このスクリーンは、複数の開口部を備えており、開口部の径よりも小さなスラグは開口部を通過して鉛直下方側に落下し、開口部の径よりも大きなスラグは、スクリーンの鉛直方向上面に残存する。
【0008】
スプレッダは、例えば油圧シリンダによってスクリーンの鉛直方向上面に沿って、進退駆動される。スプレッダは、スクリーンの鉛直方向上面に堆積したスラグを破砕し、スクリーンの開口部の径よりも小さく破砕されたスラグは、スクリーンの開口部を通って落下する。スクリーンの開口部から落下したスラグは、ガス化炉からロックホッパを介して系外へ排出される。
【0009】
スプレッダによってスラグを破砕する際、スラグの挟み込みやスプレッダの経年劣化に等よってスプレッダが進退する軌道にずれが生じる可能性がある。そこで、特許文献2に開示されているように、スプレッダに支持ロッドを接続してスプレッダを進退方向にガイドすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-132141号公報
【文献】特許第3276269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したような支持ロッド(ガイドロッド)400とスプレッダ230との接続においては、
図12に示すように、例えばスプレッダ230に接続されるフランジ部材410と中実丸棒420とをソケット溶接(差し込み溶接)によって固定する構造とすることがある。また、中実丸棒420をフランジ部材410へ差し込み、取り合い部の周囲に隅肉溶接を施すことで固定させる構造とすることもある。いずれの場合の溶接であっても、形状が不連続となる溶接部分430(例えば、フランジ部と中実丸棒部との外径の差異によって生じる段部)に応力が集中するため、溶接部分430の強度を十分に確保する必要があり、厚肉な形状となり大型化するおそれがある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ガイドロッドの強度を確保できるスラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るスラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様に係るスラグクラッシャは、炭素含有固体燃料をガス化させるガス化炉のコンバスタで生成され前記コンバスタの鉛直下方側に設置されたスラグホッパに貯留された冷却水中で固化したスラグを破砕するスラグクラッシャであって、前記スラグの落下方向と交差するように設けられるとともに複数の開口部が形成されている多孔状の部材のスクリーンと、前記スクリーンの鉛直方向上側の上面に沿って所定方向に進退移動され、前記スクリーンに堆積した前記スラグを破砕するスプレッダと、前記所定方向に沿った軸線を有する棒状の部材であり、前記スプレッダに接続され、前記スプレッダの移動方向を規制するガイドロッドとを備え、前記ガイドロッドは、前記スプレッダに接続されるスプレッダ側部材と、該スプレッダ側部材に接続される軸部材とを有し、前記スプレッダ側部材と前記軸部材とは前記軸線方向において突き合せ溶接によって接続され、突き合せ溶接されている位置において、前記軸線方向に直交する断面形状が、前記スプレッダ側部材と前記軸部材とで同一形状とされている。
【0014】
本態様に係るスラグクラッシャにおいて、ガイドロッドは、スプレッダに接続されるスプレッダ側部材とスプレッダ側部材に接続される軸部材とを有し、スプレッダ側部材と軸部材とはガイドロッドの軸線方向において突合わせ溶接によって接続されている。このとき、突き合せ溶接されている位置において、軸線方向に直交する断面形状がスプレッダ側部材と軸部材とで同一形状とされている。これによれば、例えば、略同外径とされたスプレッダ側部材と軸部材とを突き合わせて溶接を施すので、スプレッダ側部材と軸部材との接続部に形状が不連続となる部分(例えば、外径の差異によって生じる段部)が生じることがなく、接続部に応力が集中することを抑制することができる。また、突合せ部に開先(例えばV字開先やX字開先)を設けることで、突き合わせ溶接の溶接脚長を確保して溶接強度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャにおいて、前記スプレッダ側部材は、前記軸線方向に沿って形成されたスプレッダ側中空部を有し、前記軸部材は、前記スプレッダ側部材との接続部側の一部が前記軸線方向に沿って形成された軸側中空部を有している。
【0016】
本態様に係るスラグクラッシャが備えるガイドロッドにおいて、スプレッダ側部材には軸線方向に沿って貫通させることで中空形状とされたスプレッダ側中空部が形成され、軸部材にはスプレッダ側部材との接続部側の一部が軸線方向に沿って中空とされた軸側中空部が形成されている。このとき、突き合せ溶接されている位置において、軸線方向に直交する断面形状がスプレッダ側部材と軸部材とで同一形状とされている。これによれば、スプレッダ側部材および軸部材が中実とされた場合に比べて、スプレッダ側部材および軸部材の軽量化を図ることができる。
また、ガイドロッドは中空構造によって柔構造とされるので、スプレッダ側部材とスプレッダとの接続部に応力が集中することを抑制できる。
また、突き合せ溶接にあたっては、突き合わさせる位置におけるスプレッダ側部材および軸部材の肉厚が同一となるよう管理することで、溶接の溶け込み接合を確実に行い溶接強度を向上することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャにおいて、前記軸部材は、前記軸側中空部と該軸側中空部に隣接する中実部との境界が滑らかな曲面形状とされている。
【0018】
本態様に係るスラグクラッシャが備えるガイドロッドの軸部材において、軸部材に形成された軸側中空部とその軸側中空部に隣接する中実部との境界は滑らかな曲面形状とされている。これによれば、軸側中空部と中実部の境界に応力が集中することを抑制できる。このため、軸側中空部と中実部との境界において、応力集中を緩和してガイドロッドの強度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャにおいて、前記スプレッダ側部材は、前記軸線方向に沿って形成されたスプレッダ側中空部を有し、前記軸部材は、前記軸線方向に沿って形成された軸側中空部を有している。
【0020】
本態様に係るスラグクラッシャが備えるガイドロッドにおいて、スプレッダ側部材には、軸線方向に沿って貫通させることで中空とされたスプレッダ側中空部が形成され、軸部材には、軸線方向に沿って貫通させることで中空とされた軸側中空部が形成されている。これによれば、スプレッダ側部材および軸部材の一部が中実とされた場合に比べて、スプレッダ側部材の軽量化、および軸部材の更なる軽量化を図ることができる。
また、ガイドロッドは、軸線方向に沿って全体が中空構造となることによって柔構造とされるので、スプレッダ側部材とスプレッダとの接続部に応力が集中することを抑制して、ガイドロッドの強度を向上することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャは、前記スプレッダに接続され、前記スプレッダを前記所定方向に進退移動させる駆動部を備え、前記ガイドロッドは、少なくとも4本とされ、前記所定方向から見た前記スプレッダに対する前記ガイドロッドの接続位置は、前記スプレッダに対する前記駆動部の接続位置を中心として、周方向に対称的に位置している。
【0022】
本態様に係るスラグクラッシャにおいて、所定方向から見たスプレッダに対するガイドロッドの接続位置は、スプレッダに対する駆動部の接続位置を中心として、周方向に対称的に位置している。これによれば、スプレッダの進退時に生じるブレによって発生する偏荷重をガイドロッドによって効率的に受けることができる。このため、スプレッダの進退移動を安定化させることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャは、前記ガイドロッドが摺動可能に支持される貫通孔が形成されたケーシングを備えている。
【0024】
本態様に係るスラグクラッシャは、ガイドロッドが摺動可能に支持される貫通孔が形成されたケーシングを備えている。これによれば、スプレッダの移動方向を規制するガイドロッドの進退移動を安定化させることができる。このとき、貫通孔は、例えば、銅系素材(例えばCAC403など)とされた軸受部材によって形成されてもよい。
【0025】
また、本発明の一態様に係るガス化炉は、前述のスラグクラッシャを備えている。
【0026】
また、本発明の一態様に係るガス化複合発電設備は、前述のガス化炉と、前記ガス化炉で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排出されるタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記ガスタービンおよび/または前記蒸気タービンと回転連結された発電機とを備えている。
【0027】
また、本発明の一態様に係るスラグクラッシャの組立方法は、炭素含有固体燃料をガス化させるガス化炉のコンバスタで生成され前記コンバスタの鉛直下方側に設置されたスラグホッパに貯留された冷却水中で固化したスラグを、所定方向に進退移動するスプレッダによって破砕するスラグクラッシャの組立方法であって、前記所定方向に沿った軸線を有する棒状の部材とされ、前記スプレッダに接続されるスプレッダ側部材と該スプレッダ側部材に接続される軸部材とを有し、前記スプレッダの移動方向を規制するガイドロッドにおいて、前記スプレッダ側部材と前記軸部材とを、前記軸線方向に直交する断面形状が同一形状とされている個所にて、前記軸線方向に突き合わせ溶接する工程を備えている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るスラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法によれば、ガイドロッドの強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】石炭ガス化複合発電設備を示す概略構成図である。
【
図2】
図1のガス化炉設備を示した概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るスラグクラッシャの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るスラグクラッシャの縦断面図である。
【
図5】
図4に示すA矢視をしたときのスプレッダの接続面を示した図である。
【
図6】
図4に示すA矢視をしたときのケーシングを示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るスラグクラッシャが備えるガイドロッドの部分縦断面図である。
【
図8】ガイドロッドが有するスプレッダ側部材の縦断面図である。
【
図9】ガイドロッドが有する軸部材の部分縦断面図である。
【
図10】ガイドロッドの変形例に係る部分縦断面図である。
【
図11】ガイドロッドの他の変形例に係る部分縦断面図である。
【
図12】ガイドロッドの従来例に係る部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るスラグクラッシャ、ガス化炉、ガス化複合発電設備、及びスラグクラッシャの組立方法について図を用いて説明する。
【0031】
[石炭ガス化複合発電設備]
図1は、本発明の一実施形態に係るスラグクラッシャが適用されるガス化炉設備を有した石炭ガス化複合発電設備の概略構成例を示した図である。
【0032】
ガス化炉設備14が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10は、空気を酸化剤として用いており、ガス化炉設備14において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉設備14で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、実施形態1の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。ガス化炉設備14に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0033】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10は、
図1に示すように、給炭設備11と、ガス化炉設備14と、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0034】
給炭設備11は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉炭を製造する。給炭設備11で製造された微粉炭は、給炭ライン11a出口で後述する空気分離設備(ASU)42から供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉設備14へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5%以下に制限されるものではない。
【0035】
ガス化炉設備14は、給炭設備11で製造された微粉炭が供給されるとともに、チャー回収設備15で回収されたチャー(石炭の未反応分と灰分)が戻されて再利用可能に供給されている。
【0036】
また、ガス化炉設備14には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉設備14に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42とガス化炉設備14とが接続されている。そして、この第1窒素供給ライン43には、給炭設備11からの給炭ライン11aが接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もガス化炉設備14に接続されており、この第2窒素供給ライン45には、チャー回収設備15からのチャー戻しライン46が接続されている。さらに、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43および第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47および圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉設備14において酸化剤として利用される。
【0037】
ガス化炉設備14は、例えば、2段噴流床形式のガス化炉101(
図2参照)を備えている。ガス化炉設備14は、内部に供給された石炭(微粉炭)およびチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉設備14は、微粉炭に混入した異物(スラグ)を除去する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉設備14には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給する生成ガスライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、
図2に示すように、生成ガスライン49にシンガスクーラ102(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備15に供給してもよい。
【0038】
チャー回収設備15は、集塵設備51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵設備51は、1つ又は複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉設備14で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵設備51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵設備51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0039】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中にはまだ硫黄分(H2Sなど)が含まれているため、このガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄分を除去回収して、有効利用する。
【0040】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されるとともに、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉設備14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。したがって、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転駆動させることで発電機19を回転駆動させる。
【0041】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられるとともに蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101のシンガスクーラ102で生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。したがって、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0042】
そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、ガス浄化設備74を備えている。
【0043】
ここで、石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備11に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備11において細かい粒子状に粉砕されることで微粉炭となる。給炭設備11で製造された微粉炭は、空気分離設備42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を流通してガス化炉設備14に供給される。また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を流通してガス化炉設備14に供給される。さらに、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素とともに圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉設備14に供給される。
【0044】
ガス化炉設備14では、供給された微粉炭およびチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭およびチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉設備14から生成ガスライン49を通って排出され、チャー回収設備15に送られる。
【0045】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵設備51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉設備14に戻されてリサイクルされる。
【0046】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61および発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0047】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。
なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0048】
その後、ガス浄化設備74では排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0049】
[石炭ガス化複合発電設備]
次に上述した石炭ガス化複合発電設備10におけるガス化炉設備14について詳細に説明する。
図2は、
図1のガス化炉設備を示した概略構成図である。
【0050】
ガス化炉設備14は、
図2に示すように、ガス化炉101と、シンガスクーラ102とを備えている。
【0051】
ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉炭および酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(炉壁)111とを有している。そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111の内部の空間において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0052】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口121が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その壁面が圧力容器110の内面と対向して設けられている。圧力容器110は円筒形状で、ガス化炉壁111のディフューザ部117も円筒形状に形成されている。そして、ガス化炉壁111は、図示しない支持部材により圧力容器110内面に連結されている。
【0053】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間と外部空間とに分離する。ガス化炉壁111は、後述するが、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口121に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、冷却水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が冷却水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、バーナ126、127が挿入され、内部空間にシンガスクーラ102が配置されている。ガス化炉壁111の構造については後述する。
【0054】
アニュラス部115は、圧力容器110の内側とガス化炉壁111の外側に形成された空間、つまり外部空間であり、空気分離設備42で分離された不活性ガスである窒素が、図示しない窒素供給ラインを通って供給される。このため、アニュラス部115は、窒素が充満する空間となる。なお、このアニュラス部115の鉛直方向の上部付近には、ガス化炉101内を均圧にするための図示しない炉内均圧管が設けられている。炉内均圧管は、ガス化炉壁111の内外を連通して設けられ、ガス化炉壁111の内部(コンバスタ部116、ディフューザ部117およびリダクタ部118)と外部(アニュラス部115)との圧力差を所定圧力以内となるように略均圧にしている。
【0055】
コンバスタ部116は、微粉炭およびチャーと空気とを一部燃焼させる空間となっており、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ126からなる燃焼装置が配置されている。コンバスタ部116で微粉炭およびチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0056】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉炭を供給し部分燃焼させて、微粉炭を揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)へと分解してガス化されて生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ127からなる燃焼装置が配置されている。
【0057】
シンガスクーラ102は、ガス化炉壁111の内部に設けられるとともに、リダクタ部118のバーナ127の鉛直方向の上方側に設けられている。シンガスクーラ102は熱交換器であり、ガス化炉壁111の鉛直方向の下方側(生成ガスの流通方向の上流側)から順に、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134が配置されている。これらのシンガスクーラ102は、リダクタ部118において生成された生成ガスと熱交換を行うことで、生成ガスを冷却する。また、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134は、図に記載されたその数量を限定するものではない。
【0058】
ここで、上述のガス化炉設備14の動作について説明する。
ガス化炉設備14のガス化炉101において、リダクタ部118のバーナ127により窒素と微粉炭が投入されて点火されるとともに、コンバスタ部116のバーナ126により微粉炭およびチャーと圧縮空気(酸素)が投入されて点火される。すると、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温燃焼ガスが発生する。また、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温ガス中で溶融スラグが生成され、この溶融スラグがガス化炉壁111へ付着するとともに、炉底へ落下し、最終的にスラグホッパ122内の冷却水へ排出される。
【0059】
そして、コンバスタ部116で発生した高温燃焼ガスは、ディフューザ部117を通ってリダクタ部118に上昇する。このリダクタ部118では、ガス化反応に必要な高温状態に維持されて、微粉炭が高温燃焼ガスと混合し、高温の還元雰囲気において微粉炭を部分燃焼させてガス化反応が行われ、生成ガスが生成される。ガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通する。
【0060】
[スラグクラッシャ]
次に、本実施形態に係るスラグクラッシャ200の構成について説明する。
スラグクラッシャ200は、コンバスタ部116から落下した溶融スラグがスラグホッパ122に貯留された冷却水によって固化したスラグを破砕する装置である。
【0061】
スラグクラッシャ200は、
図2に示すように、コンバスタ部116下部のスラグホール116Aの鉛直方向下方であって、スラグホッパ122に貯留された冷却水中に設けられる。
【0062】
図3および
図4に示すように、スラグクラッシャ200は、所定粒径以上のスラグが堆積するスクリーン210と、駆動部250によって所定方向(進退方向)に進退移動され、スクリーン210に堆積したスラグを挟み込んで破砕するスプレッダ230と、スプレッダ230の移動方向を規制するガイドロッド300と、を備えている。
【0063】
スクリーン210は、例えば板状の部材とされ、スラグの落下方向に対して略直交する方向(例えば水平方向)に設けられる(
図2参照)。スクリーン210には、複数の開口部211が形成されており、開口部211より小さな粒径のスラグはスクリーン210を通過して、開口部211より大きな粒径のスラグはスクリーン210の鉛直方向上方側の上面(捕捉面210A)に堆積する。
開口部211の形状は特に限定されず、例えば、多角形や円形でもよい。
【0064】
図3のように平面視したときに進退方向に直交する方向におけるスクリーン210の外縁側(同図の場合、紙面上方および下方に位置する外縁側)には、
図4に示すように鉛直方向に立設して進退方向に延在する側壁212が設けられている。
この側壁212は、スラグクラッシャ200のフレームを構成する部品の一部とされている。
【0065】
スプレッダ230は、駆動部250によって捕捉面210Aの鉛直上方側を進退移動する部材とされる。
図3および
図4に示すように、スプレッダ230は、金属製の略直方体とされており、進行方向に向かう前面にはスラグを圧壊して破砕する破砕面232が形成されている。
2つのスプレッダ230は、それぞれの破砕面232が進退方向において対向するように、向かい合った状態で設けられている。
【0066】
図3の場合、進退方向において対向する2つのスプレッダ230が1式となり、進退方向に直交する方向に2式並んで設けられている。
なお、スプレッダ230は、1式であってもよいし、3式以上であってもよい。
【0067】
進退方向において対向する2つのスプレッダ230は、互いに接近する方向に移動することで捕捉面210Aに堆積したスラグを破砕面232同士で挟み込んで、開口部211を通過できるサイズまで破砕する。
このとき、破砕面232には突起232Aが形成されてもよく、この場合、突起232Aによってスラグが破砕されやすくなる。
なお、
図3および
図4に示すスプレッダ230は、スラグを破砕する前の待機位置を示した図である。
【0068】
各スプレッダ230は、2つの側壁212の間を進退移動する。このとき、側壁212とスプレッダ230との間に側壁212の内壁に沿ったサイドガイド214Aを設けてもよい。
また、隣り合うスプレッダ230の各式の間には、進退方向に沿ったセンターガイド214Bを設けてもよい。
サイドガイド214Aおよびセンターガイド214Bは、鉛直方向に所定の高さを有しており、例えばスプレッダ230の高さと同程度とされる。また、サイドガイド214Aおよびセンターガイド214Bは、スプレッダ230全体が進退方向と交差する方向に振れないように、スプレッダ230の移動方向を規制している。
これらのサイドガイド214Aやセンターガイド214Bが、スプレッダ230の進退移動に伴うブレを抑制することで、スプレッダ230の移動を安定化させることができる。
【0069】
駆動部250は、例えば、スラグクラッシャ200のフレーム(図示せず)に固定されたハウジング252と、ハウジング252に対して進退方向に進退駆動するロッド254と、を有する伸縮式アクチュエータ(例えば油圧シリンダ)とされる。
図3から
図5に示すように、ロッド254は、一端が破砕面232の背面とされる接続面234に接続される。これによって、駆動部250の伸縮(ロッド254の進退駆動)にともなってスプレッダ230が進退方向に沿って進退移動される。
図3から
図5の場合、1つのスプレッダ230に対して1つの駆動部250(1本のロッド254)が接続されている。
【0070】
スプレッダ230の進退移動を安定化させるにあたり、ガイドロッド300は、スプレッダ230の進退方向の移動時に生じるスプレッダ230のブレ等に起因する偏荷重を効率的に受ける部材である。
また、ガイドロッド300は、スプレッダ230自体の進退方向への移動をより精度よくガイドする棒状の部材とされ、進退方向に沿った軸線Xを有する。
【0071】
ガイドロッド300は、駆動部250と同様に、破砕面232の背面に相当する接続面234に接続される。
図3から
図5の場合、1つのスプレッダ230に対して4本のガイドロッド300が接続されている。なお、ガイドロッド300の数は、3本以下であってもよいし5本以上であってもよく、必要な機能をバランスよく発揮できるように配置されるとよい。
【0072】
図5に示すように、スプレッダ230の進退方向から接続面234を見たとき、ガイドロッド300の接続位置は、駆動部250の接続位置を中心に対称的に位置していることが好ましいことから、ガイドロッド300を通常に配置する場合は、ガイドロッド300の数は4本以上とされることが好ましい。
【0073】
ガイドロッド300は、ケーシング220によって、進退方向に摺動可能に、かつ、進退方向に直交する方向の振れが規制されるように支持される。
【0074】
ケーシング220は、スラグクラッシャ200のフレーム(例えば側壁212)に対して固定されている。
ケーシング220は、
図6に示すように、進退方向から見たとき(
図4においてA矢視)、四角形状とされる板状部材である。ケーシング220の略中央には、駆動部250が貫通するための貫通穴226が形成されている。また、ケーシング220に形成された貫通穴226の周囲には、摺動穴224が形成された軸受部材222が複数(同図では4つ)設けられている。このとき、軸受部材222の数は、ガイドロッド300の数に対応している。
軸受部材222は、摺動穴224によって、ガイドロッド300の移動方向を規制しつつガイドロッド300を摺動可能に支持する。このため、ガイドロッド300の移動方向、すなわち、ガイドロッド300が接続されたスプレッダ230の移動方向をより精度よく規制することができる。これによって、例えば、進退方向と直交する方向のスプレッダ230の振れを規制できる。
軸受部材222は、ガイドロッド300の摺動をスムーズにするものであり、例えば銅系素材(例えばCAC403)とされてもよい。
【0075】
図5に示すように、進退方向から接続面234を見たとき(
図4においてA矢視)、駆動部250と接続面234との接続位置は、四角形状の接続面234に対して略中心に位置している。
これに対して、ガイドロッド300と接続面234との接続位置は、駆動部250と接続面234との接続位置を中心に、周方向に対称的に位置している。具体的には、
図5に示す接続面234の中心(すなわち、駆動部250と接続面234との接続位置の中心)を通る垂直線と水平線とに対して、線対称に、4本のガイドロッド300と接続面234との接続位置が位置している。
【0076】
次に、ガイドロッド300の詳細について説明する。
ガイドロッド300は、
図7に示すように、2つの部材(スプレッダ側部材320、軸部材340)が突合せ部310で軸線X方向に溶接接続され一体となった棒状の部材とされる。
【0077】
スプレッダ側部材320は、
図8に示すように、スプレッダ230の接続面234に接続されるフランジ部322が一端側(同図で示す紙面左端側)に形成されたフランジ形状の部材とされる。
フランジ部322にはボルト穴326が形成されており、スプレッダ側部材320(ガイドロッド300)は、ボルト締結によって接続面234に固定される。
これに対して、スプレッダ側部材320の他端側(同図で示す紙面右端側)には、軸部材340の軸側突合せ面344(後述)と突き合わされるスプレッダ側突合せ面330が形成されている。
スプレッダ側部材320は、軸線X方向に沿ってフランジ部322からスプレッダ側突合せ面330に亘って中空空間を有し、軸線X方向に沿って貫通させることで中空形状としたスプレッダ側中空部328が形成されている。
【0078】
軸部材340は、
図9に示すように、スプレッダ側突合せ面330に突き合わされる軸側突合せ面344が一端側(同図で示す紙面左端側)に形成された棒状の部材とされる。
軸部材340は、軸線X方向に沿って軸側突合せ面344から軸線X方向に沿って所定の距離だけ中空空間を有する軸側中空部342が形成されている。言い換えると、軸部材340は、軸側突合せ面344側の一部が中空空間の軸側中空部342とされ、その他は中実状態の中実部とされた棒状の部材となる。
ここで言う「所定の距離」とは、例えば軸部材340の軸線X方向に沿った長さの1/20~1/10程度とされる。
【0079】
軸側中空部342とその軸側中空部342に隣接する軸部材340の中実部との境界346は、角部にR部分を有する滑らかな曲面形状で形成されることが好ましい。
曲面形状とすることで境界346の角部に応力が集中することを抑制して、応力集中を緩和してガイドロッド300の強度を向上することができる。
【0080】
図7に示すように、スプレッダ側部材320のスプレッダ側突合せ面330と軸部材340の軸側突合せ面344とが軸線X方向において突き合わされることで突合せ部310(接続部)が形成される。
【0081】
突合せ部310において、スプレッダ側部材320と軸部材340とは略同外径とされ、例えば80mm以上100mm以下程度とされる。また、スプレッダ側中空部328と軸側中空部342とは略同内径とされ、スプレッダ側部材320および軸部材340の外径に対して30%以上40%以下程度とされる。すなわち、突合せ部310において、軸線X方向に直交する断面形状が、スプレッダ側部材320と軸部材340とで同一形状となる。
【0082】
突合せ部310には例えばV字の開先が形成されてもよい。この場合、V字開先はガイドロッド300の軸線周りの全周に形成されている。
このような開先を設けることで、溶接脚長を確保して溶接強度を向上させることができる。また、突合せ部310の突き合せ溶接にあたっては、突合せ部310の肉厚が同一となるよう管理されるので、溶接の溶け込みを確実に行うことで溶接強度を向上することができる。
【0083】
突合せ部310の全周に溶接を施すことでスプレッダ側部材320と軸部材340とが接続されて、ガイドロッド300の軸線X方向にスプレッダ側部材320と軸部材340とが一体となった1本のガイドロッド300となる。
【0084】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
スプレッダ側部材320と軸部材340とを突き合わせて溶接を施すので(突き合わせ溶接)、スプレッダ側部材320と軸部材340との突合せ部310に形状が不連続となる部分(例えば、外径の差異によって生じる段部)が生じることがなく、応力の集中を抑制することができる。
【0085】
また、スプレッダ側部材320および軸部材340が中実とされた場合に比べて、スプレッダ側部材320および軸部材340の軽量化を図ることができる。さらに、ガイドロッド300は中空構造によって柔構造とされるので、スプレッダ側部材320とスプレッダ230との接続部に応力が集中することを抑制できる。さらに、突合せ部310の突き合せ溶接にあたっては、突合せ部分の肉厚が同一となるよう管理されるので、溶接の溶け込みを確実に行うことで溶接強度を向上させることができる。
【0086】
また、ガイドロッド300は、スプレッダ230自体の進退方向への移動を精度よくガイドすることができる。さらに、ケーシング220に形成された摺動穴224に軸受部材222が設けられて、ガイドロッド300の通過する移動方向を規制するように支持されるため、ガイドロッド300の移動方向、すなわち、ガイドロッド300が接続するスプレッダ230の移動方向をより精度よく規制することができる。
【0087】
また、進退方向から見た接続面234とガイドロッド300との接続位置は、接続面234と駆動部250との接続位置を中心として、周方向に対称的に配置される。これによれば、スプレッダ230の進退時に生じるスプレッダ230のブレによって発生する偏荷重をガイドロッド300によって効率的に受けることができる。このため、スプレッダ230の進退移動を安定化させることができる。
【0088】
[変形例]
図10に示すガイドロッド300のように、軸部材340に形成される軸側中空部342は、軸線X方向に沿って、かつ、全長に亘って形成されてもよい。すなわち、軸部材340には、軸線X方向に沿って貫通させることで中空とされた軸側中空部342が形成されている。
【0089】
この場合、軸部材340の一部が中実とされた場合に比べて、軸部材340の更なる軽量化を図ることができる。また、ガイドロッド300は、全体が中空構造になることによって柔構造とされるので、スプレッダ側部材320とスプレッダ230との接続部に応力が集中することを抑制して、ガイドロッド300の強度を向上することができる。
【0090】
なお、ここまで説明においては、
図7および
図10に示すように、ガイドロッド300の少なくとも一部が中空とされた形態を例に説明したが、
図11に示すように、中実のスプレッダ側部材320と中実の軸部材340とを突き合わせ溶接することでガイドロッド300を構成してもよい。
このとき、スプレッダ側突合せ面330と軸側突合せ面344とによって、突合せ部310にX字で軸部材340の中心付近まで溶接溶け込みが可能となるように開先が形成されてもよい。このような開先を設けることで、溶接脚長を確保して溶接強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)
11 給炭設備
11a 給炭ライン
14 ガス化炉設備
15 チャー回収設備
16 ガス精製設備
17 ガスタービン
18 蒸気タービン
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
41 圧縮空気供給ライン
42 空気分離設備
43 第1窒素供給ライン
45 第2窒素供給ライン
46 チャー戻しライン
47 酸素供給ライン
49 生成ガスライン
51 集塵設備
52 供給ホッパ
53 ガス排出ライン
61 圧縮機
62 燃焼器
63 タービン
64 回転軸
65 圧縮空気供給ライン
66 燃料ガス供給ライン
67 燃焼ガス供給ライン
68 昇圧機
69 タービン
70 排ガスライン
71 蒸気供給ライン
72 蒸気回収ライン
74 ガス浄化設備
75 煙突
101 ガス化炉
102 シンガスクーラ
110 圧力容器
111 ガス化炉壁
115 アニュラス部
116 コンバスタ部
116A スラグホール
117 ディフューザ部
118 リダクタ部
121 ガス排出口
122 スラグホッパ
126 バーナ
127 バーナ
200 スラグクラッシャ
210 スクリーン
210A 捕捉面
211 開口部
212 側壁
214A サイドガイド
214B センターガイド
220 ケーシング
222 軸受部材
224 摺動穴
226 貫通穴
230 スプレッダ
232 破砕面
234 接続面
250 駆動部
252 ハウジング
254 ロッド
300 ガイドロッド
310 突合せ部
320 スプレッダ側部材
322 フランジ部
326 ボルト穴
328 スプレッダ側中空部
330 スプレッダ側突合せ面
340 軸部材
342 軸側中空部
344 軸側突合せ面
346 境界
X 軸線