(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】システムの非常停止並びに肛門及び/又はストーマ洗腸の方法
(51)【国際特許分類】
A61M 3/02 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61M3/02 110
A61M3/02 126
(21)【出願番号】P 2018531590
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(86)【国際出願番号】 DK2016050442
(87)【国際公開番号】W WO2017101954
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-10-31
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ファレボー
(72)【発明者】
【氏名】マリーイ スバーネ リツク ベスタゴー
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2679259(EP,A1)
【文献】登録実用新案第3182553(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0022822(US,A1)
【文献】特開2008-279264(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1946785(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムであって、
洗腸液用のリザーバと、
カテーテル先端を含むカテーテルであって、前記カテーテル先端は、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入し、前記カテーテル先端から前記洗腸液を排出するためのものであり、前記カテーテルは、前記カテーテル先端を前記ユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素を更に含む、カテーテルと、
前記リザーバと前記カテーテルとの間に前記洗腸液用の第1の導管を設け、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間に前記洗腸液用の第2の導管を設けるチュービングシステムと、
前記第2の導管内にある、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間の前記洗腸液の流れを制御するためのバルブシステムと、
前記リザーバから前記カテーテル先端へと前記洗腸液を圧送するように
作動可能なポンプと、
ユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンを含む、ユーザにより
作動可能な制御インターフェースと、
を含み、
前記ポンプ
、又は、前記バルブシステムは
、
-前記洗腸液を前記膨張可能な保持要素に圧送し、前記膨張可能な保持要素を膨張させ、
-前記洗腸液を前記カテーテルを通して圧送し、前記カテーテル先端から前記ユーザの直腸又はストーマへと前記洗腸液を排出し、
-前記ユーザ入力に応じて、前記保持要素のパージングのために、前記保持要素から前記洗腸液を抜く、
ように制御可能であり、
前記専用非常停止ゾーンは、前記システムのあらゆる動作状態において
接続可能であり、
前記ポンプは可逆電気ポンプを含み、前記可逆電気ポンプは、前記洗腸液を前記膨張可能な保持要素に圧送し、前記膨張可能な保持要素を拡張するために、1つの方向に作動可能であり、前記ユーザにより
作動可能な制御インターフェースにおける前記ユーザ入力に応じて、前記膨張可能な保持要素から前記洗腸液を抜き、前記膨張可能な保持要素を収縮するために、逆方向に作動可能である、システム。
【請求項2】
前記制御インターフェースは、1つのユーザ
動作を前記ユーザ入力として認識するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記専用非常停止ゾーンは、ユーザにより
作動可能なボタンを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御インターフェースは、前記ユーザにより
作動可能なボタンの押下を前記ユーザ入力として認識するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ユーザにより
作動可能なボタンは機械的ボタンを含む、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ユーザにより
作動可能な制御インターフェースは、グラフィカルユーザインタフェースを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、前記洗腸液の現在温度又は予想温度が既定の温度間隔内にない場合、ユーザに通知するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ユーザにより
作動可能な制御インターフェースは、システムユーザ動作命令を含み、前記グラフィカルユーザインタフェースは、前記システムユーザ動作命令を表示するように構成されている、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、システム動作状態のステータスを表示するように構成されている、請求項6~8いずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、洗浄シーケンスが既定の間隔で予定されていることを前記ユーザに通知するように構成されている、請求項6~9いずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、当該システムが、既定の数の動作サイクルの後、交換されることが予定されていることを前記ユーザに通知するように構成されている、請求項6~10いずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
洗腸液用のリザーバと、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入するためのカテーテル先端を含むカテーテルと、膨張可能なバルーンなどの、カテーテル先端をユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素と、を含む、肛門及び/又はストーマ洗腸のためのシステム並びに方法が提供される。カテーテル先端への洗腸液の供給並びに膨張可能な保持要素への洗腸液の供給及び膨張可能な保持要素から洗腸液を抜くことを制御するためのバルブ及びチュービングシステムが更に提供される。特に、ユーザ制御式リリーフバルブが提供される。
【背景技術】
【0002】
詳細な説明
脊髄損傷、多発性硬化症又は脊椎破裂などの特定の疾患を患う患者は、腸の随意機能の制御が制限されている又は欠如していることが多い。このような腸の随意機能の制御の欠如により、患者は結腸端部及び直腸内の便の存在を感じる能力、並びに排便刺激を感じる能力が大幅に低下しているため、典型的には、便の失禁又は難治性便秘症を招く。カテーテル挿入可能な(catheterizable)ストーマが作成されるストーマ手術を行った患者も同様の困難に見舞われる可能性がある。
【0003】
水道水又は生理食塩水などの洗腸流体による直腸又はストーマの洗腸(即ち洗浄)によって腸の排出を実施することは知られている。洗腸流体は、直腸又はストーマに挿入するための構成及び寸法にされた先端を有する間欠式カテーテルを通じて供給される。直腸又はストーマにおいて、この先端は、バルーンなどの膨張可能な拡張要素によって固定位置に留まる。バルーンは、空気又は水によって拡張可能であってもよい。直腸又はストーマが洗腸液で洗浄されると、膨張可能な保持要素はそのしぼんでいない状態へと収縮され、カテーテルを直腸又はストーマから抜去することを可能にするとともに、液体及び便を排出することを可能にする。カテーテルはチューブを介して洗腸液のリザーバに接続され、洗腸液をリザーバからカテーテルへと移動するためのポンプが提供されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、特に、自己洗腸に対する安心感及びユーザの利便性を向上させることによって、及び特に、システムのユーザ制御性を向上させることによって、既知のシステムを更に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、
洗腸液用のリザーバと、
カテーテル先端を含むカテーテルであって、カテーテル先端は、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入し、カテーテル先端から洗腸液を排出するためのものであり、カテーテルは、カテーテル先端をユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素を更に含む、カテーテルと、
リザーバとカテーテルとの間に洗腸液用の第1の導管を設け、リザーバと膨張可能な保持要素との間に洗腸液用の第2の導管を設けるチュービングシステムと、
第2の導管内にある、リザーバと膨張可能な保持要素との間の洗腸液の流れを制御するためのバルブシステムと、
リザーバからカテーテル先端へと洗腸液を圧送するように動作可能なポンプと、
ユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンを含む、ユーザにより動作可能な制御インターフェースであって、前記ユーザ入力に応じて、ポンプ及びバルブシステムは、保持要素のパージングのために、保持要素から洗腸液を抜くように動作可能であり、
前記専用ゾーンは、システムのあらゆる動作状態においてアクセス可能である、ユーザにより動作可能な制御インターフェースと、
を含み、
ポンプ及びバルブシステムは、選択的に、
-洗腸液を膨張可能な保持要素に圧送し、膨張可能な保持要素を膨張させるように制御可能であり、
-洗腸液をカテーテル内に圧送し、カテーテル先端からユーザの直腸又はストーマへと洗腸流体を排出するように制御可能であり、
-保持要素のパージングのために、保持要素から洗腸液を抜くように制御可能である、
肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムを提供する。
【0006】
更に、実施形態は、肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムを動作する方法であって、前記システムは、
洗腸液用のリザーバと、
カテーテル先端を含むカテーテルであって、カテーテル先端は、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入し、カテーテル先端から洗腸液を排出するためのものであり、カテーテルは、カテーテル先端をユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素を更に含む、カテーテルと、
リザーバとカテーテルとの間に洗腸液用の第1の導管を設け、リザーバと膨張可能な保持要素との間に洗腸液用の第2の導管を設けるチュービングシステムと、
第2の導管内にある、リザーバと膨張可能な保持要素との間の洗腸液の流れを制御するためのバルブシステムと、
リザーバからカテーテル先端へと洗腸液を圧送するように動作可能なポンプと、
ユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンを含む、ユーザにより動作可能な制御インターフェースであって、前記ユーザ入力に応じて、ポンプ及びバルブシステムは、保持要素のパージングのために、保持要素から洗腸液を抜くように動作可能であり、
前記専用ゾーンは、システムのあらゆる動作状態においてアクセス可能である、ユーザにより動作可能な制御インターフェースと、
を含み、
前記方法は、ポンプ及びバルブシステムを、選択的に、
-洗腸液を膨張可能な保持要素に圧送し、膨張可能な保持要素を膨張させるように制御及び動作すること、
-洗腸液をカテーテル内に圧送し、カテーテル先端からユーザの直腸又はストーマへと洗腸流体を排出するように制御及び動作すること、
-保持要素のパージングのために、保持要素から洗腸液を抜くように制御及び動作することを含む、方法を提供する。
【0007】
ポンプは手動であっても電動であってもよい。保持要素のパージングのために保持要素から洗腸液を抜くポンプ及びバルブシステムの機能によって、保持要素が制御された状態でパージされることが可能になる。したがって、保持要素の膨張及びその収縮は、ポンプ及びバルブシステムの適切な制御によって正確に制御されてもよい。制御アクション、特に、ポンプの圧送アクションによってもたらされる強制パージングによる保持要素の収縮によって、バルブシステムのバルブを開放するだけである、保持要素から洗腸液が出るには低すぎる比較的低い圧力で保持要素が膨張している状況下であっても、保持要素のパージングを可能にする。これは、ユーザの指並びに腕の器用さ及び強度が低下している場合に特に有利であるが、この理由は、このようなユーザは保持要素の比較的低い圧力でもカテーテルを抜去することが不可能な場合があるからである。
【0008】
ポンプは、好ましくは、電動ポンプであり、ポンプ及びバルブシステムは、好ましくは、電子制御システムによって制御可能である。
【0009】
バルブシステム及びチュービングシステムは、保持要素のパージング中、洗腸液をリザーバに送ることなく又はリザーバを通過させることなく洗腸液を保持要素からユーザの直腸又はストーマに直接送ることによって保持要素から洗腸液を抜くように構成可能であってもよい。これはいくつかの利点をもたらす。第1に、ユーザは、洗腸液がユーザの直腸又はストーマ内に固定された保持要素からリザーバに戻っていることに気がつくというおそらくは不安又は不快な経験に遭遇することから解放される。したがって、ユーザの快適性及びシステムの信頼が向上する。第2に、保持要素が腸内に固定されている間、膨張した保持要素内の洗腸液とユーザの体との間の温度平衡が得られるため、膨張のために使用される洗腸液を、洗腸液のその部分の任意の更なる温度管理の必要なく洗腸(即ち、腸の洗浄)のために便利に使用してもよい。第3に、洗腸液が腸の洗腸のために保持要素からカテーテル先端に直接送られると、洗腸液の移動距離、ゆえに、ポンプの消費電力が最小限になり得る。
【0010】
しかしながら、あるいは、ポンプ、バルブシステム、及びチュービングシステムは、保持要素のパージング中、洗腸液を保持要素からリザーバに送ることによって保持要素から洗腸液を抜くように構成可能であってもよい。
【0011】
最近の研究では、ポンプを含む肛門及び/又はストーマ洗腸システムのユーザは、洗腸に伴う痛み及び不快を感じる場合があることが示されている。これはカテーテル先端の不適当な位置決め、ストーマの状態等に起因し得る。ユーザが痛みを感じた場合、洗腸を打ち切り、保持要素を収縮させて、ユーザの直腸又はストーマからカテーテルを抜去できることが重要である。保持要素から洗腸液を抜くのを制御するためのユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンによって、ユーザがシステムのあらゆる動作状態において保持要素を収縮させることが可能になる。したがって、直腸又はストーマからの保持要素及びカテーテルの除去を速やかに且つ便利に実施できるということを有利に実現することができる。これにより、肛門及び/又はストーマ洗腸システムのユーザの安心感及び利便性が向上する。
【0012】
ポンプは可逆電気ポンプを含んでもよい。可逆電気ポンプは、洗腸液を膨張可能な保持要素に圧送し、膨張可能な保持要素を拡張するために、1つの方向に作動可能であり、ユーザにより動作可能な制御インターフェースにおけるユーザ入力に応じて、膨張可能な保持要素から洗腸液を抜き、膨張可能な保持要素を収縮するために、逆方向に作動可能である。この場合、ポンプは、洗腸液を保持要素に圧送するとともに、保持要素から洗腸液を能動的に抜くように構成されている。更に、ポンプは、保持要素に吸引力を加えるために反転され得る。このようにして、バルブシステムのバルブを開放するだけである、保持要素から洗腸液が出るには低すぎる比較的低い圧力で保持要素が膨張している状況下であっても、圧送アクションによって保持要素を収縮できることが保証される。
【0013】
更に、電気ポンプの反転は、電子制御システムを使用して、ポンプに供給されている電流の方向を単に変えることによって実施されてもよい。こうした電流方向の切り換えは、バルブシステムの構成から独立して行われてもよい。したがって、保持要素を収縮し、カテーテルがユーザの直腸又はストーマから除去されることを可能にするのにかかる時間を更に最小にできる。また、バルブシステムの構成を変えることなく保持要素内の洗腸液に圧力又は吸引力を与えることの間に(as between)、バルブシステムをバルブ構成の変化に関連する機械的ストレスから解放する。加えて、可逆電気ポンプの提供は、保持要素から洗腸液を能動的に抜く手段を提供する、費用対効果が高く且つ簡単な手法である。したがって、このシステムの付加機能のコストは最小になり得る。
【0014】
利便性を高めるとともに、迅速な動作を可能にするために、制御インターフェースは、1つのユーザアクションを前記ユーザ入力として認識するように構成されていてもよい。この場合、洗腸システムは、ユーザが単一アクションによって保持要素から液体を抜くことを可能にする。1つのユーザアクションは、ボタンを押下すること、タッチ感知ユーザインタフェースにタッチすること、スイッチを入れること等であってもよい。これはカテーテルを除去するためにかかる時間が更に最小になるため有利である。また、カテーテルユーザの器用さ及び体力が低下している可能性がある場合、容易にアクセス可能な、保持要素から液体を抜く手段を提供することが特に重要である。
【0015】
専用非常停止ゾーンは、ユーザにより動作可能なボタンを含んでもよい。また、制御インターフェースは、ユーザにより動作可能なボタンの押下をユーザ入力として認識するように構成されていてもよい。
【0016】
この場合、素早い識別のため、ユーザにより動作可能なボタンにはっきりと印及びラベルが付されていてもよい。したがって、保持要素から洗腸液を抜き、ユーザの直腸又はストーマからのカテーテルの除去を可能にするために、ユーザは、ユーザにより動作可能なボタンを素早く位置特定して、押してもよい。ユーザにより動作可能なボタンの存在は、保持要素から洗腸液を能動的に抜く必要がない場合でもユーザの快適性を高める可能性がある。つまり、必要であれば、ユーザの直腸又はストーマからのカテーテルの除去を素早く可能にすることができることをユーザに思い出させることができる。こうしたリマインダは、使用の快適性を高めるとともに、システムに対するユーザの信頼を高めることができる。
【0017】
ユーザにより動作可能なボタンは、機械的ボタンを含んでもよい。機械的ボタンを押下することで、ユーザに触覚フィードバックを与え、ユーザに認識感及び快適性を付与してもよい。また、機械的ボタンは、ユーザが、例えば、手袋を着用しているか指が濡れているかを問わず、押下されてもよい。したがって、保持要素から洗腸液を抜くことを制御するための機械的ボタンを設けることで、ユーザの快適性及び利便性を高めてもよい。
【0018】
ユーザにより動作可能な制御インターフェースはグラフィカルユーザインタフェースを含んでもよい。また、システムは制御システムを含んでもよく、制御システムは、グラフィカルユーザインタフェースによって提示される情報を記憶するためのメモリを含む。グラフィカルユーザインタフェースは種々の情報を表示するように構成されていてもよい。グラフィカルユーザインタフェースは、更に、ユーザ入力を受信するためのタッチ感知領域を備えて構成されていてもよい。グラフィカルユーザインタフェースは、ユーザに関連するパラメータに関するデータを提示し、システムを制御するための多目的のユーザ入力を受信してもよい。これにより、ユーザが利用可能な多くの設定及びモードがシステムに備えられていたとしても、ユーザがシステムを便利に且つ時間効率的に制御することを可能にしてもよい。
【0019】
リザーバに接続された、リザーバ、チュービングシステム及び/又はカテーテル内の温度の測定値を取得するためのサーモセンサが、更に、設けられてもよい。制御システムは、サーモセンサと動作的に接続されていてもよく、制御システムは、洗腸液がリザーバに充填される又は再充填される前のリザーバ内の温度を特定し、リザーバへの洗腸液の充填又は補充が開始するとリザーバ内の温度の初期変化を特定し、少なくとも初期変化に基づきリザーバ内の温度の将来の漸近値を予測するように構成されていてもよい。制御システムは、更に、洗腸液がリザーバに充填又は補充されている間、リザーバ内の現在温度又は現在の温度の変化率を連続的に特定し、リザーバ内の温度の将来の漸近値の予測を、少なくとも前記現在温度及び/又は温度の変化率に基づき連続的に更新するように構成されていてもよい。
【0020】
サーモセンサ及び制御システムによって、特に洗腸液が充填された後のリザーバ内の温度の将来の漸近値の予測が行われてもよい。将来の漸近温度値の予測は現在温度及び/又は温度の変化率に基づき連続的に更新されるため、例えば、お湯と冷たい水道水との間の比率の変化など、リザーバに供給される液体の温度の変化が温度予測値に適切に反映される。
【0021】
グラフィカルユーザインタフェースは、洗腸流体の現在温度又は予想温度が既定の温度間隔内にない場合、ユーザに通知するように構成されていてもよく、したがって、ユーザが供給される液体(典型的には水道水)の温度を上昇させるか低下させるかを確認することを可能にする。
【0022】
ユーザにより動作可能な制御インターフェースは、システムユーザ動作命令を含んでもよく、グラフィカルユーザインタフェースは、前記ユーザ動作命令を示すように構成されていてもよく、ユーザが別個のマニュアルを参照する必要なくユーザ動作命令を便利に取り出すことを可能にする。
【0023】
グラフィカルユーザインタフェースは、システム動作状態のステータスを示すように構成されていてもよい。こうした情報には、現在の動作状態及び現在の動作状態のステータスを含んでもよい。この場合、ユーザはシステムの動作をすぐにアクティブな状態にし、身体感覚を現在の動作モードと関連付けることができる。これによりユーザに、洗腸に対する快適性の向上及びシステムの信頼をもたらしてもよい。更に、現在の動作モードのステータスは、また、現在の動作モードがいつ終了する予定であるかをユーザに知らせてもよく、これもシステムを使用する利便性を高める。
【0024】
グラフィカルユーザインタフェースは、洗浄シーケンスが既定の間隔で予定されていることをユーザに通知するように構成されている。システムの最適な動作及び機能のために、洗浄シーケンスを既定の間隔で実施すると有利である。この間隔は、また、個々の構成要素の動作ステータスに応じて決定されてもよい。グラフィカルユーザインタフェースがこのような洗浄シーケンスを通知することを可能にすることによって、システムが、適宜、洗浄されることが保証されてもよい。洗浄シーケンスは、グラフィカルユーザインタフェース上に表示された命令に従いユーザにより手動で実施されてもよく、又はシステムは、洗浄シーケンスを自動的に実施するように構成されていてもよい。
【0025】
グラフィカルユーザインタフェースは、システムが、所定数の動作サイクルの後、交換されることが予定されていることをユーザに通知するように構成されていてもよく、過度の使用によるシステムの動作不良に関連する不都合を防ぐことを更に助けてもよい。
【0026】
チュービングシステム内のバルブシステムは、第1の、第2の、及び第3の流れ構成から選択される1つの流れ構成を1つずつ選択的に生じさせるように構成されていることが好ましい。
-第1の流れ構成は、前記ポンプによって、リザーバから膨張可能な保持要素への洗腸液の移動を生じさせるようになっており、
-第2の流れ構成は、前記ポンプによって、洗腸液をリザーバからカテーテルへと移動させるようになっており、
-第3の流れ構成は、前記ポンプによって、洗腸液を膨張可能な保持要素から移動するようになっている。
【0027】
したがって、第1の流れ構成において、洗腸液は、膨張可能な保持要素を膨張させるためにリザーバから膨張可能な保持要素へと移動される。第2の流れ構成において、洗腸液は、リザーバからカテーテルへと、即ち、ユーザの直腸又はストーマに挿入するためのカテーテル先端へと移動される。第3の流れ構成において、洗腸液は膨張可能な保持要素から、洗腸液がリザーバに送られること若しくはリザーバを通過すること又はリザーバに戻ることのいずれもなく、ユーザの腸の洗浄のためにカテーテル先端へと直接移動する。
【0028】
膨張可能な保持要素内の圧力を便利な手法で制御するための更なる手段として、第1のリリーフバルブが設けられてもよい。このバルブは、ユーザの腸内の圧力が第1の流れ構成、即ち、膨張可能な保持要素の膨張時の第1の限界閾値を超えた場合に開放されるように構成されている。好ましくは、第1のリリーフバルブが開放すると、ある量の洗腸液がリザーバに移動される、又はバルブが、例えば、カテーテルのコネクタ部分に配置されている場合、トイレ施設に排出される。
【0029】
更なる又は代替的な安全策として第2のリリーフバルブが設けられてもよい。第2のリリーフバルブは、ユーザの腸内の圧力が第2の流れ構成、即ち、ユーザの腸の洗浄時の第2の限界閾値を超えた場合に、ある量の洗腸液をリザーバに移動させるために、又は洗腸液をユーザの直腸又はストーマに圧送し続けるよりもむしろトイレに排出するために、開放されるように構成されている。
【0030】
概して、過圧力により排出される液体をシステム外に、即ち、リザーバなどのシステム自体よりもむしろトイレ施設に移すことが望ましい場合がある。
【0031】
概して、バルブ及びチュービングシステムは、膨張可能な保持要素内の圧力が所定の閾値レベルを超えた場合、洗腸液をリザーバに方向転換するよう動作可能であってもよい。
【0032】
膨張可能な保持要素及び/又はカテーテルへの洗腸液の供給を更に制御するために、システムは、
ポンプと膨張可能な保持要素との間の位置においてチュービング及び/又はカテーテル内に配置された第1の能動的に制御可能なバルブ、
及び/又は
ポンプとカテーテルとの間の位置においてチュービング内に配置された第2の能動的に制御可能なバルブ、
を含んでもよい。
【0033】
能動的に制御可能なバルブは、第1の流れ構成、第2の流れ構成、及び第3の流れ構成のうちの所望の1つを実現するために動作可能である。より具体的には、第1の能動的に制御可能なバルブが開放し、第2の能動的に制御可能なバルブが閉鎖されている場合、洗腸液はリザーバから膨張可能な保持に送られてもよく、又は膨張可能な保持要素から除去されてもよい。第1のバルブが開放されており、第2のバルブが閉鎖されている状態において、ポンプ内の流れの方向はポンプのモータの回転方向によって制御可能であってもよい。膨張可能な保持要素から強制的に除去される洗腸液の行き先を、逆止弁などの1つ以上の受動的に制御可能なバルブ又は1つ以上の能動的に制御可能なバルブによって選択してもよい。第1の能動的に制御可能なバルブが閉鎖されており、第2の能動的に制御可能なバルブが開放されているとき、洗腸液は膨張可能な保持要素に入ることなくリザーバからカテーテルへと送られてもよい。
【0034】
ポンプからリザーバに向かう方向における洗腸液の逆流を防止するために、膨張可能な保持要素から抜いた液体をカテーテルの方に、及びユーザの直腸又はストーマへと押しやるように、少なくとも1つの逆止弁が設けられることが好ましい。
【0035】
バルブシステム及び/又はポンプの動作を制御するために、ユーザにより動作可能な制御インターフェースが設けられてもよい。ユーザは、例えば、流れ構成を上述の第1の流れ構成、第2の流れ構成、及び第3の流れ構成の中から選択するためにバルブ設定を選択してもよく、ユーザは、更に、保持要素の膨張圧力、又はポンプの動作速度、即ち洗腸用の洗腸液の流量、又は洗腸所要時間など、システムの動作パラメータを設定してもよい。
【0036】
一実施形態では、ポンプは、ユーザの腸の蠕動運動を刺激するように繰り返し膨張及び収縮させるよう動作可能である。このようなポンプの動作はユーザが制御インターフェースを通じて作動可能であってもよい。繰り返される膨張及び収縮の所要時間又は頻度などのポンプの設定は、インターフェースを通じて定義されてもよい。膨張可能な保持要素は段階的に膨張可能又は収縮可能であってもよく、膨張状態に関するユーザの感覚に応じて、保持要素の膨張又は収縮をユーザが制御することを可能にする。
【0037】
制御システムは、肛門又はストーマ洗腸中のカテーテル先端における洗腸液の流れの状態を制御するように構成されていてもよい。したがって、制御システムは、ポンプの動作を制御するためのコントローラと、ポンプの動作時、チュービングシステム及び/又はカテーテル内の少なくとも1つの第1の所定位置における圧力の測定値を特定するための少なくとも1つのセンサと、圧力の前記測定値に基づきカテーテル先端における前記流れの状態を特定する又は推定するためのプロセッサと、を含んでもよい。更に、制御システムは、圧力の前記測定値に応じてポンプの圧送動作を制御するように構成されていてもよい。
【0038】
ポンプの動作時、チュービングシステム及び/又はカテーテル内の少なくとも1つの第1の所定位置における圧力の測定値を特定するための少なくとも1つのセンサを設けることで、プロセッサがこのような測定値に基づきカテーテル先端における流れの状態を特定する又は推定することが可能になる。例えば、チュービングシステム内の特定の流量制限器における圧力の、所定のレベルへの上昇は、カテーテルの先端に洗腸液が存在することを示してもよい。同様に、カテーテル先端自体における圧力の上昇は、この先端に洗腸液が存在することを示してもよい。
【0039】
一実施形態では、制御システムは、チュービングシステム及び/若しくはカテーテル内の少なくとも第1の所定位置における並びに/又はチュービングシステム及び/若しくはカテーテル内の少なくとも1つの第2の所定位置における洗腸液の存在を示す少なくとも1つの圧力閾値を記憶するためのメモリを含んでもよい。このような実施形態では、制御システムは、少なくとも1つのセンサによる、少なくとも1つの第1の所定位置における、圧力閾値又は圧力閾値から得られる値に少なくとも等しい圧力値の特定後限られた時間にわたって、ポンプの圧送動作を継続するように構成されていてもよい。例えば、第1の所定位置及び第2の所定位置のうちの1つは、カテーテル先端又はその近傍の位置であってもよく、この場合、制御システムは、前記圧力閾値の特定後特定の所要時間にわたって前記圧送動作を継続するように構成されていてもよい。したがって、カテーテル先端から放出される洗腸液の量は、前記所要時間の制御によって正確に制御されてもよい。
【0040】
ここで、添付の図面を参照しながら実施形態を更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、肛門及び/又はストーマ用のシステムの一実施形態のチュービング及びバルブシステムの一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、
図2のチュービング及びバルブシステムの流れ構成の各実施形態を示す。
【
図4】
図4は、
図2のチュービング及びバルブシステムの流れ構成の各実施形態を示す。
【
図5】
図5は、
図2のチュービング及びバルブシステムの流れ構成の各実施形態を示す。
【
図5a-5b】
図5a及び
図5bは、別の実施形態における流れ構成の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、リザーバに洗腸液を充填中又は補充中のリザーバ内の洗腸液の温度の例示的な曲線を示す。
【
図7】
図7は、リザーバに洗腸液を充填中又は補充中のリザーバ内の洗腸液の温度の例示的な曲線を示す。
【
図8】肛門洗腸用のシステムのリザーバ内の洗腸液の温度を予測するための方法を示す。
【
図9a-9c】
図9a~
図9cは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図10a-10c】
図10a~
図10cは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図11a-11d】
図11a~
図11dは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図12a-12b】
図12a及び
図12bは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図13】
図13は、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図14a-14e】
図14a~
図14eは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図14f-14k】
図14f~
図14kは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図14l-14q】
図14l~
図14qは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図14r】
図14rは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【
図15a-15b】
図15a及び
図15bは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面の詳細な説明
図1は、肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムの一実施形態を示す。システムは、ユーザの直腸又はストーマに挿入するための大きさにされ、ユーザの直腸又はストーマに挿入するように構成されたカテーテル100を含む。リザーバ102内に収容された洗腸液を、カテーテル100と、ユーザの直腸又はストーマ内にカテーテルを固定するように構成されたバルーンの形態の膨張可能な保持要素104とに送るための、ポンプ101のハウジングが提供されている。ポンプの制御システム103及びバルブシステム(
図1に不図示)は、ポンプ101のハウジング内に更に収容されている。チューブ部分119はリザーバ102をポンプ101に接続し、チューブ部分121はポンプ101のハウジング内のポンプを、カテーテル100及び膨張可能な保持要素104に接続する。以下、
図2~
図5に関して更に詳細に記載するように、チューブ部分121は、それぞれ、カテーテル先端から洗腸液を排出するために及びバルーン104の膨張のために、ポンプをカテーテルに接続するための別個の導管を含む。チューブ部分119は、リザーバ102から洗腸液を吸い込むための浸漬管129に取り付けられている。ポンプ101のハウジングにはシステムの動作状態及び/又は漸近温度値をユーザに伝達するためのディスプレイ123が設けられており、ユーザにより動作可能な制御ボタン125が、バルブシステム及び/又はポンプ101の動作(
図1に不図示)を制御するための、ユーザにより動作可能な制御インターフェースの一部として設けられている。
図1のユーザにより動作可能な制御ボタン125のうちの1つは、随時、洗腸液を保持要素104からユーザの作動で抜くための非常停止ボタンとして具現化される専用非常停止ゾーンであってもよい。サーモセンサ128がリザーバ102の壁に取り付けられており、サーモセンサ128からポンプ101のハウジング内の制御システム103に信号を伝達するための有線接続127が設けられている。
【0043】
図2は、
図1のシステムのチュービング及びバルブシステムの一実施形態を示す。示されるように、ポンプ101は、第1の逆止弁114を含む導管120を介してリザーバ102に接続されている。導管120は、チューブ部分119(
図1を参照)内に設けられている。第1の逆止弁114は、チューブ部分119内に、又はポンプ101のハウジング内に、又は浸漬管129内に設けられてもよい。ポンプの下流(リザーバからカテーテル100及びバルーン104に向かう流れの方向で見たとき)、チュービングシステムは2つの分岐を有し、そのうちの1つは、第1の能動的に制御可能なバルブ106を介してバルーン104に接続している導管122を含む。導管122はチューブ部分121内に設けられている。第1の能動的に動作可能なバルブ106は、チューブ部分121内に、又はカテーテル100内に、又はポンプ101のハウジング内に設けられてもよい。ポンプの下流のチュービングシステムの他方の分岐は、第2の能動的に制御可能なバルブ108を介してカテーテル100に接続している導管124を含む。導管124はチューブ部分121内に設けられている。第2の能動的に動作可能なバルブ108は、チューブ部分121内に、又はカテーテル100内に、又はポンプ101のハウジング内に設けられてもよい。
図2~
図5の破線によって示されるように、能動的に制御可能なバルブ106及び108は制御システム103によって制御可能である。
【0044】
ポンプ101の動作時、チュービングシステム119、120、121、122、124及び/又はカテーテル100内の少なくとも1つの第1の所定位置における圧力を測定するために圧力センサ105が提供されている。圧力センサ105は制御システム103に信号を出力し、制御システム103は、ポンプ及び/又は能動的に制御可能なバルブ106、108を、前記信号及び本明細書中に記載される他の信号に基づいて動作する。制御システム103は、圧力センサ105により提供された圧力の測定値に基づいてカテーテル先端における流れの状態を特定する又は推定するためのプロセッサを含み、制御システムは、圧力の前記測定値に応じてポンプの圧送動作を制御するように構成されている。より具体的には、制御システムは、圧力センサ105による圧力値(この値は圧力閾値又は圧力閾値から得られる値に少なくとも等しい)の決定後、限られた時間にわたってポンプ101の圧送動作を継続する。したがって、カテーテル先端から放出される洗腸液の量が正確に制御されてもよい。示される実施形態では、圧力センサ105は、チュービングシステム121、124内の、カテーテル100の近傍に又はカテーテル100自体の内部に配置されている。
【0045】
制御システム103はユーザにより動作可能な制御ボタン125、及びサーモセンサ128から入力を更に受信し、制御システム103はデータをディスプレイ123に伝達する。ディスプレイ123に伝達されるデータには、サーモセンサ128によって特定されたリザーバ102内の洗腸液の温度の予測された将来の漸近値を含んでもよい。洗腸液がリザーバに充填又は再充填されている間、制御システム103が温度予測値を連続的に更新すると、データは連続的に更新されてもよい。
【0046】
第1のリリーフバルブ110及び第2のリリーフバルブ112は、バルーン104又はカテーテル100内の圧力がリリーフバルブにより規定された閾値圧力を超えた場合に、バルーン104又はカテーテル100から洗腸液が排出するのを可能にするために設けられている。第1のリリーフバルブ110はバルーン104内の圧力が過剰な場合にバルーン104からリザーバ102に液体を排出し、第2のリリーフバルブはユーザの直腸又はストーマ内の圧力が過剰な場合にカテーテル100からリザーバ102に液体を排出する。
【0047】
更に、第1の逆止弁114及び第2の逆止弁116は、チュービングシステム内における液体の望ましくない逆流を防止するために設けられている。第1の逆止弁114は、ポンプ101とリザーバ102との間の導管120内に、ポンプ101又はポンプの下流の任意の位置からリザーバ102への洗腸液の逆流を防ぐために設けられている。第2の逆止弁116は、導管124を導管120に接続しているチュービングシステム内の側方分岐に設けられている。第1の逆止弁114及び第2の逆止弁116は、チューブ部分119及びチューブ部分121(
図1を参照)内に、又はポンプ101のハウジング内に設けられてもよく、あるいは、第1の逆止弁114は浸漬管129内に設けられてもよい。第2の逆止弁116はカテーテル100内に設けられてもよい。
【0048】
図3~
図5は、
図2のチュービング及びバルブシステムの流れ構成の各実施形態を示す。
図3に示される第1の流れ構成201では、ポンプ101が動作している間、第1の能動的に制御可能なバルブ106は開放し、第2の能動的に制御可能なバルブ108は閉鎖される。したがって、バルーン104の膨張のために、洗腸液がリザーバ102からバルーン104に送られる。
図4に示される第2の流れ構成202では、ポンプ101が動作している間、第2の能動的に制御可能なバルブ108は開放し、第1の能動的に制御可能なバルブ106は閉鎖される。したがって、洗腸液がリザーバ102からカテーテル100に送られ、この液は、カテーテル100の先端において、ユーザの腸を洗腸するためにユーザの直腸又はストーマに放出される。
図5に示される第3の流れ構成203では、ポンプ101の動作は反転され、第1の能動的に制御可能なバルブ106は開放し、第2の能動的に制御可能なバルブ108は閉鎖される。したがって、バルーン104はパージされ、バルーン104から抜かれた洗腸液は、バルーン104からカテーテル100へと流れ、カテーテル100先端において排出される。
【0049】
図5a及び
図5bの別の実施形態では、バルーン104はポンプ101の強制動作によってリザーバ102へと空にされてもよい。
図5a及び
図5bの破線は、バルーンの膨張及びバルーンのリザーバへのパージングのための各流れ構成を示す。
図5bは、カテーテルを通じて洗腸液を排出するための流れ構成を示す。
図5aの流れ構成では、第1の能動的に制御されるバルブAV1は開放し、第2の能動的に制御されるバルブAV2は閉鎖される。バルーンの膨張のために、ポンプ101は第1の動作方向に動作する一方で、バルーンのパージング、即ち収縮のために、ポンプ101は、第1の動作方向とは反対の第2の動作方向に動作する。
図5bの流れ構成では、第1の能動的に制御されるバルブAV1は閉鎖され、第2の能動的に制御されるバルブAV2は開放される。逆止弁CV1は、カテーテルチュービング導管からリザーバに向かう洗腸液の逆流を防止する。
【0050】
図6及び
図7は、リザーバに洗腸液を充填中又は補充中のリザーバ102内の洗腸液の温度の例示的な曲線を示す。
図6のグラフにおいて、サーモセンサ128によって特定されたリザーバ102内の洗腸液の初期温度は約20℃である。ユーザの腸は、約40℃を超えない温度の、好ましくは20~40℃の温度の、最も好ましくは36~38℃の温度の液体で洗腸されるべきであるため、ユーザは、水道水などの液体を高めの温度でリザーバに注入し始める。
【0051】
次いで、リザーバ120への洗腸液の充填又は補充が開始すると、リザーバ内の温度の初期変化がサーモセンサ128によって特定される。
図6において、初期温度変化は、時間t
1における上昇温度T
INTによって示される。初期温度変化に基づき、リザーバ内の温度の将来の漸近値(
図6では「真」と示されている)は、少なくとも初期変化に基づき予測される。
【0052】
図7に示すように、リザーバ内の現在温度又は現在の温度の変化率は、洗腸液がリザーバに充填される又は補充される間、サーモセンサ128及び制御システム103によって連続的に特定され、リザーバ内の温度の将来の漸近値の予測が少なくとも前記現在温度及び/又は温度の変化率に基づき連続的に更新される。より具体的には、充填又は再充填工程の開始時、第1の時点t
1において初期温度変化T
1が特定される。T
1によって示される第1の初期温度変化が、充填されたときのリザーバ102内の洗腸液の将来の漸近温度値の第1の予測T
Aのために使用される。第2の時点t
2において、サーモセンサ128によって特定された温度がレベルT
2に達したとき、例えば、ユーザが蛇口の湯と冷水の割合を変化させると、リザーバに供給される液体の温度が変化する。第3の時点t
3において、第3の温度値T
3が得られ、第2の予測T
Bが行われる。その後、第4の時点t
4において、第4の温度レベルT
4に達し、リザーバ102内に充填される液体の温度は再び急激に変化する。供給される液体の変化は時間t
5の温度T
5に反映され、温度T
5に基づき、第3の漸近温度予測T
∞が行われる。
【0053】
上記工程中、予測された温度値T
A、T
B及びT
∞は、制御システム103によって決定されると、ディスプレイ123(
図1~
図5を参照)によってユーザに示される。
【0054】
漸近温度予測値を連続的に決定及び更新する上記工程は全体的に
図8に示される。
【0055】
図9a~
図15bは、ユーザにより動作可能な制御インターフェースのグラフィカルユーザインタフェースの表示構成を示す。
図9a~
図15bに示されるグラフィカルユーザ表示の全てに対して専用非常停止ゾーン(
図9a~
図15bに図示せず)が設けられてもよいことは理解すべきである。専用非常停止ゾーンは、例えば、機械的に作動されるボタン若しくはスイッチ125(
図1を参照)、又は専用のタッチスクリーン領域の形態で設けられてもよい。
図9a~
図15bの表示構成は、システム(
図1を参照)のディスプレイ123に示される。
【0056】
図9a~
図9cは、システムの初期化及びセットアップ時にユーザに提示される初期スクリーン表示である。ユーザは、保持要素、即ちバルーンの大きさを選択し(
図9a)、設定を確認し(
図9b)、言語、単位等を含む各種システム設定を設定する(
図9c)ことが可能になる。
【0057】
図10a~
図10cは、システムの起動時にユーザに提示されるスクリーン表示であり、全般的な起動表示(
図10a)、電池ステータス(
図10b)、及びユーザに対する、リザーバ、即ち容器に水道水などの洗腸液の充填を開始する命令(
図10c)を含む。
【0058】
図11a~
図11dは、リザーバ内の洗腸液の温度表示に関連する表示構成を示し、これには、温度測定が進行中である(
図11a)ことを忠告する情報、不適切な、即ち高すぎる又は低すぎる温度(それぞれ
図11b及び
図11c)、及び適切な温度(
図11d)を含む。
【0059】
図12a及び
図12bは、ユーザがカテーテルをチュービングシステムに接続し(
図12a)、洗腸液用のポンプを始動させる(
図12b)ための命令をグラフィカルユーザインタフェースで示す。
【0060】
図13は、グラフィカルユーザインタフェースのディスプレイにおける低電池残量ステータス表示を示す。
【0061】
図14a~
図14rは、洗腸サイクル中に発生するディスプレイの図であり、チュービングシステムのチューブが充填中であるという表示(
図14a)、ユーザに対する、カテーテルを潤滑させる命令(
図14b)、及びストーマ又は直腸内にカテーテルを挿入する命令(
図14c)を含む。ユーザは更に、洗腸中に注入されるべき洗腸液の量を設定することが可能となる(
図14d)。グラフィカルユーザインタフェースに、保持要素即ちバルーンの拡張のプロセスの表示が提供されてもよい(
図14e)。充填一時停止が示されてもよく(
図14f)、洗腸液注入、注入の一時停止及び注入完了が示されてもよい(それぞれ
図14g、
図14h及び
図14i)。注入の完了時、保持要素から洗腸液を抜くための、即ち、バルーンを空にするための命令が与えられる(
図14j)。保持要素を空にするステータスがグラフィカルユーザインタフェースのディスプレイに提供されてもよく(
図14k~
図14m)、保持要素から洗腸液を抜くことが完了すると、ストーマ又は直腸からカテーテルを除去する命令が与えられてもよい(
図14n)。清掃命令が与えられてもよく(
図14o)、チューブ排液ステータスが表示されてもよい(
図14p)。更に、セッションの終了が表示されてもよい(
図14r)。
【0062】
図15a及び
図15bは、使用期限終了時の(due)システム交換(
図15a)並びにシステム故障(
図15b)の一般システム通知及び警告である。
本明細書は以下の態様を開示する。
<態様1>
洗腸液用のリザーバと、
カテーテル先端を含むカテーテルであって、前記カテーテル先端は、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入し、前記カテーテル先端から前記洗腸液を排出するためのものであり、前記カテーテルは、前記カテーテル先端を前記ユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素を更に含む、カテーテルと、
前記リザーバと前記カテーテルとの間に前記洗腸液用の第1の導管を設け、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間に前記洗腸液用の第2の導管を設けるチュービングシステムと、
前記第2の導管内にある、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間の前記洗腸液の流れを制御するためのバルブシステムと、
前記リザーバから前記カテーテル先端へと前記洗腸液を圧送するように動作可能なポンプと、
ユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンを含む、ユーザにより動作可能な制御インターフェースであって、前記ユーザ入力に応じて、前記ポンプ及び前記バルブシステムは、前記保持要素のパージングのために、前記保持要素から前記洗腸液を抜くように動作可能であり、前記専用ゾーンは、前記システムのあらゆる動作状態においてアクセス可能である、ユーザにより動作可能な制御インターフェースと、
を含み、
前記ポンプ及び前記バルブシステムは、選択的に、
-前記洗腸液を前記膨張可能な保持要素に圧送し、前記膨張可能な保持要素を膨張させるように制御可能であり、
-前記洗腸液を前記カテーテル内に圧送し、前記カテーテル先端から前記ユーザの直腸又はストーマへと前記洗腸流体を排出するように制御可能であり、
-前記保持要素のパージングのために、前記保持要素から前記洗腸液を抜くように
制御可能である、
肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステム。
<態様2>
前記ポンプは可逆電気ポンプを含み、前記可逆電気ポンプは、前記洗腸液を前記膨張可能な保持要素に圧送し、前記膨張可能な保持要素を拡張するために、1つの方向に作動可能であり、前記ユーザにより動作可能な制御インターフェースにおける前記ユーザ入力に応じて、前記膨張可能な保持要素から前記洗腸液を抜き、前記膨張可能な保持要素を収縮するために、逆方向に作動可能である、態様1に記載のシステム。
<態様3>
前記制御インターフェースは、1つのユーザアクションを前記ユーザ入力として認識するように構成されている、態様1又は2に記載のシステム。
<態様4>
前記専用非常停止ゾーンは、ユーザにより動作可能なボタンを含む、態様3に記載のシステム。
<態様5>
前記制御インターフェースは、前記ユーザにより動作可能なボタンの押下を前記ユーザ入力として認識するように構成されている、態様4に記載のシステム。
<態様6>
前記ユーザにより動作可能なボタンは機械的ボタンを含む、態様4又は5に記載のシステム。
<態様7>
前記ユーザにより動作可能な制御インターフェースは、グラフィカルユーザインタフェースを含む、態様1~6のいずれか一項に記載のシステム。
<態様8>
前記グラフィカルユーザインタフェースは、前記洗腸流体の現在温度又は予想温度が既定の温度間隔内にない場合、ユーザに通知するように構成されている、態様7に記載のシステム。
<態様9>
前記ユーザにより動作可能な制御インターフェースは、システムユーザ動作命令を含み、前記グラフィカルユーザインタフェースは、前記ユーザ動作命令を表示するように構成されている、態様7又は8に記載のシステム。
<態様10>
前記グラフィカルユーザインタフェースは、システム動作状態のステータスを表示するように構成されている、態様7~9いずれか一項に記載のシステム。
<態様11>
前記グラフィカルユーザインタフェースは、洗浄シーケンスが既定の間隔で予定されていることを前記ユーザに通知するように構成されている、態様7~10いずれか一項に記載のシステム。
<態様12>
前記グラフィカルユーザインタフェースは、当該システムが、既定の数の動作サイクルの後、交換されることが予定されていることを前記ユーザに通知するように構成されている、態様7~11いずれか一項に記載のシステム。
<態様13>
肛門及び/又はストーマ洗腸用のシステムを動作する方法であって、
前記システムは、
洗腸液用のリザーバと、
カテーテル先端を含むカテーテルであって、前記カテーテル先端は、ユーザの直腸及び/又はストーマに挿入し、前記カテーテル先端から前記洗腸液を排出するためのものであり、前記カテーテルは、前記カテーテル先端を前記ユーザの直腸又はストーマ内に固定するための膨張可能な保持要素を更に含む、カテーテルと、
前記リザーバと前記カテーテルとの間に前記洗腸液用の第1の導管を設け、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間に前記洗腸液用の第2の導管を設けるチュービングシステムと、
前記第2の導管内にある、前記リザーバと前記膨張可能な保持要素との間の前記洗腸液の流れを制御するためのバルブシステムと、
前記リザーバから前記カテーテル先端へと前記洗腸液を圧送するように動作可能なポンプと、
を含み、
当該方法は、前記ポンプ及び前記バルブシステムを、選択的に、
-前記洗腸液を前記膨張可能な保持要素に圧送し、前記膨張可能な保持要素を膨張させるように制御及び動作すること、
-前記洗腸液を前記カテーテル内に圧送し、前記カテーテル先端から前記ユーザの直腸又はストーマへと前記洗腸流体を排出するように制御及び動作すること、
-前記保持要素のパージングのために、前記保持要素から前記洗腸液を抜くように制御及び動作することを含み、
前記システムは、ユーザ入力を受信するための専用非常停止ゾーンを含む、ユーザにより動作可能な制御インターフェースであって、前記専用ゾーンは、前記システムのあらゆる動作状態においてアクセス可能である、ユーザにより動作可能な制御インターフェースを含み、
当該方法は、前記ユーザ入力に応じて、前記保持要素のパージングのために、前記保持要素から前記洗腸液を抜くように、前記ポンプ及び前記バルブシステムを動作することを更に含む、
方法。