(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】検査装置、照明装置、及びシェーディング抑制方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20221108BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221108BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20221108BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G02B21/06
F21S2/00 100
F21V23/00 113
F21V5/04 100
(21)【出願番号】P 2019007753
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
(72)【発明者】
【氏名】石渡 研志
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107290846(CN,A)
【文献】特表2015-508165(JP,A)
【文献】米国特許第07092082(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
F21V 1/00 - 8/00
F21V 9/00 - 15/04
F21V 23/00 - 99/00
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源が
第1の方向おいてライン状に並ぶように配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源と、
前記アレイ光源から出射された光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの開口絞りとして機能するアパーチャと、
前記結像レンズで結像された光を検出する光検出部と、を備え、
前記結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲
の前記第1の方向における長さをLとし、前記第1の方向おいてライン状に並んでいる前記複数の光源の隣り合う光源間のピッチをPとした場合、前記Lが前記Pの略整数倍となるように構成されている、
検査装置。
【請求項2】
前記アパーチャの開口径をAとした場合、前
記Lが前
記Pの略整数倍となるように、前記開口径Aが調整されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記アレイ光源と前記アパーチャとの間に配置されている観察物体と前記光源との距離をZとした場合、前
記Lが前
記Pの略整数倍となるように、前記距離Zが調整されている、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記アレイ光源は、矩形関数型の周期的な輝度分布を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記アレイ光源は、離散的でない連続的な形状の周期的な輝度分布を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記アレイ光源から出射された光の光路上にアポダイゼーションフィルタが設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記アポダイゼーションフィルタのエッジ部における透過プロファイルの形状が誤差関数で特定される形状を備える、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記アポダイゼーションフィルタの透過プロファイルの形状が台形型の形状を備える、請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記アポダイゼーションフィルタは、前記アパーチャの位置に配置されて構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
複数の光源が
第1の方向おいてライン状に並ぶように配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源を備える照明装置であって、
前記第1の方向おいてライン状に並んでいる前記複数の光源の隣り合う光源間のピッチをPとし、前記照明装置からの光を結像する結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲
の前記第1の方向における長さをLとした場合、前
記Lが前
記Pの略整数倍となるように構成されている、
照明装置。
【請求項11】
複数の光源が
第1の方向おいてライン状に並ぶように配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源と、前記アレイ光源から出射された光を結像する結像レンズと、前記結像レンズの開口絞りとして機能するアパーチャと、を備える光学系におけるシェーディング抑制方法であって、
前記結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲
の前記第1の方向における長さをLとし、前記第1の方向おいてライン状に並んでいる前記複数の光源の隣り合う光源間のピッチをPとした場合、前記Lが前記Pの略整数倍となるように構成する、
シェーディング抑制方法。
【請求項12】
前記アパーチャの開口径をAとした場合、前
記Lが前
記Pの略整数倍となるように、前記開口径Aを調整する、請求項11に記載のシェーディング抑制方法。
【請求項13】
前記アレイ光源と前記アパーチャとの間に配置されている観察物体と前記光源との距離をZとした場合、前
記Lが前
記Pの略整数倍となるように、前記距離Zを調整する、請求項11または12に記載のシェーディング抑制方法。
【請求項14】
複数の光源が2次元に規則的に配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源と、
前記アレイ光源から出射された光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの開口絞りとして機能するアパーチャと、
前記結像レンズで結像された光を検出する光検出部と、を備え、
前記結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での矩形状の採光範囲のうち横方向の長さをL1、縦方向の長さをL2とし、前記横方向に並んでいる前記複数の光源の隣り合う光源間のピッチをP1、前記縦方向に並んでいる前記複数の光源の隣り合う光源間のピッチをP2とした場合、前記L1が前記P1の略整数倍となり、かつ、前記L2が前記P2の略整数倍となるように構成されている、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置、照明装置、及びシェーディング抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の光源をアレイ状に複数配置した照明装置(アレイ光源)が様々な分野で用いられている。例えば、このような照明装置は、半導体ウェハの面内を高速に検査するマクロ検査装置等に使用されている。
【0003】
特許文献1には、選択可能なアポダイゼーションを備えた半導体デバイス検査システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、近年、LED等の光源をアレイ状に複数配置したアレイ光源が様々な分野で用いられている。LED等の光源はスポット光源であり、このようなスポット光源をアレイ状に配置したアレイ光源では、各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有する。このため、アレイ光源を照明装置として用いた場合は、得られる画像にアレイ光源の輝度分布に起因する輝度ムラ(シェーディング)が発生するという問題がある。シェーディングを抑制する方法としては、一般的に、アレイ光源と観察物体との間に拡散板を挟む手法が用いられている。
【0006】
しかしながら、シェーディングを抑制するために拡散板を用いた場合は、次のような問題が発生する。すなわち、アレイ光源と観察物体との間に拡散板を挟んだ場合は、アレイ光源から出射された光が拡散板で吸収されるため吸収ロスが発生する。特に、樹脂を用いて拡散板を構成し、更に光源に紫外光を用いた場合は吸収ロスが顕著になる。また、樹脂を用いて拡散板を構成した場合は、拡散板の経年劣化も問題となる。更に、結像系のNA(Numerical Aperture)が小さい場合には、拡散板により照明の照射角度が増えることでレンズのNA外を通る光の割合が増加するため光のロスが問題となる。
【0007】
上記課題に鑑み本発明の目的は、拡散板を使用することなくシェーディングを抑制することが可能な検査装置、照明装置、及びシェーディング抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる検査装置は、複数の光源がアレイ状に配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源と、前記アレイ光源から出射された光を結像する結像レンズと、前記結像レンズの開口絞りとして機能するアパーチャと、前記結像レンズで結像された光を検出する光検出部と、を備え、前記結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲Lが前記アレイ光源の隣り合う光源間のピッチPの略整数倍となるように構成されている。
【0009】
上記検査装置において、前記アパーチャの開口径をAとした場合、前記採光範囲Lが前記ピッチPの略整数倍となるように、前記開口径Aが調整されていてもよい。
【0010】
上記検査装置において、前記アレイ光源と前記アパーチャとの間に配置されている観察物体と前記光源との距離をZとした場合、前記採光範囲Lが前記ピッチPの略整数倍となるように、前記距離Zが調整されていてもよい。
【0011】
上記検査装置において、前記アレイ光源は、矩形関数型の周期的な輝度分布を有していてもよい。
【0012】
上記検査装置において、前記アレイ光源は、離散的でない連続的な形状の周期的な輝度分布を有していてもよい。
【0013】
上記検査装置において、前記アレイ光源から出射された光の光路上にアポダイゼーションフィルタが設けられていてもよい。
【0014】
上記検査装置において、前記アポダイゼーションフィルタのエッジ部における透過プロファイルの形状が誤差関数で特定される形状を備えていてもよい。
【0015】
上記検査装置において、前記アポダイゼーションフィルタの透過プロファイルの形状が台形型の形状を備えていてもよい。
【0016】
上記検査装置において、前記アポダイゼーションフィルタは、前記アパーチャの位置に配置されて構成されていてもよい。
【0017】
本発明の一態様にかかる照明装置は、複数の光源がアレイ状に配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源を備える照明装置であって、前記アレイ光源の隣り合う光源間のピッチPは、前記照明装置からの光を結像する結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲をLとした場合、前記採光範囲Lが前記ピッチPの略整数倍となるように構成されている。
【0018】
本発明の一態様にかかるシェーディング抑制方法は、複数の光源がアレイ状に配置され、前記各々の光源に対応した周期的な輝度分布を有するアレイ光源と、前記アレイ光源から出射された光を結像する結像レンズと、前記結像レンズの開口絞りとして機能するアパーチャと、を備える光学系におけるシェーディング抑制方法であって、前記結像レンズの開口数NAによって決定される前記アレイ光源の光源面での採光範囲Lが前記アレイ光源の隣り合う光源間のピッチPの略整数倍となるように構成する。
【0019】
上記シェーディング抑制方法において、前記アパーチャの開口径をAとした場合、前記採光範囲Lが前記ピッチPの略整数倍となるように、前記開口径Aを調整してもよい。
【0020】
上記シェーディング抑制方法において、前記アレイ光源と前記アパーチャとの間に配置されている観察物体と前記光源との距離をZとした場合、前記採光範囲Lが前記ピッチPの略整数倍となるように、前記距離Zを調整してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、拡散板を使用することなくシェーディングを抑制することが可能な検査装置、照明装置、及びシェーディング抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1にかかる照明装置を用いた検査装置を説明するための断面図である。
【
図2】シェーディング抑制方法のメカニズムを説明するための図である(本発明の適用なし)。
【
図3】シェーディング抑制方法のメカニズムを説明するための図である(本発明の適用あり)。
【
図4】光源面での採光範囲Lと光源間のピッチPとの比(L/P)とシェーディングとの関係を示すグラフである。
【
図5】実施の形態2で用いられるアポダイゼーションフィルタの構成例を説明するための図である。
【
図6】実施の形態2で用いられるアポダイゼーションフィルタの構成例を説明するための図である。
【
図7】アポダイゼーションフィルタの透過プロファイルの一例を示すグラフである。
【
図8】アポダイゼーションフィルタを用いた場合のシェーディング抑制効果を説明するためのグラフである。
【
図9】検査装置の他の構成例を説明するための断面図である。
【
図10】光源が2次元アレイ状である場合を説明するための図である(本発明の適用なし)。
【
図11】光源が2次元アレイ状である場合を説明するための図である(本発明の適用あり)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる照明装置を用いた検査装置を説明するための断面図である。
図1に示すように、検査装置1は、アレイ光源(照明装置)10、アパーチャ14、結像レンズ16、及び光検出部18を備える。アレイ光源10とアパーチャ14との間には、観察物体12が設けられている。
【0024】
アレイ光源10は、複数の光源11を備える。複数の光源11はアレイ光源10の表面(z軸方向プラス側の面)においてアレイ状(典型的にはライン状)に配置されている。
図1において、各々の光源11間のピッチはPで示している。具体的には、各々の光源11の中心間距離がピッチPに対応している。
【0025】
各々の光源11から出射された光は、観察物体12を観察するための照明光として用いられる。例えば、各々の光源11には可視光や赤外光を放射する光源を用いることができる。また、各々の光源11として、白色光を放射する光源を用いてもよい。例えば、光源11にはLED等の発光素子を用いることができる。
【0026】
また、アレイ光源10は、各々の光源11に対応した周期的な輝度分布を有する。例えば、アレイ光源10は、矩形関数型の周期的な輝度分布(
図2、
図3参照)を有する。
【0027】
アレイ光源10から出射された光は、観察物体12を透過してアパーチャ14へと導入される。
図1では、観察物体12上における焦点位置を符号13で示している。なお、
図1に示す検査装置1では、アレイ光源10から出射された光が観察物体12を透過している構成を示しているが、例えば、
図9に示す検査装置2のように、アレイ光源10から出射された光が観察物体(基板71)の表面72で反射してアパーチャ14へと導入される構成としてもよい。例えば、
図9に示す検査装置2は、基板71を搬送方向に搬送して、基板71の表面72の状態を検査するマクロ検査装置である。
【0028】
図1に示すアパーチャ14は、アレイ光源10から出射された光が通過する開口部15を有し、結像レンズ16の開口絞りとして機能する。アパーチャ14は板状部材で構成されており、板状部材の中央部には光が通過する開口部15が形成されている。アパーチャ14は、板面がアレイ光源10と対向するように配置されている。
図1では、アパーチャ14の開口径(直径)をAとしている。
【0029】
結像レンズ16は、アレイ光源10から出射された光を結像する。具体的には、結像レンズ16は、アパーチャ14を通過した光を光検出部18に結像する機能を有する。なお、
図1では、1つの結像レンズ16を用いて結像系を構成している例を示したが、本実施の形態では複数の結像レンズを用いて結像系を構成してもよい。
【0030】
光検出部18は、結像レンズ16で結像された光を検出する。例えば、光検出部18は、フォトセンサやカメラを用いて構成することができる。また、光検出部18は、フォトダイオードが一列に配列されたラインセンサを用いてもよい。
【0031】
本実施の形態にかかる照明装置を用いた検査装置1では、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lが、アレイ光源10の隣り合う光源11間のピッチPの略整数倍となるように構成している。すなわち、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lとアレイ光源10の隣り合う光源間のピッチPとが、L/P=n±Δn(nは1以上の整数である)の条件を満たすように構成している。このような構成とすることで、拡散板を使用することなくシェーディングを抑制することが可能となる。以下、
図2~
図4を用いて本発明におけるシェーディング抑制のメカニズムについて詳細に説明する。
【0032】
アレイ光源10に起因するシェーディングは、アレイ光源10の光源面における周期的な輝度分布と、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lとの畳み込み積分結果のプロファイルである。具体的には、
図2に示すように、アレイ光源10は光源面において複数の光源11がライン状に配置されており、各々の光源11に対応した矩形関数型の周期的な輝度分布30を有する。また、
図2において、結像レンズ16の開口数NAによって決定される採光範囲L(
図1参照)は、採光範囲21、22で示している。なお、
図2において、採光範囲21、22は同じ大きさであり、採光範囲(破線)22は採光範囲(実線)21をx軸方向に移動させた状態を示している。また、輝度分布30において、結像レンズ16の開口数NAによって決定される採光範囲L(
図1参照)は、採光範囲31、32で示しており、採光範囲31、32は各々の光源11の上をx軸方向に移動する。
【0033】
例えば、各々の光源11のピッチPが十分に小さく、また結像レンズのNAが十分に大きい場合は、多数の光源が採光範囲Lを照らすことになるので、シェーディングの影響は小さい(輝度ムラが少ない)。つまり、結像レンズのNAが十分に大きい場合は採光範囲Lが広くなり、また各々の光源11のピッチPが十分に小さい場合は各々の光源11に対応するピークの数が多くなるので、採光範囲Lを照らす光源11の数が多くなり、シェーディングの影響が小さくなる。
【0034】
具体的に説明すると、光源面での採光範囲Lにおける光源11の数をNとすると、光源11の数Nは、採光範囲LをピッチPで除算した値(L/P)で表すことができる。そして、結像レンズのNAが大きいほど採光範囲Lが長くなるので、
図4に示すグラフのように、シェーディングプロファイルの振幅は1/Nで減衰する。
【0035】
一方で、各々の光源11のピッチPを十分に小さくすることができず、また結像レンズ16のNAを十分に大きくすることができない場合は、採光範囲Lにおける光源11の数が少なくなるので、シェーディングの影響が大きくなる。すなわち、
図2に示すように、採光範囲31、32に対して輝度分布30のピークの数が少ない場合は、シェーディングの影響が大きくなる。この場合は、
図2に示すように、採光範囲31、32がx軸方向に移動すると撮像画像の輝度値33が変化するので、シェーディングの影響が大きくなる。
【0036】
つまり、採光範囲31では輝度分布30のピークの数が3つであるが、採光範囲31がx軸方向に移動すると輝度分布30のピークの数が3つから減少し、採光範囲32では輝度分布30のピークの数が2.5程度となる。このように、
図2に示す場合は、アレイ光源10の光源面における採光範囲21、22がx軸方向に移動した際に、輝度分布30における採光範囲31、32内に存在するピークの数が変化するので、撮像画像の輝度値33も変化する。したがって、シェーディングの影響が大きくなる。
【0037】
本実施の形態では、このようなシェーディングの発生を抑制するために、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lが、アレイ光源10の隣り合う光源11間のピッチPの略整数倍となるように構成している。具体的には、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lとアレイ光源10の隣り合う光源間のピッチPとが、L/P=n±Δn(nは1以上の整数である)の条件を満たすように構成している。
【0038】
図3は、シェーディング抑制方法のメカニズムを説明するための図であり、本発明を適用した場合を説明するための図である。
図3に示す構成においても、アレイ光源10は光源面において複数の光源11がライン状に配置されており、各々の光源11に対応した矩形関数型の周期的な輝度分布30を有する。また、
図3において、結像レンズ16の開口数NAによって決定される採光範囲L(
図1参照)は、採光範囲26、27で示している。また、輝度分布30において、結像レンズ16の開口数NAによって決定される採光範囲L(
図1参照)は、採光範囲36、37で示している。
【0039】
アレイ光源10の光源面での採光範囲Lが光源11間のピッチPの略整数倍となるように構成した場合は、
図3に示すように、採光範囲36、37内に存在する輝度分布30のピークの数が同一となる。このため、採光範囲36、37がx軸方向に移動したとしても、各々の採光範囲における輝度分布30のピークの数は常に同一となるので、撮像画像の輝度値38の変動が小さくなり、シェーディングの影響を抑制することができる。
【0040】
図3に示す例では、採光範囲36における輝度分布30のピークの数は3つである。また、採光範囲37においても輝度分布30のピークの数は3つである。つまり、採光範囲37において輝度分布30のピークを積分した値(採光範囲37において輝度分布30のピークが占める面積に対応する)は3つである。このように、
図3に示す場合は、アレイ光源10の光源面における採光範囲26、27がx軸方向に移動した際に、輝度分布30における採光範囲36、37内に存在するピークの数が常に同一となるので、撮像画像の輝度値38の変動が小さくなる。したがって、シェーディングの影響を抑制することができる。
【0041】
図4は、光源面での採光範囲Lと光源間のピッチPとの比(L/P)とシェーディングとの関係を示すグラフである。L/Pが変化すると、このL/Pの変化に伴いシェーディングの値が周期的に変化する。この現象は、
図2、
図3において採光範囲21、26(結像レンズ16のNAに対応)の大きさが変化すると、採光範囲21、26に含まれる輝度分布30のピークの数が変化することに対応している。そして、
図4に示すように、L/Pの変化(採光範囲の大きさの変化に対応)に伴い、シェーディングの値が周期的に変化するが、この際、シェーディングの値が最低値となる条件がある(
図4では、一例として符号41、42で示している)。このようにシェーディングの値が最低値となる条件は、アレイ光源10の光源面での採光範囲Lが光源11間のピッチPの略整数倍となる場合に対応している。したがって、本実施の形態では、採光範囲Lが光源11間のピッチPの略整数倍となるようにすることで、
図4に示すシェーディングの値が最低値となるようにしている。よって、シェーディングの影響を抑制することができる。
【0042】
採光範囲Lが光源11間のピッチPの略整数倍となるように調整する手法としては、下記の手法が挙げられる。
【0043】
例えば、アレイ光源10に複数の光源11を配置する際に、光源11間のピッチPが、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)の条件を満たすように構成する。ここで、Lは採光範囲であり、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lである。例えば、検査装置や照明装置を設計する際に、結像レンズ16の開口数NAによって決定される採光範囲Lが予め決定されている場合は、この採光範囲Lの値を用いて、光源11間のピッチPを決定することができる。この場合は、予め決定された光源11間のピッチPとなるようにアレイ光源10(照明装置)を製造することで、採光範囲Lが光源11間のピッチPの略整数倍となるようにすることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、結像レンズ16の瞳面に配置されたアパーチャ14の開口径Aを調整するようにしてもよい。アパーチャ14の開口径Aを調整することで採光範囲Lを調整することができる。したがって、アパーチャ14の開口径Aを調整することで、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)の条件を満たすように調整することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、光源11と観察物体12との距離Zを調整するようにしてもよい。光源11と観察物体12との距離Zを調整することで採光範囲Lを調整することができる。したがって、距離Zを調整することで、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)の条件を満たすように調整することができる。
【0046】
このとき本実施の形態では、アパーチャ14の開口径Aおよび距離Zのうちの少なくとも一つを調整することで、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)の条件を満たすように調整してもよい。
【0047】
以上で説明したように、本実施の形態にかかる発明では、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の光源面での採光範囲Lが、アレイ光源10の隣り合う光源11間のピッチPの略整数倍となるように構成している。したがって、拡散板を使用することなくシェーディングを抑制することが可能な検査装置、照明装置、及びシェーディング抑制方法を提供することができる。
【0048】
上述のように、本実施の形態では、アレイ光源10の光源面での採光範囲Lが、光源11のピッチPの略整数倍となるように構成している。換言すると、本実施の形態では、アレイ光源10の光源面での採光範囲Lと光源11のピッチPとが、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)の条件を満たすように構成している。ここで、Δnは0以上の所定の値であり、例えば、本実施の形態ではΔnの値を0.1以下とすることが好ましい。Δnの値が0.1以下である場合は、L/Pは整数以外にも、nの±0.1の範囲を含む。例えば、n=3の場合、略整数倍とは2.9~3.1倍の範囲となる。
【0049】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、実施の形態1で説明した検査装置に加えて、アポダイゼーションフィルタを設けている点が異なる。これ以外の構成については実施の形態1で説明した構成と同様であるので、重複した説明は適宜省略する。
【0050】
実施の形態1で説明した検査装置1では、アレイ光源10の光源面での採光範囲Lが、光源11のピッチPの略整数倍となるように構成する点について述べた。このとき、採光範囲Lが光源11のピッチPの整数倍となるように(すなわち、L/P=n±ΔnにおいてΔn=0になるように、又はΔnが限りなく小さくなるように)することが好ましい。しかし、使用する検査装置によっては、採光範囲Lを光源11のピッチPの整数倍に厳密に合わせることが困難な場合もある。例えば、撮像のたびに観察物体の位置がわずかに変化するような撮像系では、アレイ光源10の見かけ上の光源11のピッチPが一定にならない。また、非テレセントリック光学系の場合には、視野の中央部と端部とで、NA内に採光される採光範囲Lの長さが異なる。このような場合には、採光範囲Lを光源11のピッチPの整数倍に厳密に合わせることが困難であり、シェーディングが悪化してしまう。
【0051】
実施の形態2ではこのような問題を解決するために、アレイ光源から出射された光の光路上にアポダイゼーションフィルタを設けている。アポダイゼーションフィルタは、開口部のエッジ部分の透過率をグラデーションにしたフィルタである。アレイ光源10から出射された光の光路上にアポダイゼーションフィルタを設けることで、アレイ光源10の周期的な輝度分布と、結像レンズ16の開口数NAによって決定されるアレイ光源10の採光範囲Lとのコンボリューション結果をなだらかにすることができる。
【0052】
したがって、採光範囲Lを光源11のピッチPの整数倍に厳密に合わせることが困難な場合であっても、効果的にシェーディングを抑制することができる。すなわち、アポダイゼーションフィルタを設けることで、L/P=n±ΔnにおけるΔnの値が大きくなることを許容することができる。例えば、アポダイゼーションフィルタは、
図1に示したアパーチャ14を用いて構成してもよい。
【0053】
図5、
図6は、アポダイゼーションフィルタの構成例を説明するための図である。
図5に示すアポダイゼーションフィルタ51は、開口部52の周囲(エッジ部)53がグラデーション状となるように構成されている。
図5に示すアポダイゼーションフィルタ51を形成する際は、例えば、光学ガラス基板の表面にクロム等の金属材料をスパッタリング等を用いてグラデーション状に蒸着させることで形成することができる。
【0054】
また、
図6に示すアポダイゼーションフィルタ61は、開口部62の周囲(エッジ部)63が鋸歯状となるように構成されている。
図6に示すアポダイゼーションフィルタ61を形成する際は、薄い金属板をエッチングするなどして微細加工することで形成することができるので、既存のレンズの収差設計に影響を与えることなく、アポダイゼーションフィルタを形成することができる。なお、
図6に示すアポダイゼーションフィルタ61では、開口部62の周囲(エッジ部)63を鋸歯状とした構成例を示したが、例えば、開口部62の周囲(エッジ部)63にピッチとサイズが異なるドットを複数設けてアポダイゼーションフィルタを構成してもよい。
【0055】
図7は、アポダイゼーションフィルタの透過プロファイルの一例を示すグラフである。
図7に示すグラフは開口部81における透過率とエッジ部82、83における透過率を示している。通常のフィルタの場合(アポダイゼーションフィルタではない場合)は、透過プロファイルの形状は、符号85(実線)に示すように矩形関数で特定される形状となる。
【0056】
一方、アポダイゼーションフィルタの場合は、エッジ部82、83における透過プロファイルがなだらかになる。例えば、符号86に示す透過プロファイルでは、アポダイゼーションフィルタの透過プロファイルは台形型である。また、符号87に示す透過プロファイルでは、アポダイゼーションフィルタのエッジ部における透過プロファイルの形状が誤差関数で特定される形状である。
【0057】
このように、台形型や誤差関数型で特定される形状の透過プロファイルを備えるアポダイゼーションフィルタを用いることで、効果的にシェーディングを抑制することができる。なお、アポダイゼーションフィルタの透過プロファイル形状は、誤差関数型(符号87)であることが好ましいが、簡易的に台形型(符号86)の透過プロファイルを備えるアポダイゼーションフィルタを用いてもよい。
【0058】
図8は、アポダイゼーションフィルタを用いた場合のシェーディング抑制効果を説明するためのグラフである。
図8のグラフの横軸はスロープ幅αであり、
図7のグラフのエッジ部83のスロープ幅αに対応している。つまり、スロープ幅αが0に近づくほど、
図7の符号85に示すような矩形関数で特定される透過プロファイル(通常のフィルタの透過プロファイル)に近くなり、この場合は
図8に示すように、シェーディングの影響が大きくなる。
【0059】
図8のグラフにおいてスロープ幅αが大きくなると、台形型の透過プロファイルを備えるアポダイゼーションフィルタ(以下、単に台形型と記載する)、及び誤差関数型の透過プロファイルを備えるアポダイゼーションフィルタ(以下、単に誤差関数型と記載する)において、シェーディングの影響が低下する。その後、誤差関数型では、スロープ幅がα1よりも広くなると、シェーディングの影響はほぼゼロになる。一方、台形型の場合は、スロープ幅αが広くなるにしたがってシェーディングの影響が周期的に変化するが、このとき、スロープ幅αが広くなるにつれてシェーディングの影響が低下する。このため、台形型の場合は、スロープ幅αを十分に広くすることで、シェーディングの影響を効果的に抑制することができる。
【0060】
一例を挙げると、矩形関数型のアパーチャを用いた場合(つまり、アポダイゼーションフィルタを用いない場合)は、L/P=n±Δn(nは1以上の整数)において、Δnは0.1以下とすることが好ましい。一方、アポダイゼーションフィルタを設けた場合は、
図7、
図8に示すスロープ幅αが大きいほど、Δnの値を大きくすることができる。例えば、スロープ幅αを十分に大きくすることができれば、Δnの値を0.9程度まで大きくすることも可能である。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、
図1では、複数の光源11がx軸方向においてライン状に配置されている例を示したが、本発明では、複数の光源がアレイ光源の表面において2次元に配置されていてもよい。この場合も、上記で説明した本発明の原理を用いてシェーディングの影響を抑制することができる。
【0062】
図10、
図11は、光源が2次元アレイ状である場合を説明するための図である。
図10、
図11に示すように、アレイ光源110には光源111が2次元に規則的に配置されている。
図10に示すように、結像レンズの開口数NAによって決定されるアレイ光源110の光源面での採光範囲121が本発明の条件を満たさない場合は、撮像画像にシェーディングが発生する。
【0063】
一方、
図11に示すように、結像レンズの開口数NAによって決定されるアレイ光源110の光源面での採光範囲122が本発明の条件を満たす場合は、撮像画像にシェーディングが発生することを抑制することができる。
図11に示す構成例では、2次元に配置された光源111の横方向および縦方向のそれぞれにおいて、採光範囲122がアレイ光源110の隣り合う光源111間のピッチPの略整数倍となるように構成している。
【0064】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1、2 検査装置
10、110 アレイ光源(照明装置)
11、111 光源
12 観察物体
14 アパーチャ
15 開口部
16 結像レンズ
18 光検出部
21、22、26、27、121、122 採光範囲
30 輝度分布
31、32、36、37 採光範囲
33、38 撮像画像の輝度値
51、61 アポダイゼーションフィルタ
52、62 開口部
53、63 エッジ部