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  • 特許-エアバッグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/203 20060101AFI20221108BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B60R21/203
B60R21/235
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019011775
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117164
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正英
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-170795(JP,A)
【文献】特開2014-065433(JP,A)
【文献】特開2016-002856(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017113108(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の前面に配置されるエアバッグであって、
乗員側パネルと取付口側パネルとが結合され、
乗員側パネルおよび/または取付口側パネルの外面に少なくとも1以上の折り畳まれた保護布が結合されており、
保護布に、展開時に保護布が側部エアバッグに張りつく張りつき部が設けられているエアバッグ。
【請求項2】
張りつき部が樹脂でコーティングされている請求項1に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置のためのエアバッグに関する。詳細には、斜め前方あるいは斜め後方から衝撃力が作用する衝突時に、乗員を保護することができるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突した時の衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、車両へのエアバッグ装置搭載が普及している。エアバッグ装置としては、車両の衝突などの衝撃を受けたときの急激な減速を検知するセンサ、センサからの信号を受けて膨出用の高圧ガスを発生するインフレータ、インフレータからの膨出用の高圧ガスにより、展開、膨張して乗員の衝撃を緩和するエアバッグ、および、エアバッグシステムが正常に機能しているか否かを判断する診断回路を備えている。
【0003】
近年、斜め前方あるいは斜め後方から衝撃力が作用する斜め衝突時に乗員の頭部を保護するエアバッグが開発されている。
特許文献1には、エアバッグの膨張完了時に、膨張遮蔽部において前後方向の端縁側に配置される領域が、車内側に突出して膨張する突出部位を備え、この突出部位は、膨張遮蔽部の領域内において、車内側壁部と車外側壁部とを結合させて構成される閉じ部相互を、閉じ部間の領域を車内側に配置させるようにして、結合させることにより、車内側に突出して配置される構成であるエアバッグ装置が開示されている。この方法によれば、膨張完了時に前後方向の端縁側に配置される領域によって、斜め衝突時に乗員の頭部を的確に保護できる。しかしながら、このエアバッグ装置では、膨張部が増えるので、材料費が増えるとともに使用ガス量も増えてしまう、また、工程も複雑になり、コストアップになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-188056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、斜め衝突時に乗員の頭部を的確に保護でき、材料や使用ガス量の増加を抑えつつ、また、簡単な構造であるため複雑な工程を必要としない前面配置用のエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、乗員の前面に配置されるエアバッグであって、乗員側パネルと取付口側パネルとが結合され、乗員側パネルおよび/または取付口側パネルの外面に少なくとも1以上の折り畳まれた保護布が結合されており、保護布に、展開時に保護布が側部エアバッグに張りつく張りつき部が設けられているエアバッグに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、斜め衝突時に乗員の頭部を的確に保護でき、材料や使用ガス量の増加を抑えつつ、また、簡単な構造であるため複雑な工程を必要としない前面配置用のエアバッグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態であるエアバッグの設置構造を示す模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態であるエアバッグの展開状態を段階的に示す模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態であるエアバッグが膨張を完了させた状態を示す模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態であるエアバッグの保護布との結合位置を説明する模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエアバッグは、乗員の前面に配置されるエアバッグであって、乗員側パネルと取付口側パネルとが結合され、乗員側パネルおよび/または取付口側パネルの外面に少なくとも1以上の折り畳まれた保護布が結合されており、保護布には、展開時に保護布が側部エアバッグに張りつく張りつき部が設けられている。
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、図1では、乗員の前面に配置される前面配置用エアバッグ(以後、単にエアバッグともいう)の設置構造の一例を示している。エアバッグ1は折り畳まれてエアバッグカバー5内に収納されており、エアバッグカバー5は、膨出用ガスを噴出するインフレータ4、エアバッグ1、保護布2を含む部品を覆うようにして、ステアリング取付具に固定されている。保護布2は、エアバッグ1の側部側外面に結合され、エアバッグ1と共に折り畳まれている。なお、エアバッグ1は、インフレータ設置用開口部を備えた取付口側パネル6と、乗員側パネル7とを向い合わせにし、それぞれの周縁部を結合してなる(図3参照)。
【0011】
本発明のエアバッグ1は、取付口側パネル6および/または乗員側パネル7の外面に保護布2が結合されており、エアバッグ1に結合された保護布2の収納方法は、ロール状に巻いて折り畳んでも、ジャバラ状に折り畳んでもよい。ロール状に折り畳む場合には、図1図2に例示するように、エアバッグ1に沿わせながらエアバッグ1の中央に向かって折り曲げ、巻くようにすれば、展開しやすくなり好ましい。
【0012】
図2は、エアバッグ1の展開状態の一例を示すものであり、展開状態を段階的に示している。図2の例では、保護布2は取付口側パネル6の外面に結合されている。
図2(A)は、エアバッグ1の展開前の状態を示している。図2(B)は、エアバッグ1の展開初期を示し、インフレーター4からガスが噴出し始め、エアバッグ1が膨張し始める。図2(C)(D)(E)は、エアバッグ1の展開中期を示し、エアバッグ1が徐々に膨張し、ロール部9が徐々に解かれ、また、エアバッグ1と共にロール状に巻かれた保護布2が徐々に展開していく状態である。なお、取付口側パネル6には、ガスを逃がすためのベントホール11が設けられている。図2(F)は、エアバッグ1の展開終期を示し、エアバッグ1の展開が完了した状態であるが、保護布2の展開は完了していない。図2(G)は、エアバッグ1の展開終期を示し、保護布2の展開も完了し側部エアバッグ側に広がる状態である。
【0013】
そして、エアバッグ1が展開を完了した状態を、図3に例示している。保護布2の一方の端部が側部エアバッグ3まで伸び、保護布2の張りつき部8が張りついている状態である。保護布2が図のように張りつくことによって、側部エアバッグ3と前面配置用エアバッグ1との隙間を少なくし乗員の頭部10を保護するようになる。例えば、乗員の頭部10が斜めに移動した場合でも、側部エアバッグ3と前面配置用エアバッグ1との隙間に入り込むことを抑制し乗員の頭部10を保護することができる。なお、張りつく時間は長時間でなくても良く、乗員の衝突するタイミングに張りついていればよい。
【0014】
保護布2は、乗員側パネル7および/または取付口側パネル6の外面に結合させることができる。取付口側パネル6に保護布2を結合させる場合、側部エアバッグ3側に展開させやすい面で、パネルの中心よりも側部エアバッグ3側(図4(a)の網掛け部)であると好ましい。乗員側パネル7に保護布2を結合させる場合は、側部エアバッグ3側の3分の1の範囲(図4(b)の網掛け部)に結合させると側部エアバッグ3側に展開させやすい。また、保護布2は、乗員側パネル7と取付口側パネル6を結合する外周縫製部で結合させても構わないし、取付口側パネル6と取付口補強布(図示せず)とを縫製する取付口縫製部で結合させても構わない。
【0015】
保護布2の大きさは、乗員を確実に保護可能であるため頭部と同程度もしくは長い方が良く、また、コスト面も考慮すると、保護布2の幅は200~500mmが好ましく、250~350mmがより好ましい。また、側部エアバッグ3に張りつく張りつき部8の大きさは、保護布2が張りつく力のことを考慮すると、30000~105000mmが好ましく、50000~70000mmがより好ましい。
【0016】
上述した実施の形態では、保護布2が1つの例を説明したが、保護布2を複数設置しても良い。
【0017】
保護布2には、展開時に保護布2が側部エアバッグ3に張りつく張りつき部8が設けられている。張りつき部8は、保護布2の側部エアバッグ3側の端部に、保護布2とは別の部品を張りつき部8として保護布2に結合してもよいし、保護布2自体を張りつく材料にし、保護布2の側部エアバッグ3側の端部を張りつき部8にしても良い。張りつき部8に使用される材料は、張りつき部8表面に摩擦力があり、側部エアバッグ3に張りつくものであれば良く、例えば、布帛、マジックテープ(登録商標)が挙げられる。
【0018】
保護布2に使用される材料は、布帛が挙げられ、例えば、織物、編物、不織布などの何れであってもよい。織物の場合は、平織、朱子織、綾織、パナマ織、袋織などがあり、編物の場合は、経編、丸編などがあるが、布帛の伸度、強度の点で織物が好ましく、更に平織が好ましい。
布帛は、樹脂がコーティングされたコート布でも、樹脂がコーティングされていないノンコート布であっても良いが、特に張りつき部8を構成する布帛は、摩擦力が大きいことからコート布が好ましい。
【0019】
樹脂がコーティングされたコート布を用いる場合、コーティングする樹脂としては、例えばクロロプレンゴム、ハイパロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等のゴム類、または塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂類があり、これらを単独または併用して使用される。摩擦力を大きくできることからタック性のある樹脂を使用すると好ましい。
【0020】
布帛に用いる繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミド、及び芳香族エーテルとの共重合体などに代表される芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、パラフェニレンサルフォン、ポリサルフォンなどのサルフォン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維等が採用される。場合によっては、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維などの無機繊維を単独または併用して使用してもよい。
【0021】
前面配置用エアバッグ1に用いる布帛は、特に限定されないが、保護布2と同様の布帛を使用することが好ましい。
側部エアバッグ3に用いる布帛は、特に限定されないが、保護布2と同様の布帛を使用することができる。
【0022】
本実施形態では、取付口側パネル6と、乗員側パネル7の2つのパネルでエアバッグ1を形成する例を説明したが、本発明の性能を満足すればよく、エアバッグを形成するパネルの形状や数に特に制限はない。
【0023】
なお、パネルの結合は、縫製、接着、溶着、製織、製編あるいはこれらの併用など、いずれの方法によってもよい。なかでも、コスト面や工数が短いという点により、縫製によって結合することが好ましい。
【0024】
エアバッグを収納する際の折り畳みは、運転席用バッグに用いられることの多い、中心から左右および上下対称の屏風折り、あるいはエアバッグの外周から中心に向かって多方位から押し縮める多軸折り、助手席用バッグに用いられることの多いロール折り、蛇腹折り、屏風状のつづら折り、あるいはこれらを併用することができる。
本発明のエアバッグは、運転席用および助手席用などの前面配置用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 エアバッグ
2 保護布
3 側部エアバッグ
4 インフレータ
5 エアバッグカバー
6 取付口側パネル
7 乗員側パネル
8 張りつき部
9 ロール部
10 頭部
11 ベントホール
図1
図2
図3
図4