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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】鉄まくらぎ
(51)【国際特許分類】
   E01B 3/26 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
E01B3/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019012077
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117990
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】菅村 公平
(72)【発明者】
【氏名】坂田 哲郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-179601(JP,A)
【文献】特開昭63-078901(JP,A)
【文献】特開平06-158602(JP,A)
【文献】特開平07-138903(JP,A)
【文献】特開2016-008487(JP,A)
【文献】特開昭55-108501(JP,A)
【文献】特開2016-183468(JP,A)
【文献】実開昭60-120001(JP,U)
【文献】特開平08-169022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条が締結される上面板と、前記上面板の前縁部並びに後縁部からそれぞれ垂下状に延設された前面板並びに後面板と、前記上面板の左側縁部並びに右側縁部からそれぞれ垂下状に延設された左側面板並びに右側面板と、前記上面板の下方に形成されたバラスト充填空間と、を備え、
道床に敷設したときの前記上面板の下面に弾性合成樹脂製若しくは天然ゴム製の平板形状の緩衝材を配置した鉄まくらぎ。
【請求項2】
前記バラスト充填空間の天井面に複数の前記緩衝材を分割配置した請求項1記載の鉄まくらぎ。
【請求項3】
前記緩衝材を接着手段により前記バラスト充填空間の天井面に貼着した請求項1または2記載の鉄まくらぎ。
【請求項4】
前記緩衝材の耐荷重(弾性率)が110t/cm~1000t/cmである請求項1~の何れかの項に記載の鉄まくらぎ。
【請求項5】
平板形状をした前記緩衝材の厚さが20mm~30mmである請求項の何れかの項に記載の鉄まくらぎ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の軌条(レール)を支持するために使用される鋼製の枕木、所謂、鉄まくらぎに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールを敷設する際に使用される枕木は、従来の木製の枕木のほか、コンクリート製枕木、鋼製枕木あるいはコンクリートと鋼材とを組み合わせたものが使用されているが、製鉄所の構内鉄道や貨物列車用鉄道など、レールに大荷重が加わる鉄道においては鋼製枕木(鉄まくらぎ)が多用されている。
【0003】
図8に示すように、従来の鉄まくらぎ80は、軌条(図示せず)が締結される上面板81と、上面板81の前縁82並びに後縁83からそれぞれ垂下状に延設された前面板84並びに後面板85と、を備え、垂直断面が倒立凹形状をなしている。道床に敷設された鉄まくらぎ80においては、上面板81の下方に形成されたバラスト充填空間86内にバラストBが充填されている。
【0004】
一方、本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献1に記載された「枕木」がある。特許文献1には、底部が開口した横断面逆凹字状の溝形に形成されるとともに上面の両端近傍にそれぞれレール締結部が設けられた金属製の枕木本体の凹溝部を、その長手方向に3区画に区分して、各レール締結部に対応する両端の区画にそれぞれコンクリートを充填し、硬化したコンクリートにより、枕木本体の両端部の底部開口を閉塞する底面部を構成した枕木が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2945366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すように、従来の鉄まくらぎ80においては、バラストBの締固め作業時の作業品質のバラつきにより、バラスト充填空間86全体にバラストBが充填されず、バラスト充填空間86の上方部分(上面板81近傍)に空洞部87が発生することがある。
【0007】
鉄まくらぎ80の内部に空洞部87が存在すると、列車通過時の繰り返し荷重により鉄まくらぎ80に金属疲労が発生したり、空洞部87内に存在する高湿空気が上面板81の下面に接触して腐食を誘発したりすることがある。
【0008】
一方、特許文献1に記載された「枕木」は、鉄道の踏切部分のように、メンテナンス頻度を少なくしたい場所には好適に採用することができるが、重量が大であるため、搬送性や施工性が悪いという問題がある。また、複数種類の鋼製部材とコンクリートとを使用した複雑な構造であるため、製造に多大な手間と時間を要し、材料コストも大である。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、敷設作業時の施工性に優れ、施工後のバラスト充填空間内の腐食を防止することができ、長寿命で耐久性にも優れた、鉄まくらぎを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄まくらぎは、軌条が締結される上面板と、前記上面板の前縁部並びに後縁部からそれぞれ垂下状に延設された前面板並びに後面板と、前記上面板の左側縁部並びに右側縁部からそれぞれ垂下状に延設された左側面板並びに右側面板と、前記上面板の下方に形成されたバラスト充填空間と、を備え、
道床に敷設したときの前記上面板の下面に弾性合成樹脂製若しくは天然ゴム製の緩衝材を配置したことを特徴とする。
【0011】
前記鉄まくらぎにおいては、前記緩衝材を平板形状とすることができる。
【0012】
前記鉄まくらぎにおいては、前記バラスト充填空間の天井面に複数の前記緩衝材を分割配置することができる。
【0013】
前記鉄まくらぎにおいては、前記緩衝材を接着手段により前記バラスト充填空間の天井面に貼着することができる。
【0014】
前記鉄まくらぎにおいては、前記緩衝材の耐荷重(弾性率)が110t/cm~1000t/cmであることが望ましい。
【0015】
前記鉄まくらぎにおいては、平板形状をした前記緩衝材の厚さが20mm~30mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、敷設作業時の施工性に優れ、施工後のバラスト充填空間内の腐食を防止することができ、長寿命で耐久性にも優れた、鉄まくらぎを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態である鉄まくらぎを示す一部省略平面図である。
図2図1中の矢線X方向から見た鉄まくらぎの一部省略正面図である。
図3図1中のY-Y線における一部省略垂直断面図である。
図4図1中のZ-Z線における一部省略垂直断面図である。
図5図1に示す鉄まくらぎにバラストを充填した状態を示す一部省略垂直断面図である。
図6】従来の鉄まくらぎにバラストを充填した状態を示す一部省略垂直断面図である。
図7】本発明のその他の実施形態である鉄まくらぎを示す一部省略垂直断面図である。
図8】従来の鉄まくらぎを示す一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図7に基づいて、本発明の実施形態である鉄まくらぎ100,200について説明する。
【0019】
初めに、図1図6に基づいて、鉄まくらぎ100について説明する。図1図4に示すように、本実施形態に係る鉄まくらぎ100は、上面板1と、前面板2並びに後面板3と、上左側面板6並びに右側面板7と、緩衝材10と、を備えている。上面板1は、その上に2本の軌条R,Rが締結される部分である。前面板2並びに後面板3は、上面板1の前縁部1a並びに後縁部1bからそれぞれ斜め垂下状に延設されている。左側面板6並びに右側面板7は上面板1の左側縁部4並びに右側縁部5からそれぞれ斜め垂下状に延設されている。
【0020】
また、鉄まくらぎ100を道床に敷設したとき、上面板1の下方に形成されるバラスト充填空間8の天井に位置する上面板1の下面1cに弾性合成樹脂製の緩衝材10が配置されている。緩衝材10は接着剤を介して上面板1の下面1cに貼着されている。
【0021】
鉄まくらぎ100においては、緩衝材10の材質は合成樹脂の一つであるSBR(スチレンブタジエンゴム)であり、緩衝材10の外形は平板形状をなしている。緩衝材の厚さは20mm~30mmである。緩衝材10の耐荷重(弾性率)が110t/cmであり、耐熱温度は150℃である。なお、緩衝材10の耐荷重はレール下パッド(軌道パッド)の耐荷重と同程度としている。
【0022】
図3図5に示すように、鉄まくらぎ100においては、上面板1の下面1cに緩衝材10を配置しているので、バラスト充填空間8にバラストBを充填したとき、図8に示す従来の鉄まくらぎ80において発生していたバラスト充填空間86の上方部分の空洞部87(バラストBの未充填部分)が発生せず、横抵抗力が向上する。
【0023】
ここで、図4に示す鉄まくらぎ100並びに図6に示す従来の鉄まくらぎ80について、搗き固め作業に要する時間の検証結果を説明する。図4に示す状態にある鉄まくらぎ100のバラスト充填空間8にバラストBを充填し、図5に示すようにバラスト充填空間8がバラストBで満たされた状態になるまでの搗き固め作業時間を計測すると2分~2分15秒程度であった。
【0024】
一方、前述の搗き固め作業と同じ作業条件にて、図6に示すように、金属部分が鉄まくらぎ100と同じ形状をなす従来の鉄まくらぎ80のバラスト充填空間86がバラストBで満たされるまでの搗き固め作業時間を計測すると5分55秒~6分15秒であった。
【0025】
このように、本実施形態の鉄まくらぎ100は、従来の鉄まくらぎ8に比べ、搗き固め作業に要する時間が半分以下であるため、施工性が大幅に向上し、工期短縮も実現することができる。
【0026】
また、図3図4に示すように、鉄まくらぎ100においては、上面板1の下面1cが弾性合成樹脂製の緩衝材10で覆われるため、バラスト充填空間内に存在する、湿度を含む空気との接触がなくなり、下面1c部分の腐食を防止することができる。
【0027】
鉄まくらぎ100においては弾力性を有する緩衝材10がバラストBの凹凸に追従し、接触面が増加するため、荷重をバラストBに十分に伝達することができる。また、緩衝材10の耐荷重(弾性係数)が110t/cm程度であるため、適度な反発力を発揮し、図2図3に示す軌条締結部9付近に撓みが生じ難く、亀裂発生を防止することができる。
【0028】
さらに、上面板1の下面1cに緩衝材10が貼着されていることにより、繰返しの荷重に対しても上面板1が塑性化しないため、鉄まくらぎ100は、長寿命であり、耐久性に優れている。なお、緩衝材10の材質はSBR(スチレンブタジエンゴム)に限定しないので、同程度の耐荷重、耐熱性を有する弾性合成樹脂や天然ゴムなどを採用することもできる。
【0029】
次に、図7に基づいて、本発明のその他の実施形態である鉄まくらぎ200について説明する。なお、鉄まくらぎ200の構成部分において前述した鉄まくらぎ100の構成部分と共通する部分については図1図5中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0030】
図7に示すように、鉄まくらぎ200においては、上面板1の下面1cに複数の緩衝材11,12,13を分割配置している。緩衝材11,12,13は接着剤を介して上面板1の下面1cに貼着されている。鉄まくらぎ200の左右方向(長手方向)に隣り合う緩衝材11,12の間並びに緩衝材12,13の間にはそれぞれ隙間Sが設けられている。また、上面板1において、隙間S,Sの上方に位置する部分にはそれぞれ貫通孔14,14が開設されている。
【0031】
鉄まくらぎ200においては、上面板1に貫通孔14が開設されているため、搗き固め作業を行うときに、上面板1の上方から貫通孔14を通して、バラスト充填空間8内のバラストの充填状態を目視確認することができる。
【0032】
また、鉄まくらぎ200においては、複数の緩衝材11,12,13を分割配置しているため、老朽化などにより、鉄まくらぎ200を撤去するとき、鉄まくらぎ200を切断・分割して撤去することができる。
【0033】
鉄まくらぎ200においては、3枚の緩衝材11,12,13を分割配置しているが、緩衝材の配置枚数や配置間隔は限定するものではない。鉄まくらぎ200におけるその他の部分の機能、作用効果については、図1図5に示す鉄まくらぎ100と同様である。
【0034】
なお、図1図7に基づいて説明した鉄まくらぎ100,200は、本発明に係る鉄まくらぎを例示するものであり、本発明に係る鉄まくらぎは前述した鉄まくらぎ100,200に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る鉄まくらぎは、鉄道の軌条(レール)を支持するための建設資材として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 上面板
1a 前縁部
1b 後縁部
1c 下面
2 前面板
3 後面板
4 左側縁部
5 右側縁部
6 左側面板
7 右側面板
8 バラスト充填空間
9 軌条締結部
10,11,12,13 緩衝材
14 貫通孔
100,200 鉄まくらぎ
B バラスト
R 軌条(レール)
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8