(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】可溶化剤およびその使用方法、並びに可溶化組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20221108BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20221108BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221108BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20221108BHJP
C11B 5/00 20060101ALI20221108BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221108BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20221108BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
A61K8/39
A61Q19/10
A61K8/46
C11B5/00
A61K8/86
A61Q13/00 102
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019013168
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田井治 淑美
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320883(JP,A)
【文献】特開平09-301844(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00
A61K 8/39
A61Q 19/10
A61K 8/46
C11B 9/00
C11B 5/00
A61K 8/86
A61Q 13/00
A61Q 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
d-リモネン、リナロール及びシトロネラオイルから選択される疎水性化合物を含む油性成分を水に可溶化する可溶化剤であり、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有
し、前記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75
/25~90
/10の範囲で含有し、且つ、前記非イオン性界面活性剤(A)と前記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有する可溶化剤。
【請求項2】
前記油性成分の全質量に対す
る前記疎水性化合物の配合比が50%~100%の範囲である、請求項
1に記載の可溶化剤。
【請求項3】
前記油性成分は香料である、請求項
1又は
2に記載の可溶化剤。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有する可溶化剤を用いて、油性成分を水に可溶化するための可溶化剤の使用方法であって、前記可溶化剤が、前記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75
/25~90
/10の範囲で含有し、且つ、前記非イオン性界面活性剤(A)と前記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有してなり、前記油性成分が、
d-リモネン、リナロール及びシトロネラオイルから選択される疎水性化合物を含有する可溶化剤の使用方法。
【請求項5】
前記油性成分の全質量に対す
る前記疎水性化合物の配合比が50%~100%の範囲である、請求項
4に記載の可溶化剤の使用方法。
【請求項6】
前記可溶化剤と前記油性成分とを水中に共存させることを含む、請求項
4又は
5に記載の可溶化剤の使用方法。
【請求項7】
水中における前記油性成分と、前記非イオン性界面活性剤(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の合計との配合比が、質量比で、油性成分/(A)+(B)=1/0.7~1/3の範囲である、請求項
6に記載の可溶化剤の使用方法。
【請求項8】
前記油性成分が香料である、請求項
4~
7のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用方法。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤(A)、アニオン性界面活性剤(B)、油性成分及び水を含有し、前記油性成分が前記水に可溶化されている可溶化組成物であって、前記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75
/25~90
/10の範囲で含有し、前記非イオン性界面活性剤(A)と前記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有し、前記油性成分として、
d-リモネン、リナロール及びシトロネラオイルから選択される疎水性化合物を少なくとも含有する可溶化組成物。
【請求項10】
前記油性成分の全質量に対す
る前記疎水性化合物の配合比が50%~100%の範囲である、請求項
9に記載の可溶化組成物。
【請求項11】
前記油性成分が香料である、請求項
9又は
10に記載の可溶化組成物。
【請求項12】
前記油性成分と、前記非イオン性界面活性剤(A)及び前記アニオン性界面活性剤(B)の合計との配合比が、質量比で、油性成分/(A)+(B)=1/0.7~1/3の範囲であり、前記可溶化組成物の全質量に対する前記油性成分の配合比が0.5~5質量%の範囲である、請求項
9~
11のいずれか1項に記載の可溶化組成物。
【請求項13】
前記可溶化組成物が芳香剤である、請求項
9~
12のいずれか1項に記載の可溶化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化剤およびその使用方法、並びに可溶化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤や化粧品等において、香料等の油性成分の分離を防止するための水への可溶化剤としては、多くのものが検討され、提案されている。例えば、分岐アルキル基又はアルケニル基を有する高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物(特許文献1を参照)、フェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物(特許文献2を参照)、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びトリグリセリドのエチレンオキサイド付加物の配合物(特許文献3を参照)、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物と硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物(特許文献4を参照)、特定の非イオン性界面活性剤と特定のアニオン性界面活性剤の特定範囲での組み合わせ(特許文献5を参照)、アニオン性界面活性剤を高配合比で含む可溶化剤(特許文献6を参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭54-132491号公報
【文献】特開昭57-70197号公報
【文献】特表2003-534431号公報
【文献】特開平9-301844号公報
【文献】特開2006-320883号公報
【文献】国際公開第2016/157459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで提案された可溶化剤には、油性成分の中でも疎水性の高い油性成分の水への可溶化に特化して検討されたものはなく、特定の油性成分に対しては可溶化性能を発揮するが、それよりも疎水性の高い油性成分に対しては可溶化できないか、可溶化できたとしても可溶化後の安定性が充分ではないことがわかった。
【0005】
本発明は、疎水性の高い油性成分を水に可溶化することができるだけでなく、広い温度範囲や激しい温度変化、更には光照射に対しても安定的に可溶化状態を持続させることができる可溶化剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記可溶化剤の使用方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記可溶化剤を含有する可溶化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、疎水性の高い油性成分の可溶化に特化して鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一側面によると、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有する可溶化剤であって、前記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75/25~90/10の範囲で含有し、且つ、前記非イオン性界面活性剤(A)と前記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有する可溶化剤が提供される。
【0008】
一形態において、上記可溶化剤は、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性化合物を含む油性成分を水に可溶化するために用いられる。上記疎水性化合物におけるLogPは、1以上6以下であってよく、2.5以上6以下であってよい。
【0009】
他の形態において、上記油性成分の全質量に対するLogPが1以上の上記疎水性化合物の配合比は、50%~100%の範囲であってよく、60%~100%の範囲であってよい。
【0010】
他の形態において、上記可溶化剤により水に可溶化される上記油性成分は、香料であってよい。
【0011】
他の形態において、上記油性成分に含有されるLogPが1以上の上記疎水性化合物は、d-リモネン、シトロネラオイル、リナロール、シトロネラール、シトロネロール、イソオイゲノール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0012】
また、本発明の他の側面によると、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有する可溶化剤を用いて、油性成分を水に可溶化するための可溶化剤の使用方法であって、上記可溶化剤が、上記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75/25~90/10の範囲で含有し、且つ、上記非イオン性界面活性剤(A)と上記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有してなり、上記油性成分が、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性化合物を含有する可溶化剤の使用方法が提供される。
【0013】
一形態において、上記可溶化剤の使用方法において可溶化される上記油性成分に含有されるLogPが1以上の上記疎水性化合物は、LogPが1以上6以下であってよく、2.5以上6以下であってよい。
【0014】
他の形態において、上記可溶化剤の使用方法により可溶化される上記油性成分は、その全質量に対し、LogPが1以上の上記疎水性化合物を50%~100%の範囲で含有してよく、60%~100%の範囲で含有してよい。
【0015】
他の形態において、上記可溶化剤の使用方法は、上記可溶化剤と上記油性成分とを水中に共存させることを含んでよい。
【0016】
他の形態において、上記水中における上記油性成分と、非イオン性界面活性剤(A)及びアニオン性界面活性剤(B)の合計との配合比は、質量比で、油性成分/(A)+(B)=1/0.7~1/3の範囲であってよく、1/1~1/2の範囲であってよく、1/1~1/1.5の範囲であってよい。
【0017】
他の形態において、上記可溶化剤の使用方法により可溶化される上記油性成分は、香料であってよい。
【0018】
他の形態において、上記可溶化剤の使用方法により可溶化される上記油性成分に含有されるLogPが1以上の上記疎水性化合物は、d-リモネン、シトロネラオイル、リナロール、シトロネラール、シトロネロール、イソオイゲノール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトラールからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0019】
また、本発明の他の側面によると、非イオン性界面活性剤(A)、アニオン性界面活性剤(B)、油性成分及び水を含有し、上記油性成分が上記水に可溶化されている可溶化組成物であって、上記非イオン性界面活性剤(A)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を、質量比で(a1)/(a2)=75/25~90/10の範囲で含有し、上記非イオン性界面活性剤(A)と上記アニオン性界面活性剤(B)を、質量比で(A)/(B)=70/30~90/10の範囲で含有し、上記油性成分として、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性化合物を少なくとも含有する可溶化組成物が提供される。
【0020】
一形態において、上記可溶化組成物に含有されるLogPが1以上の上記疎水性化合物は、LogPが1以上6以下であってよく、2.5以上6以下であってよい。
【0021】
他の形態において、上記可溶化組成物は、上記油性成分の全質量に対するLogPが1以上の上記疎水性化合物の配合比が、50%~100%の範囲であってよく、60%~100%の範囲であってよい。
【0022】
他の形態において、上記可溶化組成物に含有される上記油性成分は、香料であってよい。
【0023】
他の形態において、上記可溶化組成物に含有されるLogPが1以上の上記疎水性化合物は、d-リモネン、シトロネラオイル、リナロール、シトロネラール、シトロネロール、イソオイゲノール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトラールからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0024】
他の形態において、上記可溶化組成物に含有される上記油性成分と、非イオン性界面活性剤(A)及びアニオン性界面活性剤(B)の合計との配合比は、質量比で、油性成分/(A)+(B)=1/0.7~1/3の範囲であってよく、1/1~1/2の範囲であってよく、1/1~1/1.5の範囲であってよい。
【0025】
他の形態において、上記可溶化組成物の全質量に対する上記油性成分の配合比は、0.5~5質量%の範囲であってよく、0.8~4質量%の範囲であってよい。
【0026】
他の形態において、上記可溶化組成物は芳香剤であってよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る可溶化剤は、疎水性の高い油性成分を水に可溶化することができるだけでなく、広い温度範囲や激しい温度変化、更には光照射に対しても安定的に可溶化状態を持続させることができる。このため、本発明により、芳香剤や化粧品を含む幅広い製品に使用可能な油性成分の選択性を広げることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[可溶化剤およびその使用方法]
本発明の実施形態に係る可溶化剤は、疎水性の高い油性成分を水に可溶化するために好適に用いられる可溶化剤であり、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有し、非イオン性界面活性剤(A)として、少なくともポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を含有する。
【0029】
まず、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)について説明する。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)は、例えば、下記一般式(1)で示される化合物であってよい。
R-O-{(EO)l(PO)m}-H (1)
一般式(1)において、Rは、アルキル基およびアルケニル基から選ばれた少なくとも1種の炭化水素基を表す。
EOは、エチレンオキサイド単位を表し、POは、プロピレンオキサイド単位を表す。
m、lは、それぞれエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの平均重合度を表し、mは0~5であり、l+mは7~25を満たす。
【0030】
一般式(1)について更に詳細に説明する。
炭化水素基Rは、アルキル基またはアルケニル基のいずれでもよく、直鎖構造および分岐構造のいずれでもよい。この炭化水素基Rは、炭素数8~16個の炭化水素基が全体の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることが更に好ましい。
【0031】
炭化水素基Rの全体に占める炭素数16超の炭化水素基が多いために、炭素数8~16個の炭化水素基が炭化水素基R全体に占める割合が90質量%未満の場合は、可溶化剤を使用して可溶化組成物が得られたとしても、低温安定性に問題を生じやすく、白濁しやすい傾向が見られる場合がある。逆に、炭化水素基Rの全体に占める炭素数8未満の炭化水素基が多いために、炭素数8~16個の炭化水素基が炭化水素基Rの全体に占める割合が90質量%未満の場合は、可溶化能力が低くなる傾向が見られる場合がある。
【0032】
一般式(1)中のEOおよびPOは、それぞれ、エチレンオキサイドに由来しそのエポキシ基が開環して得られる2価の構造単位であるエチレンオキサイド単位と、プロピレンオキサイドに由来しそのエポキシ基が開環して得られる2価の構造単位であるプロピレンオキサイド単位とを意味する。また、(EO)l(PO)mの重合様式については、ブロック重合、ランダム重合、交互重合のいずれの様式であってもよく、これらの重合様式が混合されていてもよい。
【0033】
一般式(1)中のm、lは、上述の通り、それぞれエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの平均重合度を表す。mは0~5であり、好ましくは0~3.5である。mが5以下であることは、プロピレンオキサイド単位の占める割合が大きくなることを抑制し、疎水性が高くなりすぎることを抑制する観点から好ましい。l+mは7~25であり、好ましくは7~20であり、さらに好ましくは7~15である。l+mが7以上であることは、高温安定性の観点から好ましい。一方、l+mが25以下であることは、低温安定性の観点から好ましい。なお、本発明において、高温安定性における高温とは、例えば、40℃~50℃を意味する。また、低温安定性における低温とは、例えば、-5℃~5℃を意味する。
【0034】
このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンイソドデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン第2級アルキル(C12~15)エーテル、ポリオキシエチレン第2級アルキル(C10~12)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソドデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン第2級アルキル(C12~15)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン第2級アルキル(C10~12)エーテル等を挙げることができる。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記例示において括弧で示した部分は、その直前に記載したアルキル基の炭素数を示す。
【0035】
次に、ポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)について説明する。
ポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)は、ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油にアルキレンオキサイドを反応させて得られる非イオン性界面活性剤である。
【0036】
硬化ヒマシ油の硬化度については、特に限定はなく、完全に硬化(水素添加)されたものでもよく、部分的に硬化されたものでもよい。
【0037】
上記反応に用いるアルキレンオキサイドの種類については、特に限定はないが、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが好ましい。また、アルキレンオキサイドを2種類以上使用する場合、その重合様式については、ブロック重合、ランダム重合、交互重合のいずれの様式であってもよく、これらの重合様式が混合されていてもよい。
【0038】
ポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)において、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの平均重合度を、それぞれnおよびpとする時、n+pは好ましくは35~120であり、さらに好ましくは35~80、特に好ましくは40~80である。n+pが35以上であることは、高温安定性の観点から好ましい。一方、n+pが120以下であることは、低温安定性の観点から好ましい。また、pは好ましくは0~15であり、さらに好ましくは0~10である。pが15以下であることは、プロピレンオキサイド単位の占める割合が大きくなることを抑制し、疎水性が高くなりすぎることを抑制する観点から好ましい。
【0039】
このようなポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヒマシ油等を挙げることができる。これらのポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
次に、アニオン性界面活性剤(B)について説明する。
アニオン性界面活性剤(B)は、硫酸エステル型界面活性剤および/またはスルホン酸型界面活性剤である。アニオン性界面活性剤(B)の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル(またはアルケニル)硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル硫酸エステル塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキル(またはアルケニル)スルホコハク酸塩、アシルイセチオン酸塩等を挙げることができる。アニオン性界面活性剤(B)としては、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等が好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等がさらに好ましい。これらのアニオン性界面活性剤(B)は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、ここでアニオン性界面活性剤(B)が塩の場合は、アルカリ金属塩および/またはトリエタノールアミン塩を示す。また、アニオン性界面活性剤(B)中に含まれるアルキル基、アルケニル基、アシル基の有機基は、直鎖構造でも分岐構造でもよい。アルキル基、アルケニル基、アシル基の炭素数は8~18が好ましい。
【0041】
本発明の実施形態において、非イオン性界面活性剤(A)であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)およびポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)の質量比(a1)/(a2)は、75/25~90/10の範囲にあり、且つ、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)の質量比(A)/(B)は、70/30~90/10の範囲にある。本発明の実施形態に係る可溶化剤は、後述する疎水性の高い油性成分、具体的には、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性を発現する疎水性化合物(以下、単に「疎水性化合物」ともいう。)を可溶化するための可溶化剤として好適に用いられる。疎水性の高い油性成分を水に可溶化することができ、且つ広い温度範囲で安定的に可溶化状態を持続させるためには、上記に示した2つの質量比である(a1)/(a2)と(A)/(B)とが上記範囲にあることが極めて重要である。
【0042】
本発明の一形態において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)およびポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)の質量比率(a1)/(a2)は、より好ましくは75/25~86/14の範囲にある。また、本発明の他の形態において、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)の質量比(A)/(B)は、より好ましくは70/30~81/19の範囲にある。
【0043】
本発明の実施形態に係る可溶化剤により水に可溶化される油性成分について説明する。
油性成分とは、水に不溶性または難溶性の可燃性の物質を意味し、油性成分は実質的に水に溶けないために可溶化技術の必要性が生じている。ここで難溶性とは、室温、特に25℃近辺において、濃度が約0.5質量%の水溶液を調製しようとしても溶けない状態を意味する。
【0044】
油性成分は、液体および固体のいずれでもよいが、液体が好ましい。油性成分としては、たとえば、植物抽出油、配合香料、天然香料、合成香料、精油、テルペン類等の香料;ミネラルオイル;脂肪族炭化水素油;芳香族炭化水素油;エステル油;アミド化合物等を挙げることができる。これらの油性成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
香料としては、具体的には、ラベンダーオイル、オレンジオイル、レモンオイル、薔薇抽出油、ライムオイル、ヒノキ抽出油、ハーブ抽出油等の植物抽出油;ローズ、シトラス、レモン、コーヒー、アプリコット、フローラル、ピーチ等の、種々の成分を人工的に配合することによりそれに似せた香気を与えた配合香料;樟脳白油、ヒノキ精油、テレビン油、ユーカリ油、薄荷油等の精油;p-メンタジエン、d-リモネン、p-メンタン、ターピネオール、リナロール、テルピニルアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ミルテナール、ミルテノール、ペリラアルデヒド、ローズオキサイド、ボルネオール、カンフル、カルベオール、カルボンオキサイド、カルビルアセテート、カリオフィレン、シネオール、シトロネラオイル、シトロネラール、シトロネロール、イソオイゲノール、ゲラニルアセテート、シトラール、サイメン、サイメン-8-オール、ジヒドロカルベオール、ジヒドロカルボン、ジヒドロカルビルアセテート、リモネンオキサイド、フラノイド、ピラノイド、メントン、メンチルアセテート、ミルテナール、ミルテノール、ミルテニルアセテート、ペリリルアルコール、ペリリルアセテート、ピネン、ピネンオキサイド、ゲラニオール、酢酸イソアミル、アミルシンナミックアルデヒド、メントール、アンスラニル酸メチル等のテルペン類香気成分等を挙げることができる。
【0046】
ミネラルオイルとしては、具体的には、流動パラフィン、軽油、スピンドル油等を挙げることができる。
【0047】
脂肪族炭化水素油としては、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、オクタンなどが、芳香族炭化水素油としてはトルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0048】
エステル油としては、具体的には、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸-2- エチルヘキシル、パルミチン酸-2- エチルヘキシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ブチル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0049】
アミド化合物としては、具体的には、N,N-ジエチルトルアミド等を挙げることができる。
【0050】
油性成分は、一形態において、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性化合物を含有する。上記疎水性化合物は、LogPが2.5以上であることがより好ましい。疎水性化合物におけるLogPの上限値は、特に限定されるものではないが、例えば6以下であることが好ましい。
【0051】
ここで、1-オクタノール/水分配係数を表すLogPは、下記に記載される方法に従って計算することができる値である。
P=log10POW
POW:CO/CW
CO:1-オクタナール層中の被験物濃度(mol/L)
CW:水層中の被験物濃度(mol/L)
【0052】
油性成分の具体例として挙げた上記化合物には、LogPが1以上の疎水性化合物と、LogPが1未満の化合物とが混在している。例えば、香料の上記具体例の中からLogPが1以上の疎水性化合物の一例を挙げるとすると、d-リモネン(LogP=4.57)、シトロネラオイル(LogP=3.62)、リナロール(LogP=2.97)、シトロネラール(LogP=3.53)、シトロネロール(LogP=3.91)、イソオイゲノール(LogP=3.08)、ゲラニオール(LogP=3.45)、ゲラニルアセテート(LogP=4.04)、シトラール(LogP=3.45)等が挙げられる。
【0053】
また、油性成分に占める上記疎水性化合物の配合率は、一形態において、その全質量に対し50%~100%であり、より好ましくは、60%~100%である。
【0054】
本発明の実施形態に係る可溶化剤を用いて油性成分を水に可溶化する場合、水中に油性成分と可溶化剤とを共存させる。具体的には、後述する可溶化組成物中に含有される水中に、油性成分と可溶化剤とを共存させる。このときの水中における油性成分と、非イオン性界面活性剤(A)及びアニオン性界面活性剤(B)の合計との配合比(油性成分/(A)+(B))が、質量比で、1/0.7~1/3の範囲であることが好ましく、1/1~1/2の範囲であることがより好ましく、1/1~1/1.5の範囲であることが更に好ましい。油性成分の質量比率が大きいと、広い温度範囲での油性成分の可溶化が困難になるおそれがある。一方、油性成分の質量比率が小さいと、得られる可溶化組成物に期待される本質的物性が発現せず、商品価値が低下するため好ましくない。たとえば、可溶化組成物が芳香剤の場合には香気不足の問題が生じるおそれがあり、また、ローションの場合には皮膚刺激などの安全性の観点から好ましくない。さらに、得られる可溶化組成物が芳香剤の場合は、水や香料等の揮発性物質が揮発した後に、容器内に非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)が残存するが、油性成分が少ないと使用後の外観が劣り、商品価値の低下を招くことがある。
【0055】
本発明の実施形態に係る可溶化剤は、非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)以外の成分を、その物性を損なわない範囲で含有してもよい。上記成分としては、たとえば、アルキレングリコール、エタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の水溶性溶剤や、水、ゲル化防止剤、ハイドロトロープ剤、抗菌剤、防腐剤、色素、染料、消泡剤、粘度調整剤、保湿剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤その他の界面活性剤等を挙げることができる。
【0056】
本発明の実施形態に係る可溶化剤を用いて油性成分を可溶化させる際に、場合によってはゲル化することがあるが、可溶化剤が上記水溶性溶剤をさらに含有することによって、ゲル化を有効に防止することができる。特に、可溶化によって得られる組成物が芳香剤の場合は、水溶性溶剤が揮発速度の調節に用いられる。また、後述する可溶化組成物においても、同様の理由で水溶性溶剤をさらに含有すると好ましい。さらに、後述する可溶化組成物の製造方法においても、ゲル化が有効に防止されるため、水溶性溶剤をさらに添加、混合すると好ましい。
【0057】
[可溶化組成物]
本発明の実施形態に係る可溶化組成物は、非イオン性界面活性剤(A)、アニオン性界面活性剤(B)、油性成分及び水を含有し、非イオン性界面活性剤(A)として、少なくともポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)を含有し、油性成分として、少なくとも1-オクタノール/水分配係数を表すLogPが1以上の疎水性化合物を含有する。可溶化組成物を構成する各種成分、並びに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(a1)とポリオキシアルキレンヒマシ油類(a2)の質量比(a1)/(a2)、及び、非イオン性界面活性剤(A)とアニオン性界面活性剤(B)の質量比(A)/(B)は、上記[可溶化剤]で説明したとおりである。
【0058】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物において、上記油性成分は、非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)によって水に可溶化されている状態にある。ここで、油性成分が水に可溶化された状態とは、水に不溶または難溶な油性物質が、その水への溶解度以上に見かけ上溶けた状態である。また、この可溶化された状態を透過率で定義すると、光路長1cmの石英セルで透過率を測定した場合、波長600nmの光線に対する透過率が90%T以上の状態をいう。
【0059】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物において、油性成分と、非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)の合計との質量比率について特に限定はないが、好ましくは1/0.7~1/3、より好ましくは1/1~1/2、特に好ましくは1/1~1/1.5である。油性成分の質量比率が大きいと、広い温度範囲での油性成分の可溶化が困難になるおそれがある。一方、油性成分の質量比率が小さいと、得られる可溶化組成物に期待される本質的物性が発現せず、商品価値が低下するため好ましくない。たとえば、可溶化組成物が芳香剤の場合には香気不足の問題が生じるおそれがあり、また、ローションの場合には皮膚刺激などの安全性の観点から好ましくない。さらに、得られる可溶化組成物が芳香剤の場合は、水や香料等の揮発性物質が揮発した後に、容器内に非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)が残存するが、油性成分が少ないと使用後の外観が劣り、商品価値の低下を招くことがある。
【0060】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物において、可溶化組成物全体に占める油性成分の配合率は、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.8~4質量%である。油性成分が多いと、非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)によって可溶化されるものの、可溶化機構が異なるために非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)を使用しても効果が低くなるおそれがある。一方、油性成分が少ないと、可溶化組成物に期待される本質的物性が発現せず、商品価値が低下するため好ましくない。
【0061】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物は、油性成分、水、非イオン性界面活性剤(A)およびアニオン性界面活性剤(B)以外の成分を、その物性を損なわない範囲で含有してもよい。上記成分としては、たとえば、アルキレングリコール、エタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の水溶性溶剤や、ゲル化防止剤、ハイドロトロープ剤、抗菌剤、防腐剤、色素、染料、ゲル化剤、吸水性樹脂、消泡剤、粘度調整剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤その他の界面活性剤等を挙げることができる。
【0062】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物は、たとえば、芳香剤、ローション、忌避剤、殺虫剤、誘引剤、農薬、防虫剤、消臭剤、クレンジング料、洗浄剤等の商品として使用される。
【0063】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。
【0064】
本発明の実施形態に係る可溶化組成物の状態については特に限定はなく、液状でもよく、ゲル化剤等で固めた固状でもよく、吸水性樹脂等に吸収させた状態でもよい。特に後二者は、製品外観に付加価値を付与する場合、液状で流出するおそれがある場合、液状での流出が好ましくない場合等に行うことが多い。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の実施形態を、例を示して具体的に説明する。
<<可溶化剤の調製>>
各例において、表1に示す界面活性剤(a1)、(a2)及び(B)を、それぞれ所定量準備した。表1における各成分の数値は質量%を示す。非イオン性界面活性剤(a1)及び(a2)を40℃で混合した後、攪拌しながら、アニオン性界面活性剤(B)を徐々に加えることにより、各可溶化剤を調製した。表1には(a1)/(a2)質量比および(A)/(B)質量比を併記した。また、表1中、「POE」は「ポリオキシエチレン」を表す。非イオン性界面活性剤(a1)において、POEの直後に括弧で示した数字は、エチレンオキサイドの平均重合度を表し、「第2級アルキル」の直後に括弧で示した部分は、第2級アルキル基の炭素数を表す。また、各成分の組成における数値は質量%を示す。
【0066】
【0067】
【0068】
<<可溶化組成物の調製>>
各例において、表2に示す可溶化剤、油性成分、エタノール、EDTA・3Na及び水を、それぞれ所定量準備した。表2における各成分の数値は質量%を示す。40℃に加温した状態の可溶化剤にエタノールおよび油性成分を加熱せずに添加混合した。得られた混合物を攪拌しながら水およびEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)・3Naを徐々に加えて、各可溶化組成物を調製した。
【0069】
<<可溶化安定性の評価>>
[評価1:保存安定性(-5℃、25℃、50℃)]
得られた各可溶化組成物について、-5℃、25℃、50℃のそれぞれの温度で1週間保存後に、下記の評価基準(A、B、C)に基づいて外観評価を行った。その結果を表2に示す。
A:透明である。
B:僅かに白いが透明性を有する。
C:白濁している。
【0070】
[評価2:サイクル試験(温度変化に対する安定性)]
得られた各可溶化組成物について、1日サイクルで-20℃→40℃→-20℃のように温度変化させ、5日後に、上記の評価基準(A、B、C)に基づいて外観評価を行った。このサイクル試験では、-20℃で試料が凍結するため、凍結解凍の繰り返しとなる。結果を表2に示す。
【0071】
[評価3:フェード試験(光照射に対する安定性)]
得られた各可溶化組成物について、キセノンフェードメーター XL75F(スガ試験機株式会社製)を用い、Xeランプ(フェード条件:40W/45℃/50RH%)にて、139時間照射後に、上記の評価基準(A、B、C)に基づいて外観評価を行った。この条件でのXeランプの139時間照射は、東京の夏場のおよそ1か月分の紫外線量に相当する。結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
上記結果より、本発明の実施形態に係る可溶化剤は、疎水性の高い油性成分を水に可溶化することができ、且つ、広い温度範囲や激しい温度変化、更には光照射に対しても安定的に可溶化状態を持続させることができることがわかる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。