(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】部品把持装置用支持装置および車両用ドア取外し装置
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20221108BHJP
B62D 65/06 20060101ALI20221108BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20221108BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B25J17/02 H
B62D65/06 A
B23P21/00 303A
B23P19/04 E
(21)【出願番号】P 2019027467
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】横手 英幸
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】丸井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩三
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140023(JP,A)
【文献】特開平08-257971(JP,A)
【文献】特開平08-257970(JP,A)
【文献】特開平11-300545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 17/02
B62D 65/06
B23P 21/00
B23P 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部品に係合する係合部を有し前記係合部を前記部品に係合させた状態で前記部品を把持する部品把持装置を支持するための部品把持装置用支持装置であって、
前記部品把持装置を支持する支持本体部と、
前記支持本体部を第1の方向に移動可能に支持する第1シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能に支持する第2シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に移動可能に支持する第3シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第1回動機構部と、
前記支持本体部を前記第2の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第2回動機構部と、
前記支持本体部を前記第3の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第3回動機構部と、を有
し、
前記第3の方向は上下方向であり、
前記第2回動機構部は、シリンダ機構を有し、前記シリンダ機構の伸縮動作により、前記支持本体部を、前記第2の方向を中心軸方向とした回動についてフローティング支持する
部品把持装置用支持装置。
【請求項2】
前記第1シフト機構部、前記第2シフト機構部、および前記第3シフト機構部は、それぞれ前記支持本体部を移動可能に支持する方向について前記支持本体部の移動を停止させるシフトロック機構を有し、
前記第1回動機構部、前記第2回動機構部、および前記第3回動機構部は、それぞれ前記支持本体部を回動可能に支持する回動方向について前記支持本体部の回動を停止させる回動ロック機構を有する
請求項1に記載の部品把持装置用支持装置。
【請求項3】
前記シリンダ機構は、伸縮方向が前記第3の方向に対して傾斜した傾斜方向となるように設けられ
ており、
前記第2回動機構部は、前記シリンダ機構の伸縮動作により、前記第2の方向に沿う所定の回動軸により回動可能に支持された前記支持本体部を、前記回動軸を中心とした回動についてフローティング支持する
請求項1または請求項2に記載の部品把持装置用支持装置。
【請求項4】
車体に取り付けられたドアを取り外すための車両用ドア取外し装置であって、
前記ドアに係合する係合部と、前記ドアを把持するための把持部と、を有し、前記係合部を前記ドアに係合させた状態で前記把持部により前記ドアを把持する部品把持装置と、
前記部品把持装置を支持するための部品把持装置用支持装置と、を備え、
前記部品把持装置用支持装置は、
前記部品把持装置を支持する支持本体部と、
前記支持本体部を第1の方向に移動可能に支持する第1シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能に支持する第2シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に移動可能に支持する第3シフト機構部と、
前記支持本体部を前記第1の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第1回動機構部と、
前記支持本体部を前記第2の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第2回動機構部と、
前記支持本体部を前記第3の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第3回動機構部と、を有
し、
前記第3の方向は上下方向であり、
前記第2回動機構部は、シリンダ機構を有し、前記シリンダ機構の伸縮動作により、前記支持本体部を、前記第2の方向を中心軸方向とした回動についてフローティング支持する
車両用ドア取外し装置。
【請求項5】
前記部品把持装置用支持装置に取り付けられる取付基部と、
前記取付基部に移動可能に支持され、前記ドアを前記車体に支持するための締結部品に係合して前記締結部品の締結を解除する締結解除装置と、を有する締結解除ユニットをさらに備える
請求項4に記載の車両用ドア取外し装置。
【請求項6】
前記ドアに対する係止部を有し、前記係止部を前記ドアの所定の部位に係止させた状態で、前記部品把持装置用支持装置とともに移動することで、前記ドアを開けるドア開き装置をさらに備える
請求項4または請求項5に記載の車両用ドア取外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のドア等の部品の取外しの際にロボットに取り付けられる部品把持装置を支持するための部品把持装置用支持装置および車両用ドア取外し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程では、車体にドアが取り付けられた状態で塗装工程が行われた後、車体やドアに対する部品の組付け等を行うため、車体から一旦ドアを取り外すドア取外し工程が行われる。ドア取外し工程に関しては、従来、ロボットの動作により、車体に取り付けられているドアを把持し、車体から取り外されたドアを所定の場所まで移動させる技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、第1アームおよび第2アームを備えた双腕ロボットを含むドア取外しシステムが開示されている。第1アームおよび第2アームは、それぞれ先端部にドアを把持するための部品把持装置としての把持治具を有する。
【0004】
特許文献1のドア取外しシステムにおいては、一方のアームによってドアが開かれ、各アームの把持治具が有するドア把持パッドが、ドアのインナパネルに設けられた開口部に係合することで、双腕ロボットの2つのアームによってドアが把持される。その後、車体にドアを支持するヒンジに対するドアのボルト締結が解除され、双腕ロボットにより把持されたドアが、2つのアームの協調動作によって移動させられ、所定の場所まで運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の車両特性として、ドアの開き角度によって、ドアの姿勢が3次元的に変化するということがある。ドアの姿勢の変化の指標としては、例えば、ドアが車体に取り付けられた状態を基準として、車体の後面視でのドアの回転方向(ドアが左右に倒れる面倒れの方向)の移動量や、車体の側面視でのドアの回転方向(面回転の方向)の移動量等がある。
【0007】
また、ロボットによって自動でドアを開く場合、例えば車体の搬送ライン上における姿勢のばらつきが存在すること等により、ドアの開き角度を常に同じ角度にすることは困難である。つまり、ロボットによるドア開き動作においては、開いた状態のドアが、ロボットに支持された部品把持装置による把持対象となるが、車体の姿勢のばらつき等により、開いた状態のドアの姿勢を常に同じ姿勢とすることは困難である。こうしたドアの開き角度によるドアの姿勢の変化の態様は、フロントドアとリアドアとの間でも異なる。
【0008】
このように、ロボットによってドア開き動作を行う構成においては、ドアの開き角度によってドアの姿勢がばらつくため、車体の搬送ライン上において部品把持装置の係合部による係合を受けるドアの被係合部の位置がばらつくことになる。このため、例えばティーチングにより作成された所定のプログラムに基づいて所定の動作を行うロボットによってドアの把持を行うに際し、ロボットの動作によって所定の位置に移動させられる部品把持装置の係合部に対して、ドア側の被係合部の位置がずれる場合が生じる。
【0009】
ロボット側の部品把持装置の係合部とドア側の被係合部との位置がずれることは、次のような不具合の原因となり得る。すなわち、部品把持装置の係合部等がドアに干渉し、ドアに傷が付く可能性がある。また、部品把持装置によるドアの把持が正常に行われず、ドアの把持状態において意図せぬ負荷がドアに作用した状態となる。かかる状態においては、例えばヒンジに対するボルト締結が解除されることにより負荷が開放されることにともない、ドアがその周囲の部品(例えばフェンダやピラー等)に干渉し、これらの部品に傷等の悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、自動車のドア等の部品をロボットの動作等によって自動で把持する際に、部品の姿勢のばらつきにかかわらず、部品把持装置による正確な部品の把持を行うことができる部品把持装置用支持装置および車両用ドア取外し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る部品把持装置用支持装置は、所定の部品に係合する係合部を有し前記係合部を前記部品に係合させた状態で前記部品を把持する部品把持装置を支持するための部品把持装置用支持装置であって、前記部品把持装置を支持する支持本体部と、前記支持本体部を第1の方向に移動可能に支持する第1シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能に支持する第2シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に移動可能に支持する第3シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第1回動機構部と、前記支持本体部を前記第2の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第2回動機構部と、前記支持本体部を前記第3の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第3回動機構部と、を有するものである。
【0012】
また、本発明に係る部品把持装置用支持装置の他の態様は、前記部品把持装置用支持装置において、前記第1シフト機構部、前記第2シフト機構部、および前記第3シフト機構部は、それぞれ前記支持本体部を移動可能に支持する方向について前記支持本体部の移動を停止させるシフトロック機構を有し、前記第1回動機構部、前記第2回動機構部、および前記第3回動機構部は、それぞれ前記支持本体部を回動可能に支持する回動方向について前記支持本体部の回動を停止させる回動ロック機構を有するものである。
【0013】
また、本発明に係る部品把持装置用支持装置の他の態様は、前記部品把持装置用支持装置において、前記第3の方向は上下方向であり、前記第2回動機構部は、伸縮方向が前記第3の方向に対して傾斜した傾斜方向となるように設けられたシリンダ機構を有し、前記シリンダ機構の伸縮動作により、前記第2の方向に沿う所定の回動軸により回動可能に支持された前記支持本体部を、前記回動軸を中心とした回動についてフローティング支持するものである。
【0014】
本発明に係る車両用ドア取外し装置は、車体に取り付けられたドアを取り外すための車両用ドア取外し装置であって、前記ドアに係合する係合部と、前記ドアを把持するための把持部と、を有し、前記係合部を前記ドアに係合させた状態で前記把持部により前記ドアを把持する部品把持装置と、前記部品把持装置を支持するための部品把持装置用支持装置と、を備え、前記部品把持装置用支持装置は、前記部品把持装置を支持する支持本体部と、前記支持本体部を第1の方向に移動可能に支持する第1シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能に支持する第2シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に移動可能に支持する第3シフト機構部と、前記支持本体部を前記第1の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第1回動機構部と、前記支持本体部を前記第2の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第2回動機構部と、前記支持本体部を前記第3の方向を中心軸方向として回動可能に支持する第3回動機構部と、を有するものである。
【0015】
また、本発明に係る車両用ドア取外し装置の他の態様は、前記車両用ドア取外し装置において、前記部品把持装置用支持装置に取り付けられる取付基部と、前記取付基部に移動可能に支持され、前記ドアを前記車体に支持するための締結部品に係合して前記締結部品の締結を解除する締結解除装置と、を有する締結解除ユニットをさらに備えるものである。
【0016】
また、本発明に係る車両用ドア取外し装置の他の態様は、前記車両用ドア取外し装置において、前記ドアに対する係止部を有し、前記係止部を前記ドアの所定の部位に係止させた状態で、前記部品把持装置用支持装置とともに移動することで、前記ドアを開けるドア開き装置をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自動車のドア等の部品をロボットの動作等によって自動で把持する際に、部品の姿勢のばらつきにかかわらず、部品把持装置による正確な部品の把持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る部品把持装置用支持装置および車両用ドア取外し装置の適用例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両用ドア取外し装置によるドアの把持状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るドアの構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置を示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置を示す側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るマテハン装置の背面側からの斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るマテハン装置の正面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るマテハン装置の左側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るマテハン装置の右側面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るマテハン装置の平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るマテハン装置のクランプ機構部を示す斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るマテハン装置のクランプ機構部を示す側面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るマテハン装置のクランプ機構部の動作状態を示す側面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るマテハン装置によるドアの把持状態を示す模式図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係るフローティングユニットを示す正面側斜視図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係るフローティングユニットを示す背面側斜視図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係るフローティングユニットを示す側面図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るフローティングユニットを示す分解斜視図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係るナットランナユニットを示す斜視図である。
【
図23】本発明の一実施形態に係るナットランナユニットを示す側面図である。
【
図24】本発明の一実施形態に係るナットランナユニットを示す背面図である。
【
図25】本発明の一実施形態に係るドア開きアームを示す斜視図である。
【
図26】本発明の一実施形態に係るドア開きアームを示す平面図である。
【
図27】本発明の一実施形態に係るドア開きアームを示す側面図である。
【
図28】本発明の一実施形態に係るドア開きアームを示す底面図である。
【
図30】本発明の一実施形態に係る第1サブユニットの正面図である。
【
図31】本発明の一実施形態に係る第1サブユニットの平面図である。
【
図32】本発明の一実施形態に係る第1サブユニットの側面図である。
【
図35】本発明の一実施形態に係る第1サブユニットの一部分解斜視図である。
【
図36】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの正面図である。
【
図37】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの背面図である。
【
図38】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの平面図である。
【
図39】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの側面図である。
【
図42】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの前方斜視図である。
【
図43】本発明の一実施形態に係る第2サブユニットの一部分解斜視図である。
【
図44】本発明の一実施形態に係る第3サブユニットの正面図である。
【
図45】本発明の一実施形態に係る第3サブユニットの平面図である。
【
図46】本発明の一実施形態に係る第3サブユニットの側面図である。
【
図48】
図46におけるF-G-H-I-J-K線組合せ切断部端面図である。
【
図49】本発明の一実施形態に係る第3サブユニットの前方斜視図である。
【
図50】本発明の一実施形態に係るX方向シフト機構部を示す上方斜視図である。
【
図51】本発明の一実施形態に係るY軸回動機構部の構成の一部を示す後方斜視図である。
【
図52】本発明の一実施形態に係るY軸回動センタリング機構の構成を示す背面断面図である。
【
図53】本発明の一実施形態に係るZ軸回動機構部の正面図である。
【
図54】本発明の一実施形態に係るZ軸回動機構部の平面図である。
【
図57】本発明の一実施形態に係るZ軸回動機構部の分解斜視図である。
【
図58】本発明の一実施形態に係るドア取外し装置およびフローティングユニットの動作説明図である。
【
図59】自動車のドアの開き角度による姿勢の変化についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、例えば車体に取り付けられたドアを取り外すための車両用ドア取外し装置において、部品としてのドアを把持する部品把持装置を支持する支持装置の構成を工夫することにより、部品把持装置の3次元的なフローティング支持を可能とするものである。これにより、本発明は、ロボットの動作等によって自動で部品を把持する際に、部品の姿勢のばらつきにかかわらず、部品把持装置による正確な部品の把持を可能とするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本実施形態では、部品把持装置用支持装置により支持される部品把持装置による把持の対象部品を、自動車のドア(サイドドア)とする場合を例にとって説明する。すなわち、
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る部品把持装置用支持装置としてのフローティングユニット20は、所定の部品であるドア3を把持する部品把持装置としてのマテハン(マテリアル・ハンドリング)装置21を支持するための支持装置である。そして、本実施形態では、フローティングユニット20が、自動車のドア3を取り外す車両用ドア取外し装置(以下「ドア取外し装置」とする。)1に適用された場合を例にとって説明する。
【0021】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るドア取外し装置1は、自動車の車体2に取り付けられたドア3を取り外すための装置である。自動車の製造工程では、車体2にドア3が取り付けられた状態で塗装工程が行われた後、車体2およびドア3それぞれに対する部品の組付け等を行うため、車体2から一旦ドア3を取り外すドア取外し工程が行われる。
図1は、ドア取外し工程が行われる設備の一例を示している。
【0022】
図1に示すように、ドア取外し装置1は、ロボット4に取り付けられ、ロボット4の動作により移動操作される。ドア取外し工程においては、ロボット4の動作によりドア3に近付けられたドア取外し装置1が、ドア3を把持するとともに車体2からドア3を取り外し、車体2から取り外されたドア3が、ロボット4の動作によって所定の場所まで移動させられる。ドア取外し装置1とロボット4とを含む構成により、ドア取外しシステムが構成されている。
【0023】
図1に示す例では、車体2に取り付けられた前後左右の4つのドア3のそれぞれに対して、車体2からドア3を取り外すための装置構成が設けられている。すなわち、1つの車体2が有するドア3の数に対応して、ドア取外し装置1が取り付けられたロボット4が4組設けられている。
図1において、車体2の右側の2つのドア3(3R)は、車体2から取り外される前の状態であり、車体2の左側の2つのドア3(3L)は、車体2から取り外された後の状態となっている。各ドア3を取り外すための装置構成は、左右方向について対称的である点を除き共通の構成を備えたものであるため、以下の説明では、車体2に取り付けられた4つのドア3のうち右側のフロントドアであるドア3(3A)に対して設けられた装置構成を例にとって説明する。
【0024】
ドア取外し工程が行われる製造ラインにおいては、車体搬送装置により車体2が所定の方向に搬送される。
図1に示すように、車体搬送装置は、車体2の搬送方向に配された図示せぬレールに対して車輪等を介して吊り下げられた搬送ハンガー5によって車体2を支持した状態で搬送する。
【0025】
搬送ハンガー5は、略矩形枠状のサイドフレーム5aと、左右のサイドフレーム5aの下端部の内側に設けられた支持フレーム5bと、サイドフレーム5aの上側に設けられた上部フレーム5cとを有する。搬送ハンガー5に対し、車体2は、左右のサイドフレーム5a間における支持フレーム5b上に載置支持される。車体搬送装置は、車体2を支持した搬送ハンガー5を、車体2の搬送経路の上流側から下流側に移動させ、ドア3の取外しが行われる所定のドア取外し位置にて一時的に停止させる。なお、車体2を搬送するための車体搬送装置の構成は、特に限定されるものではない。車体搬送装置としては、本実施形態のような搬送ハンガー5による吊下げ式の構成のほか、例えば、床面に設けられたフロア台車を用いたフロア台車式の構成のもの等が採用される。
【0026】
ロボット4は、ドア取外し装置1を支持し移動させるための構成である。すなわち、ロボット4は、ドア取外し位置で停止した搬送ハンガー5に支持された状態の車体2に対して、ドア取外し装置1の位置および姿勢を変化させる移動装置として機能する。
【0027】
ロボット4は、ベース部4aと、ベース部4a上に設けられたロボットアーム部4bとを有し、様々な位置および角度に姿勢制御されるフレキシブルなロボットアーム(多関節ロボット)として構成されている。ロボットアーム部4bの動作により、その可動範囲においてドア取外し装置1が3次元的に任意の方向に移動する。ロボット4は、例えば、6つの関節を有する6軸ロボットである。
【0028】
ロボット4は、ロボット4の動作等を制御する制御部に接続されており、制御部からの制御信号を受けて動作する。ロボット4の制御部は、例えばプログラムによって様々な数値計算、情報処理、機器制御等を行う中央処理装置(CPU)や、主記憶装置である半導体メモリ等を備えている。ロボット4の制御部は、例えばティーチングにより作成された所定のプログラムに基づく動作をロボット4に行わせる。ロボット4の動作により、車体2に対するドア取外し装置1の位置や向き(姿勢)が制御され、車体2からドア3が取り外される。
【0029】
次に、ドア取外し装置1による取外しの対象となるドア3について説明する。
図1から
図3に示すように、ドア3は、車体2に取り付けられる部分となるドア本体部3aと、ドア本体部3aの上側に形成された窓枠部3bとを有する。ドア3は、ドア3の外側の部分を構成するドアアウタパネル6と、ドア3の内側の部分を構成するドアインナパネル7とを有し、これらのパネル間にはドア内空間3cが形成されている。ドア3の前端部には、ドア3が閉じた状態で略前後方向を厚さ方向とする板状の部分であるドア前側壁部3dが形成されている(
図3、
図17参照)。
【0030】
ドア3は、車体2に対する回動動作によって、車体2に形成されたドア開口部2aを開閉する(
図2参照)。ドア開口部2aは、車体2におけるリア側のドア開口部の場合、例えば、車体2を構成するルーフパネル8の左右の側縁に沿うルーフサイドレール9、ルーフサイドレール9の中間部から略上下方向に延設されたセンターピラー10、センターピラー10の前方に設けられたフロントピラー11、車体の下部において前後方向に延設されたロッカ(サイドシル)12等により形成される。
【0031】
図3に示すように、ドア3は、車体2に対して、ヒンジ部13により略上下方向に沿う所定の回転軸を中心に回動可能に取り付けられており、その回動動作によって、車体2のドア開口部2aを開閉する。ヒンジ部13は、ドア3の前端部と車体2との間において上下2箇所に設けられている。
【0032】
ヒンジ部13は、車体2側に固定された車体側片14と、ドア3側に固定されたドア側片15と、これらを略上下方向に貫通して互いに軸支する枢軸16とを有する。ドア側片15は、ドア前側壁部3dに対して、ヒンジボルト17により固定されている。ドア側片15は、本来上下2本のヒンジボルト17によりドア前側壁部3dに固定されるものであるが、ドア取外し工程に際して、ドア側片15は、1本のヒンジボルト17によりドア前側壁部3dに仮固定されている。
図3には、上側のヒンジボルト17によりドア側片15を仮固定した状態を示している。
【0033】
また、ドア取外し工程が行われる製造ラインにおいては、搬送ハンガー5による車体2の搬送経路の両側に、開いた状態のドア3をその開位置で保持するドア開位置保持装置18が設けられている。ドア開位置保持装置18は、搬送ハンガー5に支持された状態の車体2に対して開いた状態のドア3を下側から支持できる位置に設けられる。
図1に示す例では、ドア開位置保持装置18は、車体2に取り付けられた前後左右の4つのドア3のそれぞれに対して設けられている。
【0034】
ドア開位置保持装置18は、床面上に設置されたボックス状の本体部18aと、本体部18aの上面18bに対して上下方向に移動可能に設けられた移動支持部19とを有する。移動支持部19は、例えばエアシリンダ機構等の移動機構により、本体部18aの上面18bから出没するように設けられている。移動支持部19は、ブロック状の部分であり、その上面を、ドア3に対して下方から当接する支持面19aとする。移動支持部19は、ドア3の下端縁に対して、開いた状態での外側(閉じた状態での後側)寄りの部位に当接する。支持面19aは、ウレタンゴム等の弾性材により形成されている。
【0035】
ドア開位置保持装置18は、移動支持部19を下側に位置させた非作動状態で、開いたドア3に干渉しないように設けられている。そして、ロボット4の動作によってドア3が開かれた後、本体部18aの上面18bから移動支持部19を上方に突出させて作動状態となり、下側から支持面19aをドア3に当接させ、開状態のドア3の位置を保持する。
【0036】
本実施形態に係るドア取外し装置1について説明する。
図4から
図8に示すように、ドア取外し装置1は、部品把持装置としてのマテハン装置21と、部品把持装置用支持装置としてのフローティングユニット20と、締結解除ユニットとしてのナットランナユニット22と、ドア開き装置としてのドア開きアーム23とを備える。
【0037】
ドア取外し装置1は、ロボットアーム部4bの先端側に設けられた回動支持ユニット25に取り付けられる。回動支持ユニット25は、ロボットアーム部4bの手首部分を構成するものであり、ロボットアーム部4bの本体側に取り付けられるアーム部26と、アーム部26に対して所定の回動軸により回動可能に支持された回動部27と、回動部27の先端側(下端側)に設けられたアタッチメントプレート28とを有する。アタッチメントプレート28は、後述するようにフローティングユニット20が取り付けられる部分となる。
【0038】
ドア取外し装置1は、回動支持ユニット25にフローティングユニット20を支持させるとともに、フローティングユニット20に、マテハン装置21、ナットランナユニット22およびアーム23を支持する。特に、フローティングユニット20は、マテハン装置21およびナットランナユニット22を3次元的にフローティング支持するように構成されている。すなわち、ドア取外し装置1は、ロボットアーム部4bに対して、フローティングユニット20を介してマテハン装置21およびナットランナユニット22を3次元的にフローティング支持する。
【0039】
[マテハン装置の構成]
マテハン装置21について、
図9から
図16を参照して説明する。なお、マテハン装置21においては、
図10に示す側を前側(正面側)、その反対側(例えば
図11における右側)を後側、
図10における右側を左側、
図10における左側を右側とする。
【0040】
マテハン装置21は、ロボット4の動作により、ドア3に対して所定の位置に移動し、ドア3を把持する装置である。マテハン装置21は、ドア3に係合する係合部としての係合ピン31を有し係合ピン31をドア3に係合させた状態でドア3を把持する。マテハン装置21は、係合ピン31と、ドア3を把持するための把持部としてのクランプ機構部32とを有し、係合ピン31をドア3に係合させた状態でクランプ機構部32によりドア3を把持する。
【0041】
マテハン装置21は、枠状のマテハン本体部33を有し、マテハン本体部33に、係合ピン31およびクランプ機構部32を支持する。マテハン本体部33は、いずれも矩形状の横断面形状を有する上下・左右のフレーム部33a,33b,33c,33dを有し、これらのフレーム部により矩形枠状の外形をなす。また、マテハン本体部33において、左フレーム部33cと右フレーム部33dの間の位置には、2本の縦フレーム部33e,33fが、所定の間隔を隔てて平行状に、上フレーム部33aと下フレーム部33bとの間に架設されている。
【0042】
マテハン装置21において、係合ピン31は、左右両側の2箇所に設けられている。本実施形態では、一方の(右側の)係合ピン31Aは、マテハン本体部33の右上の角部近傍の外側(右側)の位置に設けられている。係合ピン31Aは、マテハン本体部33の右フレーム部33dの上端部に対して、支持ステー34を介して固定状態で支持されている。
【0043】
また、他方の(左側の)係合ピン31Bは、マテハン本体部33の左上の角部近傍の内側(右側)の位置に設けられている。係合ピン31Bは、左側の縦フレーム部33eの上部に対して、支持ステー35を介して固定状態で支持されている。なお、本実施形態では、係合ピン31は、マテハン本体部33における左右両側の2箇所に設けられているが、マテハン装置21が有する係合ピン31の数や配設位置は特に限定されるものではない。
【0044】
マテハン装置21において、係合ピン31は、マテハン本体部33に対して前方の位置に支持されており、前方に向けて突出している。係合ピン31は、前後方向を中心軸方向とする略円筒状の外形を有するとともに、前側の部分を、前側を尖端側としたテーパ形状のテーパ部31cとする。係合ピン31のテーパ部31cよりも後側の部分は、一定外径の筒形状に沿う筒状部31dとなっている。
【0045】
このようなマテハン装置21の2本の係合ピン31に対し、ドア3においては、ドアインナパネル7に、各係合ピン31が挿入される係合孔7aが形成されている(
図3、
図17参照)。係合孔7aは、例えば、ドアインナパネル7とルーフパネル8との間の位置決め用の基準孔である。係合孔7aは、係合ピン31の外径と略同じ孔径を有し、係合ピン31の筒状部31dをほぼ隙間なく挿入させる。2つの係合ピン31は、ドアインナパネル7の2つの係合孔7aの位置に対応して設けられている。ただし、係合孔7aは、係合ピン31係合用に別途形成されたものであってもよい。
【0046】
ロボット4の動作によってマテハン装置21がドア3に対してドアインナパネル7側から近付くことで、2本の係合ピン31が略同時に係合孔7aに挿入される。マテハン装置21は、2本の係合ピン31をそれぞれ係合孔7aに挿入することで、ドア3に係合し、ドア3の面回転の方向について対して位置決めされた状態(相対回転不能な状態)となる。ここで、ドア3の面回転の方向は、ドア3が閉じた状態での車体2の側面視でのドア3の回転方向であり、ドア3に係合した状態のマテハン装置21の前後方向(例えば
図11における左右方向)を回転軸方向とするドア3の回転方向と略同じである。
【0047】
マテハン装置21において、クランプ機構部32は、矩形枠状のマテハン本体部33において、その四隅近傍の部位の4箇所に設けられている。本実施形態では、4つのクランプ機構部32のうち、上フレーム部33aと左フレーム部33cとの角部近傍に位置する第1のクランプ機構部32Aは、上フレーム部33aの左端部に設けられている。また、上フレーム部33aと右フレーム部33dとの角部近傍に位置する第2のクランプ機構部32Bは、右フレーム部33dの上端部に設けられている。
【0048】
また、下フレーム部33bと左フレーム部33cとの角部近傍に位置する第3のクランプ機構部32Cは、下フレーム部33bの左端部に設けられている。また、下フレーム部33bと右フレーム部33dとの角部近傍に位置する第4のクランプ機構部32Dは、下フレーム部33bの右側寄りの部分に設けられている。なお、本実施形態では、クランプ機構部32は、マテハン本体部33における四隅近傍の4箇所に設けられているが、マテハン装置21が有するクランプ機構部32の数や配設位置は特に限定されるものではない。
【0049】
クランプ機構部32について、
図14から
図17を参照して説明する。
図14から
図16に示すように、クランプ機構部32は、エアシリンダ36と、エアシリンダ36の伸縮により動作するクランプ部37と、支持プレート38とを有し、エアシリンダ36をアクチュエータとしたクランプユニットとして構成されている。
【0050】
エアシリンダ36は、片ロッド型かつ複動型のシリンダ機構であり、略四角筒状のシリンダ本体41と、シリンダ本体41に対して往復動作するピストンロッド42とを有する。エアシリンダ36は、シリンダ本体41内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル43を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ36は、給排ノズル43からのシリンダ本体41内に対するエアの給排により、シリンダ本体41に対してピストンロッド42を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0051】
クランプ部37は、エアシリンダ36の伸縮動作により回動するクランプアーム44と、クランプアーム44を回動可能に支持する回動支持アーム45と、回動支持アーム45を支持プレート38上に回動可能に支持する支持ポスト46と、クランプアーム44の基端部をピストンロッド42に連結させる継手部材47とを有する。
【0052】
継手部材47は、ピストンロッド42の先端側に設けられており、ピストンロッド42と一体的に移動する。継手部材47は、ピストンロッド42側と反対側(
図15において上側)の部分において、互いに対向する2つの突片部47aにより二股状に分岐させた形状を有する。継手部材47に対し、クランプアーム44は、その基端部を、2つの突片部47a間に位置させ、軸支部材48により回動可能に支持されている。軸支部材48は、2つの突片部47aの対向方向を軸方向とし、継手部材47およびクランプアーム44を貫通した状態で設けられている。
【0053】
クランプアーム44は、その長手方向の中間部において、回動支持アーム45を介して、支持ポスト46に支持されている。回動支持アーム45は、クランプアーム44および支持ポスト46を、軸支部材48の軸方向の両側から挟むように、一対の構成として設けられている。回動支持アーム45は、クランプアーム44および支持ポスト46のそれぞれに対し、回動軸方向を軸支部材48による回動軸方向と平行とする軸支部材49a,49bにより回動可能に連結されている。支持ポスト46は、その下端部に矩形板状の土台部を有し、土台部を支持プレート38の表面38a上に重ねた状態で、土台部を貫通するボルト50により2箇所で支持プレート38に固定されている。
【0054】
クランプアーム44の先端部には、円柱状の押圧体52により構成された押圧部51が設けられている。押圧体52は、クランプアーム44の先端部において、クランプアーム44とともに略「L」字状をなすように、クランプアーム44に対し、支持軸53を介して、クランプアーム44の回動方向の一側(
図15において下側)に設けられている。押圧部51は、押圧体52におけるクランプアーム44側と反対側の端面を押圧面51aとする。
【0055】
支持プレート38は、略長方形状の板状部材により構成されており、その長手方向(
図15における左右方向)の一側の部分に、エアシリンダ36を支持している。支持プレート38の裏面38b側に、エアシリンダ36のシリンダ本体41がボルト等の固定部材によって固定されている。支持プレート38におけるシリンダ本体41の固定部分には、ピストンロッド42を貫通させそのシリンダ本体41に対する往復動作を許容する貫通孔38cが形成されている。
【0056】
また、支持プレート38の長手方向の他側の部分は、マテハン本体部33を構成する各フレーム部にクランプ機構部32を固定させるための部分となる。クランプ機構部32は、支持プレート38の長手方向の他側の部分を、対応するフレーム部の前面側に位置させ、支持プレート38を表面38a側から貫通する2本の固定ボルト54により、各フレーム部に固定される。なお、支持プレート38の形状や支持プレート38におけるエアシリンダ36の支持部位等は特に限定されるものではなく、これらはマテハン本体部33におけるクランプ機構部32の取付位置等により適宜変更される。
【0057】
以上のような構成を備えたクランプ機構部32において、クランプ部37は、エアシリンダ36の伸縮動作によって作動するトグル機構として構成されている。すなわち、
図14および
図15に示すように、エアシリンダ36が伸張状態となることで、クランプ機構部32は、クランプアーム44を支持プレート38と略平行な状態とし、作動状態となる。ここで、クランプアーム44は、その基端側が継手部材47を介してピストンロッド42により上側に押し上げられることで、軸支部材49a,49bにより各部に対して相対回動する回動支持アーム45の回動をともなって、支持ポスト46に対して回動する(
図16、矢印A1参照)。クランプ機構部32の作動状態において、押圧部51は、その押圧面51aを、支持プレート38の表面38aに対向させた状態となり、回動支持アーム45は、支持ポスト46の立設方向、つまり支持プレート38に対して垂直な方向と略平行な状態となる。
【0058】
一方、
図16に示すように、エアシリンダ36が収縮状態となることで、クランプ機構部32は、クランプアーム44を押圧部51側と反対側に約80°回動させて立った状態とし、非作動状態となる。ここで、クランプアーム44は、その基端側が継手部材47を介してピストンロッド42により下側(シリンダ本体41側)に引っ張られることで、軸支部材49a,49bにより各部に対して相対回動する回動支持アーム45の回動をともなって、支持ポスト46に対して回動する(
図16、矢印A2参照)。
【0059】
以上のようなクランプ機構部32を備えたマテハン装置21は、
図17に示すように、クランプ機構部32を作動状態とすることで、ドア3のドアインナパネル7をクランプする。ドアインナパネル7のクランプ状態において、クランプ機構部32は、押圧部51の押圧面51aを、ドアインナパネル7の内面7bに当接させる。
【0060】
マテハン装置21において4箇所に設けられたクランプ機構部32に対し、ドア3においては、ドアインナパネル7に、クランプ機構部32を受け入れる開口部7cが形成されている(
図3、
図17参照)。開口部7cは、例えば、ドア3に設置されるスピーカ取付用の開口部である。ただし、開口部7cは、クランプ機構部32を受け入れるために別途形成されたものであってもよい。クランプ機構部32は、非作動状態で、クランプアーム44を含む部分を、開口部7cからドア内空間3cの内部に入れ、その状態で作動状態となることで、押圧部51の押圧面51aをドアインナパネル7の内面7bに当接させる。なお、
図17においては、ドア3およびマテハン装置21の構成を模式的に示している。
【0061】
また、マテハン装置21は、クランプ機構部32とともにドアインナパネル7をクランプするための構成として、受け部55を有する。矩形枠状のマテハン本体部33において、その四隅近傍の部位の4箇所に設けられている。つまり、受け部55は、各クランプ機構部32の近傍の位置に設けられている。
【0062】
受け部55は、マテハン本体部33を構成するフレーム部に対して、フレーム部の前側にボルト等の固定具により固定された支持ステー56を介して設けられている。受け部55は、支持ステー56に固定された支持部57と、支持部57の前側に設けられたパッド部58とを有する。パッド部58の前側の面が、ドアインナパネル7の外面7dに対する当接面58aとなる。
【0063】
4箇所の受け部55は、ドアインナパネル7の形状に応じて、ドアインナパネル7の外面7dにおいて当接面58aの接触面積が確保される所定の部位に当接するように配設されている。本実施形態では、受け部55のうち、第1のクランプ機構部32Aの近傍の受け部55Aは、マテハン本体部33の左上の角部の近傍の位置に設けられている。また、第2のクランプ機構部32Bの近傍の受け部55Bは、マテハン本体部33の右上の角部から上方に延設された支持ステー56により、同角部の上方の位置に設けられている。
【0064】
また、第3のクランプ機構部32Cの近傍の受け部55Cは、マテハン本体部33の左下の角部から下方に延設された支持ステー56により、同角部の下方の位置に設けられている。また、第4のクランプ機構部32Dの近傍の受け部55Dは、マテハン本体部33の右下の角部の近傍の位置に設けられている。なお、各受け部55の近傍には、マテハン装置21によるドアインナパネル7のクランプ状態等を検出するため、例えば近接スイッチ等のセンサが適宜設けられる。本実施形態では、右上の受け部55Bおよび左下の受け部55Cそれぞれの近傍において、近接スイッチ59が支持ステー56に対して所定の支持部材を介して支持された状態で設けられている。
【0065】
以上のように、マテハン本体部33に対して4箇所に配設されたクランプ機構部32と、各クランプ機構部32の近傍に位置する受け部55との組合せにより、ドアインナパネル7が4箇所で挟持されクランプされた状態となる。これにより、マテハン装置21によってドア3が把持された状態となる。なお、マテハン装置21によるドアインナパネル7のクランプに際しては、2箇所の係合ピン31のドアインナパネル7に対する挿入係合により、ドア3に対するマテハン装置21の位置決めが行われる。
【0066】
以上のような構成を備えたマテハン装置21は、いわゆるオートツールチェンジャとして構成されたチャック機構60により、フローティングユニット20に連結されている。すなわち、チャック機構60は、マテハン装置21とフローティングユニット20との連結部を構成するものであり、フローティングユニット20側には、チャック機構60を構成する一側(マスタ側)の連結プレート部61が設けられており、マテハン装置21側には、チャック機構60を構成する他側(ツール側)の連結プレート部62が設けられている。
【0067】
チャック機構60を構成する連結プレート部61,62は、いずれも略円板状に構成されている。マテハン装置21において、連結プレート部62は、マテハン本体部33を構成する2本の縦フレーム部33e,33f間に架設された支持プレート63に対し、その後面側に、ボルト等の固定具によって固定状態で取り付けられている。
【0068】
チャック機構60は、連結プレート部61,62同士をエア圧によって着脱させる構成を備えたものである。チャック機構60は、例えば、連結プレート部61,62同士の着脱機構としてボールロック方式を採用したものである。なお、チャック機構60の構成は、特に限定されるものではない。
【0069】
また、マテハン装置21においては、マテハン本体部33に、制御ボックス65が支持されている。制御ボックス65は、右フレーム部33dと左右方向の中央側の縦フレーム部33fとの間に架設された上下2本の支持フレーム部33gの後側に、ボルト等の固定具によって固定されている。制御ボックス65内には、例えばクランプ機構部32やチャック機構60等の各種装置を動作させるための電気・通信機器等が収納されている。
【0070】
[フローティングユニットの構成の概略]
フローティングユニット20は、マテハン装置21およびナットランナユニット22を支持する支持本体部70を有する。支持本体部70は、フローティングユニット20において、フローティング状態に移動可能に設けられる。すなわち、支持本体部70は、フローティングユニット20において、X軸、Y軸およびZ軸の3次元直交座標における各軸方向に移動可能に設けられるとともに、X軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの回動方向θx、θy、θzに回動可能に設けられている(
図18から
図20参照)。
【0071】
したがって、フローティングユニット20は、支持本体部70を第1の方向であるX軸方向(X方向)に移動可能に支持する第1シフト機構部としてのX方向シフト機構部71と、支持本体部70をX方向に直交するY軸方向(Y方向、第2の方向)に移動可能に支持する第2シフト機構部としてのY方向シフト機構部72と、支持本体部70をX方向およびY方向に直交するZ軸方向(Z方向、第3の方向)に移動可能に支持する第3シフト機構部としてのZ方向シフト機構部73とを有する。
【0072】
また、フローティングユニット20は、支持本体部70をX方向を中心軸方向として回動可能に支持する第1回動機構部としてのX軸回動機構部74と、支持本体部70をY方向を中心軸方向として回動可能に支持する第2回動機構部としてのY軸回動機構部75と、支持本体部70をZ方向を中心軸方向として回動可能に支持する第3回動機構部としてのZ軸回動機構部76とを有する。なお、フローティングユニット20において、マテハン装置21を支持する側となるX方向の一側(
図20における左側)を前側(正面側)とし、その反対側を後側、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。
【0073】
そして、フローティングユニット20において、X方向シフト機構部71、Y方向シフト機構部72、およびZ方向シフト機構部73は、それぞれ支持本体部70を移動可能に支持する方向について支持本体部70の移動を停止させるシフトロック機構(211,231,166)を有する。また、X軸回動機構部74、Y軸回動機構部75、およびZ軸回動機構部76は、それぞれ支持本体部70を回動可能に支持する回動方向について支持本体部70の回動を停止させる回動ロック機構(回動支持機構128,303、ブレーキユニット265)を有する。
【0074】
支持本体部70は、全体として略板状の部分であり、フローティングユニット20における前面側に設けられている。支持本体部70は、矩形板状の部材により構成された板状基部77を有する。板状基部77は、X方向を板厚方向とする。板状基部77に対しては、その前面77a側に、チャック機構60を構成するマスタ側の連結プレート部61が、ボルト64等の固定具により固定された状態で設けられている。フローティングユニット20の各部の構成については後述する。
【0075】
[ナットランナユニットの構成]
ナットランナユニット22について、
図4から
図8および
図22から
図24を参照して説明する。ナットランナユニット22は、そのベース部をなす基部支持プレート81と、基部支持プレート81に対して移動可能に支持された2本のナットランナ80とを有する。基部支持プレート81は、板厚方向をY方向とする矩形板状の部材である。
【0076】
ナットランナ80は、モータを駆動源とした電動ナットランナ(電動トルクレンチ)である。ナットランナ80は、全体として直線状に構成されており、その一側の端部に、回転駆動部として、ボルト等の締結具に係合するソケット等からなる係合駆動部80aを有する。
【0077】
各ナットランナ80は、その長手方向を所定の方向(X方向)に沿わせるように基部支持プレート81に支持されている。2本のナットランナ80は、上下方向(Z方向)に所定の間隔を隔てて互いに平行に配置されている。上下のナットランナ80は、車体2とドア3との間において上下2箇所に設けられた各ヒンジ部13(
図3参照)に対応し、ヒンジボルト17の締結解除に用いられる。すなわち、上側のナットランナ80(80A)は、上側のヒンジ部13(13A)のヒンジボルト17の締結を緩めるために用いられ、下側のナットランナ80(80B)は、下側のヒンジ部13(13B)のヒンジボルト17の締結を緩めるために用いられる。
【0078】
各ナットランナ80は、基部支持プレート81に対して、所定の移動機構を介してX方向およびY方向に移動可能に設けられている。また、2本のナットランナ80は、Z方向の間隔が変化するように相対移動可能に設けられている。具体的には次のとおりである。
【0079】
上側のナットランナ80Aは、エアシリンダ82により、Y方向に移動可能に設けられ、電動シリンダ83により、X方向に移動可能に設けられている。エアシリンダ82は、エアを動力としてシリンダ本体に対して往復移動するロッドを有し、シリンダ本体からのロッドの突出側をY方向外側(
図24における左側)に向けて、基部支持プレート81と平行な固定支持プレート84に固定されている。固定支持プレート84は、基部支持プレート81に対して、Y方向外側の板面に、基部支持プレート81の上縁部に沿って設けられた角柱状の受け部材85を介して、基部支持プレート81から上側に突出するように設けられている。
【0080】
固定支持プレート84のY方向外側には、X方向に所定の間隔を隔てた一対のボールスプライン機構86を介して、上側取付プレート87が設けられている。ボールスプライン機構86は、筒状の保持筒86aとこの保持筒86aを挿通するとともにボールスプライン構造によりガイド筒に対して摺動自在に設けられたスプライン軸86bとを有するガイド部材である。ボールスプライン機構86は、その軸方向をY方向に向けて、固定支持プレート84に対して保持筒を貫通させた状態で設けられ、保持筒を固定支持プレート84に、スプライン軸を上側取付プレート87にそれぞれ固定させている。
【0081】
上側取付プレート87は、固定支持プレート84と平行状に配置され、エアシリンダ82のロッドの連結を受け、エアシリンダ82の動作によって、固定支持プレート84に対してY方向に往復移動するように設けられている。上側取付プレート87の移動が、一対のボールスプライン機構86によりガイドされる。
【0082】
上側取付プレート87のY方向外側には、モータを駆動源とした電動シリンダ83が取り付けられている。電動シリンダ83は、モータの回転駆動によってシリンダ本体に対して往復移動するロッド83aを有し、シリンダ本体からのロッド83aの突出側をX方向後側(
図23における右側)に向けて、上側取付プレート87に固定されている。電動シリンダ83のシリンダ本体内には、モータや、モータの回転をロッド83aの往復直線運動に変換する変換機構等が収納されている。電動シリンダ83は、図示せぬ制御部に接続されており、かかる制御部によりモータの動作が制御され、ロッド83aの移動量が調整される。
【0083】
上側取付プレート87における電動シリンダ83の下方の位置には、X方向をスライド方向とする横方向スライド機構部88が設けられている。横方向スライド機構部88は、上側取付プレート87に固定された直線状のリニアガイド88aと、リニアガイド88aにスライド自在に係合したスライダ88bとを有する。スライダ88bには、上側取付プレート87に対向する上側移動プレート89が固定されている。
【0084】
上側移動プレート89は、そのX方向後側に、上方に突出した突片部89aを有し、この突片部89aを、連結部材90を介して、電動シリンダ83のロッド83aに連結させている。これにより、上側移動プレート89は、電動シリンダ83の動作によって、横方向スライド機構部88のスライダ88bと一体的にX方向に移動する。このように電動シリンダ83の動作によってX方向に移動する上側移動プレート89に、上側のナットランナ80Aが固定されている。ナットランナ80Aは、上側移動プレート89のY方向外側の板面に、長手方向について2箇所で、半円状の支持面を有する2つの分割体91aおよびこれらを上側移動プレート89に固定するボルト91bを含む取付部91により固定状態で支持されている。
【0085】
下側のナットランナ80Bは、上側のナットランナ80Aを支持する固定支持プレート84に対してZ方向に相対移動可能に設けられた上下移動支持プレート92に対して、上側のナットランナ80Aと同様の構成により、X方向およびY方向に移動可能に支持されている。
【0086】
上下移動支持プレート92は、基部支持プレート81のY方向外側の板面に取り付けられた電動シリンダ93の動作により、上下方向に移動するように設けられている。電動シリンダ93は、電動シリンダ83と同様の構成を備えたものであり、モータの回転駆動によってシリンダ本体に対して往復移動するロッド93aを有し、シリンダ本体からのロッド93aの突出側をZ方向下側(
図23における下側)に向けて、上側取付プレート87に固定されている。なお、電動シリンダ93は、電動シリンダ83と同様に図示せぬ制御部による動作制御を受ける。
【0087】
基部支持プレート81における電動シリンダ93のX方向の両側の位置には、Z方向をスライド方向とする縦方向スライド機構部94が設けられている。縦方向スライド機構部94は、基部支持プレート81に固定された直線状のリニアガイド94aと、リニアガイド94aにスライド自在に係合したスライダ94bとを有する。スライダ94bには、上下移動支持プレート92が固定されている。ここで、上下移動支持プレート92は、その上部に、電動シリンダ93との干渉を避けるための凹部92aを有し、凹部92aをなす両側の突片部92bのそれぞれの上端部を、スライダ94bに固定させている。
【0088】
上下移動支持プレート92のY方向内側の板面における上下略中央部に、連結部材95を介して、電動シリンダ93のロッド93aが連結されている。これにより、上下移動支持プレート92は、電動シリンダ93の動作によって、縦方向スライド機構部94のスライダ94bと一体的にZ方向に移動する。このように電動シリンダ93の動作によってZ方向に移動する上下移動支持プレート92の下部に、下側のナットランナ80Bが、固定支持プレート84に対する上側のナットランナ80Aの支持構造と同様の構成により支持されている。すなわち、下側のナットランナ80Bは、上下移動支持プレート92に対して、エアシリンダ82により、Y方向に移動可能に設けられ、電動シリンダ83により、X方向に移動可能に設けられている。上下移動支持プレート92に対するナットランナ80Bの支持構造については、固定支持プレート84に対するナットランナ80Aの支持構造と同様の符号を付して説明を省略する。
【0089】
ナットランナユニット22は、フローティングユニット20に対してY方向の外側に配置され、フローティングユニット20の支持本体部70に取り付けられている。具体的には、ナットランナユニット22においては、基部支持プレート81のY方向の内側に、基部支持プレート81の前縁部に沿ってY方向内側に突出した取付用突片部96が設けられている。取付用突片部96は、基部支持プレート81に柱状の部材が固定されることにより設けられている。
【0090】
一方、フローティングユニット20においては、支持本体部70の板状基部77の前側に、板状基部77のY方向外側の縁部に沿って前側に突出した被取付部97が設けられている。被取付部97は、板状基部77に柱状の部材がボルト97bにより固定されることによって設けられている。ナットランナユニット22は、取付用突片部96を、フローティングユニット20側の被取付部97に対して前側から重ね、取付用突片部96を貫通するボルト98等により板状基部77に固定されている。このため、取付用突片部96および被取付部97には、それぞれボルト98を貫通あるいは螺挿させるためのボルト孔96a,97aが複数形成されている。このように、ナットランナユニット22は、フローティングユニット20に固定支持され、ロボット4の動作によってフローティングユニット20と一体的に移動する。
【0091】
以上のような構成を備えたナットランナユニット22は、フローティングユニット20に取り付けられる取付基部として、基部支持プレート81および取付用突片部96を含む構成を有する。そして、各ナットランナ80が、取付基部に移動可能に支持され、ドア3を車体2に支持するための締結部品であるヒンジボルト17に係合してヒンジボルト17の締結を解除する締結解除装置として機能する。締結が解除されたヒンジボルト17は、ナットランナ80の動作によってドア3のドア前側壁部3dから取り外される。
【0092】
[ドア開きアームの構成]
ドア開きアーム23について、
図4から
図8および
図25から
図29を参照して説明する。ドア開きアーム23は、全体として棒状に構成されており、アルミフレーム等により構成された直線状のフレーム本体部101と、フレーム本体部101の一側の端部に設けられたドア係止部102とを有する。ドア開きアーム23は、フローティングユニット20に取り付けられ、ロボット4の動作によってフローティングユニット20と一体的に移動する。すなわち、ドア取外し装置1は、ロボット4の動作によって、閉じた状態のドア3に対して、ドア開きアーム23のドア係止部102を所定の部位に係止させ、ロボット4のドア開き動作によって、ドア開きアーム23によりドア3を引っ張る態様でドア3を所定の開き位置まで開く。なお、ドア開きアーム23においては、フレーム本体部101の長手方向(
図26における左右方向)を前後方向とし、フレーム本体部101に対するドア係止部102の配設側(
図26における左側)を前側、その反対側(
図26における右側)を後側とする。
【0093】
ドア係止部102は、上下方向を中心軸方向とする略円筒形状をなす係止体103を有する。係止体103は、その下側の過半部をなす係止パッド104と、係止体103の上部をなすとともに係止パッド104を支持する支持板部105とを有する。係止パッド104は、例えばゴムやスポンジ等の弾性材からなり、下端面を係止面104aとする。係止面104aには、所定の凹凸形状が形成されている。係止面104aの凹凸形状は、例えば、整然と配された四角錐状の突部群により形成されている。係止パッド104は、係止パッド104を上下方向に貫通するボルト104bにより支持板部105に固定されている。
【0094】
ドア係止部102は、ドア3に対して、ドア本体部3aの上縁に沿って上側に開口した開口部3eに係止体103を接触させてドア3に係止された状態となる(
図29参照)。係止体103は、係止パッド104をドア3の開口部3aに上側から接触ないし圧接させることで、係止面104aの凹凸形状および係止パッド104の弾性変形により、ドア3に係止される。開口部3eは、ドアアウタパネル6とドアインナパネル7とにより形成され、窓ガラス出没用の開口をなす。なお、
図29には、係止体103が係止パッド104を開口部3eをなすドアアウタパネル6の上縁に接触させた状態を示している。
【0095】
係止体103は、フレーム本体部101の一端側に、上下方向弾性支持機構部106Aおよび横方向弾性支持機構部106Bを介して取り付けられている。
【0096】
上下方向弾性支持機構部106Aは、係止体103の上方に設けられたブロック状の支持基部107と、支持基部107を上下方向に貫通するとともに下側に係止体103を支持するリニアシャフトである上下支持軸108と、支持基部107に対して係止体103を下方に向けて付勢するコイルスプリング109とを有する。
【0097】
支持基部107は、フレーム本体部101の先端部の前下方の位置に設けられており、いずれも水平面状の上面107aおよび下面107bを有する。上下支持軸108は、支持基部107に対して、略円筒状のリニアブッシュ110を介して上下方向に移動可能に支持されている。リニアブッシュ110は、筒軸方向の一側に矩形状のフランジ部110aを有し、上下方向を筒軸方向として支持基部107の中央部に挿嵌されるとともに、フランジ部110aを、支持基部107の上面107aの上側に位置させた状態で、フランジ部110aを貫通するボルト110bにより支持基部107に固定されている。
【0098】
上下支持軸108は、係止体103の支持板部105を下側から貫通するボルト108aにより支持板部105に固定されており、円筒状の係止体103に対して同軸状に上方に向けて延出している。上下支持軸108の上端部には、上下支持軸108を支持基部107に係止させるための円板状のワッシャからなる係止板111が設けられている。係止板111は、係止板111を貫通するとともに上下支持軸108に上側から螺挿されるボルト111aにより、上下支持軸108に固定されている。係止板111は、支持基部107に対して上面107aに接触することで、上下支持軸108を支持基部107に係止させる。
【0099】
コイルスプリング109は、上下支持軸108を貫通させた状態で、係止体103と支持基部107との間に介在している。コイルスプリング109は、上下支持軸108を貫通させた状態で、下端を支持板部105の上面である係止体103の上面103bに当接させ、上端を支持基部107の下面107bに当接させている。コイルスプリング109は、その弾性力により、係止体103を、支持基部107に対して下方に向けて付勢している。
【0100】
横方向弾性支持機構部106Bは、フレーム本体部101の一側の端部の下側に固定された支持プレート112と、支持基部107を支持する2本の横方向支持軸113と、支持プレート112に支持軸113を支持する支持ブロック114と、横方向支持軸113を介して支持基部107を付勢するコイルスプリング115とを有する。
【0101】
支持プレート112は、フレーム本体部101よりも幅広の長方形状の部材であり、長手方向の一側をフレーム本体部101の一端側(先端側)から突出させて、ボルト112aによりフレーム本体部101の下側に固定されている。横方向支持軸113は、フレーム本体部101の長手方向を軸方向とし、前端側を支持基部107にボルト等によって締結させ、支持基部107に固定されている。2本の横方向支持軸113は、ドア開きアーム23において平面視でフレーム本体部101の長手方向に対して直交する方向(
図26における上下方向)について対称に横並びに配設されている。
【0102】
2本の横方向支持軸113は、それぞれの後端側を、共通の検知プレート116に対してボルト116cにより固定させている。検知プレート116は、矩形板状の部材であり、2本の横方向支持軸113間に架設された態様で設けられている。検知プレート116は、横方向支持軸113側の板面である前面116aと、その反対側の板面である後面116bとを有する。
【0103】
支持ブロック114は、矩形厚板状の外形を有するとともに、2本の横方向支持軸113をそれぞれ貫通させて支持するための支持孔114aを有する。支持ブロック114は、支持プレート112のフレーム本体部101からの突出部分の下側にボルト114bにより固定されている。支持ブロック114は、その前側方に支持基部107を位置させ、支持孔114aに挿嵌されるとともに横方向支持軸113を挿通させた略円筒状のリニアブッシュ117を介して、横方向支持軸113をその軸方向に移動可能に支持する。リニアブッシュ117は、筒軸方向の一側(後側)に矩形状のフランジ部を有し、フレーム本体部101の長手方向を筒軸方向として支持ブロック114を貫通するとともに、フランジ部を支持ブロック114の後側に位置させた状態で、フランジ部を貫通するボルトにより支持ブロック114に固定されている。リニアブッシュ117は、その前部を支持ブロック114から前方に突出させるとともに、前端面を支持基部107の後面107cに当接させている。
【0104】
各コイルスプリング115は、横方向支持軸113を貫通させるとともに、支持ブロック114の後側にフランジ部を露出させたリニアブッシュ117の後面117bと、検知プレート116の前面116aとの間に介装されている。コイルスプリング115は、その弾性力により、上下方向弾性支持機構部106Aおよび係止体103並びに2本の横方向支持軸113を含む一体的な構成を、支持ブロック114に対して後方(
図27において右方)に向けて付勢している。
【0105】
このような構成により、係止体103は、フレーム本体部101に対して、上下方向弾性支持機構部106Aおよび横方向弾性支持機構部106Bにより、上下方向および横方向(前後方向)の各方向について付勢された状態で移動可能に弾性支持されている。そして、係止体103がドア3に係止した状態で、ロボット4の動作によってフレーム本体部101が引っ張られることで、上下方向弾性支持機構部106Aおよび係止体103並びに2本の横方向支持軸113を含む一体的な構成は、コイルスプリング115の付勢力に抗して、フレーム本体部101に対して相対的に前方へ移動する。なお、フレーム本体部101に対する上記一体的な構成の後方への移動は、支持ブロック114の前側に突出しているリニアブッシュ117に支持基部107が当接した状態で規制される。
【0106】
また、ドア開きアーム23においては、係止体103の位置を検出するためのセンサ118が設けられている。センサ118は、例えば磁性金属の有無を検出する近接センサである。センサ118は、その検出面を検知プレート116の後面106bに対向させるように、L字金具であるステー119を介して、支持プレート112の後端部の下側に支持固定されている。センサ118により、検知プレート106を介して、前後方向について、係止体103を含む一体的な構成が初期位置(後端位置)にあること等が検出される。センサ118は、図示せぬ制御部に接続されており、センサ118の検出信号は、ドア取外し装置1の動作制御において適宜用いられる。
【0107】
ドア開きアーム23は、フレーム本体部101の後端部の下側に設けられた取付プレート120により、フローティングユニット20の上側に取り付けられた回動支持ユニット25のアタッチメントプレート28に固定される。取付プレート120は、フレーム本体部101よりも幅広の長方形状の部材であり、短手方向の一側をフレーム本体部101の後端部においてその幅方向の一側から突出させて、ボルト120aによりフレーム本体部101の下側に固定されている。
【0108】
ドア開きアーム23は、フレーム本体部101の長手方向をY方向とする向きで、フローティングユニット20に対して前側の上部に配置されている。ドア開きアーム23は、取付プレート120のフレーム本体部101からの突出部分を、アタッチメントプレート28の前側の縁部に沿ってボルト等によって固定させることで、フローティングユニット20からY方向の外側(
図5において右側)に向けて延設されている。
【0109】
以上のように、本実施形態に係るドア開きアーム23は、ドア3に対する係止部としてドア係止部102を有し、ドア係止部102をドア3の所定の部位に係止させた状態で、フローティングユニット20とともに移動することで、ドア3を開けるドア開き装置として機能する。なお、本実施形態では、ドア開きアーム23は、回動支持ユニット25のアタッチメントプレート28に固定されているが、フローティングユニット20を構成する部材に固定されてもよい。
【0110】
[フローティングユニットの構成の詳細]
以下では、フローティングユニット20の構成の詳細について、
図18から
図21および
図30から
図58を参照して説明する。フローティングユニット20においては、フローティングユニット20が有する複数のシフト機構部および回動機構部により、複数のサブユニットが構成されている。
【0111】
具体的には、
図21に示すように、フローティングユニット20は、支持本体部70とX軸回動機構部74とを含む第1サブユニット121と、第1サブユニット121の後側に設けられ、Z方向シフト機構部73およびY軸回動機構部75の一部を含む第2サブユニット122と、第2サブユニット122の上側に設けられ、第2サブユニット122をY方向を回動軸方向として回動可能に支持するとともに、X方向シフト機構部71およびY方向シフト機構部72を含む第3サブユニット123とを備える。かかる構成において、第3サブユニット123の上側に、Z軸回動機構部76が設けられており、第2サブユニット122および第3サブユニット123の後側に、Y軸回動機構部75の一部を構成する一対のY軸回動用シリンダ機構78が設けられている。
【0112】
まず、第1サブユニット121について、
図30から
図35を参照して説明する。第1サブユニット121においては、板状基部77の後側に、X軸回動機構部74が設けられている。X軸回動機構部74は、上下方向について板状基部77と略同じ上下寸法を有しX軸方向視で略正方形状の外形をなすX軸回動用基部126を有し、X軸回動用基部126に対して、支持本体部70(板状基部77)を、X軸方向を回動軸方向として回動可能に支持する。支持本体部70は、回転軸127、回動支持機構128、およびベアリング129を介して、X軸回動用基部126に回動可能に支持されている。
【0113】
X軸回動用基部126は、中心軸方向をX方向とした略円筒状の本体部126aと、本体部126aの後側に設けられ本体部126aから径方向外側に突設されてX方向視でX軸回動用基部126の外形をなすフランジ部126bとを有する。X軸回動用基部126は、全体として本体部126aの中心軸方向に貫通した孔部を形成している。本体部126aの内周側における中心軸方向の中央部に、X軸回動用基部126の孔部の孔径(内径)を部分的に縮径させた内周突条部126cを有する(
図33、
図34参照)。
【0114】
X軸回動用基部126においては、内周突条部126cにより、X軸回動用基部126の前側に、円周状の前側嵌合凹部126dが形成されている。前側嵌合凹部126dは、ベアリング129嵌合用の凹部として、本体部126aの前面に対して段下がり状に形成されている。また、内周突条部126cにより、X軸回動用基部126の後側に、円周状の後側嵌合凹部126eが形成されている。後側嵌合凹部126eは、回動支持機構128嵌合用の凹部として、フランジ部126bの後面に対して段下がり状に形成されている。
【0115】
回転軸127は、X方向を軸方向とする筒状の軸部127aと、軸部127aの軸方向の中間部に形成された拡径部であるフランジ部127bとを有する。回転軸127は、その軸方向について、X軸回動用基部126に対して、フランジ部127bを内周突条部126cの形成部位に符合させ、フランジ部127bの外周面127fを内周突条部126cの内周面126fに接触させた状態で、X軸回動用基部126内に設けられている。
【0116】
回動支持機構128は、全体として円板状の外形を有するとともに中央部に回転軸127の後部を挿入させる孔部128aを有する。回動支持機構128は、回動支持機構128の外形をなすドーナツ状の本体部128bと、本体部128bの内周側に設けられた円環状の取付フランジ部128cとを有する。本体部128bおよび取付フランジ部128cは、相対的に同軸回転可能に構成されている。
【0117】
回動支持機構128において、本体部128bおよび取付フランジ部128cは、本体部128b内に収納されたスプリング等の弾性部材を介して相互作用している。そして、回動支持機構128は、空気圧の給排を行うための経路を有し、X軸回動用基部126の本体部126aの外周側に取り付けられた給排ノズル125を介して、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。給排ノズル125には、空気圧の給排を行うための給排気管構造(図示略)が接続されている。回動支持機構128は、空気圧の供給時には本体部128bに対する取付フランジ部128cのクランプを開放し(相対回転可能とし)、排気時には本体部128bに対して取付フランジ部128cがクランプする(相対回転不能とする)ように構成されている。
【0118】
回動支持機構128は、X軸回動用基部126の後側嵌合凹部126eに嵌合した状態で、本体部128bを、X軸回動用基部126に対して、ボルト130によって複数箇所で固定させている。また、取付フランジ部128cは、後部を回動支持機構128の孔部に挿入させた回転軸127に対して、ボルト131によって複数箇所で固定されている。一方、回転軸127の前側には、支持本体部70の板状基部77が固定されている。
【0119】
このような構成により、回動支持機構128のクランプ・アンクランプの動作切換えによって、X軸回動用基部126に対する回転軸127の回転不能状態と回転可能状態とが切り換えられる。これにより、回動支持機構128に対する支持本体部70のX軸回りの回動について、任意の位置で回動がロックされる。このように、X軸回動機構部74は、回転軸127に間接的に支持する支持本体部70を回動可能に支持する回動方向、つまりX軸回りの回動方向について支持本体部70の回動を停止させる回動ロック機構として機能する回動支持機構128を有する。なお、回動支持機構128としては、例えば、鍋屋バイテック会社製の「リニアクランパ・ズィー(登録商標)」を用いることができる。
【0120】
ベアリング129は、複数のコロ129aを介して相対回転可能に構成された外輪129bおよび内輪129cを有する円環状の部材である。ベアリング129は、回転軸127の前部を、X軸回動用基部126に対して支持する。
【0121】
ベアリング129は、回転軸127の前部を貫通させるとともに、外周面に外嵌されたOリング129d等を介してX軸回動用基部126の前側嵌合凹部126dに嵌合した状態で、外輪129bを、X軸回動用基部126に対して、ボルト132によって複数箇所で固定させている。一方、内輪129cは、前部を貫通させた回転軸127に対して、ボルト133によって複数箇所でフランジ部127bに固定されている。ベアリング129としては、例えば、コロ129aとして円筒形状のコロを用いたクロスローラベアリングが用いられる。
【0122】
X軸回動用基部126に対して回動可能に支持された回転軸127には、その前側から、支持本体部70を構成する板状基部77が固定される。回転軸127は、フランジ部127bの前側にフランジ部127bに対する縮径部分であるボス部127cを有し、ボス部127cには、その前面に開口したボルト孔127dが複数箇所に形成されている。そして、ボルト孔127dに合わせて板状基部77の中央部に形成された孔部77bを貫通するボルト134が、ボルト孔127dに螺挿されることで、回転軸127が板状基部77に固定されている。なお、ボス部127cは、回転軸127においてベアリング129が外嵌される部分となる。また、回転軸127の前端部には縮径部127gが形成されており、縮径部127gは、板状基部77の中央部に形成された孔部77cに嵌合している。
【0123】
以上のような構成により、支持本体部70が、X軸回動用基部126に対してX軸回りに回動可能に支持されている。そして、このX軸回動用基部126に対する支持本体部70のX軸回りの回動について、第1サブユニット121は、エアシリンダ135により、中立位置を基準としてバランスするように構成されている。すなわち、第1サブユニット121は、X軸回動機構部74のX軸回動用基部126に対して支持本体部70をX軸回りにフローティング状態で支持するためのバランサとして、エアシリンダ135を有する。なお、
図18から
図20においては、便宜上、エアシリンダ135およびその支持構成の図示を省略している。
【0124】
エアシリンダ135は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略四角筒状のシリンダ本体136と、シリンダ本体136に対して往復動作するピストンロッド137とを有する。エアシリンダ135は、シリンダ本体136内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル138を有し、例えば電空レギュレータ等のレギュレータ(図示略)に接続されており、電空レギュレータによって圧力が制御されたエアの供給を受ける。エアシリンダ135は、給排ノズル138からのシリンダ本体136内に対するエアの給排により、シリンダ本体136に対してピストンロッド137を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0125】
そして、エアシリンダ135においては、ピストンロッド137の位置が所定の中立位置を保持するようにエアの給排制御が行われ、ピストンロッド137の動作について、その中立位置を基準としたフローティング状態が得られる。すなわち、ピストンロッド137に作用する荷重等に応じて、ピストンロッド137がその往復動作をともなって中立位置に位置するように、エアシリンダ135に供給されるエア圧が調整される。
【0126】
エアシリンダ135は、ピストンロッド137の突出側を下側とする向きで、X軸回動用基部126に固定された上支持アーム141と、板状基部77に固定された下支持アーム142との間に上下方向に架設されている。上支持アーム141および下支持アーム142は、それぞれアーム本体部141a,142aをX軸回動用基部126および板状基部77からY方向内側(
図30において左側)に突設されている。上支持アーム141および下支持アーム142は、X方向について互いに同じ位置に設けられ、アーム本体部141aおよびアーム本体部142a同士を互いに略平行に突設させている。
【0127】
上支持アーム141は、略「L」字状の部材であり、その角部を上側とするとともに一側の辺部を上下方向に沿わせた向きで、同辺部を角柱状のスペーサ143を介してボルト144によりX軸回動用基部126のフランジ部126bのY方向内側の部分に固定させている。これにより、上支持アーム141は、その略「L」字状の他側の辺部を、上側のアーム本体部141aとしてY方向内側に向けて突出させている。
【0128】
下支持アーム142は、略「L」字状の部材であり、その角部を下側とするとともに一側の辺部を上下方向に沿わせた向きで、同辺部を角柱状のスペーサ145を介してボルト146により板状基部77のY方向内側の部分に固定させている。これにより、下支持アーム142は、その略「L」字状の他側の辺部を、下側のアーム本体部142aとしてY方向内側に向けて突出させている。
【0129】
エアシリンダ135は、ロッド突出側と反対側となるシリンダ本体136の上面部に、上軸支部147を有し、ピストンロッド137の先端側(下側)の部分に、下軸支部148を有する。上軸支部147および下軸支部148は、いずれも、軸方向をX方向とし両端側が支持された支軸147a,148aを有する。エアシリンダ135は、上側のアーム本体部141aの先端部に上軸支部147の支軸147aを貫通させた状態で、アーム本体部141aに対して回動可能に支持されるとともに、下側のアーム本体部142aの先端部に下軸支部148の支軸148aを貫通させた状態で、アーム本体部142aに対して回動可能に支持されている。
【0130】
以上のような構成を備えた第1サブユニット121において、エアシリンダ135の伸縮動作をともなって、X軸回動機構部74のX軸回動用基部126に対する支持本体部70のX軸回りに回動について、フローティング支持状態が得られる。なお、支持本体部70をX軸回りにフローティング支持するための構成としては、エアシリンダ135に限らず、例えば油圧シリンダ等の他のシリンダ機構その他のアクチュエータが適宜用いられる。
【0131】
また、X軸回動機構部74は、支持本体部70をそのX軸回りの回動についてセンタリングするためのX軸回動センタリング機構を有する。X軸回動センタリング機構は、エアシリンダ151と、係止ピン152とを有し、エアシリンダ151の動作によって、係止ピン152を回転軸127に係合させることで、回転軸127をその回転方向について所定の位置でロックする。
【0132】
エアシリンダ151は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略直方体状のシリンダ本体153と、シリンダ本体153に対して往復動作するピストンロッド154とを有する。エアシリンダ151は、シリンダ本体153内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル155を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ151は、給排ノズル155からのシリンダ本体153内に対するエアの給排により、シリンダ本体153に対してピストンロッド154を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0133】
エアシリンダ151は、X軸回動用基部126の本体部126aの下側に、ピストンロッド154の突出側を上側として固定されている。ピストンロッド154の先端側に、これと同軸状に係止ピン152が固定されている。係止ピン152は、ピストンロッド154と略同径の部分をなす。X軸回動用基部126の本体部126aの下側には、ピストンロッド154および係止ピン152を貫通させる孔部126gが形成されている。孔部126gは、X軸回動用基部126において、X方向について内周突条部126cの部分に形成されている。つまり、孔部126gの外側は、本体部126aの外周面に開口するとともに、孔部126gの内側は、内周突条部126cの内周面126fに開口している。
【0134】
本体部126aの下部には、外周面を水平面状とした平面部が形成されており、エアシリンダ151は、本体部126aの下部の平面部に対して、シリンダ本体153の上面を接触させた状態で、シリンダ本体153を貫通して本体部126aに螺挿されるボルト156により固定されている。そして、エアシリンダ151において上方に突出するピストンロッド154およびこれに固定された係止ピン152が、孔部126g内に挿入されている。孔部126g内には、係止ピン152の外径と略同じ内径を有し係止ピン152を貫通させる円筒状のブッシュ157が挿嵌されている。以上のような構成により、係止ピン152は、エアシリンダ151の動作によって、孔部126gを介して、内周突条部126cの内周面126fから出没するように構成されている。
【0135】
係止ピン152は、軸状の部材であり、その軸方向をZ方向とし、エアシリンダ151の動作にともなってピストンロッド154と一体的に上下方向に往復移動する。係止ピン152は、基端側の端部に縮径状の雄ネジ部152aを有し、ピストンロッド154の先端側に形成された雌ネジ部154aに対して螺合されて固定されている。また、係止ピン152は、その先端側の端部に、円錐状のテーパ部152bを有する。
【0136】
一方、回転軸127のフランジ部127bの下部の外周面には、係止ピン152のテーパ部152bを受け入れる係入穴127eが1箇所に形成されている。係入穴127eは、テーパ部152bの円錐状の外形に符合するように円錐穴状に形成された凹部である。回転軸127が支持本体部70に固定された構成において、回転軸127のX軸回りの回動角度について、係止ピン152による回転軸127のロック位置が、支持本体部70の所定の中心位置に対応するように、係入穴127eが所定の位置に設けられている。
【0137】
エアシリンダ151は、その作動状態において、ピストンロッド154を上側(突出側)に位置させ、係止ピン152を回転軸127に係合させる。ここで、係止ピン152は、そのテーパ部152bを回転軸127の係入穴127eに嵌合させ、回転軸127のX軸回りの回動を所定の位置で固定する。このように回転軸127が固定されることで、支持本体部70がX軸回りについてセンタリングされる。これにより、支持本体部70に対してチャック機構60を介して取り付けられたマテハン装置21が、X軸回りの回動位置についてセンタリングされる。
【0138】
一方、エアシリンダ151は、その非作動状態において、ピストンロッド154を下側(反突出側)に位置させ、回転軸127に対する係止ピン152の係合を解除する。この係合解除状態において、係止ピン152のテーパ部152bの尖端は、係入穴127eの外側(フランジ部127bの外周側)の部分に位置し、係入穴127eをなす円錐状の内周面との間の隙間(遊び)の範囲で、回転軸127の回動が許容される。言い換えると、係止ピン152の係合解除状態において、係止ピン152は、そのテーパ部152bの尖端を係入穴127e内に位置させており(フランジ部127bの外周面の位置よりも内側に突出させており)、回転軸127の回動が許容され、その回動範囲が、フランジ部127bの周方向の両側についてテーパ部152bの尖端が係入穴127eの内周面に接触する(回転軸127に干渉する)までの回動範囲に規制される。
【0139】
したがって、エアシリンダ151が非作動状態となることで、回転軸127に固定されるとともに前側にマテハン装置21を支持する支持本体部70が、係止ピン152により回動が規制される回転軸127の回動範囲で、回転軸127の軸心を中心としてX軸回りについてフローティング支持された状態となる(
図18、矢印F1参照)。
【0140】
次に、第2サブユニット122について、
図36から
図43を参照して説明する。第2サブユニット122は、Z軸シフト用基部160と、Z軸シフト用基部160の前側に設けられた移動取付プレート161と、Z方向シフト機構部73とを有し、Z方向シフト機構部73により、Z軸シフト用基部160に対して移動取付プレート161をZ方向に移動可能に支持している。なお、
図42においては、便宜上、移動取付プレート161の図示を省略している。
【0141】
Z軸シフト用基部160は、矩形板状の本体板部162と、その左右両側に設けられた一対のY軸回動用アーム部163とを有する。本体板部162は、前後方向を板厚方向とするとともに、第2サブユニット122の前側に設けられた第1サブユニット121のX軸回動用基部126と略同じ外形寸法を有し、X方向視でX軸回動用基部126に重なるように設けられている。
【0142】
Y軸回動用アーム部163は、略直角三角形状の板状部材により構成されており、その板状部材が、直角側を下側とするとともに、直角をなす一側の辺部を、本体板部162の左右の側面162aに沿わせ、ボルト164により複数箇所で本体板部162に固定されている。これにより、本体板部162の左右両側において、本体板部162から前方へ向けて突出したアーム部分163aが構成されている。
【0143】
移動取付プレート161は、本体板部162と略同じ外形寸法を有する矩形板状の部材であり、本体板部162の前方において本体板部162と平行に設けられている。移動取付プレート161は、Z方向シフト機構部73を構成する左右一対のスライド機構部165を介して、本体板部162に対してZ方向に相対移動可能に設けられている。
【0144】
スライド機構部165は、Z方向をスライド方向とするものであり、本体板部162の前側に固定された直線状のリニアガイド165aと、リニアガイド165aにスライド自在に係合したスライダ165bとを有する。左右のスライド機構部165のスライダ165bの前側に、移動取付プレート161がボルト等により固定されている。つまり、移動取付プレート161は、本体板部162に対して、左右のスライダ165bとともに一体的にZ方向に移動する。
【0145】
また、Z方向シフト機構部73においては、移動取付プレート161を任意の位置でロックするためのシフトロック機構166が各スライド機構部165に対して設けられている。シフトロック機構166は、スライダ165bと同様に、リニアガイド165aにスライド可能に係合するとともに、移動取付プレート161に固定されており、リニアガイド165a上においてスライダ165bの直下に位置する。
【0146】
シフトロック機構166は、リニアガイド165aに係合する本体166aと、リニアガイド165aを幅方向について圧接挟持してクランプするための一対の挟持機構とを有する。各挟持機構は、円筒状のケース166b内に収納された弾性部材としてのスプリングと、スプリングの弾性力を受けてZ方向に移動するピストンと、リニアガイド165aに圧接する圧接体と、ピストンが受けた弾性力を楔作用を用いて変換して圧接体に押圧力として作用させる変換機構部とを有する。
【0147】
そして、シフトロック機構166は、空気圧の給排を行うための経路を有し、空気圧の供給時には、一対の挟持機構によるリニアガイド165aに対するクランプを開放する(相対移動可能とする)ように構成されている。一方、シフトロック機構166は、空気圧の排気時には、一対の挟持機構のスプリングの弾性力によりリニアガイド165aにクランプしてロックする(相対移動不能とする)ように構成されている。シフトロック機構166においては、本体166aの側面に、本体166a内の給排経路に連通した給排ノズル166cが設けられており、この給排ノズル166cに、空気圧の給排を行うための給排気管構造(図示略)が接続される。
【0148】
このような構成により、Z軸シフト用基部160に対してZ方向に移動可能に設けられた移動取付プレート161の移動について、シフトロック機構166のクランプ・アンクランプの動作切換えによって、Z軸シフト用基部160に対する移動取付プレート161の移動不能状態と移動可能状態とが切り換えられる。これにより、Z軸シフト用基部160に対する移動取付プレート161のZ方向の移動について、任意の位置で移動がロックされる。このように、Z方向シフト機構部73は、移動取付プレート161に間接的に支持する支持本体部70を移動可能に支持する方向、つまりZ方向について支持本体部70の移動を停止させるシフトロック機構166を有する。なお、シフトロック機構166としては、例えば、鍋屋バイテック会社製の「リニアクランパ・ズィー(登録商標)」を用いることができる。また、シフトロック機構166は、電力や磁力により駆動するものであってもよい。
【0149】
Z軸シフト用基部160に対する移動取付プレート161のZ方向の移動について、第2サブユニット122は、エアシリンダ170により、中立位置を基準としてバランスするように構成されている。すなわち、第2サブユニット122は、Z軸シフト用基部160に対して移動取付プレート161をZ方向にフローティング状態で支持するためのバランサとして、エアシリンダ170を有する。
【0150】
エアシリンダ170は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略四角筒状のシリンダ本体171と、シリンダ本体171に対して往復動作するピストンロッド172とを有する。エアシリンダ170は、シリンダ本体171内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル173を有し、例えば電空レギュレータ等のレギュレータ(図示略)に接続されており、電空レギュレータによって圧力が制御されたエアの供給を受ける。エアシリンダ170は、給排ノズル173からのシリンダ本体171内に対するエアの給排により、シリンダ本体171に対してピストンロッド172を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0151】
そして、エアシリンダ170においては、ピストンロッド172の位置が所定の中立位置を保持するようにエアの給排制御が行われ、ピストンロッド172の動作について、その中立位置を基準としたフローティング状態が得られる。すなわち、ピストンロッド172に作用する荷重等に応じて、ピストンロッド172がその往復動作をともなって中立位置に位置するように、エアシリンダ170に供給されるエア圧が調整される。
【0152】
エアシリンダ170は、ピストンロッド172の突出側を下側とする向きで、スライダ165b等と同様に、移動取付プレート161の後側に固定されている。エアシリンダ170は、左右のスライド機構部165の間の位置となる、移動取付プレート161の上部の左右中央部に、シリンダ本体171の上下にボルト174aにより固定されたL字金具174を介して、ボルト175により複数箇所(4箇所)で移動取付プレート161に固定されている。
【0153】
エアシリンダ170は、ピストンロッド172の下端を、Z軸シフト用基部160側に常時当接させている。エアシリンダ170は、シリンダ本体171の略後半部を、本体板部162に形成された矩形状の開口部162bを介して、本体板部162の後面162cから後方に突出させている。つまり、開口部162bは、本体板部162においてシリンダ本体171との干渉を避けるために貫通形成された孔部である。
【0154】
そして、エアシリンダ170は、ピストンロッド172を、X方向について開口部162b内に位置させ、ピストンロッド172の先端面172aを、開口部162bの下辺をなす上向きの面である下辺面162dに対向させている。下辺面162dにおける先端面172aの対向部位には、ピストンロッド172の当接を受ける受部材176が設けられている。受部材176は、略「L」字状をなす屈曲板状の金具であり、L字状の一辺側をなす面部を下辺面162d上に重ねるとともに、L字状の他辺側をなす面部を後面162cに沿わせた状態で、ボルト177により本体板部162に固定されている。
【0155】
受部材176の上面176aが、ピストンロッド172の先端面172aの接触を受ける面となる。エアシリンダ170は、上述したようなエア圧の制御によって、ピストンロッド172の先端面172aを、受部材176の上面176aに常時接触させた状態となっている。すなわち、エアシリンダ170から本体板部162に作用する押圧力により、第1サブユニット121を介して支持本体部70を支持する移動取付プレート161が、重力に抗してZ軸シフト用基部160に対して支持された状態となる。
【0156】
以上のような構成を備えた第2サブユニット122において、エアシリンダ170の伸縮動作をともなって、Z方向シフト機構部73のZ軸シフト用基部160に対する移動取付プレート161のZ方向の移動について、フローティング支持状態が得られる。なお、移動取付プレート161をZ方向にフローティング支持するための構成としては、エアシリンダ170に限らず、例えば油圧シリンダ等の他のシリンダ機構その他のアクチュエータが適宜用いられる。
【0157】
また、Z方向シフト機構部73は、移動取付プレート161をそのZ方向の移動についてセンタリングするためのZ方向センタリング機構を有する。Z方向センタリング機構は、エアシリンダ181と、係止ボス182と、移動取付プレート161に固定され係止ボス182の係合を受ける凹部材183とを有する。Z方向センタリング機構は、エアシリンダ181の動作によって、係止ボス182を凹部材183に係合させることで、移動取付プレート161をZ方向についてZ軸シフト用基部160に対して所定の位置でロックする。
【0158】
エアシリンダ181は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略直方体状のシリンダ本体184と、シリンダ本体184に対して往復動作するピストンロッド185とを有する。エアシリンダ181は、シリンダ本体184内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル186を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ181は、給排ノズル186からのシリンダ本体184内に対するエアの給排により、シリンダ本体184に対してピストンロッド185を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0159】
エアシリンダ181は、本体板部162の後側に、ピストンロッド185の突出側を前側とする向きで固定されている。エアシリンダ181は、本体板部162の後面162cにシリンダ本体184の前面184aを接触させた状態で、ボルト187により固定されている。ボルト187は、略直方体状のシリンダ本体184の四隅の部分を貫通して本体板部162に螺挿される。
【0160】
係止ボス182は、ピストンロッド185に対して大径の略円筒状の部材であり、ピストンロッド185の先端側に、これと同軸状にボルト188により固定されている。ボルト188は、前側から係止ボス182を貫通し、ピストンロッド185にその先端側から軸方向に螺挿されている。
【0161】
本体板部162の下部の左右中央部には、ピストンロッド185および係止ボス182を貫通させる円形状の孔部162eが形成されている。また、本体板部162の孔部162eの前側には、矩形板状の外形を有するとともに孔部162eと略同径の孔部189aを有する貫通プレート189がボルト等により固定されている。本体板部162の孔部162eと貫通プレート189の孔部189aとは、一体的な円筒状の貫通孔部190を形成する。
【0162】
エアシリンダ181において前方に突出するピストンロッド185およびこれに固定された係止ボス182が、貫通孔部190内に挿入されている。ここで、係止ボス182は、貫通孔部190内に挿嵌されたブッシュ191内に挿嵌されている。ブッシュ191は、係止ボス182の外径と略同じ内径を有する円筒状の介装部材である。以上のような構成により、係止ボス182は、エアシリンダ181の動作によって、貫通孔部190から出没するように構成されている。
【0163】
係止ボス182は、その中心軸方向をX方向とし、エアシリンダ181の動作にともなってピストンロッド185と一体的に前後方向に往復移動する。係止ボス182は、その先端側の端部に、截頭円錐状のテーパ部182aを有する。
【0164】
一方、移動取付プレート161には、係止ボス182の嵌合を受ける凹部材183が設けられている。凹部材183は、中央部に貫通孔を有する円板状の部材であり、その中心軸方向をX方向として、係止ボス182の前方となる位置に設けられている。移動取付プレート161の下部の左右中央部には、凹部材183を取り付けるための円形状の取付孔161aが形成されている。凹部材183は、前側に縮径部183bを有し、この縮径部183bを取付孔161aに後側から嵌合させた状態で、凹部材183の周縁部を貫通するボルト192により複数箇所で移動取付プレート161に固定されている。
【0165】
凹部材183は、その後側に、係止ボス182のテーパ部182aの外周面形状に符合するように截頭円錐穴状の内周面をなす嵌合凹部183aを有する。係止ボス182は、テーパ部182aを嵌合凹部183aに嵌合させることで、凹部材183に係合する。Z軸シフト用基部160に対して移動取付プレート161がZ方向に移動可能に支持された構成において、移動取付プレート161のZ方向の位置について、係止ボス182による凹部材183に対する係合位置が、移動取付プレート161の所定の中心位置に対応するように、凹部材183が所定の位置に設けられている。
【0166】
エアシリンダ181は、その作動状態において、ピストンロッド185を前側(突出側)に位置させ、係止ボス182を凹部材183に係合させる。ここで、係止ボス182は、そのテーパ部182aを凹部材183の嵌合凹部183aに嵌合させ、移動取付プレート161の移動を所定の位置で固定する。このように移動取付プレート161が固定されることで、移動取付プレート161がセンタリングされる。これにより、移動取付プレート161に対して第1サブユニット121を介して取り付けられたマテハン装置21が、Z方向の位置についてセンタリングされる。
【0167】
一方、エアシリンダ181は、その非作動状態において、ピストンロッド185を後側(反突出側)に位置させ、凹部材183に対する係止ボス182の係合を解除する。この係合解除状態において、係止ボス182のテーパ部182aの前端は、嵌合凹部183aの後側の部分に位置し、嵌合凹部183aをなす截頭円錐状の内周面との間の隙間(遊び)の範囲で、係止ボス182の凹部材183に対する相対移動が許容される。言い換えると、係止ボス182の係合解除状態において、係止ボス182は、そのテーパ部182aの前端を嵌合凹部183a内に位置させており、係止ボス182の移動が許容され、その移動範囲が、上下両側についてテーパ部182aの前端が嵌合凹部183aの内周面に接触する(凹部材183に干渉する)までの移動範囲に規制される。
【0168】
したがって、エアシリンダ181が非作動状態となることで、移動取付プレート161に間接的に固定された支持本体部70を介して、マテハン装置21が、係止ボス182により移動が規制される移動取付プレート161の移動範囲で、Z方向についてフローティング支持された状態となる。
【0169】
また、第2サブユニット122においては、本体板部162の上部の後側に、Y軸回動センタリング機構を構成する左右一対のエアシリンダ280が設けられている。なお、Y軸回動センタリング機構については後述する。
【0170】
以上のような構成を備えた第2サブユニット122の前側に、第1サブユニット121が取り付けられている。具体的には、
図21に示すように、第1サブユニット121は、X軸回動用基部126を、移動取付プレート161に固定させることで、第2サブユニット122に取り付けられている。X軸回動用基部126は、フランジ部126bを移動取付プレート161の前側に合わせ、フランジ部126bおよび移動取付プレート161の四隅においてボルト195により移動取付プレート161に固定されている。このため、フランジ部126bおよび移動取付プレート161の四隅には、ボルト195による固定用の孔部126s,161sが形成されている。
【0171】
このように、第2サブユニット122の前側に第1サブユニット121が取り付けられることで、支持本体部70の前側にマテハン装置21を支持する第1サブユニット121が、第2サブユニット122を構成するZ軸シフト用基部160に対して、Z方向についてフローティング支持された状態となる(
図18、矢印F2参照)。
【0172】
続いて、第3サブユニット123について、
図44から
図52を参照して説明する。第3サブユニット123は、XY軸支持基部201と、XY軸支持基部201の上側に設けられたX方向移動プレート202と、X方向移動プレート202の上側に設けられたY方向移動プレート203と、X方向シフト機構部71と、Y方向シフト機構部72とを有する。第3サブユニット123は、X方向シフト機構部71により、XY軸支持基部201に対してX方向移動プレート202をX方向に移動可能に支持し、Y方向シフト機構部72により、X方向移動プレート202に対してY方向移動プレート203をY方向に移動可能に支持する。また、第3サブユニット123は、XY軸支持基部201において、第2サブユニット122を、Y軸方向を回動軸方向として回動可能に支持する。
【0173】
XY軸支持基部201は、上下方向を板厚方向とする矩形板状の支持板部206と、その左右両側に設けられた一対のY軸回動支持アーム部207とを有する。XY軸支持基部201は、支持板部206を、第2サブユニット122の上方に位置させるとともに、左右のY軸回動支持アーム部207を、第2サブユニット122の左右のY軸回動用アーム部163の両外側に位置させる。
【0174】
Y軸回動支持アーム部207は、略「J」字形状の板状部材により構成されており、上部について矩形状の外形に沿う形状を有するとともに下部を湾曲状に前側に突出させている。Y軸回動支持アーム部207は、上縁部を、支持板部206の左右の側面206aに沿わせ、ボルト208により複数箇所で支持板部206に固定されている。これにより、支持板部206の左右両側において、Y軸回動支持アーム部207の外形に沿うアーム部分が構成されている。
【0175】
X方向移動プレート202は、支持板部206と略同じ外形寸法を有する矩形板状の部材であり、支持板部206の上方において支持板部206と平行に設けられている。X方向移動プレート202は、X方向シフト機構部71を構成する左右一対のスライド機構部210を介して、支持板部206に対してX方向に相対移動可能に設けられている。
【0176】
スライド機構部210は、X方向をスライド方向とするものであり、支持板部206の上側に固定された直線状のリニアガイド210aと、リニアガイド210aにスライド自在に係合したスライダ210bとを有する。左右のスライド機構部210のスライダ210bの上側に、X方向移動プレート202がボルト等により固定されている。つまり、X方向移動プレート202は、支持板部206に対して、左右のスライダ210bとともに一体的にX方向に移動する。
【0177】
また、X方向シフト機構部71においては、X方向移動プレート202を任意の位置でロックするためのシフトロック機構211が各スライド機構部210に対して設けられている。シフトロック機構211は、スライダ210bと同様に、リニアガイド210aにスライド可能に係合するとともに、X方向移動プレート202に固定されており、リニアガイド210a上においてスライダ210bに対して隣接した位置に設けられている。
【0178】
シフトロック機構211は、Z方向シフト機構部73が有するシフトロック機構166と同様の構成を備えたものである。すなわち、シフトロック機構211は、リニアガイド210aに係合する本体211aと、リニアガイド210aを幅方向について圧接挟持してクランプするための一対の挟持機構とを有する。各挟持機構は、円筒状のケース211b内に収納された弾性部材としてのスプリングと、スプリングの弾性力を受けてX方向に移動するピストンと、リニアガイド210aに圧接する圧接体と、ピストンが受けた弾性力を楔作用を用いて変換して圧接体に押圧力として作用させる変換機構部とを有する。
【0179】
そして、シフトロック機構211は、空気圧の給排を行うための経路を有し、空気圧の供給時には、一対の挟持機構によるリニアガイド210aに対するクランプを開放する(相対移動可能とする)ように構成されている。一方、シフトロック機構211は、空気圧の排気時には、一対の挟持機構のスプリングの弾性力によりリニアガイド210aにクランプしてロックする(相対移動不能とする)ように構成されている。シフトロック機構211においては、本体211aの側面に、本体211a内の給排経路に連通した給排ノズル211cが設けられており、この給排ノズル211cに、空気圧の給排を行うための給排気管構造(図示略)が接続される。
【0180】
このような構成により、XY軸支持基部201に対してX方向に移動可能に設けられたX方向移動プレート202の移動について、シフトロック機構211のクランプ・アンクランプの動作切換えによって、XY軸支持基部201に対するX方向移動プレート202の移動不能状態と移動可能状態とが切り換えられる。これにより、XY軸支持基部201に対するX方向移動プレート202のX方向の移動について、任意の位置で移動がロックされる。
【0181】
このように、X方向シフト機構部71は、支持板部206に間接的に支持する支持本体部70を移動可能に支持する方向、つまりX方向について支持本体部70の移動を停止させるシフトロック機構211を有する。なお、左右一対のスライド機構部210およびシフトロック機構211は、前後方向について互いに対称的に構成されている。また、シフトロック機構211としては、例えば、鍋屋バイテック会社製の「リニアクランパ・ズィー(登録商標)」を用いることができる。また、シフトロック機構211は、電力や磁力により駆動するものであってもよい。
【0182】
また、X方向シフト機構部71は、一対のスライド機構部210によるXY軸支持基部201とX方向移動プレート202のX方向の相対移動についてセンタリングするためのX方向センタリング機構を有する。X方向センタリング機構は、一対のエアシリンダ215と、エアシリンダ215の動作を受ける被押圧部216とを有する。
【0183】
エアシリンダ215は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略直方体状のシリンダ本体217と、シリンダ本体217に対して往復動作するピストンロッド218とを有する。エアシリンダ215は、シリンダ本体217内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル219を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ215は、給排ノズル219からのシリンダ本体217内に対するエアの給排により、シリンダ本体217に対してピストンロッド218を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0184】
一対のエアシリンダ215は、支持板部206上において、左右のスライド機構部210の間の位置に、ピストンロッド218の突出側を互いに反対側とする向きで前後に隣接配置されている。言い換えると、一対のエアシリンダ215は、ピストンロッド218の突出側を正面側とした場合に背中合わせの向きで配置されている。したがって、前側に配置された一方のエアシリンダ215は、ピストンロッド218の突出側を前側に向け、後側に配置された他方のエアシリンダ215は、ピストンロッド218の突出側を後側に向けている。また、一対のエアシリンダ215は、支持板部206上において前後対称に設けられている。
【0185】
各エアシリンダ215のピストンロッド218は、支持板部206上にボルト等により固定された直方体状の取付ブロック220を貫通している。取付ブロック220は、シリンダ本体217に対して前側(ピストンロッド218の突出側)に隣接した位置に設けられ、ボルトによってシリンダ本体217に固定されるとともに、ピストンロッド218を貫通させる貫通孔220aを有する。各エアシリンダ215は、取付ブロック220を介して支持板部206に固定されている。
【0186】
ピストンロッド218の先端部には、押圧ピン221が設けられている。押圧ピン221は、ボルト状の部材であり、ピストンロッド218に対して先端側から螺挿されることで、ピストンロッド218に固定されている。押圧ピン221の端面が、被押圧部216に対して押圧作用する押圧面221aとなる。エアシリンダ215および取付ブロック220は、支持板部206とX方向移動プレート202との間に介装されている。
【0187】
被押圧部216は、ピストンロッド218に対向するように設けられた被押圧ピン226と、被押圧ピン226をX方向移動プレート202に対して支持する支持プレート227とを有する。支持プレート227は、X方向移動プレート202に対して小片状の板状部材であり、X方向移動プレート202の前後縁部の左右中央部に設けられている。支持プレート227は、上縁部を、X方向移動プレート202の前後の側面202aに沿わせ、ボルト228によりX方向移動プレート202に固定されている。
【0188】
被押圧ピン226は、ボルト状の部材であり、支持プレート227の下端部を前後方向外側から貫通した状態で、締結部材226bによって支持プレート227に固定支持されている。被押圧ピン226は、前後内側への突出側の端面を被押圧面226aとし、被押圧面226aを、押圧ピン221の押圧面221aに対向させている。
【0189】
以上のような構成により、X方向センタリング機構は、一対のエアシリンダ215の動作によって、押圧ピン221を被押圧ピン226に当接させることで、XY軸支持基部201とX方向移動プレート202との相対位置をX方向について所定の位置でロックする。具体的には次のとおりである。
【0190】
一対のエアシリンダ215は、作動状態において、ピストンロッド218を突出側に位置させ、押圧ピン221を被押圧ピン226に当接させる。つまり、押圧ピン221の押圧面221aが被押圧ピン226の被押圧面226aに接触した状態となる。ここで、一対のエアシリンダ215のそれぞれにおけるピストンロッド218の突出量は、互いに同じ量となる。これにより、一対のエアシリンダ215により、前後の被押圧部216に対して前後方向に突っ張る態様で、XY軸支持基部201とX方向移動プレート202との前後方向の相対位置が位置決めされる。かかる状態が、X方向についてセンタリングされた状態となる。
【0191】
一方、一対のエアシリンダ215は、その非作動状態において、ピストンロッド218を反突出側に位置させ、押圧ピン221を被押圧ピン226から離間させる。押圧ピン221が被押圧ピン226から離間した状態においては、押圧ピン221と被押圧ピン226との隙間の範囲で、XY軸支持基部201とX方向移動プレート202とのX方向についての相対移動が許容される。言い換えると、押圧ピン221が被押圧ピン226に対して離間した状態において、押圧ピン221と被押圧ピン226との間の隙間により、XY軸支持基部201とX方向移動プレート202の相対移動が許容され、その移動範囲が、前後両側について押圧面221aが被押圧面226aに接触するまでの移動範囲に規制される。
【0192】
したがって、一対のエアシリンダ215が非作動状態となることで、第3サブユニット123に対して第2サブユニット122および第1サブユニット121を介して支持されたマテハン装置21が、X方向移動プレート202に対するXY軸支持基部201のX方向についての移動範囲で、X方向についてフローティング支持された状態となる。
【0193】
Y方向移動プレート203は、X方向移動プレート202と略同じ外形寸法を有する矩形板状の部材であり、X方向移動プレート202の上方においてX方向移動プレート202と平行に設けられている。Y方向移動プレート203は、Y方向シフト機構部72を構成する前後一対のスライド機構部230を介して、X方向移動プレート202に対してY方向に相対移動可能に設けられている。
【0194】
Y方向シフト機構部72は、XY軸支持基部201の支持板部206とX方向移動プレート202との間に設けられたX方向シフト機構部71に対し、そのシフト方向をY方向として、X方向シフト機構部71と同様の構成を備えたものである。すなわち、Y方向シフト機構部72は、X方向移動プレート202とY方向移動プレート203との間において、X方向シフト機構部71と同様の構成を平面視で90°回転させた態様で備えたものである。
【0195】
スライド機構部230は、Y方向をスライド方向とするものであり、X方向移動プレート202の上側に固定された直線状のリニアガイド230aと、リニアガイド230aにスライド自在に係合したスライダ230bとを有する。前後のスライド機構部230のスライダ230bの上側に、Y方向移動プレート203がボルト等により固定されている。つまり、Y方向移動プレート203は、X方向移動プレート202に対して、左右のスライダ230bとともに一体的にX方向に移動する。
【0196】
また、Y方向シフト機構部72においては、Y方向移動プレート203を任意の位置でロックするためのシフトロック機構231が各スライド機構部230に対して設けられている。シフトロック機構231は、スライダ230bと同様に、リニアガイド230aにスライド可能に係合するとともに、Y方向移動プレート203に固定されており、リニアガイド230a上においてスライダ220bに対して隣接した位置に設けられている。
【0197】
シフトロック機構231は、X方向シフト機構部71が有するシフトロック機構211と同様の構成を備えたものであり、リニアガイド210aに係合する本体231aと、リニアガイド210aを幅方向について圧接挟持してクランプするための一対の挟持機構とを有する。また、シフトロック機構231は、各挟持機構を構成するスプリングを収納するケース231bと、本体231a内の給排経路に連通した給排ノズル231cとを有する。そして、シフトロック機構231は、空気圧の給排を行うための経路を有し、空気圧の供給時にはリニアガイド230aに対するクランプを開放し、空気圧の排気時には、リニアガイド230aにクランプしてロックするように構成されている。
【0198】
このような構成により、X方向移動プレート202に対してY方向に移動可能に設けられたY方向移動プレート203の移動について、シフトロック機構231のクランプ・アンクランプの動作切換えによって、X方向移動プレート202に対するY方向移動プレート203の移動不能状態と移動可能状態とが切り換えられる。これにより、X方向移動プレート202に対するY方向移動プレート203のY方向の移動について、任意の位置で移動がロックされる。このように、Y方向シフト機構部72は、X方向移動プレート202に間接的に支持する支持本体部70を移動可能に支持する方向、つまりY方向について支持本体部70の移動を停止させるシフトロック機構231を有する。
【0199】
また、Y方向シフト機構部72は、一対のスライド機構部230によるX方向移動プレート202とY方向移動プレート203のY方向の相対移動についてセンタリングするためのY方向センタリング機構を有する。Y方向センタリング機構は、X方向センタリング機構と同様の構成を備えたものであり、一対のエアシリンダ235と、エアシリンダ235の動作を受ける被押圧部236とを有する。
【0200】
エアシリンダ235は、エアシリンダ215と同様のシリンダ機構であり、シリンダ本体237と、ピストンロッド238と、給排ノズル239とを有し、給排ノズル239からのシリンダ本体237内に対するエアの給排により伸縮動作するように構成されている。また、一対のエアシリンダ235は、X方向移動プレート202上において、前後のスライド機構部230の間の位置に、ピストンロッド238の突出側を互いに反対側とする向きで左右に隣接配置されている。
【0201】
各エアシリンダ235のピストンロッド238は、X方向移動プレート202上にボルト等により固定された直方体状の取付ブロック240を貫通している。取付ブロック240は、シリンダ本体237に対して前側(ピストンロッド238の突出側)に隣接した位置に設けられ、ボルトによってシリンダ本体237に固定されるとともに、ピストンロッド238を貫通させる貫通孔240aを有する。各エアシリンダ235は、取付ブロック240を介してX方向移動プレート202に固定されている。
【0202】
ピストンロッド238の先端部には、X方向シフト機構部71における押圧ピン221と同様に、押圧面241aを有する押圧ピン241が設けられている。エアシリンダ235および取付ブロック240は、X方向移動プレート202とY方向移動プレート203との間に介装されている。
【0203】
被押圧部236は、X方向シフト機構部71における被押圧部216と同様の構成を備えたものであり、ピストンロッド238に対向するように設けられた被押圧ピン246と、被押圧ピン246をY方向移動プレート203に対して支持する支持プレート247とを有する。
【0204】
支持プレート247は、Y方向移動プレート203に対して小片状の板状部材であり、Y方向移動プレート203の左右縁部の前後中央部に設けられている。支持プレート247は、上縁部を、Y方向移動プレート203の左右の側面203aに沿わせ、ボルト248によりY方向移動プレート203に固定されている。被押圧ピン246は、支持プレート247の下端部を左右方向外側から貫通した状態で、締結部材246bによって支持プレート227に固定支持されている。被押圧ピン246は、左右内側への突出側の端面を被押圧面246aとし、被押圧面246aを、押圧ピン241の押圧面241aに対向させている。
【0205】
以上のような構成により、Y方向センタリング機構は、一対のエアシリンダ235の動作によって、押圧ピン241を被押圧ピン246に当接させることで、X方向移動プレート202とY方向移動プレート203との相対位置をY方向について所定の位置でロックする。
【0206】
すなわち、一対のエアシリンダ235は、作動状態において、押圧ピン241を被押圧ピン246に当接させることで、前後の被押圧部236に対して左右方向に突っ張る態様で、X方向移動プレート202とY方向移動プレート203との左右方向の相対位置を位置決めする。かかる状態が、Y方向についてセンタリングされた状態となる。一方、一対のエアシリンダ235は、その非作動状態において、押圧ピン241を被押圧ピン246から離間させることで、押圧ピン241と被押圧ピン246との隙間の範囲で、X方向移動プレート202とY方向移動プレート203のY方向についての相対移動を許容する。
【0207】
したがって、一対のエアシリンダ235が非作動状態となることで、第3サブユニット123に対して第2サブユニット122および第1サブユニット121を介して支持されたマテハン装置21が、Y方向移動プレート203に対するX方向移動プレート202のY方向についての移動範囲で、Y方向についてフローティング支持された状態となる。
【0208】
また、第3サブユニット123は、XY軸支持基部201において、第2サブユニット122を、Y軸方向を回動軸方向として回動可能に支持する。第3サブユニット123は、左右一対のY軸回動支持アーム部207間に、第2サブユニット122を支持する。
【0209】
具体的には、
図21および
図48等に示すように、第2サブユニット122は、各Y軸回動支持アーム部207に設けられた軸支部材250により、回動可能に支持されている。軸支部材250は、円筒状の部分である本体軸部251と、軸支部材250をY軸回動用アーム部163に固定するための取付板部252とを有する。軸支部材250は、本体軸部251の軸方向(中心軸方向)をY軸方向として、Y軸回動支持アーム部207に対して第2サブユニット122を支持する。
【0210】
取付板部252は、矩形板状の部分であり、板厚方向を本体軸部251の軸方向とするとともに、本体軸部251の軸方向の中途部において、本体軸部251の外周面に対して一側の辺を接線状に位置させた態様で、本体軸部251と一体に設けられている。取付板部252は、例えば、矩形板状の部材が溶接等によって本体軸部251に固定されることで設けられる。
【0211】
軸支部材250は、本体軸部251を、Y軸回動支持アーム部207の前方への突出部分に形成された貫通孔207aに貫通させた状態で設けられている。軸支部材250は、取付板部252をY軸回動支持アーム部207の左右外側の板面207b側に位置させた状態で、取付板部252を貫通してY軸回動支持アーム部207に螺挿されるボルト253により、Y軸回動支持アーム部207に固定されている。
【0212】
Y軸回動支持アーム部207の左右内側の板面207cからの本体軸部251の突出部分が、Y軸回動支持アーム部207の左右内側に位置する第2サブユニット122のY軸回動用アーム部163のアーム部分163aに設けられた支持孔部255(
図42等参照)に挿嵌されている。すなわち、本体軸部251の左右内側への突出部分が軸支部となり、左右の軸支部により左右両側から第2サブユニット122がY軸回りについて回動可能に軸支される。
【0213】
以上のような構成により、第2サブユニット122が、第3サブユニット123に対して回動可能に支持されている。そして、第3サブユニット123に対する第2サブユニット122のY軸回りの回動について、第2サブユニット122は、左右一対のY軸回動用シリンダ機構78により、中立位置を基準としてバランスするように構成されている。すなわち、フローティングユニット20は、第3サブユニット123に対して第2サブユニット122をY軸回りにフローティング状態で支持するためのバランサとして、左右一対のY軸回動用シリンダ機構78を有する。
【0214】
図19および
図20に示すように、Y軸回動用シリンダ機構78は、片ロッド型のエアシリンダ機構であり、略四角筒状のシリンダ本体261と、シリンダ本体261に対して往復動作するピストンロッド262とを有する。Y軸回動用シリンダ機構78は、シリンダ本体261内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル263を有し、例えば電空レギュレータ等のレギュレータ(図示略)に接続されており、電空レギュレータによって圧力が制御されたエアの供給を受ける。Y軸回動用シリンダ機構78は、給排ノズル263からのシリンダ本体261内に対するエアの給排により、シリンダ本体261に対してピストンロッド262を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0215】
そして、Y軸回動用シリンダ機構78においては、ピストンロッド262の位置が所定の中立位置を保持するようにエアの給排制御が行われ、ピストンロッド262の動作について、その中立位置を基準としたフローティング状態が得られる。すなわち、ピストンロッド262に作用する荷重等に応じて、ピストンロッド262がその往復動作をともなって中立位置に位置するように、Y軸回動用シリンダ機構78に供給されるエア圧が調整される。
【0216】
また、Y軸回動用シリンダ機構78は、ブレーキユニット265を有する。ブレーキユニット265は、シリンダ本体261に対して、ピストンロッド262の先端側の位置に設けられており、ピストンロッド262に対してブレーキ作用を与える。ブレーキユニット265は、ケーシング部266内にピストンロッド262を貫通させるとともに、ケーシング部266内に、ピストンロッド262に作用するブレーキ板やブレーキ板を付勢するスプリング等の弾性部材等を有する。ブレーキユニット265は、ケーシング部266内から外側に臨むブレーキ解除ポートに連通したノズル267を有し、エアの給排によって、ブレーキのON/OFFが切り換えられるように構成されている。このように、Y軸回動機構部75は、第2サブユニット122に間接的に支持する支持本体部70を回動可能に支持する回動方向、つまりY軸回りの回動方向について支持本体部70の回動を停止させる回動ロック機構として、Y軸回動用シリンダ機構78のブレーキユニット265を有する。
【0217】
Y軸回動用シリンダ機構78は、第2サブユニット122および第3サブユニット123の後側において、ピストンロッド262の突出側を下側とする向きで設けられている。Y軸回動用シリンダ機構78は、第2サブユニット122および第3サブユニット123それぞれに対してY軸方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で、第2サブユニット122と第3サブユニット123との間に架設されている。具体的には次のとおりである。
【0218】
Y軸回動用シリンダ機構78は、第2サブユニット122に対しては、ピストンロッド262の先端部に設けられた軸支部268を、本体板部162の後面162cに設けられたロッド支持部269に、Y軸回りに回動可能に軸支させている。軸支部268は、左右方向に対向する一対の板状の部分である支持板部268aを有し、ピストンロッド262の先端側を開放側とした略「U」字状の部分である。支持板部268aには、左右方向に貫通した支持孔が形成されている。
【0219】
ロッド支持部269は、直方体状の支持部材270がボルト271によって本体板部162の後面162cに固定されることで設けられている。支持部材270の下端部には、側面視で半円状をなすように後方に向けて突出した突起部270aが設けられており、この突起部270aに、左右方向に貫通した支持孔270bが形成されている。軸支部268は、その一対の支持板部268a間に突起部270aを介装させた状態で、一対の支持板部268aおよび突起部270aそれぞれの支持孔を貫通する軸支部材272により、ロッド支持部269に対して回動可能に支持されている。
【0220】
一方、Y軸回動用シリンダ機構78は、第3サブユニット123に対しては、ステー部材273を介して、Y軸回りに回動可能に支持されている。ステー部材273は、矩形板状の取付プレート部274と、取付プレート部274から斜後下方に向けて延設された左右両側の支持アーム部275とを有し、全体として門状に構成されている。
【0221】
ステー部材273は、取付プレート部274を、支持板部206の下側の板面206bに対してボルト276により固定させることで、支持板部206に支持されている。ステー部材273は、左右の支持アーム部275の先端部間に、Y軸回動用シリンダ機構78の長手方向の中間部を位置させ、支持アーム部275の先端部に位置する軸支部材275aにより、Y軸回動用シリンダ機構78をY軸回りに回動可能に支持している。
【0222】
以上のような構成により、Y軸回動用シリンダ機構78の伸縮動作をともなって、第3サブユニット123に対する第2サブユニット122のY軸回りに回動について、フローティング支持状態が得られる。なお、第2サブユニット122をY軸回りにフローティング支持するための構成としては、Y軸回動用シリンダ機構78に限らず、例えば油圧シリンダ等の他のシリンダ機構その他のアクチュエータが適宜用いられる。
【0223】
以上のように、本実施形態に係るフローティングユニット20においては、第2サブユニット122が第3サブユニット123に対してY軸回りに回動可能に支持された構成と、第2サブユニット122のY軸回りの回動に作用する一対のY軸回動用シリンダ機構78とにより、Y軸回動機構部75が構成されている。
【0224】
Y軸回動用シリンダ機構78の配置態様について詳細に説明する。
図20に示すように、一対のY軸回動用シリンダ機構78は、基準線L1で示すZ方向(鉛直方向)に対して、ピストンロッド262の先端側を前下側、基端側(シリンダ本体261側)を後上側とする向きに傾斜状に設けられている。すなわち、Y軸回動用シリンダ機構78は、その長手方向に対応する直線L2で示す伸縮動作方向が基準線L1で示すZ方向(鉛直方向)に対して所定の傾斜角度α1をなすように後傾状に支持されている。
【0225】
本実施形態では、傾斜角度α1は、20~40°の範囲内の角度(例えば約25°)である。ただし、Y軸回動用シリンダ機構78についての傾斜角度α1は鋭角であり、その大きさは特に限定されるものではない。また、ここでの傾斜角度α1は、後述するY軸回動センタリング機構によるセンタリング状態でのY軸回動用シリンダ機構78の傾斜角度とする。
【0226】
以上のように、本実施形態に係るフローティングユニット20において、Y軸回動機構部75は、伸縮方向がZ方向に対して傾斜方向となるように設けられたY軸回動用シリンダ機構78を有し、Y軸回動用シリンダ機構78の伸縮動作により、Y方向に沿う所定の回動軸C1により回動可能に支持された支持本体部70を、回動軸C1を中心とした回動についてフローティング支持する。
【0227】
ここで、回動軸C1は、第3サブユニット123に対する第2サブユニット122のY軸回りの回動軸であり、軸支部材250の本体軸部251の中心軸に一致する。そして、第2サブユニット122に対して一体的に設けられた第1サブユニット121を構成する支持本体部70が、第3サブユニット123に対して回動軸C1を中心に回動可能に支持されている。
【0228】
また、Y軸回動機構部75は、第3サブユニット123に対して第2サブユニット122をそのY軸回りの回動についてセンタリングするためのY軸回動センタリング機構を有する。
図51および
図52に示すように、Y軸回動センタリング機構は、左右一対のエアシリンダ280と、係止ピン281と、係止ピン281の係合を受ける被係止筒282とを有し、エアシリンダ280の動作によって、係止ピン281を被係止筒282に係合させることで、第2サブユニット122をY軸回りの回動方向について所定の位置でロックする。すなわち、Y軸回動センタリング機構は、第3サブユニット123に対して回動軸C1により回動可能に設けられた第2サブユニット122を、第3サブユニット123に対してX-Z面において回動軸C1とは異なる位置で係合させることで、第2サブユニット122のY軸回りの回動を所定のセンタリング位置で規制する。
【0229】
エアシリンダ280は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略直方体状のシリンダ本体283と、シリンダ本体283に対して往復動作するピストンロッド284とを有する。エアシリンダ280は、シリンダ本体283内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル285を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ280は、給排ノズル285からのシリンダ本体283内に対するエアの給排により、シリンダ本体283に対してピストンロッド284を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0230】
各エアシリンダ280は、本体板部162の後面162cの上部の左右両側において、ピストンロッド284の突出側を左右外側として固定されている。エアシリンダ280は、シリンダ本体283に対して左右外側に設けられた取付ブロック286を介して、本体板部162に固定されている。取付ブロック286は、その中央部に形成された貫通孔286aにピストンロッド284を挿入させるとともに、ボルト287により本体板部162に固定されている。
【0231】
ピストンロッド284の先端側に、これと同軸状に係止ピン281が固定されている。係止ピン281は、ピストンロッド284と略同径の部分をなす。ピストンロッド284は、取付ブロック286の貫通孔286aを貫通し、取付ブロック286から左右外側に突出している。取付ブロック286の貫通孔286a内には、係止ピン281の外径と略同じ内径を有し係止ピン281を貫通させる円筒状のブッシュ288が挿嵌されている。以上のような構成により、係止ピン281は、エアシリンダ280の動作によって、取付ブロック286の貫通孔286aを介して、取付ブロック286の左右外側側面286bから出没するように構成されている。
【0232】
係止ピン281は、軸状の部材であり、その軸方向をY方向とし、エアシリンダ280の動作にともなってピストンロッド284と一体的に左右方向に往復移動する。係止ピン281は、基端側の端部に縮径状の雄ネジ部281aを有し、ピストンロッド284の先端側に形成された雌ネジ部284aに対して螺合されて固定されている。また、係止ピン281は、その先端側の端部に、円錐状のテーパ部281bを有する。
【0233】
左右の係止ピン281それぞれに対し、係止ピン281の左右外側に、係止ピン281の係合を受ける被係止筒282が設けられている。被係止筒282は、円筒状の本体部282aと、本体部282aの中心軸方向の一側の端部に形成されたフランジ部282bとを有する。被係止筒282は、Y軸回動支持アーム部207に形成された貫通孔207dに本体部282aを貫通させるとともに、フランジ部282bをY軸回動支持アーム部207の左右外側の板面207bに接触させた状態で、フランジ部282bを貫通するボルト289により、Y軸回動支持アーム部207に固定されている。被係止筒282は、Y軸回動支持アーム部207において、係止ピン281に対して同軸心上となる位置に設けられている。
【0234】
被係止筒282においては、本体部282aにおけるフランジ部282b側と反対側の端部に、係止ピン281のテーパ部281bを受け入れる係入凹部282cが形成されている。係入凹部282cは、テーパ部281bの円錐状の外形に符合するように円錐形状に沿う形状を有する凹部である。なお、被係止筒282は、その中心軸部に、一側を係入凹部282cに開口させるとともに他側をフランジ部282bから外側に開口させた貫通孔282dを有し、全体として貫通形状を有する。第2サブユニット122が第3サブユニット123に対してY軸回りに回動可能に支持された構成において、第2サブユニット122のY軸回りの回動角度について、係止ピン281による第2サブユニット122のロック位置が、支持本体部70の所定の中心位置に対応するように、被係止筒282が所定の位置に設けられている。
【0235】
各エアシリンダ280は、その作動状態において、ピストンロッド284を左右外側(突出側)に位置させ、係止ピン281を被係止筒282に係合させる。ここで、係止ピン281は、そのテーパ部281bを被係止筒282の係入凹部282cに嵌合させ、第3サブユニット123に対する第2サブユニット122のY軸回りの回動を所定の位置で固定する。このように第2サブユニット122が固定されることで、第2サブユニット122に固定された第1サブユニット121を構成する支持本体部70がY軸回りについてセンタリングされる。これにより、支持本体部70に対してチャック機構60を介して取り付けられたマテハン装置21が、Y軸回りの回動位置についてセンタリングされる。
【0236】
一方、エアシリンダ280は、その非作動状態において、ピストンロッド284を左右内側(反突出側)に位置させ、被係止筒282に対する係止ピン281の係合を解除する。この係合解除状態において、係止ピン281のテーパ部281bの尖端は、係入凹部282cの外側(左右内側)の部分に位置し、係入凹部282cをなす円錐状の内周面との間の隙間(遊び)の範囲で、第3サブユニット123に対する第2サブユニット122のY軸回りの回動が許容される。言い換えると、係止ピン281の係合解除状態において、係止ピン281は、そのテーパ部281bの尖端を係入凹部282c内に位置させており(本体部282aの左右内側端よりも左右外側に突出させており)、第2サブユニット122のY軸回りの回動が許容され、その回動範囲が、回動軸C1を中心とした円周方向の両側についてテーパ部281bの尖端が係入凹部282cをなす内周面に接触する(被係止筒282に干渉する)までの回動範囲に規制される。
【0237】
したがって、エアシリンダ280が非作動状態となることで、第2サブユニット122に固定されるとともに支持本体部70の前側にマテハン装置21を支持する第1サブユニット121が、係止ピン281により回動が規制される第2サブユニット122の回動範囲で、回動軸C1を中心としてY軸回りについてフローティング支持された状態となる(
図20、矢印F3参照)。
【0238】
また、第3サブユニット123において、第2サブユニット122を支持する部分であるXY軸支持基部201は、XY軸支持基部201に対して回動支持ユニット25側の構成であるX方向移動プレート202に対して、X方向シフト機構部71によって、X方向についてフローティング支持された状態となる。同じく第3サブユニット123において、X方向移動プレート202から下側の部分は、X方向移動プレート202に対して回動支持ユニット25側の構成であるY方向移動プレート203に対して、Y方向シフト機構部72によって、Y方向についてフローティング支持された状態となる。これにより、第2サブユニット122の前側に固定されるとともに支持本体部70の前側にマテハン装置21を支持する第1サブユニット121が、X方向およびY方向の各方向についてフローティング支持された状態となる(
図18、矢印F4、F5参照)。
【0239】
続いて、Z軸回動機構部76について、
図53から
図57を参照して説明する。Z軸回動機構部76は、第3サブユニット123のY方向移動プレート203と略同じ形状・寸法を有するZ軸回動プレート300と、平面視でZ軸回動プレート300に重なるように略正方形状の外形をなすZ軸回動用基部301とを有する。Z軸回動機構部76は、Z軸回動用基部301に対して、Z軸回動プレート300を、Z軸方向を回動軸方向として回動可能に支持する。Z軸回動機構部76においては、X軸回動機構部74におけるX軸回動用基部126に対する支持本体部70の支持構造と同様の構成により、Z軸回動用基部301に対してZ軸回動プレート300が支持されている。すなわち、Z軸回動プレート300は、回転軸302、回動支持機構303、およびベアリング304を介して、Z軸回動用基部301に回動可能に支持されている。
【0240】
Z軸回動用基部301は、中心軸方向をZ方向とした略円筒状の本体部301aと、本体部301aの上側に設けられ本体部301aから径方向外側に突設されて平面視でZ軸回動用基部301の外形をなすフランジ部301bとを有する。Z軸回動用基部301は、全体として本体部301aの中心軸方向に貫通した孔部を形成している。本体部301aの内周側における中心軸方向の中央部に、Z軸回動用基部301の孔部の孔径(内径)を部分的に縮径させた内周突条部301cを有する(
図55、
図56参照)。
【0241】
Z軸回動用基部301においては、内周突条部301cにより、Z軸回動用基部301の下側に、円周状の下側嵌合凹部301dが形成されている。下側嵌合凹部301dは、ベアリング304嵌合用の凹部として、本体部301aの下面に対して段下がり状に形成されている。また、内周突条部301cにより、Z軸回動用基部301の上側に、円周状の上側嵌合凹部301eが形成されている。上側嵌合凹部301eは、回動支持機構303嵌合用の凹部として、フランジ部301bの上面に対して段下がり状に形成されている。
【0242】
回転軸302は、Z方向を軸方向とする筒状の軸部302aと、軸部302aの軸方向の中間部に形成された拡径部であるフランジ部302bとを有する。回転軸302は、その軸方向について、Z軸回動用基部301に対して、フランジ部302bを内周突条部301cの形成部位に符合させ、フランジ部302bの外周面302fを内周突条部301cの内周面301fに接触させた状態で、Z軸回動用基部301内に設けられている。
【0243】
回動支持機構303は、全体として円板状の外形を有するとともに中央部に回転軸302の上部を挿入させる孔部303aを有する。回動支持機構303は、回動支持機構303の外形をなすドーナツ状の本体部303bと、本体部303bの内周側に設けられた円環状の取付フランジ部303cとを有する。本体部303bおよび取付フランジ部303cは、相対的に同軸回転可能に構成されている。
【0244】
回動支持機構303において、本体部303bおよび取付フランジ部303cは、本体部303b内に収納されたスプリング等の弾性部材を介して相互作用している。そして、回動支持機構303は、空気圧の給排を行うための経路を有し、Z軸回動用基部301の本体部301aの外周側に取り付けられた給排ノズル303dを介して、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。給排ノズル303dには、空気圧の給排を行うための給排気管構造(図示略)が接続されている。回動支持機構303は、空気圧の供給時には本体部303bに対する取付フランジ部303cのクランプを開放し(相対回転可能とし)、排気時には本体部303bに対して取付フランジ部303cがクランプする(相対回転不能とする)ように構成されている。
【0245】
回動支持機構303は、Z軸回動用基部301の上側嵌合凹部301eに嵌合した状態で、本体部303bを、Z軸回動用基部301に対して、ボルト305によって複数箇所で固定させている。また、取付フランジ部303cは、上部を回動支持機構303の孔部303aに挿入させた回転軸302に対して、ボルト306によって複数箇所で固定されている。一方、回転軸302の下側には、Z軸回動プレート300が固定されている。
【0246】
このような構成により、回動支持機構303のクランプ・アンクランプの動作切換えによって、Z軸回動用基部301に対する回転軸302の回転不能状態と回転可能状態とが切り換えられる。これにより、回動支持機構303に対するZ軸回動プレート300のZ軸回りの回動について、任意の位置で回動がロックされる。このように、Z軸回動機構部76は、Z軸回動プレート300に間接的に支持する支持本体部70を回動可能に支持する回動方向、つまりZ軸回りの回動方向について支持本体部70の回動を停止させる回動ロック機構として機能する回動支持機構303を有する。なお、回動支持機構303としては、例えば、鍋屋バイテック会社製の「リニアクランパ・ズィー(登録商標)」を用いることができる。
【0247】
ベアリング304は、複数のコロ304aを介して相対回転可能に構成された外輪304bおよび内輪304cを有する円環状の部材である。ベアリング304は、回転軸302の下部を、Z軸回動用基部301に対して支持する。
【0248】
ベアリング304は、回転軸302の下部を貫通させるとともに、外周面に外嵌されたOリング304d等を介してZ軸回動用基部301の下側嵌合凹部301dに嵌合した状態で、外輪304bを、Z軸回動用基部301に対して、ボルト307によって複数箇所で固定させている。一方、内輪304cは、下部を貫通させた回転軸302に対して、ボルト308によって複数箇所でフランジ部302bに固定されている。ベアリング304としては、例えば、コロ304aとして円筒形状のコロを用いたクロスローラベアリングが用いられる。
【0249】
Z軸回動用基部301に対して回動可能に支持された回転軸302には、その下側から、Z軸回動プレート300が固定される。回転軸302は、フランジ部302bの下側にフランジ部302bに対する縮径部分であるボス部302cを有し、ボス部302cには、その下面に開口したボルト孔302dが複数箇所に形成されている。そして、ボルト孔302dに合わせてZ軸回動プレート300の中央部に形成された孔部300bを貫通するボルト309が、ボルト孔302dに螺挿されることで、回転軸302がZ軸回動プレート300に固定されている。なお、ボス部302cは、回転軸302においてベアリング304が外嵌される部分となる。また、回転軸302の下端部には縮径部302gが形成されており、縮径部302gは、Z軸回動プレート300の中央部に形成された孔部300cに嵌合している。
【0250】
以上のような構成により、Z軸回動プレート300が、Z軸回動用基部301に対してZ軸回りについて回動可能に支持されている。
【0251】
また、Z軸回動機構部76は、Z軸回動プレート300をそのZ軸回りの回動についてセンタリングするためのZ軸回動センタリング機構を有する。Z軸回動センタリング機構は、上述したX軸回動センタリング機構と同様の構成を備えたものであり、エアシリンダ321と、係止ピン322とを有し、エアシリンダ321の動作によって、係止ピン322を回転軸302に係合させることで、回転軸302をその回転方向について所定の位置でロックする。
【0252】
エアシリンダ321は、片ロッド型のシリンダ機構であり、略直方体状のシリンダ本体323と、シリンダ本体323に対して往復動作するピストンロッド324とを有する。エアシリンダ321は、シリンダ本体323内からその側面に臨む給排ポートに連通した給排ノズル325を有し、図示せぬエア供給源からのエアの供給を受ける。エアシリンダ321は、給排ノズル325からのシリンダ本体323内に対するエアの給排により、シリンダ本体323に対してピストンロッド324を往復動作させて伸縮動作するように構成されている。
【0253】
エアシリンダ321は、Z軸回動用基部301の本体部301aの後側に、ピストンロッド324の突出側を前側として固定されている。ピストンロッド324の先端側に、これと同軸状に係止ピン322が固定されている。係止ピン322は、ピストンロッド324と略同径の部分をなす。Z軸回動用基部301の本体部301aの後側には、ピストンロッド324および係止ピン322を貫通させる孔部301gが形成されている。孔部301gは、Z軸回動用基部301において、Z方向について内周突条部301cの部分に形成されている。つまり、孔部301gの外側は、本体部301aの外周面に開口するとともに、孔部301gの内側は、内周突条部301cの内周面301fに開口している。
【0254】
本体部301aの後部には、外周面を平面状とした平面部が形成されており、エアシリンダ321は、本体部301aの後部の平面部に対して、シリンダ本体323の前面を接触させた状態で、シリンダ本体323を貫通して本体部301aに螺挿されるボルト326により固定されている。そして、エアシリンダ321において前方に突出するピストンロッド324およびこれに固定された係止ピン322が、孔部301g内に挿入されている。孔部301g内には、係止ピン322の外径と略同じ内径を有し係止ピン322を貫通させる円筒状のブッシュ327が挿嵌されている。以上のような構成により、係止ピン322は、エアシリンダ321の動作によって、孔部301gを介して、内周突条部301cの内周面301fから出没するように構成されている。
【0255】
係止ピン322は、軸状の部材であり、その軸方向をX方向とし、エアシリンダ321の動作にともなってピストンロッド324と一体的に前後方向に往復移動する。係止ピン322は、基端側の端部に縮径状の雄ネジ部322aを有し、ピストンロッド324の先端側に形成された雌ネジ部324aに対して螺合されて固定されている。また、係止ピン322は、その先端側の端部に、円錐状のテーパ部322bを有する。
【0256】
一方、回転軸302のフランジ部302bの後部の外周面には、係止ピン322のテーパ部322bを受け入れる係入穴302eが1箇所に形成されている。係入穴302eは、テーパ部322bの円錐状の外形に符合するように円錐穴状に形成された凹部である。回転軸302がZ軸回動プレート300に固定された構成において、回転軸302のZ軸回りの回動角度について、係止ピン322による回転軸302のロック位置が、Z軸回動プレート300の所定の中心位置に対応するように、係入穴302eが所定の位置に設けられている。
【0257】
エアシリンダ321は、その作動状態において、ピストンロッド324を前側(突出側)に位置させ、係止ピン322を回転軸302に係合させる。ここで、係止ピン322は、そのテーパ部322bを回転軸302の係入穴302eに嵌合させ、回転軸302のZ軸回りの回動を所定の位置で固定する。このように回転軸302が固定されることで、Z軸回動プレート300がZ軸回りについてセンタリングされる。これにより、Z軸回動プレート300に対して第3サブユニット123、第2サブユニット122および第1サブユニット121を介して取り付けられたマテハン装置21が、Z軸回りの回動位置についてセンタリングされる。
【0258】
一方、エアシリンダ321は、その非作動状態において、ピストンロッド324を後側(反突出側)に位置させ、回転軸302に対する係止ピン322の係合を解除する。この係合解除状態において、係止ピン322のテーパ部322bの尖端は、係入穴302eの外側(フランジ部302bの外周側)の部分に位置し、係入穴302eをなす円錐状の内周面との間の隙間(遊び)の範囲で、回転軸302の回動が許容される。言い換えると、係止ピン322の係合解除状態において、係止ピン322は、そのテーパ部322bの尖端を係入穴302e内に位置させており(フランジ部302bの外周面の位置よりも内側に突出させており)、回転軸302の回動が許容され、その回動範囲が、フランジ部302bの周方向の両側についてテーパ部322bの尖端が係入穴302eの内周面に接触する(回転軸302に干渉する)までの回動範囲に規制される。
【0259】
したがって、エアシリンダ321が非作動状態となることで、回転軸302に固定されたZ軸回動プレート300が、係止ピン322により回動が規制される回転軸302の回動範囲で、回転軸302の軸心を中心としてZ軸回りについてフローティング支持された状態となる。
【0260】
以上のような構成を備えたZ軸回動機構部76の下側に、第3サブユニット123が取り付けられている。具体的には、
図21に示すように、Z軸回動機構部76は、Z軸回動プレート300を、Y方向移動プレート203に固定させることで、第3サブユニット123に取り付けられている。第3サブユニット123は、Y方向移動プレート203をZ軸回動プレート300の下側に合わせ、Y方向移動プレート203およびZ軸回動プレート300の四隅においてボルト328によりZ軸回動プレート300に固定されている。このため、Y方向移動プレート203およびZ軸回動プレート300の四隅には、ボルト328による固定用の孔部203s,300sが形成されている。
【0261】
このように、Z軸回動機構部76の下側に第3サブユニット123が取り付けられることで、第3サブユニット123、第2サブユニット122、および支持本体部70の前側にマテハン装置21を支持する第1サブユニット121の3つのサブユニットからなる一体的な構成が、Z軸回動機構部76を構成するZ軸回動用基部301に対して、Z軸回りついてフローティング支持された状態となる(
図19、矢印F6参照)。
【0262】
また、Z軸回動機構部76の上側に、回動支持ユニット25が固定されている。具体的には、Z軸回動機構部76は、Z軸回動用基部301のフランジ部301bを回動支持ユニット25のアタッチメントプレート28の下側に合わせ、フランジ部301bおよびアタッチメントプレート28の四隅においてボルト329によりアタッチメントプレート28に固定されている。このため、フランジ部301bおよびアタッチメントプレート28の四隅には、ボルト329による固定用の孔部301s,28sが形成されている。アタッチメントプレート28は、フランジ部301bと略同じ形状・寸法を有する。このようにして、フローティングユニット20が回動支持ユニット25を介してロボットアーム部4bに取り付けられている。
【0263】
[ドア取外し工程における動作]
本実施形態に係るドア取外し装置1によるドア取外し工程における一連の動作の一例について説明する。車体2からのドア3の取外しは、例えばティーチングにより作成された所定のプログラムに基づくロボット4の動作によってドア取外し装置1が移動操作されることにより行われる。
【0264】
ドア取外し工程においては、まず、塗装工程を経た車体2が、車体搬送装置により搬送ハンガー5に支持された状態で、ドア3の取外しが行われる所定のドア取外し位置まで搬送される(
図1参照)。車体2の搬送時、ドア3は閉じた状態となっている。なお、車体搬送装置がフロア台車式のものである場合は、台車上に載置された車体2がドア取外し位置まで搬送される。
【0265】
ドア取外し位置に車体2が停止した後、ロボットアーム部4bの動作により、ドア取外し装置1が移動させられ、ドア開きアーム23によってドア3が開かれる。ここで、ロボットアーム部4bは、閉状態のドア3に対して外側(ドアアウタパネル6側)にドア取外し装置1を近付け、ドア開きアーム23をドア3に係止させる。ドア開きアーム23は、ドア係止部102の係止体103の係止パッド104をドア3の開口部3eに圧接することで係止状態となる(
図29参照)。ドア開きアーム23がドア3に係止した状態で、ロボットアーム部4bの動作によりドア3が外側に引っ張られ、ドア3が所定の開度状態(例えば略全開の状態)となるまで開かれる(
図2参照)。
【0266】
ドア3が開かれた後、ドア開位置保持装置18が作動して移動支持部19を下側からドア3に当接させることで、ドア3の開状態が保持される。そして、ロボットアーム部4bは、ドア取外し装置1を開状態のドア3の内側に回り込ませ、ロボットアーム部4bに対してフローティングユニット20を介して支持されたマテハン装置21によるドア3の把持に臨む。
【0267】
マテハン装置21によるドア3の把持に際しては、フローティングユニット20において、前側にマテハン装置21を支持する支持本体部70は、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向のシフト移動、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの回動についてロックされた状態となっている。すなわち、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の移動に関しては、シフトロック機構166,211,231の動作によって支持本体部70が各軸方向について移動不能状態となっており、X軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの回動に関しては、回動支持機構128,303およびY軸回動用シリンダ機構78のブレーキユニット265によって支持本体部70が各軸回りの回動について回動不能状態(以下「ロック状態」という。)となっている。また、マテハン装置21によるドア3の把持に際しては、マテハン装置21が有する各クランプ機構部32は、非作動状態となっており、クランプアーム44を立たせた状態(開いた状態)となっている。
【0268】
ロボットアーム部4bは、ドア3の把持に際し、
図58(a)に示すように、マテハン装置21を、係合ピン31の突出側がドア3のドアインナパネル7側に対向する向きで、2本の係合ピン31がそれぞれドア3側の係合孔7aに挿入するように近付ける(矢印P1参照)。ここで、ティーチング等によってあらかじめ設定されたロボット4の動作によると、開状態のドア3の姿勢のばらつきにより、係合ピン31と係合孔7aとの位置関係に誤差が生じる。そこで、フローティングユニット20の動作により、マテハン装置21を支持する支持本体部70が、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りについて所定の移動・回動範囲でフローティング支持された状態(以下「フローティング支持状態」という。)となり、係合ピン31と係合孔7aとの位置関係の誤差が吸収される。詳細には次のとおりである。
【0269】
図58(b)に示すように、マテハン装置21がドア3に近付くと(矢印P2参照)、2本の係合ピン31の先端が係合孔7aの開口範囲内に達する。このように係合ピン31の先端が係合孔7aに達した時点でフローティングユニット20のロック状態が解除される。なお、ロック状態の解除のタイミングは、係合ピン31の先端が係合孔7aに達した時点の直前あるいは直後であってもよい。ロック状態が解除されることで、フローティングユニット20がフローティング支持状態となり、マテハン装置21がX軸、Y軸およびZ軸の各軸方向、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りについて所定の範囲で自由に動ける状態となる。
【0270】
フローティングユニット20がフローティング支持状態となるとともに、マテハン装置21は引き続きドア3に近付く。これにより、
図58(c)に示すように、係合ピン31のテーパ部31cがガイド部として作用し、係合孔7aに対する係合ピン31の挿入の過程で、テーパ部31cのテーパ形状に倣って、マテハン装置21がフローティング状態で移動・回動する。すなわち、マテハン装置21は、フローティングユニット20によるフローティング支持により、2箇所の係合孔7aの位置に応じてこれに倣うように3次元的に移動・回動し、2箇所の係合孔7aに対する係合ピン31の位置ズレを吸収しながら、2本の係合ピン31をそれぞれ係合孔7aに挿入させる(矢印P3参照)。したがって、係合ピン31と係合孔7aとの位置関係については、係合孔7aの開口範囲に基づく所定の寸法の誤差が許容されることになる。
【0271】
また、マテハン装置21は、係合孔7aに対する係合ピン31の挿入にともない、クランプアーム44を開いた状態としたクランプ機構部32を、ドアインナパネル7の開口部7cからドア内空間3c内に挿入させる(矢印P4参照)。
【0272】
図58(d)に示すように、マテハン装置21は、クランプ機構部32とともにドアインナパネル7をクランプするための4箇所の受け部55のパッド部58をドアインナパネル7の外面7dに接触させた状態で、係合孔7aに対して係合ピン31の大部分を挿入させた状態となる。その後、マテハン装置21は、クランプ機構部32を作動させてクランプアーム44を回動させ(
図58(d)、矢印P5参照)、クランプ機構部32と受け部55のパッド部58とによってドアインナパネル7を把持した状態となる。すなわち、クランプ機構部32の押圧部51の押圧面51aおよびパッド部58の当接面58aが、それぞれドアインナパネル7の内面7bおよび外面7dに密着した状態となる。これにより、ドア3は、マテハン装置21によってしっかりと把持された状態となる。マテハン装置21によってドア3が把持された状態となることで、係合ピン31が係合孔7aに対して根元まで挿入された挿入完了状態(完全にフィットした状態)となり、これとともに、2本のナットランナ80が、それぞれ対応したヒンジ部13のヒンジボルト17に符合するように位置した状態となる。
【0273】
係合ピン31の挿入過程において、筒状部31dが係合孔7aに達した後における所定のタイミング、例えばマテハン装置21によるドア3の把持が完了した時点で、フローティングユニット20が再度ロック状態とされる。これにより、マテハン装置21は、フローティングユニット20に対して、つまり回動支持ユニット25のアタッチメントプレート28に対して固定状態で支持された状態となる。
【0274】
また、係合ピン31の挿入が完了した後における所定のタイミング、例えばマテハン装置21によるドア3の把持が完了した時点で、ドア取外し装置1は、ナットランナユニット22により、ヒンジボルト17の締結を解除してヒンジボルト17を取り外す。ナットランナユニット22は、2本のナットランナ80をX,Y,Z方向についてのシリンダ機構によって所定の方向に移動させるとともに、各係合駆動部80aを動作させてこれらをそれぞれ上下のヒンジボルト17に係合させ(
図58(d)、矢印P6参照)、各ナットランナ80によって上下2箇所のヒンジ部13のヒンジボルト17の締結を解除する。ナットランナユニット22は、ヒンジボルト17の締結を解除した後、2本のナットランナ80を退避させることで、ヒンジボルト17を取り外す。
【0275】
また、マテハン装置21によるドア3の把持が完了した後における所定のタイミング、例えばマテハン装置21によるドアインナパネル7のクランプ直後の時点で、ドア開位置保持装置18において移動支持部19が下降し、ドア開位置保持装置18によるドア3の保持状態が解除される。
【0276】
ヒンジボルト17が取り外されることで、ドア3が車体2から取外し可能な状態となる。かかる状態となった後、ロボットアーム部4bの動作により、マテハン装置21に把持された状態のドア3が車体2から取り外される。取り外されたドア3は、ロボットアーム部4bの動作によって、搬送ハンガー5による車体2の搬送経路の両外側において4箇所のドア3に対応して設置されたドアハンガー290(
図1参照)に載置支持される。
【0277】
ドアハンガー290は、床面上に設置された基台291上において所定のフレーム部材によって構成されており、所定の高さ位置に設けられている。ドアハンガー290には、ドア3を所定の姿勢・位置で支持するための複数の係止部290aが設けられている。
【0278】
また、ロボットアーム部4bによるドアハンガー290に対するドア3の支持に際しては、フローティングユニット20のセンタリング動作により、ロボットアーム部4bに対するドア3の姿勢が所定のセンタリング姿勢とされる。ここで、フローティングユニット20は、センタリング動作として、X方向、Y方向およびZ方向の各方向についてのセンタリング機構、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの回動についてのセンタリング機構による各軸方向および各軸回りについての支持本体部70のセンタリングを行う。また、フローティングユニット20がセンタリング動作を行った状態における支持本体部70の位置・姿勢は、ドア3の取外しを行う際の原位置となる。そして、ドアハンガー290にドア3を移載したロボットアーム部4bは、ドア3の取外しを行う前の所定の待機状態に戻る。
【0279】
以上のようにして、ドア取外し工程における一連の動作が行われる。なお、車体2からのドア3の取外しは、車体2が有する4つのドア3について同時的に行われてもよいし、所定の順序で順番に行われてもよい。
【0280】
以上のような本実施形態に係るフローティングユニット20およびドア取外し装置1によれば、自動車のドア3をロボット4の動作によって自動で把持する際に、ドア3の姿勢のばらつきにかかわらず、マテハン装置21による正確なドア3の把持を行うことができる。
【0281】
自動車の車両特性として、ドア3の開き角度によって、ドア3の姿勢が3次元的に変化するということがあり、また、車体2の搬送ライン上においては、車体2自体の姿勢のばらつきが存在する。ドア3の姿勢の変化の指標としては、例えば、ドア3が車体に取り付けられた状態を基準として、
図59(a)に示すように、車体の後面視でのドア3の回転方向(ドアが左右に倒れる面倒れの方向)の移動量(矢印Q1参照)や、
図59(b)に示すように、車体の側面視でのドアの回転方向(面回転の方向)の移動量(矢印Q2参照)がある。
【0282】
ドア3の姿勢の変化量としては、ドア3の面倒れについては、
図59(a)に示すように、ドア3の下端位置R1を中心とした面倒れの方向(矢印Q1)の回動による所定の計測点R2の移動量が計測される。また、ドア3の面回転については、
図59(b)に示すように、ドア3の前端位置R3を中心とした面回転の方向(矢印Q2)の回動による所定の計測点R4の移動量が計測される。なお、
図59の各図におけるドア3は左側のフロントドアであり、
図59(a)はドア3の後面視を示したもの、
図59(b)はドア3の内側の側面視を示したものである。
【0283】
このようにドア3の姿勢がばらつくため、ロボット4によってドア開き動作を行う構成において、例えばティーチングにより作成された所定のプログラムに基づいて所定の動作を行うロボット4によってドア3の把持を行うに際し、ロボット4の動作によって所定の位置に移動させられるマテハン装置21の係合ピン31に対して、ドア3側の係合孔7aの位置がずれる場合が生じる。
【0284】
そこで、本実施形態に係るフローティングユニット20およびドア取外し装置1によれば、コンパクトかつ軽量な構成により、マテハン装置21を支持する支持本体部70について、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの全ての方向についてのフローティング支持を実現することが可能となる。これにより、車体2に対する開き角度によって面倒れの方向のずれ(
図59(a)参照)、および面回転の方向のずれ(
図59(b)参照)が存在する自動車のドア3を把持対象として、ロボット4の動作によってマテハン装置21によりドア3を把持するに際し、フローティングユニット20のフローティング動作によって、ドア3とマテハン装置21との位置ずれを吸収することができ、ロボット4による円滑なドア3の把持が可能となる。
【0285】
結果として、マテハン装置21の係合ピン31がドア3に干渉することを防止することができ、ドア3に傷が付くことを回避することができる。また、マテハン装置21によるドア3の把持が正常に行われずにドア3に意図せぬ負荷が作用することを防止することができる。これにより、例えばヒンジボルト17の締結が解除されることにより負荷が開放されることにともなってドア3がその周囲の部品(例えばフェンダやピラー等)に干渉し、これらの部品に傷等の悪影響を及ぼすといった不具合を回避することが可能となる。
【0286】
このように、本実施形態に係るフローティングユニット20およびドア取外し装置1によれば、ドア3の姿勢が3次元的にばらついても、マテハン装置21をドア3に追従させることができ、全方向のばらつきを吸収することができる。このため、ドア3等の車両部品を傷付けることなく、車種等に応じてロボット4で精度良くドア3の把持を行うことができ、高い汎用性を得ることができる。
【0287】
また、従来技術として、2つのアームを備えた双腕ロボットによりドアを把持し、2つのアームの協調動作によってドアを取り外す技術が存在するが、かかる技術によれば、ロボットのティーチングが複雑となり、また、コストが高くなるという懸念がある。この点、本実施形態に係るフローティングユニット20およびドア取外し装置1によれば、1つのロボットアーム部4bによってドア3の取外しを行うことができるため、ロボット4のティーチングを簡略化することができ、コストを抑えることが可能となる。
【0288】
また、本実施形態に係るフローティングユニット20を構成するX方向シフト機構部71、Y方向シフト機構部72およびZ方向シフト機構部73、並びにX軸回動機構部74、Y軸回動機構部75およびZ軸回動機構部76は、いずれも各移動方向または各回動方向についてのロック機構を有する。このような構成によれば、支持本体部70を、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の移動、並びにX軸、Y軸およびZ軸の各軸回りの回動についてロック状態とすることができるので、ロボット4によるマテハン装置21の操作について、操作性を向上することができる。
【0289】
また、本実施形態に係るフローティングユニット20を構成するX方向シフト機構部71、Y方向シフト機構部72およびZ方向シフト機構部73、並びにX軸回動機構部74、Y軸回動機構部75およびZ軸回動機構部76は、いずれもセンタリング機構を有する。このような構成によれば、ロボット4によってドア3を移載する際に、センタリング機構を作動させることで、ロボットアーム部4bとドア3の相対位置を常に一定とすることが可能となる。これにより、例えばロボットアーム部4bの動作によって取り外したドア3をドアハンガー290に支持させる際等、確実なドア3の移載が可能となる。
【0290】
また、本実施形態に係るフローティングユニット20においては、支持本体部70のY軸回りの回動支持に関し、Y軸回動機構部75が、伸縮方向をZ方向に対して傾斜方向としたY軸回動用シリンダ機構78により、支持本体部70をY軸回りに回動させる構成を備える。
【0291】
このような構成によれば、支持本体部70の前側にマテハン装置21を支持した構成において、マテハン装置21の自重の影響が大きいY軸回りの回動支持について、フローティング状態でのマテハン装置21の自重による垂れ下がりを防止することができる。すなわち、Y軸回動用シリンダ機構78の動作制御(具体的にはエア圧の制御)により、Y軸回りの回動支持について、重力方向に偏ることなく、良好なフローティング支持状態が得られ、マテハン装置21の垂れ下がりを防止することができる。
【0292】
これにより、マテハン装置21によるドア3の把持に関し、係合孔7aに挿入される係合ピン31を介してマテハン装置21等の自重が負荷となってドア3に作用すること、つまり、マテハン装置21等が係合ピン31を介して自重をドア3に預けた状態となることを防止することができる。したがって、係合ピン31を係合孔7aに挿入させたマテハン装置21とドア3との位置関係を良好なものとすることができるので、係合孔7aの変形や傷を防止することができ、また、ドア3の円滑な取外し作業を実現することが可能となる。また、マテハン装置21等の自重による影響を低減することができるので、フローティングユニット20におけるロック状態とフローティング支持状態との切換え動作、およびセンタリング動作を円滑かつ確実に行うことができる。
【0293】
また、本実施形態に係るドア取外し装置1は、フローティングユニット20の支持本体部70にナットランナユニット22を取り付けた構成を備える。このような構成によれば、ヒンジボルト17を取り外すためのナットランナユニット22を、フローティングユニット20を介してマテハン装置21を移動操作する単一のロボット4により移動操作することができる。これにより、ナットランナユニット22を移動操作するためのロボット等を別途設ける必要がなくなるため、シンプルな構成を実現することが可能となる。
【0294】
また、フローティングユニット20の支持本体部70にナットランナユニット22を取り付けた構成によれば、ドア3の姿勢のばらつきにかかわらず、ヒンジボルト17の頭に対するナットランナ80の係合駆動部80aの位置合わせを容易に行うことができる。すなわち、フローティング支持状態となる支持本体部70が、マテハン装置21およびナットランナユニット22の共通の支持部となるため、ナットランナユニット22を、マテハン装置21と共にフローティング支持することが可能となる。これにより、係合ピン31とナットランナ80の相対位置が定まりやすくなるため、係合孔7aに対する係合ピン31の挿入が完了してマテハン装置21がドア3をクランプした状態となることで、各ヒンジボルト17に対するナットランナ80の位置決めを自動的に行うことが可能となり、ヒンジボルト17とソケットとの位置合わせが容易となる。
【0295】
また、ヒンジボルト17に対するナットランナ80の位置合わせに関し、例えば上述したような双腕ロボットによるドアの取外し技術の場合、ティーチングに基づくロボットの動作のみでは、ヒンジボルトとナットランナのソケットとの位置ズレが生じやすく、ヒンジボルトに対するソケットの嵌合が失敗しやすいという懸念がある。そこで、光学センサ等のセンサを用いてヒンジボルトとソケットの芯合わせをすることが考えられるが、センサ等の装置機器が増えることは、装置構成の複雑化を招き、コスト面で好ましくない。
【0296】
これに対し、本実施形態に係るフローティングユニット20およびドア取外し装置1によれば、上述のとおりヒンジボルト17に対するナットランナ80の位置決めを自動的に行うことが可能となるため、車種等に応じてロボット4で精度良くヒンジボルト17に対するナットランナ80のソケットの位置合わせを行うことができ、高い汎用性を得ることができる。
【0297】
また、本実施形態に係るドア取外し装置1は、ロボット4の動作によってフローティングユニット20とともに移動するドア開きアーム23を備える。このような構成によれば、ドア3の取外しに際し、マテハン装置21を移動操作するロボット4の動作によってドア3を自動的に開くことができる。これにより、ドア3を開くためのロボット等を別途設ける必要がなくなるため、シンプルな構成を実現することが可能となる。また、作業者によってドア3を開く必要がなくなるため、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0298】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0299】
上述した実施形態では、フローティングユニット20により支持されるマテハン装置21は、把持対象の部品を自動車のドア3とするものであるが、本発明に係る部品把持装置が把持対象とする部品は、特に限定されるものではない。本発明に係る部品把持装置用支持装置は、部品の取外しや取付け等の作業について、ロボットによる自動化を図るに際し、部品把持装置を支持するための構成として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0300】
1 ドア取外し装置(車両用ドア取外し装置)
2 車体
3 ドア(部品)
6 ドアアウタパネル
7 ドアインナパネル
7a 係合孔
20 フローティングユニット(部品把持装置用支持装置)
21 マテハン装置(部品把持装置)
22 ナットランナユニット(締結解除ユニット)
23 ドア開きアーム(ドア開き装置)
31 係合ピン(係合部)
32 クランプ機構部(把持部)
70 支持本体部
71 X方向シフト機構部(第1シフト機構部)
72 Y方向シフト機構部(第2シフト機構部)
73 Z方向シフト機構部(第3シフト機構部)
74 X軸回動機構部(第1回動機構部)
75 Y軸回動機構部(第2回動機構部)
76 Z軸回動機構部(第3回動機構部)
78 Y軸回動用シリンダ機構
80 ナットランナ(締結解除装置)
81 基部支持プレート
96 取付用突片部
102 ドア係止部
128 回動支持機構
166 シフトロック機構
211 シフトロック機構
231 シフトロック機構
265 ブレーキユニット
303 回動支持機構