(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】建設機械のシステム、及び支援装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221108BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2019061770
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】李 蒙萌
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222003(JP,A)
【文献】特開平08-287294(JP,A)
【文献】特開2001-171349(JP,A)
【文献】特開2016-003462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の部品の製造を支援するシステムであって、
顧客ごとの前記建設機械の作業形態に基づいて、前記建設機械の部品に蓄積される累積損傷度を算出し、前記累積損傷度に基づいて、前記部品の強度が部分的に変更された形状を算出する処理部を有する、
建設機械のシステム。
【請求項2】
前記処理部が算出した前記形状の画像を表示する表示部を有する、
請求項1に記載の建設機械のシステム。
【請求項3】
前記表示部は、前記累積損傷度の分布の画像を更に表示する、
請求項2に記載の建設機械のシステム。
【請求項4】
前記処理部は、前記部品の累積損傷度が大きい部分又は余寿命が短い部分の強度を上げた形状を算出する、
請求項1又は2に記載の建設機械のシステム。
【請求項5】
前記処理部は、前記部品の累積損傷度が小さい部分又は余寿命が長い部分の強度を下げた形状を算出する、
請求項1又は2に記載の建設機械のシステム。
【請求項6】
前記建設機械はショベルであり、前記部品はブーム、アーム及びバケットの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建設機械のシステム。
【請求項7】
顧客ごとの建設機械の作業形態に基づいて、前記建設機械の部品に蓄積される累積損傷度を算出し、前記累積損傷度に基づいて、前記部品の強度が部分的に変更された形状を算出する処理部を有する、
建設機械の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のシステム、及び支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベル等の建設機械では、作業形態が異なると、損傷の生じる場所や損傷の程度が異なる。損傷が生じた場合の補修方法としては、補強板の取付け、ショットピーニング、加熱処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業形態の相違に関わらず、同一仕様の建設機械を用いると、建設機械の部品が部分的に損傷し、短期間で補修が必要となる場合がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、作業形態に応じて部分的に強度が変更された部品の製造を支援することが可能な建設機械のシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る建設機械のシステムは、建設機械の部品の製造を支援するシステムであって、顧客ごとの前記建設機械の作業形態に基づいて、前記建設機械の部品に蓄積される累積損傷度を算出し、前記累積損傷度に基づいて、前記部品の強度が部分的に変更された形状を算出する処理部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、作業形態に応じて部分的に強度が変更された部品の製造を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る建設機械のシステムを説明するための図。
【
図2】本発明の実施形態に係る形状算出処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】累積損傷度の分布及び余寿命の分布を算出する方法のフローチャート。
【
図4】ショベルで繰り返される一連の動作の一例を示す概略図。
【
図5】ショベルの動作中におけるブームシリンダの油圧、アーム先端位置、及び旋回角度の時間波形の一例を示す図。
【
図6】ある解析時刻におけるブーム内の応力分布の算出結果を濃淡で示す図。
【
図7】
図6に示した評価箇所Epに掛かる応力の時間波形を示す図。
【
図9】アタッチメントの強度が部分的に変更された形状の画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る建設機械のシステムの一例について説明する。本発明の実施形態に係る建設機械のシステムは、建設機械の部品の製造を支援するシステムである。建設機械の種類は特に限定されないが、以下では、建設機械の一例であるショベルを例に挙げて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械のシステムを説明するための図である。
【0011】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る建設機械のシステムは、ショベルPS、ショベル支援装置20、及び管理装置30が通信網40を介して通信可能に構成されている。
【0012】
ショベルPSは、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含むアタッチメントを備える。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0013】
ショベル支援装置20は、送受信回路21、処理装置22、入力装置23、及び表示画面24を含む。ショベル支援装置20は、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC等であってよい。
【0014】
送受信回路21は、通信網40を介して管理装置30と通信する機能を有する。
【0015】
処理装置22は、管理装置30から通信網40を経由し、送受信回路21を通して受信したデータに基づいて、データ処理を行い、処理結果を表示画面24に表示する。
【0016】
入力装置23は、ショベル支援装置20の利用者の操作を受け付ける。入力装置23を通して入力されたコマンドは処理装置22に入力される。
【0017】
表示画面24は、処理装置22による処理結果を表示する。表示画面24には、例えばタッチパネルが用いられる。タッチパネルが用いられる場合、表示画面24が入力装置23としても使用される。
【0018】
管理装置30は、通信装置31、処理装置32、記憶装置33、出力装置34、及び入力装置35を含む。
【0019】
通信装置31は、通信網40を介して、管理対象であるショベルPSから送信されたデータを受信すると共に、ショベル支援装置20に対して種々のデータを送信する。管理対象であるショベルPSから送信されるデータは、ショベルPSの各油圧シリンダ内の油圧、アタッチメントの姿勢を示すブーム角、アーム角、バケット角、及び上部旋回体の方位を示す旋回角の測定結果を含む。ショベル支援装置20に対して送信される種々のデータは、処理装置32により算出された処理結果を含む。
【0020】
処理装置32は、記憶装置33に格納された顧客データと作業形態とが関連付けられたデータを取得し、アタッチメントの累積損傷度及び余寿命を算出する。また、処理装置32は、累積損傷度に応じてアタッチメントの強度が部分的に変更された形状を算出する。「顧客情報」は、顧客を識別する情報であり、例えば顧客名称、顧客識別番号を含む。「作業形態」は、例えば稼動環境情報、実現場荷重データ(負荷データ)、稼働状況情報、不具合情報を含む。「稼動環境情報」としては、高地(高度)、採石場、採砂場、林業、港湾等のショベルPSが稼動する環境に係わる情報が挙げられる。「実現場荷重データ」としては、ショベルPSの各油圧シリンダ内の油圧、アタッチメントの姿勢を示すブーム角、アーム角、バケット角、上部旋回体の方位を示す旋回角等のショベルの操作に係わる測定結果が挙げられる。「稼働状況情報」としては、単純掘削、溝掘削、地ならし、土砂積込み、土羽打ち等の作業内容に係わる頻度等が挙げられる。「不具合情報」としては、所定の作業内容の作業を行ったときに発生したアタッチメント、フレーム、クローラ等の損傷の情報等が挙げられる。「累積損傷度」は、類似の動作が周期的に繰り返される作業を行っているときに、ショベルPSの部品に掛かる損傷度を、1周期に亘って累積したものである。例えば、単純掘削作業を行っている場合には、掘削開始から、持上旋回動作、排土動作、及び戻り旋回動作を経て、次の掘削開始に至るまでの動作が、1つの周期に相当する。「余寿命」は、ショベルPSの部品の破壊に至るまでの寿命である。
【0021】
記憶装置33は、例えば処理装置32が実行するコンピュータプログラム、顧客データと作業形態とが関連付けられたデータを格納する。
【0022】
出力装置34は、処理装置32により算出された処理結果、例えばアタッチメントの累積損傷度、余寿命、アタッチメントの強度が部分的に変更された形状を表示する。
【0023】
入力装置35は、管理装置30のオペレータの操作を受け付ける。入力装置35を通して入力されたコマンドは、処理装置32に入力される。
【0024】
次に、管理装置30が後述する形状算出処理を実行するための事前処理(データ蓄積)について説明する。
【0025】
事前処理として、ショベルPSは、稼動中に「ショベルPSの機番(認識番号)」、「顧客情報」、「稼動環境情報」、「実現場荷重データ」、「稼働状況情報」を管理装置30へ送信している。これにより、管理装置30で、ショベルPSから送信された情報を記憶装置33に格納する。そして、ショベルPSに不具合が発生した際、ショベル支援装置20を有する作業者は、ショベルPSの作業現場へ行き、ショベルPSに発生した不具合を「不具合情報」としてショベル支援装置20から管理装置30へ送信する。その際、作業者は、「顧客情報」、「ショベルPSの機番(認識番号)」、「稼動環境情報」等と合わせてショベル支援装置20から管理装置30へ送信してもよい。
【0026】
「顧客情報」、「ショベルPSの機番(認識番号)」、「稼動環境情報」、「不具合情報」を受信した管理装置30は、不具合が発生したショベルPSの「実現場荷重データ」、「稼働状況情報」を記憶装置33から抽出する。そして、処理装置32により「実現場荷重データ」に基づいて累積損傷度、若しくは、余寿命を算出する。そして、管理装置30のオペレータは、算出された累積損傷度、若しくは、余寿命の算出結果と「不具合情報」、「稼動環境情報」、「稼働状況情報」等とを照らし合わせ、算出結果の妥当性を確認する。算出結果が妥当な場合、処理装置32は、算出結果と「稼動環境情報」、「実現場荷重データ」、「稼働状況情報」との関連づけを行い、記憶装置33に格納する。このようにして、管理装置30は事前処理を完了させる。
【0027】
図2を参照しながら、事前処理完了後に、顧客からの注文を受けて、顧客の作業形態に適したショベルPSの部品の形状を算出する処理(以下「形状算出処理」という。)の一例について説明する。以下では、ショベルPSの部品としてブーム4の形状を算出する場合を例に挙げて説明するが、他の部品、例えばアーム5、バケット6の形状についても同様に算出できる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る形状算出処理の一例を示すフローチャートである。
図2に示される形状算出処理は、例えば管理装置30によって実行される。但し、形状算出処理は、ショベル支援装置20によって実行されてもよい。以下では、一例として、管理装置30が、入力された稼動環境情報、稼動状況情報等に適用する形状算出処理を実行する場合について説明する。ここで、形状算出処理は、入力された情報に基づいて想定される荷重に対して応力を低減した形状を算出する処理、累積損傷度を小さくする(余寿命を延ばす)局所処理(熱処理、グラインダ、ピーニング)等を含む。
【0029】
まず、顧客からの注文を受けてショベルを販売する際、ショベル支援装置20の利用者(営業マン等)は顧客との打合せ等により顧客情報の他に、新規購入の対象となるショベルが稼動する稼動環境情報、稼動状況情報等をショベル支援装置20へ入力する。ショベル支援装置20は、送受信回路21を介して管理装置30へ顧客情報、稼動環境情報、稼動状況情報等を送信する。これにより、管理装置30の通信装置31は、通信網40を介して顧客データ、稼動環境情報、稼動状況情報等を受信し、処理装置32は通信装置31を介して入力された顧客データ、稼動環境情報、稼動状況情報等を取得する(ステップST1)。
【0030】
その後、処理装置32は、記憶装置33を参照し、ステップST1で取得した顧客データ、稼動環境情報、稼動状況情報等に基づき、類似の稼動環境情報、稼動状況情報等を抽出する。それとともに、抽出された類似の稼動環境情報、稼動状況情報等に基づき、それらと関連づけられた実現場荷重データと累積損傷度(若しくは余寿命)を抽出する(ステップST2)。
【0031】
その後、処理装置32は、ステップST2で抽出された累積損傷度又は余寿命に基づいて、部分的に強度が変更されたアタッチメントの形状を算出する(ステップST3)。本実施形態では、処理装置32は、ステップST2で抽出されたブーム4の累積損傷度の分布又は余寿命の分布がブーム4の全体に亘って略一様となるように、ブーム4の累積損傷度が大きい部分又は余寿命が短い部分の強度を上げた形状を算出する。部分的に強度を上げた形状は、例えば補強板を溶接で取り付けた形状、板厚を厚くした形状、ショットピーニング処理を行った形状を含む。また、処理装置32は、ステップST2で抽出されたブーム4の累積損傷度の分布又は余寿命の分布がブーム4の全体に亘って略一様となるように、ブーム4の累積損傷度が小さい部分又は余寿命が長い部分の強度を下げた形状を算出してもよい。部分的に強度を下げた形状は、例えば板厚を薄くした形状を含む。板厚を薄くした形状では、ブーム4の全体としての余寿命を維持した状態で、ブーム4の軽量化を図ることができる。
【0032】
その後、処理装置32は、ステップST3で算出された部分的に強度が変更されたアタッチメントの形状を出力装置34に表示する(ステップST4)。これにより、管理装置30のオペレータは、出力装置34に表示される画像を確認することで、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントの形状を容易に把握できる。また、処理装置32は、ステップST3で算出された部分的に強度が変更されたアタッチメントの形状を、通信網40を介してショベル支援装置20の表示画面24に表示させてもよい。この場合、ショベル支援装置20の利用者は、表示画面24に表示される画像を確認することで、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントの形状を容易に把握できる。
【0033】
図3から
図8を参照しながら、事前処理におけるショベルPSのブーム4の累積損傷度の分布及び余寿命の分布を算出する方法について説明する。
図3は、累積損傷度の分布及び余寿命の分布を算出する方法のフローチャートである。
【0034】
まず、ショベルPSによる作業中に繰り返される一連の動作の少なくとも1周期分のアタッチメントの姿勢センサ、アタッチメントの荷重センサ、及び旋回角センサの測定値について説明する。
【0035】
図4は、ショベルPSで繰り返される一連の動作の一例を示す図である。
図4(a)から
図4(d)は、それぞれ一連の動作の1周期内の各工程、具体的には「掘削開始」、「持上旋回」、「排土」、「戻り旋回」の各工程中の任意の時点におけるショベルPSの姿勢を示す。ショベルPSの運転時には、例えば一連の動作が繰り返されることにより、
図4(a)から
図4(d)に示される姿勢が順番に出現する。
【0036】
図5(a)から
図5(c)は、それぞれショベルPSの動作中におけるブームシリンダ7内の油圧、アーム5の先端の高さ、及び旋回角度の時間波形(時間変化)の一例を示す図である。
図5(a)に示される実線L1及びL2は、それぞれブームシリンダ7内のロッド側油圧及びボトム側油圧を示す。
図5(a)から
図5(c)において、時刻t1は、
図4(a)に示される掘削開始に対応する。時刻t1からt2までの期間は、掘削が行われている期間に対応する。時刻t2からt3までの期間は、
図4(b)に示されるブーム4の持ち上げ及び旋回の動作が行われている期間に対応する。時刻t3からt4までの期間は、
図4(c)に示される排土及び
図4(d)に示される戻り旋回の動作が行われている期間に対応する。一連の動作の繰り返しに対応して、時刻t1からt4までの波形と近似する波形が周期的に現れる。
【0037】
ステップST11において、一連の動作の1周期内で、解析すべき複数の時刻(以下、「解析時刻」という。)を抽出する。一例として、
図5(a)に示されるように、1周期内から、時刻t1~t4の4個の解析時刻が抽出される。例えば、シリンダ内の油圧、旋回角度の時間波形のピーク、変曲点等の特徴的な時刻を、解析時刻として抽出する。抽出する解析時刻の個数を多くすると、解析精度が向上するが、解析に要する計算時間は長くなる。処理装置32が、
図5(a)から
図5(c)に示される時間波形に基づいて解析時刻を自動的に抽出するようにしてもよいし、オペレータが時間波形を観察して解析時刻を決定し、入力装置35から解析時刻を入力するようにしてもよい。
【0038】
ステップST12において、解析時刻の各々において、解析モデルを用い、ブーム4、アーム5等の部品の各々に加わっている応力の分布を算出する。応力の分布は、解析時刻ごとに決定されているショベルPSの特定の姿勢に基づいて計算される。すなわち、繰り返される一連の動作の1周期内に現れる種々のショベルPSの姿勢ごとに、ショベルPSの部品に加わっている荷重に基づいて、応力の分布を算出する。応力の分布の算出には、例えば有限要素法等の数値解析手法を適用することができる。このとき、ショベルPSの姿勢及びショベルPSの部品に掛かる荷重が境界条件として用いられる。荷重はベクトルで表される。荷重の大きさ及び向きは、油圧シリンダ内の油圧、油圧シリンダの軸方向(アタッチメントの姿勢)、及び旋回角加速度により求まる。旋回角加速度は、旋回角を2回微分することにより算出される。
【0039】
図6は、ある解析時刻においてブーム4に掛かる応力の分布の算出結果を示す。応力は、解析モデルの各要素を構成する節点ごとに算出される。
図6において、応力が相対的に大きな箇所が、相対的に濃い色で示されている。
図6に示されるような応力分布の解析結果が、解析時刻ごとに、かつ部品ごとに算出される。また、
図6には、解析に用いられたブーム4の作業内容履歴が表示される。作業内容履歴は、ショベルPSの機体ごとに表示され、過去に行われた作業内容ごとの合計の作業時間が積み上げ棒グラフで示される。
図6に示す例では、2号機のブーム4であり、作業内容の大部分が「掘削」であることを示している。
【0040】
図7は、ショベルPSの部品の1つの評価点Ep(
図6)に掛かる応力の時間波形の一例を示す図である。時刻t1からt4までの各々において応力が算出されている。
図7に示される応力の時間波形は、ブーム4、アーム5、バケット6等の部品ごとに、複数の評価点(有限要素法を用いた場合には、複数の節点)について求められる。
【0041】
ステップST13において、各部品の評価点ごとに、累積損傷度を算出する。これにより、部品内における累積損傷度の分布が得られる。累積損傷度は、応力の時間変化から抽出される応力の極値に基づいて算出される。以下、累積損傷度を算出する方法の一例について説明する。まず、
図7に示される応力の時間波形の極大値と極小値とを検出する。極大値と極小値とに基づいて、応力が変動する範囲である応力範囲Δσを求めると共に、応力範囲Δσごとの出現頻度を求める。応力範囲Δσiの出現頻度をniで表す。
【0042】
図8は、S-N線図の一例を示す図である。例えば、
図8に示されるS-N線図では、応力範囲Δσiの疲労寿命(破断繰返し回数)がNi回である。累積疲労損傷則(別名、線形被害則)により、累積損傷度Dは、以下の式で表される。
【0043】
【数1】
ステップST14において、ステップST13で算出された累積損傷度の算出値の、想定値に対する相対値(以下、単に「相対値」という。)を求める。累積損傷度の算出値が、累積損傷度の想定値と等しいとき、その相対値は「1」である。「累積損傷度の想定値」とは、部品の保証寿命(予め決められている目標とする寿命)から逆算した1周期あたりの累積損傷度を意味する。すなわち、1周期あたりの累積損傷度の算出値が、累積損傷度の想定値と等しい場合には、累積損傷度を算出したときと同一の動作を継続すると、保証寿命まで疲労破壊が生じることなく、部品を使用することができる。累積損傷度の算出値が想定値を超えている場合、想定値を超えた累積損傷度が蓄積された部品は、保証寿命に到達する前に疲労破壊に至る危険性が高いと判断される。
【0044】
例えば、部品の保証寿命をTg(時間)とし、一連の動作の1周期あたりの平均時間をTp(時間)とすると、保証される繰り返し回数は、Tg/Tpで表される。累積損傷度の想定値は、この逆数、すなわちTp/Tgで表される。
【0045】
ステップST15において、部品の余寿命の分布を算出する。以下、余寿命の算出方法について説明する。管理装置30は、管理対象のショベルPSの機体ごと、及び部品ごとに、機体の稼働開始時点から現時点までの累積損傷度の算出値の総和を算出する。今回のデータ収集の対象となる動作を開始するまでの過去の累積損傷度の総和は、記憶装置33に記憶されている。ショベルPSの部品の、ある箇所の累積損傷度の算出値の総和が1になると、その箇所で破断が生じる。1から累積損傷度の算出値の総和を減算することにより、余寿命が求まる。
【0046】
図9は、アタッチメントの強度が部分的に変更された形状の画像の一例を示す図である。
図9に示す例では、出力装置34に、補強板4aが取り付けられることにより部分的に強度が高められたブーム4の形状が画像として表示されると共に、ブーム4の累積損傷度の分布が濃淡で表示されている。
図9では、累積損傷度の算出値が相対的に高い領域が相対的に濃く表されている。なお、累積損傷度の分布は色分けして表されていてもよい。管理装置30のオペレータは、出力装置34に表示される画像を確認することで、ブーム4の特定部分に補強板4aを取り付けることが好ましいことを容易に把握できる。
【0047】
なお、出力装置34及び/又は表示画面24に表示される画像は、
図9に示される画像に限定されない。例えば、部品の材料、寸法、部品に対する補強処理等が表示されるように構成されてもよい。
【0048】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る建設機械のシステムでは、顧客ごとのショベルPSの作業形態に基づいて、アタッチメントに蓄積される累積損傷度を算出し、累積損傷度に基づいて、アタッチメントの強度が部分的に変更された形状を算出する。これにより、作業形態に応じて部分的に強度が変更されたアタッチメントを提供することができる。
【0049】
また、アタッチメントの強度が部分的に変更された形状の画像が出力装置34に表示される。これにより、管理装置30のオペレータは、出力装置34に表示される画像を確認することで、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントの形状を容易に把握できる。また、出力装置34に表示される画像は、通信装置31、通信網40、及び送受信回路21を介して、ショベル支援装置20に送信され、表示画面24に表示される。これにより、ショベル支援装置20の利用者は、表示画面24に表示される画像を確認することで、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントの形状を容易に把握できる。これらの結果、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントを容易に製造することができる。また、顧客の作業形態に適したショベルPSのアタッチメントの補修を行うことができる。
【0050】
なお、上記の実施形態において、表示画面24及び出力装置34は表示部の一例であり、処理装置22及び処理装置32は処理部の一例であり、記憶装置33は記憶部の一例である。また、ショベルPSは建設機械の一例である。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0052】
20 ショベル支援装置
22 処理装置
24 表示画面
30 管理装置
32 処理装置
33 記憶装置
34 出力装置
PS ショベル