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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/00 20060101AFI20221108BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20221108BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F23R3/00 A
F23R3/14
F23R3/28 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019072827
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020169785
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】青木 虹造
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】戸貝 公宣
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-195284(JP,A)
【文献】特開2004-77076(JP,A)
【文献】特開2015-129490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00
F23R 3/14
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状の外筒と、
前記外筒の径方向内側に設けられ、前記軸線方向に延びる筒状の内筒と、
前記内筒内に設けられ、燃料を噴射する燃料噴射部を先端部に有した複数の燃料ノズルと、
外部から前記外筒の内周面と前記内筒の外周面との間に導入した空気を前記軸線方向第一側に流し、前記内筒の前記軸線方向第一側の端部で前記空気の流通方向を反転させて前記内筒内に送り込む空気流路部と、
前記燃料ノズルの前記燃料噴射部よりも前記内筒内における前記空気の流通方向上流側に設けられ、前記空気の流れを前記燃料ノズルの中心軸周りに旋回させるスワラと、
前記内筒の内側に設けられるとともに、前記空気の流通方向で前記スワラよりも上流側、かつ前記内筒の前記端部よりも下流側に設けられ、前記燃料ノズルの外周面から前記内筒内に水を噴射する水噴射部と、
を備える燃焼器。
【請求項2】
前記内筒の内側で、複数の前記燃料ノズルの径方向内側に設けられたパイロットノズルと、
前記内筒の前記端部の内側に設けられ、前記空気流路部において前記空気の流通方向が反転されて前記内筒内に送り込まれる空気を、前記軸線方向第二側に向けて案内するガイドベーンと、をさらに備え、
前記水噴射部は、前記ガイドベーンよりも前記空気の流通方向下流側に設けられている
請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記燃料ノズルは、
前記軸線方向第一側に設けられたノズル本体部と、
前記軸線方向第二側に設けられた前記先端部と、
前記ノズル本体部と前記先端部との間に設けられて、前記軸線方向第二側に向かって外径が漸次縮小するテーパ部と、を備え、
前記水噴射部は、前記テーパ部に設けられている
請求項1又は2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記水噴射部は、前記燃料ノズルの周方向に間隔をあけて設けられた複数のノズル孔を有する
請求項1から3の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記周方向における前記複数のノズル孔の間隔は、不等間隔である
請求項4に記載の燃焼器。
【請求項6】
前記燃料ノズルは、
中心軸回りに複数設けられ、前記燃料を前記燃料噴射部に向けて供給する燃料供給流路部と、
前記燃料ノズルの外周面と前記燃料供給流路部との間に設けられるとともに、前記中心軸を中心とした周方向に間隔をあけて設けられて、前記水噴射部に水を供給する水供給流路部と、を備える
請求項1から5の何れか一項に記載の燃焼器。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の燃焼器を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに用いられる燃焼器としては、ガス燃料と油燃料とを焚くことができるデュアル焚き燃焼器が知られている。このようなデュアル焚き燃焼器で油燃料を焚く場合、燃焼筒内に油燃料とともに水を噴射する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外筒の内周面と内筒の外周面との間に形成された空気流路に、水供給部を備える構成が開示されている。この特許文献1の燃焼器に形成された空気流路は、内筒の後端で流通方向が反転される反転部を備えている。この反転部を経た空気は、内筒内に燃料を噴射する燃料ノズルに供給される。水供給部は、空気流路における反転部よりも以前に設けられて空気流路を流れる空気に水又は蒸気を供給する。この特許文献1の燃焼器では、水供給部で空気に水又は蒸気を供給することで、燃焼器における火炎温度の低減を図り、NOx(窒素酸化物)や煤などの低減を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-145563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、外筒と内筒との間の空気流路に水供給部が供給される。このため、水供給部から空気流路に供給された水は、反転部で水に作用する遠心力によって、反転部の径方向外側の内周面に付着しやすい。水が、反転部の内周面に付着すると、水が火炎にまで到達しにくくなる。その結果、燃焼器における火炎温度の低減を図り、NOxや煤などの低減を行うという効果に改善の余地がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、NOxや煤などの低減をさらに図ることができる燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、燃焼器は、外筒と、内筒と、複数の燃料ノズルと、空気流路部と、スワラと、水噴射部と、を備える。前記外筒は、軸線方向に延びる筒状である。前記内筒は、前記外筒の径方向内側に設けられている。前記内筒は、前記軸線方向に延びる筒状である。複数の前記燃料ノズルは、前記内筒内に設けられている。前記燃料ノズルは、燃料を噴射する燃料噴射部を先端部に有している。前記空気流路部は、外部から前記外筒の内周面と前記内筒の外周面との間に導入した空気を前記軸線方向第一側に流し、前記内筒の前記軸線方向第一側の端部で前記空気の流通方向を反転させて前記内筒内に送り込む。前記スワラは、前記燃料ノズルの前記燃料噴射部よりも前記内筒内における前記空気の流通方向上流側に設けられている。前記スワラは、前記空気の流れを前記燃料ノズルの中心軸周りに旋回させる。前記水噴射部は、前記内筒内における前記空気の流通方向において前記スワラよりも上流側、かつ前記内筒の前記端部よりも下流側に設けられている。前記水噴射部は、前記燃料ノズルの外周面から前記内筒内に水を噴射する。
【0007】
このように構成することで、スワラの上流側に設けられた水噴射部から内筒内の空気中に噴射された水の液滴は、スワラで空気とともに旋回する。これによって、液滴の分散性が高まるとともに、液滴が微粒化して蒸発しやすくなる。したがって、NOxや煤などの低減をさらに図ることが可能となる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る燃焼器は、パイロットノズルと、ガイドベーンと、をさらに備えてもよい。前記パイロットノズルは、前記内筒内で、複数の前記燃料ノズルの径方向内側に設けられている。前記ガイドベーンは、前記内筒の前記端部の径方向内側に設けられている。前記ガイドベーンは、前記空気流路部において前記空気の流通方向が反転されて前記内筒内に送り込まれる空気を、前記軸線方向第二側に向けて案内する。前記水噴射部は、前記ガイドベーンよりも前記内筒内における前記空気の流通方向下流側に設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、ガイドベーンを通過した空気の内筒内での流通方向は、軸線方向に沿ったものとなる。これにより、水噴射部から噴射された水が、複数の燃料ノズルの径方向内側に設けられたパイロットノズルに拡散することが抑えられる。従って、パイロットノズルで生成される火炎に水の液滴が及ぶことを抑え、パイロットノズルの火炎が失火する等の影響を受けることが抑えられる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る前記燃料ノズルは、テーパ部を備えるようにしてもよい。前記テーパ部は、前記軸線方向第一側のノズル本体部と、前記軸線方向第二側の前記先端部との間に設けられている。前記テーパ部は、前記軸線方向第二側に向かって外径が漸次縮小する。前記水噴射部は、前記テーパ部に設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、テーパ部に設けられた水噴射部から噴射された水の液滴は、その下流側のスワラに向かって効率良く流れていく。これにより、水噴射部から噴射された液滴が、スワラ以外の部分に拡散することが抑えられる。
【0010】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る前記水噴射部は、前記燃料ノズルの周方向に間隔をあけて設けられた複数のノズル孔を有するようにしてもよい。
このように構成することで、周方向複数個所のノズル孔から水を噴射することで、より多くの液滴を、燃料ノズルから燃料が噴射される部分に供給することができる。
【0011】
この発明の第五態様によれば、第四態様に係る複数の前記ノズル孔は、前記燃料ノズルの周方向において不等間隔をあけて設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、内筒内に設けられた燃料ノズル等の影響によって、内筒内で空気の二次流れが生じる場合、この二次流れによる影響を抑えるようにノズル孔を配置することで、複数のノズル孔から噴射される水の液滴の分布を均一化することが可能となる。
【0012】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係る前記燃料ノズルは、燃料供給流路部と、水供給流路部と、を備えていてもよい。燃料供給流路部は、中心軸回りに複数設けられ、前記燃料を前記燃料噴射部に向けて供給する。水供給流路部は、前記水噴射部に水を供給する。水供給流路部は、前記燃料ノズルの外周面と前記燃料供給流路部との間に設けられるとともに、前記中心軸を中心とした周方向に間隔をあけて設けられている。
この第六態様の水供給流路部は、燃料ノズルの外周面とガス供給流路部との間に、間隔をあけて設けられている。これにより、内筒内を流れる高温の空気からの熱が、水供給流路部の間を通じて、水供給流路部よりも径方向内側の部分に熱伝導される。そのため、燃料ノズルの内部に生じる温度差を抑制し、燃料ノズル内部の熱応力を抑制できる。
【0013】
この発明の第七態様によれば、ガスタービンは、第一から第六態様の何れか一つの態様に係る燃焼器を備える。
このようにすることで、ガスタービンの商品性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
上記燃焼器によれば、NOxや煤などの低減をさらに図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態における燃焼器の内部構成を示す断面図である。
図2】上記燃焼器の要部を示す拡大断面図である。
図3図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】上記第一実施形態における燃焼器の水噴射部の変形例を示す図であり、ノズル孔が設けられた部分におけるメインノズルの断面図である。
図5】第二実施形態における水噴射部のノズル孔の配置を示す断面図である。
図6】第三実施形態におけるメインノズル内の流路レイアウトを示す図であり、図2のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態における燃焼器及びガスタービンを図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この実施形態の燃焼器の内部構成を示す断面図である。
図1に示すように、この実施形態の燃焼器10は、ガスタービン1の車室2に設けられている。燃焼器10は、ガス焚きと油焚きとが可能なデュアル方式のものである。燃焼器10には、ガスタービン1の圧縮機(図示無し)で生成された圧縮空気が導入される。燃焼器10は、導入された圧縮空気に燃料を噴射し、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
【0017】
燃焼器10は、外筒11と、内筒12と、尾筒13と、背面壁14と、パイロットノズル21と、メインノズル(燃料ノズル)22と、空気流路部Rと、メインスワラ29と、水噴射部30と、を主に備えている。
【0018】
外筒11は、ガスタービン1の車室2に支持されている。外筒11は、その中心軸O1の延びる軸線方向Daに延びる筒状に形成されている。
【0019】
内筒12は、外筒11に対し、中心軸O1を中心とした径方向Dr内側に設けられている。内筒12は、軸線方向Daに延びる筒状である。軸線方向Daにおける内筒12の第一側Da1の端部12aは、外筒11の軸線方向Daの第一側Da1の端部11aの径方向Dr内側に位置している。軸線方向Daにおける内筒12の第二側Da2の端部12bは、外筒11の軸線方向Daの第二側Da2の端部11bよりも第二側Da2に配置されている。なお、この実施形態における内筒12は、軸線方向Daの第一側Da1の端部12aに円筒部51(後述する)を有している場合を例示している。
【0020】
尾筒13は、内筒12の第二側Da2の端部12bの径方向Dr外側に設けられている。尾筒13は、軸線方向Daに延びる筒状である。
【0021】
背面壁14は、外筒11の軸線方向Daの第一側Da1の端部11aを閉塞する。背面壁14は、中心軸O1周りの周方向Dcに連続する案内面15を有する。案内面15は、中心軸O1に直交する方向から見て、軸線方向Daの第一側Da1に凹となる湾曲面である。案内面15は、内筒12の第一側Da1の端部12aに対して間隔をあけて配置されている。
【0022】
パイロットノズル21は、内筒12の中心軸O1に沿って設けられている。パイロットノズル21は、外部から供給される燃料を先端部21aから噴射する。パイロットノズル21から噴射された燃料に着火することで、火炎を生成する。
【0023】
パイロットノズル21は、パイロットコーン24を備えている。パイロットコーン24は、パイロットノズル21の先端部21aを外周側から囲む筒状に形成されている。パイロットコーン24は、テーパコーン部24cを有している。テーパコーン部24cは、パイロットノズル21の先端部21a近傍から、火炎の生成方向に向けて、その内径が漸次拡大する。テーパコーン部24cは、火炎の拡散範囲、方向を規制し、保炎性を高める。
【0024】
また、パイロットノズル21の外周面とパイロットコーン24の内周面との間には、パイロットスワラ28が設けられている。パイロットスワラ28は、パイロットコーン24内に供給される空気を整流する。
【0025】
メインノズル22は、内筒12内に複数本が設けられている。複数本のメインノズル22は、パイロットノズル21の径方向Dr外側に、周方向Dcに間隔をあけて配置されている。各メインノズル22は、内筒12の軸線方向Daに延びている。
【0026】
図2は、燃焼器の要部を示す拡大断面図である。
図1図2に示すように、メインノズル22において、軸線方向Daの第二側Da2の先端部22aには、燃料(ガス、油)を噴射する燃料噴射部22fが設けられている。燃料噴射部22fには、メインノズル22内に設けられた供給管22xを通して燃料が供給される。燃料噴射部22fは、供給された燃料を噴射する複数のノズル孔(図示無し)を有している。
【0027】
メインノズル22の先端部22aの外周側には、メインバーナ25が設けられている。メインバーナ25は、筒状で、内筒12の中心側のパイロットコーン24に近接する側25aが、火炎の生成方向に向けて漸次外周側に傾斜して形成されている。
【0028】
メインノズル22の先端部22aの外周面とメインバーナ25の内周面との間には、メインスワラ(スワラ)29が設けられている。メインスワラ29は、メインバーナ25内に供給される空気を、メインノズル22の中心軸O2周りに旋回させる。
【0029】
空気流路部Rは、導入流路部R1と、反転流路部R2と、内部流路部R3と、を備えている。
【0030】
導入流路部R1は、外筒11の内周面11fと内筒12の外周面12gとの間に形成されている。導入流路部R1には、外筒11の軸線方向Daの第二側Da2の端部11bと内筒12の外周面12gとの隙間に形成される開口16から、空気が導入される。開口16には、パンチメタル27が設けられている。パンチメタル27は、多数の孔が形成された多孔板である。パンチメタル27は、ガスタービン1の圧縮機(図示無し)から流れ込む高温・高圧の空気を整流する。導入流路部R1に導入された空気は、導入流路部R1において、軸線方向Daの第一側Da1に向かって流れる。
【0031】
反転流路部R2は、導入流路部R1に導入された空気の流通方向を、軸線方向Daの第二側Da2に反転させる。反転流路部R2には、円筒部51と、ガイドベーン52とが設けられている。
円筒部51は、内筒12の第一側Da1の端部12aを形成している。円筒部51は、径方向Dr外側に膨らんだベルマウス構造である。ガイドベーン52は、周方向Dcで隣り合うメインノズル22の間に設けられている。ガイドベーン52は、内筒12の端部12aの径方向Dr内側に設けられている。ガイドベーン52は、円筒部51の第一側Da1の先端51a(内筒12の端部12a)の近傍から、軸線方向Daの第二側Da2に向かって径方向Dr内側に湾曲して延びている。ガイドベーン52の内周端部52aは、内筒12の端部12aよりも軸線方向Daの第二側Da2に配置されている。
【0032】
反転流路部R2は、導入流路部R1に導入された空気を、背面壁14の案内面15、及びガイドベーン52により、径方向Dr内側から軸線方向Daの第二側Da2に流れるように反転させる。反転流路部R2で流通方向が変換された空気は、内筒12の端部12aの内側から、内筒12内の内部流路部R3に送り込まれる。ガイドベーン52は、空気の流通方向が反転されて内筒12内に送り込まれる空気を、軸線方向Daと平行に第二側Da2に向けて案内する。
【0033】
内部流路部R3は、内筒12の径方向Dr内側に形成されている。反転流路部R2で流通方向が反転された空気は、内部流路部R3において、内筒12の軸線方向Daの第一側Da1の端部12a側から第二側Da2の端部12bに向かって、軸線O2と平行な流通方向Dfに流れる。
【0034】
水噴射部30は、内筒12内における空気の流通方向Dfにおいて、メインスワラ29よりも上流側(軸線方向Daの第一側)に設けられている。メインスワラ29は、メインノズル22の燃料噴射部22fよりも流通方向Df上流側に設けられている。流通方向Dfで、水噴射部30は、内筒12の端部12aよりも下流側(軸線方向Daの第二側)に設けられている。水噴射部30は、内筒12内における空気の流通方向Dfにおいて、ガイドベーン52よりも下流側に設けられている。
【0035】
この実施形態で例示する水噴射部30は、メインノズル22のテーパ部22cに設けられている。テーパ部22cは、メインノズル22のうち、軸線方向Daの第一側Da1のノズル本体部22bと、軸線方向Daの第二側Da2の先端部22aとの間に設けられている。テーパ部22cは、軸線方向Daの第二側Da2に向かって外径が漸次縮小している。
【0036】
図3は、図2のA-A線に沿う断面図である。
図2図3に示すように、水噴射部30は、複数のノズル孔31を有する。複数のノズル孔31は、メインノズル22のテーパ部22cに、中心軸O2周りの周方向に等間隔をあけて設けられている。各ノズル孔31は、メインノズル22の内外を貫通して形成されている。各ノズル孔31には、メインノズル22内に設けられた水供給流路部(図示無し)を通して、外部から水が供給される。各ノズル孔31は、水供給流路部から供給された水を、メインノズル22の外周面から径方向外側に噴出する。ここで、各ノズル孔31からの水の噴出方向は、中心軸O2に直交する面に対して、流通方向Df下流側に傾斜させてもよい。各ノズル孔31から水を噴出させる角度、言い換えれば、ノズル孔31の中心軸の傾斜角度は、各ノズル孔31から噴出された水の液滴の全てが、メインスワラ29を通るように設定するのが好ましい。なお、この第一実施形態で例示するノズル孔31の断面形状は、外径が一定の円形をなしている。
【0037】
複数のノズル孔31から噴出された水は、順次液滴状となり、内筒12内の内部流路部R3において、流通方向Dfに沿って流れる空気とともに、流通方向Df下流側(軸線方向Daの第二側Da2)に向かって流れる。水の液滴は、空気とともにメインノズル22のメインバーナ25内に流れ込み、メインスワラ29により旋回力が付与される。メインノズル22の先端部22aに設けられた燃料噴射部22fから噴射された燃料は、メインバーナ25内で中心軸O2周りに旋回する空気中に拡散される。拡散された燃料は、パイロットコーン24内で生成された火炎により着火される。水噴射部30で噴射された水の液滴は、火炎内で蒸発する。
【0038】
したがって、上述した第一実施形態の燃焼器10によれば、メインスワラ29の上流側に設けられた水噴射部30から内筒12内の空気中に噴射された水の液滴は、メインスワラ29で空気とともに旋回する。これによって、液滴の分散性が高まるとともに、液滴が微粒化して蒸発しやすくなる。したがって、NOxや煤などの低減をさらに図ることが可能となる。また、液滴が蒸発して蒸気が生成されることで、蒸気を含む空気の体積が増え、ガスタービン1の出力が向上する。
【0039】
第一実施形態の水噴射部30は、ガイドベーン52よりも内筒12内における空気の流通方向Df下流側に設けられている。ガイドベーン52を通過した空気の内筒12内での流通方向Dfは、軸線方向Daとなる。そのため、水噴射部30から噴射された水が、パイロットノズル21側に拡散することを抑制できる。従って、パイロットノズル21で生成される火炎に水の液滴が及ぶことを抑え、パイロットノズル21の火炎が失火する等の影響を受けることが抑えられる。
【0040】
第一実施形態の水噴射部30は、テーパ部22cに設けられている。このように構成することで、テーパ部22cに設けられた水噴射部30から噴射された水の液滴は、その下流側のメインスワラ29に向かって効率良く流れていく。これにより、水噴射部30から噴射された液滴が、メインスワラ29以外の部分に拡散することを抑えられる。
【0041】
第一実施形態の水噴射部30は、メインノズル22の周方向に間隔をあけて設けられた複数のノズル孔31を有する。周方向複数個所のノズル孔31から水を噴射することで、より多くの液滴を、メインノズル22から燃料が噴射される部分に供給することができる。
【0042】
なお、上記第一実施形態において、水噴射部30を、メインノズル22のテーパ部22cに設けるようにしたが、これに限らない。例えば、水噴射部30(複数のノズル孔31)は、メインノズル22のノズル本体部22bの外周面に設けるようにしてもよい。
【0043】
図4は、上記第一実施形態の水噴射部の変形例を示す図であり、ノズル孔が設けられた部分におけるメインノズルの断面図である。
上述した第一実施形態の水噴射部30の噴射方式は、孔から噴射する方式(液柱噴霧方式(LJICF))方式であったが、例えば、図4に示す様に、メインノズル22に設けた各ノズル孔31Aは、中心軸O2周りの周方向に連続するスリット状とすることもできる(液膜噴霧方式)。スリット状のノズル孔31Aから噴出される水は、膜状となる。
【0044】
(第二実施形態)
次に、この発明に係る燃焼器の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態とノズル孔31Bの配置のみが異なるので、図1を援用して第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図1に示すように、燃焼器10Bは、外筒11と、内筒12と、尾筒13と、背面壁14と、パイロットノズル21と、メインノズル(燃料ノズル)22と、空気流路部Rと、メインスワラ29と、水噴射部30Bと、を主に備えている。
【0045】
図5は、第二実施形態における水噴射部のノズル孔の配置を示す断面図である。
図5に示すように、水噴射部30Bは、複数のノズル孔31Bを有する。複数のノズル孔31Bは、メインノズル22のテーパ部22cに、メインノズル22の中心軸O2を中心とした周方向に不等間隔で設けられている。具体的な配置の一例を挙げると、メインノズル22のテーパ部22cにおいて、内筒12の内周面12fに近い側(図5において紙面上側)には、ノズル孔31Bを疎に配置する。内筒12内において、径方向Dr内側のパイロットノズル21に近い側には、ノズル孔31を密に配置する。より具体的には、メインノズル22において内筒12の径方向Dr内側には、パイロットノズル21側を向く位置P1を中心として、周方向両側の所定角度θ1(例えば15°)の位置に、ノズル孔31B1がそれぞれ形成されている。また、メインノズル22において、内筒12の径方向Dr外側を向く位置P2を中心として、その周方向両側の所定角度θ2(例えば60°)未満の範囲に、ノズル孔31Bが配置されていない。メインノズル22において、位置P2を中心とした所定角度θ2以上の範囲には、例えば、挟み角θ3(例えば30°)で、二つのノズル孔31B2、31B3が配置されている。
【0046】
このような配置とすることで、内筒12内の内周面12fとメインノズル22との間に生じる空気の二次流れG1によって、複数のノズル孔31Bから噴出された水の液滴が集まり、凝集してしまうことを抑制できる。また、径方向Dr内側のパイロットノズル21に近い側では、複数のノズル孔31B1から噴出された水の液滴が、パイロットノズル21側からの2次流れG2によって拡散する。これにより、二次流れG1、G2による影響を抑えながら、水噴射部30Bから噴射される水の液滴の分布を均一化できる。
【0047】
したがって、上述した第二実施形態の燃焼器10Bによれば、メインノズル22の周囲に設けられた、他のメインノズル22やパイロットノズル21、内筒12等の影響によって、内筒12内で空気の二次流れG1、G2が生じることがある。このような場合、二次流れG1、G2による影響を抑えるように、複数のノズル孔31Bの配置を不等間隔とすることによって、複数の水噴射部30Bから噴射される水の液滴の分布を均一化することが可能となる。
【0048】
上記第一実施形態と同様、メインスワラ29の上流側に設けられた水噴射部30Bから内筒12内の空気中に噴射された水の液滴は、メインスワラ29で空気とともに旋回する。これによって、液滴の分散性が高まるとともに、液滴が微粒化して蒸発しやすくなる。その結果、NOxや煤などの低減をさらに図ることが可能となる。また、液滴が蒸発して蒸気が生成されることで、蒸気を含む空気の体積が増え、ガスタービン1の出力が向上する。
【0049】
(第三実施形態)
次に、この発明に係る燃焼器の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一、第二実施形態と、メインノズル22C内における流路配置のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図6は、第三実施形態におけるメインノズル内の流路レイアウトを示す断面図である。
図1に示すように、燃焼器10Cは、外筒11と、内筒12と、尾筒13と、背面壁14と、パイロットノズル21と、メインノズル(燃料ノズル)22Cと、空気流路部Rと、メインスワラ29と、水噴射部30と、を主に備えている。
【0050】
図6に示すように、各メインノズル22Cは、油供給流路部41と、ガス供給流路部(燃料供給流路部)42と、水供給流路部43と、を備える。
【0051】
油供給流路部41、ガス供給流路部42、及び水供給流路部43は、メインノズル22C内に形成されている。
【0052】
油供給流路部41は、メインノズル22Cの中心軸O2に沿って設けられている。油供給流路部41は、外部から油焚き用の燃料油を燃料噴射部22fに供給する。
【0053】
ガス供給流路部42は、油供給流路部41の径方向外側に設けられている。ガス供給流路部42は、中心軸O2回りに間隔をあけて複数本設けられている。各ガス供給流路部42は、中心軸O2と平行に延びている。ガス供給流路部42は、外部からガス炊き用の燃料ガスを燃料噴射部22fに供給する。
【0054】
水供給流路部43は、ガス供給流路部42よりも径方向外側に設けられている。水供給流路部43は、メインノズル22Cの外周面よりも径方向内側に設けられている。水供給流路部43は、中心軸O2を中心とした周方向に間隔をあけて複数本設けられている。各水供給流路部43は、中心軸O2と平行に延びている。
つまり、各水供給流路部43は、メインノズル22Cの外周面とガス供給流路部42との間に配置されるとともに、周方向に間隔をあけて設けられている。水供給流路部43は、外部から供給される水を、水噴射部30の各ノズル孔31に供給する。
【0055】
上述したように、第三実施形態の燃焼器10Cの水供給流路部43は、メインノズル22Cの外周面とガス供給流路部42との間に、間隔をあけて設けられている。これにより、内筒12内を流れる高温の空気からの熱は、水供給流路部43の間を通じて、水供給流路部43よりも径方向内側の部分に熱伝導される。そのため、メインノズル22Cの内部に温度分布が生じることを抑制し、メインノズル22C内部の熱応力を抑制できる。
【0056】
第三実施形態では、上記第一、第二実施形態と同様、メインスワラ29の上流側に設けられた水噴射部30から内筒12内の空気中に噴射された水の液滴は、メインスワラ29で空気とともに旋回する。これによって、液滴の分散性が高まるとともに、液滴が微粒化して蒸発しやすくなる。したがって、NOxや煤などの低減をさらに図ることが可能となる。また、液滴が蒸発して蒸気が生成されることで、蒸気を含む空気の体積が増え、ガスタービン1の出力が向上する。
【0057】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。例えば、上記第一~第三実施形態で示した構成を、適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガスタービン
2 車室
10、10B、10C 燃焼器
11 外筒
11a、11b 端部
11f 内周面
12 内筒
12a、12b 端部
12f 内周面
12g 外周面
13 尾筒
14 背面壁
15 案内面
16 開口
21 パイロットノズル
21a 先端部
22、22C メインノズル(燃料ノズル)
22a 先端部
22b ノズル本体部
22c テーパ部
22f 燃料噴射部
22x 供給管
24 パイロットコーン
24c テーパコーン部
25 メインバーナ
25a 側
27 パンチメタル
28 パイロットスワラ
29 メインスワラ(スワラ)
30 水噴射部
30B 水噴射部
31、31A、31B、31B1、31B2、31B3 ノズル孔
40f 内面
41 油供給流路部
42 ガス供給流路部(燃料供給流路部)
43 水供給流路部
51 円筒部
51a 先端
52 ガイドベーン
52a 内周端部
O1、O2 中心軸
R 空気流路部
R1 導入流路部
R2 反転流路部
R3 内部流路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6