(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】PVCコーティング部品
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
(21)【出願番号】P 2019078265
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸野 誠
(72)【発明者】
【氏名】武田 晴樹
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-90828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16B 9/02
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材表面が露出した非コーティング部を端部に形成して締結具の座面としたPVCコーティング部品であって、前記端部に穿設された締結具の貫通孔と合致する連通孔を備えたカラーを前記端部の母材表面に接合し、前記カラーの突出端面を非コーティング部として前記締結具の座面とする一方、残りの母材表面をPVCコーティングにより被覆したことを特徴とするPVCコーティング部品。
【請求項2】
一方向に延在する長手部材を母材としてPVCコーティングを施したことを特徴とする請求項1に記載のPVCコーティング部品。
【請求項3】
長手部材が車両用バッテリ上部の角部を押さえ込む固定ビームであることを特徴とする請求項2に記載のPVCコーティング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVCコーティング部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来における車両用バッテリの保持装置を示すもので、ここに図示している例では、サイドレール1の側面に対し一対のサイドプレート2を車両前後方向に間隔を空けて締結し、該各サイドプレート2の相互の下端部間にトレイ3を渡して棚状に支持せしめ、該トレイ3にバッテリ4を載置して該バッテリ4上部の角部を固定ビーム5により押さえ込み、該固定ビーム5の両端部をロックアーム6(
図4中には片側のみを図示)を介し前記各サイドプレート2から締め付けて前記バッテリ4を固定保持し得るようになっている。
【0003】
ここで、前記ロックアーム6は、その基端部をフック状に折り曲げられて前記各サイドプレート2の外側面における掛止部7に対し引っかけられており、また、その先端部に形成した雄ネジ部8(締結具)を前記固定ビーム5の端部における後述の貫通孔9(
図4参照)を通した上でナット10(締結具)で締結され、該ナット10の締め込みにより前記バッテリ4を対角方向に締め付けて拘束するようにしている。
【0004】
斯かるバッテリ4の保持装置にあっては、バッテリ4の搭載作業中に端子部分11に固定ビーム5が触れてショートするような事態を招かないよう前記固定ビーム5にPVCコーティング12(ポリ塩化ビニールコーティング)を施しておく必要があるが、ナット10が締結される端部にまでPVCコーティング12を施してしまうと、該PVCコーティング12を間に挟んでナット10が締結されることになる。
【0005】
尚、この種のバッテリ4の保持装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、PVCコーティング12を間に挟んでナット10を締結してしまうと、PVCコーティング12が経年劣化により減肉して前記ナット10の締結による軸力が保持できなくなる虞れがあるため、
図4に拡大して示す如く、前記固定ビーム5の端部のPVCコーティング12を切除し、母材表面が露出した非コーティング部13を端部に形成して前記ナット10の座面とし、これにより前記ナット10を母材表面とメタルタッチさせて確実な締結を図ることが考えられているが、そのようにした場合に、PVCコーティング12が切除部分14から剥離を起こす懸念があった。
【0008】
即ち、前記ナット10の座面は、前記固定ビーム5の末端近くに設定されるため、該固定ビーム5の端部を丸ごと剥き出しの状態として非コーティング部13を形成することになり、前記固定ビーム5の如き一方向に延在する長手部材を母材としてPVCコーティング12を施したものの場合、PVCコーティング12が前記固定ビーム5の端部近くで途切れるような鞘構造となって、前記切除部分14から捲れ上がるような剥離を起こし易くなる。
【0009】
この際、前記固定ビーム5の端部に不必要な長さ分を足して該固定ビーム5の末端から締結箇所を内側にずらし、ナット10の座面に相当する部分だけPVCコーティング12を窓状に刳り抜くことも考えられるが、そのような加工は、特別な治具を使用しないと品質の良い仕上げが難しく、非常に手間のかかる作業となって量産に適さないものとなってしまう。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、締結性の良いPVCコーティング部品をPVCコーティングの剥離の懸念なく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、母材表面が露出した非コーティング部を端部に形成して締結具の座面としたPVCコーティング部品であって、前記端部に穿設された締結具の貫通孔と合致する連通孔を備えたカラーを前記端部の母材表面に接合し、前記カラーの突出端面を非コーティング部として前記締結具の座面とする一方、残りの母材表面をPVCコーティングにより被覆したことを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、カラーの突出端面を非コーティング部として母材表面を露出させても、PVCコーティングが前記カラーの接合位置より先まで回り込んでから該カラーの外周面に沿い絞り込まれるような袋構造を成すことになるため、PVCコーティングが母材表面から捲れ上がるような剥離が起こらず、PVCコーティングによる良好な被覆状態が保持されることになり、前記カラーの突出端面を締結具の座面としてメタルタッチによる確実な締結を図ることが可能となる。
【0013】
ここで、カラーの突出端面を非コーティング部として形成するにあたっては、母材全体にPVCコーティングを施した後に前記カラーの突出端面のPVCコーティングを面と平行に切除して母材表面を露出させるだけで済み、特別な治具等を要することなく簡便に非コーティング部を形成することができて量産が容易となる。
【0014】
また、本発明においては、一方向に延在する長手部材を母材としてPVCコーティングを施したものに対して適用するのが好適であり、例えば、前記長手部材が車両用バッテリ上部の角部を押さえ込む固定ビームであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のPVCコーティング部品によれば、特別な治具等を要することなく量産可能な手段により簡便にカラーの突出端面に非コーティング部を形成し、該非コーティング部を締結具の座面として確実な締結を図ることができるので、締結性の良いPVCコーティング部品をPVCコーティングの剥離の懸念なく実現することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の固定ビームの締結箇所について詳細を示す斜視図である。
【
図3】従来における車両用バッテリの保持装置について示す斜視図である。
【
図4】
図3の固定ビームの締結箇所について詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1及び
図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例にあっては、先に
図3及び
図4で説明した車両用のバッテリ4の保持装置に採用される固定ビーム15をPVCコーティング部品の一例とした場合について説明しており、
図3及び
図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0019】
即ち、
図1に本形態例の側面図を、
図2に
図1の固定ビーム15における締結箇所の詳細を示す斜視図を夫々示している通り、本形態例における固定ビーム15にあっては、ロックアーム6の雄ネジ部8(締結具)を通すための貫通孔9が穿設された端部の母材表面に、前記貫通孔9と合致する連通孔16を備えたカラー17を接合し、該カラー17の突出端面を非コーティング部18としてナット10(締結具)の座面とする一方、残りの母材表面をPVCコーティング12により被覆した構造となっている。
【0020】
而して、このようにすれば、カラー17の突出端面を非コーティング部18として前記固定ビーム15の母材表面を露出させても、PVCコーティング12が前記カラー17の接合位置より先まで回り込んでから該カラー17の外周面に沿い絞り込まれるような袋構造を成すことになるため、PVCコーティング12が母材表面から捲れ上がるような剥離が起こらず、PVCコーティング12による良好な被覆状態が保持されることになり、前記カラー17の突出端面をナット10の座面としてメタルタッチによる確実な締結を図ることが可能となる。
【0021】
ここで、カラー17の突出端面を非コーティング部18として形成するにあたっては、母材全体にPVCコーティング12を施した後に前記カラー17の突出端面のPVCコーティング12を面と平行に切除して母材表面を露出させるだけで済み、特別な治具等を要することなく簡便に非コーティング部18を形成することができて量産が容易となる。
【0022】
従って、上記形態例によれば、特別な治具等を要することなく量産可能な手段により簡便にカラー17の突出端面に非コーティング部18を形成し、該非コーティング部18をナット10の座面として確実な締結を図ることができるので、締結性の良い固定ビーム15をPVCコーティング12の剥離の懸念なく実現することができる。
【0023】
尚、本発明のPVCコーティング部品は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、PVCコーティング部品は、必ずしも車両用バッテリ上部の角部を押さえ込む固定ビームに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
4 バッテリ
8 雄ネジ部(締結具)
9 貫通孔
10 ナット(締結具)
12 PVCコーティング
15 固定ビーム(PVCコーティング部品)
16 連通孔
17 カラー
18 非コーティング部