(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221108BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221108BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20221108BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652D
H01L29/78 658A
H01L29/78 655G
H01L29/78 655F
H01L29/78 655E
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 657G
H01L29/78 652P
H01L29/78 652M
(21)【出願番号】P 2019166780
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】三好 智之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠次郎
【審査官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012581(JP,A)
【文献】特開2016-184712(JP,A)
【文献】特開2011-100877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁膜を介して半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極に接し、前記半導体基板の裏面に形成された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層よりも内側に形成された第2導電型の第2半導体層と、
前記半導体基板の表面に沿って配置された中心領域セルと、
前記半導体基板の平面方向において、前記中心領域セルより外側に位置し、前記中心領域セルとチップ終端ガードリング領域との間に配置された外周領域セルと、を備え、
前記中心領域セルは、前記エミッタ電極と前記半導体基板との間に形成されたトレンチと、
ゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内側に形成され、前記層間絶縁膜を介して前記エミッタ電極と絶縁されたゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜に接して形成され、かつ、前記半導体基板より不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体層と、
エミッタコンタクトを介して前記エミッタ電極の前記半導体基板側に接して形成され、かつ、前記第1半導体層より不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体層と、
前記ゲート絶縁膜に接し、かつ、前記
第3半導体層の前記半導体基板側に形成され、かつ、前記第4半導体層より不純物濃度の低い第1導電型の第5半導体層と、
前記第4半導体層の前記半導体基板側の表面に接し、かつ、前記第5半導体層より前記半導体基板側に突出して形成され、キャリア濃度が前記第4半導体層より低い第1導電型の第6半導体層と、
前記第6半導体層の前記コレクタ電極側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が前記半導体基板より高い第2導電型の第7半導体層を含み、
前記外周領域セルは、前記トレンチと、前記ゲート電極と、前記第4半導体層と、前記第5半導体層と、前記第6半導体層を有するとともに、
前記外周領域セルは、前記第3半導体層と前記第7半導体層とのうち少なくとも一方を持たないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記外周領域セルは、前記ゲート絶縁膜に接して形成され、かつ、前記半導体基板より不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記外周領域セルは、前記第6半導体層の前記コレクタ電極側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が前記半導体基板より高く前記第2半導体層より低い第2導電型の第7半導体層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記半導体基板の平面方向において、前記中心領域セルと前記外周領域セルの間に中間領域セルを備え、
前記中間領域セルは、前記トレンチと、前記ゲート電極と、前記第4半導体層と、前記第5半導体層と、前記第6半導体層と、前記第7半導体層を有するとともに、前記第3半導体層を持たないことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記ゲート電極は、前記トレンチの内側に、前記トレンチの形状に沿って形成されたトレンチゲート電極であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記ゲート電極は、前記トレンチの内側に、前記トレンチの側壁に沿って形成されたサイドウォール形状のサイドゲート電極であり、
前記トレンチの内側に、エミッタコンタクトを介して前記エミッタ電極に接続されたPoly-Siフィールドプレートをさらに備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記ゲート電極は、前記半導体基板の平面方向において、ストライプ状に配置さていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
一対の直流端子と、
交流の相数と同数の交流端子と、
前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子と逆極性のダイオードの並列回路を2個直列に接続したスイッチングレッグと、を備え、
前記並列回路の相互接続点が、異なる交流端子に接続された交流の相数と同数の電力変換単位を構成する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子は、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造に係り、特に、電力変換装置に搭載される絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータなどの電力変換器の主要部品であるIGBTモジュール(Insulated Gate Bipolar Transistor : 以下、IGBTと略する)は、低コスト化と小型化が求められている。同様に、パワーモジュール内のパワーデバイスチップにも低コスト化と小型化が求められ、IGBTチップの高出力電流密度を実現する新しい技術が求められている。
【0003】
高出力電流密度になると、パワーデバイスの単位チップ面積当たりの損失が増え、チップ温度が上昇する。このため、IGBTチップには高出力電流下でのターオフ時の安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area: 以下、RBSOAとも称する)を広げる必要がある。すなわち、より高い電流、電圧、温度でもIGBTが破壊せず、十分な電流遮断耐量を有することが必要である。
【0004】
このような背景の中、電流遮断能力の向上技術として、例えば、特許文献1には、IGBTチップの周辺ガードリング部のp型コレクタ層のホール注入を低減し、能動領域として働くセル部分の電流集中を抑制する技術が提案されている。これにより電流集中によるIGBTセルの寄生バイポーラトランジスタ動作を抑制し、電流遮断能力を向上することができる。
【0005】
また、特許文献2には、IGBTチップの終端領域のトレンチ構造の削除と終端領域のコンタクトホールの開口面積を中央部と等しいか小さくすることで、IGBTセルに比べて終端領域のアバランシェ耐量の高い構成が提案されている。これにより、終端部での電界集中を抑制し、高いサージ電圧が発生した場合においても素子が破壊せず、RBSOAを向上することが可能である。
【0006】
また、特許文献3には、IGBTセルのトレンチ間中央部にPN接合で形成された電界集中領域を設け、ターンオフ時のインパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、電流集中を抑制し、遮断耐量を向上する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-133556号公報
【文献】特開2011-100877号公報
【文献】特開2016-012581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の従来技術では、IGBTセルの製造時の形状バラツキや不純物バラツキによって発生する複数IGBTセル間の電界バラツキが発生した場合、電界の強いセルに電流・電界集中が発生し遮断耐量が低下する場合がある。
【0009】
また、特許文献3の従来技術では、チップ終端部からのホール電流がチップ外周セルやチップコーナー部のセルに電流集中し、遮断耐量向上の妨げとなる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、製造時の形状バラツキや不純物バラツキに起因するIGBTセル間の電界バラツキによる局所的な電流・電界集中やチップ終端部での電流集中を抑制可能な遮断耐量の高い半導体装置とそれを用いた電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、層間絶縁膜を介して半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、前記コレクタ電極に接し、前記半導体基板の裏面に形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層よりも内側に形成された第2導電型の第2半導体層と、前記半導体基板の表面に沿って配置された中心領域セルと、前記半導体基板の平面方向において、前記中心領域セルより外側に位置し、前記中心領域セルとチップ終端ガードリング領域との間に配置された外周領域セルと、を備え、前記中心領域セルは、前記エミッタ電極と前記半導体基板との間に形成されたトレンチと、ゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内側に形成され、前記層間絶縁膜を介して前記エミッタ電極と絶縁されたゲート電極と、前記ゲート絶縁膜に接して形成され、かつ、前記半導体基板より不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体層と、エミッタコンタクトを介して前記エミッタ電極の前記半導体基板側に接して形成され、かつ、前記第1半導体層より不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体層と、前記ゲート絶縁膜に接し、かつ、前記第3半導体層の前記半導体基板側に形成され、かつ、前記第4半導体層より不純物濃度の低い第1導電型の第5半導体層と、前記第4半導体層の前記半導体基板側の表面に接し、かつ、前記第5半導体層より前記半導体基板側に突出して形成され、キャリア濃度が前記第4半導体層より低い第1導電型の第6半導体層と、前記第6半導体層の前記コレクタ電極側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が前記半導体基板より高い第2導電型の第7半導体層を含み、前記外周領域セルは、前記トレンチと、前記ゲート電極と、前記第4半導体層と、前記第5半導体層と、前記第6半導体層を有するとともに、前記外周領域セルは、前記第3半導体層と前記第7半導体層とのうち少なくとも一方を持たないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、一対の直流端子と、交流の相数と同数の交流端子と、前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子と逆極性のダイオードの並列回路を2個直列に接続したスイッチングレッグと、を備え、前記並列回路の相互接続点が、異なる交流端子に接続された交流の相数と同数の電力変換単位を構成する電力変換装置であって、前記スイッチング素子は、上記に記載の半導体装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造時の形状バラツキや不純物バラツキに起因するIGBTセル間の電界バラツキによる局所的な電流・電界集中やチップ終端部での電流集中を抑制可能な遮断耐量の高い半導体装置とそれを用いた電力変換装置を実現することができる。
【0014】
これにより、IGBTチップの高電流密度化が可能となり、それを搭載する電力変換装置の小型化に寄与できる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本発明の実施例1に係るIGBT半導体チップの上面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るIGBT半導体チップの製造プロセスを示す図である。
【
図5】IGBT半導体チップのターンオフ波形(正常波形)を示す図である。
【
図6】従来のIGBT半導体チップのターオフ中の内部状態を示す模式図である。
【
図7】従来のIGBT半導体チップのターオフ中の内部状態を示す模式図である。
【
図8】IGBT半導体チップのターンオフ中のインパクトイオン化係数αと電界の変化を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1に係るIGBT半導体チップのターオフ中の内部状態を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施例2に係るIGBT半導体チップの断面図である。
【
図11】本発明の実施例3に係るIGBT半導体チップの断面図である。
【
図12】本発明の実施例4に係るIGBT半導体チップの断面図である。
【
図13】本発明の実施例5に係るIGBT半導体チップの断面図である。
【
図14】本発明の実施例6に係るIGBT半導体チップのセル終端領域の上面図である。
【
図15】本発明の実施例6に係るIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【
図16】本発明の実施例7に係るIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【
図17】本発明の実施例8に係るIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【
図18】本発明の実施例9に係るIGBT半導体チップのセル終端領域の上面図である。
【
図19】本発明の実施例9に係るIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【
図20】本発明の実施例10に係る電力変換装置の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。また、p-,p,p+は、半導体層の導電型がp型であることを示し、かつ、この順に相対的な不純物濃度が高くなる。さらに、n-,n,n+は、半導体層の導電型がn型であることを示し、かつ、この順に相対的な不純物濃度が高くなる。
【実施例1】
【0018】
図1Aから
図9を参照して、本発明の実施例1の半導体装置とその製造方法について説明する。なお、
図3,
図6,
図7は、本発明を分かり易くするために比較例として示す従来のIGBT半導体チップを示す図である。
【0019】
図1Aは、IGBT半導体チップ101の上面図である。チップの中央にはIGBTのユニットセルが複数配置されたセル領域103が設けられている。また、IGBTのゲート電圧印加用のゲート電極PAD104が設けられている。また、IGBT半導体チップ101の外周にはチップ終端ガードリング領域102が設けられている。
【0020】
図1Bは、IGBT半導体チップ101のセル終端領域105の拡大図であり、エミッタ電極のない表面構造として表した模式図である。セル領域103内には、トレンチゲート204が周期的に配置された複数のユニットセルが配置され、ユニットセルの中央部にはエミッタコンタクト203が設けられている。ユニットセルは、IGBT半導体チップ101の中心領域セル201と、中心領域セル201よりIGBT半導体チップ101の平面方向における外側に位置し、チップ終端ガードリング領域102との間にある外周領域セル202が設けられている。
【0021】
図2は、
図1BのA-A’部の断面図である。中心領域セル201は、エミッタ電極301と半導体基板308との間に形成されたトレンチ(後述する
図4の符号501)と、トレンチの内側に形成され、絶縁層(層間絶縁膜302)を介してエミッタ電極301と絶縁されたゲート電極(トレンチゲート204)と、トレンチに形成されたゲート絶縁膜310と、ゲート絶縁膜310に接して形成され、かつ、半導体基板308より不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体層(n+ソース層)303と、エミッタコンタクト203を介して、エミッタ電極301の半導体基板308側の表面に接して形成され、かつ、第1半導体層(p型コレクタ層)312より不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体層(浅いp+層)304と、ゲート絶縁膜310に接し、かつ、
第3半導体層(n+ソース層)303の半導体基板308側に形成され、かつ、第4半導体層(浅いp+層)304より不純物濃度の低い第1導電型の第5半導体層(pベース層)305と、第4半導体層(浅いp+層)304の半導体基板308側の表面に接し、かつ、第5半導体層(pベース層)305より半導体基板308側に突出して形成され、キャリア濃度が第4半導体層(浅いp+層)304より低い、第1導電型の第6半導体層(深いp+層)306と、第6半導体層(深いp+層)306のコレクタ電極313側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が半導体基板308より高い第2導電型の第7半導体層(深いn層)307を含んで形成されている。
【0022】
IGBT半導体チップ101の平面方向の中心領域セル201の外側の外周領域セル202は、エミッタ電極301と半導体基板308との間に形成されたトレンチ(後述する
図4の符号501)と、トレンチの内側に形成され、絶縁層(層間絶縁膜302)を介してエミッタ電極301と絶縁されたゲート電極(トレンチゲート204)と、トレンチに形成されたゲート絶縁膜310と、ゲート絶縁膜310に接して形成され、かつ、半導体基板308より不純物濃度の高い第2導電型の第3半導体層(n+ソース層)303と、エミッタ電極301の半導体基板308側の表面に接して形成され、かつ、第1半導体層(p型コレクタ層)312より不純物濃度の高い第1導電型の第4半導体層(浅いp+層)304と、ゲート絶縁膜310に接し、かつ、第3半導体層(n+ソース層)303の半導体基板308側に形成され、かつ、第4半導体層(浅いp+層)304より不純物濃度の低い第1導電型の第5半導体層(pベース層)305と、第4半導体層(浅いp+層)304の半導体基板308側の表面に接し、かつ、第5半導体層(pベース層)305より半導体基板308側に突出して形成され、キャリア濃度が第4半導体層(浅いp+層)304より低い、第1導電型の第6半導体層(深いp+層)306が形成されている。
【0023】
図4は、本実施例(
図2)のIGBT半導体チップ101の製造プロセスを示す図である。
【0024】
≪(a)トレンチゲート形成≫
先ず、n-半導体基板308(例えばSiウェハ等の半導体ウェハ)が準備される。
【0025】
次に、n-半導体基板308上に成膜される絶縁膜(例えばSiO2)が、ホトリソグラフィーにより、トレンチ形成用にパターニングされる。
【0026】
次に、パターニングされた絶縁膜をマスクにして、異方性エッチングによりトレンチ501が形成される。
【0027】
≪(b)pベース層、n+ソース層形成≫
次に、ゲート絶縁膜を形成し、ポリシリコン膜を堆積し、ホトリソグラフィーで露光後、トレンチゲート204を加工形成する。
【0028】
次に、pベース層305形成用にパターンニングされたホトレジストをマスクにして、p型不純物のイオン注入行い、さらに熱処理を行うことにより、第5半導体層(pベース層)305が形成される。
【0029】
続いて、n+ソース層303形成用にパターンニングされたホトレジストをマスクにして、n型不純物のイオン注入を行い、第3半導体層(n+ソース層)303を形成する。
【0030】
≪(c)コンタクト形成≫
次に、n-半導体基板308の全面に層間絶縁膜302が堆積される。層間絶縁膜302には、平坦化が施される。平坦化には、例えばBPSG(Boron-Phosphors Silicate Glass)膜のリフローやCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの平坦化手段などが適用される。
【0031】
層間絶縁膜302の平坦化後、ホトリソグラフィーと異方性エッチングにより、コンタクトホール502が形成される。この時、コンタクトホール502は、層間絶縁膜302を貫通し、さらに第5半導体層(pベース層)305に達する。これにより、pベース層305を断面で見た場合、一対のn+ソース層が形成されると共に、後工程で形成されるコンタクト金属層が接触する溝部が形成される。
【0032】
≪(d)浅いp層形成、深いp層形成≫
続いて、層間絶縁膜302をマスクにして、浅いp+層304と深いp+層306のイオン注入をこの順で行い、第4半導体層(浅いp+層)304と第6半導体層(深いp+層)306がそれぞれ形成される。
【0033】
≪(e)深いn+層形成≫
次に、n-半導体基板308の全面にレジスト503を塗布し、ホトリソグラフィーにより、中心領域にのみレジスト503を開口させ、イオン注入により第7半導体層(深いn層)307を形成し、レジスト除去後、熱処理を行うことにより、コンタクトホール502に対して自己整合にp+コンタクト及びn+ソースコンタクトが形成される。
【0034】
≪(f)エミッタ電極、裏面nバッファー、pコレクタ層、コレクタ電極形成≫
次に、コンタクトホール502を、Ti,TiN,Wのような高融点金属からなる積層金属膜で埋め込み、さらに、エッチングまたはCMPで平坦化することにより、コンタクト金属層(エミッタコンタクト203)が形成される。その後、アルミニウムなどからなる金属層を堆積し、ホトリソグラフィーとエッチングによりエミッタ電極301およびゲート電極PAD104(図示せず)が形成される。その後、図示されないが、ポリイミドなどからなる表面保護膜が成膜され、パターニングされる。
【0035】
以上の工程が、半導体基板308の表面側処理である。
【0036】
次に、半導体基板308の裏面側から半導体基板308に、n型およびp型不純物のイオン注入を行い、さらにレーザアニールを行うことにより、第2半導体層(n型バッファー層)311および第1半導体層(p型コレクタ層)312が形成される。
【0037】
なお、イオン注入時の加速エネルギーを適宜調整することにより、半導体基板308の裏面からの深さが異なるn型バッファー層311およびp型コレクタ層312が形成できる。その後、半導体基板308の裏面側に、積層金属層、例えばAl-Ti-Ni-Auをスパッタリングにより成膜して、コレクタ電極313が形成される。
【0038】
実施例1の特徴は、IGBT半導体チップ101の平面方向の中心領域セル201は、第6半導体層306と第7半導体層307で電界集中しやすいpn接合が形成され、IGBT半導体チップ101の平面方向の中心領域セル201の平面方向の外側のセル(外周領域セル202)は、中心セル領域201と比較して第7半導体層307がない構造となっていることである。その効果は、ターンオフ時の遮断耐量が向上することである。その原理を以下に記載する。
【0039】
図5は、IGBT半導体チップのターンオフ波形例である。IGBT半導体チップのターンオフにおいて、ゲート電圧が閾値電圧以下になると、トレンチゲートからの能動的な電子注入は無くなるため、正孔電流の経路は不安定に(動きやすく)なる。このときトレンチの寸法や形状等のばらつきにより局所的にわずかに電界の強い箇所が不可避的に発生する。そのような箇所ではインパクトイオン化による電子注入が相対的に多くなるために、正孔電流が集中し始める。
【0040】
図8に従来技術と本発明のターンオフ中のインパクトイオン化係数αと電界の変化の関係を示す。インパクトイオン化は、電界に強く依存し、
図3に示す従来技術の場合、
図2に示す本実施例のような第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で形成される電界集中層pn接合がなく、ターンオフ期間t1~t2での電界が低いため、t1~t2期間のインパクトイオン化係数の変化が大きい。
【0041】
つまり、ターンオフ中にインパクトイオン化するキャリアは少ない。このような場合、
図6に示すように、トレンチの寸法や形状等のばらつきにより局所的にわずかに電界が均等でない場合でも、インパクトイオン化に差が生じ、電流集中と局所的な発熱により、寄生サイリスタ(n
+ソース/pベース/n
-基板/p型コレクタ層)に電流が流れてオフできなくなるラッチアップが発生し、熱的な破壊に至り、ターンオフ時の遮断耐量が低下する。
【0042】
外周領域セル202は、チップ終端ガードリング領域102からのホール電流も加算されるため、さらに電流集中し、遮断耐量を低下させる要因となる。
【0043】
図7に示す従来のIGBT半導体チップの場合、IGBTセル内に第6半導体層(深いp+層)と第7半導体層(深いn層)で電界集中pn接合を形成すると、ターンオフ期間t1~t2での電界が高く、かつt1~t2期間のインパクトイオン化係数の変化が小さい。このため、インパクトイオン化による電子注入がセル間で均等に発生し、ホール電流が均等にIGBTセルを流れ、電流集中を抑制する。このため、ターンオフ時の遮断耐量が向上する。
【0044】
しかしながら、第7半導体層(深いn層)は、ホールに対してバリア層となるため、第7半導体層(深いn層)があるセルは、ホール電流が抜けにくく、外周領域セル202はチップ終端ガードリング領域102からのホール電流が加算されるため、電流集中が発生し更に遮断耐量を向上する妨げとなっていた。
【0045】
そこで、本実施例では、
図9に示すように、中心領域セル201は、第6半導体層(深いp+層)と第7半導体層(深いn層)で電界集中pn接合を形成しインパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0046】
一方、外周領域セル202は、第7半導体層(深いn層)がない構成とすることで、チップ終端ガードリング領域102から加算されるホール電流を効率よく外周領域セル202で引き抜くことができるため、外周領域セル202の電流集中を抑制できる効果がある。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例2】
【0047】
図10を参照して、本発明の実施例2の半導体装置について説明する。
図10は、本実施例のIGBT半導体チップの断面図であり、実施例1(
図2)の変形例に相当する。
【0048】
本実施例の中心領域セル201の構成は、実施例1(
図2)と同様であり、繰り返しとなる説明は省略する。
【0049】
一方、本実施例の外周領域セル202は、エミッタコンタクト203とゲート絶縁膜310の間の領域に、第3半導体層(n+ソース層)303が形成されていない点において、実施例1(
図2)の構成とは異なっている。したがって、エミッタコンタクト203とゲート絶縁膜310の間の領域においては、層間絶縁膜302は第5半導体層(pベース層)305の表面に接して形成されている。
【0050】
本実施例では、中心領域セル201の構成は、実施例1(
図9)と同じであり、同様の効果が得られる。
【0051】
一方、外周領域セル202は、実施例1(
図9)に対し、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n
+ソース/pベース/n
-基板/p型コレクタ層)構造がなく、実施例1の効果に加えて、さらにラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例3】
【0052】
図11を参照して、本発明の実施例3の半導体装置について説明する。
図11は、本実施例のIGBT半導体チップの断面図であり、実施例2(
図10)の変形例に相当する。
【0053】
本実施例の中心領域セル201の構成は、実施例2(
図10)と同様であり、繰り返しとなる説明は省略する。
【0054】
一方、本実施例の外周領域セル202は、実施例2(
図10)の外周領域セル202に対して、第6半導体層(深いp+層)306のコレクタ電極313側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が半導体基板308より高い第2導電型の第7半導体層(深いn層)307が形成されている点において、実施例2(
図10)の構成とは異なっている。
【0055】
本実施例では、中心領域セル201と外周領域セル202は、共に第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0056】
一方、外周領域セル202は、実施例2(
図10)と同様に、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n
+ソース/pベース/n
-基板/p型コレクタ層)構造がなく、ラッチアップを防止することができる。
【0057】
また、外周領域セル202は、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、ターンオン時に電子注入がなく、中心領域セル201に比べてホール量が少なくなっている。そのため、ターンオフ時のホール密度も低く、電流集中及びラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例4】
【0058】
図12を参照して、本発明の実施例4の半導体装置について説明する。
図12は、本実施例のIGBT半導体チップの断面図であり、実施例2(
図10)の変形例に相当する。
【0059】
本実施例の中心領域セル201および外周領域セル202の構成は、実施例2(
図10)と同様であり、繰り返しとなる説明は省略する。
【0060】
一方、本実施例では、IGBT半導体チップ101の中心領域セル201と外周領域セル202の平面方向の中間位置に中間領域セル1201が配置されている点において、実施例2(
図10)の構成とは異なっている。
【0061】
本実施例の中間領域セル1201の構成は、実施例3(
図11)の外周領域セル202の構成と同様である。したがって、中間領域セル1201においては、第6半導体層(深いp+層)306のコレクタ電極313側表面に接して形成され、かつ、不純物濃度が半導体基板308より高い第2導電型の第7半導体層(深いn層)307が形成されている。また、エミッタコンタクト203とゲート絶縁膜310の間の領域に、第3半導体層(n+ソース層)303が形成されていない。
【0062】
本実施例では、中心領域セル201と中間領域セル1201は、共に第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0063】
特に、中間領域セル1201には、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、インパクトイオン化したキャリアを、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がない構造で引く抜くため、中心領域セル201と外周領域セル202間で発生するキャリア密度差を緩和し、局所的な電流集中を抑制する効果ある。
【0064】
また、外周領域セル202は、第7半導体層(深いn層)307を無くすことで、チップ終端ガードリング領域102から加算されるホール電流を効率よく引き抜くことができる構造となり、外周領域セル202での電流集中も抑制できる効果がある。
【0065】
また、中間領域セル1201と外周領域セル202は、共に第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がなく、ラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例5】
【0066】
図13を参照して、本発明の実施例5の半導体装置について説明する。
図13は、本実施例のIGBT半導体チップの断面図であり、実施例4(
図12)の変形例に相当する。
【0067】
本実施例のIGBT半導体チップは、中心領域セル201と外周領域セル202の平面方向の中間位置に中間領域セル1201が配置されている点など、基本的な構成は、実施例4(
図12)と同様であり、繰り返しとなる説明は省略する。
【0068】
実施例4(
図12)では、中心領域セル201、外周領域セル202、中間領域セル1201の全ての領域において、ゲート電極がトレンチ構造(トレンチゲート204およびゲート絶縁膜310)で形成されているのに対し、本実施例(
図13)では、中心領域セル201、外周領域セル202、中間領域セル1201の全ての領域において、サイドゲート構造(サイドゲート1301、Poly-Siフィールドプレート1302、ゲート絶縁膜310)で形成されている点において、実施例4(
図12)の構成とは異なっている。
【0069】
本実施例のゲート電極は、
図13に示すように、エミッタ電極301と半導体基板308との間に形成されたトレンチと、トレンチの内側に形成され、絶縁層(層間絶縁膜302)を介してエミッタ電極301と絶縁されたゲート電極(サイドゲート1301)と、トレンチの内側に形成され、エミッタコンタクト203を介してエミッタ電極301に接続されたPoly-Siフィールドプレート1302で構成されている。
【0070】
本実施例では、IGBTセルはサイドゲート構造で形成されており、帰還容量が小さく、高スイッチングかつ低損失化が可能である。
【0071】
また、中心領域セル201と中間領域セル1201は共に第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成していることによる効果、外周領域セル202に第7半導体層(深いn層)307がないことによる効果、中間領域セル1201と外周領域セル202は共に第3半導体層(n+ソース層)303がないことによる効果は、実施例4(
図12)と同様である。
【0072】
なお、本実施例のサイドゲート構造は、後述する実施例6~10を含めて、全ての実施例において、同様に適用可能である。
【実施例6】
【0073】
図14および
図15を参照して、本発明の実施例6の半導体装置について説明する。
図14は、本実施例のIGBT半導体チップのセル終端領域(
図1Aの符号105)の上面図である。IGBTのユニットセルのトレンチゲートは、ストライプ状に配置されている。
図15は、本実施例のIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【0074】
本実施例では、
図14に示すように、ストライプ形状のトレンチゲート204をy方向に配列し、外周領域セル202を形成する。中心領域セル201は、実施例1(
図2)および実施例5(
図13)と同一構造である。
【0075】
外周領域セル202は、実施例1(
図2)および実施例2(
図10)と同一構造を形成する。IGBTセルがストライプ状に配置された場合においても、
図15に示すように、トレンチの奥行方向で中心領域セル201と外周領域セル202を配置するので、第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0076】
また、外周領域セル202は、第7半導体層(深いn層)307を無くすことで、チップ終端ガードリング領域102から加算されるホール電流を効率よく引き抜くことができる構造となり、外周領域セル202での電流集中も抑制できる効果がある。
【0077】
また、外周領域セル202は、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がなく、ラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例7】
【0078】
図16を参照して、本発明の実施例7の半導体装置について説明する。
図16は、本実施例のIGBT半導体チップの鳥瞰図であり、実施例6(
図15)の変形例に相当する。IGBTのユニットセルのトレンチゲートは、ストライプ状に配置さている。
【0079】
本実施例では、
図16に示すように、トレンチ奥行方向で、実施例3(
図11)と同様な外周領域セル202を構成している。IGBTセルがストライプ状に配置された場合においても、中心領域セル201と外周領域セル202は、共に第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0080】
一方、外周領域セル202は、実施例3(
図11)と同様に、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)構造がなく、ラッチアップを防止することができる。
【0081】
また、外周領域セル202は、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、ターンオン時に電子注入がなく、中心領域セル201に比べてホール量が少なくなっている。そのため、ターンオフ時のホール密度も低く、電流集中及びラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例8】
【0082】
図17を参照して、本発明の実施例8の半導体装置について説明する。
図17は、本実施例のIGBT半導体チップの鳥瞰図であり、実施例7(
図16)の変形例に相当する。IGBTのユニットセルのトレンチゲートは、ストライプ状に配置さている。
【0083】
IGBTセルがストライプ状に配置されている場合においても、実施例4(
図12)と同様に、奥行方向に中心領域セル201と中間領域セル1201は共に第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0084】
特に、中間領域セル1201には、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、インパクトイオン化したキャリアを、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がない構造で引く抜くため、中心領域セル201と外周領域セル202間で発生するキャリア密度差を緩和し、局所的な電流集中を抑制する効果ある。
【0085】
また、外周領域セル202は、第7半導体層(深いn層)307を無くすことで、チップ終端ガードリング領域102から加算されるホール電流を効率よく引き抜くことができる構造となり、外周領域セル202での電流集中も抑制できる効果がある。
【0086】
また、中間領域セル1201と外周領域セル202は、共に第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がなく、ラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例9】
【0087】
図18および
図19を参照して、本発明の実施例9の半導体装置について説明する。
図18は、本実施例のIGBT半導体チップのセル終端領域(
図1Aの符号105)の上面図である。IGBTのユニットセルのトレンチゲートは、ストライプ状に配置さている。
図19は、本実施例のIGBT半導体チップの鳥瞰図である。
【0088】
IGBTがストライプ形状の配置においても、y方向,x方向共に中心領域セル201と外周領域セル202を配置し、中心領域セル201では、第6半導体層(深いp+層)306と第7半導体層(深いn層)307で電界集中pn接合を形成しており、インパクトイオン化による電子注入をセル間で均等に発生させ、ホール電流が均等化し遮断耐量を向上できる効果がある。
【0089】
一方、外周領域セル202では、第7半導体層(深いn層)307を無くすことで、チップ終端ガードリング領域102から加算されるホール電流を効率よく引き抜くことができる構造となり、外周領域セル202での電流集中も抑制できる効果がある。
【0090】
また、外周領域セル202は、第3半導体層(n+ソース層)303がないため、寄生サイリスタ(n+ソース/pベース/n-基板/p型コレクタ層)がなく、ラッチアップを防止することができる。これにより、遮断耐量に優れたIGBT半導体チップを提供できる。
【実施例10】
【0091】
図20を参照して、本発明の半導体装置を電力変換装置に適用した実施形態の一例について説明する。
図20は、本発明の実施例1~9に係る半導体装置を構成要素として採用した電力変換装置600を示す回路ブロック図である。
図20には、本実施例に係る電力変換装置600の回路構成、及び直流電源と三相交流モータ(交流負荷)との接続の関係を示す。
【0092】
本実施例の電力変換装置600では、実施例1~9の半導体装置を電力スイッチング素子601~606として用いている。電力スイッチング素子601~606は、例えばIGBTである。
【0093】
図20に示すように、本実施例の電力変換装置600は、一対の直流端子であるP端子631,N端子632と、交流出力の相数と同数の交流端子であるU端子633,V端子634,W端子635とを備えている。
【0094】
一対の電力スイッチング素子601および602の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるU端子633を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子603および604の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるV端子634を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子605および606の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるW端635を出力とするスイッチングレッグを備える。
【0095】
電力スイッチング素子601~606からなる3相分のスイッチングレッグは、P端子631,N端子632の直流端子間に接続されて、図示しない直流電源から直流電力が供給される。電力変換装置600の3相の交流端子であるU端子633、V端子634、W端子635は図示しない三相交流モータに三相交流電源として接続されている。
【0096】
電力スイッチング素子601~606には、それぞれ逆並列にダイオード621~626が接続されている。IGBTからなる電力スイッチング素子601~606のそれぞれのゲート入力端子にはゲート駆動回路611~616が接続されており、各ゲート駆動回路611~616によって駆動制御される。
【0097】
つまり、本実施例の電力変換装置600は、外部から直流電力を入力し、入力した直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換装置であって、直流電力を入力するための一対の直流端子631,632と、交流電力を出力するための交流端子であってその交流電力に係る交流の相数と同数の交流端子633~635とを備え、相数分ある交流端子633~635の各々について、一対の直流端子631,632の一方の端子(P端子631)と他方の端子(N端子632)との間に、スイッチング素子(例えば電力スイッチング素子601)と当該スイッチング素子とは逆極性のダイオード(例えばダイオード621)とが互いに並列接続されて成る並列回路(例えば電力スイッチング素子601とダイオード621の並列回路)が2個直列に接続された構成の直列回路(例えば電力スイッチング素子601とダイオード621の並列回路と、電力スイッチング素子602とダイオード622の並列回路との直列回路)が接続され、その直列回路を構成する2個の並列回路の相互接続点が、該直列回路に対応する相(例えばU相)の交流端子(例えばU端子633)に接続された構成を備えたものである。
【0098】
上記の各実施例1~9で説明したIGBT半導体チップ101によれば、製造時の形状バラツキや不純物バラツキに起因するIGBTセル間の電界バラツキによる局所的な電流・電界集中やチップ終端部での電流集中を抑制可能であり、遮断耐量を向上することができる。
【0099】
従って、各実施例1~9のIGBT半導体チップ101により、IGBTチップの高電流密度化が可能となり、それを搭載する電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0100】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0101】
101…IGBT半導体チップ
102…チップ終端ガードリング領域
103…セル領域
104…ゲート電極PAD
105…セル終端領域
201…中心領域セル
202…外周領域セル
203…エミッタコンタクト
204…トレンチゲート
301…エミッタ電極
302…層間絶縁膜
303…第3半導体層(n+ソース層)
304…第4半導体層(浅いp+層)
305…第5半導体層(pベース層)
306…第6半導体層(深いp+層)
307…第7半導体層(深いn層)
308…半導体基板(n-半導体基板)
310…ゲート絶縁膜
311…第2半導体層(n型バッファー層)
312…第1半導体層(p型コレクタ層)
313…コレクタ電極
501…トレンチ
502…コンタクトホール
503…レジスト
600…電力変換装置
601~606…電力スイッチング素子
621~626…ダイオード
611~616…ゲート駆動回路
631,632…直流端子
633~635…交流端子
1201…中間領域セル
1301…サイドゲート
1302…Poly-Siフィールドプレート