(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】表面形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20221108BHJP
B21B 38/02 20060101ALN20221108BHJP
B21C 51/00 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
G01B11/24 K
B21B38/02
B21C51/00 L
(21)【出願番号】P 2019190779
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】射場 公平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌之
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251816(JP,A)
【文献】特開平08-014834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B21B 38/00-38/12
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向および前記第1方向に直交する第2方向を含むパスライン上に載置された1つの被測定物体または2つの被測定物体が搬送される前記第1方向に直交する2つの離隔した平面内にそれぞれ設けられ互いの光軸が平行になるように前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体のななめ上方に配置された2つのスリット状光光源から前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体の表面にそれぞれ照射される第1ラインおよび第2ラインを所定の周期で順次撮像する撮像部であって、前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体のななめ上方かつ前記平面から角度をなす位置に配置された前記撮像部によって取得されたななめ画像データを、前記2つのスリット状光光源からの照射線上で撮像したような画像データに変換し、前記画像データを前記第1ラインにもとづいて、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の座標の第1高さデータを含む第1高さマップ情報を生成し、前記画像データを前記第2ラインにもとづいて前記第3方向の座標の第2高さデータを含む第2高さマップ情報を生成する表面座標変換部と、
前記2つの被測定物体が搬送されてくる場合に、前記第1高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体のそれぞれに対応する第1分割高さマップ情報および第2分割高さマップ情報を生成し、前記第2高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体のそれぞれに対応する第3分割高さマップ情報および第4分割高さマップ情報を生成する表面座標分割部と、
前記第1分割高さマップ情報および前記第3分割高さマップ情報にもとづいて、前記2つの被測定物体の振動による影響を軽減された第1最終高さマップ情報を演算し、前記第2分割高さマップ情報および前記第4分割高さマップ情報にもとづいて、前記2つの被測定物体の振動による影響を軽減された第2最終高さマップ情報を演算し、前記第1高さマップ情報および前記第2高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体の表面の形状を測定する凹凸形状演算部と、
を備え、
前記凹凸形状演算部は、前記1つの被測定物体が搬送されてくる場合には、前記第1高さマップ情報および前記第2高さマップ情報にもとづいて、前記1つの被測定物体の振動による影響を軽減された第3最終マップ情報を演算し、前記第3最終マップ情報にもとづいて前記1つの被測定物体の表面の形状を測定する表面形状測定装置。
【請求項2】
前記表面座標変換部は、
前記第1ラインを前記第2方向に沿ってサンプリングして前記第2方向の座標に対する前記第3方向の座標のデータを紐づけすることによって、前記第1高さマップ情報を生成し、
前記第2ラインを前記第2方向に沿ってサンプリングして前記第2方向の座標に対する前記第3方向の座標のデータを紐づけすることによって、前記第2高さマップ情報を生成し、
前記表面座標分割部は、
前記第1高さマップ情報を前記第1ラインに沿って走査し、前記第3方向の座標データが第1しきい値よりも小さくなったときに第1立下り座標を検出したものと判定し、
前記第3方向の座標のデータが前記第1しきい値以上となったときに第1立上り座標を検出したものと判定し、
前記第1立下り座標と前記第1立上り座標との中間の座標を、前記2つの被測定物体に対応する第1分割点として抽出し、
前記第2高さマップ情報を前記第2ラインに沿って走査し、前記第3方向の座標データが前記第1しきい値よりも小さくなったときに第2立下り座標を検出したものと判定し、
前記第3方向の座標のデータが前記第1しきい値以上となったときに第2立上り座標を検出したものと判定し、
前記第2立下り座標と前記第2立上り座標との中間の座標を、前記2つの被測定物体に対応する第2分割点として抽出する請求項1記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記表面座標分割部は、
前記第1分割点を、前記2つの被測定物体に関して前記第1方向にわたって複数個抽出し、抽出された前記複数の第1分割点にもとづいて第1分割ラインを近似演算し、
前記第2分割点を、前記2つの被測定物体に関して前記第1方向にわたって複数個抽出し、抽出された前記複数の第2分割点にもとづいて第2分割ラインを近似演算する請求項2記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記表面座標分割部は、
前記第1分割ラインにもとづいて、前記第1分割高さマップ情報および前記第2分割高さマップ情報を生成し、
前記第2分割ラインにもとづいて、前記第3分割高さマップ情報および前記第4分割高さマップ情報を生成する請求項3記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記表面座標分割部または凹凸形状演算部の処理の異常有無を判定する分割異常判定部をさらに備えた請求項4記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記分割異常判定部は、
前記表面座標分割部において、
前記第1立下り座標または前記第1立上り座標のうち少なくとも一方の検出ができないとき、または、前記第1立下り座標または前記第1立上り座標のうち少なくとも一方について複数回検出されたときに、分割点抽出異常と判定し、
前記第2立下り座標または前記第2立上り座標のうち少なくとも一方の検出ができないとき、または、前記第2立下り座標または前記第2立上り座標のうち少なくとも一方について複数回検出されたときに、分割点抽出異常と判定する請求項5記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記分割異常判定部は、
前記表面座標分割部において、
前記第1分割ラインの近似演算の係数が所定の範囲内からはずれたときに分割ライン異常と判定し、
前記第2分割ラインの近似演算の係数が所定の範囲内からはずれたときに分割ライン異常と判定する請求項5記載の表面形状測定装置。
【請求項8】
前記分割異常判定部は、
前記第1分割ラインの前記第3方向の座標の値が所定値以上のデータを含むときに分割画像妥当性異常と判定し、
前記第2分割ラインの前記第3方向の座標の値が所定値以上のデータを含むときに分割画像妥当性異常と判定する請求項5記載の表面形状測定装置。
【請求項9】
前記分割異常判定部は、
前記凹凸形状演算部において、
前記第1分割高さマップ情報および前記第3分割高さマップ情報の同一の前記第1方向の座標および前記第2方向の座標における前記第3方向のそれぞれの座標の値の相違が所定値以上である場合に凹凸演算有効性異常と判定し、
前記第2分割高さマップ情報および前記第4分割高さマップ情報の同一の前記第1方向の座標および前記第2方向の座標における前記第3方向のそれぞれの座標の値の相違が所定値以上である場合に凹凸演算有効性異常と判定する請求項5記載の表面形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄鋼製造設備において、搬送されてくる帯状鋼板の表面形状を測定する表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯状鋼板の高品質化、高機能化等とともに、生産性を低下させることなく多品種生産することが求められている。ここで、帯状鋼板の表面形状の測定とは、鋼板の表面波高さ、急峻度および伸び率等を測定することをいう。
【0003】
多品種の鋼板の生産において生産性を向上させる手法として、鋼板の幅等に応じて、単一の鋼板をラインに投入して搬送(単列搬送)する場合と、2枚の鋼板を同時にラインに投入し、並べて搬送(並列搬送)する場合とを適宜切り替ることが行われている。また、単列搬送した鋼板を2枚に切断した後、並列搬送に切り替えることも行われている。
【0004】
従来、表面形状測定装置では、単列搬送の場合であっても並列搬送の場合であっても、取得されるのは1枚の画像データであり、得られた画像データに振動軽減処理を行って、表面形状の測定を行う。そのため、並列搬送された場合でも、得られる測定結果は、2枚の鋼板のデータが含まれた1つのデータであり、測定結果によって不良判定された場合には、2枚の鋼板のうちいずれが不良判定されたのか判別することができない。そのため、不良判定された2枚の鋼板を再度ラインに投入し単列搬送して、順次表面形状を測定する必要がある。あるいは、このような作業工程の後戻りが発生するのを抑制するために、並列搬送の場合であっても、表面形状測定の前に単列搬送に切り替えることが行われている。
【0005】
いずれの場合であっても、単列搬送と並列搬送とを適宜切り替えることによって実現されるべき生産性の向上が阻害される要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る実施の形態は、上述のような課題を解決するためになされたもので、帯状鋼板の単列搬送と並列搬送が混在する工程であっても、生産性を低下させることなく表面形状を高精度に測定できる表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る実施の形態の表面形状測定装置は、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向を含むパスライン上に載置された1つの被測定物体または2つの被測定物体が搬送される前記第1方向に直交する2つの離隔した平面内にそれぞれ設けられ互いの光軸が平行になるように前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体のななめ上方に配置された2つのスリット状光光源から前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体の表面にそれぞれ照射される第1ラインおよび第2ラインを所定の周期で順次撮像する撮像部であって、前記1つの被測定物体または前記2つの被測定物体のななめ上方かつ前記平面から角度をなす位置に配置された前記撮像部によって取得されたななめ画像データを、前記2つのスリット状光光源からの照射線上で撮像したような画像データに変換し、前記画像データを前記第1ラインにもとづいて、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の座標の第1高さデータを含む第1高さマップ情報を生成し、前記画像データを前記第2ラインにもとづいて前記第3方向の座標の第2高さデータを含む第2高さマップ情報を生成する表面座標変換部と、前記2つの被測定物体が搬送されてくる場合に、前記第1高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体のそれぞれに対応する第1分割高さマップ情報および第2分割高さマップ情報を生成し、前記第2高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体のそれぞれに対応する第3分割高さマップ情報および第4分割高さマップ情報を生成する表面座標分割部と、前記第1分割高さマップ情報および前記第3分割高さマップ情報にもとづいて、前記2つの被測定物体の振動による影響を軽減された第1最終高さマップ情報を演算し、前記第2分割高さマップ情報および前記第4分割高さマップ情報にもとづいて、前記2つの被測定物体の振動による影響を軽減された第2最終高さマップ情報を演算し、前記第1高さマップ情報および前記第2高さマップ情報にもとづいて前記2つの被測定物体の表面の形状を測定する凹凸形状演算部と、を備える。前記凹凸形状演算部は、前記1つの被測定物体が搬送されてくる場合には、前記第1高さマップ情報および前記第2高さマップ情報にもとづいて、前記1つの被測定物体の振動による影響を軽減された第3最終マップ情報を演算し、前記第3最終マップ情報にもとづいて前記1つの被測定物体の表面の形状を測定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、帯状鋼板の単列搬送と並列搬送が混在する工程であっても、生産性を低下させることなく表面形状を高精度に測定できる表面形状測定装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る表面形状測定装置を例示するブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する平面図である。
図2(b)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する正面図である。
図2(c)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する側面図である。
【
図3】
図3(a)は、並列搬送された被測定物体の画像データを例示する模式図である。
図3(b)は、並列搬送された被測定物体の1ライン分の高さ座標のデータを例示する模式図である。
図3(c)は、
図3(b)のE部の拡大図である。
【
図4】並列搬送された被測定物体の画像データの表面座標の分割動作を説明する模式図である。
【
図5】分割異常判定される画像データを例示する模式図である。
【
図6】実施形態の表面形状測定装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る表面形状測定装置を例示するブロック図である。
図1に示すように、表面形状測定装置10は、表面座標変換部14と、単列/並列切替部17と、表面座標分割部18と、凹凸形状演算部15と、を備える。また、好ましくは、表面形状測定装置10は、分割異常判定部19をさらに備える。
【0013】
表面形状測定装置10は、表面撮像部3の出力に接続されている。表面撮像部3は、撮像する領域100の画像データを取得する。領域100は、表面撮像部3が被測定物体1a,1bを撮像することが可能な領域である。領域100は、搬送されてくる被測定物体1a,1bの全幅の表面を含み、その中に2つのスリット状光光源2A,2Bによって表面上に照射されたスリット状光を含むように設定されている。
【0014】
2つのスリット状光光源2A,2Bは、領域100内の被測定物体1a,1bの表面にスリット状光をそれぞれ照射する。2つのスリット状光光源2A,2Bは、被測定物体1a,1bの搬送方向(第1方向)に沿って配置されており、スリット状光光源2A,2Bのそれぞれは、出射するスリット状光が被測定物体1a,1bの搬送方向にほぼ垂直になるように配置されている。また、スリット状光光源2A,2Bは、それぞれのスリット状光の光軸が平行になるように配置されている。
【0015】
2つのスリット状光光源2A,2Bは、互いに近接して配置されており、被測定物体1a,1bの長手方向の長さに比べて十分に短い間隔に配置されている。2つのスリット状光による被測定物体1a,1bの表面の画像データに、後述する適切な演算処理を施すことによって、被測定物体1a,1bの搬送時等の振動による高さ座標の時間変動を軽減することができる。
【0016】
表面撮像部3は、搬送されてくる被測定物体1a,1bの表面に照射される2本のスリット状光を撮像して画像データを出力する。この例では、被測定物体1a,1bは、並列搬送されている場合が示されているが、単列で被測定物体が搬送されてくる場合もあり、その場合も同様に、表面撮像部3は、2本のスリット状光の画像データを出力する。被測定物体は、帯状鋼板である。表面形状測定装置10は、上位の鋼板搬送制御システム側(図示せず)からの指令によって、被測定物体が単列搬送されてくるか、並列搬送されてくるかを判別することができる。
【0017】
表面形状測定装置10は、表示部20に接続される。表示部20は、表面形状測定装置10によって測定された被測定物体の表面形状の測定結果を表示するためのインタフェースを提供する。表示部20は、たとえば、表面形状測定装置10の操作端末に設けられたディスプレイ装置に接続するためのインタフェースである。
【0018】
表面形状測定装置10は、分割異常判定部19を備える場合には、分割異常表示部30に接続される。分割異常表示部30は、分割異常判定部19が生成した結果を表示するためのインタフェースを提供する。分割異常表示部30を介して、表面形状測定装置の操作端末とは別に設けられたディスプレイ装置に接続してもよいし、表面形状測定装置10の操作端末のディスプレイ装置に接続するようにしてもよい。
【0019】
まず、搬送されてくる被測定物体の表面座標の測定方法について説明する。被測定物体の表面座標の測定方法は、被測定物体が単列か並列かによらないが、以下では、被測定物体1a,1bが並列搬送されている場合を例に説明する。
【0020】
図2(a)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する平面図である。
図2(b)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する正面図である。
図2(c)は、並列搬送される被測定物体の表面形状の測定系を例示する側面図である。
図2(a)~
図2(c)に示すように、スリット状光光源2A,2Bおよび表面撮像部3は、被測定物体1a,1bの表面のななめ上方に設けられている。スリット状光光源2A,2Bは、この例では、被測定物体1a,1bの長手方向の一方の縁の側に設けられ、表面撮像部3は、スリット状光光源2A,2Bが設けられているのとは反対の縁の側に設けられている。スリット状光光源2A,2Bおよび表面撮像部3は、被測定物体1a,1bの同じ縁の側に設けられていてもよい。
【0021】
スリット状光光源2A,2Bは、搬送方向に直交する2つの平面内に配置される。スリット状光光源2A,2Bの光軸2Ac,2Bcは、搬送方向に直交する2つの平面を直進し、搬送方向とほぼ直交するように配置されている。スリット状光光源2A,2Bは、光軸2Ac,2Bcがほぼ平行になるように配置されている。
【0022】
被測定物体1a,1bは、パスラインP上を搬送方向に沿って搬送される。被測定物体1a,1bの長手方向の縁は、搬送方向に水平となるように配置されている場合に限らず、この例のように、鋼板をラインに投入する設備の操作精度等によって、ななめに配置されている場合もある。
【0023】
表面撮像部3は、スリット状光光源2A,2Bの光軸2Ac,2Bcを含む平面から、被測定物体1a,1bの搬送方向後方に角度をなすように配置されている。この角度は、光軸2Ac,2Bcを含む平面から搬送方向前方に形成するようにしてもよい。表面撮像部3は、スリット状光光源2A,2Bから照射されたスリット状光が被測定物体1a,1bの表面に描くライン2AL,2BLを、ななめ上方かつ搬送方向後方から撮像する。表面撮像部3の光軸とスリット状光光源2A,2Bの光軸2Ac,2Bcとのなす角度は、角度θ1である。
【0024】
表面撮像部3は、搬送されてくる被測定物体1a,1bの表面に照射されているスリット状光のライン2AL,2BLを一定の時間間隔で撮像する。表面撮像部3は、撮像した画像データを表面形状測定装置10に送信する。
【0025】
次に、表面形状測定装置10の構成について説明する。
表面座標変換部14は、表面撮像部3の出力に接続されている(
図1)。表面座標変換部14は、表面撮像部3によって撮像されたスリット状光のライン2AL,2BLの画像データにもとづいて、高さマップ情報A,Bのデータをそれぞれ生成する。高さマップ情報とは、パスラインPに平行な平面(たとえばXY平面)の座標(XY座標)を有する、XY座標に垂直な方向の座標(たとえばZ座標)のデータをいう。
【0026】
より具体的には、表面座標変換部14は、次のように動作する。すなわち、表面座標変換部14は、表面撮像部3から取得した画像データ(ななめ画像データ)を、表面撮像部3のななめ配置の角度θ1にしたがって、スリット状光光源2A,2Bが照射するスリット状光からの照射線上で撮像したようなデータに変換する。表面座標の変換については、周知の技術であり、特許文献1等に詳しいが、たとえば、以下のようにすることができる。上述のように表面撮像部3およびスリット状光光源2A,2Bを配置し、被測定物体に代えて、あらかじめ複数種類の幅および高さを有する基準板を撮像して、撮像座標と、幅および高さとの変換テーブルを作成する。表面座標変換部14は、被測定物体1a,1bの画像データを、作成された変換テーブルにしたがって、座標変換して出力する。
【0027】
表面座標変換部14は、1ラインごとのZ座標のデータを、そのラインに沿ってサンプリングすることによって取得する。そのラインおよびサンプリングされた位置は、XY座標のデータとして表される。したがって、XY座標にZ座標のデータを紐づけすることによって、表面座標変換部14は、高さマップ情報A,Bを生成することができる。
【0028】
表面座標変換部14の出力は、単列/並列切替部17に接続されている。単列/並列切替部17の出力は、凹凸形状演算部15および表面座標分割部18にそれぞれ接続されている。単列/並列切替部17は、図示しないが、上位の鋼板搬送制御システムから送信されてくる単列/並列のいずれかを表す指令を受信する。
【0029】
単列/並列切替部17は、単列を表す指令(単列指令)を受信した場合には、表面座標変換部14から受信した高さマップ情報A,Bをそのまま凹凸形状演算部15に送信する。単列/並列切替部17は、並列搬送を表す指令(並列指令)を受信した場合には、高さマップ情報A,Bを表面座標分割部18に送信する。
【0030】
単列/並列切替部17が送信する高さマップ情報A,Bのデータは、単列指令の場合には1枚分の鋼板表面の座標データが含まれており、並列指令の場合には、2枚分の鋼板表面の座標データが含まれている。凹凸形状演算部15での演算処理は、1枚分でも2枚分でも同様であるので、以下では、特に断らない限り、並列指令によって2枚分の演算処理を行う場合について説明する。
【0031】
表面座標分割部18は、入力された高さマップ情報Aのデータにもとづいて、被測定物体1a,1bにそれぞれ対応する高さマップ情報aA,bAを生成する。表面座標分割部18は、入力された高さマップ情報Bのデータにもとづいて、被測定物体1a,1bにそれぞれ対応する高さマップ情報aB,bBを生成する。
【0032】
ここで、被測定物体1aに対応する高さマップ情報のうち、スリット状光光源2Aの照射によるライン2ALを含むものを高さマップ情報aAとする。被測定物体1aに対応する高さマップ情報のうち、スリット状光光源2Bの照射によるライン2BLを含むものを高さマップ情報aBとする。被測定物体1bに対応する高さマップ情報のうち、スリット状光光源2Aの照射によるライン2ALを含むものを高さマップ情報bAとする。被測定物体1bに対応する高さマップ情報のうち、スリット状光光源2Bの照射によるライン2BLを含むものを高さマップ情報bBとする。
【0033】
より具体的には、表面座標分割部18は、次のように動作する。すなわち、表面座標分割部18は、表面座標変換部14から高さマップ情報Aを入力し、被測定物体1a,1bに対応する部分の分割点(第1分割点)を抽出する。さらに、抽出された分割点にもとづいて、被測定物体1a,1bのそれぞれに対応する部分に分割する分割ライン(第1分割ライン)を生成し、分割された分割高さマップ情報aA,bA(第1分割高さマップ情報、第2分割高さマップ情報)を生成する。
【0034】
表面座標分割部18は、表面座標変換部14から高さマップ情報Bを入力し、被測定物体1a,1bのそれぞれに対応する部分の分割点(第2分割点)を抽出する。さらに、抽出された分割点にもとづいて、被測定物体1a,1bにそれぞれ対応する部分に分割する分割ライン(第2分割ライン)を生成し、分割された分割高さマップ情報aB,bB(第3分割高さマップ情報、第4分割高さマップ情報)を生成する。
【0035】
図3(a)は、並列搬送された被測定物体の表面形状の画像データを例示する模式図である。
図3(b)は、並列搬送された被測定物体の1ライン分の高さ座標のデータを例示する模式図である。
図3(c)は、
図3(b)のE部の拡大図である。
上述したとおり、複数のラインからなる画像データや高さマップ情報は、スリット状光光源2A,2Bのそれぞれによる2種類のデータにもとづいて生成等されるが、冗長な説明を避けるため、以下では、スリット状光光源2Aによるライン2ALにもとづく画像データや高さマップ情報Aの処理について説明する。スリット状光光源2BによるラインBLにもとづく画像データや高さマップ情報Bの処理についても同様である。
【0036】
図3(a)に示すように、表面形状の画像データ102は、搬送方向に垂直な方向の複数のラインからなる。ライン2ALは、スリット状光光源2Aが出射する光が被測定物体1a,1b上に描く光の線である。撮像されたライン2AL1,2AL2,2AL3,…,2AL6,…からなる画像データ102は、被測定物体1a,1bの搬送方向先頭から搬送方向に沿って順次取得される。つまり、被測定物体1a,1bの表面形状の画像データ102は、搬送方向に離散的なデータとして取得される。
【0037】
被測定物体1a,1bは、上流に設けられた鋼板を配置操作する操作設備の操作精度等によって、必ずしも平行に配置されるとは限らない。この例のように、一方の被測定物体1aが搬送方向に対してななめに配置される場合もある。また、被測定物体1a,1bの先端や尾端の位置がそろわない場合もある。
【0038】
図3(b)に示すように、各ラインは、ライン方向に沿って高さ座標のデータを有している。
【0039】
図3(c)に示すように、ラインごとにライン方向に沿ってサンプリングすることによって、XY平面における座標データとともに、高さ座標のデータを得ることができる。
図3(c)には、分割点の位置も合わせて示されている。たとえば、ラインごとにライン方向に沿って高さ座標のデータを走査し、立下り座標および立上り座標を検出し、立上り座標と立上り座標との中間の座標を分割点とすることができる。
【0040】
立下り座標および立上り座標の検出のために、たとえば、あらかじめ高さ座標のしきい値が設けられている。しきい値は、たとえば、ライン方向に沿って高さ座標のデータを走査した場合に、高さ座標のデータが、しきい値よりも小さい値を検出した場合に、立下り座標と判定され、しきい値以上の値を検出した場合に立上り座標と判定されるように設定される。
【0041】
この例のように、被測定物体1a,1bの先端や尾端の位置がそろっていない場合には、立下り座標検出または立上り座標検出のいずれか一方が検出されないこととなる。また、撮像の開始当初や終了時の前には、立下り座標も立上り座標も検出されないこともある。
【0042】
この例では、ライン方向の走査を図上、上から下に行った場合には、ライン2AL1~2AL3では、立上り座標検出がされず、ライン2AL4以降において立下り座標検出および立上り座標検出がされている。たとえば、表面座標分割部18は、最初の数ラインにおいて、立下り座標検出がされないか、立上り座標検出がされない場合には、検出されないライン数があらかじめ設定したライン数よりも少ないときには、検出されなかったラインのデータを分割点演算の対象から除外するようできる。被測定物体1a,1bの尾端付近における立下り座標検出または立上り座標の不検出の場合も同様に処理することができる。
【0043】
被測定物体1a,1bの先端や尾端付近の位置以外における立下り座標不検出または立上り座標の不検出の場合には、後述するように分割異常判定の対象とすることができる。また、被測定物体1a,1bの先端または尾端付近の立下り座標検出または立上り座標の不検出ラインが所定値以上となった場合も分割異常判定の対象としてもよい。
【0044】
図4は、並列搬送された被測定物体の表面座標の分割動作を説明するための模式図である。
図4の上の図には、画像分割前の2枚分の被測定物体1a,1bを含む画像データ102の状態が示されており、
図4の下の図には、分割ラインによって分割された画像データ102a,102bの状態が模式的に示されている。画像データ102aは、被測定物体1aに対応し、画像データ102bは、被測定物体1bに対応する。
【0045】
図4に示すように、分割ラインは、ラインごとに検出された分割点の座標を用いて設定される。分割ラインは、たとえば、ラインごとに検出された分割点を二次近似することによって求められる。分割ラインの設定には、二次近似に限らず他の適切な近似演算等を用いてもよい。
【0046】
分割ラインが設定された画像データ102は、分割ラインによって画像分割処理され、2つの画像データ102a,102bが生成される。画像データ102aは、被測定物体1aの高さマップ情報aAであり、画像データ102bは、被測定物体1bの高さマップ情報bAである。表面座標分割部18は、ラインBLにもとづく画像データについても上述と同様に、2つの被測定物体1a,1bに対応する画像に画像分割処理し、高さマップ情報aB,bBを生成する。
【0047】
凹凸形状演算部15は、高さマップ情報aAおよび高さマップ情報aBにもとづいて、振動軽減処理演算を実行し、振動軽減処理された高さマップ情報a0(第1最終高さマップ情報)を生成する。凹凸形状演算部15は、高さマップ情報bAおよび高さマップ情報bBにもとづいて、振動軽減処理を実行し、高さマップ情報b0(第2最終高さマップ情報)を生成する。
【0048】
凹凸形状演算部15は、高さマップ情報a0にもとづいて、被測定物体1aの表面形状を測定し、結果を出力する。凹凸形状演算部15は、高さマップ情報b0にもとづいて、被測定物体1bの表面形状を測定し、結果を出力する。
【0049】
凹凸形状演算部15は、位置の異なる高さマップ情報A,Bのデータをそれぞれ搬送方向に積分し、差分をとることによって、時間による変動分が除去される。そのため、凹凸形状演算部15は、被測定物体1a,1bの搬送時の振動による高さ座標の変動をほとんど含まない高さマップ情報a0,b0のデータを生成することができる。
【0050】
分割異常判定部19は、表面座標分割部18における処理に異常があるか否かを判定する。分割異常判定部19は、凹凸形状演算部15における分割処理に関する処理に異常があるか否かを判定する。分割異常判定部19は、分割異常である旨の表示を出力する。
【0051】
分割異常判定部19は、1つあるいは複数種類の異常判定機能を含むことができる。たとえば、分割異常判定部19は、表面座標分割部18において分割点の抽出処理の異常有無を判定することができる。たとえば、分割異常判定部19は、分割ラインの生成処理の異常有無を判定するようにしてもよい。たとえば、分割異常判定部19は、分割高さマップ情報のデータの異常有無を判定するようにしてもよい。
【0052】
図5は、分割異常と判定される画像データを例示する模式図である。
図5には、2つの被測定物体を含む画像データを分割処理した結果、妥当でない分割画像が生成された場合の例を示している。
図5に示すように、被測定物体1aの画像データ102aは、妥当でない高さ座標のデータを含む高さマップ情報201aのデータを有している。妥当でない高さ座標のデータとは、高さマップ情報201aにおいて、被測定物体1aの尾端付近に相当する範囲の分割ラインの高さ座標のデータが、立下り座標検出のためのしきい値よりも十分大きい値を有している場合である。
【0053】
たとえば、分割異常判定部19は、凹凸形状演算部15において、スリット状光光源2A,2Bによる2つの分割高さマップ情報のデータ間の異常の有無を判定してもよい。これら複数種類の異常判定機能は、必要に応じて任意に設定することができる。
【0054】
上述した構成を備える表面形状測定装置10の一連の動作を、フローチャートを用いて説明する。
図6は、実施形態の表面形状測定装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図6に示すように、ステップS1において、表面座標変換部14は、表面撮像部3によって撮像されたライン2AL,2BLのデータを角度θ1を用いて、直交座標のデータに変換する。
【0055】
ステップS2において、表面座標変換部14は、直交座標のデータに変換されたライン2AL,2BLのデータをラインごとにそれぞれサンプリング処理する。
【0056】
ステップS3Aにおいて、表面座標変換部14は、ラインごとにサンプリング処理されたライン2ALのデータにもとづいて、高さマップ情報Aを生成する。
【0057】
ステップS3Bにおいて、表面座標変換部14は、ラインごとにサンプリング処理されたライン2BLのデータにもとづいて、高さマップ情報Bを生成する。
【0058】
ステップS11Aにおいて、表面座標分割部18は、高さマップ情報Aにもとづいて、ラインごとに分割点を抽出する。
【0059】
ステップS11Bにおいて、表面座標分割部18は、高さマップ情報Bにもとづいて、ラインごとに分割点を抽出する。
【0060】
ステップS12Aにおいて、表面座標分割部18は、ステップS11Aで抽出されたラインごとの分割点を用いて近似処理を実行し、分割ラインを生成する。
【0061】
ステップS12Bにおいて、表面座標分割部18は、ステップS11Bで抽出されたラインごとの分割点を用いて近似処理を実行し、分割ラインを生成する。
【0062】
ステップS13Aにおいて、表面座標分割部18は、ステップS12Aで生成された分割ラインを用いて、ライン2ALにもとづく画像データの分割処理を実行する。
【0063】
ステップS13Bにおいて、表面座標分割部18は、ステップS12Bで生成された分割ラインを用いて、ライン2BLにもとづく画像データの分割処理を実行する。
【0064】
ステップS14A1において、表面座標分割部18は、ステップS13Aで分割処理された2つの画像データのうちの被測定物体1aに対応するデータを用いて、被測定物体1aに対応する分割高さマップ情報aAを取得する。
【0065】
ステップS14A2において、表面座標分割部18は、ステップS13Aで分割処理された2つの画像データのうちの被測定物体1bに対応するデータを用いて、被測定物体1bに対応する分割高さマップ情報bAを取得する。
【0066】
ステップS14B1において、表面座標分割部18は、ステップS13Bで分割処理された2つの画像データのうちの被測定物体1aに対応するデータを用いて、被測定物体1aに対応する分割高さマップ情報aBを取得する。
【0067】
ステップS14B2において、表面座標分割部18は、ステップS13Bで分割処理された2つの画像データのうちの被測定物体1bに対応するデータを用いて、被測定物体1bに対応する分割高さマップ情報bBを取得する。
【0068】
ステップS21Aにおいて、凹凸形状演算部15は、ライン2ALのデータにもとづく分割高さマップ情報aAおよびライン2BLのデータにもとづく分割高さマップ情報aBを用いて、振動軽減処理演算を実行し、被測定物体1aに対応する高さマップ情報a0を出力する。凹凸形状演算部15は、高さマップ情報a0にもとづいて、表面形状(鋼板の表面波高さ、急峻度および伸び率等)を計算する。
【0069】
ステップS21Bにおいて、凹凸形状演算部15は、ライン2ALのデータにもとづく分割高さマップ情報bAおよびライン2BLのデータにもとづく分割高さマップ情報bBを用いて、振動軽減処理演算を実行し、被測定物体1bに対応する高さマップ情報b0を出力する。凹凸形状演算部15は、高さマップ情報b0にもとづいて、表面形状を計算する。
【0070】
ステップS31Aにおいて、表示部20は、被測定物体1aの表面形状のデータを出力し、表示する。
【0071】
ステップS31Bにおいて、表示部20は、被測定物体1bの表面形状のデータを出力し、表示する。
【0072】
ステップS41において、分割異常判定部19は、ステップS11Aで抽出された分割点(
図6では近似サンプルと表記)の異常の有無を判定する。また、分割異常判定部19は、ステップS11Bで抽出された分割点の異常の有無を判定する。
【0073】
分割点の異常とは、たとえば、搬送方向の途中のラインの高さ座標のデータにおいて、立下り座標検出または立上り座標の少なくともいずれか一方が存在しない場合である。たとえば、異常判定には、適切な高さ座標データが存在しないラインが連続する場合や、全体のライン数中、あらかじめ設定した割合以上に適切な座標データが存在しない場合等と基準とすることができる。また、被測定物体の先端付近や尾端付近で、適切な座標データが存在しない場合が所定数または所定割合以上のときに異常判定するようにしてもよい。
【0074】
ステップS42において、分割異常判定部19は、ステップS12Aで近似処理された分割ラインの異常有無を判定する。同様に、分割異常判定部19は、ステップS12Bで近似処理された分割ラインの異常有無を判定する。
【0075】
分割異常判定部19は、たとえば、算出された分割ラインの近似式の係数が、あらかじめ設定した範囲をはずれた場合に分割ラインの異常と判定する。
【0076】
ステップS43において、分割異常判定部19は、S14A1~S14B2で取得された分割高さマップ情報aA~bBのデータの異常の有無を判定する。データの異常は、分割された分割高さマップ情報aA~bBのデータが妥当であるか否かにより判定される。分割高さマップ情報aA~bBのデータが妥当でないとは、たとえば、上述したように、分割処理された高さマップ情報において、被測定物体の尾端側に対応する部分の分割ラインの高さのデータが、あらかじめ設定された値以上の場合とすることができる。異常判定には、被測定物体の尾端側に対応する部分の分割ラインの高さのデータにおいて、あらかじめ設定された値以上のデータが所定のライン数以上の場合としたり、全体のライン数に対する比率が所定値以上となった場合としたりすることができる。
【0077】
ステップS44において、分割異常判定部19は、ステップS21Aで凹凸形状の演算を実行する前に、一対の分割高さマップ情報aA,aBの高さ座標のデータの相違が所定値以上となる割合があらかじめ設定した値以上となるか否かを判定する。同様に、分割異常判定部19は、ステップS21Bで凹凸形状の演算を実行する前に、一対の分割高さマップ情報bA,bBの高さ座標のデータの相違が所定値以上となる割合があらかじめ設定した値以上となるか否かを判定する。
【0078】
ステップS51において、分割異常表示部(図では表示部と表記)30は、ステップS41~S44における判定結果をそれぞれ出力し、表示する。
【0079】
なお、分割異常判定部19によって、分割異常であると判定され表示される場合であっても、表面座標分割部18および凹凸形状演算部15の一連の動作は、そのまま継続して実行される。あるいは、異常判定にレベルを設けて、軽度の異常レベル判定の場合に一連の動作を継続し、重度の異常レベルを判定した場合に、動作を停止させたり、動作を中止して、次の被測定物体の測定に移行させたりしてもよい。
【0080】
実施形態の表面形状測定装置10の効果について説明する。
実施形態の表面形状測定装置10は、表面座標分割部18を備える。表面座標分割部18は、被測定物体1a,1bが並列搬送された場合に、表面座標変換部14によって生成された高さマップ情報A,Bにもとづいて、分割点を抽出し、画像データの分割ラインを設定することができる。そのため、並列搬送されていても、表面撮像部3によって取得された画像データでは、1枚の鋼板を含むのか2枚の鋼板を含むのか判別できない場合であっても、2枚の鋼板の画像データ(高さマップ情報)を生成することができる。
【0081】
実施形態の表面形状測定装置10では、2つの平行光軸を有するスリット状光光源2A,2Bによるラインを表面撮像部3によって撮像するので、振動軽減処理演算を行うことによって、高精度に高さマップ情報を生成することができるので、表面座標分割部18で分割された分割高さマップ情報によって、高精度な表面形状測定を行うことができる。
【0082】
実施形態の表面形状測定装置10は、分割異常判定部19をさらに備えることができる。分割異常判定部19は、表面座標分割部18によって、画像データの分割処理がされた場合に処理データの異常の有無を判定することができる。そのため、不適切なデータを除外して分割処理を実行し、振動軽減処理演算を行うことができるので、より正確な表面形状の測定を行うことができる。
【0083】
1枚の鋼板か2枚の鋼板かを識別し、2枚の鋼板を含む画像データを分割処理することによって、単列/並列搬送の切り替えに応じて、適切に表面形状の測定を行うことができるので、異常判定されるデータをいずれかの鋼板に含んでいても、他方の鋼板の表面形状測定のデータを有効に取得することができる。そのため、再度2枚分の鋼板の再測定を行うことなく、形状測定を完了させることができるので、多品種の鋼板製造ラインの生産性を低下させることなく、高精度の表面形状測定を行うことができる。
【0084】
分割異常判定部19では、画像データの分割処理に伴う異常有無の判定を1種類以上設けることができる。帯状鋼板の製造ラインでは、冷却水の噴出や高温での鋼板の表面処理等を行う工程が併存するので、測定環境は必ずしもよいとは言えない。たとえば、表面形状測定を行う前の工程において、鋼板に冷却水を噴出させて冷却する工程がある場合には、鋼板表面の凹部に冷却水がたまって、画像データや高さマップ情報を取得する際に、正確な表面データが取得されない場合も少なくない。また、2枚の鋼板を並列配置する場合に適切な位置に配置されていない場合には、そもそも画像分割処理ができない場合等もある。これらの事情は、鋼板の製造ラインの構成等によっても異なるので、分割異常判定部19の処理内容を製造ラインの構成等に応じて適切に組み合わせる等することができる。これによって、より適切かつ高精度に帯状鋼板の表面形状を測定することができる。
【0085】
このようにして、鋼板の単列搬送と並列搬送が混在する工程であっても、生産性を低下させることなく表面形状を測定できる表面形状測定装置を実現することができる。
【0086】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1a,1b 被測定物体、2A,2B スリット状光光源、3 表面撮像部、10 表面形状測定装置、14 表面座標変換部、15 凹凸形状演算部、17 単列/並列切替部、18 表面座標分割部、19 分割異常判定部、20 表示部、30 分割異常表示部、100 領域、102,102a,102b 画像データ