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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/374 20110101AFI20221108BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H04N5/374
H01L27/146 A
H01L27/146 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019524544
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 IB2018054220
(87)【国際公開番号】W WO2018234925
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2017123266
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池田 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】魚地 秀貴
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/014137(WO,A1)
【文献】特許第4974543(JP,B2)
【文献】特開2011-040839(JP,A)
【文献】国際公開第2016/090044(WO,A1)
【文献】呂 建明 ほか2名,ニューラルネットワークを用いたカラー劣化画像の雑音除去の一方法 ,電子情報通信学会論文誌 ,2003年05月01日,第J86-A巻, 第5号,p. 529~539
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225-5/378
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部と、撮像部と、を有する撮像装置であって、
前記撮像部は複数の画素ユニットを有し、
前記複数の画素ユニットのそれぞれは、複数のサブ画素ユニットを有し、
前記複数のサブ画素ユニットのそれぞれは、偏光素子と、画素と、を有し、
前記偏光素子は、前記画素と重なる領域を有し、
前記複数の画素ユニットのそれぞれが有する、複数の前記偏光素子の偏光角は互いに異なり、
前記偏光素子は、液晶素子であり、
前記液晶素子に印加する電圧を制御することで、前記偏光素子の偏向角を前記サブ画素ユニットごとに調整することができ、
前記偏光素子の偏向角を調整した後、前記画素は前記偏光素子を透過した光を電気信号に変換することにより、第1画像データを取得する機能を有し、
前記演算部は、
前記画素ユニット毎に、前記第1画像データにおいて、最も暗い光を変換した画素の電気信号を第1電気信号として抽出する機能と、
前記画素ユニット毎に抽出した前記第1電気信号を組み合わせることにより、前記第1画像データに含まれる反射光による映り込みを除去または低減した第2画像データを生成する機能と、
ニューラルネットワークによって、前記第2画像データにおいて除去しきれなかった前記反射光による映り込みを除去して、第3画像データを生成する機能と、を有し、
前記第1画像データと前記第2画像データを用いて、前記演算部にて前記偏光素子の偏向角を調整した後、前記画素は前記偏光素子を透過した光を電気信号に変換することにより、第4画像データを取得する機能を有する撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ニューラルネットワークは、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、または深層信念ネットワークである撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、撮像装置および撮像システムに関する。
【0002】
ただし、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されるものではない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本明細書等で開示する発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。
【0003】
より具体的には、本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野の一例として、表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、電子機器、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を挙げることができる。
【0004】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一態様である。また、表示装置、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置および電子機器などは、半導体装置と言える場合がある。もしくは、これらは半導体装置を有すると言える場合がある。
【背景技術】
【0005】
液晶素子と偏光フィルタを組み合わせた光学素子を撮像素子の受光面側に設けて、入射光の偏光軸を所定角度ずつ回転させて複数の画像を取得し、反射光に起因する写りこみを低減する光学装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-40839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、複数の画像を取得する期間中(連続撮像中)に被写体や反射光などの状況が変化すると、反射光の検出精度が低下し、十分な写りこみ除去効果が得られない。よって、特許文献1に記載の方法では撮像間隔の短縮が求められる。しかしながら、従来の撮像方法では、1回の撮像毎にリセット動作と読み出し動作を行う必要があるため、撮像間隔の短縮が難しい。
【0008】
本発明の一態様は、高速動作可能な撮像装置などを提供することを課題の一つとする。または、高速動作可能な撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、優れた画像品位の画像を取得できる撮像装置などを提供することを課題の一つとする。または、優れた画像品位の画像を取得できる撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、撮像された画像の品位が良好な撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、低消費電力の撮像装置などを提供することを課題の一つとする。または、低消費電力の撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、信頼性の高い撮像装置などを提供することを課題の一つとする。または、信頼性の高い撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、新規な撮像装置などを提供することを課題の一つとする。または、新規な撮像システムなどを提供することを課題の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
撮像部にマトリクス状に配置された複数の画素ユニットを設ける。1つの画素ユニットは複数のサブ画素ユニットを有し、1つのサブ画素ユニットは、偏光素子と画素を有する。サブ画素ユニットは、特定の偏光角の光を電気信号に変換する機能を有する。1つの画素ユニットに含まれる複数のサブ画素ユニットは、それぞれが異なる偏光角の光を電気信号に変換する。演算部において、画素ユニット毎に最も暗い光を変換した電気信号を抽出し、画像データを生成する。
【0011】
本発明の一態様は、演算部と、撮像部と、を有する撮像装置であって、撮像部は複数の画素ユニットを有し、複数の画素ユニットのそれぞれは、複数のサブ画素ユニットを有し、複数のサブ画素ユニットのそれぞれは、偏光素子と、画素と、を有し、偏光素子は、画素と重なる領域を有し、複数の画素ユニットのそれぞれが有する複数の偏光素子の偏光角は互いに異なり、画素は偏光素子を透過した光を電気信号に変換する機能を有し、演算部は、ニューラルネットワークによる学習または推論を実行する機能と、画素ユニット毎に、最も暗い光を変換した画素の電気信号を第1電気信号として抽出する機能と、画素ユニット毎に抽出した第1電気信号を組み合わせて画像データを生成する機能と、を有する撮像装置である。
【0012】
また、本発明の別の一態様は、演算部と、撮像部と、を有する撮像装置であって、撮像部は複数の画素ユニットを有し、複数の画素ユニットのそれぞれは、複数のサブ画素ユニットを有し、複数のサブ画素ユニットのそれぞれは、偏光素子と、複数の画素と、を有し、偏光素子は、複数の画素の少なくとも一と重なる領域を有し、複数の画素ユニットのそれぞれが有する複数の偏光素子の偏光角は互いに異なり、画素は偏光素子を透過した光を電気信号に変換する機能を有し、演算部は、ニューラルネットワークによる学習または推論を実行する機能と、画素ユニット毎に、最も暗い光を変換したサブ画素ユニットの電気信号を第1電気信号として抽出する機能と、画素ユニット毎に抽出した第1電気信号を組み合わせて画像データを生成する機能と、を有する撮像装置である。
【0013】
偏光素子として、例えば液晶素子を用いることができる。例えばTNモードで動作する液晶素子を用いることができる。
【0014】
ニューラルネットワークは、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、または深層信念ネットワークなどである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、高速動作可能な撮像装置などを提供することができる。または、高速動作可能な撮像システムなどを提供することができる。または、優れた画像品位の画像を取得できる撮像装置などを提供することができる。または、優れた画像品位の画像を取得できる撮像システムなどを提供することができる。または、撮像された画像の品位が良好な撮像システムなどを提供することができる。または、低消費電力の撮像装置などを提供することができる。または、低消費電力の撮像システムなどを提供することができる。または、信頼性の高い撮像装置などを提供することができる。または、信頼性の高い撮像システムなどを提供することができる。または、新規な撮像装置などを提供することができる。または、新規な撮像システムなどを提供することができる。または、新規な半導体装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】撮像装置と外部機器の構成例を説明する図。
図2】光学素子と撮像素子を説明する図。
図3】画素の構成例を説明する図。
図4】撮像部を説明する図。
図5】撮像部を説明する図。
図6】撮像動作を説明する図。
図7】撮像動作を説明するフローチャート。
図8】撮像動作を説明する図。
図9】ニューラルネットワークの構成例を説明する図。
図10】撮像動作例を説明するフローチャート。
図11】ニューラルネットワークの構成例を説明する図。
図12】ニューラルネットワークの構成例を説明する図。
図13】半導体装置の構成例を説明する図。
図14】メモリセルの構成例を説明する図。
図15】オフセット回路の構成例を説明する図。
図16】半導体装置の動作例を説明するタイミングチャート。
図17】画素回路を説明する図、および撮像の動作を説明するタイミングチャート。
図18】撮像素子のブロック図。
図19】撮像素子の画素の構成を説明する図。
図20】撮像素子の画素の構成を説明する図。
図21】撮像素子の画素の構成を説明する図。
図22】撮像素子の画素の構成を説明する図。
図23】撮像素子の画素の構成を説明する図。
図24】撮像素子を収めたパッケージ、モジュールの斜視図。
図25】電子機器の構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
また、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、発明の理解を容易とするため、省略して示すことがある。
【0019】
特に、上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0020】
本明細書等において、「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において付された序数詞と、特許請求の範囲において付された序数詞が異なる場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0021】
本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって設けられている場合なども含む。
【0022】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0023】
本明細書等においてトランジスタとは、特に断りがない場合、ゲート(ゲート端子、またはゲート電極)、ソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)、およびドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)を含む少なくとも三つの端子を有する素子、または、バックゲート(バックゲート端子、またはバックゲート電極)を含む少なくとも四つの端子を有する素子である。そして、ソースとドレインの間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0024】
また、本明細書等に示すトランジスタは、特に断りがない場合、エンハンスメント型(ノーマリーオフ型)の電界効果トランジスタとする。また、本明細書等に示すトランジスタは、特に断りがない場合、nチャネル型のトランジスタとする。よって、そのしきい値電圧(「Vth」ともいう。)は、特に断りがない場合、0Vよりも大きいものとする。
【0025】
なお、本明細書等において、特に断りがない場合、バックゲートを有するトランジスタのVthとは、バックゲートの電位をソースまたはゲートと同電位としたときのVthをいう。
【0026】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流(「Id」ともいう。)をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ソースを基準とした時のゲートとソースの間の電位差(「ゲート電圧」または「Vg」ともいう。)がしきい値電圧よりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、Vgがしきい値電圧よりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、VgがVthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0027】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0028】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、電位VDDとは、電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、電位VSSとは、電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0030】
また、一般に「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、接地電位(GND)またはソース電位など)との電位差のことを示す場合が多い。また、「電位」は相対的なものであり、基準となる電位によって配線等に与える電位が変化する場合がある。よって「電圧」と「電位」は互いに言い換えることが可能な場合がある。なお、本明細書等では、明示される場合を除き、VSSを基準の電位とする。
【0031】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して設けられている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0032】
また、本明細書等において、「平行」とは、明示されている場合を除き、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、明示されている場合を除き、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」および「直交」とは、明示されている場合を除き、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、明示されている場合を除き、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0033】
なお、本明細書等において、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」(これらの同意語を含む)などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0034】
本明細書等において、ニューラルネットワーク(人工ニューラルネットワーク(ANN)ともいう。)とは、生物の神経回路網を模したモデル全般を指す。一般的には、ニューラルネットワークは、ニューロンを模したユニットが、シナプスを模したユニットを介して、互いに結合された構成となっている。
【0035】
シナプスの結合(ニューロン同士の結合)の強度(重み係数ともいう。)は、ニューラルネットワークに既存の情報を与えることによって、変化させることができる。このように、ニューラルネットワークに既存の情報を与えて、結合強度を決める処理を「学習」と呼ぶ場合がある。
【0036】
また、「学習」を行った(結合強度を定めた)ニューラルネットワークに対して、何らかの情報を与えることにより、その結合強度に基づいて新たな情報を出力することができる。このように、ニューラルネットワークにおいて、与えられた情報と結合強度に基づいて新たな情報を出力する処理を「推論」または「認知」と呼ぶ場合がある。
【0037】
ニューラルネットワークのモデルとしては、例えば、ホップフィールド型、階層型等が挙げられる。特に、多層構造としたニューラルネットワークを「ディープニューラルネットワーク」(DNN)と呼称し、ディープニューラルネットワークによる機械学習を「ディープラーニング」と呼称する。なお、DNNには、全結合ニューラルネットワーク(FC-NN:Full Connected -Neural Network)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)等が含まれる。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の撮像装置100の構造例について、図面を用いて説明する。
【0039】
<撮像装置の構成例>
図1(A)は、撮像装置100の構成例を説明するブロック図である。
【0040】
なお、図1(A)では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることや、一つの機能が複数の構成要素に係わることもありうる。
【0041】
また、図1(A)で例示する撮像装置100の構成は一例であり、全ての構成要素を含む必要はない。撮像装置100は、図1(A)に示す構成要素のうち必要な構成要素を有していればよい。また、図1(A)に示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
【0042】
撮像装置100は、撮像部101、制御部130、演算部140、画像処理部150、記憶部160(memory)、補助記憶部170(Storage)、外部入出力部(Interface)180、および通信部190を有する。なお、撮像装置100はレンズ、ミラー、プリズムなどの光学部材を有してもよい。
【0043】
〔撮像部101〕
撮像部101は、光学素子110および撮像素子120を有する。図1(B)に、撮像部101の構成を説明する斜視図と、撮像部101の一部の正面図を示す。
【0044】
[光学素子110、撮像素子120]
光学素子110は、液晶素子111および偏光フィルタ112を有する。また、光学素子110は、複数の偏光素子115を含む偏光素子アレイ114を有する。偏光素子115は、液晶素子111の一部と偏光フィルタ112の一部を含む。
【0045】
撮像素子120は、受光面に複数の画素125を含む画素アレイ124を有する。偏光素子アレイ114と画素アレイ124は互いに重なる領域を有する。また、偏光素子115と画素125は、互いに重なる領域を有する。
【0046】
光学素子110は、偏光フィルタ112が撮像素子120の受光面と向き合うように設けられる。光学素子110に入射した光501は、一部が偏光素子115を透過して撮像素子120に到達し、画素125により電気信号に変換される。
【0047】
液晶素子111は、液晶素子111に印加された電圧に応じて、光501の偏光軸を回転させる機能を有する。一般に、液晶素子に用いる液晶材料として、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、VA(Vertical Alignment)モードなどの様々な動作モードで動作する材料が知られている。本実施の形態では、液晶素子111に、TNモードで動作する液晶素子を用いる。
【0048】
偏光フィルタ112は、特定の偏光角(偏光軸の方向)の光を透過する機能を有する。また、当該偏光軸の回転角度は、制御部130によって偏光素子115毎に制御することができる。光学素子110は、偏光素子115毎に液晶素子111に印加する電圧を制御することにより、任意の偏光角の光の透過率を偏光素子115毎に調節する機能を有する。
【0049】
なお、光学素子110と撮像素子120については、追って詳細に説明する。
【0050】
〔制御部130〕
制御部130(Controller)は、撮像にかかわる動作を制御する機能を有する。制御部130は、光学素子110および撮像素子120などの動作を制御する。
【0051】
〔演算部140〕
演算部140は、撮像装置全体の動作に関わる演算を行う機能を有し、例えば中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などを用いることができる。
【0052】
また、制御部130または演算部140を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やFPAA(Field Programmable Analog Array)といったPLD(Programmable Logic Device)によって実現してもよい。
【0053】
〔画像処理部150〕
画像処理部150は、画像に関するデータ処理を行う機能を有し、例えば画像処理装置(GPU:Graphics Processing Unit)などを用いることができる。また、画像処理部150は、画像データを生成するためのニューラルネットワーク151(NN)を有する。ニューラルネットワーク151はソフトウェアで構成してもよい。画像処理部150は撮像素子120で取得した映像情報を比較または演算する機能を有する。
【0054】
〔記憶部160〕
記憶部160は、撮像装置100の動作にかかわるプログラムや設定項目を保存する機能を有し、少なくとも一部は書き換え可能なメモリであることが好ましい。例えば、記憶部160は、RAM(Random Access Memory)、などの揮発性メモリや、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを備える構成とすることができる。
【0055】
記憶部160に設けられるRAMとしては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)が用いられ、記憶部160の作業空間として仮想的にメモリ空間が割り当てられ利用される。補助記憶部170に格納されたオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータ等は、実行のためにRAMにロードされる。RAMにロードされたこれらのデータやプログラム、プログラムモジュールは、演算部140に直接アクセスされ、操作される。
【0056】
一方、ROMには書き換えを必要としないBIOS(Basic Input/Output System)やファームウェア等を格納することができる。ROMとしては、マスクROMや、OTPROM(One Time Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等を用いることができる。EPROMとしては、紫外線照射により記憶データの消去を可能とするUV-EPROM(Ultra-Violet Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリなどが挙げられる。
【0057】
〔補助記憶部170〕
補助記憶部170は、撮像した画像等のデータを保存するための記憶装置である。また、ニューラルネットワーク151で使用する教師データなどが格納されている。また、前述したように、補助記憶部170は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータなどを格納することができる。
【0058】
補助記憶部170としては、例えば、フラッシュメモリ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)などの不揮発性の記憶素子が適用された記憶装置、またはDRAM(Dynamic RAM)やSRAM(Static RAM)などの揮発性の記憶素子が適用された記憶装置等を用いてもよい。また例えばハードディスクドライブ(Hard Disc Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)などの記録メディアドライブを用いてもよい。
【0059】
また、例えば、外部入出力部180を介して脱着可能なHDDまたはSSDなどの記憶装置や、フラッシュメモリ、ブルーレイディスク、DVDなどの記録媒体のメディアドライブを補助記憶部170として用いることもできる。なお、補助記憶部170を撮像装置100に内蔵せず、撮像装置100の外部に置かれる記憶装置を補助記憶部170として用いてもよい。その場合、外部入出力部180を介して接続される、または通信部190によって無線通信でデータのやりとりをする構成であってもよい。
【0060】
〔外部入出力部180〕
外部入出力部180は、外部機器と撮像装置100間の、信号の入出力を制御する機能を有する。また、外部入出力部180が有する外部ポートとして、HDMI(登録商標)端子、USB端子、LAN(Local Area Network)接続用端子などを用いてもよい。また、外部入出力部180は、赤外線、可視光、紫外線などを用いた光通信用の送受信機能を有していてもよい。
【0061】
〔通信部190〕
通信部190は、アンテナを介して通信を行うことができる。例えば演算部140からの命令に応じて撮像装置100をコンピュータネットワークに接続するための制御信号を制御し、当該信号をコンピュータネットワークに発信する。これによって、World Wide Web(WWW)の基盤であるインターネット、イントラネット、エクストラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)等のコンピュータネットワークに撮像装置100を接続させ、通信を行うことができる。またその通信方法として複数の方法を用いる場合には、アンテナは当該通信方法に応じて複数有していてもよい。
【0062】
通信部190には、例えば高周波回路(RF回路)を設け、RF信号の送受信を行えばよい。高周波回路は、各国法制により定められた周波数帯域の電磁信号と電気信号とを相互に変換し、当該電磁信号を用いて無線で他の通信機器との間で通信を行うための回路である。実用的な周波数帯域として数10kHz~数10GHzが一般に用いられている。アンテナと接続される高周波回路には、複数の周波数帯域に対応した高周波回路部を有し、高周波回路部は、増幅器(アンプ)、ミキサ、フィルタ、DSP(Digital Signal Processor)、RFトランシーバ等を有する構成とすることができる。無線通信を行う場合、通信プロトコルまたは通信技術として、LTE(Long Term Evolution)、GSM(Global System for Mobile Communication:登録商標)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)、CDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access:登録商標)などの通信規格、またはWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等のIEEEにより通信規格化された仕様を用いることができる。
【0063】
〔光学素子110、撮像素子120〕
図2(A)に光学素子110の正面図を示す。前述した様に、光学素子110は複数の偏光素子115を含む偏光素子アレイ114を有する。複数の偏光素子115は、m行n列(mおよびnは、どちらも2以上の整数。)のマトリクス状に配置されている。
【0064】
本明細書等において、1行1列目の偏光素子115を偏光素子115[1,1]と示し、m行n列目の偏光素子115を偏光素子115[m,n]と示す。また、i行j列目(iは1以上m以下の整数。jは1以上n以下の整数。)の偏光素子115を偏光素子115[i,j]と示す。また、全ての偏光素子115に共通する説明を行なう場合は、単に「偏光素子115」と示す場合がある。
【0065】
図2(B)に撮像素子120の正面(受光面)図を示す。前述した様に、撮像素子120は受光面に複数の画素125を含む画素アレイ124を有する。複数の画素125は、x行y列(xおよびyは、どちらも2以上の整数。)のマトリクス状に配置されている。
【0066】
本明細書等において、1行1列目の画素125を画素125[1,1]と示し、x行y列目の画素125を画素125[x,y]と示す。また、s行t列目(sは、1以上x以下の整数。tは、1以上y以下の整数。)の画素125を画素125[s,t]と示す。また、全ての画素125に共通する説明を行なう場合は、単に「画素125」と示す場合がある。
【0067】
なお、画素125に、副画素として機能する複数の画素126を設けてもよい。複数の画素126それぞれに異なる波長域の光を透過するフィルタ(カラーフィルタ)を設けることで、カラー画像表示を実現するための情報を取得することができる。
【0068】
図3(A)は、カラー画像を取得するための画素125の一例を示す平面図である。図3(A)に示す画素125は、赤(R)の波長域の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126(以下、「画素126R」ともいう)、緑(G)の波長域の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126(以下、「画素126G」ともいう)及び青(B)の波長域の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126(以下、「画素126B」ともいう)を有する。画素126R、画素126G、画素126Bをまとめて一つの画素125として機能させる。
【0069】
なお、画素126に用いるカラーフィルタは、赤(R)、緑(G)、青(B)に限定されず、図3(B)に示すように、シアン(C)、黄(Y)及びマゼンタ(M)の光を透過するカラーフィルタを用いてもよい。1つの画素125に3種類の異なる波長域の光を検出する画素126を設けることで、フルカラー画像を取得することができる。
【0070】
図3(C)は、それぞれ赤(R)、緑(G)及び青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126に加えて、黄(Y)の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126を有する画素125を例示している。図3(D)は、それぞれシアン(C)、黄(Y)及びマゼンタ(M)の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126に加えて、青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた画素126を有する画素125を例示している。1つの画素125に4種類の異なる波長域の光を検出する画素126を設けることで、取得した画像の色の再現性をさらに高めることができる。
【0071】
また、例えば、画素126R、画素126G、および画素126Bの画素数比(または受光面積比)は、必ずしも1:1:1である必要は無い。図3(E)に示すように、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:2:1とするBayer配置としてもよい。また、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:6:1としてもよい。
【0072】
なお、画素125に設ける画素126は1つでもよいが、2つ以上が好ましい。例えば、同じ波長域の光を検出する画素126を2つ以上設けることで、冗長性を高め、撮像装置100の信頼性を高めることができる。
【0073】
[画素ユニット]
図4(A)および図4(B)は、撮像部101の一部を拡大した正面図である。撮像部101は、複数の画素ユニット128を有する。また、1つの画素ユニット128には、複数のサブ画素ユニット129が含まれる。
【0074】
図4(A)および図4(B)に示す撮像部101では、1つの偏光素子115と1つの画素125が互いに重なる領域を有する。言い換えると、図4(A)および図4(B)に示す撮像部101では、偏光素子115[i,j]と画素125[s,t]が互いに重なる領域を有する。例えば、mとxが同数で、nとyが同数の場合、iとsが等しく、jとtが等しくなる。
【0075】
互いに重なる領域を有する偏光素子115と画素125が、サブ画素ユニット129として機能する。図4(A)および図4(B)では、1つのサブ画素ユニット129が、1つの偏光素子115と1つの画素125により構成される場合を示している。サブ画素ユニット129は、入射光に含まれる特定の偏光軸の光を、該光の光量(明るさ)に応じた電気信号に変換する機能を有する。
【0076】
1つのサブ画素ユニット129に含まれる偏光素子115と画素125の比は、1:1に限定されない。サブ画素ユニット129に含まれる偏光素子115と画素125の比は、1:2でもよいし、1:3でもよい。例えば、図5(A)および図5(B)に示すように、1つのサブ画素ユニット129を、1つの偏光素子115と4つの画素125で構成してもよい。サブ画素ユニット129に含まれる画素125を増やすことで、サブ画素ユニット129の光感度を高めることができる。また、サブ画素ユニット129のダイナミックレンジを高めることができる。
【0077】
図4(A)および図5(A)では、1つの画素ユニット128が、4つのサブ画素ユニット129により構成される例を示している。この場合、撮像部101に含まれる画素ユニット128の個数は、m×n÷4個以下になる。また、図4(B)および図5(B)では、1つの画素ユニット128が、3つのサブ画素ユニット129により構成される例を示している。この場合、撮像部101に含まれる画素ユニット128の個数は、m×n÷3個以下になる。
【0078】
また、図4(A)および図5(A)では、1つの画素ユニット128で、同時に4つの異なる偏光角の光を、それぞれに対応する4つの電気信号に変換することができる。すなわち、4つの異なる偏光角での撮像を1回で行なうことができる。また、図4(B)および図5(B)では、1つの画素ユニット128で、同時に3つの異なる偏光角の光を、それぞれに対応する3つの電気信号に変換することができる。すなわち、3つの異なる偏光角での撮像を1回で行なうことができる。
【0079】
2つの異なる偏光角で撮像を行なう場合は、1つの画素ユニット128に2つのサブ画素ユニット129を設ける構成とすればよい。5つ以上の異なる偏光角で撮像を行なう場合も上記と同様に考えればよい。なお、1つの偏光角で撮像を行なう場合は、1つの画素ユニット128に1つのサブ画素ユニット129を設ける構成とすればよい。
【0080】
1つの画素ユニット128に複数のサブ画素ユニット129が含まれる場合、当該複数のサブ画素ユニット129の配列は、マトリクス状の配列に限定されない。例えば、直線状であってもよいし、L字状であってもよい。例えば、図4(C)、(D)、および(E)のように配列してもよい。1つの画素ユニット128に含まれるサブ画素ユニット129の数および配置などは、制御部130によって任意に設定することができる。1つの画素ユニット128に含まれるサブ画素ユニット129の数および配置などを撮像毎に変更することも可能である。
【0081】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0082】
(実施の形態2)
本実施の形態では、撮像装置100の動作例について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、図4(A)のように、1つの画素ユニット128が4つのサブ画素ユニット129を有する場合について説明する。本発明の一態様の撮像装置100は、効率よく反射光に起因する写りこみを低減することができる。
【0083】
<撮像装置の撮像動作例>
図6(A)および(B)は、撮像部101が有する光学素子110と撮像素子120の動作を説明する図である。図6(B)は1つの画素ユニット128の拡大図である。本実施の形態などでは、1つの画素ユニット128に含まれる4つのサブ画素ユニット129を、サブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]と示す場合がある。また、図6(A)では、光学素子110を介して撮像素子120に入射する像を、光501として示している。図7は撮像装置100の撮像動作例を説明するフローチャートである。
【0084】
まず、撮像素子120のリセット動作を行なう(ステップS600)。
【0085】
次に、液晶素子111に所定の電圧を印加し、サブ画素ユニット129毎に光学素子110を透過できる光の偏光軸の角度(「偏光角」ともいう。)を決定する(ステップS605)。この時、サブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]でそれぞれ異なる偏光角を設定する。本実施の形態などでは、サブ画素ユニット129[1]の偏光角を第1偏光角θ1、サブ画素ユニット129[2]の偏光角を第2偏光角θ2、サブ画素ユニット129[3]の偏光角を第3偏光角θ3、サブ画素ユニット129[4]の偏光角を第4偏光角θ4とする(図6(B)参照。)。
【0086】
第1偏光角θ1を基準としたとき、第1偏光角θ1と、第2偏光角θ2乃至第4偏光角θ4それぞれの相対角度は、0°より大きく、180°より小さい角度に設定する。例えば、第1偏光角θ1を0°とすると、第2偏光角θ2を45°、第3偏光角θ3を90°、第4偏光角θ4を135°とすればよい。
【0087】
次に、光学素子110を介して入射した像を撮像素子120で撮像する(ステップS610)。この時得られた画像データを「第1画像データ」という。画像データは、撮像素子120で得られた電気信号の集合体といえる。
【0088】
次に、第1画像データを読み出す(ステップS615)。読み出した画像データは記憶部160に記憶される(ステップS620)。
【0089】
次に、画像処理部150で、第1画像データに含まれるサブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]の明るさを、画素ユニット128毎に比較する(ステップS625)。
【0090】
次に、サブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]の中から最も暗い像を撮像したサブ画素ユニット129の電気信号を、画素ユニット128毎に抽出する(ステップS630)。
【0091】
ステップS630で抽出した画素ユニット128毎の電気信号を組み合わせて、第2画像データを生成する(ステップS635)。
【0092】
ここで、図8(A1)乃至(D1)および図8(A2)乃至(D2)を用いて、撮像装置100による写り込み除去の原理について説明しておく。光501には、本来の撮影目的である被写体の情報と、不要な写り込みの原因となる反射光の情報が含まれている。光は例えば大気とガラスの境界面などで反射すると、反射面に平行な偏光成分(P波)が弱まり、反射面に垂直な偏光成分(S波)が強くなる。前述した通り、光学素子110は、液晶素子111に印加する電圧を制御することにより、任意の偏光角の光の透過率を調節する機能を有する。特に、反射光は特定の偏光成分が強い。反射光は、光学素子110により透過率が制御されやすい。
【0093】
一方で、光501に含まれる反射光の偏光軸は一方向とは限らない。反射光の偏光角は反射面の角度によって変わる。よって、複数の反射光が被写体の異なる場所で反射している場合、それぞれの偏光角は異なる場合が多い。
【0094】
図8(A1)乃至(D1)および図8(A2)乃至(D2)では、被写体701の異なる場所に、不要な3つの像(像702A、像702B、および像702C)が写り込んでいる例を示している。
【0095】
図8(A1)および(A2)は、第1偏光角θ1のサブ画素ユニット129[1]では、像702A、像702B、および像702Cとも消去できていない様子を示している。図8(B1)および(B2)は、第2偏光角θ2のサブ画素ユニット129[2]では、像702Aが消去されているが、像702Bおよび像702Cは消去できていない様子を示している。図8(C1)および(C2)では、第3偏光角θ3のサブ画素ユニット129[3]では、像702Bが消去されているが、像702Aおよび像702Cは消去できていない様子を示している。図8(D1)および(D2)では、第4偏光角θ4のサブ画素ユニット129[4]では、像702Cが消去されているが、像702Aおよび像702Bは消去できていない様子を示している。
【0096】
このように、設定する偏光角によって消去される反射光が異なる。また、反射光が消去された像は、消去されていない像よりも暗い像となる。画素ユニット128毎に最も暗い像を撮像したサブ画素ユニット129の電気信号を抽出して組み合わせることで、第1画像データに含まれる反射光が消去または低減された第2画像データを生成することができる。
【0097】
また、本発明の一態様の撮像装置は、液晶素子111に印加する電圧を制御することで、様々な角度の偏光軸で入射する反射光を効率よく低減することができる。
【0098】
例えば、光学素子110がサブ画素ユニット129を有さず、単一の偏光角のみ設定が可能である場合、偏光角を変える度に読み出し動作とリセット動作を行なう必要がある。この場合、撮像間隔が長くなるため、偏光角を変えて撮像している間に被写体や反射光などの状況が変化し、反射光が少ない像の検出精度が低下する。偏光角を変える度に読み出し動作とリセット動作を行なう必要があるため、高速動作が難しい。
【0099】
本発明の一態様の撮像装置は、異なる偏光角での撮像を同時に行なうことができる。よって、反射光が少ない像を精度よく検出することができる。本発明の一態様の撮像装置によれば、反射光による不要な写りこみ像を、一回の撮像により除去または軽減し、優れた画像品位の画像を取得することができる。
【0100】
また、必要に応じて画像処理部150が有するニューラルネットワーク151を用いて撮像画像の補正処理を行い、撮像画像の画質を改善することができる。
【0101】
ニューラルネットワークは、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、または深層信念ネットワークである。
【0102】
まず、ユーザーの判断または事前設定により補正処理を行なうか否かを判断し(ステップS640)、行なわない場合は、ステップS635で生成された第2画像データを補助記憶部170に記憶する(ステップS650)。
【0103】
補正処理を行なう場合は、ニューラルネットワーク151で補正処理を行なう(ステップS645)。ニューラルネットワーク151は、例えば、除去しきれなかった反射光による映り込みを除去し、新たな画像データを生成する機能を有する。
【0104】
補正処理を行なうためのニューラルネットワーク151に設定する重み係数は、補助記憶部170に格納されている教師データを用いて決定される。
【0105】
ここで、ニューラルネットワーク151の構成例を説明しておく(図9参照。)。ニューラルネットワーク151は、入力層ILと、中間層HL1(隠れ層)と、中間層HL2(隠れ層)と、出力層OLと、を有する。ニューラルネットワーク151では、入力層IL、中間層HL1、中間層HL2、および出力層OLと、によって階層型のニューラルネットワークが構成されている。中間層HL1および中間層HL2は、任意のノード数を有する。なお、中間層は2層に限らない。中間層は1層でもよく、3層以上でもよい。
【0106】
第2画像データ302は、入力層ILに入力され、重みづけされた情報が中間層HL1に入力される。また、中間層HL1に入力された情報は、重みづけされて中間層HL2に入力される。また、中間層HL2に入力された情報は、重みづけされて出力層OLに入力される。また、出力層OLからは、第3画像データ303が出力される。
【0107】
ニューラルネットワーク151は、階層が進む毎に、ニューロンの数が増加する構成とする。つまり、中間層HL1が有するニューロンの数は、入力層ILが有するニューロンの数より多く、かつ中間層HL2が有するニューロンの数は、中間層HL1が有するニューロンの数より多くなっている。また、出力層OLが有するニューロンの数は、中間層HL2が有するニューロンの数より多くなっている。なお、図9では、上記ニューロンの数を、それぞれの階層をつなぐ矢印の数で示している。ニューラルネットワーク151を階層が進む毎にニューロンの数が増加する構成とすることにより、第1画像データ301および第2画像データ302を基にして、解像度を高めた第3画像データ303を生成することができる。また、第1画像データ301および第2画像データ302を基にして、階調数を高めた第3画像データ303を生成することができる。
【0108】
階層型のニューラルネットワークは、各層間で全結合とすることもでき、または、各層間で部分結合とすることができる。また、各層間に畳み込み層やプーリング層を用いた構成、すなわちCNNとすることができる。
【0109】
また、ニューラルネットワーク151に用いる重み係数は、外部機器(図示せず)により決定された重み係数を用いてもよい。例えば、撮像装置100と外部機器を、外部入出力部180を介して接続し、外部機器のニューラルネットワークで決定した重み係数をニューラルネットワーク151に格納する。したがって、学習済みのニューラルネットワークと同じ動作をニューラルネットワーク151で行なうことができる。
【0110】
例えば、撮像装置100の工場出荷前に、外部機器で学習した後に決定された重み係数を撮像装置100に格納することで、ユーザーによる学習作業を不要とすることができる。
【0111】
また、外部機器による学習を継続して行い、アップデートされた重み係数を撮像装置100に格納してもよい。また、複数の外部機器を用いて、アップデート用の重み係数を生成してもよい。重み係数の受け渡しは、SDカードなどの記録媒体や各種の通信手段などを介して行なうこともできる。また、撮像装置100が有する重み係数と、外部機器によりアップデートされた重み係数を用いて、新たな重み係数を決定してもよい。また、他の撮像装置100が有する重み係数を用いて、新たな重み係数を決定してもよい。他の撮像装置100や外部機器で学習して得た重み係数を用いることで、より精度の高い補完処理を行なうことができる。
【0112】
ニューラルネットワーク151により生成された第3画像データ303は、補助記憶部170に記憶される(ステップS650)。
【0113】
また、第1画像データと第2画像データを用いて、演算部140で改めてサブ画素ユニット129の偏光角を決定し、再度撮像動作を行なってもよい。例えば、第1偏光角θ1を0°のままとし、第2偏光角θ2を15°、第3偏光角θ3を30°、第4偏光角θ4を60°に再設定し、再度撮像動作を行なってもよい。偏光角の修正と撮像動作を繰り返すことで、より良好な画像品位の画像を取得することができる。
【0114】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0115】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と異なる撮像装置100の動作例について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、実施の形態2と同様に、1つの画素ユニット128が4つのサブ画素ユニット129を有する場合について説明する。なお、説明の繰り返しを減らすため、主に実施の形態2と異なる部分について説明する。
【0116】
<撮像装置の撮像動作例>
図10は撮像装置100の撮像動作例を説明するフローチャートである。ステップS600からステップS625までは、実施の形態2と同様に行なえばよい。ステップS625で、第1画像データに含まれるサブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]の明るさを画素ユニット128毎に比較した後、それぞれの画素ユニット128に、含まれるサブ画素ユニット129に暗さの順位付けをおこなう(S631)。例えば、サブ画素ユニット129[1]乃至サブ画素ユニット129[4]のうち、最も暗い像を撮像したサブ画素ユニット129にD1を付与し、最も明るい像を撮像したサブ画素ユニット129にD4を付与する。
【0117】
次に、D1が付与された全てのサブ画素ユニット129の電気信号を組み合わせて、第2画像データD1を生成する。また、D2が付与された全てのサブ画素ユニット129の電気信号を組み合わせて、第2画像データD2を生成する。また、D3が付与された全てのサブ画素ユニット129の電気信号を組み合わせて、第2画像データD3を生成する。また、D4が付与された全てのサブ画素ユニット129の電気信号を組み合わせて、第2画像データD4を生成する(S636)。
【0118】
よって、第2画像データD1乃至D4のうち、第2画像データD1が最も暗い(平均輝度が最も小さい)画像データであり、第2画像データD4が最も明るい(平均輝度が最も大きい)画像データである。
【0119】
次に、ニューラルネットワーク151で補正処理を行なう(ステップS645)。
【0120】
1つの画素ユニット128に含まれるサブ画素ユニット129の数を増やすと、検出可能な偏光角の数を増やすことができる。すなわち、反射光の検出精度を高めることができる。その一方で、1画素ユニット128当たりのサブ画素ユニット129数が増加すると、撮像装置100の解像度が低下する。
【0121】
本実施の形態では、第2画像データD1を基準として、第2画像データD2乃至第2画像データD4も加えて重み係数を決定する。実施の形態2で説明したように、教師データのみで決定された重み係数を用いて補正処理を行なうことも可能である。重み係数の決定に、教師データのみでなく第2画像データD2乃至第2画像データD4も加えることで、低下した解像度を補正し、高精度な画像データの生成を行なうことができる。すなわち、ニューラルネットワーク151による補正処理に第2画像データD1以外の画像データも用いることで、補正処理の精度を高め、画質の良好な画像データを生成することができる。
【0122】
ニューラルネットワーク151の構成例を図11に示す。本実施の形態の場合、第2画像データD1乃至第2画像データD4がニューラルネットワーク151の入力層ILに入力され、中間層を経て、出力層OLから第3画像データ303として出力される。
【0123】
ニューラルネットワーク151により生成された第3画像データ303は、補助記憶部170に記憶される(ステップS650)。
【0124】
また、第1画像データと第2画像データD1乃至第2画像データD4を用いて、演算部140で改めてサブ画素ユニット129の偏光角を決定し、再度撮像動作を行なってもよい。偏光角の修正と撮像動作を繰り返すことで、より良好な画像品位の画像を再現可能な画像データを取得することができる。
【0125】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0126】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したニューラルネットワークに用いることが可能な半導体装置の構成例について説明する。
【0127】
図12(A)に示すように、ニューラルネットワークNNは入力層IL、出力層OL、中間層(隠れ層)HLによって構成することができる。入力層IL、出力層OL、中間層HLはそれぞれ、1又は複数のニューロン(ユニット)を有する。なお、中間層HLは1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の中間層HLを有するニューラルネットワークはDNN(ディープニューラルネットワーク)と呼ぶこともでき、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習と呼ぶこともできる。
【0128】
入力層ILの各ニューロンには入力データが入力され、中間層HLの各ニューロンには前層又は後層のニューロンの出力信号が入力され、出力層OLの各ニューロンには前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
【0129】
図12(B)に、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロンNと、ニューロンNに信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロンNには、前層のニューロンの出力xと、前層のニューロンの出力xが入力される。そして、ニューロンNにおいて、出力xと重みwの乗算結果(x)と出力xと重みwの乗算結果(x)の総和x+xが計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x+x+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロンNから出力信号y=h(a)が出力される。
【0130】
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる(上記のx+x)。この積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよいし、ハードウェアによって行われてもよい。積和演算をハードウェアによって行う場合は、積和演算回路を用いることができる。この積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。積和演算回路にアナログ回路を用いる場合、積和演算回路の回路規模の縮小、又は、メモリへのアクセス回数の減少による処理速度の向上及び消費電力の低減を図ることができる。
【0131】
積和演算回路は、チャネル形成領域にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(「Siトランジスタ」ともいう)によって構成してもよいし、チャネル形成領域に金属酸化物の一種である酸化物半導体を含むトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう)によって構成してもよい。特に、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、積和演算回路のメモリを構成するトランジスタとして好適である。なお、SiトランジスタとOSトランジスタの両方を用いて積和演算回路を構成してもよい。以下、積和演算回路の機能を備えた半導体装置の構成例について説明する。
【0132】
<半導体装置の構成例>
図13に、ニューラルネットワークの演算を行う機能を有する半導体装置MACの構成例を示す。半導体装置MACは、ニューロン間の結合強度(重み)に対応する第1のデータと、入力データに対応する第2のデータの積和演算を行う機能を有する。なお、第1のデータ及び第2のデータはそれぞれ、アナログデータ又は多値のデジタルデータ(離散的なデータ)とすることができる。また、半導体装置MACは、積和演算によって得られたデータを活性化関数によって変換する機能を有する。
【0133】
半導体装置MACは、セルアレイCA、電流源回路CS、カレントミラー回路CM、回路WDD、回路WLD、回路CLD、オフセット回路OFST、及び活性化関数回路ACTVを有する。
【0134】
セルアレイCAは、複数のメモリセルMC及び複数のメモリセルMCrefを有する。図13には、セルアレイCAがm行n列(m,nは1以上の整数)のメモリセルMC(MC[1,1]乃至[m,n])と、m個のメモリセルMCref(MCref[1]乃至[m])を有する構成例を示している。メモリセルMCは、第1のデータを格納する機能を有する。また、メモリセルMCrefは、積和演算に用いられる参照データを格納する機能を有する。なお、参照データはアナログデータ又は多値のデジタルデータとすることができる。
【0135】
メモリセルMC[i,j](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WD[j]、及び配線BL[j]と接続されている。また、メモリセルMCref[i]は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WDref、配線BLrefと接続されている。ここで、メモリセルMC[i,j]と配線BL[j]間を流れる電流をIMC[i,j]と表記し、メモリセルMCref[i]と配線BLref間を流れる電流をIMCref[i]と表記する。
【0136】
メモリセルMC及びメモリセルMCrefの具体的な構成例を、図14に示す。図14には代表例としてメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]を示しているが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefにも同様の構成を用いることができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefはそれぞれ、トランジスタTr11、Tr12、容量素子C11を有する。ここでは、トランジスタTr11及びトランジスタTr12がnチャネル型のトランジスタである場合について説明する。
【0137】
メモリセルMCにおいて、トランジスタTr11のゲートは配線WLと接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続され、ソース又はドレインの他方は配線WDと接続されている。トランジスタTr12のソース又はドレインの一方は配線BLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線VRと接続されている。容量素子C11の第2の電極は、配線RWと接続されている。配線VRは、所定の電位を供給する機能を有する配線である。ここでは一例として、配線VRから低電源電位(接地電位など)が供給される場合について説明する。
【0138】
トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、ノードNMとする。また、メモリセルMC[1,1]、[2,1]のノードNMを、それぞれノードNM[1,1]、[2,1]と表記する。
【0139】
メモリセルMCrefも、メモリセルMCと同様の構成を有する。ただし、メモリセルMCrefは配線WDの代わりに配線WDrefと接続され、配線BLの代わりに配線BLrefと接続されている。また、メモリセルMCref[1]、[2]において、トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、それぞれノードNMref[1]、[2]と表記する。
【0140】
ノードNMとノードNMrefはそれぞれ、メモリセルMCとメモリセルMCrefの保持ノードとして機能する。ノードNMには第1のデータが保持され、ノードNMrefには参照データが保持される。また、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMC[1,1]、IMC[2,1]が流れる。また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]、[2]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMCref[1]、IMCref[2]が流れる。
【0141】
トランジスタTr11は、ノードNM又はノードNMrefの電位を保持する機能を有するため、トランジスタTr11のオフ電流は小さいことが好ましい。そのため、トランジスタTr11としてオフ電流が極めて小さいOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、ノードNM又はノードNMrefの電位の変動を抑えることができ、演算精度の向上を図ることができる。また、ノードNM又はノードNMrefの電位をリフレッシュする動作の頻度を低く抑えることが可能となり、消費電力を削減することができる。
【0142】
トランジスタTr12は特に限定されず、例えばSiトランジスタ又はOSトランジスタなどを用いることができる。トランジスタTr12にOSトランジスタを用いる場合、トランジスタTr11と同じ製造装置を用いて、トランジスタTr12を作製することが可能となり、製造コストを抑制することができる。なお、トランジスタTr12はnチャネル型であってもpチャネル型であってもよい。
【0143】
電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefと接続されている。電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefに電流を供給する機能を有する。なお、配線BL[1]乃至[n]に供給される電流値と配線BLrefに供給される電流値は異なっていてもよい。ここでは、電流源回路CSから配線BL[1]乃至[n]に供給される電流をI、電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICrefと表記する。
【0144】
カレントミラー回路CMは、配線IL[1]乃至[n]及び配線ILrefを有する。配線IL[1]乃至[n]はそれぞれ配線BL[1]乃至[n]と接続され、配線ILrefは、配線BLrefと接続されている。ここでは、配線IL[1]乃至[n]と配線BL[1]乃至[n]の接続箇所をノードNP[1]乃至[n]と表記する。また、配線ILrefと配線BLrefの接続箇所をノードNPrefと表記する。
【0145】
カレントミラー回路CMは、ノードNPrefの電位に応じた電流ICMを配線ILrefに流す機能と、この電流ICMを配線IL[1]乃至[n]にも流す機能を有する。図13には、配線BLrefから配線ILrefに電流ICMが排出され、配線BL[1]乃至[n]から配線IL[1]乃至[n]に電流ICMが排出される例を示している。また、カレントミラー回路CMから配線BL[1]乃至[n]を介してセルアレイCAに流れる電流を、I[1]乃至[n]と表記する。また、カレントミラー回路CMから配線BLrefを介してセルアレイCAに流れる電流を、IBrefと表記する。
【0146】
回路WDDは、配線WD[1]乃至[n]及び配線WDrefと接続されている。回路WDDは、メモリセルMCに格納される第1のデータに対応する電位を、配線WD[1]乃至[n]に供給する機能を有する。また、回路WDDは、メモリセルMCrefに格納される参照データに対応する電位を、配線WDrefに供給する機能を有する。回路WLDは、配線WL[1]乃至[m]と接続されている。回路WLDは、データの書き込みを行うメモリセルMC又はメモリセルMCrefを選択するための信号を、配線WL[1]乃至[m]に供給する機能を有する。回路CLDは、配線RW[1]乃至[m]と接続されている。回路CLDは、第2のデータに対応する電位を、配線RW[1]乃至[m]に供給する機能を有する。
【0147】
オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]及び配線OL[1]乃至[n]と接続されている。オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流量、及び/又は、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流の変化量を検出する機能を有する。また、オフセット回路OFSTは、検出結果を配線OL[1]乃至[n]に出力する機能を有する。なお、オフセット回路OFSTは、検出結果に対応する電流を配線OLに出力してもよいし、検出結果に対応する電流を電圧に変換して配線OLに出力してもよい。セルアレイCAとオフセット回路OFSTの間を流れる電流を、Iα[1]乃至[n]と表記する。
【0148】
オフセット回路OFSTの構成例を図15に示す。図15に示すオフセット回路OFSTは、回路OC[1]乃至[n]を有する。また、回路OC[1]乃至[n]はそれぞれ、トランジスタTr21、トランジスタTr22、トランジスタTr23、容量素子C21、及び抵抗素子R1を有する。各素子の接続関係は図15に示す通りである。なお、容量素子C21の第1の電極及び抵抗素子R1の第1の端子と接続されたノードを、ノードNaとする。また、容量素子C21の第2の電極、トランジスタTr21のソース又はドレインの一方、及びトランジスタTr22のゲートと接続されたノードを、ノードNbとする。
【0149】
配線VrefLは電位Vrefを供給する機能を有し、配線VaLは電位Vaを供給する機能を有し、配線VbLは電位Vbを供給する機能を有する。また、配線VDDLは電位VDDを供給する機能を有し、配線VSSLは電位VSSを供給する機能を有する。ここでは、電位VDDが高電源電位であり、電位VSSが低電源電位である場合について説明する。また、配線RSTは、トランジスタTr21の導通状態を制御するための電位を供給する機能を有する。トランジスタTr22、トランジスタTr23、配線VDDL、配線VSSL、及び配線VbLによって、ソースフォロワ回路が構成される。
【0150】
次に、回路OC[1]乃至[n]の動作例を説明する。なお、ここでは代表例として回路OC[1]の動作例を説明するが、回路OC[2]乃至[n]も同様に動作させることができる。まず、配線BL[1]に第1の電流が流れると、ノードNaの電位は、第1の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位となる。また、このときトランジスタTr21はオン状態であり、ノードNbに電位Vaが供給される。その後、トランジスタTr21はオフ状態となる。
【0151】
次に、配線BL[1]に第2の電流が流れると、ノードNaの電位は、第2の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位に変化する。このときトランジスタTr21はオフ状態であり、ノードNbはフローティング状態となっているため、ノードNaの電位の変化に伴い、ノードNbの電位は容量結合により変化する。ここで、ノードNaの電位の変化をΔVNaとし、容量結合係数を1とすると、ノードNbの電位はVa+ΔVNaとなる。そして、トランジスタTr22のしきい値電圧をVthとすると、配線OL[1]から電位Va+ΔVNa-Vthが出力される。ここで、Va=Vthとすることにより、配線OL[1]から電位ΔVNaを出力することができる。
【0152】
電位ΔVNaは、第1の電流から第2の電流への変化量、抵抗素子R1、及び電位Vrefに応じて定まる。ここで、抵抗素子R1と電位Vrefは既知であるため、電位ΔVNaから配線BLに流れる電流の変化量を求めることができる。
【0153】
上記のようにオフセット回路OFSTによって検出された電流量、及び/又は電流の変化量に対応する信号は、配線OL[1]乃至[n]を介して活性化関数回路ACTVに入力される。
【0154】
活性化関数回路ACTVは、配線OL[1]乃至[n]、及び、配線NIL[1]乃至[n]と接続されている。活性化関数回路ACTVは、オフセット回路OFSTから入力された信号を、あらかじめ定義された活性化関数に従って変換するための演算を行う機能を有する。活性化関数としては、例えば、シグモイド関数、tanh関数、softmax関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができる。活性化関数回路ACTVによって変換された信号は、出力データとして配線NIL[1]乃至[n]に出力される。
【0155】
<半導体装置の動作例>
上記の半導体装置MACを用いて、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。以下、積和演算を行う際の半導体装置MACの動作例を説明する。
【0156】
図16に半導体装置MACの動作例のタイミングチャートを示す。図16には、図14における配線WL[1]、配線WL[2]、配線WD[1]、配線WDref、ノードNM[1,1]、ノードNM[2,1]、ノードNMref[1]、ノードNMref[2]、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位の推移と、電流I[1]-Iα[1]、及び電流IBrefの値の推移を示している。電流I[1]-Iα[1]は、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]に流れる電流の総和に相当する。
【0157】
なお、ここでは代表例として図14に示すメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目して動作を説明するが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefも同様に動作させることができる。
【0158】
[第1のデータの格納]
まず、時刻T01-T02において、配線WL[1]の電位がハイレベルとなり、配線WD[1]の電位が接地電位(GND)よりもVPR-VW[1,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。また、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位が基準電位(REFP)となる。なお、電位VW[1,1]はメモリセルMC[1,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。また、電位VPRは参照データに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[1,1]の電位がVPR-VW[1,1]、ノードNMref[1]の電位がVPRとなる。
【0159】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],0は、次の式で表すことができる。ここで、kはトランジスタTr12のチャネル長、チャネル幅、移動度、及びゲート絶縁膜の容量などで決まる定数である。また、VthはトランジスタTr12のしきい値電圧である。
【0160】
【0161】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],0は、次の式で表すことができる。
【0162】
【0163】
次に、時刻T02-T03において、配線WL[1]の電位がローレベルとなる。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位が保持される。
【0164】
なお、前述の通り、トランジスタTr11としてOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、トランジスタTr11のリーク電流を抑えることができ、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位を正確に保持することができる。
【0165】
次に、時刻T03-T04において、配線WL[2]の電位がハイレベルとなり、配線WD[1]の電位が接地電位よりもVPR-VW[2,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。なお、電位VW[2,1]はメモリセルMC[2,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[2,1]の電位がVPR-VW[2,1]、ノードNMref[2]の電位がVPRとなる。
【0166】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],0は、次の式で表すことができる。
【0167】
【0168】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],0は、次の式で表すことができる。
【0169】
【0170】
次に、時刻T04-T05において、配線WL[2]の電位がローレベルとなる。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位が保持される。
【0171】
以上の動作により、メモリセルMC[1,1]、[2,1]に第1のデータが格納され、メモリセルMCref[1]、[2]に参照データが格納される。
【0172】
ここで、時刻T04-T05において、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流を考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流が供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICref、配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,0とすると、次の式が成り立つ。
【0173】
【0174】
配線BL[1]には、電流源回路CSからの電流が供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。また、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに電流が流れる。電流源回路CSから配線BL[1]に供給される電流をIC,0、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,0とすると、次の式が成り立つ。
【0175】
【0176】
[第1のデータと第2のデータの積和演算]
次に、時刻T05-T06において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となる。このとき、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11には電位VX[1]が供給され、容量結合によりトランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。なお、電位VX[1]はメモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]に供給される第2のデータに対応する電位である。
【0177】
トランジスタTr12のゲートの電位の変化量は、配線RWの電位の変化量に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた値となる。容量結合係数は、容量素子C11の容量、トランジスタTr12のゲート容量、及び寄生容量などによって算出される。以下では便宜上、配線RWの電位の変化量とトランジスタTr12のゲートの電位の変化量が同じ、すなわち容量結合係数が1であるとして説明する。実際には、容量結合係数を考慮して電位Vを決定すればよい。
【0178】
メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]の容量素子C11に電位VX[1]が供給されると、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。
【0179】
ここで、時刻T05-T06において、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],1は、次の式で表すことができる。
【0180】
【0181】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[1,1]=IMC[1,1],1-IMC[1,1],0増加する。
【0182】
また、時刻T05-T06において、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],1は、次の式で表すことができる。
【0183】
【0184】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[1]=IMCref[1],1-IMCref[1],0増加する。
【0185】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,1とすると、次の式が成り立つ。
【0186】
【0187】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流Iが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,1とすると、次の式が成り立つ。
【0188】
【0189】
そして、式(E1)乃至式(E10)から、電流Iα,0と電流Iα,1の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0190】
【0191】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]とVX[1]の積に応じた値となる。
【0192】
その後、時刻T06-T07において、配線RW[1]の電位は接地電位となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0193】
次に、時刻T07-T08において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となり、配線RW[2]の電位が基準電位よりもVX[2]大きい電位となる。これにより、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[1]供給され、容量結合によりノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。また、メモリセルMC[2,1]、及びメモリセルMCref[2]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[2]が供給され、容量結合によりノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位がそれぞれVX[2]上昇する。
【0194】
ここで、時刻T07-T08において、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],1は、次の式で表すことができる。
【0195】
【0196】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[2,1]=IMC[2,1],1-IMC[2,1],0増加する。
【0197】
また、時刻T05-T06において、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],1は、次の式で表すことができる。
【0198】
【0199】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[2]=IMCref[2],1-IMCref[2],0増加する。
【0200】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,2とすると、次の式が成り立つ。
【0201】
【0202】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流Iが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,2とすると、次の式が成り立つ。
【0203】
【0204】
そして、式(E1)乃至式(E8)、及び、式(E12)乃至式(E15)から、電流Iα,0と電流Iα,2の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0205】
【0206】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]と電位VX[1]の積と、電位VW[2,1]と電位VX[2]の積と、を足し合わせた結果に応じた値となる。
【0207】
その後、時刻T08-T09において、配線RW[1]、[2]の電位は接地電位となり、ノードNM[1,1]、[2,1]及びノードNMref[1]、[2]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0208】
式(E9)及び式(E16)に示されるように、オフセット回路OFSTに入力される差分電流ΔIαは、第1のデータ(重み)に対応する電位Vと、第2のデータ(入力データ)に対応する電位Vの積を足し合わせた結果に応じた値となる。すなわち、差分電流ΔIαをオフセット回路OFSTで計測することにより、第1のデータと第2のデータの積和演算の結果を得ることができる。
【0209】
なお、上記では特にメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目したが、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの数は任意に設定することができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefの行数mを任意の数とした場合の差分電流ΔIαは、次の式で表すことができる。
【0210】
【0211】
また、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの列数nを増やすことにより、並列して実行される積和演算の数を増やすことができる。
【0212】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。なお、メモリセルMC及びメモリセルMCrefとして図14に示す構成を用いることにより、少ないトランジスタ数で積和演算回路を構成することができる。そのため、半導体装置MACの回路規模の縮小を図ることができる。
【0213】
半導体装置MACをニューラルネットワークにおける演算に用いる場合、メモリセルMCの行数mは一のニューロンに供給される入力データの数に対応させ、メモリセルMCの列数nはニューロンの数に対応させることができる。例えば、図12(A)に示す中間層HLにおいて半導体装置MACを用いた積和演算を行う場合を考える。このとき、メモリセルMCの行数mは、入力層ILから供給される入力データの数(入力層ILのニューロンの数)に設定し、メモリセルMCの列数nは、中間層HLのニューロンの数に設定することができる。
【0214】
なお、半導体装置MACを適用するニューラルネットワークの構造は特に限定されない。例えば半導体装置MACは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、オートエンコーダ、ボルツマンマシン(制限ボルツマンマシンを含む)などに用いることもできる。
【0215】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、ニューラルネットワークの積和演算を行うことができる。さらに、セルアレイCAに図14に示すメモリセルMC及びメモリセルMCrefを用いることにより、演算精度の向上、消費電力の削減、又は回路規模の縮小を図ることが可能な集積回路を提供することができる。
【0216】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0217】
(実施の形態5)
本実施の形態では、撮像素子の一例について図面を参照して説明する。
【0218】
<画素回路および動作>
図17(A)は、撮像素子の画素に用いることができる画素回路の一例を説明する図である。当該画素回路は、光電変換素子50と、トランジスタ51と、トランジスタ52と、トランジスタ53と、トランジスタ54と、容量素子55と、を有する。
【0219】
光電変換素子50の一方の電極は、トランジスタ51のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ51のソースまたはドレイン一方は、トランジスタ52のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ51のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ53のゲートと電気的に接続される。トランジスタ53のゲートは、容量素子55の一方の電極と電気的に接続される。トランジスタ53のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ54のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。なお、容量素子55が設けられない構成であってもよい。
【0220】
光電変換素子50の他方の電極は、配線71と電気的に接続される。トランジスタ51のゲートは、配線76と電気的に接続される。トランジスタ52のゲートは、配線77と電気的に接続される。トランジスタ52のソースまたはドレインの他方は、配線72と電気的に接続される。トランジスタ53のソースまたはドレインの他方は、配線73に電気的に接続される。トランジスタ54のソースまたはドレインの他方は、配線74と電気的に接続される。トランジスタ54のゲートは、配線78と電気的に接続される。
【0221】
配線71、配線72、配線73、配線75は、電源線としての機能を有することができる。例えば、配線71、配線73は高電位電源線、配線72、配線75は低電位電源線とすることができる。配線76、配線77、配線78は、各トランジスタの導通を制御する信号線としての機能を有することができる。また、配線74は、画素から信号を出力する出力線としての機能を有することができる。
【0222】
なお、光電変換素子50の一方の電極、トランジスタ51のソースまたはドレインの一方、およびトランジスタ52のソースまたはドレインの一方が接続される配線を電荷蓄積部NRとする。また、トランジスタ51のソースまたはドレインの他方、トランジスタ53のゲート、および容量素子55の一方の電極が接続される配線を電荷検出部NDとする。
【0223】
トランジスタ51は、光電変換素子50の動作に応じて変化する電荷蓄積部NRの電位を電荷検出部NDに転送する機能を有することができる。トランジスタ52は、電荷蓄積部NRおよび電荷検出部NDの電位を初期化する機能を有することができる。トランジスタ53は、電荷検出部NDの電位に応じた信号を出力する機能を有することができる。トランジスタ54は、信号を読み出す画素を選択する機能を有することができる。
【0224】
光電変換素子50には、光検出感度を高めるためアバランシェフォトダイオードを用いてもよい。アバランシェフォトダイオードを用いる場合は、比較的高い電位を配線71に供給する必要がある。
【0225】
このとき、光電変換素子50と接続されるトランジスタには、高電圧を印加できる高耐圧のトランジスタを用いることが好ましい。当該トランジスタには、例えば、金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)などを用いることができる。具体的には、トランジスタ51、トランジスタ52にOSトランジスタを適用することが好ましい。
【0226】
また、トランジスタ51、トランジスタ52をOSトランジスタとすることで、その低いオフ電流特性によって、電荷検出部NDおよび電荷蓄積部NRで電荷を保持できる期間を極めて長くすることができる。そのため、回路構成や動作方法を複雑にすることなく、全画素で同時に電荷の蓄積動作を行い、順次読み出し動作を行うグローバルシャッタ方式を適用することができる。
【0227】
一方、トランジスタ53は増幅特性が優れていることが望まれるため、オン電流が高いトランジスタであることが好ましい。したがって、トランジスタ53、トランジスタ54には、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、Siトランジスタ)を適用することが好ましい。
【0228】
光電変換素子50にアバランシェフォトダイオードを用い、トランジスタ51乃至トランジスタ54を上述した構成とすることで、低照度における光の検出感度が高く、ノイズの少ない信号を出力することのできる撮像素子を作製することができる。また、光の検出感度が高いため、光の取り込み時間を短くすることができ、撮像を高速に行うことができる。
【0229】
なお、上記構成に限らず、光電変換素子50はアバランシェ増倍が生じない素子であってもよい。また、アバランシェフォトダイオードにアバランシェ増倍が生じない電位を印加して使用してもよい。
【0230】
また、トランジスタ53、トランジスタ54にOSトランジスタを適用してもよい。または、トランジスタ51、トランジスタ52にSiトランジスタを適用してもよい。いずれの場合においても当該画素回路を動作させることができる。
【0231】
次に、図17(B)のタイミングチャートを用いて、画素の動作を説明する。なお、以下に説明する一例の動作において、各配線に供給される電位は下記の通りとする。配線76、配線77、配線78には、”H”としてVDD、”L”としてGNDの電位が供給される。配線71、配線73には、VDDの電位が供給される。配線72、配線75には、GNDの電位が供給される。なお、配線71にVDDより高い電位HVDDを供給するなど、各配線に上記以外の電位を供給してもよい。
【0232】
時刻T1に配線76を”H”、配線77を”H”とし、電荷蓄積部NRおよび電荷検出部NDの電位をリセット電位(GND)に設定する(リセット動作)。
【0233】
時刻T2に配線76を”L”、配線77を”L”とすることで、電荷蓄積部NRの電位が変化し始める(蓄積動作)。電荷蓄積部NRの電位は、光電変換素子50に入射した光の強度に応じて、GND近傍からVDD近傍まで変化する。
【0234】
時刻T3に配線76を”H”、配線77を”L”とし、電荷蓄積部NRの電荷を電荷検出部NDに転送する(転送動作)。
【0235】
時刻T4に配線76を”L”、配線77を”L”とし、転送動作を終了させる。この時点で電荷検出部NDの電位が確定する。
【0236】
時刻T5乃至T6の期間に配線76を”L”、配線77を”L”、配線78を”H”とし、電荷検出部NDの電位に応じた信号を配線71に出力する。すなわち、蓄積動作において光電変換素子50に入射した光の強度に応じた出力信号を得ることができる。
【0237】
<周辺回路>
図18(A)は、撮像素子の回路構成を説明するブロック図である。当該撮像素子は、マトリクス状に配列された画素10を有する画素アレイ11と、画素アレイ11の行を選択する機能を有する回路16(ロードライバ)と、画素10の出力信号に対して相関二重サンプリング処理を行うための回路13(CDS回路)と、回路13から出力されたアナログデータをデジタルデータに変換する機能を有する回路14(A/D変換回路等)と、回路14で変換されたデータを選択して読み出す機能を有する回路15(カラムドライバ)と、を有する。なお、回路13を設けない構成とすることもできる。
【0238】
なお、画素10は画素125に相当し、画素アレイ11は画素アレイ124に相当する。
【0239】
図18(B)は、画素アレイ11の1つの列に接続される回路13の回路図および回路14のブロック図である。
【0240】
回路13は、2つのトランジスタと2つの容量素子を有する構成とすることができる。回路13では、撮像データの電位からリセット電位(RESET)を差し引くことでノイズ成分を削減することができる。
【0241】
回路14は、コンパレータ回路(COMP)およびカウンター回路(COUNTER)を有する構成とすることができる。回路14では、回路13からコンパレータ回路に入力される信号電位と、掃引される基準電位(RAMP)とが比較される。そして、コンパレータ回路の出力に応じてカウンター回路が動作し、配線79にデジタル信号が出力される。回路14は、逐次変換型やデルタシグマ型にすることもできるが、一般にはコンパレータ回路およびカウンター回路を有する構成がレイアウト面積縮小に有効である。
【0242】
<画素回路の構成例>
図19(A)に、上述した画素回路を有する画素の構成を例示する。図19(A)に示す画素は、層61および層62の積層構成を有する例である。
【0243】
層61は、光電変換素子50を有する。光電変換素子50は、図19(C)に示すように層65aと、層65bと、層65cとの積層とすることができる。
【0244】
図19(C)に示す光電変換素子50はpn接合型フォトダイオードであり、例えば、層65aにp型半導体、層65bにn型半導体、層65cにn型半導体を用いることができる。または、層65aにn型半導体、層65bにp型半導体、層65cにp型半導体を用いてもよい。または、層65bをi型半導体としたpin接合型フォトダイオードであってもよい。
【0245】
上記pn接合型フォトダイオードまたはpin接合型フォトダイオードは、単結晶シリコンを用いて形成することができる。また、pin接合型フォトダイオードとしては、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコンなどの薄膜を用いて形成することもできる。
【0246】
また、層61が有する光電変換素子50は、図19(D)に示すように、層66aと、層66bと、層66c、層66dとの積層としてもよい。図19(D)に示す光電変換素子50はアバランシェフォトダイオードの一例であり、層66a、層66dは電極に相当し、層66b、層66cは光電変換部に相当する。
【0247】
層66aは、低抵抗の金属層などとすることが好ましい。例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、タンタル、銀またはそれらの積層を用いることができる。
【0248】
層66dは、可視光に対して高い透光性を有する導電層を用いることが好ましい。例えば、インジウム酸化物、錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム-錫酸化物、ガリウム-亜鉛酸化物、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物、またはグラフェンなどを用いることができる。なお、層66dを省く構成とすることもできる。
【0249】
光電変換部の層66b、層66cは、例えばセレン系材料を光電変換層としたpn接合型フォトダイオードの構成とすることができる。層66bとしてはp型半導体であるセレン系材料を用い、層66cとしてはn型半導体であるガリウム酸化物などを用いることが好ましい。
【0250】
セレン系材料を用いた光電変換素子は、可視光に対する外部量子効率が高い特性を有する。当該光電変換素子では、アバランシェ増倍を利用することにより、入射される光量に対する電子の増幅を大きくすることができる。また、セレン系材料は光吸収係数が高いため、光電変換層を薄膜で作製できるなどの生産上の利点を有する。セレン系材料の薄膜は、真空蒸着法またはスパッタ法などを用いて形成することができる。
【0251】
セレン系材料としては、単結晶セレンや多結晶セレンなどの結晶性セレン、非晶質セレン、銅、インジウム、セレンの化合物(CIS)、または、銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物(CIGS)などを用いることができる。
【0252】
n型半導体は、バンドギャップが広く、可視光に対して透光性を有する材料で形成することが好ましい。例えば、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物、インジウム酸化物、錫酸化物、またはそれらが混在した酸化物などを用いることができる。また、これらの材料は正孔注入阻止層としての機能も有し、暗電流を小さくすることもできる。
【0253】
図19(A)に示す層62としては、例えばシリコン基板を用いることができる。当該シリコン基板には、Siトランジスタ等が設けられ、前述した画素回路の他、当該画素回路を駆動する回路、画像信号の読み出し回路、画像処理回路等を設けることができる。
【0254】
また、画素は、図19(B)に示すように層61、層63および層62の積層構成を有していてもよい。
【0255】
層63は、OSトランジスタ(例えば、画素回路のトランジスタ51、トランジスタ52)を有することができる。このとき、層62は、Siトランジスタ(例えば、画素回路のトランジスタ53、トランジスタ54)を有することが好ましい。
【0256】
当該構成とすることで、画素回路を構成する要素を複数の層に分散させ、かつ当該要素を重ねて設けることができるため、撮像素子の面積を小さくすることができる。なお、図19(B)の構成において、層62を支持基板とし、層61および層63に画素回路を設けてもよい。
【0257】
図20(A)は、図19(A)に示す画素の断面の一例を説明する図である。層61は光電変換素子50として、シリコンを光電変換層とするpn接合型フォトダイオードを有する。層62は、画素回路を構成するSiトランジスタ等を有する。
【0258】
光電変換素子50において、層65aはp型領域、層65bはn型領域、層65cはn型領域とすることができる。また、層65bには、電源線と層65cとを接続するための領域36が設けられる。例えば、領域36はp型領域とすることができる。
【0259】
図20(A)において、Siトランジスタはシリコン基板40にチャネル形成領域を有するプレーナー型の構成を示しているが、図22(A)、(B)に示すように、シリコン基板40にフィン型の半導体層を有する構成であってもよい。図22(A)はチャネル長方向の断面、図22(B)はチャネル幅方向の断面に相当する。
【0260】
または、図22(C)に示すように、シリコン薄膜の半導体層45を有するトランジスタであってもよい。半導体層45は、例えば、シリコン基板40上の絶縁層46上に形成された単結晶シリコン(SOI(Silicon on Insulator))とすることができる。
【0261】
ここで、図20(A)では、層61が有する要素と層62が有する要素との電気的な接続を貼り合わせ技術で得る構成例を示している。
【0262】
層61には、絶縁層42、導電層33および導電層34が設けられる。導電層33および導電層34は、絶縁層42に埋設された領域を有する。導電層33は、層65aと電気的に接続される。導電層34は、領域36と電気的に接続される。また、絶縁層42、導電層33および導電層34の表面は、それぞれ高さが一致するように平坦化されている。
【0263】
層62には、絶縁層41、導電層31および導電層32が設けられる。導電層31および導電層32は、絶縁層41に埋設された領域を有する。導電層32は、電源線と電気的に接続される。導電層31は、トランジスタ51のソースまたはドレインと電気的に接続される。また、絶縁層41、導電層31および導電層32の表面は、それぞれ高さが一致するように平坦化されている。
【0264】
ここで、導電層31および導電層33は、主成分が同一の金属元素であることが好ましい。導電層32および導電層34は、主成分が同一の金属元素であることが好ましい。また、絶縁層41および絶縁層42は、同一の成分で構成されていることが好ましい。
【0265】
例えば、導電層31、導電層32、導電層33、導電層34には、Cu、Al、Sn、Zn、W、Ag、PtまたはAuなどを用いることができる。接合のしやすさから、好ましくはCu、Al、W、またはAuを用いる。また、絶縁層41、絶縁層42には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタンなどを用いることができる。
【0266】
つまり、導電層31および導電層33の組み合わせと、導電層32および導電層34の組み合わせのそれぞれに、上記に示す同一の金属材料を用いることが好ましい。また、絶縁層41および絶縁層42のそれぞれに、上記に示す同一の絶縁材料を用いることが好ましい。当該構成とすることで、層61と層62の境を接合位置とする、貼り合わせを行うことができる。
【0267】
当該貼り合わせによって、導電層31および導電層33の組み合わせと、導電層32および導電層34の組み合わせのそれぞれの電気的な接続を得ることができる。また、絶縁層41および絶縁層42の機械的な強度を有する接続を得ることができる。
【0268】
金属層同士の接合には、表面の酸化膜および不純物の吸着層などをスパッタリング処理などで除去し、清浄化および活性化した表面同士を接触させて接合する表面活性化接合法を用いることができる。または、温度と圧力を併用して表面同士を接合する拡散接合法などを用いることができる。どちらも原子レベルでの結合が起こるため、電気的だけでなく機械的にも優れた接合を得ることができる。
【0269】
また、絶縁層同士の接合には、研磨などによって高い平坦性を得たのち、酸素プラズマ等で親水性処理をした表面同士を接触させて仮接合し、熱処理による脱水で本接合を行う親水性接合法などを用いることができる。親水性接合法も原子レベルでの結合が起こるため、機械的に優れた接合を得ることができる。
【0270】
層61と、層62を貼り合わせる場合、それぞれの接合面には絶縁層と金属層が混在するため、例えば、表面活性化接合法および親水性接合法を組み合わせて行えばよい。
【0271】
例えば、研磨後に表面を清浄化し、金属層の表面に酸化防止処理を行ったのちに親水性処理を行って接合する方法などを用いることができる。また、金属層の表面をAuなどの難酸化性金属とし、親水性処理を行ってもよい。なお、上述した方法以外の接合方法を用いてもよい。
【0272】
図20(B)は、図19(A)に示す画素の層61にセレン系材料を光電変換層とするpn接合型フォトダイオードを用いた場合の断面図である。一方の電極として層66aと、光電変換層として層66b、層66cと、他方の電極として層66dを有する。
【0273】
この場合、層61は、層62上に直接形成することができる。層66aは、トランジスタ51のソースまたはドレインと電気的に接続される。層66dは、導電層37を介して電源線と電気的に接続される。
【0274】
図21(A)は、図19(B)に示す画素の断面の一例を説明する図である。層61は光電変換素子50として、シリコンを光電変換層とするpn接合型フォトダイオードを有する。層62はSiトランジスタ等を有する。層63はOSトランジスタ等を有する。層61と層63とは、貼り合わせで電気的な接続を得る構成例を示している。
【0275】
図21(A)において、OSトランジスタはセルフアライン型の構成を示しているが、図22(D)に示すように、ノンセルフアライン型のトップゲート型トランジスタであってもよい。
【0276】
トランジスタ51はバックゲート35を有する構成を示しているが、バックゲートを有さない形態であってもよい。バックゲート35は、図22(E)に示すように、対向して設けられるトランジスタのフロントゲートと電気的に接続する場合がある。または、バックゲート35にフロントゲートとは異なる固定電位を供給することができる構成であってもよい。
【0277】
OSトランジスタが形成される領域とSiトランジスタが形成される領域との間には、水素の拡散を防止する機能を有する絶縁層43が設けられる。トランジスタ53、トランジスタ54のチャネル形成領域近傍に設けられる絶縁層中の水素は、シリコンのダングリングボンドを終端する。一方、トランジスタ51のチャネル形成領域の近傍に設けられる絶縁層中の水素は、酸化物半導体層中にキャリアを生成する要因の一つとなる。
【0278】
絶縁層43により、一方の層に水素を閉じ込めることでトランジスタ53、トランジスタ54の信頼性を向上させることができる。また、一方の層から他方の層への水素の拡散が抑制されることでトランジスタ51の信頼性も向上させることができる。
【0279】
絶縁層43としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0280】
図21(B)は、図19(B)に示す画素の層61にセレン系材料を光電変換層とするpn接合型フォトダイオードを用いた場合の断面図である。層61は、層63上に直接形成することができる。層61、層62、層63の詳細は、前述の説明を参照できる。
【0281】
<その他の画素の構成要素>
図23(A)は、本発明の一態様の撮像素子の画素にカラーフィルタ等を付加した例を示す斜視図である。当該斜視図では、複数の画素の断面もあわせて図示している。光電変換素子50が形成される層61上には、絶縁層80が形成される。絶縁層80は可視光に対して透光性の高い酸化シリコン膜などを用いることができる。また、パッシベーション層として窒化シリコン膜を積層してもよい。また、反射防止層として、酸化ハフニウムなどの誘電体膜を積層してもよい。
【0282】
絶縁層80上には、遮光層81が形成されてもよい。遮光層81は、上部のカラーフィルタを通る光の混色を防止する機能を有する。遮光層81には、アルミニウム、タングステンなどの金属膜を用いることができる。また、当該金属膜と反射防止層としての機能を有する誘電体膜を積層してもよい。
【0283】
絶縁層80および遮光層81上には、平坦化膜として有機樹脂層82を設けることができる。また、画素別にカラーフィルタ83(カラーフィルタ83a、カラーフィルタ83b、カラーフィルタ83c)が形成される。例えば、カラーフィルタ83a、カラーフィルタ83b、カラーフィルタ83cに、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、C(シアン)、M(マゼンタ)などの色を割り当てることにより、カラー画像を得ることができる。
【0284】
カラーフィルタ83上には、可視光に対して透光性を有する絶縁層86などを設けることができる。
【0285】
また、図23(B)に示すように、カラーフィルタ83の代わりに光学変換層85を用いてもよい。このような構成とすることで、様々な波長領域における画像が得られる撮像素子とすることができる。
【0286】
例えば、光学変換層85に可視光線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば、赤外線撮像素子とすることができる。また、光学変換層85に近赤外線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば、遠赤外線撮像素子とすることができる。また、光学変換層85に可視光線の波長以上の光を遮るフィルタを用いれば、紫外線撮像素子とすることができる。可視光のカラーフィルタと赤外線若しくは紫外線のフィルタを組み合わせてもよい。
【0287】
また、光学変換層85にシンチレータを用いれば、X線撮像素子などに用いる放射線の強弱を可視化した画像を得る撮像素子とすることができる。被写体を透過したX線等の放射線がシンチレータに入射されると、フォトルミネッセンス現象により可視光線や紫外光線などの光(蛍光)に変換される。そして、当該光を光電変換素子50で検知することにより画像データを取得する。また、放射線検出器などに当該構成の撮像素子を用いてもよい。
【0288】
シンチレータは、X線やガンマ線などの放射線が照射されると、そのエネルギーを吸収して可視光や紫外光を発する物質を含む。例えば、GdS:Tb、GdS:Pr、GdS:Eu、BaFCl:Eu、NaI、CsI、CaF、BaF、CeF、LiF、LiI、ZnOなどを樹脂やセラミクスに分散させたものを用いることができる。
【0289】
なお、セレン系材料を用いた光電変換素子50においては、X線等の放射線を電荷に直接変換することができるため、シンチレータを不要とする構成とすることもできる。
【0290】
また、図23(C)に示すように、カラーフィルタ83上にマイクロレンズアレイ84を設けてもよい。マイクロレンズアレイ84が有する個々のレンズを通る光が直下のカラーフィルタ83を通り、光電変換素子50に照射されるようになる。また、図23(B)に示す光学変換層85上にマイクロレンズアレイ84を設けてもよい。
【0291】
<パッケージ、モジュールの構成例>
以下では、イメージセンサチップを収めたパッケージおよびカメラモジュールの一例について説明する。当該イメージセンサチップには、上記撮像素子の構成を用いることができる。
【0292】
図24(A1)は、イメージセンサチップを収めたパッケージの上面側の外観斜視図である。当該パッケージは、イメージセンサチップ450を固定するパッケージ基板410、カバーガラス420および両者を接着する接着剤430等を有する。
【0293】
図24(A2)は、当該パッケージの下面側の外観斜視図である。パッケージの下面には、半田ボールをバンプ440としたBGA(Ball grid array)を有する。なお、BGAに限らず、LGA(Land grid array)やPGA(Pin Grid Array)などを有していてもよい。
【0294】
図24(A3)は、カバーガラス420および接着剤430の一部を省いて図示したパッケージの斜視図である。パッケージ基板410上には電極パッド460が形成され、電極パッド460およびバンプ440はスルーホールを介して電気的に接続されている。電極パッド460は、イメージセンサチップ450とワイヤ470によって電気的に接続されている。
【0295】
また、図24(B1)は、イメージセンサチップをレンズ一体型のパッケージに収めたカメラモジュールの上面側の外観斜視図である。当該カメラモジュールは、イメージセンサチップ451を固定するパッケージ基板411、レンズカバー421、およびレンズ435等を有する。また、パッケージ基板411およびイメージセンサチップ451の間には撮像素子の駆動回路および信号変換回路などの機能を有するICチップ490も設けられており、SiP(System in package)としての構成を有している。
【0296】
図24(B2)は、当該カメラモジュールの下面側の外観斜視図である。パッケージ基板411の下面および側面には、実装用のランド441が設けられたQFN(Quad flat no-lead package)の構成を有する。なお、当該構成は一例であり、QFP(Quad flat package)や前述したBGAが設けられていてもよい。
【0297】
図24(B3)は、レンズカバー421およびレンズ435の一部を省いて図示したモジュールの斜視図である。ランド441は電極パッド461と電気的に接続され、電極パッド461はイメージセンサチップ451またはICチップ490とワイヤ471によって電気的に接続されている。
【0298】
イメージセンサチップを上述したような形態のパッケージに収めることでプリント基板等への実装が容易になり、イメージセンサチップを様々な半導体装置、電子機器に組み込むことができる。
【0299】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0300】
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る撮像装置および/または撮像システムなどを用いることができる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像記憶装置または画像再生装置、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図25に示す。
【0301】
図25(A)は監視カメラであり、筐体951、レンズ952、支持部953等を有する。当該監視カメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。なお、監視カメラとは慣用的な名称であり、用途を限定するものではない。例えば監視カメラとしての機能を有する機器はカメラ、またはビデオカメラとも呼ばれる。
【0302】
図25(B)はビデオカメラであり、第1筐体971、第2筐体972、表示部973、操作キー974、レンズ975、接続部976等を有する。操作キー974およびレンズ975は第1筐体971に設けられており、表示部973は第2筐体972に設けられている。当該ビデオカメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0303】
図25(C)はデジタルカメラであり、筐体961、シャッターボタン962、マイク963、発光部967、レンズ965等を有する。当該デジタルカメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0304】
図25(D)は腕時計型の情報端末であり、筐体931、表示部932、リストバンド933、操作用のボタン935、竜頭936、カメラ939等を有する。表示部932はタッチパネルとなっていてもよい。当該情報端末における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0305】
図25(E)は携帯電話機の一例であり、筐体981、表示部982、操作ボタン983、外部接続ポート984、スピーカ985、マイク986、カメラ987等を有する。当該携帯電話機は、表示部982にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部982に触れることで行うことができる。当該携帯電話機における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0306】
図25(F)は携帯データ端末であり、筐体911、表示部912、カメラ919等を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができる。当該携帯データ端末における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
【0307】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0308】
100:撮像装置、101:撮像部、110:光学素子、111:液晶素子、112:偏光フィルタ、114:偏光素子アレイ、115:偏光素子、120:撮像素子、124:画素アレイ、125:画素、126:画素、128:画素ユニット、129:サブ画素ユニット、130:制御部、140:演算部、150:画像処理部、151:ニューラルネットワーク、160:記憶部、170:補助記憶部、180:外部入出力部、190:通信部、301:画像データ、302:画像データ、303:画像データ、410:パッケージ基板、411:パッケージ基板、420:カバーガラス、421:レンズカバー、430:接着剤、435:レンズ、440:バンプ、441:ランド、450:イメージセンサチップ、451:イメージセンサチップ、460:電極パッド、461:電極パッド、470:ワイヤ、471:ワイヤ、490:ICチップ、501:光
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