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特許7171564脊髄刺激器リードの配置のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】脊髄刺激器リードの配置のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20221108BHJP
   A61B 5/24 20210101ALI20221108BHJP
   A61B 5/389 20210101ALI20221108BHJP
   A61B 5/05 20210101ALI20221108BHJP
【FI】
A61N1/36
A61B5/24
A61B5/389
A61B5/05
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019524879
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017061410
(87)【国際公開番号】W WO2018089950
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】62/421,797
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514280846
【氏名又は名称】セーフオプ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン リチャード エイ
(72)【発明者】
【氏名】スノー ロバート
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06027456(US,A)
【文献】特表2012-505707(JP,A)
【文献】特表2013-523274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
A61B 5/24
A61B 5/389
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄刺激リードの位置を検出及び表示する方法であって、
体性感覚誘発電位を生じさせるために、一つ又はそれ以上の末梢神経構造を、刺激電極からの一つ又はそれ以上の強度を有する一つ又はそれ以上の電気的パルスで刺激するステップと、
前記刺激電極にて、前記刺激に対する前記体性感覚誘発電位を検出するステップと、
前記体性感覚誘発電位の応答及びそれらの成分を自動的に分析するステップと、
脊髄刺激生成器の前記脊髄刺激リードによって与えられた刺激に対する筋電図検査の応答を検出するステップと、
前記筋電図検査の応答の関連する神経及び神経根レベルを特定するステップと、
前記筋電図検査の応答を自動的に分析するステップと、
前記脊髄刺激生成器に、それが脊髄刺激生成器の刺激強度を調整することを可能にする情報を自動的に提供するステップと、
体性感覚誘発電位の伝導ブロックを作り出す最低レベルの刺激強度を検出するステップと、
一方の側又はそれ以上で、初期の筋電図検査の応答を作り出す刺激強度の最低レベルを検出するステップと、
体性感覚誘発電位の伝導ブロック又は筋電図検査の活性化において検出された変化の位置又は側を描く解剖学的ダイアグラムを表示するためのデータを包含するデータを、ディスプレイに送るステップと、
前記解剖学的ダイアグラムを前記ディスプレイ上に表示するステップと、
他の入力に対する前記脊髄刺激生成器の刺激の活動及び活動レベルを前記ディスプレイ上に表示するステップと、
前記脊髄刺激リードの配置の左右の偏り及びレベルを計算するステップと、
前記脊髄刺激リードの配置の左右の偏り及びレベルを前記ディスプレイ上に表示するステップと、
前記活動の前記左右の偏り及びレベルの計算及び位置を前記ディスプレイ上に表示するステップと、
を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記体性感覚誘発電位が、より低い強度の刺激からの振動及びライトタッチ伝導繊維を通した伝送を表す第1の成分と、より高い強度の刺激からの痛み刺激伝導繊維を通した伝送を表す第2の成分とを備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記録された体性感覚誘発電位及び/又は筋電図検査の記録における変化をユーザにアラートするステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
脊髄刺激生成器から、その活動レベルに関する入力を、それを他の入力と直接的な、ブルートゥースの、又はその他の通信様式を介して相関させることができるように受領するステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脊髄刺激リードの位置を検出するシステムであって、
脊髄刺激生成器と、
前記脊髄刺激生成器からの刺激を前記脊髄に提供するための脊髄刺激リードと、
前記脊髄刺激生成器からの刺激に応答した筋肉活動を検出する筋電図検査電極のアレイと、
刺激電極からの電気的パルスで末梢神経構造を刺激するための第2の刺激生成器と、
前記刺激電極にて、前記刺激に対する体性感覚誘発電位を検出する検出電極と、
プロセッサを備える計算システムであって、前記プロセッサが非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体に記憶された指示を実行するように構成されていて、その指示が前記プロセッサに、前記体性感覚誘発電位及び検出された筋肉活動を自動的に分析させ、前記脊髄刺激リードの横方向の配置及びレベルを特定する、計算システムと、
前記脊髄刺激リードの配置及びレベルに関連した情報を表示するためのディスプレイ装置と、
を包含することを特徴とするシステム。
【請求項6】
前記ディスプレイ装置が、電気的波形に関する情報を表示するように構成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサに結合されて、前記脊髄刺激リードの位置をユーザにアラートするように動作可能なアラートユニットをさらに備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサに結合されて、前記プロセッサにテーブルを結合するように動作可能なインターフェースをさらに備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置が、収集されている様々な波形信号、並びにそれらの入力に基づいて前記脊髄刺激リードの可能性のある計算された位置を示すピクトグラムを描く、一体化されたディスプレイである、
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
脊髄刺激生成器の脊髄刺激リードを最適に配置する方法であって、
体性感覚誘発電位、複合活動電位、及び筋電位の少なくとも1つを生じさせるために、一つ又はそれ以上の末梢神経構造を、刺激電極からの一つ又はそれ以上の強度を有する一つ又はそれ以上の電気的パルスで刺激するステップと、
前記体性感覚誘発電位、前記複合活動電位、及び前記筋電位の少なくとも1つを獲得するステップと、
前記脊髄刺激リードによって与えられた刺激に対する、獲得された前記体性感覚誘発電位、前記複合活動電位、及び前記筋電位の少なくとも1つの波形の応答を検出するステップと、
単一のディスプレイにて、全身麻酔下の患者における前記脊髄刺激リードの位置の最適な配置を、外科医が付加的な専門家の手助け無しに迅速に且つ容易に決定できるように前記波形の特徴を定量化するステップと、
前記獲得された前記体性感覚誘発電位、前記複合活動電位、及び前記筋電位の少なくとも1つの波形に基づいて、前記脊髄刺激リードの配置の左右の偏り及びレベルを計算するステップと、
前記脊髄刺激リードの配置の左右の偏り及びレベルを前記ディスプレイ上に表示するステップと、
を包含する方法。
【請求項11】
前記電気的パルスに応答した結果として患者の神経システムによって生成された電気的波形を、一つ又はそれ以上の記録電極を使用して記録するステップと、
計算装置を用いて、前記結果として得られた電気的波形に基づいて、あるいは、脊髄刺激の活性化による結果として生成された電気的波形との干渉に基づいて、前記脊髄刺激リードの位置を特定するステップと、
をさらに包含することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一つ又はそれ以上の記録電極が、患者の腕、前記患者の脚、前記患者の尺骨神経、前記患者の正中神経、及び前記患者の後脛骨神経の一つ又はそれ以上に結合され得る、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一つ又はそれ以上の前記記録電極が、患者の頭及び前記患者の首の一つ又はそれ以上に結合され得る、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
一つ又はそれ以上の前記記録電極が、第7、第8、及び第9の胸部レベル及び第2~第8の頚椎レベルを含む前記脊髄刺激リードの所望の配置レベルに隣接した脊柱神経によって支配された筋肉において結合され得る、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記結果として得られた電気的波形が、体性感覚誘発電位波形又は複合モータ活動電位波形又は筋電位波形である、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記脊髄刺激リードの位置を特定するステップが、
計算装置で、前記結果として得られた電気的波形に基づいた情報を前記脊髄刺激生成器からの情報と比較して、前記結果として得られた電気的波形における変化が脊髄刺激活動によるものであるときを決定するステップと、
一つ又はそれ以上の前記計算装置で、前記結果として得られた電気的波形に基づいた情報を各々に対する活動のベースラインレベルと比較して、前記結果として得られた電気的波形における変化が前記脊髄刺激リードの配置によるものであるときを決定するステップと、
のうちの一つ又はそれ以上を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記脊髄刺激生成器からの刺激の強度に基づく情報を提供するステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
通知、アラート、通信、しるし、及び/又はアラームの一つ又はそれ以上を使用して、ユーザにアラートするステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記結果として得られた電気的波形に基づいた情報をディスプレイユニット上に表示するステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記結果として得られた電気的波形の精度に関するユーザ入力を受け取るステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記脊髄刺激リードからの刺激の強度を活性化する、脱活性化する、又は変えるステップをさらに包含する、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記結果として得られた電気的波形の左右の偏りにおける変化を特定する一つ又はそれ以上の手段を含み得る前記脊髄刺激リードの位置を特定するステップと、
前記結果として得られた電気的波形の強度における変化を特定するステップと、
前記結果として得られた電気的波形のモフォロジーにおける変化を特定するステップと、
のうちの少なくとも一つをさらに備えている、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年11月15日付けで出願された米国仮特許出願第62/421,797号に対する優先権を主張し且つその恩恵を主張しており、その開示は、全体的に参照によってここに援用される。
【0002】
本開示は、一般的に脊髄刺激器リードの配置を容易にするための医療装置に関しており、特に、脊髄刺激器リードの正確な配置を可能にして且つ手術中の意識のある患者のフィードバックを使用せずにその情報をユーザに容易に表示するための医療装置に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性痛の制御の目的で脊柱神経根、脊髄、並びにその他の神経及び管束に対して電気的な刺激パルスを与えることは、1960年代から活発に実践されてきている。慢性痛で苦しんでいる身体の領域に関連した脊髄の範囲に電気的パルスを与えることは、マスキング錯感覚を作り出すことによって又はその他の手段によってのいずれかで、軽減を引き起こすことができる。
【0004】
痛みの軽減をもたらす正確なメカニズムは不明のままである一方で、これらの脊髄刺激器(SCS)装置の効能に対して重要なことは、脊髄、後根神経節、又は末梢神経の痛みの刺激を伝達する範囲に又はその近くに、刺激電極を正確に配置することである。正確な配置は、刺激電極又は電極アレイを、生理学上の正中線に対して、並びに痛みの源又は伝達神経構造に対して脊髄に沿って長手方向においての両方で、所望の位置にて電界を作り出すように配置することを必要とする。刺激電極は典型的に、感覚性ニューロンの細胞本体を収容する後柱(DC)又は後根神経節(DRG)の近傍で脊髄を取り囲んでいる硬膜層(硬膜外)の外側に配置される。電極は典型的には、経皮カテーテルか又は椎弓切開の間のいずれかによって、挿入される。
【0005】
経皮カテーテル又は経皮リードが、通常は患者が鎮静剤を与えられているが意識がある状態で配置される一方で、椎弓切開リードは全身麻酔(患者は意識が無い)状態で配置され、組織の切除を必要とするが、ひとたび埋め込まれると安定性が増すか又はマイグレーションの可能性が減る傾向にあるので、好まれ得る。それらはまた、おそらく間違いなく、電極が配置される場所に対するより精密な制御を提供する。
【0006】
SCS電極がどの組織に効果をもたらしているかの最終決定は、経皮挿入のために鎮静剤を与えられている患者に質問するか、あるいは脊柱又は全身麻酔を受けている患者に対する放射線医学的な評価に依存し得る。後者の場合、試行的な挿入の間に患者を起こしておくことは可能であるが、患者に与えられる不快感が増加し、鎮静作用によって混乱されたフィードバックをもたらす。
【0007】
電極の正しくない配置は、痛みの軽減が不十分であったり全く無かったりする結果を生じさせることがあり、配置を固定するための付加的な手順を必要とするが、このことは、更なる不快感、併発症及び追加のコストの可能性をもたらす。
【0008】
手術の間に刺激電極の局在化を手助けするように、いくつかの装置及び方法が提案されてきているが、それらには複雑なセットアップの問題があり、法外なコストが掛かり、専門人員の利用可能性を必要とするか又は有用性が制限されている。
【0009】
SCS及び電気生理学的信号の測定に関連するいくつかの現時点での技法は、体性感覚誘発電位(SSEP)、モータ誘発電位(MEP)、感覚神経活動電位(SNAP)、筋電図検査(EMG)、又は、トリガされた筋電図検査及び複合モータ活動電位(T-EMG及びCMAP)を含むいくつかの技法の一つ又はそれ以上の使用を伴う。
【0010】
SSEPは、末梢神経又は感覚経路を刺激し且つそれらが脳まで伝達する際に結果的に生じる波形を記録することによって一般的に導出される電気的電位の累積的な効力を構成する。モータ誘発電位は、通常は簡潔な一連のリンクされた刺激を使用した脳の刺激後の筋肉からの記録である。感覚神経活動電位は、神経を感覚繊維で刺激し、刺激部位からある距離だけ離れた位置における同じ神経における減極波を記録することによって、測定される。複合活動電位は、同じ神経における誘発された刺激からの直接的な神経の記録である。トリガされたEMGは、筋肉のモータ神経が刺激されたときの筋肉の応答である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6,027,456号
【文献】米国特許公開第2016/0213314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
フェラーら(Feler et al.)に対する「脊髄刺激リードを配置するための装置及び方法」という名称の米国特許第6,027,456号は、脊髄刺激器の埋め込みを手助けする装置を記述しているが、この装置及び方法は、SCS電極を直接的に接続できること、並びに、SCS刺激のレベルから結果として生じる体性感覚誘発電位又は感覚神経活動電位を記録できることを必要とし、これらは技術的に困難であり、異なる脊柱刺激器のコネクタに取り付けられるためのアダプタを必要とし得て、感覚インパルスの生産量のみを測定し、配置部位における感覚電位の伝達との干渉の度合いは測定しない。
【0013】
他の現時点での方法は、SCS電気刺激による感覚インパルスがSCS配置部位を通過する際の脊髄のDC経路を通る伝達の遮断を決定することに依存する。経路は左右の感覚繊維の両方に対して存在し、それらは独立して測定されることができるので、干渉しているSCS刺激活動の左右の偏りは、各側における干渉の度合い又は相対的な度合いによって決定されることができる。配置の左右の偏りはまた、身体の両側では脊髄の各々の側でお互いからある距離の位置で出ていく神経が機能しているので、隣接する脊髄モータ神経要素におけるSCS刺激によって誘発される筋電図検査(EMG)を介して筋肉活動を誘発し且つ測定することによっても、測定されることができる。これらの筋肉における活動の存在はまた、脊髄上へのSCSの配置のレベルの決定を可能にするようにも作用する。これらの技法は、皮層レベルで且つCMAPO、T-EMG、又はSNAP技法のいずれかによって測定された体性感覚誘起電位(SSEP)の測定を必要とする。
【0014】
これらの技法は自動化されておらず、一様な表示技法を有しておらず、顕著な変化を測定する標準化された方法を有さず、高価な多様式の機器と専門人員及びノウハウを必要とし、且つ短いSCS配置手術に対しては単純に実用的ではないか又は対費用効果がない。加えて、それらは痛み経路の刺激の遮断は測定せず、ライトタッチと振動の感覚とを同じレベルで伝達する経路のものだけを測定する。
【0015】
ズッカーマン・スターク(Zuckerman-Stark)に対する米国特許公開第2016/0213314号は、生理学的な測定を使用してSCS処置の有効性を客観的に決定する方法を記述しているが、埋め込みが行われた後のみである。加えて、目標は痛みの主観的な低減であるので、有用さは制限され得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示は、患者の手術時の不快感を最小化しながら、外科医が一つ又はそれ以上の脊髄刺激リードを正確に且つ迅速に埋め込むことを可能にする自動化された装置及び方法に関しており、これは、現時点の方法及びシステムの前述の欠点のいくらか又は全てを克服する。
【0017】
ある実施形態では、脊髄刺激器(SCS)リードを最適に配置する方法があり、特に、体性感覚誘発電位(SSEP)、複合活動電位、及びトリガされたEMGのいくつかの成分を獲得し、特許保護されたアルゴリズムを使用してそれらの波形を分析し、波形の特徴を単一のディスプレーにて、全身麻酔下の患者におけるSCSリードの位置の最適な配置(脊髄上の配置の左右の偏り及びレベルに関する)を、外科医が付加的な専門家の手助け無しに迅速に且つ容易に決定できるように定量化する装置及び方法がある。
【0018】
いくつかの実施形態では、この方法は、一つ又はそれ以上の末梢神経を、一つ又はそれ以上の刺激電極からの一つ又はそれ以上の電気的パルスで刺激するステップと、この電気的パルスに応答した結果として患者の神経システムによって生成された電気的波形を一つ又はそれ以上の記録電極を使用して記録するステップと、一つ又はそれ以上の計算装置によって、結果として得られた電気的波形に基づいて、あるいは、SCSの活性化によって結果として生成された電気的波形との干渉に基づいて、脊髄刺激器の位置を特定するステップと、を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、一つ又はそれ以上の刺激電極が、患者の腕、患者の脚、患者の尺骨神経、患者の正中神経、又は患者の後脛骨神経の一つ又はそれ以上に結合され得る。いくつかの実施形態では、一つ又はそれ以上の記録電極が、患者の頭、又は患者の首、又は第7、第8、及び第9の胸部レベル及び第2~第8の頚椎レベルを含むSCSの所望の配置レベルに隣接した脊柱神経により影響される筋、の一つ又はそれ以上に結合され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、結果として得られた電気的波形が、体性感覚誘発電位波形、又は複合モータ活動電位、又は筋電図検査電位であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、特定ステップが、計算装置で、結果として得られた電気的波形に基づいた情報をSCSマシンからの情報と比較して、結果として得られた電気的波形における変化がSCS刺激活動によるものであるときを決定するステップ、及び/又は、一つ又はそれ以上の計算装置で、結果として得られた電気的波形に基づいた情報を、お互いに対する活動のベースラインレベルと比較して、結果として得られた電気的波形における変化がSCSの配置によるものであるときを決定するステップの一つ又はそれ以上を含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、この方法は、SCSからの刺激の強度に基づく情報を提供するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、この方法は、通知、アラート、通信、しるし、及び/又はアラームの一つ又はそれ以上を使用して、ユーザにSCSの配置をアラートするステップをさらに包含し得る。この方法は、結果として得られた電気的波形に基づいた情報をディスプレーユニット上に表示するステップをさらに包含し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法は、結果として得られた電気的波形の精度に関するユーザ入力を受け取るステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、リードの配置を検出する自動化された装置が、SCSの一つ又はそれ以上の刺激電極に接続及び/又は結合して、それらを活性化又は脱活性化又はそれらの強度を変えるように動作可能な出力を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサがさらに、結果として得られた電気的波形の左右の偏りにおける変化を特定する一つ又はそれ以上の手段を含み得るSCS電極の位置を特定する手段、結果として得られた電気的波形の強度における変化を特定する手段、及び/又は結果として得られた電気的波形のモフォロジーにおける変化を特定する手段を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、この装置はさらに、一つ又はそれ以上のプロセッサに接続及び/又は結合されて、結果として得られた電気的波形に関する情報を表示するように動作可能なディスプレーユニットを含み得る。いくつかの実施形態では、この装置はさらに、一つ又はそれ以上のプロセッサに結合されて、SCS電極の位置をユーザにアラートするように動作可能なアラートユニットをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、この装置はさらに、一つ又はそれ以上のプロセッサに接続及び/又は結合されて、プロセッサにテーブルを結合するように動作可能なインターフェースを含み得る。いくつかの実施形態では、この装置はさらに、収集されている様々な波形信号、並びにそれらの入力に基づいてSCS刺激器電極の可能性のある計算された位置を示すピクトグラムを描く、一体化されたディスプレーを含み得る。
【0026】
本発明の更なる特徴及び効果、並びに本発明の様々な例示的な実施形態の構造及び動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ある例示的な実施形態に従った装置のための入力及び出力の流れを描く図である。
図2】収集されている様々な波形信号、及び収集された信号に基づいてSCS刺激器電極の可能性のある計算された位置を示すピクトグラムを示している、ある例示的な実施形態に従ったディスプレー装置を描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好適な実施形態を含む本発明の様々な例示的な実施形態が、以下に詳細に議論される。特定の例示的な実施形態が議論されるが、これが描写目的のみのために行われていることが理解されるべきである。当業者は、本発明の考え及び範囲から逸脱することなく、他の構成要素及び構成が使用されることができることを認識するであろう。
【0029】
脊髄刺激器は、パルス化された電気エネルギーを脊髄の近傍に、通常は(硬膜外空間において)その後面表面上で粗い保護硬膜のちょうど外側に送達する装置である。刺激器の目的は、痛みインパルスを変調して、失敗した脊柱手術後の「フェイルバック・シンドローム」に関連したもののような慢性痛シンドロームを伴う患者の痛み感覚を低減することである。この装置は一般的に2つの部分から構成されている。脊髄からある距離のところに置かれたパルス生成器、及びインパルスを所望の脊髄の範囲に運ぶ電極リード/電極である。
【0030】
これらの刺激器が有効であるためには、望まれない痛み刺激を運んでいる所望の脊髄路、神経、及びレベルにインパルスが影響を及ぼすことができるように、脊髄刺激器リード/電極は、脊髄に沿った適切な中間-横方向位置(正中線又は側部まで)に置かれなければならない。脊髄は、それが収まっている骨の脊柱よりもはるかに短いので、脊髄リードが有効な又は所望の脊髄レベルにあるかどうかを判断するために骨の脊柱レベルに依存することはできない。加えて、リードの配置が正中線にあるか又は片側に外れているかどうかを決定することは困難である。
【0031】
SCSリードが正しい位置にあるかどうかを決定するためのより有効な方法は、脊髄及び脊髄神経に対するその生理学的な効果を測定することであり、実際の痛みのインパルスとの相関で正確な配置を可能にする。残念ながら、これをするための最も簡単な方法は、処置の間に患者を目覚めさせておいて、SCS装置をオンした効果がどうであるかを質問することである。これは常に可能ではないか又は望まれさえせず、リード配置の間に併発症を導き得る。
【0032】
図1は、SCSリードの位置を特定することによって、SCSリードの適切な配置を手助けするシステムを描いている。このシステムはSCS生成器102を含み、これは一つ又はそれ以上のSCS電極104を通して脊髄に電気的な刺激を与える。このシステムはさらに、一つ又はそれ以上の刺激電極を通して末梢神経106に双方向に電気的刺激を与えるためのSSEP刺激器を含む。一つ又はそれ以上の刺激電極は、患者の腕、患者の脚、患者の尺骨神経、患者の正中神経、又は患者の後脛骨神経の一つ又はそれ以上に結合され得る。これらの刺激パルスは双方向のSSEP応答を作り出し、これらは、腕又は首にて、一つ又はそれ以上の記録電極108から記録される。いくつかの実施形態では、一つ又はそれ以上の記録電極は、患者の頭又は患者の首の一つ又はそれ以上に結合され得る。SSEP応答は、より低い強度の刺激からの振動及びライトタッチ伝導繊維を通した伝送を表す成分、並びに、より高い強度の刺激からの痛み刺激伝導繊維を通した伝送を表す成分を含む。
【0033】
脊髄刺激器の位置の特定は、SSEP応答に基づく情報をSCSマシンからの情報と比較して、結果として得られる電気的波形における変化がSCS刺激活動によるものであるときを判断することを含み得る。代替的に又はそれに加えて、脊髄刺激器の位置の特定はまた、結果として得られる電気的波形に基づく情報をお互いについての活動のベースラインレベルと比較して、結果として得られる電気的波形における変化がSCSの配置によるものであるときを判断することを含み得る。
【0034】
特に、この装置は、アルゴリズムを使用して自動的にSSEP応答を定性化し、それから、刺激が脊髄刺激器によって後柱に与えられた後にそれらの応答における変化を自動的に測定するように、構成される。変化は、ベースラインに対して及び以前の応答に対しての両方で測定され得る。例えば、この装置は、結果として得られる電気的波形の左右の偏りにおける変化の特定、結果として得られる電気的波形の強度における変化の特定、及び/又は、結果として得られる電気的波形の形態における変化の特定を可能にし得る。ベースラインに対する及び以前の応答に対するSSEP応答の定性化及び測定は、2016年5月3日付けで出願された「電気生理学的に誘発される電位における変化を測定、表示、及び正確に検出するためのシステム、方法、及びコンピュータアルゴリズム」という名称のPCT出願第PCT/US2016/030605号に記述されており、これはその全体が参照によってここに援用される。
【0035】
SCS刺激が活性化されたときを示すSSEP応答における変化から結果として得られた情報は、左右の後柱感覚束を分ける機能的な正中線に対する脊髄刺激器リードの位置を示す。より具体的には、左側、右側、又は両側のSSEP応答の離散的な又は完全な低減は、SCS刺激の横方向配置を示す。例えば、左側におけるSSEP応答を表す記録波形がSSEP応答における減少を記録したら、SCS刺激が、左側の神経経路に効果的に影響を与えるために適切な横方向位置にあると結論付けられることができる。もし、右側におけるSSEP応答を表す記録波形がSSEP応答における減少を記録したら、SCS刺激が、右側の神経経路に効果的に影響を与えるために適切な横方向位置にあると結論付けられることができる。もし、両側の記録が等しく影響を受けたら、そのときには、SCS刺激が神経経路の機能的な振舞いに関して正中線にあると結論付けられることができる。
【0036】
SSEP電位の存在及び変化の検出に加えて、この方法及びシステムはまた、SCS電極の配置のためにターゲットとされている脊髄レベル又はそれらのレベルの近傍の神経根によって供給される筋肉に対して付与される電極110の一つ又はそれ以上も含む。電極110は、第7、第8、及び第9の胸部レベル及び第2~第8の頚椎レベルを含むSCSの所望の配置レベルに隣接した脊柱神経によって支配された筋肉上に配置され得る。SCS電極104の活性化は、もしそれが適切なレベルにあれば、関連する神経根及びそれらが取り付けられた筋肉を活性化し(EMG活動)、これが電極(単数又は複数)110によって検出される。結果として得られたEMG活動及びその位置を示す情報は、左右の脊髄神経を分ける正中線に対する脊髄刺激器リードの相対位置を示す。結果として得られた情報はまた、電極アレイが関連する筋肉応答を検出する脊髄神経根の位置を示すことによって、脊髄の長さに沿った脊髄刺激器リードの相対位置も示す。
【0037】
加えて、この方法及びシステムは、SCSパルスの強度が可変されることができるようにSCSパルス生成器へのフィードバックを可能にし、これが、SSEP波形及びEMG活動における顕著な変化を作り出し、SCS電極の相対的な配置に関する付加的な情報を提供する。
【0038】
加えて、この方法及びシステムはさらに、SCSからの刺激の強度に基づく情報を提供することを含み得る。いくつかの実施形態では、この方法はさらに、通知、アラート、通信、しるし、及び/又はアラームの一つ又はそれ以上を使用して、ユーザにSCSの配置をアラートすることを含み得る。さらに、脊髄刺激器からの入力は、その活動のレベルに関して受領され得て、直接、ワイヤレス、ブルートゥース(登録商標)、又はその他の形態の通信を介して、他の入力と相関されることができる。
【0039】
この方法及びシステムはさらに、結果として得られた電気的波形に基づいた情報を、SCSリードが挿入されるか又は動かされているときにリアルタイムにディスプレーユニット上に表示することを含み得る。上述された全ての情報が、処理された波形として、且つ脊髄正中線及び脊柱神経に対するSCS電極のあり得る位置を示すピクトグラムとして、表示され得る。一体化されたディスプレーの例示的な実施形態が図2に描かれており、これは、痛み経路ブロックのSSEPの左右の偏り(緑色)、並びに脊柱セグメント活動のEMGの左右の偏り及びレベル(黄色)を示す色つきのマーカを有する脊柱の表示を示している。この単一のディスプレーが、外科医又はその他の作業人員が、付加的な専門家の手助け無しに且つ患者を目覚めさせること無しに、全身麻酔下にある患者におけるSCSリードの最適な配置(脊髄上の配置の左右の偏り及びレベルに関する)を、迅速に且つ容易に決定することを可能にする。
図1
図2