(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】誘導加熱装置、誘導加熱装置を備えるエアロゾル発生システム、およびそれを操作する方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20221108BHJP
A24F 40/57 20200101ALI20221108BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20221108BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20221108BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/57
A24F47/00
H05B6/10 371
H05B6/06 366
(21)【出願番号】P 2019527342
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2017080127
(87)【国際公開番号】W WO2018096000
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】フルサ オレク
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524777(JP,A)
【文献】特表2016-525341(JP,A)
【文献】特表2015-531600(JP,A)
【文献】特表2013-545474(JP,A)
【文献】特開2010-009795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 40/57
A24F 47/00
H05B 6/10
H05B 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体(20)およびサセプタ(1,4)を備えるエアロゾル発生物品(10)を受けるよう構成された誘導加熱装置(100)であって、前記誘導加熱装置(100)は、前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられる時に、前記サセプタ(1,4)を加熱するように構成され、前記誘導加熱装置(100)は、
DC電源電圧(V
DC)およびDC電流(I
DC)を供給するためのDC電源(150)と、
電源電子回路(160)であって、
前記DC電源(150)に接続されたDC/ACコンバータ(162)、および
前記DC/ACコンバータ(162)に接続され、前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられる時に前記エアロゾル発生物品(10)の前記サセプタ(1,4)と誘導結合するように配置されたインダクタ(110)、を備える電源電子回路と、を備え、
前記電源電子回路(160)が、
前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられる時に、前記エアロゾル発生物品(10)の前記サセプタ(1,4)を加熱するために、前記DC/ACコンバータ(162)を介して前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)へ、時間間隔で分離された複数のパルスで提供される電力を供給し、
前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
DC)の測定値に基づいて、連続パルス間の前記時間間隔の期間を制御するよう構成され、
前記電源電子回路(160)が、第一のパルス(P
n)の間に前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
DC)に基づいて、前記第一のパルス(P
n)と第二の連続パルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の前記期間を制御するように構成される、誘導加熱装置。
【請求項2】
前記電源電子回路(160)が、前記第一のパルス(P
n)の開始時に測定された前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
AN)の初期値に基づいて、前記第一のパルス(P
n)と前記第二の連続パルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の前記期間を制御するようにさらに構成される、請求項1に記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項3】
前記誘導加熱装置(100)が、第一のサセプタ材料(2,5)および第二のサセプタ材料(3,6)を含むサセプタ(1,4)を含むエアロゾル発生物品(10)を受けるように構成され、前記第一のサセプタ材料(2,5)が前記第二のサセプタ材料(3,6)と熱的に近接して配置され、前記第二のサセプタ材料(3,6)が、500℃より低いキュリー温度を有し、前記電源電子回路(160)が、
前記DC電源によって供給される前記DC電流(I
DC)の最大DC電流値(I
DCMAX)を検出し、
前記最大DC電流値(I
DCMAX)が検出されるとき、前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)への前記電力供給を中断し、
前記決定された時間間隔後、前記DC電源(150)からの前記電力供給を再開するように構成され、
それにより、電力が、複数のパルスで前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)に供給される、請求項1または2に記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項4】
前記電源電子回路(160)が、前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流の最小DC電流値(I
DCMIN)を検出するようにさらに構成される、請求項3に記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項5】
前記電源電子回路(160)が、第一のパルス(P
n)と第二の連続パルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の前記期間を、
前記第一のパルス(P
n)の開始時に測定された前記DC電源(150)によって供給される最初のDC電流(I
AN)と、
前記第一のパルス(P
n)の前記決定された最小DC電流値(I
DCMIN)と、
前記第一のパルス(P
n)の前記決定された最大DC電流値(I
DCMAX)と、に基づいて、制御するようにさらに構成される、請求項4に記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項6】
前記電源電子回路(160)が、
前記第一のパルス(P
n)の前記決定された最小DC電流値(I
DCMIN)と前記第一のパルス(P
n)の前記決定された最大DC電流値(I
DCMAX)との間の中点(I
A)を決定し、
前記第一のパルス(P
n)の開始時に測定された前記DC電源(150)によって供給される前記初期DC電流(I
AN)を前記第一のパルス(P
n)の前記決定された最小DC電流値(I
DCMIN)と前記第一のパルス(P
n)の前記最大DC電流値(I
DCMAX)との間の前記中点(I
A)と比較し、
前記比較に基づいて、前記第一のパルス(P
n)と前記第二のパルス(P
n+1)との間の前記時間間隔を決定するようにさらに構成される、請求項5に記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項7】
前記装置が、
装置ハウジング(11)と、
前記装置ハウジング(11)内に配置されたくぼみ(130)であって、前記くぼみが前記エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を収容するように形状設定された内部表面を有し、前記くぼみが、前記くぼみ内に前記エアロゾル形成基体(20)の前記一部分が収容されると、前記インダクタ(110)が前記装置(100)の動作中に前記誘導加熱装置(100)の前記サセプタ(1,4)に誘導結合されるように配置される、くぼみと、を備え、
前記電源電子回路(160)が、高周波で動作するよう構成され、前記DC/ACコンバータ(162)が、低オーム負荷で動作するよう構成されるLC負荷ネットワーク(1623)を備え、前記LC負荷ネットワーク(1623)がコンデンサ(C2)およびオーム抵抗を有するインダクタ(110、L2)の直列接続を備え、前記電源電子回路(160)が前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)へ供給される前記電力を制御するようにプログラムされたマイクロコントローラを備える、請求項1から6のいずれかに記載の誘導加熱装置(100)。
【請求項8】
エアロゾル発生システムであって、
請求項1から7のいずれかに記載の誘導加熱装置(100)と、
エアロゾル形成基体(20)およびサセプタ(1,4)を備えるエアロゾル発生物品(10)であって、前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられる時、前記誘導加熱装置(100)が前記サセプタ(1,4)を受けて、前記サセプタ(1,4)を加熱するように構成される、エアロゾル発生物品と、を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記エアロゾル発生装置が、第一のサセプタ材料(2,5)および第二のサセプタ材料(3,6)を備えるサセプタ(1,4)を備えるエアロゾル発生物品(10)を備え、前記第一のサセプタ材料(2,5)が前記第二のサセプタ材料(3,6)と物理的に密着して配置され、前記第二のサセプタ材料(3,6)が500℃よりも低いキュリー温度を有する、請求項8に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の誘導加熱装置(100)を操作する方法であって、前記方法が、
前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられる時に前記エアロゾル発生物品(10)の前記サセプタ(1,4)を加熱するために、前記DC/ACコンバータ(162)を介して前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)に電力を供給することであって、前記電力の供給が、時間間隔で分離された複数のパルスで提供される、電力を供給することと、
前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
DC)に基づいて連続パルス間の前記時間間隔の前記期間を制御することと、を含み、
前記時間間隔の前記期間の前記制御が、第一のパルス(P
n)の開始時に測定された前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
AN)の初期値に基づいて、前記第一のパルス(P
n)と第二の連続パルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の期間を制御することを含む、方法。
【請求項11】
前記時間間隔の前記期間の前記制御が、
前記電源電子回路(160)のメモリ上に基準時間間隔の期間値、最大DC電流値(I
DCMAX)および最小DC電流値(I
CMIN)を保存することと、
前記最大DC電流値(I
DCMAX)と前記最小DC電流値(I
DCMIN)との間の中点(I
A)を計算することと、
前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
DC)を測定することと、
前記第一のパルス(P
n)の開始時に測定される初期DC電流値(I
AN)を前記計算された中点(I
A)と比較することと、
前記比較に基づいて前記基準時間間隔の期間値を調整することと、
前記第一のパルス(P
n)と第二のパルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の期間が前記調整された基準時間間隔の期間と等しくなるように前記第一のパルス(P
n)と第二のパルス(P
n+1)との間の前記時間間隔の期間を制御することと、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項3から6のいずれか一項に記載の誘導加熱装置(100)を操作する方法であって、前記方法が、
前記エアロゾル発生物品(10)が前記誘導加熱装置(100)によって受けられた時に、前記エアロゾル発生物品(10)の前記サセプタ(1,4)を加熱するために、前記DC/ACコンバータ(162)を介して前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)に電力を供給することと、
前記電力供給の開始時に前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
DC)を測定することと、
前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)への前記電力供給の開始時に前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流(I
AN)の初期値を測定することと、
前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流の最小DC電流値(I
DCMIN)を検出することと、
前記DC電源(150)によって供給される前記DC電流の最大DC電流値(I
DCMAX)を検出することと、
前記検出された最大DC電流値(I
DCMAX)と前記検出された最小DC電流値(I
DCMIN)との間の中点(I
A)を計算することと、
前記測定された初期DC電流値(I
AN)を前記検出された最小DC電流値(I
DCMIN)と前記検出された最大DC電流値(I
DCMAX)との間の前記決定された中点(I
A)と比較することと、
前記比較に基づいて時間間隔を決定することと、
前記最大DC電流値(I
DCMAX)が検出されるとき、前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)への前記電力供給を中断することと、
前記決定された時間間隔が経過した後、前記DC電源(150)から前記インダクタ(110)への前記電力供給を再開することと、を含む、
方法。
【請求項13】
前記制御システムが、請求項10から12に記載の方法
のいずれかを実行するようプログラムされたマイクロコントローラを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の誘導加熱装置(100)のための制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に関連する。本発明はまた、そうした誘導加熱装置を備えるエアロゾル発生システムに関連する。本発明はさらに、そうしたエアロゾル発生システムを操作する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成基体を有するエアロゾル発生物品と、エアロゾル形成基体を加熱するように構成された電気的に動作する熱源とを備える電気的に動作するエアロゾル発生システムは、当業界で公知である。こうしたシステムは典型的に、熱源からエアロゾル形成基体に熱を伝達することによってエアロゾルを生成し、エアロゾル発生物品、冷却および凝縮を通して引き出される空気に混入されてユーザーによって吸入されうるエアロゾルを形成するエアロゾル形成基体から揮発性化合物を放出する。
【0003】
一部の電気的に動作するエアロゾル発生システムは、誘導加熱装置または誘導源を有する電気的に動作するエアロゾル発生装置を備える。誘導加熱装置は一般に、サセプタに結合されるように構成された誘導源を備える。誘導源により交流電磁場が発生し、これがサセプタ内に渦電流を誘起する。誘起された渦電流は、オーム加熱または抵抗加熱を通してサセプタを加熱する。サセプタはヒステリシス損失の結果としてさらに加熱される。
【0004】
誘導加熱装置を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムは一般に、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱的に近接したサセプタを有するエアロゾル発生物品も備える。これらのシステムでは、誘導源は、サセプタ内の渦電流を誘導する交流電磁場を生成する。誘起された渦電流はサセプタを加熱し、これが次にエアロゾル形成基体を加熱する。典型的には、サセプタはエアロゾル形成基体と直接接触し、熱はサセプタから主に伝導によってエアロゾル形成基体に伝達される。誘導加熱装置およびサセプタを有するエアロゾル発生物品を有する電気的に動作するエアロゾル発生システムの例は、WO-A1-95/27411およびWO-A1-2015/177255に記述されている。
【0005】
電気的に動作するエアロゾル発生システムの一つの目的は、一部のエアロゾル形成基体の燃焼および熱分解の公知の有害な副産物を減少させることである。そのため、これらのシステムは、エアロゾル形成基体の温度を監視して、エアロゾル形成基体が燃焼しうる温度に確実に加熱されないことが望ましい。
【0006】
エアロゾル形成基体と直接接触するサセプタを有するエアロゾル発生物品では、サセプタの温度はエアロゾル形成基体の温度を表していると仮定されうる。この仮定を用いると、エアロゾル形成基体の温度を、サセプタの温度を監視することによって監視することができる。
【0007】
一般に、誘導加熱装置に結合されるエアロゾル発生物品内のサセプタは、誘導加熱装置の回路に直接、物理的には接続されていない。結果として、誘導加熱装置は、電気抵抗などのサセプタの電気量を直接監視し、電気量と温度との間の既知の関係からサセプタの温度を計算することはできない。
【0008】
しかし、サセプタの電気量の直接測定のないサセプタの温度を決定するための先行技術の提案がある。例えば、WO-A1-2015/177255、WO-A1-2015/177256およびWO-A1-2015/177257では、DC電源とインダクタとDC電源の両端のDC電圧およびDC電流を測定し、インダクタに結合されたサセプタの見かけの抵抗を決定するよう構成された回路とを有する装置を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムが提案されている。上述の文書で説明したように、驚くべきことに、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタの所定の温度範囲にわたる厳密なモノトニック関係におけるサセプタの温度と共に変化しうることが分かっている。厳密なモノトニック関係により、見かけの抵抗の決定からのサセプタの温度の明確な決定を可能にする。これは、見かけの抵抗の決定された値がそれぞれ、ただ一つの単一の温度の値を表すためであり、その関係に曖昧性はない。こうしてサセプタの温度と見かけの抵抗との厳密なモノトニック関係は、サセプタの温度を決定および制御することを可能にし、したがってエアロゾル形成基体の温度を決定および制御することを可能にする。
【0009】
誘導加熱装置を有する電気的に動作するエアロゾル発生システム内のエアロゾル形成基体の温度の決定および制御を改善する機会が存在する。具体的には、誘導加熱装置とサセプタを有するエアロゾル発生物品との間の相互作用を改善する機会が存在する。
【0010】
誘導加熱装置および実施が簡単で信頼でき、安価なサセプタを有するエアロゾル発生物品を備える電気的に動作するエアロゾル発生システムにおいて温度監視および制御機能を提供することが望ましい。また、実施が簡単で、信頼でき、かつ安価な誘導加熱手段を備えるエアロゾル発生装置において吸煙検出機能を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱的に近接したサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるように構成された誘導加熱装置が提供されており、誘導加熱装置は、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にサセプタを加熱するように構成され、DC電源電圧およびDC電流を供給するためのDC電源および電源電子回路を備える。電源電子回路は、DC電源に接続されたDC/ACコンバータおよびDC/ACコンバータに接続され、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にエアロゾル発生物品のサセプタと誘導結合するように配置されるインダクタを備える。電源電子回路は、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられた時にエアロゾル発生物品のサセプタを加熱するため、DC/ACコンバータを介して、DC電源からインダクタへ、時間間隔で分離された複数のパルスで提供される電力を供給し、DC電源によって供給されるDC電流の測定値に基づいて、連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。
【0012】
時間間隔で分離された複数のパルスでDC電源からインダクタへ電力を供給することにより、誘導加熱装置の電源電子回路が、誘導加熱装置によって受けられるエアロゾル発生物品内のサセプタおよびエアロゾル形成基体の加熱に対して微細な制御を与えることができる。
【0013】
DC電源からインダクタへ供給される電力の各パルスの間、インダクタは、インダクタに結合されたエアロゾル発生物品のサセプタ内の渦電流を誘発するAC電磁場を生成する。サセプタ内の渦電流はサセプタを加熱し、これは次に物品のエアロゾル形成基体を加熱する。
【0014】
DC電源からの電力の連続パルス間の時間間隔の間、DC電源からインダクタに供給する電力供給が中断される。このように、インダクタはAC電磁場を生成しないか、または低減された磁界強度を有するAC電磁場を生成する。こうして、DC電源からの電力の連続パルス間の時間間隔の間、サセプタは加熱されず、または誘起された渦電流によって加熱が低減され、冷却する機会が提供される。
【0015】
「中断」という用語は本明細書で使用される場合、インダクタによって効果的に交流電磁場が発生されないようにDC電源からのDC電力供給が停止されるまたは低減される実施形態を含む。同様に、「再開」という用語は本明細書で使用されると、インダクタに結合されたサセプタの加熱を引き起こすのに十分なインダクタによって交流電磁場が生成されるように、DC電源からの電力供給が開始または増大する実施形態を含む。
【0016】
本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。このように、電源電子回路は、サセプタをパルス間に冷却することができる時間の期間を制御するように構成される。
【0017】
連続パルス間の時間の期間を制御することは、先行技術の装置に勝るいくつかの利点を提供しうるが、これは以下に詳細に説明される。
【0018】
電源電子回路は、電源によって供給されるDC電流に基づいて、DC電源からの電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように特に構成される。上述の先行技術の文献で説明した通り、DC電源によって供給されるDC電流は、インダクタに結合されたサセプタの温度および見かけの抵抗に関連することが分かっている。従って、本発明の電源電子回路は、インダクタに結合されたサセプタの温度に間接的に基づいて、DC電源によって供給される電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成される。
【0019】
DC電源からサセプタの温度に基づいてインダクタへの電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御することによって、本発明の誘導加熱装置は、加熱サイクル中にインダクタに結合されたエアロゾル発生物品のサセプタの温度変動を補正しうる。例えば、本発明の誘導加熱装置は、インダクタに結合されたサセプタの温度が最大閾値に到達またはそれより上昇するように決定された場合、連続パルス間の時間間隔の期間を増加させるように構成されてもよく、インダクタに結合されたサセプタの温度が最小閾値に到達するまたはそれより低くなるように見える場合、連続パルス間の時間間隔の期間を短縮するように構成されてもよい。
【0020】
本発明の誘導加熱装置は、その他の公知の誘導加熱装置と比較して、誘導加熱装置によって受けられるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の加熱を改善しうる。本発明の誘導加熱装置は、先行技術の誘導加熱装置と比較して、改善されたエアロゾル発生および改善されたユーザー体験をさらに提供しうる。
【0021】
特定のエアロゾル形成基体は、狭い温度範囲でのみ加熱された時に、満足のいくまたは許容可能なエアロゾルを生成しうる。このように、これらのエアロゾル形成基体は、インダクタに結合されたサセプタの加熱の微細または近接制御を可能にしない誘導加熱装置との使用に適していない場合がある。本発明の誘導加熱装置は、インダクタに結合されたサセプタの加熱の改善、微細または近接制御を提供し、本発明の誘導加熱装置をこうしたエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と併用することを可能にしうる。
【0022】
本明細書で使用される「誘導加熱装置」という用語は、交流電磁場を生成する誘導源を含む装置を記述するために使用される。誘導源は、サセプタと結合しても相互作用してもよい。誘導源の交番磁界は、サセプタ内に渦電流を発生させてもよく、渦電流は抵抗加熱を通してサセプタを加熱しうる。サセプタはまた、ヒステリシス損失の結果としてさらに加熱されうる。
【0023】
本明細書に使用される時、「エアロゾル発生装置または電気加熱式エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル形成基体を有するエアロゾル発生物品と相互作用してエアロゾルを発生する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品と相互作用して、ユーザーの肺にユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生する装置としうる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のホルダーとしうる。エアロゾル発生装置は誘導加熱装置であってもよく、誘導源を備えてもよい。
【0024】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾル形成基体を含む物品を記述するために使用される。特に、本発明に関連して本明細書で使用される場合、「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と熱連通するサセプタを含む物品を意味するために使用される。
【0025】
エアロゾル発生物品は、誘導加熱源を備えた電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合するように設計されてもよい。誘導加熱源、またはインダクタは、エアロゾル発生物品が変動電磁場内に位置するとき、サセプタを加熱するための変動電磁場を発生することができる。使用時に、エアロゾル発生物品は、サセプタがインダクタによって発生させられた変動電磁場内に位置するように、電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合しうる。
【0026】
本明細書に使用される用語「エアロゾル形成基体」は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を加熱に応じて放出することができる基体を記述するために使用される。本明細書において記述したエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体から発生されるエアロゾルは、見えても見えなくてもよく、蒸気(例えば、通常室温にて液体または固体である物質の微粒子が気体状態にある)ならびに気体および凝縮された蒸気の液体の液滴を含んでもよい。
【0027】
「サセプタ」という用語は本明細書で使用される時、電磁エネルギーを熱に変換できる材料を意味する。変動電磁場内に位置する時、サセプタ内で誘起される渦電流がサセプタの加熱の原因となる。さらに、サセプタ内での磁気ヒステリシス損失が追加的なサセプタの加熱の原因となる。サセプタはエアロゾル形成基質と熱的に接するまたは近接する位置にあるため、エアロゾル形成基質はサセプタによって加熱される。
【0028】
サセプタおよびエアロゾル形成基体を参照して「熱的な近接さ」という用語が本明細書で使用されると、適切な量の熱がサセプタからエアロゾル形成基体の残りの部分に伝達されてエアロゾルを生成するように、サセプタがエアロゾル形成基体に対して位置していることを意味する。例えば、「熱的近接」という用語は、サセプタがエアロゾル形成基体と物理的に密着している実施形態を含むことを意味する。「熱的近接」という用語はまた、サセプタがエアロゾル形成基体から間隔を置いており、対流または放射を介してエアロゾル形成基体に適切な量の熱を伝達するように構成された実施形態を含むことを意味する。
【0029】
本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、第一のパルスの間にDC電源によって供給されるDC電流に基づいて、第一のパルスと第二の連続パルスとの間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。言い換えれば、電源電子回路は、第一のパルス中にDC電源によって供給されるDC電流の一つまたは複数の測定値に基づいて、第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔を制御するように構成されうる。
【0030】
基準DC電流開始値は、電源電子回路のメモリ上に保存されうる。基準DC電流開始値は、装置の最初の使用前に工場で設定される所定の値であってもよい。しかし、実施形態によっては、基準DC電流開始値は、装置の以前の使用から決定され、電源電子回路のメモリに保存されうる。そのため、基準DC電流開始値は、装置の各使用後に変化しうる。一連のパルスの開始時に、電源電子回路は、基準DC電流開始値と第一のパルスの間にDC電源によって供給される測定DC電流値との間の比較に基づいて、直列の第一のパルスと直列の第二のパルスの間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0031】
基準時間間隔の期間値も、電源電子回路のメモリ上に保存されてもよい。基準時間間隔の期間値は、装置の最初の使用前に工場で設定される所定の値であってもよい。しかし、実施形態によっては、基準時間間隔期間は、装置の以前の使用から決定され、電源電子回路のメモリに保存される。一連のパルスの開始時に、電源電子回路は、直列の第一のパルスの間にDC電源によって供給されるDC電流の一つまたは複数の測定値に基づいて、基準時間間隔の期間値を調節するように構成されうる。電源電子回路は、直列の第一のパルスと直列の第二のパルスとの間の時間間隔の期間として、保存された調整された基準時間間隔値を使用するようにさらに構成されうる。電源電子回路は、直列の第一のパルスと直列の第二のパルスとの間の時間間隔の期間を電源電子回路のメモリの基準値として保存するように構成されうる。言い換えれば、電源電子回路は、電源電子回路のメモリに保存された基準時間間隔の期間値を、調整された基準時間間隔値に上書きするように構成されうる。
【0032】
その後のパルスについては、電源電子回路は、各連続パルス中にDC電源によって供給されるDC電流の測定値に基づいて、保存された基準時間間隔の期間値を調整し、その後の連続パルス間の時間間隔の期間として調整された値を使用するように構成されうる。このように、電源電子回路は、電源電子回路のメモリに保存された基準値に対する反復調整によって、連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0033】
基準時間間隔の期間が、工場などで、装置の最初の使用前に予め決められている場合、所定の基準時間間隔は、約0.1秒~約10秒の間であってもよく、約0.1秒~約7秒の間であってもよく、約0.5秒~約5秒の間であってもよく、約0.5秒~約4秒の間であってもよい。基準時間間隔の期間に対する調整が最大値を超える連続パルス間の時間間隔の期間を結果的にもたらさないように、最大基準時間間隔の期間は電源電子回路のメモリに保存されうる。最大基準時間間隔の期間は、約3秒~約10秒の間であってもよく、約3秒~約7秒の間であってもよく、約4秒~約7秒の間であってもよく、約4秒であってもよい。また、基準時間間隔の期間に対する調整が最小値より低く下がる連続パルス間の時間間隔の期間をもたらさないように、最小基準時間間隔の期間はまた電源電子回路のメモリに保存されてもよい。最小基準時間間隔の期間は、約0.1秒~約3秒の間であってもよく、約0.1秒~約2秒の間であってもよく、約0.1秒~約1秒の間であってもよく、約0.5秒であってもよい。
【0034】
電源電子回路は、測定されたDC電流値の予期値からの偏差に依存する、所定の、絶対量または相対量の基準時間間隔の期間値に対する調整を行うように構成されうる。例えば、基準時間間隔の期間値に対する調整は、電源電子回路のメモリに保存された絶対量による基準時間間隔の期間値の増大または減少を含みうる。別の実施例では、基準時間間隔の期間値に対する調整は、測定されたDC電流値の予期値からの偏差の大きさに基づいて決定される、電源電子回路のメモリに保存された基準調整値の一部または割合によって、保存された基準時間間隔の期間値を、増大または減少させることを含みうる。
【0035】
基準時間間隔の期間に対する調整が所定の絶対量である場合、所定の調整値は、約0.1秒~約10秒の間であってもよく、約0.1秒~約5秒の間であってもよく、約0.1秒~4秒の間であってもよく、約0.1秒~3.5秒の間であってもよい。
【0036】
基準時間間隔の期間に対する調整が、計算または比較を介して定められた相対量を含む場合、基準時間間隔の期間に対する調整によって連続パルス間の時間間隔の期間の調整が過度にならないように、最大調整値が電源電子回路のメモリに保存されうる。最大調整値は、約0.5秒~約5秒の間であってもよく、約0.5秒~約3秒の間であってもよく、約0.5秒~約3.5秒の間であってもよく、約3.5秒であってもよい。また、基準時間間隔の期間に対する調整が連続パルス間の時間間隔の期間の無意味な調節をもたらさないように、最小基準時間間隔の期間は電源電子回路のメモリに保存されうる。最小調整値は、約0.05秒~約3秒の間であってもよく、約0.05秒~約1秒の間であってもよく、約0.05秒~約0.5秒の間であってもよく、約0.1秒であってもよい。
【0037】
二つの連続パルスの間の時間間隔の間、インダクタに結合されたサセプタを冷却することができる。二つの連続パルス間の時間間隔の期間は、サセプタが許容可能なエアロゾルを発生するための最高温度より低い温度で冷却されるのに理想的な十分な長さであるが、サセプタが許容可能なエアロゾルを発生するための最低温度より低く冷却されるのに十分な長さではない。そのため、各サセプタおよびエアロゾル形成基体の配置は、連続パルス間の時間間隔の異なる特定の理想的な期間を有しうる。
【0038】
一部のエアロゾル形成基体は、約200°C~約240°Cの間などの特定の温度範囲内だけで許容可能なエアロゾルを生成しうる。したがって、実施形態によっては、誘導加熱装置は、特定の温度または特定の温度辺りの、あるいは特定の温度範囲内のインダクタに結合されたサセプタの温度を維持するように構成されうる。
【0039】
電源電子回路は、測定されたDC電流値がインダクタに結合されたサセプタの温度が所定の最高温度以上であることを示す場合、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。これを達成するために、インダクタに結合されたサセプタの所定の最高温度に対応する所定の基準DC電流値は、電源電子回路のメモリに保存されうる。電源電子回路は、DC電源からインダクタへ供給されるDC電流を測定し、測定されたDC電流を保存された基準DC電流値と比較し、比較に基づいてDC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。例えば、所定の最小DC電流値は、電源電子回路のメモリ内に保存されてもよく、測定されたDC電流値が所定の最小DC電流値に達するかまたは下回る場合、電源電子回路はDC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されてもよい。
【0040】
これらの実施形態では、DC電源からインダクタへの電力供給の中断は、連続パルスのそれぞれの終わりを定義しうる。連続パルスのそれぞれの終わりは、電源からインダクタへ供給されるDC電流の測定値から(すなわち、サセプタの温度から)決定されるため、これらの実施形態のパルスの期間は固定されない。
【0041】
実施形態によっては、電源電子回路は、測定されたDC電流値の変化率の変化を検出するように構成されうる。これらの実施形態では、電源電子回路は、測定されたDC電流値の変化率の変化の検出に基づいて、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。例えば、誘導加熱装置のインダクタに結合されたサセプタは、下記により詳細に説明する通り、エアロゾル形成基体のための任意の所定の最大加熱温度より低いキュリー温度を有する材料を含みうる。サセプタがキュリー温度に加熱されると、測定されたDC電流値の変化率が変化しうる。言い換えれば、最大または最小などの極値は、サセプタ材料内で起きる相変化として測定されたDC電流の変化率において検出されうる。これは、サセプタがキュリー温度にあり、かつエアロゾル形成基体が所定の最高温度にあるということを示しうる。従って、電源電子回路は、DC電源からの電力供給を中断して、エアロゾル形成基体のさらなる加熱を停止または防止するように構成されうる。
【0042】
実施形態によっては、電源電子回路は、第一のパルスの開始で測定されるDC電源によって供給されるDC電流の初期値に基づいて、第一のパルスと第二の連続パルスとの間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0043】
第一のパルスの開始で測定したDC電源によって供給されるDC電流の初期値は、第一のパルスの開始時にインダクタに結合されるサセプタの温度を示す。一連のプラスの間、第一のパルスが前回の時間間隔および前のパルスに続く場合、第一のパルスの開始時に測定されたDC電源によって供給されるDC電流の初期値は、前回のパルスと第一のパルスとの間の前回の時間間隔の期間にどの程度のサセプタが冷却されるかを示しうる。
【0044】
所定の基準初期DC電流値は、電源電子回路のメモリに保存されうる。基準初期DC電流値は、インダクタに結合されたサセプタの理想的な開始温度に対応しうる。サセプタの理想的な開始温度は、特定のエアロゾル形成基体が許容可能なエアロゾルを生成する範囲内であってもよい。電源電子回路は、第一のパルスの開始時の第一のパルスのDC電流の初期値を測定しうる。次に、第一のパルスの開始時のDC電流の測定された初期値は、電源電子回路のメモリに保存された基準初期DC電流値と比較されうる。
【0045】
上述のように、電源電子回路は、以前の時間間隔の期間と同等の保存された基準時間間隔の期間を調節するように構成されうる。この調整は、第一のパルスの測定された初期DC電流値と基準初期DC電流値との間の比較に基づいてもよい。例えば、第一のパルスの測定された初期DC電流値が基準初期DC電流値よりも高い場合、これは第一のパルスの開始時にサセプタの温度が所望の値より低いことを示しうる。したがって、電源電子回路は、前回のパルスと第一のパルスとの間の前回の時間間隔の期間と比較して、第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔の期間を減少させるように構成されうる。これにより、前回のパルスと第一のパルスとの間の前回の時間間隔における時間の長さと比較して、サセプタを冷却するための第一のパルスと第二のパルスとの間の時間がより短くなる。同様に、第一のパルスの測定された初期DC電流値が基準初期DC電流値より低い場合、これは第一のパルスの開始時にサセプタの温度が所望の値より高いことを示しうる。したがって、電源電子回路は、前回のパルスと第一のパルスとの間の前回の時間間隔の期間と比較して、第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔の期間を増加するように構成されうる。これにより、前回のパルスと第一のパルスとの間の前回の時間間隔における時間の長さと比較して、サセプタを冷却するための第一のパルスと第二のパルスの間の時間がより長くなる。
【0046】
電源電子回路は、連続パルス間の時間間隔の期間を制御して、次のパルスの開始時のサセプタの温度を調節するように構成されうる。一連のパルスにわたり、この調整により、測定された初期DC電流値を反復的に調整して、所定の基準DC電流値に向ける必要がある。したがって、一連のパルスにわたって、各パルスの初期DC電流値は、所定の基準DC電流値で安定化する傾向がありうる。
【0047】
パルスの期間および連続パルス間の時間間隔の期間の独立した調整は、インダクタに結合されたサセプタの特に効果的かつ効率的な加熱と、サセプタと熱的に近接するエアロゾル形成基体からの許容可能なエアロゾルの生成を提供しうる。
【0048】
測定された初期DC電流値が安定化されると、測定された初期DC電流値の変動は、サセプタまたはエアロゾル発生物品の変化を示しうる。例えば、初期DC電流値の急激な増加は、サセプタが急速に冷却されたことを示しうる。サセプタの急速な冷却は、ユーザーによるエアロゾル発生物品の吸煙中にサセプタ上に引き出される空気によって発生しうる。このように、誘導加熱装置の電源電子回路は、DC電源によってインダクタに供給されるDC電流の測定値の変動に基づいて、吸煙を検出するように構成されうる。
【0049】
エアロゾル発生物品内のサセプタの温度を制御するために、サセプタを適応させるための様々な提案が当技術分野においてなされてきた。例えば、WO-A1-2015/177294号では、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを備えるエアロゾル発生システムが提案されている。第一のサセプタ材料は、第二のサセプタ材料と熱的に近接している。
【0050】
第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを参照して「熱的近接」という用語が本明細書で使用されると、サセプタがインダクタによって発生した交流電磁場によって加熱されるとき、熱が第一のサセプタ材料と第二のサセプタ材料との間に移動されるように、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料に対して位置付けられることを意味する。例えば、「熱的近接」という用語は、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料と物理的に密着している実施形態を含むことを意味する。「熱的近接」という用語はまた、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料ならびに第一および第二のサセプタ材料から間隔を置いている実施形態を含むことを意味する。
【0051】
実施形態によっては、第一および第二のサセプタ材料は、密着したり物理的に密着したりして、単一のサセプタを形成してもよい。これらの実施形態では、加熱時には第一および第二のサセプタ材料は実質的に同一の温度を有する。
【0052】
エアロゾル形成基体の加熱のために最適化されうる第一のサセプタ材料は、エアロゾル形成基体のための所定の任意の最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を有しうる。エアロゾル形成基体の温度を調節するために最適化されうる第二のサセプタ材料は、エアロゾル形成基体のための所定の任意の最大加熱温度よりも低い第二のキュリー温度を有しうる。サセプタが第二のキュリー温度に達すると、第二のサセプタ材料の磁性が変化する。第二のキュリー温度で、第二のサセプタ材料は強磁性の相から常磁性の相へと可逆的に変化する。エアロゾル形成基質の誘導加熱の間、第二のサセプタ材料のこの相変化は、第二のサセプタ材料との物理的接触なしに誘導加熱装置により検出されうる。相変化の検出により、誘導加熱装置がエアロゾル形成基質の加熱を制御することが許容されうる。
【0053】
例えば、第二のキュリー温度に関連する相変化が検出された時点で、誘導加熱は自動的に停止されうる。こうして、主としてエアロゾル形成基体の加熱を担う第一のサセプタ材料がキュリー温度、すなわち望ましい最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を持たない場合でも、エアロゾル形成基体の過熱を回避することができる。誘導加熱が停止した後、サセプタは第二のキュリー温度よりも低い温度に達するまで冷却される。この時点で第二のサセプタ材料はその強磁性を再び獲得する。
【0054】
本発明の誘導加熱装置は、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有するサセプタを含むエアロゾル発生物品を受けるように構成されうる。本発明の誘導加熱装置は、サセプタ内の第二のサセプタ材料の相変化の検出に基づいて、DC電源からインダクタへの電力供給を制御するようにさらに構成されうる。言い換えれば、本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、インダクタに結合されたサセプタの第二のサセプタ材料の相変化を検出し、相変化の検出に関してDC電源から供給される電力を停止または低減するように構成されうる。
【0055】
本発明の一部の特定の実施形態では、誘導加熱装置は、第二のサセプタ材料に熱的に近接して配置される第一のサセプタ材料および500℃よりも低いキュリー温度を有する第二のサセプタ材料を含むサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるように構成されてもよい。本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電流が最大DC電流値にあるときを決定し、最大DC電流値が決定されたときに、DC電源からインダクタへの電力供給を停止または低減し、決定された時間間隔後、電力が複数のパルスでDC電源からインダクタに供給されるように、DC電源からの電力供給を開始または増加するよう構成されうる。
【0056】
これらの特定の実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給される電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御するように構成されるだけでなく、DC電源によって供給されるDC電流の測定値に基づいて、各パルスの期間を制御するようにも構成されている。
【0057】
DC電源によって供給されるDC電流と二つのサセプタ材料を有するサセプタの温度との間の関係は、特に
図9を参照しながら以下に詳述される。しかし、一般的に、DC電源によって供給されるDC電流のプロファイルは、サセプタが第二のキュリー温度に達すると一時的な屈折を示し、第二のサセプタ材料は相変化を経験する。
【0058】
例えば、これらの特定の実施形態の一部において、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタが第二のキュリー温度に加熱されると増加する。サセプタが第二のキュリー温度に達すると、サセプタの見かけの抵抗が第一の極値を呈し、この例では最大であり、その後サセプタの見かけの抵抗が一時的に減少する。この一時的な減少は、相変化の間にその磁性を失う第二のサセプタに起因する。相変化が完了すると、サセプタの見かけの抵抗は、第二の極値、この例では、最小を示し、その後、DC電源がインダクタに電力を供給してサセプタを加熱し続けると、再びサセプタの見かけの抵抗が増大する。
【0059】
DC電源から供給される測定されたDC電流は、オームの法則から予想されるように、サセプタの見かけの抵抗と逆の関係を示す。そのため、この例示的な実施形態では、サセプタが第二のキュリー温度に加熱されると、測定されたDC電流は減少する。第二のキュリー温度では、測定されたDC電流は最小IDCMINに達し、最大IDCMAXに達するまで一時的に増加する。その後、サセプタがさらに加熱されると、測定されたDC電流は、再び減少する。
【0060】
本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、第二のサセプタ材料のキュリー移行を検出するように構成されうる。言い換えれば、本発明の誘導加熱装置の電源電子回路は、第二のサセプタ材料の相変化によって引き起こされるDC電源によって供給されるDC電流のプロファイルの一時的な屈折を検出するように構成されうる。キュリー移行の検出は、サセプタがエアロゾル形成基体を過熱することを避けるために、サセプタに供給される電力量を停止または減少させる時を電源電子回路が決定することを可能にしうる。
【0061】
DC電源によって供給されるDC電流の測定値の最大値または最小値などの極値の検出は、サセプタ材料の相変化が起こることを示しうる。特に、DC電源によって供給されるDC電流の最小値などの第一の極値の検出は、サセプタが第二のキュリー温度に達したことを示しうる。DC電源によって供給されるDC電流の最大値などの第二の極値の検出は、第二のサセプタ材料の位相変化が起こったことを示しうる。
【0062】
DC電源によって供給されるDC電流の屈折は、サセプタの温度のインジケータを提供する。第二のサセプタ材料のキュリー温度は、エアロゾル形成基体を点火することなく、エアロゾル形成基体から適切なまたは許容可能なエアロゾルを生成するための温度範囲内であるように選択されうる。
【0063】
実施形態によっては、電源電子回路は、最大値が検出された時に、DC電流の最大値を検出し、DC電源からインダクタへの電力供給を中断するように構成されうる。この中断は、DC電流供給からインダクタへの電力のパルスの終了を定義しうる。
【0064】
電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電流が最小DC電流値にある時を決定するようにさらに構成されうる。
【0065】
電源電子回路は、第一のパルスの開始時に測定されたDC電源によって供給される初期DC電流、前記第一のパルスの決定された最小DC電流値、および第一のパルスの決定された最大DC電流値に基づいて、第一のパルスと第二の連続パルスとの間の時間間隔の期間を制御するようにさらに構成されうる。
【0066】
一部の特定の実施形態では、電源電子回路は、第一のパルスの決定された最小DC電流値と第一のパルスの決定された最大DC電流値との間の中点を決定し、第一のパルスの初期DC電流値と、第一のパルスの最小DC電流値と第一のパルスの最大DC電流値との間の前記決定された中点を比較し、比較に基づいて、第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔の期間を制御するように構成されうる。
【0067】
それぞれの特定のサセプタおよびエアロゾル形成基体の配置に対して、決定された最大および最小のDC電流値は、同一または非常に類似しているであろう。これは、それぞれの特定のサセプタおよびエアロゾル形成基体の配置に対して、サセプタが特定の温度にあるとき、決定された最大および最小のDC電流値が発生するからであり、それは各パルスに対して同一であろう(すなわち、サセプタが第二のキュリー温度またはその近くである時)。したがって、決定された最大DC電流値と最小DC電流値との間の中点は、各連続パルスに対して同一または非常に類似しているはずである。
【0068】
決定された最大DC電流値と最小DC電流値との間の中点は、各パルスに対して適切な初期DC電流値であることが分かっている。したがって、上述の反復プロセスと類似して、パルスの初期DC電流値が複数のパルスにわたって決定された最小DC電流値と最大DC電流値との間の中点で安定化するように、電源電子回路は連続パルス間の時間間隔の期間を調節するように構成されうる。
【0069】
所定の基準値ではなく測定された初期DC電流値と比較して、決定された最大DC電流値と最小DC電流値との間の中点を使用することによって、本発明の誘導加熱装置は、サセプタおよびエアロゾル形成基体の異なる配置での使用に適している場合がある。
【0070】
本発明の第二の態様によれば、本発明の第一の態様の誘導加熱装置およびエアロゾル発生物品は、電気的に動作するエアロゾル発生システムを形成しうる。エアロゾル発生物品は、サセプタと熱的に近接したエアロゾル形成基体およびサセプタを備えうる。誘導加熱装置は、サセプタを受けて、エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時にサセプタを加熱するように構成されうる。誘導加熱装置のインダクタは、サセプタ内の渦電流を誘発するための変動電磁場を生成して、サセプタを加熱することができる。
【0071】
本発明の誘導加熱装置または電気的に動作するエアロゾル発生装置は、ハウジングと、エアロゾル発生物品を受けるためのくぼみと、そのくぼみ内に変動電磁場を発生させるために配置されたインダクタと、インダクタに電力を供給するためのDC電源と、電源からインダクタへの電力供給を制御するよう構成された電源電子回路とを備えうる。
【0072】
誘導加熱装置は、インダクタに電力を供給するためのDC電源を備える。DC電源は、DC電源電圧およびDC電流を供給するように構成される。DC電源は、適切な任意のDC電源としうる。例えば、DC電源は、単回使用電池または再充電可能電池としうる。実施形態によっては、電源はリチウムイオン電池でであってもよい。実施形態によっては、電源は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウム系電池(例えば、リチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、またはリチウムポリマー電池)であってもよい。実施形態によっては、DC電源は、一つまたは複数のコンデンサ、スーパーコンデンサまたはハイブリッドコンデンサを備えうる。DC電源は、一つまたは複数のリチウムイオンハイブリッドコンデンサを含んでもよい。
【0073】
DC電源は、任意の適切なDC電圧およびDC電流を供給するように構成されうる。DC電源は、約6.25ワット~約22.5ワットの間の範囲のDC電力に対応する、約2.5ボルト~約4.5ボルトの間の範囲のDC電圧および約2.5アンペア~約5アンペアの間の範囲のDC電流を供給するよう構成されうる。
【0074】
誘導加熱装置はまた、エアロゾル発生物品のサセプタに結合するインダクタを備える。インダクタはコイルを含んでもよい。コイルは、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルとしうる。インダクタは装置のくぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されうる。コイルはくぼみを囲みうる。実施形態によっては、インダクタコイルは、楕円形形状を有してもよく、約0,15cm3~約1,10cm3の範囲の内部容積を画定してもよい。例えば、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの内径は約5mm~約10mmの間、または約7mmとすることができ、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの長さは約8mm~約14mmの間としうる。インダクタコイルのワイヤーの直径または厚さは、円形断面のコイルワイヤーまたは平坦な長方形の断面のコイルワイヤーのどちらが使用されるかに応じて約0.5mm~約1mmの間としうる。らせん状に巻かれたインダクタコイルはくぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されうる。くぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されたらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルにより、装置のサイズを小型化することができる。インダクタは、一つのコイルまたは二つ以上のコイルを含みうる。
【0075】
誘導加熱装置はまた、DC電源からインダクタへの電力供給を制御するように構成された電源電子回路を備える。
【0076】
電源電子回路は、DC電源からインダクタへの供給のためAC電流へDC電流を変換するためのDC/ACコンバータまたはインバータを備えうる。
【0077】
DC/ACコンバータは、高周波で動作するように構成されうる。本明細書で使用されると、「高周波」という用語は、約1メガヘルツ(MHz)~約30メガヘルツ(MHz)、約1メガヘルツ(MHz)~約10MHz(約1MHz~約10MHzの範囲を含む)、および約5メガヘルツ(MHz)~約7メガヘルツ(MHz)(約5MHz~約7MHzの範囲を含む)の範囲の周波数を記述するために使用される。
【0078】
DC/ACコンバータは、LC負荷ネットワークを備えうる。LCネットワークは、エアロゾル発生物品のサセプタに結合するためのインダクタを備えうる。インダクタは、LC負荷ネットワーク内のコンデンサと直列に配置されうる。LC負荷ネットワークは、分路コンデンサをさらに備えうる。
【0079】
LC負荷ネットワークは、低オーム負荷で動作するように構成されうる。本明細書で使用される場合、「低オーム負荷」という用語は、約2オームより小さいオーム負荷を記述するために使用される。インダクタの電気抵抗は、一般的には十分の何オームであってもよい。一般に、サセプタの電気抵抗は、インダクタの電気抵抗よりも高くなり、それにより、サセプタは、エアロゾル形成基体を加熱するために、サセプタに供給される電力の大部分を熱に効率的に変換するよう構成されうる。サセプタの加熱中、サセプタの電気抵抗はまた、サセプタの温度が増加するにつれて一般的に増加する。動作の際には、サセプタの電気抵抗は、LC負荷ネットワークのオーム負荷を増加させるために、インダクタの電気抵抗に効果的に加えられうる。
【0080】
DC/ACコンバータは、電力増幅器を備えうる。具体的には、DC/ACコンバータは、トランジスタスイッチおよびトランジスタスイッチドライバ回路を備えるクラスE電力増幅器を備えうる。クラスE電力増幅器は一般的に公知であり、例えば、論文「Class-E RF Power Amplifiers(クラスEのRF電力増幅器)」(Nathan O.Sokal著、隔月雑誌QEX、2001年1月/2月号、9-20ページ、American Radio Relay League(ARRL)(米国コネチカット州ニューイントン)で公表)で詳細に説明されている。クラスE電力増幅器は、高周波数で動作するので有利でありうるが、同時に最小数の構成要素を備えた比較的単純な回路構造を有する(例えば、クラスE電力増幅器は、一個のトランジスタスイッチのみを必要し、これは、クラスD電力増幅器に比べて有利である。というのも、クラスD電力増幅器は、二個のトランジスタの一方がオフになっている時、二個のトランジスタの他方が確実にオンになるよう高周波数で制御される二個のトランジスタスイッチを必要とするからである)。さらに、クラスE電力増幅器については、スイッチング移行中のスイッチングトランジスタの両端間で低電力消費であることが公知である。クラスE電力増幅器は、単一のトランジスタスイッチのみを有するシングルエンドの一次クラスE電力増幅器でありうる。
【0081】
クラスE電力増幅器を備える実施形態では、トランジスタスイッチは任意の適切なタイプのトランジスタであってもよい。例えば、トランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)などのバイポーラ接合トランジスタ(BJT)または電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。
【0082】
クラスE電力増幅器は出力インピーダンスを有し、電源電子回路はさらに、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスをLC負荷ネットワークの低オーム負荷に整合させるための整合ネットワークを備えうる。例えば、整合ネットワークは小型の整合変成器を備えうる。整合ネットワークは、インバータまたはコンバータとインダクタとの間の電力伝達効率を改善しうる。
【0083】
電源電子回路はまた、マイクロコントローラを備えうる。マイクロコントローラは、DC電源によってインダクタに供給される電力の各パルスの期間を制御するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、DC電源によってインダクタに供給される電力の連続パルス間の時間間隔の期間を制御するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、誘導加熱装置と係合するエアロゾル発生物品のサセプタの見かけの抵抗(Ra)を決定するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、DC電源から供給されるDC電圧(VDC)およびDC電源から引き出されるDC電流(IDC)のうちの少なくとも一つの測定値からのサセプタの見かけの抵抗(Ra)を決定するようにプログラムされてもよい。マイクロコントローラは、見かけの抵抗(Ra)からエアロゾル発生物品のサセプタの温度を決定するようにさらにプログラムされてもよい。マイクロコントローラはまた、サセプタの温度からエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の温度を決定するようにさらにプログラムされてもよい。
【0084】
電源電子回路は、DC電源から引き出されるDC電流を測定するように構成されうる。電源電子回路は、DC電源から引き出されるDC電流を測定するための電流センサーを備えうる。電源電子回路は、適切な任意の電流センサーを備えうる。
【0085】
電源電子回路はまた、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するように構成されうる。電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するための電圧センサーを備えうる。電源電子回路は、任意の適切な電圧センサーを備えうる。
【0086】
サセプタの見かけの抵抗は、DC電圧およびDC電源から引き出されるDC電流の測定値から決定されうることが分かっている。驚くべきことに、サセプタの見かけの抵抗は、サセプタの温度の所定の範囲にわたる厳密なモノトニック関係におけるサセプタの温度と共に変化する。この厳密なモノトニック関係により、見かけの抵抗のそれぞれの決定された値はただ一つの単一の値を表すものであり、関係に曖昧さがないため、見かけの抵抗の決定からサセプタの温度について明瞭な決定が可能になる。サセプタの温度と見かけの抵抗との間の関係はモノトニックであるが、必ずしも線形ではない。こうしてサセプタの温度と見かけの抵抗とのモノトニック関係は、サセプタの温度を決定および制御することができるようにし、したがってエアロゾル形成基体の温度を決定および制御することができる。
【0087】
サセプタの見かけの抵抗は、オームの法則に従い、DC電源から引き出されるDC電流とDC電源によって供給されるDC電圧との間の既知の関係から算出されうる。一般に、サセプタの見かけの抵抗は、DC電源から引き出されるDC電流の測定値に基づいて決定される。サセプタの見かけの抵抗はまた、DC電源から供給されるDC電圧の測定値に基づいて決定されうる。しかし、実施形態によっては、DC電源は、一定のDC電圧値を供給するように構成されうる。これらの実施形態では、DC電源によって供給される定電圧値は既知であってもよく、電源電子回路のマイクロプロセッサのメモリなどに保存されてもよく、かつサセプタの見かけの抵抗の決定に使用されてもよい。したがって、一定電圧DC電源を含む実施形態では、電源電子回路が、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するよう構成されることが必須ではない。これは、電源電子回路の構成要素の数、複雑さ、サイズ、およびコストのうちの一つまたは複数を減少させうる。当然のことながら、一定の電圧DC電源を備える一部の実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を測定するように構成されてもよく、DC電圧の測定は、サセプタの見かけの抵抗の決定に使用されてもよい。
【0088】
実施形態によっては、DC電源が定電圧値を供給するDC電源を備える場合、電源電子回路は、定電圧DC電源によって供給される定電圧値を示す基準定電圧値を保存するように構成されうる。これらの実施形態では、電源電子回路は、DC電源によって供給されるDC電圧を監視する必要がない場合がある。ただし、これらの実施形態では、DC電源によって供給されるDC電圧値を監視するために電圧センサーも提供されうることが理解されるであろう。
【0089】
電源電子回路はまた、DCチョークとして配置された追加的なインダクタを備えうる。
【0090】
電源電子回路のサイズまたは合計容積は、特に小さくてもよい。例えば、電源電子回路のサイズまたは合計容積は2cm3以下としうる。この小さなサイズは、電源電子回路の少ない数の構成要素によるものである。LC負荷ネットワークのインダクタが、エアロゾル形成物品のサセプタへの誘導結合のためのインダクタとして使用される実施形態では、特に小さなサイズまたは容積が可能である。整合ネットワークを含まない実施形態でも、特に小さなサイズまたは容積が可能である。電源電子回路の小さなサイズまたは小さな容積は、誘導加熱装置の全体的なサイズまたは容積を特に小さく保つのに役立つ。
【0091】
誘導加熱装置はまた、エアロゾル発生物品を受けるためのくぼみを備える。くぼみは、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の少なくとも一部分を収容するよう形状設定された内部表面を有しうる。くぼみは、くぼみ内にエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体の一部分が収容されると、動作時にLC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように配置されてもよい。この配置は、LC負荷ネットワークのインダクタが、エアロゾル発生物品のサセプタに連結され、渦電流の誘導を通してサセプタを加熱することを可能にしうる。この配置により、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスを負荷に整合させるための整合ネットワークなどの追加的構成要素の必要性がなくなり、従って、電源電子回路のサイズのさらなる最小化が可能になる。
【0092】
誘導加熱装置は、装置を操作するための手段を備えうる。実施形態によっては、装置を動作させるための手段として、単純なユーザー操作スイッチを備えうる。
【0093】
全体的に、本発明の誘導加熱装置は、小型で使いやすく、効率的、清潔および堅牢な加熱装置を提供する。これは、主に基体の非接触加熱および電源電子回路の配置および構成に起因する。
【0094】
上述のように、低オーム負荷を形成し、LC負荷ネットワークのインダクタの電気抵抗よりも著しく高い電気抵抗を有するサセプタについては、本発明の誘導加熱装置は、約五秒の時間、または一部の実施形態では五秒未満の時間でさえ300~400℃の範囲の温度にサセプタを加熱しうる。同時に、誘導加熱装置のインダクタの温度は、インダクタ内ではなく、サセプタ内の熱に変換される電力の大部分によってサセプタの温度よりも十分に低く維持されうる。
【0095】
実施形態によっては、誘導加熱装置は、エアロゾル形成基体が約200°C~約240°Cの間の平均温度に加熱されうるように、エアロゾル形成基体内に配置されたサセプタに電力を供給するように構成されうる。
【0096】
誘導加熱装置は、約1キロアンペア/メートル(Ka/m)~約5Ka/mの間、約2Ka/m~約3Ka/mの間、または約2.5Ka/mの磁界強度(H-場強度)を有する変動電磁場を生成することができうる。誘導加熱装置は、約1Mhz~約30Mhzの間、約1Mhz~約10Mhzの間、または約5Mhz~約7Mhzの間の周波数を有する変動電磁場を生成することができうる。
【0097】
誘導加熱装置は、ユーザーが単一の手の指の間に持ちやすい、携帯用の、またはハンドヘルドの電気的に動作するエアロゾル発生装置でもよい。
【0098】
誘導加熱装置は、約70ミリメートル~約120ミリメートルの間の長さであってもよい。
【0099】
誘導加熱装置は、実質的に円筒形の形状であってもよい。
【0100】
具体的には、誘導加熱装置は、装置ハウジングおよび装置ハウジング内に配置されたくぼみを備え、くぼみは、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を収容するように形状設定された内部表面形状を有し、くぼみ内に前記エアロゾル形成基体の一部を収容すると、インダクタが、前記装置の動作中に誘導加熱装置のサセプタに誘導結合されるように配置される。電源電子回路はまた、高周波で動作するように構成されてもよく、DC/ACコンバータは、低いオーム負荷で動作するように構成されたLC負荷ネットワークを備え、LC負荷ネットワークは、コンデンサおよびオーム抵抗を有するインダクタの直列接続を備え、電源電子回路はDC電源からインダクタへ供給される電力を制御するようにプログラムされるマイクロコントローラを備える。
【0101】
本発明の第二の態様によれば、エアロゾル発生物品もエアロゾル発生システムの一部として提供されてもよい。エアロゾル発生物品は、口側の端(すなわち、近位端であり、それを通してエアロゾルがエアロゾル発生物品を出て、ユーザーに送達される)と、遠位端との二つの端部を含むロッドの形態であってもよい。使用において、ユーザーはエアロゾル発生物品によって発生されるエアロゾルを吸入するために口側の端で吸ってもよい。口側の端は遠位端の下流である。また、遠位端は上流端と呼ばれてもよく、口側の端の上流にある。
【0102】
用語「上流」および「下流」は本明細書で使用される時、ユーザーがそれらの使用の間、エアロゾル発生物品を吸い込む方向に関してエアロゾル発生物品の要素または要素の部分の相対位置を記述するために使用される。
【0103】
用語「長軸方向」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の口側の端と遠位端との間の方向を記述するため使用され、用語「横軸」は長軸方向に対して垂直な方向を記述するために使用される。
【0104】
用語「直径」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の横軸方向における最大寸法を記述するために使用される。用語「長さ」はエアロゾル発生物品に関連して本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品の長軸方向における最大寸法を記述するために使用される。
【0105】
エアロゾル発生物品はサセプタを備える。サセプタ材料はエアロゾル形成基体と熱的に近接して配置される。こうして、サセプタの温度が高くなると、エアロゾル形成基体は加熱され、エアロゾルが形成される。サセプタは、例えばエアロゾル形成基体内で、エアロゾル形成基体と物理的に直接接触してまたは密着して配列されてもよい。
【0106】
サセプタは、ピン、ロッド、またはブレードの形態でありうる。サセプタの長さは、約5mm~約15mmの間、約6mm~約12mmの間、または約8mm~約10mmの間でありうる。サセプタの幅は、約1mm~6mmの間であってもよく、厚さは、約10マイクロメートル~約500マイクロメートルの間または約10~約100マイクロメートルの間であってもよい。サセプタが一定の断面(例えば、円形断面)を有する場合、幅または直径は約1mm~5mmの間としうる。
【0107】
サセプタは、その幅寸法またはその厚さ寸法よりも大きい、例えばその幅寸法またはその厚さ寸法の二倍より大きい長さ寸法を有しうる。こうして、サセプタは細長いサセプタとして描写されうる。サセプタはロッド内に実質的に長軸方向に配列されうる。これは、細長いサセプタの長さ寸法が、ロッドの長軸方向とほぼ平行に、例えばロッドの長軸方向に平行から±10度以内に配列されることを意味する。細長いサセプタ素子はロッド内の半径方向に中心の位置に位置付けられてもよく、ロッドの長軸方向に沿って延在してもよい。
【0108】
実施形態によっては、エアロゾル発生物品は単一のサセプタを含みうる。実施形態によっては、エアロゾル発生物品は二つ以上のサセプタを備えうる。エアロゾル発生物品は二つ以上の細長いサセプタを備えうる。こうして、加熱はエアロゾル形成基体の異なる部分で効果的に達成されうる。
【0109】
一部の好ましい実施形態では、サセプタは第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含む。その第一のサセプタ材料はその第二のサセプタ材料と熱的に近接して配置される。その第一のサセプタ材料はその第二のサセプタ材料と物理的に密着して配置される。その第二のサセプタ材料のキュリー温度は500℃より低くてもよい。その第一のサセプタ材料は、変動電磁場にサセプタが配置されるときにそのサセプタを加熱するために主に使用されてもよい。あらゆる適切な材料を使用してよい。例えば、第一のサセプタ材料はアルミニウムであってよく、またはステンレス鋼などの鉄材料であってよい。第二のサセプタ材料は、サセプタが特定の温度(第二のサセプタ材料のキュリー温度である)に達した時を示すために主に使用することができる。その第二のサセプタ材料のキュリー温度を使用して、操作中にサセプタ全体の温度を調節することができる。従って、第二のサセプタ材料のキュリー温度はエアロゾル形成基体の発火点未満である必要がある。第二のサセプタ材料の適切な材料には、ニッケルおよびある特定のニッケル合金が含まれうる。
【0110】
少なくとも第一および第二のサセプタ材料を有するサセプタに、キュリー温度を有する第二サセプタ材料とキュリー温度を有しない第一サセプタ材料を提供するか、または互いに異なる第一のキュリー温度と第二のキュリー温度を有する第一および第二のサセプタ材料を提供することによって、エアロゾル形成基体の加熱とその加熱の温度制御が分離されうる。第一のサセプタ材料は、熱損失つまり加熱効率について最適化しうる一方で、第二のサセプタ材料は温度制御について最適化しうる。第二のサセプタ材料は、いかなる明白な加熱特性も有する必要はない。第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の所定の望ましい最大加熱温度に対応するキュリー温度、すなわち第二のキュリー温度を有するように選択しうる。「第二のキュリー温度」という用語は本明細書で使用される時、第二のサセプタ材料のキュリー温度を意味する。
【0111】
より具体的には、サセプタは、第一のキュリー温度を有する第一のサセプタ材料および第二のキュリー温度を有する第二のサセプタ材料を含み、第一のサセプタ材料が第二のサセプタ材料と熱的に近接して配置されてもよい。第二のキュリー温度は第一のキュリー温度より低くてもよい。
【0112】
望ましい最大加熱温度は、エアロゾル形成基質の局所的な過熱または燃焼が回避されるように定義されうる。第一および第二のサセプタ材料を含むサセプタは単一体の構造を有し、二材料サセプタまたは複数材料サセプタと呼ぶことができる。第一および第二のサセプタ材料がすぐ近くにあることは、正確な温度制御を提供するにあたって有利でありうる。
【0113】
第一のサセプタ材料は、500℃より高いキュリー温度を有する磁気材料であってもよい。加熱効率の観点から、第一のサセプタ材料のキュリー温度は、サセプタが加熱されることができる任意の最高温度を超えることが望ましい。第二のキュリー温度は400℃より低くなるように選択されてもよく、約380℃よりも低いか、または約360℃より低くてもよい。第二のサセプタ材料は、所望の最大加熱温度と実質的に同じである第二のキュリー温度を有するように選択された磁性材料であってもよい。すなわち、第二のキュリー温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるためにサセプタが加熱されるべき温度とほぼ同じであってもよい。その第二のキュリー温度は、例えば約200℃~約400℃の範囲内、または約250℃~約360℃の間でありうる。
【0114】
実施形態によっては、第二のサセプタ材料の第二のキュリー温度は、第二のキュリー温度に等しい温度のサセプタによって加熱される際に、エアロゾル形成基体の全体的な平均温度が240℃を超えないように選択される場合がある。本明細書では、エアロゾル形成基体の全体的な平均温度はエアロゾル形成基体の中心領域および周辺領域での複数の温度測定値の算術平均として定義される。全体的な平均温度についての最大値を予め定義することによって、エアロゾルが最適に生成されるようにエアロゾル形成基体が調整される場合がある。
【0115】
第一のサセプタ材料は最大加熱効率について選択されてもよい。変動磁場内に位置する磁性サセプタ材料の誘導加熱は、サセプタ内で誘起される渦電流による抵抗加熱と、磁気ヒステリシス損失によって生成される熱との組み合わせによって起こる。
【0116】
実施形態によっては、第一のサセプタ材料は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性の金属であってもよい。第一のサセプタは、鋼鉄または鉄ニッケル合金などの鉄または鉄合金であってもよい。第一のサセプタ材料は等級410のステンレス鋼、または等級420のステンレス鋼、または等級430のステンレス鋼など、400シリーズのステンレス鋼であってもよい。
【0117】
実施形態によっては、第一のサセプタ材料はアルミニウムなどの適切な非磁性材料でもよい。非磁性材料では、誘導加熱は渦電流による抵抗加熱によってのみ起こる。
【0118】
第二のサセプタ材料は、所望の範囲内、例えば200℃~400℃の間の特定の温度で検出可能なキュリー温度を有するために選択されうる。第二のサセプタ材料もサセプタの加熱に寄与しうるが、この特性はそのキュリー温度よりも重要ではない。第二のサセプタ材料は、ニッケルまたはニッケル合金などの強磁性金属であってもよい。ニッケルは約354℃のキュリー温度を有するが、これはエアロゾル発生物品内の加熱の温度制御にとって理想的なものでありうる。
【0119】
第一および第二のサセプタ材料は密着して単一体のサセプタを形成するなど、熱的に近接してもよい。こうして、加熱時には第一および第二のサセプタ材料は同一の温度を有する。エアロゾル形成基質の加熱のために最適化されうる第一のサセプタ材料は、所定の任意の最大加熱温度よりも高い第一のキュリー温度を有しうる。
【0120】
サセプタは、特定のインダクタと併用した時に、分散エネルギーが1ワット~8ワットの間、例えば1.5ワット~6ワットの間となるように構成されうる。構成という用語は、サセプタが特定の第一のサセプタ材料を備えることができ、また既知の周波数および既知の磁界強度の変動磁場を発生する特定の導体と併用した時、1ワット~8ワットの間のエネルギー分散が許容される特定の寸法を有しうることを意味する。
【0121】
第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有する適切なサセプタは、国際特許公開番号WO-A1-2015177294A1により詳細に記述される。
【0122】
エアロゾル発生物品はまたエアロゾル形成基体を含む。エアロゾル形成基体は固体のエアロゾル形成基体であってもよい。エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。
【0123】
エアロゾル形成基体はニコチンを含んでもよい。実施形態によっては、エアロゾル形成基体はたばこを含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料は均質化したたばこシートから形成されうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこシートを集結して形成されたロッドとしうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料の集結し、テクスチャ加工されたシートを含みうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料の集結し、捲縮したシートの集合体を含んでもよい。
【0124】
用語「均質化したたばこ材料」は本明細書で使用される時、粒子状たばこを凝集することによって形成される材料を意味する。本明細書に使用される「シート」という用語は、実質的にその厚さより大きい幅および長さを有する薄層状の要素を意味する。本明細書に使用される「集められた」という用語は、巻き込まれ、折り畳まれ、または別途エアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して実質的に横断方向に圧縮され、または収縮したシートを説明するために使用される。本明細書で使用される「テクスチャ加工されたシート」という用語は、捲縮され、型押しされ、デボス加工され、穿孔され、または別途変形されたシートを意味する。本明細書で使用される「捲縮したシート」という用語は、複数の実質的に平行した隆起またはしわを有するシートを意味する。
【0125】
エアロゾル形成基質はエアロゾル形成材料を含む非たばこを含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料はニコチン塩およびエアロゾル形成体を含むシートから形成されうる。
【0126】
エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。本明細書で使用される「エアロゾル形成体」という用語は、使用において、エアロゾルの形成を容易にし、実質的にエアロゾル発生物品の使用温度にて熱分解に対して抵抗性である任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物を記述するために使用される。適切なエアロゾル形成体は、当技術分野において公知である。
【0127】
エアロゾル形成基体が固体のエアロゾル形成基体である場合、固体のエアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎、膨化たばこおよび均質化したたばこのうち一つまたは複数を含む、例えば、粉末、顆粒、ペレット、断片、より糸、細片またはシートのうち一つまたは複数を含みうる。固体のエアロゾル形成基体は、たばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含んでもよく、それは固体のエアロゾル形成基体の加熱に応じて放出される。また、固体のエアロゾル形成基体は、例えば、さらなるたばこ揮発性風味化合物または非たばこ揮発性風味化合物を含む一つまたは複数のカプセルを含んでもよく、このようなカプセルは、固体のエアロゾル形成基体の加熱の間、溶解してもよい。
【0128】
固体のエアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもまたはその中に包埋されてもよい。
【0129】
エアロゾル形成基体は、紙またはその他のラッパーによって取り囲まれたエアロゾル形成材料を含むプラグの形態であってもよい。エアロゾル形成基体がプラグの形態である場合、任意のラッパーを含めてプラグ全体がエアロゾル形成基体であると考えられる。一つまたは複数のサセプタは細長くてもよく、一つまたは複数の細長いサセプタは、エアロゾル形成材料と物理的に直接接触してまたは物理的に密着してプラグ内に位置付けられてもよい。
【0130】
エアロゾル形成基体の外径は、少なくとも5ミリメートルであってもよい。エアロゾル形成基体の外径は、約5mm~約12mmの間としうる。実施形態によっては、エアロゾル形成基体の外径は、7.2mm±10%としうる。
【0131】
エアロゾル形成基体の長さは、約5mm~約15mmの間としうる。細長いサセプタは、エアロゾル形成基体とほぼ同じ長さであってもよい。
【0132】
エアロゾル形成基体は実質的に円柱状でもよい。
【0133】
エアロゾル発生物品はまた、エアロゾル形成基体の直ぐ下流に位置する支持要素を備えうる。支持要素は、エアロゾル形成基体に隣接しうる。
【0134】
エアロゾル発生物品はまた、エアロゾル形成基体の下流に位置するエアロゾル冷却要素を備えてもよく、例えばエアロゾル冷却要素は支持要素のすぐ下流に位置することも、支持要素に隣接することもできる。エアロゾル冷却要素は、支持要素とエアロゾル発生物品の最端の下流端に位置するマウスピースとの間に位置してもよい。エアロゾル冷却要素は、熱交換器と呼ばれてもよい。
【0135】
エアロゾル発生物品はエアロゾル発生物品の口側の端に位置するマウスピースをさらに含んでもよい。マウスピースはエアロゾル冷却要素のすぐ下流に位置することも、またエアロゾル冷却要素に隣接することもできる。マウスピースはフィルターを含んでもよい。フィルターは、一つ以上の適切な濾過材料で形成されてもよい。多くのこのような濾過材料は当技術分野で公知である。一実施形態において、マウスピースは酢酸セルローストウで形成されるフィルターを備えてもよい。
【0136】
エアロゾル形成物品の要素、例えばエアロゾル形成基体およびエアロゾル発生物品のその他の任意の要素(支持要素、エアロゾル冷却要素、およびマウスピースなど)は、外側ラッパーによって取り囲まれてもよい。外側ラッパーは任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成されてもよい。外側ラッパーは紙巻たばこ用紙であってもよい。
【0137】
エアロゾル発生物品の外径は、およそ5ミリメートル~およそ12ミリメートルの間、例えばおよそ6ミリメートル~およそ8ミリメートルの間であってもよい。エアロゾル発生物品の外径は7.2mm±10%としうる。
【0138】
エアロゾル発生物品の全長は、約30ミリメートル~約100ミリメートルの間であってもよい。エアロゾル発生物品の全長は、40mm~約50mmの間、例えば、約45mmとしうる。
【0139】
本発明の第三の態様によると、本発明の第一の態様による誘導加熱装置を操作するための方法が提供されている。その方法は、
エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時に、エアロゾル発生物品のサセプタを加熱するためのDC/ACコンバータを経由してDC電源からインダクタへ、時間間隔で分離された複数のパルスで提供される電力を供給することと、
DC電源によって供給されるDC電流に基づいて、連続パルス間の時間間隔の期間を制御することと、を含む。
【0140】
時間間隔の期間の制御は、第一のパルスの開始で測定したDC電源によって供給されるDC電流の初期値に基づいて、第一のパルスと第二の連続パルスとの間の時間間隔を制御することを含みうる。
【0141】
時間間隔の期間を制御することは、
電源電子回路のメモリ上の基準時間間隔の期間値、最大DC電流値および最小DC電流値を保存することと、
最大DC電流値と最小DC電流値との間の中点を計算することと、
DC電源によって供給されるDC電流を測定することと、
第一のパルスの開始時に測定された初期DC電流値を計算中点と比較することと、
その比較に基づいて基準時間間隔の期間値を調整することと、
第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔の期間が調整された基準時間間隔期間と等しいように、第一のパルスと第二のパルスとの間の時間間隔の期間を制御することと、をさらに含みうる。
【0142】
本発明の第四の態様によれば、本発明の第一の態様による誘導加熱装置を操作するための方法が提供されており、ここで誘導加熱装置は、第一のサセプタ材料は第二のサセプタ材料に熱的に近接して配置され、第二のサセプタ材料は500℃よりも低いキュリー温度を有する、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を含むサセプタを備えるエアロゾル発生物品を受けるよう構成されている。その方法は、
エアロゾル発生物品が誘導加熱装置によって受けられる時に、エアロゾル発生物品のサセプタを加熱するためDC/ACコンバータを介してDC電源からインダクタに電力を供給することと、
電源によって供給されるDC電流の初期値を決定することと、
電源によって供給されるDC電流が最小DC電流値にあるときを決定することと、
DC電源によって供給されるDC電流が最大DC電流値にあるときを決定することと、
最大DC電流値と最小DC電流値との間の中点を計算することと、
最初のDC電流値を最小DC電流値と最大DC電流値との間の中点と比較することと、
比較に基づいて時間間隔を決定することと、
最大DC電流値が決定された時に、DC電源からインダクタへの電力供給を中断することと、
決定された時間間隔が経過した後、電力がDC電源からインダクタに供給されるように、DC電源からの電力供給を再開することと、を含む。
【0143】
本発明の第五の態様によると、本発明の第一の態様による誘導加熱装置のための制御システムが提供されており、制御システムは、本発明の第三または第四の態様による方法工程のいずれかを実施するようプログラムされたマイクロコントローラを備える。
【0144】
本発明の一つの態様に関連して説明した特徴は、単独で、または本発明の説明されたその他の態様および特徴と組み合わせて、本発明の任意のその他の態様に適用されうることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0145】
特定の値に関連して「約」という用語が本明細書で使用される時はいつでも、「約」という用語に続く値は、技術的な考慮事項のため、厳密にその特定の値である必要はないと理解されよう。ただし、本明細書で特定の値に関連して使用される「約」という用語は、用語「約」に続く特定の値を含み、かつ明示的に開示するものと理解される。
【0146】
また、一つの態様または実施形態に関して記述される特徴は、その他の態様および実施形態に適用できる場合がある。具体的な実施形態について、ここで図を参照しながら説明する。
【
図1】
図1Aは本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するサセプタの平面図である。
図1Bは
図1Aのサセプタの側面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用する別のサセプタの平面図である。
図2Bは
図2Aのサセプタの側面図である。
【
図3】
図3は
図2Aおよび2Bに図示したサセプタを組み込むエアロゾル発生物品の特定の実施形態の概略断面図である。
【
図4】
図4は
図3に図示したエアロゾル発生物品と併用するための、電気的に動作するエアロゾル発生装置の特定の実施形態の概略断面図である。
【
図5】
図5は
図4の電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合する
図3のエアロゾル発生物品の概略断面図である。
【
図6】
図6は
図4に関連して説明したエアロゾル発生装置の電子構成要素を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図3の誘導加熱装置の電力電子回路の構成要素の概略図である。
【
図8】
図8は、負荷の誘導性およびオーム抵抗を含む、
図7の電力電子回路のLC負荷ネットワークのインダクタの概略図である。
【
図9】
図9はサセプタ材料がそのキュリー点に関連する相転移を受ける時に発生する、遠隔検出可能な電流の変化を図示したDC電流対時間のグラフである。
【
図10】
図10は、本発明による連続パルス間の時間期間の制御を示すDC電流対時間およびサセプタ温度と時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0147】
図1Aおよび
図1Bは本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するための、単一体の複数材料サセプタの特定の例を示す。サセプタ1は長さ12mmおよび幅4mmの細長い細片の形態をしている。サセプタは第二のサセプタ材料3と密着して結合されている第一のサセプタ材料2から形成される。第一のサセプタ材料2は寸法が12mm×4mm×35マイクロメートルの等級430のステンレス鋼の細片の形態である。第二のサセプタ材料3は、寸法が3mm×2mm×10マイクロメートルのニッケルのパッチである。ニッケルのパッチはステンレス鋼の細片上に電気メッキされている。グレード430のステンレス鋼は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性材料である。ニッケルは、約354℃のキュリー温度を有する強磁性材料である。
【0148】
本発明の実施形態によっては、第一および第二のサセプタ材料を形成する材料は多様なものとしうる。本発明の実施形態によっては、第一のサセプタ材料と物理的に密着した位置にある第二のサセプタ材料の二つ以上のパッチがあってもよい。
【0149】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品で使用するための、単一体の複数材料サセプタの第二の特定の例を示す。サセプタ4は長さ12mm、幅4mmの細長い片の形態である。サセプタは第二のサセプタ材料6と密着して結合されている第一のサセプタ材料5から形成される。第一のサセプタ材料5は寸法が12mm×4mm×25マイクロメートルの等級430のステンレス鋼の細片の形態である。第二のサセプタ材料6は寸法が12mm×4mm×10マイクロメートルのニッケル細片の形態である。サセプタはニッケル6の細片をステンレス鋼5の細片にクラッディングすることにより形成される。サセプタの合計の厚さは35マイクロメートルである。
図2のサセプタ4は二層または多層のサセプタと称しうる。
【0150】
図3は、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品10を示す。エアロゾル発生物品10は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40、およびマウスピース50を含む。これらの四つの要素の各々は実質的に円筒状の要素であり、各々は実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配置され、外側ラッパー60によって囲まれて、円筒状のロッドを形成する。細長い二層サセプタ4はエアロゾル形成基体内に位置し、エアロゾル形成基体と物理的に密着している。サセプタ4は
図2に関連して上述したサセプタである。サセプタ4はエアロゾル形成基体の長さとほぼ等しい長さ(12mm)を有し、エアロゾル形成基体の半径方向の中心軸に沿って位置する。
【0151】
エアロゾル発生物品10は近位または口側の端70を有し、ユーザーは使用中にこの近位または口側の端を自分の口の中に挿入し、遠位端80は口側の端70に対してエアロゾル発生物品10の反対側の端に位置する。組み立てられたエアロゾル発生物品10の合計長さは約45mmで直径は約7.2mmである。
【0152】
使用においては、空気は、使用者によってエアロゾル発生物品を介して遠位端80から口側端70に吸い込まれる。エアロゾル発生物品の遠位端80はまた、エアロゾル発生物品10の上流端として記述されてもよく、エアロゾル発生物品10の口側端70はまた、エアロゾル発生物品10の下流端として記述されてもよい。口側端70と遠位端80の間に位置するエアロゾル発生物品10の要素を、口側端70の上流にあると記述することができ、遠位端80の下流にあると記述することができる。
【0153】
エアロゾル形成基体20はエアロゾル発生物品10の最端の遠位端または上流端80に位置する。
図3に図示した実施形態において、エアロゾル形成基体20はラッパーによって取り囲まれる捲縮され均質化されたたばこ材料のシートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。
【0154】
支持要素30はエアロゾル形成基体20のすぐ下流に位置し、エアロゾル形成基体20に隣接する。
図3に示した実施形態において、支持要素は中空酢酸セルロース管である。支持要素30がエアロゾル形成基体20を、エアロゾル発生物品の最端の遠位端80に位置させる。支持要素30はまた、エアロゾル発生物品10のエアロゾル冷却要素40がエアロゾル形成基体20から間隙を介するためのスペーサーになる。
【0155】
エアロゾル冷却要素40は支持要素30のすぐ下流に位置し、支持要素30に隣接する。使用においては、エアロゾル形成基体20から放出される揮発性物質は、エアロゾル発生物品10の口側端70に向かって、エアロゾル冷却要素40に沿って通過する。揮発性物質は、エアロゾル冷却要素40内で冷却されて、ユーザーが吸入するエアロゾルを形成してもよい。
図3に図示した実施形態において、エアロゾル冷却要素はラッパー90によって取り囲まれたポリ乳酸の捲縮したシートの集合体を含む。ポリ乳酸の捲縮したシートの集合体は、エアロゾル冷却要素40の長さに沿って延びる複数の長軸方向経路を画定する。
【0156】
マウスピース50はエアロゾル冷却要素40のすぐ下流に位置し、エアロゾル冷却要素40に隣接する。
図3に示す実施形態で、マウスピース50は低濾過効率の従来の酢酸セルローストウフィルターを含む。
【0157】
エアロゾル発生物品10を組み立てるために、上記の四つの円柱状要素は外側ラッパー60内で整列させられ、密接に包まれる。
図3に図示した実施形態において、外側ラッパーは従来の紙巻たばこ用紙である。サセプタ4は、エアロゾル形成基体を形成するために使用されるプロセス中に、複数の要素を組み立ててロッドを形成する前に、エアロゾル形成基体20内に挿入されうる。
【0158】
図3に関連して説明した特定の実施形態は、均質化したたばこから形成されるエアロゾル形成基体を含む。しかし、実施形態によっては、エアロゾル形成基体は異なる材料から形成しうることが理解されよう。例えば、エアロゾル発生物品の第二の特定の実施形態は、エアロゾル形成基質20がニコチンピルビン酸塩、グリセリン、および水を含む液剤に浸された紙巻たばこ用紙の非たばこシートから形成されることを除き、
図3の実施形態に関連して上述したものと同一の要素を有する。紙巻たばこ用紙は液剤を吸収し、そのため非たばこシートはニコチンピルビン酸塩、グリセリンおよび水を含む。グリセリン対ニコチンの比は5:1である。使用においては、エアロゾル形成基体20は摂氏約220度の温度に加熱される。この温度でニコチンピルビン酸塩、グリセリン、および水を含むエアロゾルが放出され、フィルター50を通してユーザーの口内に吸い込まれうる。基体20は、エアロゾルがたばこ基体から放出されるのに必要な温度よりもかなり低い温度まで加熱されることに留意されたい。そうであるため、こうした実施形態では、第二のサセプタ材料は、ニッケルよりも低いキュリー温度を有する材料でありうる。例えば、適切なニッケル合金を選択しうる。
【0159】
図3に図示したエアロゾル発生物品10は、ユーザーによって消費されるための誘導コイル(すなわち、インダクタ)を含む、電気的に動作するエアロゾル発生装置と係合するように設計される。
【0160】
電気的に動作するエアロゾル発生装置100の概略断面図を
図4に示す。本発明によれば、エアロゾル発生装置100は、誘導加熱装置である。電気的に動作するエアロゾル発生装置100は、実質的に装置の構成要素を含む実質的に環状の円筒形のハウジング11を備える。エアロゾル発生装置100はインダクタ110を備える。
図4に示す通り、インダクタ110はエアロゾル発生装置100の基体受け入れチャンバ130の遠位部分131に隣接して位置する。使用においては、ユーザーは、エアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20がインダクタ110に隣接した位置になるように、エアロゾル発生物品10をエアロゾル発生装置100の基体受入れチャンバ130に挿入する。
【0161】
エアロゾル発生装置100はインダクタ110の起動を可能する電池150および電源電子回路160を備える。こうした起動は手動で行われてもよく、またはエアロゾル発生装置100の基体受け入れチャンバ130の中へと挿入されたエアロゾル発生物品10をユーザーが吸うのに応答して自動的に生じてもよい。電池150はDC電源であり、DC電流およびDC電圧を供給する。電源電子回路160は、後でより詳細に説明する通り、インダクタ110に高周波AC電流を供給するためのDC/ACコンバータまたはインバータ162を含む。電池150は、適切な電気的接続152を介して電源電子回路に電気的に接続されている。
【0162】
図5は電気的に動作するエアロゾル発生装置100と係合するエアロゾル発生物品10を示す。装置100が起動する時、高周波の交流電流がインダクタ110の一部を形成する巻線コイルを通過する。これにより、インダクタ110が装置の基体受け入れくぼみ130の遠位部分131内に変動電磁場を発生させる。電磁場は、約1Mhz~約30Mhzの間、約2Mhz~約10Mhzの間、または約5Mhz~約7Mhzの間の周波数で変動しうる。エアロゾル発生物品10が基体受け入れくぼみ130内に正しく位置付けられた時、物品10のサセプタ4はこの変動電磁場内に位置する。変動場はサセプタ内に渦電流を発生し、これはサセプタ4の温度を上昇させる。さらなる加熱がサセプタ4内の磁気ヒステリシス損失により提供される。熱は、主に伝導によって加熱されたサセプタ4からエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20へと伝達される。加熱されたサセプタ4はエアロゾルを形成するのに十分な温度までエアロゾル形成基体20を加熱する。エアロゾルはエアロゾル発生物品10を通して下流に引き出され、ユーザーによって吸い込まれる。
【0163】
図6は
図4に関連して説明したエアロゾル発生装置100の電子構成要素を示すブロック図である。エアロゾル発生装置100は、DC電源150(電池)、マイクロコントローラ(マイクロプロセッサ制御ユニット)161、DC/ACコンバータまたはインバータ162、負荷に対して適応するための整合ネットワーク163、およびインダクタ110を備える。マイクロプロセッサ制御ユニット161、DC/ACコンバータまたはインバータ162および整合ネットワーク163はすべて、電源電子回路160の部品である。DC電源電圧VDCおよびDC電源150から引き出されたDC電流IDCは、マイクロプロセッサ制御ユニット161へのフィードバックチャネルによって提供される。これは、DC電源電圧V
DCおよびDC電源150から引き出されて前記インダクタ110に対してAC電力P
ACのさらなる供給を制御するDC電流I
DCの両方の測定によってもよい。
【0164】
当然のことながら、整合ネットワーク163は、エアロゾル発生物品10の負荷への電源電子回路160の最適な適合のために設けられうるが、必須ではない。実施形態によっては、電子機器が整合ネットワークを備えていない場合がある。
【0165】
図7は、電源電子回路160の、より詳細にはDC/ACコンバータ162の一部の構成要素を示す。
図7から分かる通り、DC/ACコンバータ162は、電界効果トランジスタ(FET)1621、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ電界効果トランジスタ(MOSFET))、切換信号(ゲート・ソース間電圧)をFET 1621に供給するための矢印1622で示したトランジスタスイッチ供給回路、ならびに分路コンデンサC1、およびコンデンサC2とインダクタL2の直列接続を含むLC負荷ネットワーク1623などを含む、トランジスタスイッチ1620を含む、クラスE電力増幅器を備える。さらに、動作中にDC電流I
DCがDC電源150から取り出される、DC電源電圧V
DCを供給するための、チョークL1を備えるDC電源150が図示されている。
図8には合計オーム負荷1624を表すオーム抵抗Rが示されており、これはインダクタL2のオーム抵抗R
Coilと、サセプタ4のオーム抵抗R
Loadの和である。
【0166】
クラスE電力増幅器の一般的な動作原理は公知であり、Nathan O.Sokalのthe American Radio Relay League(ARRL),Newington,CT,U.S.Aの隔月雑誌QEXの2001年1月/2月版の9~20ページに記載された論文「Class-E RF Power Amplifiers」、および前述のWO-A1-2015/177255、WO-A1-2015/177256、WO-A1-2015/177257号に詳細に説明されている。
【0167】
構成要素の数が非常に少ないため、電源電子回路160の容積を極端に小さく保つことができる。例えば、電源電子回路の容積は2cm3以下としうる。この極端に小さい容積の電源電子回路は、LC負荷ネットワーク1623のインダクタL2がエアロゾル形成物品のサセプタ4との誘導結合のためのインダクタ110として直接的に使用されているために可能であり、この容積が小さいことで装置1の全体寸法が小さく保たれる。インダクタL2以外の別個のインダクタがサセプタ21への誘導結合に使用される実施形態では、これは必ず電源電子回路のサイズを増加させることになる。電源電子回路のサイズはまた、整合ネットワーク163を提供することによって増大する。
【0168】
電気的に動作するエアロゾル発生システムの動作中、インダクタ100は、サセプタ4内の渦電流を誘導する高周波交番磁界を生成する。エアロゾル発生物品10のサセプタ4が動作中に加熱されると、サセプタ110の温度が増加するにつれて、サセプタの見かけの抵抗(Ra)が上昇する。この見かけの抵抗Raの増加は、DC電源150から引き出されるDC電流IDCの測定値を介して電源電子回路160によって遠隔検出され、そのサセプタの温度および見かけの抵抗Raが増加すると、一定電圧でDC電流が減少する。
【0169】
インダクタ110によって提供される高周波の交番磁界は、サセプタ表面の近くで、渦電流を誘起する。サセプタの抵抗は、第一および第二のサセプタ材料の電気的比抵抗に部分的に依存し、また誘起された渦電流に利用できるそれぞれの材料の表皮層の深さに部分的に依存する。第二のサセプタ材料6(ニッケル)がそのキュリー温度に達すると、その磁性が失われる。これにより、第二のサセプタ材料6内で渦電流に利用できる表皮層が増え、これによりサセプタの見かけの抵抗が減少する。その結果、第二のサセプタ材料がそのキュリー点に達した時に、DC電源150から引き出された検出されたDC電流I
DCが一時的に増加する。これは
図9のグラフで見ることができる。
【0170】
図10は、装置1の動作中、DC電源150からインダクタ110への電力の一連の連続パルスのグラフを示す。パルスの期間およびパルス間の時間間隔の期間が固定されていないことを
図10から見ることができる。
【0171】
電源電子回路160は、DC電源150からインダクタ110へ供給されるDC電流を測定する。
図10に示すように、DC電流はサセプタ4の温度を示す。
【0172】
電源電子回路は、各パルスの最大DC電流IDCMAXを検出することによりパルスP1~5の各々の期間を決定する。最大DC電流は、サセプタ4が第二のキュリー温度よりも高く、かつ第二のサセプタ材料の位相転移が起こっていることを示す。そのため、最大DC電流IDCMAXを供給するDC電源150を検出すると、電源電子回路160は、DC電源150からインダクタ110への電力供給を中断する。これにより、サセプタ4によるエアロゾル発生物品10内のエアロゾル形成基体の過熱が回避される。
【0173】
電源電子回路160は、DC電源150によってインダクタ110に供給される最小DC電流IDCMINを決定する。
【0174】
最小DC電流IDCMINおよび最大DC電流IDCMAXを検出すると、電源電子回路160は、現在のパルスPnとその後のパルスPn+1との間の時間間隔期間Δtnを決定する。電源電子回路160は、各パルスの最大DC電流値IDCMAXと最小DC電流値IDCMINとの間の中点IAを計算するように構成され、中点IAを各パルスの開始時に測定された最初のDC電流値IANを比較する。電源電子回路160は、比較に基づいて、電源電子回路のメモリに保存された基準時間間隔の期間値を調節する。
【0175】
DC電源150からインダクタ110への電源を中断する時、電源電子回路は、調整された基準時間間隔の期間と同等の時間の間待機する。調整された基準時間間隔の期間と同等の時間が経過した後、電源電子回路はDC電源150からインダクタ110への電力供給を再開し、次のパルスPn+1を開始する。
【0176】
図10に示すように、第二のパルスP
2の初期DC電流値I
A2は、最大DC電流I
DCMAXと最小DC電流I
DCMINとの間の中点I
Aを超えている。これは、サセプタの温度が、第二のパルスP
2の開始時の最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの間の中点温度T
Aより低いことを示す。したがって、電源電子回路は、第一のパルスP
1と第二のパルスP
2との間の時間間隔Δt
0と比較した、第二のパルスP
2と第三のパルスP
3との間の時間間隔Δt
1の期間を短縮する。この調整により、サセプタが第二のパルスP
2と第三のパルスP
3との間で冷却される時間が短くなる。
【0177】
同様に、第三のパルスP3の初期DC電流値IA3は、最大DC電流IDCMAXと最小DC電流IDCMINとの間の中点より低い。これは、サセプタの温度が、第三のパルスP3の開始時に中点TAの温度を超えていることを示す。したがって、電源電子回路は、第二のパルスP2と第三のパルスP3との間の時間間隔Δt1と比較した、第三のパルスP3と第四のパルスP4との間の時間間隔Δt2の期間を短縮する。この調整により、サセプタが第三のパルスP3と第四のパルスP4との間で冷却される時間が長くなる。
【0178】
第四のパルスP4の最初のDC電流値IA4は、最大DC電流IDCMAXと最小DC電流IDCMINとの間の中点IAと等しい。したがって、電源電子回路は、第四のパルスP4と第五のパルスP5との間の時間間隔Δt4の期間を調整せずに、第三のパルスP3と第四のパルスP4との間の時間間隔Δt3と同じ期間を使用する。そのため、連続パルス間の時間間隔の期間は4パルス後に安定化した。時間間隔の期間が安定しているため、最大DC電流IDCMAXと最小DC電流IDCMINとの間の中点IAからの初期DC電流値の変動は、その後のパルスでは、ユーザーがエアロゾル発生物品を吸煙することを示しうる。
【0179】
上述の模範的実施形態によって請求の範囲を制限する意図はない。上述の例示的な実施形態と一貫性のあるその他の実施形態は、当業者には明らかであろう。