(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】フレキシブル電子ディスプレイ用の低誘電率の光学的に透明な接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221108BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20221108BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221108BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20221108BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
B32B27/30 A
B32B7/12
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2019529494
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(86)【国際出願番号】 US2017062554
(87)【国際公開番号】W WO2018102179
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-19
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クラッパー,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング,ロス イー.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,クリストファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エバーアーツ,アルバート アイ.
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172865(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0~50重量%のC
1~C
9アルキル(メタ)アクリレート、
40~99重量%のC
10~C
24アルキル(メタ)アクリレート、
5~30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、
0~10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、
及び0~5重量%の架橋剤、
を含む前駆体から誘導される、フレキシブルデバイス用のアセンブリ層であって、
前記アセンブリ層が、
-30℃~90℃の温度範囲内で、周波数1Hzにおいて2MPaを超えないせん断貯蔵弾性率と、
20kPa~200kPaの間でせん断応力を負荷して5秒で測定された場合に少なくとも6×10
-6 1/Paであるせん断クリープコンプライアンス(J)と、
20kPa~200kPaの範囲内の少なくとも1点でせん断応力が負荷された場合において前記負荷されたせん断応力の解除後1分以内に少なくとも50%である歪み回復と、
-20℃未満のガラス転移温度
を有する、アセンブリ層。
【請求項2】
100kHzの周波数で測定したときに、5.0未満の誘電率(Dk)を有する、請求項
1に記載のアセンブリ層。
【請求項3】
前記アセンブリ層の誘電率(Dk)が、65℃/相対湿度90%の条件に400時間よりも長く曝露されたとき、その初期値の40%超だけ変化しない、請求項
1に記載のアセンブリ層。
【請求項4】
光学的に透明である、請求項
1に記載のアセンブリ層。
【請求項5】
第1のフレキシブル基材と、
第2のフレキシブル基材と、
前記第1のフレキシブル基材と前記第2のフレキシブル基材との間に前記第1のフレキシブル基材及び前記第2のフレキシブル基材と接触して配置された、請求項1~
4のいずれか一項に記載のアセンブリ層と
を含む、ラミネート。
【請求項6】
前記ラミネートが、10mm未満の曲率半径を強いるチャネル内に室温で24時間の期間にわたって配置されたとき、座屈又は層間剥離を起こさない、請求項
5に記載のラミネート。
【請求項7】
曲率半径10mm未満で折り曲げる10,000サイクルの、室温での動的折り曲げ試験に供されたとき、座屈又は層間剥離を起こさない、請求項
5に記載のラミネート。
【請求項8】
第1の基材と第2の基材とを接着する方法であって、前記第1の基材と前記第2の基材の両方が可撓性であり、前記方法が、
前記第1の可撓性の基材と前記第2の可撓性の基材との間に、請求項1~
4のいずれか一項に記載のアセンブリ層を配置することと、
圧力及び熱のうちの少なくとも1つを加えてラミネートを形成することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、フレキシブルアセンブリ層の分野に関する。詳細には、本発明は、フレキシブルな又は折り曲げ可能な電子ディスプレイ及びフレキシブルな又は折り曲げ可能な光起電材料等のフレキシブルデバイスに使用される、フレキシブルアセンブリ層に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の産業における感圧性接着剤の一般的な用途は、コンピュータモニタ、TV、携帯電話、及び小型ディスプレイ(車内、機器、ウェアラブル、電子機器等)等の様々なディスプレイの製造におけるものである。フレキシブル電子ディスプレイは、ディスプレイを亀裂又は破損なしに自由に曲げることができるものであり、例えばフレキシブルプラスチック基材を使用して電子デバイスを作製するための、急速に台頭しつつある技術領域である。この技術により、電子的な機能を非平面物体に組み込むこと、所望の設計への適合、及び多数の新しい用途をもたらすことができる使用中の可撓性が可能となる。
【0003】
フレキシブル電子ディスプレイの出現により、電子ディスプレイアセンブリの外側カバーレンズ若しくはシート(ガラス、PET、PC、PMMA、ポリイミド、PEN、環状オレフィンコポリマー等をベースとする)と、その下のディスプレイモジュールとの間のアセンブリ層又は間隙充填層としての役割を果たす接着剤、特に光学的に透明な接着剤(OCA)に対する需要が増加しつつある。OCAの存在は、アセンブリに対する構造的な支持も提供しながら輝度及びコントラストを増大させることにより、ディスプレイの性能を改善させる。フレキシブルアセンブリにおいて、OCAはアセンブリ層でも役割を果たすことになり、そのことにより、典型的なOCA機能に加え、折り曲げによって誘発された応力のほとんどを吸収し、その結果、ディスプレイパネルの脆弱な構成要素への損傷が防止され、折り曲げの応力下での破損から電子部品を保護することができる。OCA層は、中立曲げ軸を、例えば、有機発光ディスプレイ(OLED)のバリア層、駆動電極、若しくは薄膜トランジスタ等のディスプレイの脆弱な構成要素に、又は、少なくともこれらの近くに、配置及び保持するのに使用されてもよい。
【0004】
ディスプレイの表示領域又は光起電アセンブリの光活性領域の外側で使用される場合、フレキシブルアセンブリ層は必ずしも光学的に透明である必要はない。実際に、そのような材料は、例えば、ディスプレイの背面アセンブリ用接着剤として又はアセンブリの周縁部におけるシーラントとしてなお有用とすることができ、その結果、デバイスを密封するのに十分な接着性を維持しながら基材の動きが可能になる。
【0005】
典型的なOCAは本質的に粘弾性であり、ある範囲の環境曝露条件及び高周波数荷重の下で耐久性をもたらすものである。そのような場合、高レベルの接着性と、粘弾性特性のある程度のバランスとが維持されて、良好な感圧挙動が実現され、かつ防振性がOCAに組み込まれる。しかし、これらの特性は、折り曲げ可能な又は耐久性あるディスプレイの可能にするには万全ではない。
【0006】
タッチ感度は、タッチ可能なディスプレイにとって重要な因子である。投影容量(projective capacitive、PCAP)は、ディスプレイの特定の点におけるキャパシタンスの変化によってタッチを感知する。OCAの使用は、誘電率を慎重に考慮することにより、PCAPタッチ感度を改善するのを助けることができる。
【0007】
タッチセンサの最適な動作を決定するために、ディスプレイと接触している指又はスタイラスのキャパシタンス(C
finger)に対する誘電率(dielectric constant)又は誘電率(permittivity)の影響は、有意な因子である。C
fingerは、以下の通り定義される:
【数1】
式中、ε
Rは、指とタッチ電極(例えば、タッチセンサ)との間の材料の誘電率であり、ε
0は、真空誘電率であり、Aは、タッチ面積であり、tは電極と指との間の厚さであり、T
vは、電極と指との間の厚さを、指と電極との間の誘電率で割ることによって定義される、等価真空厚さである。一実施形態では、ε
Rは、付加的にすることができる(例えば、タッチセンサがOCAによりカバーガラスと結合されたフィルムの裏側にある場合、ガラス+OCA+フィルムタッチセンサがオンである)。
【0008】
タッチセンサとディスプレイ(感知回路の背後の)との間の最適な接着剤を決定するには、寄生容量(CP)を最小限に抑えるべきである。この目標は、ディスプレイ及びディスプレイの背後に位置付けられた電子機器によって創出されるノイズを隔離し/最小限に抑えるために、タッチセンサの背後に絶縁体を設けることである。誘電率が1である場合、空隙は、この場合、理想的な絶縁体とすることができる。しかし、光学性能を改善し、より薄いデバイスを可能にするために、OCAは、タッチセンサをディスプレイに直接結合するのに使用されることが多い。この場合、OCAは、等価真空厚さ、Tvを最大限にするよう選択されるべきである。これは、より低い誘電率又はより厚い接着剤層を介して行うことができる。折り曲げ可能なOLEDデバイス構造の場合、より薄い接着層が好ましい場合もあり、したがって、より低い誘電率のOCAを有することが理想的と考えられる。
【0009】
タッチ感度に関する別の重要な因子は、タッチセンサトレース上の腐食の防止である。多くのタッチセンサ製造業者は、腐食を防止する有機層でのタッチセンサトレースの不動態化によって、この問題に対処する。プロセスを簡略化し、コストを低減するために、OCAを有機層として使用し、タッチセンサの腐食感知部分に直接接触させて配置してもよい。しかし、これらトレースへの金属フレックス接続と同様に、この有機層に対する環境曝露は、タッチ回路への損傷及びタッチ感度の損失に繋がる可能性がある。これを防止するために、酸を含まず、接触するようになる材料の酸化及び/又は還元を引き起こさない、OCAを選択すべきである。
【0010】
産業界における更に別の必要性は、OCAが、その環境に依存しない比較的安定な誘電率を有することである。例えば、環境湿度の変化に起因する誘電率の大きな変動は、タッチセンサの感度に著しく影響を及ぼし得る。
【0011】
フレキシブルディスプレイアセンブリに対する極めて異なる機械的要件に起因して、この新しい技術分野における用途のための新規の接着剤を開発する必要がある。光学的透明度、接着性、及び耐久性等の、従来の性能属性と共に、これらのOCAは、欠陥及び層間剥離のない、曲げ性及び回復性等の新しい課題の一連の要件を満たす必要がある。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態において、本発明は、フレキシブルデバイス用のアセンブリ層である。アセンブリ層は、約0~約50重量%のC1~C9アルキル(メタ)アクリレート、約40~約99重量%のC10~C24アルキル(メタ)アクリレート、約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、及び約0~約5重量%の架橋剤、を含む前駆体から誘導される。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材との間に第1の基材及び第2の基材と接触して配置されたアセンブリ層とを含む、ラミネートである。アセンブリ層は、約0~約50重量%のC1~C9アルキル(メタ)アクリレート、約40~約99重量%のC10~C24アルキル(メタ)アクリレート、約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、及び約0~約5重量%の架橋剤、を含む前駆体から誘導される。
【0014】
更に別の実施形態において、本発明は、第1の基材と第2の基材とを接着する方法であり、第1及び第2の基材の両方が可撓性である。方法は、第1の基材と第2の基材との間にアセンブリ層を配置することと、圧力及び/又は熱を加えてラミネートを形成することと、を含む。アセンブリ層は、約0~約50重量%のC1~C9アルキル(メタ)アクリレート、約40~約99重量%のC10~C24アルキル(メタ)アクリレート、約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、及び約0~約5重量%の架橋剤、を含む前駆体から誘導される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、例えば、電子ディスプレイ、フレキシブル光起電セル又はソーラーパネル、及びウェアラブル電子機器等の、フレキシブルデバイスにおいて使用可能なアセンブリ層である。本明細書で使用される「アセンブリ層」という用語は、以下の特性を保有する層を指す:(1)少なくとも2つのフレキシブル基材への接着性、及び(2)繰り返される曲げの最中に被着体上に堅持して耐久試験に合格するのに十分な能力。本明細書で使用される「フレキシブルデバイス」は、曲げ半径が200mm、100mm、50mm、20mm、10mm、5mm、又は更に2mm未満程度に低い、繰り返しの曲げ又は巻上げ動作に耐えることができるデバイスと定義される。アセンブリ層は、軟質であり、主として弾性で、プラスチックフィルム又はガラスのようなその他のフレキシブル基材に対して良好な接着性を持ち、かつ動的せん断荷重に対して高い耐性を有する。更に、アセンブリ層は、比較的低い弾性率、中等度の応力での高いパーセントのコンプライアンス、低いガラス転移温度、折り曲げ中の最小のピーク応力の発生、及び応力を負荷及び解除した後の良好なひずみ回復を有し、繰り返しの折り曲げ及び折り曲げ解除に耐えるその能力のため、フレキシブルアセンブリでの使用に適したものになる。多層構造体を繰り返し曲げ又は丸める状況下では、接着剤層に対するせん断荷重が非常に顕著となり、あらゆる形態の応力が、機械的欠陥(層間剥離、1つ以上の層の座屈、接着剤中のキャビテーション気泡等)だけでなく光学的欠陥又はむらも引き起こす可能性がある。主として粘弾性を特徴とする従来の接着剤とは異なり、本発明のアセンブリ層は、使用条件では主として弾性であり、それでもなお、ある範囲の耐久性要件に合格するのに十分な接着性を維持する。一実施形態において、アセンブリ層は光学的に透明であり、低ヘイズ、高可視光透明度、抗白色化挙動、及び環境耐久性を示す。
【0016】
本発明のアセンブリ層は、選択されたアクリルモノマー組成物から調製され、異なる程度で架橋されて、ある範囲の弾性特性をもたらす一方で、なお、全ての光学的に透明な要件をほぼ満たしている。例えば、折り曲げ半径が5mm以下に低いラミネート内で使用されるアセンブリ層は、ラミネートの層間剥離若しくは座屈、又は接着剤の気泡を引き起こさずに得ることができる。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層組成物は、約0~約50重量%のC1~C9アルキル(メタ)アクリレート、約40~約99重量%のC10~C24アルキル(メタ)アクリレート、約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、及び約0~約5重量%の架橋剤、を含む前駆体に由来する。
【0017】
適切なアルキルアクリレート(即ち、アクリル酸アルキルエステルモノマー)の例としては、非三級アルキルアルコールの直鎖又は分枝鎖一官能性アクリレート又はメタクリレートであってアルキル基が1~24個の炭素原子を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。適切なモノマーの例としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニルメタ(アクリレート)、ベンジルメタ(アクリレート)、イソステアリルアクリレート、及び2-メチルブチル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。その他の適切なモノマーには、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,137,807号に記載されているもの等の分岐長鎖アクリレートが含まれる。追加の適切なアルキルモノマーには、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,399,724号に記載されているもの等の二級アルキルアクリレートが含まれる。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層は、任意のビニルエステル又はスチレン系モノマーを持つアルキル(メタ)アクリレートモノマーのみ含む。そのような場合、組成物の弾性率及びガラス転移温度(Tg)は、低い及び高いTgの降伏モノマーの組み合わせを選択することによって調節することができる。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層は、約0~約50重量%のC1~C9アルキル(メタ)アクリレートと、約40~100重量%のC10~C24アルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前駆体組成物は、ヒドロキシル(メタ)アクリレートコモノマーを含む。適切なモノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層は、ヒドロキシ官能性共重合性モノマーを約0~約40重量部、特に約5~約35部、より具体的には約15~約30部含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前駆体組成物は、非ヒドロキシ官能性極性共重合性モノマーを含む。適切な非ヒドロキシ官能性極性共重合性モノマーの例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、エーテル官能性モノマー、例えば2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、窒素含有モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキル置換及びN,N-ジアルキル置換アクリルアミド又はメタクリルアミドであって、アルキル基が最大3個の炭素を有するもの、及びN-ビニルラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。適切な置換アミドモノマーの例としては、n,n-ジメチルアクリルアミド、n,n-ジエチルアクリルアミド、N-モルホリノ(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、アクリル系アセンブリ層は、極性共重合性モノマーを約0~約10重量部、特に約1~約7部、より具体的には約1~約5部含む。
【0020】
アクリル系アセンブリ層のモノマー組成物は、ビニルエステル、特にC1~C10ビニルエステルを含んでいてもよい。市販の適切なビニルエステルの例としては、Momentive Specialty Chemicals(New Smyrna Beach、FL)から入手可能な酢酸ビニル、VeOVA 9又はVeOVA 10が挙げられるが、これらに限定されない。ビニルエステルは、典型的には、約1部~約20重量部、詳細には約1~約15部、より詳細には約1~約10部の量で、モノマー混合物に添加される。スチレン系モノマーなどのその他のモノマーが使用されてもよい。
【0021】
一実施形態では、フリーラジカル発生開始剤が、組成物中に含まれる。フリーラジカル発生開始剤の例としては、熱又は光開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。熱開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル及びその誘導体などの過酸化物、又はアゾ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。市販のアゾ化合物の例には、2,2'-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)である、Wilmington、DEに位置する、E.I.du Pont de Nemours and Co.から入手可能なVAZO 67が含まれる。広く様々な温度で熱重合を開始するのに使用することができる、様々な過酸化物又はアゾ化合物が入手可能である。光開始剤は、熱開始剤の代わりに、又は熱開始剤と組み合わせて使用するかのいずれかで使用されてもよい。特に有用な光開始剤としては、IRGACURE 819、IRGACURE 651、及びDarocur 1173(全て、Tarrytown、NYに位置するBASFから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。開始剤は、典型的には、約0.01部~約2重量部、詳細には約0.02~約1部、より詳細には約0.02~約0.5部の量で、前駆体混合物に添加される。
【0022】
一実施形態では、モノマー混合物は、多官能性架橋剤を含む。例えば、前駆体化合物は、溶媒をコーティングした接着剤を調製する乾燥工程中に活性化される熱架橋剤、及び重合工程中に共重合する架橋剤を含んでいてもよい。そのような熱架橋剤としては:多官能性イソシアネート、多官能性アジリジン、及びエポキシ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。重合することができる例示的な架橋剤には、二アクリル酸1,6-ヘキサンジオールなどの二官能性アクリルレート、又は当業者に公知のような多官能性アクリレートが含まれる。重合中に組み込むことができるその他の有用な架橋剤としては、架橋網状構造が創出されるように、(メタ)アクリレート末端化合物、例えばウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、及びエポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。共重合することができる例示的な市販の架橋剤としては、Allnex(Brussels、BE)製のEBECRYL 270、EBECRYL 8402、EBECRYL 8807、又はEBECRYL 230;及びSartomer(Exton、PA)製のCN9XX又はCN9XXXシリーズ脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。追加の有用なジ(メタ)アクリレート架橋剤には、日本化薬(東京、日本)から入手可能なUX-0937、UX3204、UXF4002、及びUXT-6000;日本ユピカ株式会社(東京、日本)から入手可能なU-PiCA 8965、8966又は8967ウレタンジ(メタ)アクリレート;又は根上工業株式会社(能美市、日本)製のART RESINウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれる。
【0023】
有用なイソシアネート架橋剤には、例えば、DESMODUR N3300として、Bayer(Cologne,Germany)から入手可能な芳香族トリイソシアネートが含まれる。紫外線、又は「UV」活性化架橋剤を使用して、アセンブリ層の前駆体を架橋することもできる。そのようなUV架橋剤には、ベンゾフェノンなどの非共重合性光架橋剤、及び4-アクリルオキシベンゾフェノンのようなアクリル化又はメタクリル化ベンゾフェノンなどの共重合性光架橋剤を含めてもよい。典型的には、架橋剤は、存在する場合、重量ベースで約0.01部~約5部、特に約0.01~約4部、より具体的には約0.01~約3部の量で、モノマー混合物に添加される。例えば、ポリメチルメタクリレートマクロマー又はポリスチレンマクロマーなどの高Tgマクロマーを共重合することなどによって、イオン架橋、酸塩基架橋、又は物理的架橋法の使用などのその他の架橋方法を使用してもよい。含まれる場合、マクロマーは、アセンブリ層組成物中の全モノマー成分の、約1~約20重量部の量で使用されてもよい。
【0024】
アセンブリ層は、本質的に粘着性であってもよい。望みに応じて、粘着付与剤を、アセンブリ層の形成前に前駆体混合物に添加することができる。有用な粘着付与剤には、例えば、ロジンエステル樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン、及びテルペンフェノール樹脂が含まれる。一般に、水素化ロジンエステル、テルペン、又は芳香族炭化水素樹脂から選択される淡色系粘着付与剤が好ましい。含まれる場合、粘着付与剤は、前駆体混合物に、約1部~約50重量部、より詳細には約5~約45部、最も詳細には10~30部の量で添加される。
【0025】
一実施形態において、アクリル系アセンブリ層は、インジウムスズ酸化物(ITO)を除去するための酸、及び金属の微量腐食であって、通常ならタッチセンサ及びそれらの集積回路又はコネクタに損傷を与える可能性があるものを、実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用される「実質的に含まない」は、約2重量部未満、詳細には約1部未満、より詳細には約0.5部未満を意味する。
【0026】
例えば、分子量調節剤、カップリング剤、オイル、可塑剤、酸化防止剤、UV安定化剤、UV吸収剤、顔料、硬化剤、ポリマー添加剤、ナノ粒子、及びその他の添加剤を含む、その他の材料を、特別な目的でモノマー混合物に添加することができる。アセンブリ層が光学的に透明である必要がある場合、重合及びコーティング後にアセンブリ層の光学的透明度を著しく低減させないことを前提として、その他の材料をモノマー混合物に加えることができる。本明細書で使用される「光学的に透明な」という用語は、400~700nmの波長範囲で、約90%よりも高い視感透過率、約5%未満のヘイズ、特に約2%未満のヘイズを有する材料を指す。視感透過率及びヘイズは共に、例えばASTM-D 1003-92を使用して測定することができる。典型的には、光学的に透明なアセンブリ層は、視覚的に気泡を含まない。
【0027】
アセンブリ層のモノマー成分は、前駆体混合物中にブレンドすることができる。この前駆体混合物は、熱又は化学線に曝露することにより、予備重合させることができる(混合物中の開始剤を分解する)。これは、後で1種以上の架橋剤、その他の添加剤、及び追加の開始剤を添加することができるコーティング可能なシロップが形成されるよう、架橋剤及びその他の成分を添加する前に、行うことができる。次いで、化合したシロップをライナー上に、又は基材上に直接コーティングし、UVへの追加の曝露によって不活性雰囲気下で完全に重合させる。あるいは、架橋剤、任意の添加剤、及び開始剤をモノマーに添加することができ、混合物は、1つの工程で(例えば、液体OCAとして)重合及び硬化の両方を行うことができる。所望のコーティング方法及び粘度は、どの手順が使用されるかを決定することになる。
【0028】
別の方法では、アセンブリ層のモノマー成分を溶媒とブレンドして、混合物を形成することができる。混合物は、熱又は化学線に曝露することにより、重合させることができる(混合物中の開始剤を分解する)。架橋剤、並びに粘着付与剤及び可塑剤等の追加の添加剤を、溶媒和ポリマーに添加してもよく、次いでこれらをライナー上にコーティングし、炉内に通して溶媒を乾燥除去することにより、コーティングされた接着フィルムを得ることができる。無溶媒重合法、例えば、米国特許第4,619,979号及び同第4,843,134号(Kotnourら)に記載されている連続フリーラジカル重合法;米国特許第5,637,646号(Ellis)に記載されている、バッチ反応器を使用した本質的に断熱性の重合法;及び米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されている、パッケージ化された予備接着剤組成物を重合するために記述された方法も、ポリマーの調製に利用してもよい。
【0029】
開示された組成物又は前駆体混合物は、ロールコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティング等の、当業者に公知の任意の様々な技法によりコーティングされてもよい。あるいは前駆体組成物は、液体として送達されて、2つの基材の間の間隙を満たし、その後、熱又はUVに曝露されて、2つの基材の間で組成物を重合及び硬化させてもよい。
【0030】
本発明は、アセンブリ層を含むラミネートも提供する。ラミネートは、2つのフレキシブル基材層又は多数の基材層の間に挟まれた、少なくとも1つのアセンブリ層の多層複合体と定義される。例えば、複合体は、基材/アセンブリ層/基材の3層複合体;基材/アセンブリ層/基材/アセンブリ層/基材の5層複合体などにすることができる。そのような多層積層体におけるフレキシブルアセンブリ層のそれぞれの厚さ、機械的、電気的(誘電率等)、及び光学的特性は同じであってもよいが、これらは、最終的なフレキシブルデバイスアセンブリの設計及び性能特性に、より良く適合するために、異なっていてもよい。ラミネートは、以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:ラミネートが使用される物品の有用寿命にわたる光学透過率、ラミネートが使用される物品の層間の十分な接着強度を維持する能力、層同士の間の剥離に対する抵抗性又は回避、及び有用寿命わたる気泡に対する抵抗性。気泡形成に対する抵抗性及び光学透過率の保持は、加速老化試験を使用して評価することができる。加速老化試験では、アクリル系アセンブリ層を2つの基材の間に配置する。次いで得られたラミネートを、ある期間にわたり高湿度としばしば組み合わせて高温に曝露する。高温及び高湿度に曝露した後であっても、アセンブリ層を含むラミネートは、光学的透明度を保持することになる。例えば、アセンブリ層及びラミネートは、70℃及び90%の相対湿度で約72時間にわたり老化させ、続いて室温まで冷却した後、光学的に透明なままである。老化後、接着剤の400ナノメートル(nm)~700nmにおける平均透過率は、約90%よりも高く、ヘイズは約5%未満、詳細には約2%未満である。
【0031】
使用中、アセンブリ層は、氷点よりも十分低い温度(すなわち、-30℃、-20℃、又は-10℃)~約70、85、又は更には90℃の広い温度範囲にわたり、何千回の折り畳みサイクルにわたって疲労に耐えることになる。更に、アセンブリ層を組み込んだディスプレイは、折り曲げられた状態で何時間も静置され得るので、アセンブリ層は、クリープが最小限に抑えられた状態から全くない状態にあり、ディスプレイの著しい変形が防止されるが、この変形は、例えあったとしても部分的にのみ回復可能となり得るものである。アセンブリ層又はパネル自体のこの永久歪みは、ディスプレイ産業では許容できない光学的歪み又はむらをもたらす可能性がある。そのため、アセンブリ層は、ディスプレイデバイスを折り曲げることによって誘発される相当な曲げ応力に耐えることができると共に、高温高湿(HTHH)試験条件にも耐えることができる。最も重要なこととしては、アセンブリ層は、並外れて低い貯蔵弾性率及び高い伸長を、広範な温度範囲(氷点よりも十分に低い温度を含み;したがって、低ガラス転移温度が好ましい)にわたって有し、架橋されて、静荷重下でほとんど又は全くクリープがないエラストマーを生成する。
【0032】
折り曲げ又は折り曲げ解除の事象中、アセンブリ層は著しい変形を受け、応力を引き起こすことになると予想される。これらの応力に抵抗する力は、アセンブリ層を含む、折り曲げディスプレイの層の弾性率及び厚さによって、部分的には決定されることになる。折り曲げに対する低い抵抗性並びに適切な性能、最小応力の発生、及び曲げの事象に伴う応力の良好な消散を確実にするため、アクリル系アセンブリ層は、十分に低い貯蔵弾性率又は弾性率であって、しばしば、せん断貯蔵弾性率(G’)として特徴付けられるものを有する。この挙動が、そのようなデバイスで予想される使用温度範囲にわたって一貫したままであることを更に確実にするため、広範なかつ関連ある温度範囲にわたってG’の変化は最小である。一実施形態において、関連ある温度範囲は約-30℃~約90℃である。一実施形態において、せん断弾性率は、関連ある温度範囲全体にわたり、約2MPa未満、詳細には約1MPa未満、より詳細には約0.5MPa未満、最も詳細には約0.3MPa未満である。したがって、材料がガラス状状態に移行する温度であるガラス転移温度(Tg)を、典型的には約107Paよりも大きい値に相当するG’の変化により、この関連ある動作範囲外にかつこの範囲よりも低く位置付けることが好ましい。本明細書で使用される「ガラス転移温度」又は「Tg」という用語は、ポリマー材料がガラス状状態(例えば、脆性、剛性、及び強剛性)からゴム状状態(例えば、可撓性及びエラストマー)に移行する温度を指す。Tgは、例えば、動的機械分析(DMA)等の技法を使用して、決定することができる。一実施形態において、フレキシブルディスプレイ中のアセンブリ層のTgは、約-20℃未満、詳細には約-30℃未満、より詳細には約-40℃未満、更により詳細には-45℃未満である。
【0033】
アセンブリ層は、典型的には、乾燥厚さ約300ミクロン未満、詳細には約100ミクロン未満、詳細には約50ミクロン未満、詳細には約20ミクロン未満、より詳細には約10ミクロン未満、最も詳細には約5ミクロン未満でコーティングされる。アセンブリ層の厚さは、フレキシブルディスプレイデバイス中の位置に従って最適化され得る。アセンブリ層の厚さを低減させることは、デバイスの全厚を減少させるのに、並びに複合構造体の座屈、クリープ、又は層間剥離不良を最小限に抑えるのに、好ましいと考えられる。
【0034】
アセンブリ層が、曲げ応力を吸収し、急激に変化する曲げ又は折り曲げの幾何形状に適合する能力は、関連して負荷される応力下で多量の歪み又は伸長を受けるこのような材料の能力によって特徴付けることができる。この適合挙動は、従来の引張伸び試験並びにせん断クリープ試験を含む多くの方法によって精査することができる。一実施形態では、せん断クリープ試験において、アクリル系アセンブリ層は、約5kPa~約500kPaの間、詳細には約20kPa~約300kPaの間、より詳細には約20kPa~約200kPaの間でせん断応力を負荷した下で、少なくとも約6×10-6 1/Pa、詳細には少なくとも約20×10-6 1/Pa、約50×10-6 1/Pa、より詳細には少なくとも約90×10-6 1/Paであるせん断クリープコンプライアンス(J)を示す。試験は通常、室温で実施されるが、フレキシブルデバイスの使用に関連した任意の温度で実施することもできる。
【0035】
アセンブリ層はまた、比較的低いクリープを呈して、繰り返しの折り曲げ又は曲げの事象後のディスプレイの多層複合体における持続する変形を防止する。材料のクリープは、一定のせん断応力が所与の長さの時間にわたって材料に負荷される、簡単なクリープ実験を通して測定してもよい。応力が解除されると、誘発された歪みの回復が観察される。一実施形態において、負荷された応力を解除した後1分以内のせん断ひずみ回復(約5kPa~約500kPaの範囲内の少なくとも1点でせん断応力が負荷された場合において)は、室温で、せん断応力を負荷した時に観察されるピーク歪みの少なくとも約50%、詳細には少なくとも約60%、約70%、約80%、より詳細には少なくとも約90%である。試験は通常室温で実施されるが、フレキシブルデバイスの使用に関連する任意の温度で実施することもできる。
【0036】
更に、アセンブリ層が、折り曲げ又は曲げの事象中に最小の応力を発生させ応力を消散させる能力は、アクリル系アセンブリ層が、層間不良を回避する能力並びにフレキシブルディスプレイアセンブリのより脆弱な構成要素を保護する能力に、極めて重要である。応力の発生及び消散は、材料に、関連あるせん断ひずみ量が負荷された後、そのせん断ひずみ量で保持される、従来の応力緩和試験を使用して測定されてもよい。次いで、せん断応力の量を、材料がこの目標とする歪みで保持されるときに経時的に観察する。一実施形態において、約500%のせん断ひずみ、詳細には約600%、約700%、約800%、より詳細には約900%のひずみに続き、5分後に観察された残留応力の量(測定されたせん断応力を、ピークせん断応力で除算したもの)は、ピーク応力の約50%未満、詳細には約40%未満、約30%未満、20%未満、より詳細には約10%未満である。試験は通常、室温で実施されるが、フレキシブルデバイスの使用に関連する任意の温度で実施することもできる。
【0037】
アセンブリ層として、アセンブリ層は、ディスプレイアセンブリ内の隣接する層に十分にうまく接着して、繰り返しの曲げ及び折り曲げ動作を含むデバイスの使用中の層の層間剥離を防止しなくてはならない。複合体の厳密な層はデバイスに特異的であるが、PET等の標準的な基材への接着を使用して、従来の180度剥離試験モードにおけるアセンブリ層の一般的な接着性能を計測してもよい。接着剤は、十分に高い凝集力を必要としてもよく、この凝集力は、例えば、2つのPET基材の間のアセンブリ層材料のラミネートとして、従来のT型剥離モードで測定することができる。
【0038】
アセンブリ層を2つの基材の間に配置してラミネートを形成し、ラミネートを折り曲げ又は曲げ、関連ある曲率半径で保持するとき、ラミネートは、全ての使用温度間(-30℃~90℃)で、フレキシブルディスプレイデバイスにおける材料不良を表し得る事象である座屈又は層間剥離を起こさない。一実施形態において、アクリル系アセンブリ層を含有する多層ラミネートは、約200mm未満、約100mm未満、約50mm未満、詳細には約20mm未満、約10mm未満、約5mm未満、より詳細には約2mm未満の曲率半径を強いるチャネル内に、約24時間の期間にわたって配置されたときに、不良を示さない。更に、チャネルから取り出し、曲がった向きからその以前の平坦な向きに復帰させると、本発明のアクリル系アセンブリ層を含むラミネートは、持続する変形を示さず、非常に迅速に平坦な又はほぼ平坦な向きに復帰する。一実施形態において、ラミネートを、詳細には50mm未満、詳細には約20mm未満、約10mm未満、約5mm未満、より詳細には約3mmの曲率半径で保持するチャネルから、24時間保持した後に取り出したとき、複合体はほぼ平坦な向きに戻り、ラミネート、ラミネートの屈曲点、及び復帰表面の間の最終的な角度は、ラミネートをチャネルから取り出した後、1時間以内で、約50度未満、より詳細には約40度未満、約30度未満、約20度未満、より詳細には約10度未満である。換言すれば、折り曲げられたラミネートの平坦部分の間の夾角は、ラミネートをチャネルから取り出した後、1時間以内に、チャネル中の0度から、少なくとも約130度、詳細には約140度超、約150度、約160度、より詳細には約170度超の角度まで広がる。この復帰は、好ましくは、耐久試験条件への曝露後を含む、通常の使用条件下で得られる。
【0039】
上述の静的な折り曲げ試験挙動に加え、アセンブリ層に結合された第1及び第2の基材を含むラミネートは、動的折り曲げシミュレーション試験中に座屈又は層間剥離等の不良を示さない。一実施形態において、ラミネートは、約10,000サイクル超、詳細には約20,000サイクル超、約40,000サイクル、約60,000サイクル、約80,000サイクル、より詳細には約100,000サイクル超の、曲率半径約50mm未満、詳細には約20mm未満、約10mm未満、約5mm未満、より詳細には約3mmでの折り曲げによる、自由曲げモード(すなわち、マンドレルを使用しない)での動的折り曲げ試験において、全ての使用温度間(-30℃~90℃)で不良事象を示さない。
【0040】
フレキシブルラミネートを形成するため、第1の基材と第2の基材との間に本発明のアセンブリ層を配置することにより、第1の基材は第2の基材に接着される。追加の層を、多層積層体を作製するのに含めてもよい。次いで圧力及び/又は熱を加えて、フレキシブルラミネートを形成する。
【0041】
一実施形態では、アセンブリ層は、試験周波数100kHzで、約5未満、特に約4.5未満、より具体的には約4.0未満、更により具体的には約3.5未満の誘電率を有するべきである。誘電率が高すぎる場合、タッチセンサ回路の信号対雑音比は影響を受けるようになる。それは、タッチ感度の損失(例えば、間違ったタッチ又は微妙なタッチにおける検出の欠如)をもたらすか、又はタッチセンサ回路の両端でより高い電圧を駆動させる必要がある(例えば、より大きなバッテリを必要とし、及び/又は充電間のバッテリ寿命を最小限に抑える)。
【0042】
高温及び高湿度条件への曝露後の誘電率の変化を最小限に抑えて、タッチ感度への影響を最小限に抑えることが望ましい。一実施形態では、試料が約65℃及び約90%の相対湿度に約300時間曝露されると、曝露からの除去の1時間以内に100kHzの周波数で測定したときに、周囲平衡状態(すなわち、23℃/50%の相対湿度)に対して約30%以下、特に約20%以下、最も具体的には約10%以下の誘電率の増加を経験する。
【実施例】
【0043】
本発明について、単なる例示を目的とする以下の実施例でより詳細に記述するが、それは、本発明の範囲内の多数の変更及び変形が、当業者に明らかにされるからである。他に記述しない限り、以下の実施例において報告される全ての部、百分率、及び比は、重量に基づく。
【0044】
【0045】
試験法1.光学特性
ヘイズ測定を、透過モードのHunterLab(Reston,VA)UltrascanPro分光光度計を使用して行った。アセンブリ層を、剥離被覆キャリアライナー(RF02N及びRF22N、SKC Haas、Korea)の間にコーティングし、幅約5cm×長さ10cmに切り取って、その厚さを測定した。キャリアライナーの1つを取り外し、試料を、1mm厚のガラスの透明な断片に積層した。次いで、その他のライナーを除去し、第2の厚さ1mmのガラス層をアセンブリ層上に積層した。試料をUltrascanPro分光光度計に入れて、ガラス/OCA/ガラスアセンブリを通して透過及び色を測定した。追加の試料を調製し、65℃及び相対湿度90%に設定されたチャンバ内で800時間エージングした。試料を湿度チャンバから取り出し、冷却させた後、ヘイズ測定を再度実施した。典型的には、光学用途に許容可能な試料は、約5%未満、特に約2%未満のヘイズ値、及び約5未満のb*色値を有することになる。
【0046】
試験法2.動的機械分析
動的機械分析を使用して、弾性率を温度の関数として精査し、それと共に材料のガラス転移温度(Tg)を決定した。アセンブリ層の直径8mm、厚さ約1mmの円板を、DHR平行板レオメータ(TA Instruments、New Castle、DE)のプローブ同士の間に配置した。温度走査は、-45℃から50℃に、3℃/分で昇温させることにより行った。この昇温中、試料を、周波数1Hz及び歪み約0.4%で振動させた。せん断貯蔵弾性率(G’)を、選択した主要な温度で記録した。材料のTgも、tanδ対温度プロファイルにおけるピークとして決定した。使用温度の典型的な範囲にわたってアセンブリ材料の充分なコンプライアンスを確実にするため、上述の試験を使用して測定するときに、約-20℃~約40℃の温度範囲全体にわたり、約2MPa未満のせん断貯蔵弾性率を有することが好ましい。
【0047】
試験法3.クリープ試験
直径8mm、厚さ約1.0mmの円板を、8mmの試験固定具及びPeltier温度制御ベースを備えたDHR平行板レオメータに配置し、95kPaのせん断応力を5秒間加え、その時点で加えられた応力を解除し、試料を固定具で60秒間回復させることにより、アセンブリ層の試料をクリープ試験に供した。荷重を加えた5秒後のピークせん断ひずみ、及び荷重を除去した60秒後の歪み回復量を記録した。応力を負荷した後の任意の時間におけるせん断クリープコンプライアンス、Jは、その時間のせん断ひずみを、加えられた応力で除算した比と定義される。荷重応力を負荷した5秒後に、せん断クリープコンプライアンス(J)を記録した。アセンブリ層内の十分なコンプライアンスを確実にするため、上述の試験において荷重を加えた後のピークせん断歪みは、約200%超であり、コンプライアンスJは1*10^-6(1/Pa)以上であることが好ましい。更に、フレキシブルアセンブリ内の材料クリープを最小限に抑えるため、加えた応力を解除した60秒後に、材料が約50%超のひずみを回復することが好ましい。回復可能歪み率は、((S1-S2)/S1)*100と定義され、式中、S1は、応力を負荷した5秒後のピークで記録されたせん断歪みであり、S2は、負荷された応力を解除した60秒後に測定されたせん断歪みである。
【0048】
試験法4.誘電率測定
OCAは、2つのライナー;一方の面上の密封ライナーと反対側の容易な剥離ライナーとを含む。次いで、直径40mmのディンキングダイ及び手動プレスを使用して、円形試料をOCAから切り取った。次いで、容易な剥離ライナーを、切り取ったOCA試料から取り出す。次いで試料を、小さなハンドローラーを使用して、研磨された黄銅ディスク(d=40mm、t=2mm)上に転がす。次いで、密封ライナーをOCAから剥がし、同じサイズの第2の研磨黄銅ディスクを、露出した接着剤の上に置く。次いで、黄銅/OCA/黄銅アセンブリを、指の先端を使用してひとまとめにしっかりと押圧する。
【0049】
周波数依存性誘電体測定は、Novocontrol Alpha概念の温度制御広帯域誘電体分光計測定システムを用いて行われる。試料セル、ノボコントロールモデルBDS 1200は、直径40mmの研磨された黄銅平行板OCAサンドイッチを収容する。BDS1200試料セルは、Alpha-Aメインフレームに内的にインターフェースがとられる。複合誘電率(誘電率及び損失)は、電極電圧差(Vs)及び電流(Is)の位相感度測定値から計算される。Novocontrol Dielectric Spectrometer Alpha Analyzerは、ASTM D150に従って設計される。
【0050】
試験法5.静的折り曲げ試験
アセンブリ層の厚さ100μmのセクションをポリイミド(PI)の50μmのシートの間に積層して3層構造を作製し、次いで幅25.4mm×長さ約125mmの寸法に切り取った。次いで試料を、3mm又は5mmの曲げ半径を-20℃で24時間誘発させる、拘束された又は拘束されていないジグのいずれかに配置した。拘束されたジグでは、1cm離して配置された幅1cmのScotch両面タップ(3M、St.Paul、MN)の3片で、開放ジグの両面に複合体ストリップをテープ留めした。拘束されたジグを、開位置で-20℃で平衡化させた後、-20℃で24時間閉じた。拘束されていないジグの場合、複合試料及びジグを-20℃で平衡化させた後、複合試料をジグのウェルに入れ、それらを指定された半径で屈曲させた。24時間後、試料を-20℃の環境から取り出し、各ジグから取り出し、複合構造体の座屈又は層間剥離を示さない場合には静的保持試験に合格したことが観察された。
【0051】
実施例1~4及び比較例1~3:無溶媒系アセンブリ層試料の調製
アセンブリ層フィルムはまた、比較例1に関して詳細に提供された以下の手順を使用して、表2に提供された配合に従い調製した。透明なガラスジャーで、80gのHA、20gのHBA、及び0.04gのD1173光開始剤を混合した。試料を窒素で5分間パージし、コーティング可能な粘度(~2000cPs)が達成されるまで、360nmのLED光からの低強度(0.3mW/cm2)のUVに曝露した。重合は、LED光をオフにし、空気でパージすることによって停止させた。次いで追加の0.25gのD1173光開始剤及び0.75gのEB230架橋剤を、表3に示すように配合物に添加し、一晩混合した。次いで粘稠なポリマー溶液を、他に指定されない限り、シリコーン処理ポリエステル剥離ライナー、RF02N及びRF22N(SKC Haas、Korea)の間に、設定ギャップを有するナイフコーターを使用してコーティングすることにより、OCAのコーティング厚さ100μmを得た。次いで、この構造を、1200mJ/cm2のUV-Aの合計線量を有するブラックライトランプで照射した。実施例1~4及び比較例2及び3は、表2に記載の材料及び量を使用して同様の手法で作製した。
【0052】
【0053】
上記表2において、上記比較例1は、比較的短いアルキル側鎖(C6-ヘキシルアクリレート)を有するアルキルアクリレートを利用する。逆に、実施例1~4は、低いホモポリマーガラス転移温度及び低温での貯蔵弾性率を有する比較的長いアルキル側鎖(C12~DDA、C18-2ODA)を有するアルキルアクリレートを利用する。最後に、比較例2及び3は、中程度に高いホモポリマーガラス転移温度及び低温での貯蔵弾性率を有する、比較的長いアルキル側鎖を有するアルキルアクリレート(C18~S1800)を利用する。
【0054】
【0055】
上記表3に示されるように、比較例1は、予想されるように材料が-20℃で静的な折り畳みに供されたときに良好な性能をもたらす、望ましい機械的性質を実証する。しかし比較例1は、所与の周波数で所望の低誘電率を示さない。比較例1よりも高いアルキル側鎖含有量を有するモノマーを組み込む実施例1~4は、-20℃で良好な折り畳み性能を示すと共に、所望の低誘電率も示す。最後に、比較例1よりも高いアルキル側鎖含有量を有するモノマーを同様に組み込んだ比較例2及び3は、所望の低い誘電率をもたらすが、これら試料に特徴的な好ましくない機械的性質に起因して、-20℃での静的折り畳み試験において好ましい性能を実証しない。これらの結果から、所望の低誘電率及び折り畳み性能の両方を有するOCAは、高いアルキル側鎖成分を有するモノマーを組み込むことによって実現され、低温での低い貯蔵弾性率及び低ガラス転移温度などの好ましい機械的特性を保有するポリマーをもたらす。
【0056】
本発明について、好ましい実施形態を参照しながら記述してきたが、当業者なら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細において変更が行われ得ることを、認識するであろう。以下、例示的実施形態について述べる。
[1]
フレキシブルデバイス用のアセンブリ層であって、
約0~約50重量%のC
1
~C
9
アルキル(メタ)アクリレート、
約40~約99重量%のC
10
~C
24
(メタ)アクリレート、
約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、
約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、
及び約0~約5重量%の架橋剤、
を含む前駆体から誘導される、アセンブリ層。
[2]
約-30℃~約90℃の温度範囲内で、周波数1Hzにおいて約2MPaを超えないせん断貯蔵弾性率と、約20kPa~約200kPaの間でせん断応力を負荷して5秒で測定された場合に少なくとも約6×10
-6
1/Paであるせん断クリープコンプライアンス(J)と、約20kPa~約200kPaの範囲内の少なくとも1点でせん断応力が負荷された場合において前記負荷されたせん断応力の解除後約1分以内に少なくとも約50%である歪み回復と、を有する、[1]に記載のアセンブリ層。
[3]
約100kHzの周波数で測定したときに、約5.0未満の誘電率(Dk)を有する、[1]に記載のアセンブリ層。
[4]
前記アセンブリ層の前記誘電率(Dk)が、約65℃/相対湿度90%の条件に約400時間よりも長く曝露されたとき、その初期値の約40%超だけ変化しない、[1]に記載のアセンブリ層。
[5]
前記フレキシブルデバイスが、フレキシブル電子ディスプレイである、[1]に記載のアセンブリ層。
[6]
光学的に透明である、[1]に記載のアセンブリ層。
[7]
約-20℃未満のガラス転移温度を有する、[1]に記載のアセンブリ層。
[8]
第1のフレキシブル基材と、
第2のフレキシブル基材と、
前記第1のフレキシブル基材と前記第2のフレキシブル基材との間に前記第1のフレキシブル基材及び前記第2のフレキシブル基材と接触して配置されたアセンブリ層と
を含み、前記アセンブリ層が、
約0~約50重量%のC
1
~C
9
アルキル(メタ)アクリレート、
約40~約99重量%のC
10
~C
24
(メタ)アクリレート、
約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、
約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、
及び約0~約5重量%の架橋剤、
を含む前駆体から誘導される、ラミネート。
[9]
約-30℃~約90℃の温度範囲内で、前記アセンブリ層が、周波数1Hzにおいて約2MPaを超えないせん断貯蔵弾性率と、約20kPa~約200kPaの間でせん断応力を負荷して5秒で測定された場合に少なくとも約6×10
-6
1/Paであるせん断クリープコンプライアンス(J)と、約20kPa~約200kPaの範囲内の少なくとも1点でせん断応力が負荷された場合において前記負荷されたせん断応力の解除後約1分以内に少なくとも約50%である歪み回復と、を有する、[8]に記載のラミネート。
[10]
前記第1の基材及び前記第2の基材のうちの少なくとも1つが光学的に透明である、[8]に記載のラミネート。
[11]
前記アセンブリ層が、約-20℃のガラス転移温度を有する、[8]に記載のラミネート。
[12]
前記ラミネートが、約10mm未満の曲率半径を強いるチャネル内に室温で24時間の期間にわたって配置されたとき、不良を示さない、[8]に記載のラミネート。
[13]
室温で前記24時間の期間後に前記チャネルから取り出された後、少なくとも約130度の夾角まで復帰する、[12]に記載のラミネート。
[14]
曲率半径約10mm未満で折り曲げる約10,000サイクルの、室温での動的折り曲げ試験に供されたとき、不良を示さない、[8]に記載のラミネート。
[15]
第1の基材と第2の基材とを接着する方法であって、前記第1の基材と前記第2の基材の両方が可撓性であり、前記方法が、
前記第1の可撓性の基材と前記第2の可撓性の基材との間に、
約0~約50重量%のC
1
~C
9
アルキル(メタ)アクリレート、
約40~約99重量%のC
10
~C
24
(メタ)アクリレート、
約0~約30重量%のヒドロキシル(メタ)アクリレート、
約0~約10重量%の非ヒドロキシ官能性極性モノマー、
及び約0~約5重量%の架橋剤、
を含む前駆体から誘導されたアセンブリ層を配置することと、
圧力及び熱のうちの少なくとも1つを加えてラミネートを形成することと、
を含む、方法。
[16]
約-30℃~約90℃の温度範囲内で、前記アセンブリ層が、周波数1Hzにおいて約2MPaを超えないせん断貯蔵弾性率と、約20kPa~約200kPaの間でせん断応力を負荷して5秒で測定された場合に少なくとも約6×10
-6
1/Paであるせん断クリープコンプライアンス(J)と、約20kPa~約200kPaの範囲内の少なくとも1点でせん断応力が負荷された場合において前記負荷されたせん断応力の解除後約1分以内に少なくとも約50%である歪み回復と、を有する、[15]に記載の方法。
[17]
前記アセンブリ層が光学的に透明である、[15]に記載の方法。
[18]
前記ラミネートが、約10mm未満の曲率半径を強いるチャネル内に室温で24時間の期間にわたって配置されたとき、不良を示さない、[15]に記載の方法。
[19]
前記ラミネートが、室温で前記24時間の期間後に前記チャネルから取り出された後、少なくとも約130度の夾角まで復帰する、[18]に記載の方法。
[20]
曲率半径約10mm未満の折り曲げる約10,000サイクル超の、室温での動的折り曲げ試験に供されたとき、前記ラミネートが不良を示さない、[15]に記載の方法。