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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20221108BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20221108BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221108BHJP
   B60L 50/72 20190101ALI20221108BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20221108BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221108BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/2483
H01M8/00 Z
B60L50/72
H01M8/1004
H01M8/10 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019530748
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2017080965
(87)【国際公開番号】W WO2018108547
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】102016224676.3
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ メンティング,マルティン
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/042268(WO,A1)
【文献】特開2000-323159(JP,A)
【文献】特開2007-324108(JP,A)
【文献】特開2009-037854(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140855(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜(18)により互いに分離された第1電極(21)と第2電極(22)を持つ少なくとも1つの膜電極ユニット(10)、及び、両側で膜電極ユニット(10)につながる少なくとも2つのバイポーラ板(40)を包含し、
前記バイポーラ板(40)を、燃料を供給する第1供給チャンネル(52)と酸化剤を供給する第2供給チャンネル(64)が貫通し、
前記第1電極(21)に面した第1分配構造(50)が前記第1供給チャンネル(52)につながり、前記第2電極(22)に面した第2分配構造(60)が前記第2供給チャンネル(64)につながる形の燃料電池(2)であって、
前記第1分配構造(50)は、前記第1供給チャンネル(52)につながり前記燃料の流れ方向に拡大する第1流入領域(51)と、前記第1電極(21)の収容される第1主分配領域(53)と、を含み、
前記第2分配構造(60)は、前記第2供給チャンネル(64)につながり前記酸化剤の流れ方向に拡大する第2流入領域(69)と、前記第2電極(22)の収容される第2主分配領域(63)と、を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第1主分配領域(53)は、前記燃料の流れ方向における前記第1電極(21)の上流側に、前記第1電極(21)が配置されず前記燃料の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第1流入領域(51)に接続され、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第2主分配領域(63)は、前記酸化剤の流れ方向における前記第2電極(22)の上流側に、前記第2電極(22)が配置されず前記酸化剤の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第2流入領域(69)と接続され
前記バイポーラ板(40)を、前記燃料を排出する第1排出チャンネル(54)が貫通し、前記第1分配構造(50)が前記第1排出チャンネル(54)につながり、
前記第1分配構造(50)は、前記第1排出チャンネル(54)につながり前記燃料の流れ方向に縮小する第1流出領域(59)を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第1主分配領域(53)は、前記燃料の流れ方向における前記第1電極(21)の下流側に、前記第1電極(21)が配置されず前記燃料の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第1流出領域(59)と接続される、
ことを特徴とする燃料電池(2)。
【請求項2】
前記バイポーラ板(40)を、前記酸化剤を排出する第2排出チャンネル(62)が貫通し、
前記第2分配構造(60)が前記第2排出チャンネル(62)につながり、
前記第2分配構造(60)は、前記第2排出チャンネル(62)につながり前記酸化剤の流れ方向に縮小する第2流出領域(61)を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第2主分配領域(63)は、前記酸化剤の流れ方向における前記第2電極(22)の下流側に、前記第2電極(22)が配置されず前記酸化剤の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第2流出領域(61)に接続される、
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池(2)。
【請求項3】
膜(18)により互いに分離された第1電極(21)と第2電極(22)を持つ少なくとも1つの膜電極ユニット(10)、及び、両側で膜電極ユニット(10)につながる少なくとも2つのバイポーラ板(40)を包含し、
前記バイポーラ板(40)を、燃料を供給する第1供給チャンネル(52)と酸化剤を供給する第2供給チャンネル(64)が貫通し、
前記第1電極(21)に面した第1分配構造(50)が前記第1供給チャンネル(52)につながり、前記第2電極(22)に面した第2分配構造(60)が前記第2供給チャンネル(64)につながる形の燃料電池(2)であって、
前記第1分配構造(50)は、前記第1供給チャンネル(52)につながり前記燃料の流れ方向に拡大する第1流入領域(51)と、前記第1電極(21)の収容される第1主分配領域(53)と、を含み、
前記第2分配構造(60)は、前記第2供給チャンネル(64)につながり前記酸化剤の流れ方向に拡大する第2流入領域(69)と、前記第2電極(22)の収容される第2主分配領域(63)と、を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第1主分配領域(53)は、前記燃料の流れ方向における前記第1電極(21)の上流側に、前記第1電極(21)が配置されず前記燃料の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第1流入領域(51)に接続され、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第2主分配領域(63)は、前記酸化剤の流れ方向における前記第2電極(22)の上流側に、前記第2電極(22)が配置されず前記酸化剤の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第2流入領域(69)と接続され、
前記バイポーラ板(40)を、前記酸化剤を排出する第2排出チャンネル(62)が貫通し、前記第2分配構造(60)が前記第2排出チャンネル(62)につながり、
前記第2分配構造(60)は、前記第2排出チャンネル(62)につながり前記酸化剤の流れ方向に縮小する第2流出領域(61)を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第2主分配領域(63)は、前記酸化剤の流れ方向における前記第2電極(22)の下流側に、前記第2電極(22)が配置されず前記酸化剤の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第2流出領域(61)に接続される、
ことを特徴とする燃料電池(2)。
【請求項4】
前記バイポーラ板(40)を、前記燃料を排出する第1排出チャンネル(54)が貫通し、
前記第1分配構造(50)が前記第1排出チャンネル(54)につながり、
前記第1分配構造(50)は、前記第1排出チャンネル(54)につながり前記燃料の流れ方向に縮小する第1流出領域(59)を含み、
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第1主分配領域(53)は、前記燃料の流れ方向における前記第1電極(21)の下流側に、前記第1電極(21)が配置されず前記燃料の流れ方向に一定な断面積を有する空間を有し、当該空間が前記第1流出領域(59)と接続される、
ことを特徴とする請求項3記載の燃料電池(2)。
【請求項5】
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第1電極(21)の収容される領域は、矩形状である
ことを特徴とする請求項1又は4記載の燃料電池(2)。
【請求項6】
前記バイポーラ板(40)の板面の法線方向から見て、前記第2電極(22)の収容される領域は、矩形状である
ことを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池(2)。
【請求項7】
前記膜(18)が水蒸気を通すことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の燃料電池(2)。
【請求項8】
前記第1電極(21)と前記第2電極(22)とが合同で前記膜(18)に配置されている
ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料電池(2)。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料電池(2)を備える電気自動車(EV)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜により互いに分離された第1電極と第2電極を持つ少なくとも1つの膜電極ユニット、及び、両側で膜電極ユニットにつながる少なくとも2つのバイポーラ板を包含する燃料電池に関する。ここで、バイポーラ板を、燃料を供給する第1供給チャンネルと酸化剤を供給する第2供給チャンネルが貫通する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、連続的に供給される燃料と酸化剤との化学反応エネルギーを電気エネルギーに変換するガルバーニ電池である。つまり、燃料電池は電気化学的エネルギー変換器である。公知の燃料電池では、特に水素(H2)と酸素(O2)が水(H2O)、電気エネルギー及び熱に変換される。しかし、メタノール又はメタンを使用する燃料電池も知られている。
【0003】
なかでも、プロトン交換膜(Proton-Exchange-Membran=PEM(独語))燃料電池が知られている。プロトン交換膜燃料電池は、中心に配置された膜を具備し、これがプロトンを通し、従って水素イオンを通す。酸化剤、特に大気酸素は、この膜により、空間的に燃料、特に水素から分離される。
【0004】
プロトン交換膜燃料電池は更に陽極と陰極を具備する。燃料は燃料電池の陽極に送られ、そこで接触し、電子を放出しながらプロトンに酸化される。プロトンは、膜を通って陰極に到達する。放出された電子は、燃料電池から導き出され、外部電流回路を経由して陰極に流れていく。
【0005】
酸化剤は、燃料電池の陰極に送られ、外部電流回路からの電子と、膜を通って陰極に到達したプロトンを吸収することにより、これと反応して水になる。そうして生じた水は、燃料電池から導き出される。全体反応は以下の通りである。
+4H+4e→2H
【0006】
ここで、燃料電池の陽極と陰極の間に電圧がかかっている。この電圧を高めるために、複数の燃料電池を機械的に前後に積み重ねて1つの燃料電池層になるように配置し、電気的に直列に接続してよい。
【0007】
燃料を陽極に均一に分配し、酸化剤を陰極に均一に分配するために、バイポーラ板とも呼ばれる分配板が設けられている。このバイポーラ板は、燃料と酸化剤を分配するための例えばチャンネル形の構造を有する。バイポーラ板は更に、冷却液を燃料電池の中に通して熱を逃がすための構造を有してよい。
【0008】
特許文献1から、2つのバイポーラ板の間に膜電極ユニットを配置した燃料電池が知られている。ここで、バイポーラ板はそれぞれ、反応ガスを電極に分配するための分配構造を具備する。
【0009】
膜電極ユニットの膜は、ここで、燃料電池が決まり通り機能するように湿潤状態に保持されなければならない。特に燃料電池を比較的高い温度で動作させる場合、膜は、大気の吸水力が高められるために乾燥し易く、それにより、燃料電池の機能は損なわれることがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国公開第102013226815A1号公報
【発明の概要】
【0011】
提案されるのは、膜により互いに分離された第1電極と第2電極を持つ少なくとも1つの膜電極ユニット、及び、両側で膜電極ユニットにつながる少なくとも2つのバイポーラ板を包含する燃料電池である。ここで、バイポーラ板を、燃料を供給する第1供給チャンネルと酸化剤を供給する第2供給チャンネルが貫通する。第1電極に面した、燃料を分配する第1分配構造が、第1供給チャンネルの第1エッジにつながり、第2電極に面した、酸化剤を分配する第2分配構造が、第2供給チャンネルの第2エッジにつながる。
【0012】
第1電極は陽極とも呼ばれ、第2電極は陰極とも呼ばれる。燃料とは例えば水素のことで、酸化剤とは例えば酸素、特に周囲大気の中に含まれた酸素のことである。
【0013】
発明通り、第1電極は膜に沿って、第1供給チャンネルの第1エッジから間隔をあけた領域の中を延び、第2電極は膜に沿って、第2供給チャンネルの第2エッジから間隔をあけた領域の中を延びる。
【0014】
中心に配置された膜は、従って、両側に設けられた電極より上に突き出る。膜はこれで両側に、第1供給チャンネルに隣接して置かれた領域と第2供給チャンネルに隣接して置かれた領域を有し、これらが直接、第1分配構造又は第2分配構造と境を接しており、そこで電極から自由である。
【0015】
第1供給チャンネルと第1分配構造を経由して第1電極に導かれる燃料は、これで膜の領域も経由して流れ、これで湿分を水蒸気の形で膜に直接運ぶことができる。第2供給チャンネルと第2分配構造を経由して第2電極に導かれる酸化剤は、これで膜の領域も経由して流れ、これで湿分を水蒸気の形で膜に直接運ぶことができる。
【0016】
好ましくは、膜は水蒸気も通す。これで、水蒸気の形の湿分を、第1分配構造から膜を通して第2分配構造に運ぶことができ、第2分配構造から膜を通して第1分配構造に運ぶこともできる。
【0017】
本発明の有利な一形態では、バイポーラ板を、燃料を排出する第1排出チャンネルが貫通し、ここで、第1分配構造は第1排出チャンネルの第1エッジにつながる。この第1排出チャンネルは、消費されなかった燃料を第1分配構造から排出するのに役立つ。ここで、第1電極は、膜に沿って、第1排出チャンネルの第1エッジからも間隔をあけた領域の中を延びる。膜はこれで、第1排出チャンネルに隣接して置かれた領域も有し、これが直接、第1分配構造と境を接しており、そこで第1電極から自由である。
【0018】
第1分配構造は、好ましくは、第1供給チャンネルの第1エッジにつながる第1流入領域と、第1排出チャンネルの第1エッジにつながる第1流出領域を有する。ここで、第1流入領域と第1流出領域の間に、矩形横断面を有する第1主分配領域が配置されている。
【0019】
好ましくは、第1電極は膜に沿って、第1流入領域と第1流出領域から間隔をあけた領域の中を延びる。従って、この第1電極は、第1分配構造の第1主分配領域としか境を接していない。
【0020】
本発明の有利な一形態では、バイポーラ板を、酸化剤を排出する第2排出チャンネルが貫通し、ここで、第2分配構造は第2排出チャンネルの第2エッジにつながる。この第2排出チャンネルは、消費されなかった酸化剤を第2分配構造から排出するのに役立つ。ここで、第2電極は、膜に沿って、第2排出チャンネルの第2エッジからも間隔をあけた領域の中を延びる。膜はこれで、第2排出チャンネルに隣接して置かれた領域も有し、これが直接、第2分配構造と境を接しており、そこで第2電極から自由である。
【0021】
第2分配構造は、好ましくは、第2供給チャンネルの第2エッジにつながる第2流入領域と、第2排出チャンネルの第2エッジにつながる第2流出領域を有する。ここで、第2流入領域と第2流出領域の間に、矩形横断面を有する第2主分配領域が配置されている。
【0022】
好ましくは、第2電極は膜に沿って、第2流入領域と第2流出領域から間隔をあけた領域の中を延びる。従って、この第2電極は、第2分配構造の第2主分配領域としか境を接していない。
【0023】
好ましくは、これらの電極は合同で膜に配置されている。つまり、第1電極と第2電極は同様の横断面を有し、膜の互いに向き合った領域に取り付けられている。膜電極ユニットは、従って左右対称の形をなしている。
【0024】
発明通りの燃料電池は、電気自動車(EV)に有利に使用される。
【発明の効果】
【0025】
燃料電池を発明通り形作ることにより、膜の上に、分配構造に直接境を接し、電極から自由な領域が作られる。これにより、膜電極ユニットの膜は、絶えず十分に湿潤させることができる。燃料電池を比較的高い温度で動作させる場合でも、膜の乾燥が回避できる。ここで、膜を湿潤させる外部湿潤器を小さめに設計することができ、又は、外部湿潤器による膜の湿潤が不要であり、これにより、スペースとコストが節約できる。
【0026】
第2分配構造に流入する空気は、陰極に到達する前にすでに温められる。これにより、陰極の手前ですでに、蒸気圧降下により水が第1分配構造から膜を通して第2分配構造の中に移送される。この過程は、第1分配構造において陽極の背後で行われる。それゆえ、第1分配構造において、膜を通して水を第2分配構造に放出するためにより多くの路程と時間が残される。陰極の背後で反応水で富化された空気は、膜を通して水を第1分配構造の中に移送するために追加の路程と時間を得る。第1分配構造において、すでに陽極の手前で流入する水素は温められ、第2分配構造からの水を吸収するために追加の路程と時間を得る。
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面と本文に則して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】燃料電池の分解図である。
図2】組み立てられた燃料電池の、図1の切断線A-Aに沿った断面図である。
図3】組み立てられた燃料電池の、図2の切断線B-Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の本発明の実施形態の説明では、同等又は同様のエレメントを同じ参照符号で表し、ここでは、個々のケースにおいてこれらのエレメントを繰り返し説明することを控える。図は、本発明の対象を単に概略的に表すにすぎない。
【0030】
図1に、本発明による燃料電池2の分解図が描かれている。燃料電池2は、第1電極21、第2電極22及び膜18を包含する膜電極ユニット10を具備する。両電極21、22は、膜18の互いに向き合った側に配置され、これで、膜18により互いに分離されている。第1電極21は、以下において陽極21とも呼ばれ、第2電極22は、以下において陰極22とも呼ばれる。
【0031】
電極21、22は、本例において合同で膜18に配置されている。陽極21と陰極22は、ここで同様の横断面を有し、膜18の互いに向き合った領域に取り付けられている。膜電極ユニット10は、従って左右対称の形をなしている。中心に配置された膜18は、ここで、両側に設けられた電極21、22より上に突き出る。
【0032】
膜18は、本例においてポリマー電解質膜として形作られている。膜18は水素イオン、つまりHイオンを通す。同じく、膜18は水蒸気も通す。特に、燃料電池2において行われる反応の際に陰極22に生じる反応水が、これで膜18に流入し、膜18を通過して陽極21へと拡散することができる。
【0033】
燃料電池2は更に、両側で膜電極ユニット10につながる2つのバイポーラ板40を具備する。バイポーラ板40は、ここでそれぞれ平面図で描かれている。ここでは、一方のバイポーラ板40のうち、燃料電池2の組み立てられた状態において陽極21に面した第1表面33が描かれている。他方のバイポーラ板40のうち、燃料電池2の組み立てられた状態において陰極22に面した第2表面34が描かれている。
【0034】
燃料電池2を組み立てる時、第1表面33が描かれた一方のバイポーラ板40は、第1軸35を中心として第1回転方向37に90°回転させなければならない。第2表面34が描かれた他方のバイポーラ板40は、燃料電池2を組み立てる時、第2軸36を中心として第2回転方向38に90°回転させなければならない。
【0035】
両バイポーラ板40を、燃料を供給する第1供給チャンネル52と、酸化剤を供給する第2供給チャンネル64が貫通する。更に、両バイポーラ板40を、消費されなかった燃料を排出する第1排出チャンネル54と、消費されなかった酸化剤を排出する第2排出チャンネル62が貫通し、また、水が通り抜ける。両バイポーラ板40をまた、冷却剤を供給する第3供給チャンネル74と、冷却剤を排出する第3排出チャンネル72も貫通する。冷却剤は、動作中の燃料電池2を冷却するのに役立つ。
【0036】
第1供給チャンネル52と第2排出チャンネル62と第3排出チャンネル72は、ここで、バイポーラ板40の頭側に入り込んでいる。第2供給チャンネル64と第1排出チャンネル54と第3供給チャンネル74は、向き合った足側に入り込んでいる。燃料電池2の動作中、燃料はこれで頭側から足側に流れ、酸化剤と冷却剤は反対の向きで足側から頭側に流れる。
【0037】
バイポーラ板40はそれぞれ、第1表面33に配置され、陽極21に面した燃料分配のための第1分配構造50を包含する。第1分配構造50は、第1供給チャンネル52の第1エッジ57から第1排出チャンネル54の第1エッジ58まで延びる。燃料は、燃料電池2の動作中、第1供給チャンネル52から第1排出チャンネル54に第1流れ方向43で流れる。
【0038】
第1分配構造50は、第1供給チャンネル52の第1エッジ57につながる第1流入領域51と、第1排出チャンネル54の第1エッジ58につながる第1流出領域59を有する。第1流入領域51と第1流出領域59の間に、矩形横断面を有する第1主分配領域53が配置されている。
【0039】
バイポーラ板40はそれぞれ、第2表面34に配置され、陰極22に面した酸化剤分配のための第2分配構造60を包含する。第2分配構造60は、第2供給チャンネル64の第2エッジ67から第2排出チャンネル62の第2エッジ68まで延びる。酸化剤は、燃料電池2の動作中、第2供給チャンネル64から第2排出チャンネル62に第2流れ方向44で流れる。
【0040】
第2分配構造60は、第2供給チャンネル64の第2エッジ67につながる第2流入領域69と、第2排出チャンネル62の第2エッジ68につながる第2流出領域61を有する。第2流入領域69と第2流出領域61の間に、矩形横断面を有する第2主分配領域63が配置されている。
【0041】
図2に、組み立てられた燃料電池2の、図1の切断線A-Aに沿った断面が描かれている。燃料電池2は、ここで、それぞれ交互に配置されたバイポーラ板40と膜電極ユニット10から構成された燃料電池層の一部である。バイポーラ板40と膜電極ユニット10は、陽極21が一方のバイポーラ板40の第1分配構造50に面するように、また、陰極22が他方のバイポーラ板40の第2分配構造60に面するように配置されている。
【0042】
バイポーラ板40は第3分配構造70を包含し、これが、ここでは見えない第3供給チャンネル74から、同じくここでは見えない第3排出チャンネル72に延びる。第3分配構造70は、ここでそれぞれ第1分配構造50と第2分配構造60の間に配置されており、冷却剤をバイポーラ板40の中に導き通し、燃料電池2の中に導き通すのに役立つ。
【0043】
陽極21は、膜18に沿って、第1供給チャンネル52の、ここでは見えない第1エッジ57から、また、第1排出チャンネル54の第1エッジ58から間隔をあけた領域の中を延びる。特に、陽極21は、膜18に沿って、第1流入領域51と第1流出領域59から間隔をあけた領域の中を延びる。陽極21は、従って、第1分配構造50の第1主分配領域53とだけ境を接し、この領域の中に突き入る。
【0044】
膜18はこれで、陽極21の側に、第1供給チャンネル52に隣接して置かれた、そこで陽極21から自由な領域を有する。膜18はこれでまた、第1排出チャンネル54に隣接して置かれた、そこで陽極21から自由な領域も有する。陽極21から自由なこれら両領域は、第1分配構造50と直接境を接する。
【0045】
陰極22は、膜18に沿って、第2供給チャンネル64の、ここでは見えない第2エッジ67から、また、第2排出チャンネル62の第2エッジ68から間隔をあけた領域の中を延びる。特に、陰極22は、膜18に沿って、第2流入領域69と第2流出領域61から間隔をあけた領域の中を延びる。陰極22は、従って、第2分配構造60の第2主分配領域63とだけ境を接し、この領域の中に突き入る。
【0046】
膜18はこれで、陰極22の側に、第2供給チャンネル64に隣接して置かれた、そこで陰極22から自由な領域を有する。膜18はこれでまた、第2排出チャンネル62に隣接して置かれた、そこで陰極22から自由な領域も有する。陰極22から自由なこれら両領域は、第2分配構造60と直接境を接する。
【0047】
燃料電池2の動作中、燃料は、第1供給チャンネル52と第1分配構造50を経由して陽極21に導かれ、更に第1排出チャンネル54に導かれる。そこで、燃料は第1流れ方向43において、陽極21から自由な膜18の領域をも経由する。
【0048】
燃料電池2の動作中、酸化剤は、第2供給チャンネル64と第2分配構造60を経由して陰極22に導かれ、更に第2排出チャンネル62に導かれる。そこで、酸化剤は第2流れ方向44において、陰極22から自由な膜18の領域をも経由する。
【0049】
燃料、本例において水素は、陽極21で接触し、電子を放出しながらプロトンに酸化される。プロトンは、膜18を通って陰極22に到達する。放出された電子は、燃料電池2から導き出され、外部電流回路を経由して陰極22に流れていく。酸化剤、本例において大気酸素は、外部電流回路からの電子と、膜18を通って陰極22に到達したプロトンを吸収することにより、これと反応して水になる。
【0050】
燃料電池2において行われる反応の際に陰極22に生じる水は、部分的に第2分配構造60から第1拡散方向47に膜18の中へ拡散し、膜18を通過して第1分配構造50の中に拡散し、陽極21へと拡散することができる。第1拡散方向47に拡散した水は、そこで、第1分配構造50の中を流れる燃料により吸収される。
【0051】
燃料により吸収された水は、続いて第1分配構造50から第2拡散方向48に膜18の中へと拡散し、膜18を通過して第2分配構造60の中に拡散し、陰極22へと拡散することができる。第2拡散方向48に拡散した水は、そこで、第2分配構造60の中を流れる酸化剤により吸収される。
【0052】
電極21、22から自由で、分配構造50、60と境を接する膜18の領域は、これで、水が膜18の中に絶えず拡散し、膜18を通過していくことを可能にする。これにより、膜18は絶えず湿潤させられる。余剰の水は、特に第2分配構造60から第2排出チャンネル62を経由して導き出され、燃料電池2から導き出される。
【0053】
図3は、組み立てられた燃料電池2の、図2の切断線B-Bに沿った断面を示す。膜18は、ここで中心の位置に、陽極21が配置された領域を有する。膜18はまた、第1主分配領域53の一部と第1流入領域51を越えて延び、かつ、陽極21から自由な領域も有する。また、膜18は、第1主分配領域53の一部と第1流出領域59を越えて延び、かつ、陽極21から自由な領域も有する。
【0054】
本発明は、ここで述べた実施例とその中で強調した側面だけに限られるものではない。むしろ、請求項に記載の範囲の中であって、当業者の行為の枠内に存在する多数のバリエーションが可能である。
【符号の説明】
【0055】
2 燃料電池
10 膜電極ユニット
18 膜
21 第1電極ないしは陽極
22 第2電極ないしは陰極
40 バイポーラ板
50 第1分配構造
51 第1流入領域
52 第1供給チャンネル
53 第1主分配領域
54 第1排出チャンネル
59 第1流出領域
60 第2分配構造
61 第2流出領域
62 第2排出チャンネル
63 第2主分配領域
64 第2供給チャンネル
69 第2流入領域
図1
図2
図3