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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】円筒形非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/593 20210101AFI20221108BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20221108BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 50/595 20210101ALI20221108BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M10/058
H01M50/586
H01M50/533
H01M50/107
H01M50/595
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019542037
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033333
(87)【国際公開番号】W WO2019054312
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2017178040
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山上 雄史
(72)【発明者】
【氏名】横山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小平 一紀
(72)【発明者】
【氏名】原口 心
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099295(WO,A1)
【文献】特開平06-243857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067931(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/077698(WO,A1)
【文献】特開2010-199069(JP,A)
【文献】特開2010-009841(JP,A)
【文献】特開2007-194064(JP,A)
【文献】特開2014-086242(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121319(WO,A1)
【文献】特表2014-524118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098291(WO,A1)
【文献】特開2006-302734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶、前記外装缶の一端を塞ぐ封口体、前記外装缶の内部に配置された電極群、及び前記封口体と前記電極群の間に配置された絶縁板を備える円筒形非水電解質二次電池であって、
前記絶縁板は、前記電極群から導出する正極リードが貫通するリード孔、及び前記封口体に直交する電池の中心軸に関して前記リード孔と逆側に設けられた開口部を有し、
前記正極リードは、前記リード孔に隣接する第1湾曲部、及び前記中心軸に関して前記第1湾曲部と逆側に設けられた第2湾曲部を有し、
前記中心軸から前記第2湾曲部のうち前記中心軸から最も離間した部分までの距離をL1とし、前記中心軸から前記開口部のうち前記中心軸に最も近接した部分までの距離をL2とした場合に、L1及びL2がL2>L1を満たす、円筒形非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形非水電解質二次電池において、
前記正極リードは、少なくとも前記電極群から導出する部分に絶縁テープが貼着され、前記テープは、前記電極群から前記封口体側方向に前記第2湾曲部の変曲点を超えない範囲に貼着されている、円筒形非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の円筒形非水電解質二次電池において、
前記絶縁板は、前記開口部の最大長さが前記正極リードの幅未満である、円筒形非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の円筒形非水電解質二次電池において、
前記絶縁板のすべての開口についての開口率は、20%以上である、円筒形非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正極リード付きの正極板を使用した円筒形二次電池において、正極リードと電極群との接触による短絡を防止するために電極群上に、開口部を有する上部絶縁板を配置することが行われている。開口部は、二次電池の内部で発生した高圧のガスを、上部絶縁板を介して排出させるため、または、電解液を電極群側に注入するために用いられる。
【0003】
特許文献1には、上記の短絡を防止するために、上部絶縁板の中心に形成された注液用の透孔の直径を正極リードの幅より小さくすることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、二次電池の高容量化に伴って、二次電池の内部で発生したガスの排出性を向上させるために、上部絶縁板の開口部を積極的に活用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-134955号公報
【文献】国際公開第2014/006883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上部絶縁板は、電極群と正極リードとの絶縁を確保する役割を担う一方、電池での内部ガス発生時の排気のコントロールにも重要な役割を担っており、短絡の防止と排気性の確保とはトレードオフの関係にある。上部絶縁板において、正極リードが貫通するリード孔とは電池の中心軸に関して反対側に開口部を形成することで、排気性を高くできる。しかしながら、開口部を形成することで、正極リードの上部絶縁板より上側に形成される湾曲部が、開口部を通じて電極群に接触して短絡しやすくなる。
【0007】
本開示は、内部ガスの排出性を確保しながら、電極群と正極リードとの短絡を効果的に防止できる円筒形非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る円筒形非水電解質二次電池は、外装缶、外装缶の一端を塞ぐ封口体、外装缶の内部に配置された電極群、及び封口体と電極群の間に配置された絶縁板を備える円筒形非水電解質二次電池であって、絶縁板は、電極群から導出する正極リードが貫通するリード孔、及び封口体に直交する電池の中心軸に関してリード孔と逆側に設けられた開口部を有し、正極リードは、リード孔に隣接する第1湾曲部、及び中心軸に関して第1湾曲部と逆側に設けられた第2湾曲部を有し、中心軸から第2湾曲部のうち中心軸から最も離間した部分までの距離をL1とし、中心軸から開口部のうち中心軸に最も近接した部分までの距離をL2とした場合に、L1及びL2がL2>L1を満たす。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る円筒形非水電解質二次電池によれば、内部ガスの排出性を確保しながら、電極群と正極リードとの短絡を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施形態の一例の円筒形非水電解質二次電池の模式的な断面図である。
図2図2図1のA部拡大図である。
図3図3(a)は実施形態の一例の円筒形非水電解質二次電池において、封口体が正極リードに溶接された状態を示す正面図であり、図3(b)は図3(a)の側面図である。
図4図4(a)は実施形態の一例の上部絶縁板の平面図であり、図4(b)は実施形態の一例の上部絶縁板の正面図である。
図5図5(a)は比較例の上部絶縁板の平面図であり、図5(b)は比較例の上部絶縁板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、個数、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、非水電解質二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。
【0012】
図1は、実施形態の一例の円筒形非水電解質二次電池10の模式的な断面図である。図2は、図1のA部拡大図である。図1及び図2に示すように、円筒形非水電解質二次電池10は、巻回型の電極群14と、非水電解質(図示せず)とを備える。巻回型の電極群14は、正極(図示せず)と、負極12と、セパレータ(図示せず)とを有し、正極と負極12がセパレータを介して渦巻状に巻回されている。以下では、電極群14の軸方向一方側を「上」、軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。以下では、円筒形非水電解質二次電池10を二次電池10と記載する。
【0013】
正極は、帯状の正極集電体(図示せず)を有する。正極集電体には正極リード16の一端(図1の下端)が接合される。正極リード16は、正極集電体と正極端子を電気的に接続するための導電部材であって、電極群14の上端から電極群14の軸方向αの一方側(上方)に導出している。正極リード16の一端は、例えば正極集電体において、電極群14の径方向βの略中央部に位置する部分に接合される。また、正極リード16の他端(図1の上端)は、封口体22の下面の中心付近に接合される。
【0014】
負極12は、帯状の負極集電体13を有する。負極集電体13には負極リード(図示せず)が接合される。負極リードは、負極集電体13と負極端子を電気的に接続するための導電部材であって、電極群14の下端から軸方向αの他方側(下方)に導出している。例えば、負極リードは電極群14の巻き始め側端部に設けられる。負極リードの下端は、有底円筒状の外装缶20の底部に接合される。図1では、電極群14の最外周面に負極12が露出し、この負極12の最外周面を外装缶20の内周面に接触させている。これにより、二次電池10の負極12が負極端子として機能する外装缶20に接続される。
【0015】
正極リード16及び負極リードは、集電体よりも厚みの大きい帯状の導電部材である。各リードの厚みは、例えば集電体の厚みの3倍~30倍であって、一般的には50μm~500μmである。各リードの構成材料は特に限定されない。正極リード16はアルミニウムを主成分とする金属によって構成されることが好ましい。負極リードはニッケルもしくは銅を主成分とする金属によって、または、ニッケル及び銅の両方を含む金属によって構成されることが好ましい。なお、電極群14の最外周面に負極12を露出させず、負極集電体の巻き終わり側端部に負極リードを接合し、その負極リードを電極群14の下端から軸方向αの他方側に導出させて2つの負極リードを外装缶20の底部に接合してもよい。
【0016】
正極及び負極12をさらに詳しく説明する。正極は、帯状の正極集電体と、当該集電体上に形成された正極活物質層とを有する。例えば、正極集電体の両面には正極活物質層が形成されている。正極集電体には、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体の厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0017】
正極活物質層は、正極集電体の両面において、正極リードを接合する無地部を除く全域に形成されることが好適である。正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極集電体の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0018】
正極活物質としては、Co、Mn、及びNi等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、及びAlの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0019】
導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
負極12は、帯状の負極集電体13と、当該負極集電体13上に形成された負極活物質層とを有する。例えば、負極集電体13の両面に負極活物質層が形成される。負極集電体13には、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極集電体13の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0021】
負極活物質層は、負極集電体13の両面において、負極リードが接合される無地部を除く全域に形成されることが好適である。負極活物質層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極12は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体13の両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0022】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛及び人造黒鉛等の炭素材料、Si及びSn等のリチウムと合金化する金属、並びにこれらを含む合金及び複合酸化物などを用いることができる。負極活物質層に含まれる結着剤には、例えば正極11の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
図1に示す例では、外装缶20と封口体22によって、電極群14及び非水電解質を収容する金属製の電池ケースが構成されている。外装缶20と封口体22の間にはガスケット24が設けられ、電池ケース内の密閉性が確保されている。外装缶20は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体22を支持する溝部21を有する。溝部21は、外装缶20の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体22を支持する。
【0024】
図1では、封口体22を模式的に断面矩形の円板形状で示している。例えば封口体22は、電極群14側から順に積層された、フィルタ、下弁体、絶縁部材、上弁体、及びキャップにより構成される。封口体22を構成する各部材は、例えば円板形状またはリング形状を有し、絶縁部材を除く各部材が互いに電気的に接続される。下弁体と上弁体とはそれぞれの中央部で互いに接続され、それぞれの周縁部の間に絶縁部材が介在される。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば下弁体が破断し、これにより上弁体がキャップ側に膨れて下弁体から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体が破断し、キャップに形成された開口部を通じてガスが排出される。
【0025】
電極群14の上側には上部絶縁板26が配置される。図1では、上部絶縁板26が電極群14から離れるように示しているが、実際には、上部絶縁板26は、電極群14の上端に接触するように配置される。正極リード16は上部絶縁板26の貫通孔であるリード孔27を貫通して封口体22側に延び、封口体22の下面に溶接される。二次電池10では、封口体22の天板、または上端に位置するキャップが正極端子となる。
【0026】
図3(a)は、二次電池10において、封口体22が正極リード16に溶接された状態を示す正面図であり、図3(b)は図3(a)の側面図である。図3でも、図1と同様に、封口体22を模式的に円板形状で示している。図3に示すように、封口体22に正極リード16を溶接する場合には、封口体22を電極群14から導出する正極リード16に重ねて配置する。そして、レーザ溶接等により、正極リード16を封口体22に溶接する。正極リード16において図1の破線により囲まれた部分には、図2に示すように絶縁テープ17が貼着される。
【0027】
上記のように封口体22に正極リード16が溶接された後、封口体22が外装缶20の上部に取り付けられる。その際、正極リード16がリード孔27に隣接する位置で折り曲げられて第1湾曲部16aが形成される。さらに、封口体22に直交する二次電池10の中心軸Oに関して第1湾曲部16aとは逆側の位置で正極リード16が折り返されて第2湾曲部16bが形成される。図1及び図2に示すように、絶縁テープ17が正極リード16に貼着されている。絶縁テープ17が封口体22と正極リード16の溶接を阻害しないように、絶縁テープ17は正極リード16のうち電極群14側から封口体22側に向かって第2湾曲部16bの変曲点を超えない範囲に貼着されていることが好ましい。なお、絶縁テープは、正極リード16の電極群14から導出する部分だけでなく電極群14の内部に配置されている部分の一部にも貼着されてよく、上部絶縁板26に対向する面にのみ貼着されてもよい。また、絶縁テープは、正極リード16において図1で破線により囲まれた部分に螺旋状に巻かれるように貼着されてもよい。
【0028】
二次電池10は、圧壊試験などで圧縮されるように変形する場合がある。この場合において、後述のように上部絶縁板26の第2湾曲部16b側に開口部28が形成される場合に、開口部28を通じて第2湾曲部16bが電極群14に接触することにより短絡が発生する可能性がある。本実施形態では、この短絡を効果的に防止するために、後述のように上部絶縁板26の開口部28の位置を適切に規制する。
【0029】
また、外装缶20の内部において、電極群14の下端と外装缶20の底部との間には、下部絶縁板(図示せず)が配置される。下部絶縁板の中心部には貫通孔が形成される。負極集電体13に一端が接合された負極リード(図示せず)は、下部絶縁板の貫通孔、または下部絶縁板の外周側を通って下部絶縁板の下側に導出され、外装缶20の底部に溶接により接合される。
【0030】
図4を用いて上部絶縁板26を詳しく説明する。図4(a)は上部絶縁板26の平面図であり、図4(b)は上部絶縁板26の正面図である。上部絶縁板26は、厚みtが小さい円板形状である。上部絶縁板26は、例えばガラス繊維基材にフェノール樹脂を含浸させてなるガラスクロスフェノール等の絶縁材料により形成される。上部絶縁板26の一方側半部(図4(a)の下側半部)には略半円の円弧形のリード孔27が形成される。一方、上部絶縁板26の他方側半部(図4(a)の上側半部)には、半径方向中間部において、周方向に離れた複数位置に略長円形の開口部28が形成される。各開口部28の長手方向に沿う周方向の幅である各開口部28の最大長さLaは、正極リード16の幅Lb(図3(a))未満(La<Lb)とすることが好ましい。
【0031】
上部絶縁板26における中心から各開口部28までの距離は同じである。また、上部絶縁板26の中心には、略長円形の中心孔29が形成される。開口部28、中心孔29及びリード孔27は、二次電池10の内部でガスが発生した場合の排気性向上の面から大きくすることが好ましい。
【0032】
また、図1に示すように、上部絶縁板26が二次電池10の内部に配置された状態で、上部絶縁板26は、リード孔27とは二次電池10の中心軸Oに関し逆側の位置に4つの開口部28が形成される。正極リード16及び上部絶縁板26を封口体22側(図1の上側)から見た場合に、中心孔29は電極群14の中空部と重なるように形成されるため、正極リード16が中心孔29を通じて電極群14に接触して短絡が生じる可能性は低い。しかし、正極リード16及び上部絶縁板26を封口体22側から見た場合に、中心孔29が正極リード16の絶縁テープ17が貼着された部分と重なる位置に形成されることが好ましい。さらに、二次電池10の中心軸Oから正極リード16の第2湾曲部16bまでの距離(第2湾曲部16bのうち中心軸Oから最も離間した部分までの距離)をL1とし、二次電池10の中心軸Oから開口部28までの距離(開口部28のうち中心軸Oに最も近接した部分までの距離)をL2とした場合に、L1及びL2がL2>L1を満たすように規制される。このような規制が満たされる限り、開口部28の位置や形状は本実施形態に限定されない。
【0033】
さらに、上部絶縁板26において、開口部28、中心孔29、及びリード孔27を含むすべての開口についての開口率は特に制限されないが、20%以上であることが好ましい。開口率の上限は上部絶縁板26の強度に応じて適宜決定することができるが、例えば60%以下とすることができる。
【0034】
上記の二次電池10によれば、二次電池10の中心軸Oから正極リード16の第2湾曲部16bまでの距離をL1とし、二次電池10の中心軸Oから開口部28までの距離をL2とした場合に、L2>L1であるように規制される。これにより、内部ガスの排出性を確保しながら、電極群14と正極リード16との短絡を効果的に防止できる。
【0035】
また、上部絶縁板26において、各開口部28の最大長さLa(図4)を正極リード16の幅Lb(図3(a))未満とした場合には、圧壊試験により正極リード16の湾曲部が電極群側に変形する場合でも、電極群と正極リード16との短絡を十分に抑制できる。
【0036】
さらに、上部絶縁板26の開口率は、20%以上である。これにより、内部ガスの排気性をより高くできる。
【0037】
<実験例>
本開示の発明者は、次のように実施例及び比較例の二次電池を作製し、圧壊試験を行った。
【実施例
【0038】
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi0.88Co0.09Al0.03で表されるアルミニウム含有ニッケルコバルト酸リチウムを用いた。その後、100重量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03と、1.0重量部のアセチレンブラックと、0.9重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)とを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の溶剤中で混合して、正極合剤スラリーを得た。このペースト状の正極合剤スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔からなる長尺な正極集電体の両面に均一に塗布した。次に、加熱した乾燥機中で、塗膜が形成された正極集電体を100~150℃の温度で熱処理してNMPを除去後、ロールプレス機により圧延して正極活物質を形成し、さらに圧延加工後の正極を、200℃に熱したローラーに5秒間接触させることで熱処理を行った。そして、正極活物質層が形成された正極集電体を所定サイズの電極サイズに切断して正極を作製し、その後、正極集電体上にアルミニウム製の正極リード16を取り付けた。作製後の正極の厚みは0.144mm、幅は62.6mm、長さは861mmである。また、正極リード16の幅は3.5mm、厚みは0.15mm、長さは76mmである。
【0039】
[負極の作製]
負極活物質として、黒鉛粉末を94重量部と、LiSiで表されるリチウムシリケート相と、リチウムシリケート相中に分散したシリコン粒子を含む母粒子6重量部との比率で混合したものを用いた。その後、この混合したものと、増粘剤としてのカルボキシルメチルセルロース(CMC)を1重量部、及び結着剤としてのスチレンブタジエンゴムのディスパージョンを1重量部とを水に分散させて、負極合剤スラリーを調整した。この負極合剤スラリーを、厚さ8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布して負極塗工部を形成した。次いで、加熱した乾燥器中で塗膜を乾燥させた後、負極厚みが0.160mmになるように圧縮ローラーで圧縮し負極活物質層の厚みを調整した。そして、負極活物質層が形成された負極集電体を所定サイズの電極サイズに切断して負極12を作製し、その後、負極集電体上にニッケル-銅-ニッケル製の負極リードを取り付けた。作製後の負極12の幅は64.2mm、長さは959mmである。
【0040】
[電池用電極群の作製]
正極と負極12との間にポリエチレン製のセパレータを介して円筒状に巻回し、電極群14を構成した。
【0041】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、ジメチルメチルカーボネート(DMC)とからなる混合溶媒(体積比でEC:FEC:DMC=1:1:3)の100重量部に、ビニレンカーボネート(VC)を4重量部添加し、当該混合溶媒に1.5モル/Lの濃度になるようにLiPFを溶解させて、非水電解液を
調製した。調整した非水電解液の100重量部に対して、ホウ酸エステル化合物を所定量添加し二次電池用の非水電解液として用いた。
【0042】
[上部絶縁板の作製]
上部絶縁板26にはガラスクロスフェノールから構成される厚みtが0.3mmの円形状の板材を用い、正極リード16が貫通するリード孔27、中心孔29、及び4つの開口部28を形成した。4つの開口部28は、上部絶縁板26の中心に関してリード孔27とは逆側で、上部絶縁板26の周方向に互いに離れた4つの位置にそれぞれ形成した。
【0043】
[二次電池の作製]
上記の電極群14の上と下とに上部絶縁板26、下部絶縁板をそれぞれ配置し、電極群14を外装缶20に収納した。正極リード16は上部絶縁板26のリード孔27を通して電極群14から導出した。負極リードを電池ケースの外装缶20に溶接し、正極リード16を内圧作動型の安全弁を有する封口体に溶接した。その後、電池ケースの内部に非水電解液を減圧方式により注入した。最後に、封口体22を、ガスケット24を介して外装缶20の上部の開口端部に加締めることにより二次電池10を作製した。二次電池10の容量は4600mAhであった。図1に示すように、上部絶縁板26の中心は二次電池10の中心軸Oに位置しており、正極リード16に第1湾曲部16a及び第2湾曲部16bが形成された状態で、正極リード16が電池ケース内に収納される。このように電池ケースに正極リード16が収納された状態で、二次電池10の中心軸Oから正極リード16の第2湾曲部16bまでの距離L1は5.3mm、二次電池10の中心軸Oから開口部28までの距離L2は5.9mmであった。
【0044】
[比較例]
図5(a)は比較例の上部絶縁板26aの平面図であり、図5(b)は比較例の上部絶縁板26aの正面図である。図5に示すように、ガラスクロスフェノールから構成される厚みtが0.3mmの円形状の板材を用い、正極リードが貫通するリード孔27a、中心孔29、及び3つの開口部28aを形成して比較例に係る上部絶縁板26aを作製した。3つの開口部28aは、上部絶縁板の中心に関してリード孔27aとは逆側で、上部絶縁板26の周方向に互いに離れた3つの位置にそれぞれ形成した。上部絶縁板26aを用い、二次電池の中心軸から正極リード16の第2湾曲部16bまでの距離L1を5.3mmとし、二次電池の中心軸から開口部28aまでの距離L2を5.2mmとしたこと以外は実施例と同様にして比較例に係る二次電池を作製した。
【0045】
[圧壊試験]
実施例及び比較例を用いて、二次電池の中心軸から第2湾曲部までの距離L1と、二次電池の中心軸から開口部28,28aまでの距離L2の正極リード16と電極群の接触による短絡発生に与える影響を検証した。このために、次の(1)から(3)の手順で圧壊試験を行った。
(1)実施例及び比較例ともに、部分充電状態の二次電池を用いた。
(2)二次電池を2枚の平板間に寝かせた状態で設置し、圧壊装置によって、二次電池に対し横から荷重が加わるようにした。加圧力の開放は、目標の加圧力に到達してからその加圧力を1分間保持した後に行った。目標加圧力を13kNとした場合、及び目標加圧力を20kNとした場合のそれぞれについて圧壊試験を行った。
(3)本試験では、二次電池の温度が40℃以上に上がった場合に、正極リード16と電極群14の短絡による発熱が発生したものと判定した。試験結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1では、比較例及び実施例において、目標加圧力を13kN、及び20kNの場合のそれぞれで、正極リード16の第2湾曲部16bが電極群14に接触することによる発熱の発生率を示している。例えば表1中、「0/5」は、5回の圧壊試験のうち、発熱が生じた試験結果が0回であったことを示している。
【0048】
実施例では、いずれの目標加圧力の試験でも、上部絶縁板26の開口部28を通しての正極リード16の第2湾曲部16bと電極群14の負極との短絡による発熱は観測されなかった。これにより、表1に示すように、実施例では、いずれの目標加圧力でも、20回の圧壊試験のうち、発熱は1回も生じなかった。
【0049】
一方、比較例では、目標加圧力が13kNの試験では、発熱が観測されなかった。しかしながら、目標加圧力が20kNの試験では、正極リード16の第2湾曲部16bと電極群14の負極との短絡により、5回目の試験で二次電池の温度が120度近くまで上昇し、発熱が観測された。比較例では、5回目の試験で発熱が観測されたので、6回目以降の試験は行わなかった。
【0050】
上記の試験結果より、実施例のように、正極リード16の第2湾曲部16bよりも外周側に、上部絶縁板26の開口部28を形成することにより、正極リード16が開口部28を通じて電極群14に潜り込んで短絡が生じることを防止できる効果を確認できた。
【0051】
なお、上記では上部絶縁板26の中心に中心孔29が形成される場合を説明したが、中心孔がない構成でも本開示の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 円筒形非水電解質二次電池(二次電池)、12 負極、14 電極群、16 正極リード、16a 第1湾曲部、16b 第2湾曲部、17 絶縁テープ、20 外装缶、21 溝部、22 封口体、24 ガスケット、26,26a 上部絶縁板、27 リード孔、28,28a 開口部、29 中心孔。
図1
図2
図3
図4
図5