(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221108BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20221108BHJP
C08K 11/00 20060101ALI20221108BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20221108BHJP
C08J 3/215 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L91/06
C08K11/00
C08L23/06
C08J3/215 CES
(21)【出願番号】P 2019546000
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 AU2018050154
(87)【国際公開番号】W WO2018152583
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-18
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518068866
【氏名又は名称】ピュア ニュー ワールド ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サナゴーイ,ムハンマド・アリ
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-004663(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0128860(US,A1)
【文献】特表2008-544064(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1616532(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102766291(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105949565(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーと蝋との母材に分散される微粒子材料を
含む複合建築材料であって、
前記複合建築材料は、前記複合建築材料の60重量%~90重量%の微粒子材料を含み、前記蝋は、前記母材の少なくとも25重量%存在する、複合建築材料。
【請求項2】
前記複合
建築材料は、熱可塑性ポリマーと蝋との均質な母材に分散される微粒子材料を含む、請求項1に記載の複合
建築材料。
【請求項3】
前記複合
建築材料は、熱可塑性ポリマーと蝋との不均質な母材に分散される微粒子材料を含む、請求項1に記載の複合
建築材料。
【請求項4】
前記複合
建築材料は、不均質な母材に分散される微粒子材料を含み、前記不均質な母材は、蝋の均質な母材に分散される第1熱可塑性ポリマー、および前記第1熱可塑性ポリマーよりも低い融点を有し、かつ蝋と前記均質な母材を形成可能である第2熱可塑性ポリマーの粒子を含む、請求項1に記載の複合
建築材料。
【請求項5】
前記微粒子材料は、フライアッシュ、セノスフェア、石炭燃焼湿式ボイラープラントからのスラグ、ごみ焼却炉からの灰、シリカ、砂、カオリン、赤泥、重晶石、酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化金属セラミック、木粉、おがくず、木の実の殻、トウモロコシ穂軸粒子、籾殻、粉砕ゴム、または前述のものの2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項6】
前記微粒子材料は、フライアッシュを含む、請求項5に記載の複合
建築材料。
【請求項7】
前記複合材料は、フライアッシュの重量
で60%
~90%を含む、請求項6に記載の複合
建築材料。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレンを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項9】
前記蝋は、パラフィンを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項10】
前記蝋は、前記母材の総重量で
30%~
50%の量で、前記母材に存在
する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーは、前記母材の総重量
で10%
~75%で、前記母材に存在
する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項12】
複合
建築材料を製造する方法であって、前記方法は、熱可塑性ポリマーおよび蝋を微粒子材料と溶融混合し、これにより前記複合材料の溶融混合物に前記微粒子材料を分散させることを
含み、
前記複合建築材料は、前記複合建築材料の60重量%~90重量%の微粒子材料を含み、前記蝋は、前記母材の少なくとも25重量%存在する、方法。
【請求項13】
前記溶融混合のステップは、蝋においてコーティングされる熱可塑性ポリマー粒子を、前記微粒子材料とともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入することと、前記蝋、および任意に前記熱可塑性ポリマー粒子を前記溶融混合設備の動作温度で軟化および溶融可能とすることにより前記溶融混合物を製造することとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記溶融混合物を所望の形態に成形することと、前記溶融混合物を硬化可能とすることとをさらに含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融混合物を成形することは、押出成形、鋳造またはカレンダリングを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の方法によって製造される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の複合
建築材料。
【請求項17】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の複合
建築材料から製造される、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、複合材料、特に建築および建設業における使用のための複合材料に関する。本開示は、複合材料を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示に対する背景の以下の説明は、本開示の理解を容易にすることが意図される。しかしながら、本議論が、言及される材料のいずれかが掲げられ、知られ、または本願の優先日において一般知識の一部であるという承認または了解ではないことが、理解されるべきである。
【0003】
ポリマー材料(プラスチック)の製造において、少量の約1~約5重量パーセントの蝋を用いてポリマー材料の粘度および融点を低減する、および/または潤滑剤および離型剤として作用することが知られている。蝋の体積の増加は相対的なポリマーの体積を低下させ製造コストを低減させ得るが、ポリマー材料の機械的強度に悪影響を及ぼす。
【0004】
炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、雲母、フライアッシュ、木粉およびおがくずなどの不活性充填剤をプラスチックにおける充填剤として用いて、機械的強度、レオロジー的挙動および熱分解のような物理的および機械的特性を変化および向上させることも知られている。これらの充填剤の均一な分布は、これらの特性の向上において重要な役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような充填剤の凝集は、ポリマーの物理的および機械的特性の発展を与えるそれらの能力を損なう。いくつかの研究は、ポリマー充填剤相互作用を高め、ポリマーにおける充填剤の分散を向上させるために、このような充填剤の表面改質を考えた。化学的改質によって、ある研究者は、複合体の特性を損なうことなく、充填剤の濃度が10%まで増加され得ることを発見した。
【0006】
低コスト材料を用い、広範囲の用途に好適である望ましい物理的および機械的特性を有する新たな改良された複合材料の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示は、複合材料および複合材料を製造する方法を提供する。
【0008】
本開示の1つの局面は、熱可塑性ポリマーと蝋との母材に分散される微粒子材料を含む複合材料に関する。
【0009】
1つの実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマーと蝋との均質な母材に分散される微粒子材料を含む。
【0010】
代替的な実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマーと蝋との不均質な母材に分散される複合材料を含む。
【0011】
1つの実施形態では、微粒子材料は、フライアッシュ(fly ash)、セノスフェア(cenosphere)、石炭燃焼湿式ボイラープラント(coal-fired wet-bottom boiler plant)からのスラグ、ごみ焼却炉からの灰、火山灰、廃棄物発電プロセス(waste-to-energy process)からの残留物、シリカ、砂、ガラス、カオリン、赤泥、重晶石(barite)、酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化金属セラミック(ceramic metal oxide)、廃棄セメント粒子(waste cement particle)、木粉(wood flour)、おがくず(saw dust)、木の実の殻などの農業廃棄物、トウモロコシ穂軸粒子(corn cob particle)、籾殻(rice husk)、粉砕ゴム(ground rubber)、または前述のものの1つ以上の組み合わせを含む群から選択され得る。
【0012】
1つの特定的な実施形態では、微粒子材料は、フライアッシュを含む。
1つの特定的な実施形態では、熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレンを含み得る。
【0013】
1つの特定的な実施形態では、蝋は、パラフィンを含み得る。
本開示のさらなる局面は、複合材料を製造する方法に関し、上記方法は、熱可塑性ポリマーおよび蝋をフライアッシュと溶融混合し、これにより複合材料の溶融混合物にフライアッシュを分散させることを含む。
【0014】
1つの実施形態では、上記方法は、上記溶融個運号物を所望の形態に成形することと、上記溶融混合物を硬化させることとをさらに含み得る。溶融混合物を成形することは、押出成形、鋳造、またはカレンダリング(calendaring)を含み得る。
【0015】
本開示の別の局面は、本願で説明されるような複合材料から製造される製品に関する。
本開示の様々な実施形態が、以下におよび添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合材料を調製するための装置およびプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明
本開示は、複合材料、特に建築および建設業における使用のための複合材料に関する。本開示は、また、複合材料を製造するための方法に関する。
【0018】
一般用語
この明細書を通して、特に明記されない限りまたは文脈上そうでないとする場合を除き、単一のステップ、物質の組成、ステップの群または物質の組成の群への言及は、1つのおよび複数の(すなわち、1つ以上の)それらのステップ、物質の組成、ステップの群または物質の組成の群を包含すると解されるべきである。したがって、本願で用いられるように、そうでないとする明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数を含む。たとえば、「a」への言及は単一および2以上を含み、「an」への言及は単一および2以上を含み、「the」への言及は単一および2以上を含むなどである。
【0019】
本願で説明される本開示の各例は、特に明記されない限り、必要な変更を加えて各々のおよびすべての他の例に適用されるべきである。本開示は、本願で説明される特定的な例によって範囲が制限されるべきではなく、例証の目的のためにのみ意図される。機能的に等価な製品、構成および方法は、明らかに、本願で説明されるような開示の範囲内にある。
【0020】
「Xおよび/またはY」など、「および/または」という用語は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味するものと理解されるべきであり、両方の意味またはいずれかの意味のための明示的なサポートを提供するように考慮されるべきである。
【0021】
この明細書を通して、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、他の要素、整数値もしくはステップ、または要素、整数値もしくはステップの群を除外するものではないが、述べられた要素、整数値もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包括を示唆する。
【0022】
特に定義されない限り、本願で用いられるすべての技術的および科学的用語は、この発明が属する分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。本願で説明されたものと類似のまたは等価の方法および材料が本発明の実施または試験において用いられ得るが、好適な方法および材料が以下に説明される。矛盾する場合、定義を含む本願明細書は、制御し得る。加えて、材料、方法、および例は、単に例示であって限定であると意図されない。
【0023】
なお、ある範囲の値が本願で表現される場合、この範囲は、範囲の上限および下限、ならびにこれらの限界間のすべての値を包含すると明確に理解される。
【0024】
本明細書を通して用いられる「約(about)」という用語は、およそ(approximately)またはほぼ(nearly)を意味し、本願に記載される数値または範囲の文脈は、記載もしくは主張される数値のまたは範囲からの、±10%以下、±5%以下、±1%以下、または±0.1%以下の変動を包含することを意味する。
【0025】
複合材料
複合材料は、熱可塑性ポリマーと蝋との母材に分散される微粒子材料を含む。
【0026】
微粒子材料は、フライアッシュ、セノスフェア、石炭燃焼湿式ボイラープラントからのスラグ、ごみ焼却炉からの灰、火山灰、廃棄物発電プロセスからの残留物、シリカ、砂、ガラス、カオリン、赤泥、重晶石、酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化金属セラミック、廃棄セメント粒子、木粉、おがくず、木の実の殻などの農業廃棄物、トウモロコシ穂軸粒子、籾殻、粉砕ゴム、または前述のものの1つ以上の組み合わせを含む群から選択され得る。微粒子材料は、不活性(たとえば、無毒)または非不活性(有毒または潜在的に有害)であり得る。
【0027】
粒径の範囲は、材料および最終製品の用途に応じて、ミクロからマクロサイズの粒径まで、複合材料を形成するために用いられる。
【0028】
複合材料は、約10重量%~約90重量%の微粒子材料、さらには約60重量%~約90重量%の微粒子材料を含み得る。特に、複合材料は、約10重量%~約90重量%のフライアッシュ、さらには約60重量%~約90重量%のフライアッシュを含み得る。
【0029】
フライアッシュは、微粉炭とともに燃やされるボイラの煙道ガスから抽出される固体材料として規定され得る。燃焼される炭の源および組成、ならびにその製造に用いられる燃焼条件および汚染制御設備に応じて、フライアッシュの化学的および物理的特性は変化し得る。一般に、フライアッシュは、シリカ(SiO2)(非晶質と結晶の両方)、アルミナ(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)を含む。フライアッシュは、限定ではないが、ヒ素、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、クロム、コバルト、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、セレン、ストロンチウム、タリウムおよびバナジウムなどの他の痕跡元素を含んでもよい。
【0030】
フライアッシュ粒子は、一般に、球状の形状および0.5μm~100μmのサイズの範囲である。
【0031】
オーストラリア標準AS3582.1にしたがって、通常グレート(Normal Grade)および特別グレード(Special Grade)の2つのグレードのフライアッシュが推奨され得る。フライアッシュの分類の基準は、以下を含む鍵となる特定の要件を用いてAS3583(13)の様々なパートで説明される試験に基づく:細かさ(45ミクロンふるいを通過する%)、強熱源量、含水率、およびSO3含有量。極細フライアッシュと通常よばれる特別グレードのフライアッシュは、細グレードのフライアッシュと同じ特性を有し得る。それらは、煙道ガスからのより細かい材料を収集する発電所集塵機バンクから特定的に選択されるか、AS3582.1規定に準拠する細製品を製造するために収集されて後粉砕されて(post-milled)分類されるかのいずれかであり得る。
【0032】
フライアッシュは異なる標準および異なる国の仕様の下で分類されることが理解される。
【0033】
それでも、フライアッシュの物理的および化学的特性の変動性にもかかわらず、それは、剛性、強度、衝撃・温度耐性、寸法安定性、クリープ、面硬度、耐スクラッチ性、耐火性および紫外線劣化などの本願で説明される複合材料の機械的特性の1つ以上を改善する。
【0034】
任意の熱可塑性ポリマーは、複合材料において有利に用いられ得る。軟化したまたは約100℃~約260℃で溶融された形態にあるものが、複合材料を練るときまたは混合するときのエネルギコストの観点から最も便利である。このようなポリマーは、当業者にとって周知であり、限定ではないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリニトリル、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフィレンオキシド、ポリフィレンスルフィド、ポリアセテート、液体結晶ポリマー、フルオロポリマー、アイオノマポリマー、ならびにそれらのいずれかのコポリマーおよびそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0035】
特に好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE:high density polyethylene)および低密度ポリエチレン(LDPE:low density polyethylene)を含む)、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、環状オレフィンコポリマー、エチル-ビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリテトラフルオロエタン、ポリオキシメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミドイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリウレタン、アクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、ナイロン、ポリブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、およびその混合物を含む。
【0036】
ポリエチレンは、比較的不活性で、約105℃~約130℃の範囲に及び得る融点を有するため、本願で説明されたような複合材料における使用に特に好適である。
【0037】
ポリエチレンは、その密度および枝分かれ度などの特徴に基づいていくつかの異なるカテゴリに分類され得る。その機械的特性は、枝分かれの程度およびタイプ、結晶構造ならびに分子量などの変数に大幅に依存する。密度にしたがってカテゴリ分けされたとき、ポリエチレンは、多くの形態で存在し、最も一般的なものは高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE:linear low density polyethylene)、および低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0038】
以下の表1に示されるように、LDPEの特性は、それを複合材料における使用に好適にする。
【0039】
【0040】
LDPEは、本願で説明されるような複合材料における使用のために特に好適である。LDPEは、0.910~0.940g/cm3の密度範囲によって規定される。LDPEは、高度の短鎖および長鎖の枝分かれを有し、鎖が同様に結晶構造へ固まらないことを意味する。したがって、弱い分子間力およびより少ない双極子誘起双極子相互作用を有する。これは、より低い引張強度および増加された延性を有するポリマー材料をもたらす。長鎖を有する高度の枝分かれは、溶融したLDPEに均一で望ましい流動特性を与える。
【0041】
熱可塑性ポリマーの質は、一次であってもよく、再利用を介して再加工されてもよい。再利用された熱可塑性ポリマーの使用は、製造者のためのコストを低減し得、環境的に持続可能な要件に適用し得るまたはそれを上回り得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、母材の総重量で約10%~約95%の量で、熱可塑性ポリマーと蝋との母材に存在し得る。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、母材の総重量で、約20%~約95%、約30%~約95%、約30%~約90%、約30%~約85%、約30%~約80%、約30%~約75%、約30%~約70%、約30%~約65%、約30%~約60%、約30%~約55%、約30%~約50%、約30%~約45%、約30%~約40%、または約30%~約35%の量で存在し得る。
【0043】
複合材料は、蝋も含む。当業者によって理解されるように、蝋は、周囲温度付近で順応性がある化合物の類に属する。特徴的には、蝋は、45℃超で溶融して低粘度液体を与える。蝋は、疎水性であるが、有機無極性溶媒に可溶である。すべての蝋は、合成および天然の両方に由来する有機化合物である。天然の蝋は、典型的には、脂肪酸と長鎖アルコールとのエステルである。合成蝋は、官能基を欠く長鎖炭化水素である。
【0044】
複合材料における使用のために好適な蝋は、様々な炭化水素(C12~C38の範囲の炭素鎖長を有するような、直鎖もしくは枝分かれ鎖のアルカンまたはアルケン、ケトン、ジケトン、第一級もしくは第二級アルコール、アルデヒド、ステロールエステル、アルカン酸、テルペン、モノエステル)を含む。ジエステルまたは他の枝分かれしたエステルも好適である。化合物は、アルコール(グリセロールまたはグリセロール以外)とC8またはより大きい脂肪酸とのエステルであり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、蝋は、パラフィン、蜜蝋(beeswax)(ニューヨーク州のStrahl and Pitsch of West Babylonから利用可能なWhite Beeswax SP-422P)、中国蝋(Chinese wax)、ラノリン、シェラック蝋(shellac wax)、鯨蝋(spermaceti)、ヤマモモ蝋(bayberry wax)、カンデリラ(candelilla)、カルナウバ蝋(carnauba wax)などの植物性蝋、昆虫蝋(insect wax)、キャスター蝋(castor wax)、エスパルト蝋(esparto wax)、木蝋(Japan wax)、ホホバ蝋(jojoba wax)、オーリキュリー蝋(ouricury wax)、米糠蝋(rice bran wax)、大豆蝋(soy wax)、蓮蝋(lotus wax)(たとえば、カリフォルニア州シルマーのDeveraux specialitiesから利用可能なNelumbo Nucefera Floral Wax)、セレシン蝋(ceresin wax)、モンタン蝋(montan wax)、オゾケライト(ozocerite)、泥炭蝋(peat wax)、ミクロ結晶蝋(microcrystalline wax)、ワセリン(petroleum jelly)、Fisher-Tropsch蝋、置換アミド蝋、パリミチン酸セチル、パルミチン酸ラウリル、ステアリン酸セトステアリル、ポリエチレン蝋(たとえば、テキサス州のNew Phase Technologies of Sugar Landから利用可能な、450の分子量および84℃の融点を有する、PERFORMALENE 400)、およびC30-45アルキルメチコンおよびC30-45オレフィンなどのシリコン蝋(たとえば、ミシガン州のDow Corning of Midlandから利用可能な、70℃の融点を有する、Dow Corning AMS-C30)などの鉱物蝋の1つ以上から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、複合材料は、パラフィンを含む、パラフィン蝋は、20~40炭素原子を有する水素および炭素分子からなる石油製品のタイプである。パラフィンは、様々な用途のために工業および日常生活において広く用いられる。パラフィンの特性は、表2に、以下示される。
【0047】
【0048】
いくつかの実施形態では、蝋は、母材の総重量で約5%~約90%の量で、熱可塑性ポリマーと蝋との母材に存在し得る。いくつかの実施形態では、蝋は、母材の総重量で、約5%~約80%、約5%~約70%、約10%~約70%、約15%~約70%、約20%~約70%、約25%~約70%、約30%~約70%、約35%~約70%、約40%~約70%、約45%~約70%、約50%~約70%、約55%~約70%、約60%~約70%、または約65%~約70%の量で存在し得る。
【0049】
フライアッシュは、熱可塑性ポリマーと蝋との均質な母材に分散され得る。本願で用いられるような「均質な母材」という用語は、母材が全体に均一な組成および特性を有し、熱可塑性ポリマーおよび蝋の粒子が全体に区別できない程度まで、熱可塑性ポリマーと蝋とが親密に互いに混合される、連続的な相を意味する。
【0050】
あるいは、フライアッシュは、熱可塑性ポリマーと蝋との不均質な母材に分散され得る。本願で用いられるような「不均質な母材」という用語は、熱可塑性ポリマーの粒子が蝋の母材内で区別可能である混合物を意味する。
【0051】
熱可塑性ポリマーの粒子は、任意の好適な形態学であり、最大5mmの粒径を有し得る。一般に、熱可塑性ポリマーの粒子は、所望の粒径に抽出され切断されることによって調製され得る。熱可塑性ポリマー粒子は、任意には、上記不均質な母材または本願で説明されるような複合材料を調製する前に蝋にコーティングされ得る。蝋コーティングは、以下に説明されるように、特定の目的のために他の添加物を含み得る。
【0052】
1つの実施形態では、複合材料は、不均質な母材に分散される微粒子材料を含み得る。不均質な母材は、蝋を含む均質な母材に分散される第1熱可塑性ポリマーおよび第1熱可塑性ポリマーよりも低い融点を有する第2熱可塑性ポリマーの粒子を含み、蝋とともに均質な母材を形成可能である。
【0053】
複合材料における上記母材に対するフライアッシュの比率は、約20:80~約80:20、または約60:40~約70:30、または約70:30~約75:25であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、複合材料は、任意には、複合材料のための所望の加工または性能特性を得るのに十分である量で1つ以上の添加物を含み得る。添加物の量は、無駄な添加物にもならず、複合材料の加工または性能に有害にもならないものでなければならない。
【0055】
任意の添加物の例示的な例は、限定ではないが、接着促進剤、殺生物剤(抗菌、殺菌剤、および防かび剤);かぶり防止剤;帯電防止剤;結合、発泡および起泡剤;分散剤、充填剤および拡張剤;耐火剤および難燃剤ならびに煙抑制剤;衝撃改質剤;開始剤;潤滑剤;雲母;顔料、着色剤および染料;可塑剤;加工助剤;離型剤;シラン、チタン酸塩およびジルコニウム塩;スリップおよびブロッキング防止剤;安定化剤;ステアリン酸塩;紫外線光吸収剤;粘度調整剤;およびその組み合わせを含む。
【0056】
既に酸化されて燃料源として作用しない灰または他の材料が特定の成分として用いられる場合、複合材料は、難燃剤に関する構成のための有利な質を有すると考えられる。理論に拘束されるものではないが、ポリマーおよび蝋母材における不燃性微粒子材料の大部分(防火剤化学物質またはそれ以外を含む)は、たとえば、建築構造の1つの面上の火炎に抵抗するまたは火炎を消すように作用し得ると考えられる。さらに、火炎損傷を伴うコンクリート材料とは対照的に、本願で開示されるような複合材料から形成される構造部材を続けて修理することが可能であり得る。
【0057】
本願で開示されるような複合材料は、絶縁材料、構造的金属、下塗りおよび/またはコーティングなども含み得る、多層サンドイッチ構造における1つ以上の層として用いられ得る。本願で開示されるような複合材料が屋外構造の構築のために利用される場合、外部の下塗りまたはコーティングは、不意の日光からの紫外光線による劣化に対するポリマー成分の抵抗性を向上し得る。好適な物質による表面層または下塗りは、全体の構造の耐火性を向上するためにも用いられ得る。言うまでもなく、地下または水中の用途にためには、たとえば、耐火性およびUV劣化は無関係である。
【0058】
本発明の実施形態にしたがって構築される複合材料は、非常に望ましい性能特徴を有することがわかっている。たとえば、以下の表3に示される製品性能試験結果は、NATA認可された実験室によってUS DOE試験体制下で達成された。
【0059】
【0060】
複合材料を製造する方法
複合材料を製造する方法は、熱可塑性ポリマーおよび蝋を微粒子材料と溶融混合し、これにより複合材料の上記溶融混合物に微粒子材料を分散させることを含む。
【0061】
1つの実施形態では、微粒子材料を熱可塑性ポリマーおよび蝋と溶融混合する前に、微粒子材料は、限定ではないが、すり潰し(grinding)、押し潰し(crushing)、ミリング(milling)などの当業者に周知であるような任意の好適な従来技術によって、所望の粒径に粉末状にされ得る。
【0062】
溶融混合ステップからの熱エネルギは、一般に、熱可塑性ポリマーと蝋との母材に分散されるときに微粒子材料の含水率を低減するのに十分であるため、有利には、微粒子材料は、溶融混合の前に乾燥することを要求しない。
【0063】
「溶融混合」または「機械的溶融混合」という用語は、交換可能であり、本願で用いられるように、フライアッシュおよび熱可塑性と蝋との混合物が、上記混合物が溶融または液体状態にある間に機械的に混合される機械的プロセスを意味する。したがって、溶融混合は、溶融された混合物へのフライアッシュの単なる添加またはその逆とは異なることが意図される。混合物にわたるフライアッシュの混合および分散は、制限されない、または存在せず影響しない。
【0064】
溶融混合は、有利には、分野において周知である技術および設備を用いて行われ得る。たとえば、溶融混合は、双軸押出機、単軸押出機、他の多軸押出機およびFarellミキサーなどの連続的押出装置を用いて達成され得る。
【0065】
溶融混合物は、均質な母材にまで冷却する熱可塑性ポリマーと蝋との均質な混合物を含み得る。
【0066】
代替的には、溶融混合物は、既に述べられたように、熱可塑性ポリマーと蝋との不均質な混合物を含み得る。冷却されたとき、熱可塑性ポリマーは、蝋の母材における熱可塑性ポリマーの粒子として不均質な混合物に分散される。
【0067】
本願で説明されたような方法を行うとき、熱可塑性ポリマーおよび蝋および微粒子材料(たとえば、フライアッシュ)は、ともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入され得る。熱可塑性ポリマー、蝋および任意には1つ以上の添加物は、ともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、蝋においてコーティングされた熱可塑性ポリマーの粒子は、熱可塑性ポリマーと蝋との均質な母材を調製するために溶融混合設備の中へ導入され得る。この特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーおよび蝋の両方が動作温度以下で軟化し溶融するとともに、均質な母材を製造するために結合するように、熱可塑性ポリマーの融点は、溶融混合設備の動作温度未満である。微粒子材料(たとえば、フライアッシュ)は、蝋コーティングされた熱可塑性ポリマー粒子とともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入され得る。
【0069】
代替的には、蝋においてコーティングされた熱可塑性ポリマーの粒子は、熱可塑性ポリマーと蝋との不均質な母材を調製するために、溶融混合設備の中へ導入され得る。この代替的な実施形態では、熱可塑材の融点は、溶融混合設備の動作温度よりも高くなる。したがって、動作温度の下では、熱可塑性ポリマー粒子は、蝋が軟化し溶融する一方でそれらの形状および形態学を保持し、これにより溶融された蝋母材内に分散される熱可塑性ポリマー粒子の不均質な母材を製造する。微粒子材料(たとえば、フライアッシュ)は、蝋コーティングされた熱可塑性ポリマー粒子とともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、蝋と、第1熱可塑性ポリマーと、第1熱可塑性ポリマーよりも低い融点を有する第2熱可塑性ポリマーとを含み、蝋との均質な母材を形成可能な不均質な母材が調製され得る。任意には蝋においてコーティングされる、第1熱可塑性ポリマーおよび第2熱可塑性ポリマーの粒子は、微粒子材料(たとえば、フライアッシュ)および蝋とともにまたは別々に、溶融混合設備の中へ導入され得る。この特定の実施形態では、微粒子材料および第1熱可塑性ポリマーは、第2熱可塑性ポリマーと蝋との均質な母材に分散される。
【0071】
溶融混合物は、微粒子材料が分散され得る、比較的低い粘度の溶融された母材を提供する。
【0072】
本願で説明されたような方法の1つの実施形態は、上記方法を実行するための装置100の代表図である
図1を参照して例示され得る。装置100では、微粒子材料12は、ホッパー16を介して溶融混合装置14の中へ供給される。本願で開示されるような、熱可塑性ポリマー、蝋および任意には1つ以上の添加物などの結合材料10は、1つ以上のホッパー18を介して微粒子材料とは別々に溶融混合装置14へ添加され得る。
【0073】
溶融混合装置14は、微粒子材料および熱可塑性ポリマーと蝋との均質(または不均質)な混合物の混合を容易にするスクリューコンベヤを備え得、1つ以上の加熱領域22,24,26を通って結果として生じる混合物を運搬して、上記混合物を溶融し、結果として生じる溶融された母材にわたって微粒子材料を分散させ得る。
【0074】
供給プロセスは、自動化され、好ましくはマイクロプロセッサ制御され得る。多数の供給機が用いられ得、各個々の供給機は、微粒子材料、蝋および熱可塑性ポリマーの送達を監視および調節してこれらの成分中の所望の重量比または体積比を維持する、マスター制御部によって規制される。
【0075】
有利には、微粒子材料は、熱可塑性ポリマーおよび蝋との溶融混合の前に加熱要素20を通過するように、溶融混合装置14内での乾燥を受け得る。
【0076】
上記方法は、さらに、上記溶融混合物が硬化される前に、溶融混合装置14によって製造された結果として生じる複合材料30を所望の形態に成形することを含む。実施形態では、溶融混合物を成形することは、材料を所望の形態に押出成形すること、鋳造することまたはカレンダリングすることを含み得る。
【0077】
1つの特に有利な用途では、本願で開示されるような複合材料は、追加の製造プロセスにおいて用いられ得る。複合材料は、溶融混合され、単一の手順/装置において製造の構造または物品へ形成される。たとえば、国際特許公報WO2017/035584は、本願で開示されるような複合材料との使用のために用いられ得る複合材料の製造のための補足的な追加の製造プロセスを開示する。その公報の開示および内容は、参照により本願に組み込まれる。
【0078】
任意の数の製品が、本願で説明されるような複合材料から製造され得る。製品の例示的な例は、限定ではないが、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、乾燥機、トースタ、ブレンダ、掃除機、ケトル、コーヒーメーカー、ミキサー、プロセッサーなどの電化製品;パネル、フェンス、デッキおよびレール、床、床被覆剤、パイプおよび建具、サイディング、トリム、窓、窓シャッター、ドア、モールディングなどの建築および建設物品;トイレシートおよび壁被覆剤などの配管製品;パワーハンドツール、熊手、シャベル、芝刈り機などの消費財;ゴルフクラブ、釣り竿および船などのスポーツおよび娯楽設備;プリンタ、コンピュータハウジング、ビジネス設備、プロジェクタ、遠隔通信設備などの電気/電子設備;車椅子、ベッド、試験設備および包装などのヘルスケア製品;容器、ボトル、ドラム、材料操作ギア、軸受、ガスケットおよびシール、バルブ、ウィンドタービンならびに安全設備などの工業製品;食品および飲料、化粧品、洗剤およびクリーナ、個人ケア、医療および福祉製品などの消費財のための包装;自動車補修部品、バンパー、窓シール、器具パネル、コンソール、フード下の電気およびエンジンカバーなどの輸送物品;ならびにタンクシールド、地中または表面バンカー、シャッター耐性シールドなどの軍および防衛物品その他を含む。
【0079】
このような物品は、当業者によって理解され得るように、従来技術によって複合材料から鋳造、押出成形、またはカレンダリングされ得る。複合材料は、複合材料が所望の形状および製品の形態に鋳造、押出成形またはカレンダリング可能であり得る温度まで加熱された後、自然なまたは加速された冷却によって最終的な所望の物品を形成し得ることが理解される。
【0080】
本開示の広く一般的な範囲から逸脱することなく、無数の変形および/または修正が上記に記載された実施形態に対してなされ得ることが、当業者によって理解される。したがって、本実施形態は、全ての点において、例示であって限定ではないと考えられるべきである。