(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】前部および後部コンポーネントの切れ刃を備えた分割切れ刃を有する切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20221108BHJP
B23B 27/04 20060101ALI20221108BHJP
B23B 27/22 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/04
B23B27/22
(21)【出願番号】P 2019553122
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(86)【国際出願番号】 IL2018050454
(87)【国際公開番号】W WO2018211491
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アサド シモン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1059857(CN,A)
【文献】英国特許出願公告第01414591(GB,A)
【文献】実開平02-043104(JP,U)
【文献】登録実用新案第3052118(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101698243(CN,A)
【文献】特開2006-326720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/02、04、14、22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前方方向および後方方向(D
F、D
R)を定義するインサート軸(A)を有する切削インサートにおいて、
軸方向の対向するインサート前面および後面(28、30)と、それらの間に延伸するインサート周囲面(32)であって、対向するインサート上面および下面(34、36)と、前記インサート上面および下面(34、36)を接続する対向するインサート側面(38)とを含むインサート周囲面(32)と、
前記インサート軸(A)に垂直なインサート横軸(B)、前記インサート軸(A)と前記インサート横軸(B)に垂直であり、前記インサート上面および下面(34、36)と交差するインサート垂直軸(C)、前記インサート軸(A)と前記インサート垂直軸(C)により定義される第1の垂直面(P1)、および前記インサート横軸(B)と前記インサート垂直軸(C)により定義される第2の垂直面(P2)と、前記インサート前面(28)および前記インサート上面(34)の交差部において形成され、前部および後部切れ刃(48、50)を備え、前記前部切れ刃(48)は、前記後部切れ刃(50)の軸方向前方にある、分割切れ刃(46)と、
前記インサート前面(28)内に位置し、前記前部および後部切れ刃(48、50)の間に延伸するアンダーカットエッジ部(54)で前記分割切れ刃(46)を遮るアンダーカット(52)と、
を備え、
前記後部切れ刃(50)は、直線後部切れ刃部(60)を備え、
前記アンダーカットエッジ部(54)は、直線アンダーカットエッジ部(62)を備え、前記直線アンダーカットエッジ部(62)は、前記直線後部切れ刃部(60)と同一直線上にあり、
前記切削インサート(24)の上面図において、前記インサート軸(A)に平行な想像線(L)は、接点(T)において前記分割切れ刃(46)と接線方向に接触し、かつ、交点(I)において前記分割切れ刃(46)と交差し、前記接点および交点(T、I)は、前記アンダーカットエッジ部(54)の軸方向範囲を定め、
前記直線アンダーカットエッジ部(62)は、前記直線後部切れ刃部(60)とは反対側の端部で、凹状
に湾曲したアンダーカットエッジ部(67)に移行し、
前記交点(I)は、前記直線後部切れ刃部(60)および前記直線アンダーカットエッジ部(62)の終点である、切削インサート(24)。
【請求項2】
前記接点(T)は、前記前部切れ刃(48)の凸状に湾曲した前部切れ刃部(64)の終点である、請求項1に記載の切削インサート(24)。
【請求項3】
前記接点(T)は、前記アンダーカットエッジ部(54)の凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部(66)の終点である、請求項1または2に記載の切削インサート(24)。
【請求項4】
前記インサート前面(28)は、前部および後部逃げ面(72、74)を備え、
前記インサート上面(34)は、前部および後部すくい面(76、78)を備え、
前記前部および後部切れ刃(48、50)は、それぞれ前記前部および後部逃げ面(72、74)と前記前部および後部すくい面(76、78)の交点に形成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項5】
前記前部すくい面(76)は、前部すくい平面(P
L)により定義され、前記後部すくい面(78)は、後部すくい平面(P
T)により定義され、
前記前部および後部すくい平面(P
L、P
T)は、互いに平行であり、すくい面距離(D)だけ、互いに離間している、請求項4に記載の切削インサート(24)。
【請求項6】
前記すくい面距離(D)は、0.2mm≦D≦0.3mmの範囲内にある、請求項5に記載の切削インサート(24)。
【請求項7】
前記前部および後部すくい平面(P
L、P
T)は前記後方方向(D
R)において、上方向に傾斜している、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項8】
前記対向するインサート側面(38)は、前記後部切れ刃(50)よりも前記前部切れ刃(48)に近い前部側面(56)と、前記前部切れ刃(48)よりも前記後部切れ刃(50)に近い後部側面(58)を含み、
前記前部すくい面(76)は、前記前部側面(56)の方向に、前記後部すくい面(78)から上方向に延伸する横方向に傾斜した面(80)を備える、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項9】
前記横方向に傾斜した面(80)は、前方方向(D
F)におけるアンダーエッジ部(54)に延伸する、請求項8に記載の切削インサート(24)。
【請求項10】
前記横方向に傾斜した面(80)は、前記前部すくい面(76)に位置する切りくず抑制構成(84)に延伸し、前記切りくず抑制構成(84)において隆起エッジ(88)を形成する、請求項8または9に記載の切削インサート(24)。
【請求項11】
前記前部および後部すくい面(76、78)は、各々前記分割切れ刃(46)から離間した切りくず抑制構成(84)を備える、請求項4乃至10のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項12】
各切りくず抑制構成(84)は、前記それぞれのすくい面(76、78)に窪んだ切りくず抑制凹部である、請求項11に記載の切削インサート(24)。
【請求項13】
前記切削インサート(24)は、前記インサート前面(28)に位置する正確に1つのアンダーカット(52)を備え、前記分割切れ刃(46)を遮る、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項14】
前記切削インサート(24)の上面図において、前記直線後部切れ刃部(60)は前記インサート軸(A)に対して垂直である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項15】
前記切削インサート(24)の正面図において、前記直線後部切れ刃部(60)は、前記インサート横軸(B)に平行である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項16】
前記前部切れ刃(48)は、直線前部切れ刃部(70)を備える、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の切削インサート(24)
【請求項17】
前記切削インサート(24)の上面図において、前記直線前部および後部切れ刃部(70、60)は互いに平行である、請求項16に記載の切削インサート(24)。
【請求項18】
前記切削インサート(24)の上面図において、前記直線前部および後部切れ刃部(70、60)は、前記インサート軸(A)に対して垂直である、請求項17に記載の切削インサート(24)。
【請求項19】
前記切削インサート(24)の正面図において、前記直線前部および後部切れ刃部(70、60)は、互いに平行である、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項20】
前記切削インサート(24)の正面図において、前記直線前部および後部切れ刃部(70、60)は、前記インサート横軸(B)に対して平行である、請求項19に記載の切削インサート(24)。
【請求項21】
前記切削インサート(24)の正面図において、前記直線前部および後部切れ刃部(70、60)は、互いに整列している、請求項20に記載の切削インサート(24)。
【請求項22】
前記インサート横軸(B)に沿った方向に測定すると、
前記前部切れ刃(48)は、前部切れ刃長(L
L)を有し、
前記後部切れ刃(50)は、後部切れ刃長(L
T)を有し、
前記前部切れ刃長(L
L)は、前記後部切れ刃長(L
T)の75%~125%の範囲内にある、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項23】
前記分割切れ刃(46)は、前記対向する側面(38)の間に、単一の前部切れ刃(48)と単一の後部切れ刃(50)のみを備える、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【請求項24】
前記切削インサート(24)の上面図において、前記切削インサート(24)は、前記第1の垂直面(P1)に対して鏡面対称を欠く、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の切削インサート(24)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の主題は、切削インサート(cutting inserts)に関し、特に、チップ分割配置(a chip-splitting arrangement)を有する切削インサート(cutting inserts)に関する。
【背景技術】
【0002】
切削インサートは、金属切削加工の間、チップを分割するためのチップ分割配置を備えることができる。典型的には、チップ分割配置は、少なくとも2つの離間された主切れ刃(cutting edge)により形成される。溝切りおよび/または突切り切削動作用(grooving and/or parting cutting operations)に設計されたこのようないくつかの切削インサートでは、少なくとも2つのメイン切れ刃は、軸方向に離間することができる。そのような切削インサートの例は、例えば、CN101698243およびUS5975812に開示されている。
【0003】
この出願の主題の目的は、新規で改良された切削インサートを提供することである。
この出願の主題の他の目的は、新規で改良されたチップ分割配置を有する切削インサートを提供することである。この出願の主題のさらに他の目的は、切削加工中に切れ刃の摩耗の低減を経験する切削インサートを提供することである。
【発明の概要】
【0004】
この出願の主題の第1の態様によれば、対向する前方方向および後方方向を定義するインサート軸を有する切削インサートが設けられる。切削インサートは、軸方向に対向するインサート前方面および後方面と、それらの間に延伸するインサート周囲面であって、対向するインサート上面と、インサート下面と、インサート上面およびインサート下面を接続する対向するインサート側面とを含む、インサート周囲面と、インサート軸に垂直なインサート横軸と、インサート軸およびインサート横軸に垂直であって、インサート上面とインサート下面を交差するインサート縦軸、インサート軸とインサート縦軸により定義される第1の垂直面と、インサート横軸とインサート縦軸により定義される第2の垂直面と、インサート前面とインサート上面の交差部に形成され、前部切れ刃(leading cutting edge)および後部切れ刃(trailing cutting edge)を備え、前部切れ刃は、後部切れ刃の軸方向前方にある、分割切れ刃と、インサート前面に位置し、前部エッジと後部エッジの間に延伸するアンダーカットエッジで分割切れ刃を遮る(interrupt)アンダーカット(undercut)と、を備え、後部切れ刃は、直線上の後部切れ刃部を備え、切削インサートの上面において、インサート軸に平行な想像線は、接点において、切れ刃に接線方向に接触し、交点において、切れ刃に交差し、接点および交点は、アンダーカットエッジ部の軸方向範囲を定める、交点は、ストレート後部切れ刃部の終点である。
【0005】
上記は要約であり、以下に記載される特徴は、本出願の主題に任意の組み合わせで適用可能であり、例えば、以下の特徴のいずれかが切削インサートに適用可能であることが理解される。アンダーカットエッジ部は、直線状のアンダーカットエッジ部を備えることができ、ストレートアンダーカットエッジ部(straight undercut edge portion)は、ストレート後部切れ刃部と同一直線上にあり得る。交点は、ストレートアンダーカットエッジ部の終点であり得る。
【0006】
接点は、前部切れ刃の凸状に湾曲した前部切れ刃部の終端であり得る。接点は、アンダーカットエッジ部の凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部の終点であり得る。インサート前面は、前部および後部逃げ面(relief surfaces)を備えることができる。インサート上面は、前部および後部すくい面(rake surfaces)を備えることができる。前部および後部切れ刃は、それぞれ、前部および後部にげ面と後部すくい面(trailing rake plane)との交点に形成することができる。前部すくい面は、前部すくい平面により定義することができ、後部すくい面は、後部すくい平面により定義することができる。前部および後部すくい平面は、互いに平行であり得る、すくい平面距離だけ互いに離間することができる。すくい平面距離は、0.2mm<D<0.3mmの範囲であり得る。
【0007】
前部および後部すくい平面は、後方方向において、上向きに傾斜させることができる。
対向するインサート側面は、後部切れ刃よりも前部切れ刃に近い前部側面と、前部切れ刃より後部切れ刃に近い後部側面を含む。前部すくい面は、前部側面に向かう方向において、後部すくい面から上方向に延伸する、横方向に傾斜した面を備えることができる。横方向に傾斜した面は、前方向において、アンダーカットエッジ部に延伸することができる。
【0008】
横方向に傾斜した面は、前部すくい面に位置する切りくず抑制構成(chip-control arrangement)に延伸し、チップ制御配列において隆起エッジ(ridge edge)を形成することができる。前部および後部すくい面は、おのおの、分割切れ刃から離間した切りくず抑制構成を備える。各切りくず抑制構成は、それぞれのすくい面に窪んだ切りくず抑制くぼみであり得る。切削インサートは、インサート前面に位置し、分割された切れ刃を遮るアンダーカットを1つだけ備えることができる。切削インサートの上面図において、ストレート後部切れ刃部は、インサート軸に対して垂直であり得る。
【0009】
切削インサートの正面図において、直線後部切り(straight trailing cutting edge)は、インサート軸に垂直なインサート横軸に並行であり得る。前部切れ刃は、直線前部切れ刃部を備えることができる。切削インサートの上面図において、直線前部および後部切れ刃部は、互いに平行であり得る。切削インサートの上面図において、直線前部および後部切れ刃部は、インサート軸に対して垂直であり得る。
【0010】
切削インサートの正面図において、ストレート前部および後部切れ刃部は、互いに平行であり得る。切削インサートの正面図において、ストレート前部および後部切れ刃部は、インサート横軸に対して平行であり得る。切削インサートの正面図において、ストレート前部および後部切れ刃部は、互いに整列させることができる。インサート横軸に沿った方向で測定すると、前部切れ刃は、前部切れ刃長さを有することができる。後部切れ刃は、後部切れ刃長を有することができる。前部切れ刃長は、75%<LT≦125%の範囲内である。
【0011】
分割切れ刃は、対向する側面間に、単一の前部切れ刃と単一の後部切れ刃のみを備えることができる。切削インサートの上面図において、切削インサートは、第1の垂直平面にについて鏡面対称性を欠く可能性がある。この出願のより良き理解のため、および実際にどのように実施されるかを示すために、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、この出願の一実施形態に従う切削インサートの斜視図である。
【0013】
説明を簡単かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されよう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比べて誇張されている場合がある。適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、参照番号を図面間で反復する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本願の主題の様々な態様について説明する。説明の目的で、特定の構成および詳細は、本出願の主題の完全な理解を提供するために十分に詳細に述べられている。しかしながら、本出願の主題は、本明細書に提示される特定の構成および詳細なしで実施できることも当業者には、明らかであろう。
【0015】
切り屑(chip)除去のための、切削工具20を示す
図1および2に注意が向けられる。図面に示されているこの非限定的な例では、切削工具20は、溝入れ/分割ツール(grooving/parting tool)である。しかしながら、本願の主題は、溝切り/分割ツールのみに限定されず、例えば、フライス削りツールにも適用可能であるが、これに限定されない。切削工具20は、典型的には、鋼から作ることができる工具ホルダ22を有する。切削工具20は、工具ホルダ22に取外し可能に取り付けられた少なくとも1つの切削インサート24も有する。図面に示されるこの非限定的な例では、切削インサート24は、工具ホルダ22のインサートポケット26に弾性的に保持される。したがって、切削インサート24は、その中に保持ネジを配置するためのねじ穴を欠いている。切削インサート24は、通常、超鋼合金から作成することができる。本願の主題に従う、切削インサート24を示す
図3乃至6を参照する。切削インサート24は、一体の一体型ワンピース構造を含む。切削インサート24は、対向する前方および後方方向D
F、D
Rを定義するインサート軸Aを有する。
図1に示すように、溝入れ/分割ツールの場合に、インサート軸Aは、切削工具20の送り方向Fと同一方向であり得る。切削インサート24は、軸方向に対向するインサート前面28および後面30、およびそれらの間に延伸するインサート周囲面32を含む。インサート前面28は、切削インサート24の前端に位置し、インサート後面30は、切削インサート24の後端に位置する。
説明および特許請求の範囲を通して「前方」および「後方」という用語を使用することは、
図4および5において、それぞれインサート軸Aの方向における相対的な位置を指す。インサート周囲面32は、インサート軸Aに沿って周囲に延在する。したがって、インサート軸Aは、インサート前面28および後面30と交差する。インサート周囲面32は、対向するインサート上面34および後面36、およびインサート上面34とインサート後面36を接続する対向するインサート側面38を含む。
【0016】
図面に示されるこの非限定的な例では、
図5に最も良く見られるように、インサート下面36は、インサート前面28からインサート背面30に向かう方向に段を付けることができる。そのような構成において、インサート下面36は、インサート前面28に隣接する下部前面40と、インサート下面36に隣接する下部下面42と、下部前面40と背面42との間を横方向に延伸する下部中間面44とを含むことができる。上記から、切削インサート24は、一方向のみでインサートポケットに保持することができ、従って、切削インサートは、割り出し不能である(non-indexable)。
図5を参照すると、インサート上面34は、インサート軸Aに平行であり得る。切削インサート24は、またインサート軸Aに垂直であり、インサート側面38と交差するインサート横軸Bを有する。特に、インサート側面38は、インサート横軸Bに対して垂直であり得る。インサート横軸は、対向する第1および第2の横方向D
L1、D
L2を定義する。
切削インサート24は、また、インサート軸Aとインサート横軸Bに垂直であり、インサート上面34とインサート下面36と交差するインサート垂直軸Cを有する。インサート軸A、インサート横軸Bおよびインサート垂直軸Cは、すべて互いに相互に垂直である。インサート垂直軸Cは、対向する上下方向D
U、D
Dを定義する。
図4乃至6を参照すると、インサート軸Aおよびインサート垂直軸Cは、各々インサート側面38の中間に延伸している。インサート側面38は、インサート軸Aおよびインサート垂直軸Cに平行であり得る。インサート軸Aとインサート軸Cは、横軸Bに垂直な仮想第1垂直面P1を定義する。インサート横軸Bとインサート垂直軸Cは、インサート軸Aに垂直な第2の仮想面P2を定義する。説明および特許請求の範囲全体にわたる用語「横方向」の使用は、
図6において、それぞれ左右のインサート横軸Bの方向の相対位置を指すことを理解されたい。
同様に、説明および特許請求の範囲を通して、用語「上方」および「下方」の使用は、それぞれ
図5および6の上部および底部に向かうインサート垂直軸Cの方向の相対位置を指す。さらに、切削インサート24の正面図は、インサート軸Aに沿ったインサート前面28の正面図である。切削インサート24の側面図は、インサート横軸Bに沿ったインサート側面38の1つの前面の図である。切削インサート24の上面図は、インサート垂直軸Cに沿ったインサート上面34の前面の図である。
【0017】
図3および4を参照すると、切削インサート24は、インサート前面28とインサート上面34の交差部に形成された切れ刃46を含む。切れ刃46は、インサートの幅方向(widthwise direction)(すなわち、インサート横軸Bに沿って)分割され、インサート軸Aに沿って互いに離間した前部および後部の切れ刃48、50を含む。前記切れ刃48は、インサート軸Aに対して、さらにインサート横軸Bに対して、後部切れ刃50の軸方向前方にある。したがって、前記切れ刃および後部切れ刃48、50は、軸方向に互い違いになっている。前部および後部切れ刃48、50は、横方向D
L1、D
L2には、重畳しない。しかしながら、切削インサート24(
図6)の正面図に見られるように、分割切れ刃46は、前部および後部切れ刃48、50の構成により、対向するインサート側面38の間の全幅に延伸する。図に示されるように、分割切れ刃46は、対向する側面38の間に、単一の前部切れ刃48と、単一の後部切れ刃50のみを備える。
【0018】
図7に示されるように、この出願の主題のいくつかの実施形態にしたがって、インサート横軸Bの沿った方向に測定されると、前部切れ刃48は、前部切れ刃長L
Lを有し、後部切れ刃50は、後部切れ刃長L
Tを有する。前部切れ刃長L
Lは、75%<L
T<125%の範囲にあり得る。望ましくは、後部切れ刃長L
Tは、前部切れ刃長L
L未満であり得る。切削インサート24は、インサート前面28に位置するアンダーカット52を含む。有利には、アンダーカット52がインサート前面28に配置されることにより、例えば、インサート上面に対向して、切削インサート24は、さらなる研削プロセスなしで製造することができる。アンダーカット52は、アンダーカットエッジ部54において、分割切れ刃4を遮る。アンダーカット52により、切削インサート24(すなわち、
図6)の正面図では、インサート前面28の一部は見えない。
図7に見られるように、アンダーカットエッジ部54は、前部切れ刃48と後部切れ刃50との間に延在するする。前記切れ刃48の一部は、横方向D
L2でアンダーカットエッジ部54と完全に重畳することに留意されたい。したがって、アンダーカットエッジ部54は、非切れ刃である。すなわち、アンダーカットエッジ部54は、加工物の切削を行わず、むしろ、切削インサート24にチップ分割配置を提供する役割を果たす。明確にするために、アンダーカットエッジ部54は、切削インサートの上面図(すなわち、
図4)でインサート軸Aに平行な想像線Lを基準にして定義することができる。そのような図では、想像線Lは、接線Tおよび交点Iで分割切れ刃46に接線方向に接触し、交差する。接線Tおよび交点Iは、アンダーカットエッジ部54の軸方向範囲を区切る。アンダーカットエッジ部54は、接線Tで前部切れ刃48に移行し、交点Iで後部切れ刃50に移行する。前部切れ刃40と後部切れ刃50の軸方向の互い違い(staggering)により、また、アンダーカット54のために、上面図において、切削インサート24は、第1の垂直面P1に関して鏡面対称性を欠く可能性がある。ここで、
図7を参照すると、後部切れ刃50は、直線の後部切れ刃部60を含む。典型的に、後部切れ刃長L
Tの大部分は、直線の後部切れ刃部60により形成することができる。交点Iは、直線後部切れ刃部60の終点である。
【0019】
図8を参照すると、この出願の主題のいくつかの実施形態に従って、アンダーカットエッジ部54は、直線アンダーカットエッジ部62を含むことができる。交点Iは、直線アンダーカットエッジ部62の終点であり得る。すなわち、直線アンダーカットエッジ部62と直線後部切れ刃部60は、交点Iで互いに移行する。直線アンダーカットエッジ部62は、直線後部切れ刃部60と同一線上にあり得る。したがって、交点Iは、連続直線エッジの非終点(non-end point)に位置することができ、その一部は、加工品を切削するための切れ刃として機能し、(すなわち、直線切れ刃部60)その別個の部分は、機能しない(すなわち、直線アンダーカットエッジ部62)。この出願の主題のいくつかの実施形態に従って、直線アンダーカットエッジ部62は、直線切れ刃部60とは反対側の端部で、凹状アンダーカットエッジ部67に移行することができる。
【0020】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、前部切れ刃48は、凸状に湾曲した前部切れ刃部64を含むことができる。アンダーカットエッジ部54は、凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部66を含むことができる。接点Tは、凸状に湾曲した前部切れ刃部64の終点であり得る。接点Tは、凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部66の終点であり得る。言い換えると、凸状に湾曲した前部切れ刃部64と、凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部66は、接点Tにおいて互いに移行することができる。接点Tは、分割切れ刃46が横方向D
L1、D
L2を変更する点である。アンダーカットエッジ部54は、凸状に湾曲したアンダーカットエッジ部66と、凹状に湾曲したアンダーカットエッジ部67との間に延在する直線中央アンダーカットエッジ部68を含むことができる。
図8に示すように、直線中央アンダーカットエッジ部68と、直線後部切れ刃部60は、外角αを形成する。外角は60°<α<70°の範囲内であり得る。
【0021】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、前記切れ刃48は、直線前部切れ刃部70を含むことができる。典型的には、前記切れ刃長L
Lの大部分は、直線切れ刃部70により形成することができる。切削インサート24(すなわち、
図4)の上面図では、直線前部および後部切れ刃部70、60は、互いに平行であり得る。さらに、直線前部切れ刃部70は、インサート軸Aに対して垂直であり得る。同様に、直線後部切れ刃部60は、インサート軸Aに対して垂直であり得る。切削インサート24(すなわち、
図6)の上面図では、直線前部および直線後部切れ刃部70、60は、互いに平行であり得る。さらに、直線前部切れ刃部70は、インサート横軸Bに平行であり得る。同様に、直線後部切れ刃部60は、インサート横軸Bに平行であり得る。直線前部および後部切れ刃部70、60は、互いに整列することができる。
【0022】
インサート側面38は、後部切れ刃50よりも、前部切れ刃48に近い前記側面56と、前部切れ刃48よりも後部切れ刃50に近い後部側面58を含む。本出願のいくつかの実施形態によれば、切削インサート24は、インサート前面28に位置し、分割切れ刃46を遮る正確に1つのアンダーカット52を含む。したがって、分割切れ刃46は、正確に1つのアンダーカット部54を含むことができる。そのような構成では、前部切れ刃48は、前部側面56に延伸し、後部切れ刃50は、後部側面58に延伸する。インサート前面28は、それぞれ、前部および後部切れ刃48、50から延伸する前部および後部逃げ面72、74を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、アンダーカット52は、前部および後部逃げ面72、74の間に位置することができる。
【0023】
図面に示されるこの非限定的な例では、切削インサート24(すなわち、
図6)の正面図において、前部逃げ面72は、インサート下面36に向かう方向に減少する幅が変化する台形の基本形状を有することができる。インサート上面34は、前記および後部切れ刃48、50から、それぞれ延伸する前部および後部すくい面76、78を含む。前部および後部切れ刃48、50は、それぞれ、前部および後部逃げ面72、74と後部すくい面76、78の交差部に形成される。本主題のいくつかの実施形態によれば、前部すくい面76は、前記すくい面P
Lにより定義され、後部すくい面78は、後部すくい面P
Tにより定義され得る。
【0024】
切削インサート24の
図5の側面図(または、その詳細、例えば、
図8)に見られるように、前部および後部すくい面P
L、P
Tは、互いに平行であり、すくい面距離Dだけ互いに離間することができる。すくい面距離Dは、0.2mm<D<0.3mmの範囲内であり得る。前部および後部すくい面P
L、P
Tは、後方方向D
Rに上向きに傾斜することができる。
別の言い方をすれば、前記および後部すくい面P
L、P
Tは、それぞれの切れ刃48、50から後方方向D
Rに延伸するにつれ、インサート軸Aからの距離を増加させることができる。
【0025】
前部すくい面76は、後部すくい面78から前部側面56に向かう方向に上向きに延伸する横方向傾斜面80を含むことができる。横方向傾斜面80は、前方方向D
Fにアンダーカットエッジ部54まで延伸することができる。前部および後部すくい面76、78は、後方方向D
Rにおいて、インサート軸Aに対して横方向に向けられた切りくず偏向突起82まで延伸することができる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、前部および後部すくい面76、78は、各々分割切れ刃46から離間した切りくず抑制構成84を含むことができる。
各切りくず抑制構成84は、それぞれのすくい面76、78に窪み制御された切りくず抑制御凹部86を含むことができる。前部および後部すくい面76、78に関連づけられた切りくず抑制構成84は、同一でなくてもよい。各切りくず抑制構成84は、後方方向D
Rに、長手方向に延伸することができる。インサート軸Aに垂直な平面でとられ、前方方向D
F(例えば、
図10)を見る断面図に見られるように、横方向に傾斜した面80は、前部すくい面76に位置する切りくず抑制構成80まで延伸することができ、前記切りくず抑制構成84において隆起エッジ88を形成する。
【0026】
従来技術に見られるように、後部切れ刃は、(例えば、湾曲が相対的に小さくても)凹状に湾曲した軸方向前部を有することができる。この凹状に湾曲した部分は、切削操作中にワークピースに出会うための後部切れ刃の最初の部分であり、摩耗しやすい。後部切れ刃50の摩耗は、その切りくず形成能力に有害であり、工具寿命も短縮する。従って、交点Iが、直線後部切れ刃部60の終点であるため、分割切れ刃48、または、より具体的には、後部切れ刃50は、より少ない摩耗を受ける。本出願の主題をある程度詳細に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を行うことができる。