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特許7171608粗カーボンナノチューブの精製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】粗カーボンナノチューブの精製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/17 20170101AFI20221108BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20221108BHJP
   H01G 11/36 20130101ALN20221108BHJP
【FI】
C01B32/17
H01M4/62 Z
H01G11/36
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019553296
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2018052192
(87)【国際公開番号】W WO2018178929
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】17/52749
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】62/479,688
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダルウィシュ, アリ
(72)【発明者】
【氏名】ドンティニー, マルタン
(72)【発明者】
【氏名】コンドウ, ナオユキ
(72)【発明者】
【氏名】ジェルフィ, アブデルバスト
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
(72)【発明者】
【氏名】ボーソレイユ, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】コルジェンコ, アレクサンドル
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/17
C01B 32/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属不純物を含む粗カーボンナノチューブを精製する方法であって、
記粗カーボンナノチューブを圧縮して、前記粗カーボンナノチューブのかさ密度よりも高いかさ密度を有する圧縮粗カーボンナノチューブを生成するステップ、
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮の前、間または後に水溶液中の無機塩基を添加するかまたは水を添加するステップ、
前記圧縮粗カーボンナノチューブから水分を除去するために前記圧縮粗カーボンナノチューブを乾燥するステップ、および
記圧縮粗カーボンナノチューブを、気体雰囲気下での熱処理にかけることにより前記圧縮粗カーボンナノチューブを焼結、前記金属不純物の少なくとも一部を除去し、精製カーボンナノチューブを生成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブを凝集させて凝集カーボンナノチューブを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝集カーボンナノチューブのかさ密度が、0.1~0.8g/cmの間に含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブをブリケッティングしてカーボンナノチューブのブリケットを生成することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粗カーボンナノチューブの前記ブリケットのかさ密度が、0.1~0.8g/cmの間に含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブを押出して押出粗カーボンナノチューブの細粒またはペレットを生成することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
粗カーボンナノチューブの前記細粒またはペレットのかさ密度が、0.2~0.3g/cmの間に含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮が、
-凝集、
-ブリケッティング、および
-押出
のうちの少なくとも1つのステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮が、前記粗CNTのかさ密度が少なくとも0.2g/cmである場合、前記凝集のみを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
熱処理の間の前記気体雰囲気が、塩素ガスを含み、前記金属不純物が、前記塩素ガスによる前記金属の塩素化後、パルス減圧システムによって除去される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱処理の間の前記気体雰囲気が、窒素ガスを含み、前記金属不純物が、蒸発によって除去される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理が、1200℃~3000℃の間に含まれる焼結温度で実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理が、プッシャー連続窯において実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記熱処理が、バッチ式窯において実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液中の無機塩基は、LiOH、NaOH、KOH、Na CO 、またはこれらの任意の組合せである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
無機塩基の前記水溶液または前記水が、20~80℃の間の温度で添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
直接適用のための調整精製カーボンナノチューブを生成するために、前記精製カーボンナノチューブを調整するステップを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記調整ステップが、前記精製カーボンナノチューブを分散させて、そのかさ密度を低減することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
分散後に得られるかさ密度が、0.21~0.25g/cmの間に含まれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記調整ステップが、前記精製カーボンナノチューブを封入することを含む、請求項1719のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記粗カーボンナノチューブが、10よりも大きい長さ/直径比、100~300m/gの間に含まれる比表面積および0.02~0.5g/cmの間に含まれるかさ密度を示す多壁型である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記精製カーボンナノチューブが、5ppm~200ppmの間の金属不純物含有量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記精製カーボンナノチューブの金属不純物含有量が、5ppm~50ppmの間に含まれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属不純物が鉄を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は一般にカーボンナノチューブに関し、より詳細には、電極材料として直接使用できる精製ナノチューブを得るための粗カーボンナノチューブの精製に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、CNTとも称し、優れた電気および熱伝導性、ならびに機械的柔軟性および顕著に大きな表面積を利点とする。カーボンナノチューブは、巻かれたグラファイトシートでできており、端部がフラーレンに似た構造を有する五角形および六角形からなる半球になっている。ナノチューブは、単壁ナノチューブ(SWNT)とも称する単一のシート、または多壁ナノチューブ(MWNT)とも称するいくつかの同心円のシートのいずれかで構成されることが公知である。したがって、CNTは、広範な用途のための、とりわけリチウムイオン電池におけるアノードおよびカソードを含む電極の電気伝導性を高めるための添加剤として、理想的な候補物質である。
【0003】
しかしながら、CNTは、金属または鉱物不純物、例えばFe、Mn、Cr、Co、Ni、Al、Mo、VaおよびSiなどの非炭素不純物を含むことが公知であり、これらは、CNTの製造方法による残留量で存在する。不純物の総量を低減することを目的とする精製ステップを含まない方法に従って調製されたCNTは、本出願において粗CNTと称する。粗CNT中の非炭素不純物の総量は、一般に、2~20重量%の間であり、これは、リチウムイオン電池の電極の性能に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
CNT中の不純物のレベルを低減するために、精製ステップを実施することができる。例えば、目標金属不純物を除去するための反応物として、塩素ガスまたは窒素ガスを使用することができる。
【0005】
リチウムイオン電池などの様々な用途における精製CNTの直接使用に適切な純度レベルを有する精製CNTを得るための、不純物を含む粗CNTからの完全な精製方法を設計するという課題が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
それらの電子的用途に従って、それらのさらなる精製の必要なしに、精製カーボンナノチューブを直接使用するために、粗カーボンナノチューブを精製することを目的とする方法が提供される。
【0007】
より詳細には、金属不純物を含む粗カーボンナノチューブを精製する方法が提供される。本方法は、
i)粗カーボンナノチューブを圧縮して、粗カーボンナノチューブのかさ密度よりも高いかさ密度を有する圧縮粗カーボンナノチューブを生成するステップ、および
ii)圧縮粗カーボンナノチューブを、気体雰囲気下での熱処理を含む焼結を行って、金属不純物の少なくとも一部を除去し、精製カーボンナノチューブを生成するステップ
を含む。
【0008】
本方法のある態様によると、粗カーボンナノチューブの圧縮は、粗カーボンナノチューブを凝集させて凝集カーボンナノチューブを生成することを含む。凝集カーボンナノチューブのかさ密度は、0.1~0.8g/cmの間に含まれる。
【0009】
本方法の別の態様によると、粗カーボンナノチューブの圧縮は、粗カーボンナノチューブをブリケッティングしてカーボンナノチューブのブリケットを生成することを含む。粗カーボンナノチューブのブリケットのかさ密度は、0.1~0.8g/cmの間に含まれる。
【0010】
本方法の別の態様によると、粗カーボンナノチューブの圧縮は、粗カーボンナノチューブを押出して押出粗カーボンナノチューブの細粒またはペレットを生成することを含む。粗カーボンナノチューブの細粒またはペレットのかさ密度は、0.2~0.3g/cmの間に含まれる。
【0011】
本方法の別の態様によると、圧縮は、
- 凝集、
- ブリケッティング、および
- 押出
のうちの少なくとも1つのステップを含む。
【0012】
圧縮は、粗CNTのかさ密度が少なくとも0.2g/cmである場合、凝集のみを含む。
【0013】
本方法のある特定の態様によると、熱処理の間の気体雰囲気は、塩素ガスを含んでもよく、この場合、金属不純物は、塩素ガスによる金属の塩素化後、パルス減圧システムによって除去される。
【0014】
本方法の他の態様によると、熱処理の間の気体雰囲気は、窒素ガスを含んでもよく、この場合、金属不純物は蒸発によって除去される。
【0015】
本方法のある特定の態様によると、熱処理は、1200℃~3000℃の間に含まれる焼結温度で実施される。必要に応じて、熱処理は、プッシャー連続窯で実施することができる。あるいは、熱処理は、バッチ式窯で実施することができる。
【0016】
本方法のある特定の態様によると、後者は、粗カーボンナノチューブの圧縮の前、間または後に水溶液中の無機塩基を添加することまたは水を添加することを含み得る。例えば、無機塩基の水溶液または水は、20~80℃の間の温度で添加される。これらの条件において、本方法は、圧縮粗カーボンナノチューブから水分を除去するための乾燥ステップを含み得る。
【0017】
本方法のある特定の態様によると、後者は、精製カーボンナノチューブを調整して、直接適用のための調整精製カーボンナノチューブを生成するステップを含み得る。
【0018】
調整ステップは、必要に応じて、精製カーボンナノチューブを分散させて、そのかさ密度を低減することを含んでもよい。分散後のかさ密度は、0.21~0.25g/cmの間に含まれ得る。調整ステップはまた、必要に応じて、精製カーボンナノチューブを封入することを含み得る。
【0019】
本方法のある特定の態様によると、粗カーボンナノチューブは、10よりも大きい長さ/直径比、100~300m/gの間に含まれる比表面積および0.02~0.5g/cmの間に含まれるかさ密度を示す多壁型であり得る。必要に応じて、精製カーボンナノチューブは、5ppm~200ppmの間の金属不純物含有量を有してもよい。必要に応じて、精製カーボンナノチューブの金属不純物含有量は、5ppm~50ppmの間に含まれる。例えば、金属不純物は鉄を含む。
【0020】
電極材料を生成するための炭酸化添加剤としての、本明細書に定義される通りの方法に従って生成された精製カーボンナノチューブの使用もまた提供される。
【0021】
本明細書に定義される通りの方法に従って生成された精製カーボンナノチューブを含む電極材料もまた提供される。
【0022】
電極材料はまた、電気化学活材料として、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、酸化バナジウム、リチウム金属酸化物およびそれらの組合せの粒子を含み得る。例えば、さらなる電気化学活材料は、LiNi0.33Mn0.33Co0.33またはLiFePOであり得る。
【0023】
電極材料は、補助的な導電材料、無機粒子、塩および/または1種もしくは複数の結合剤をさらに含み得る。
【0024】
本明細書に定義される通りの電極材料を含む電極もまた提供される。電極は、リチウムイオン電池の正電極または負電極であり得る。
【0025】
本明細書に定義される通りの電極、対電極および電解質を含む電気化学セルもまた提供される。
【0026】
本発明を、例示的な実施との関連で記載するが、本発明の範囲をそのような実施に限定することは意図されないことが理解されるであろう。これと対照的に、本記載によって定義される通り、含まれ得るものとしてすべての代替例、変更例および等価物が包含されることが意図される。本方法および関連する実現の目的、利点および他の特徴は、添付の図面を参照しながら、以下の非限定的な記載を読むことで、より明らかとなり、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態による精製方法の流れ図である。
【0028】
図2図2は、本発明の別の実施形態による精製方法の流れ図である。
【0029】
図3図3は、本発明の別の実施形態による、凝集、ブリケッティングおよび焼結の連続するステップを示す精製の完全なプロセス流れ図である。
【0030】
図4図4は、本発明の別の実施形態による、連続する凝集および焼結ステップを示す部分的なプロセス流れ図である。
【0031】
図5図5は、本発明の別の実施形態による、連続するブリケッティングおよび焼結ステップを示す部分的なプロセス流れ図である。
【0032】
図6図6は、本発明の別の実施形態による、連続する分散および封入ステップを示す部分的なプロセス流れ図である。
【0033】
図7図7は、本発明の別の実施形態による、焼結ステップの間の時間に対する熱処理の温度プロファイルを示すグラフである。
【0034】
図8図8は、それぞれ実施例9、10および11に詳述される方法に従って製造された3つの電極についての充電(C)に対する放電容量の維持率(%)を示すグラフである。
【0035】
図9図9は、それぞれ実施例12、13および14に詳述される方法に従って製造された3つの電極についての充電(C)に対する放電容量の維持率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
CNTは、当業者に公知の様々なプロセスに従って合成することができる。それらは、2つのファミリー:「高温」(HT)および「中温」(MT)プロセスに分けることができる。「レーザーアブレーション」または「電気アーク法」などのHTプロセスは、金属汚染が非常に低レベルのCNTをもたらすことができる。しかしながら、それらはまた、いくつかの炭素不純物ももたらし、実際には工業規模で使用されていない。MTプロセスは、主にC-CVD(触媒化学気相蒸着)に基づく。このプロセスは、CNT合成に関して非常に選択的であり、炭素源、例えば、飽和、不飽和、非環式、環式もしくは芳香族であってもよい炭化水素(エチレン、メタン、エタン、アセチレン、ベンゼン…)、一酸化炭素またはエタノールなどのアルコールを、一般に500℃~1500℃の間の温度で、金属触媒上で分解することからなる。したがって、触媒は炭素構造中に取込まれ、したがって、CNTの炭素純度は、使用される触媒の量および合成の収率に直接関連する。
【0037】
例えば、合成は、有機または無機支持体上の金属または金属酸化物鉄(例えば、炭素支持体上のFeもしくはFe、アルミナ担体上のFe、または炭素フィブリル支持体上のFe)を含有する触媒を、気体炭素(COまたは炭化水素)を含有する化合物と接触させ、それによって気体化合物(例えば、CO、HまたはHO)を発生させることによって実施することができる。
【0038】
「粗」という用語は、本明細書において、後続の精製ステップを含まない合成プロセスから直接得られたCNTの状態を指すことに留意すべきである。したがって、粗CNTは、非精製CNTと称することもできる。粗CNTの精製は、少なくとも1つの精製ステップにより、粗CNT中に含有される、一般に金属不純物の含有量に対応する非炭素不純物の総含有量を低減すること、および粗CNTから精製CNTを生成することを指す。本発明に従って精製される粗CNTは、単壁または多壁型、必要に応じて多壁型(MWNT)のものであり得る。本発明に従って精製される粗CNTは、再生可能源のものであってもよい。
【0039】
MWNTは、例えば、米国特許第7,799,246号または米国特許第8,771,627号に定義されている方法に従って生成することができ、Arkema社によって生成され、販売されている粗CNTに対応することにも留意すべきである。
【0040】
MWNTは、以下の通りに特徴付けることができる:それらは、一般に、0.1~100nm、必要に応じて0.4~50nm、なお良好には1~30nm、またはさらには10~15nmの範囲の平均直径、および有利には0.1~10μmの長さを有する。それらの長さ/直径比は、必要に応じて、10よりも大きく、通常100よりも大きい。それらの比表面積は、例えば、100~300m/gの間、有利には200~300m/gの間であり、それらのかさ密度は、とりわけ、0.05~0.5g/cm3の間、より必要に応じて0.1~0.2g/cm3の間であり得る。それらは、5~15枚のシート(または壁)、より必要に応じて7~10枚のシートを含む。
【0041】
しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載の技術は、明らかに不適合でない限り、任意の粗CNTに適用可能であり、適合可能であることを理解するであろう。
【0042】
CNTは、一般に、粒子の形態であり、その粒径は粉末の区分に属し、特に、その平均粒子直径は約400ミクロンである。より具体的には、CNTは、1μm~1mm、特に約400ミクロンの平均粒子直径を有し得る。
【0043】
CNTは、例えば、欧州特許第2085312号に記載の通りの「Buck(登録商標)」または「Glatt(登録商標)」型の装置などの二重弁装置を使用することによって、1つの容器から別の容器に安全に通過し得る。
【0044】
既に言及した通り、粗CNTは、触媒合成を含むそれらの合成プロセスに由来する不純物を含有し得る。CNTの純度は、(形成されたCNTの量)/(形成されたCNTの量+導入された触媒の量)比によって特徴付けることができ、触媒は、無機固体に支持された金属からなり、金属はFe、Co、Mo、Ni、Vおよびそれらの組合せを含む。不純物はまた、合成CNT中に含有されるppmの数によって定量することもできる。例えば、粗CNT材料(または粗CNT)は、6000ppm~50000ppmの間、必要に応じて7000ppm~9000ppmの間、さらに必要に応じて7500ppm~8000ppmの間、さらに必要に応じて7800または25000ppmの金属不純物、例えば鉄を含み得る。
【0045】
CNT中の不純物の存在は、これらのCNTが組み込まれる、例えばリチウム電池電極(金属リチウムを含むアノードを有する蓄電池)またはリチウムイオン電池電極(インターカレートされたリチウムイオンを含むアノードおよび/またはカソードを有する蓄電池)における系の性能に悪影響を及ぼし得る。
【0046】
本発明の第1の態様では、粗CNTを精製する方法であって、粗CNTの不純物レベルを低減し、直接商業使用するのに適切な純度グレードを有する精製CNTを生成するように適合されたステップおよび操作条件を含む、方法が提供される。
【0047】
粗CNTは、一般に、1μm~1mmの異なる大きさの準球形状のCNT粒子凝集体からなるCNT粉末として提供されることに留意すべきである。介在するボイド容量(粒子間)は、粗CNT粉末のかさ密度に直接関係する。
【0048】
最初に、提案された方法は、圧縮CNTの熱処理を進行する前に、CNTを圧縮して、そのかさ密度を増加させることを特に含む。圧縮により粗CNT粉末のかさ密度が増加するのは、粗CNT粉末の介在するボイド容量(「チューブ間」ボイド容量)が減少するためであることを理解すべきである。
【0049】
圧縮CNTは、凝集体、細粒、ペレットまたはブリケットを含む様々な形状で見出され得る。圧縮CNTの最終形状は、圧縮を実施するのに使用された技術に直接関係する。これらの技術には、凝集、押出、ブリケッティングまたはそれらの組合せが含まれる。
【0050】
圧縮の結果として、CNT粒子の凝集体は、部分的に重なるかまたは溶け合うことがある。圧縮が成功すると、粗CNT粒子のかさ密度よりも高いかさ密度の圧縮CNTを得ることが可能である。
【0051】
本発明の方法によると、粗CNTのかさ密度の増加により、生成速度の強化、熱処理の間の熱交換の改善および精製CNTの製品密度の最大化が可能になり得る。例えば、粗材料のかさ密度の増加を目的とする圧縮ステップの実施により、後続の焼結ステップに使用されることになる操作ラインの数の低減および精製プロセスの総コストのさらなる削減が可能になる。
【0052】
さらに、本精製方法は、気体媒体の存在下での粗CNTの熱処理を含む焼結ステップを含み、その間に金属不純物が蒸発および/または化学変換されて、それらは粗CNTから除去される。それにより、精製CNTが生成される。鉄などの金属不純物の除去について考察するとき、焼結ステップの間の反応性気体媒体として、塩素ガスまたは窒素ガスを使用することができる。熱処理は、プッシャー連続窯またはバッチ式窯において実施することができる。塩素ガスはどちらかというとバッチ式窯での気体媒体として使用され、一方、窒素は、既に言及した両方の種類の窯で使用することができる。
【0053】
本精製方法により、不純物のレベルは、少なくとも90%、必要に応じて少なくとも95%、特に約99.9%低減され得ることに留意すべきである。例えば、プロセス機器および操作条件の設計を、変更、最適化および適合して6000ppm~50000ppmの間の金属不純物レベルを有する粗CNTを精製すること、ならびに5ppm~200ppmの間、必要に応じて10ppm~100ppmの間、さらに必要に応じて50ppm未満の低減された金属不純物レベルを有する精製CNTを生成することができる。金属は、鉄を含み得る。
【0054】
既に記載の圧縮ステップは、焼結ステップの前または後に実施することができることに留意すべきである。必要に応じて、圧縮ステップは、焼結ステップの前に実施される。
【0055】
本方法の一実施形態によると、調整ステップを、それらの後続の商業用途に従って精製CNTを調整するために実施することもできる。調整ステップは、精製CNTの分散および封入、または精製CNTの封入のみを含み得る。
【0056】
一部の実施では、本方法は、少量の無機塩基、例えばLiOH、KOH、NaOHまたはそれらの組合せを粗CNTの粉末に添加することを含み得る。粗CNTの粉末への無機塩基の添加により、後続の高温での熱処理の間の不純物の脱気を促進することができることが見出だされている。
【0057】
本方法の一実施形態によると、少量の水またはLiOH、KOH、NaOHまたはこれらの無機塩基の組合せなどの無機塩基の水溶液を、粗CNT粉末に添加することができる。粗CNT粉末への無機塩基の添加により、後続の高温での熱処理の間の不純物の脱気を促進することができることが見出だされている。特に、水、必要に応じて周囲温度~80℃の間の温度の水を使用して、そのようなステップを実施することができる。実際、水は、無機塩基もしくはカーボネートもしくはハイドロカーボネート(LiOH、NaOH、KOH、NaCOなど)、またはアルカリ有機塩(酢酸塩、マレイン酸塩、CMC塩など)を含有し得る。これらの化合物は、触媒不純物とさらに反応し、加熱処理による焼結の間に粗CNTの精製プロセスをさらに加速し得る。
【0058】
水溶液中の無機塩基の添加、または水の添加は、本方法の圧縮ステップの前、間または後に実施することができる。この添加が本方法に従って実施される場合、乾燥ステップが圧縮CNTの水分を除去するために実施され得る。例えば、本方法は、焼結ステップの前、凝集による粗CNT粉末の圧縮の間に、水を添加することを含み得る。
【0059】
図1、2および3は、本発明による一般的なプロセスステップが、直接合成された粗CNTの精製を可能にすることを例示している。図4および5は、図1からの圧縮(凝集および/またはブリケッティング)ステップおよび焼結ステップの例示的な実施を提供する。図6は、図1からの調整(分散および/または封入)ステップの例示的な実施を提供する。図4~9は、実験の項で詳述する。
【0060】
かさ密度増加の実施
凝集
一部の実施では、圧縮ステップは、粗CNTを熱処理を受ける前に、粗CNTの粉末を凝集させて、粗CNTの凝集粉末を生成するステップを含み得る。
【0061】
CNTは自然に凝集する傾向があること、および凝集ステップはその凝集を促進するために使用されることに留意すべきである。
【0062】
図3を参照すると、かさ密度を増加させるために、粗材料(A)が以下の通りに処理される:粗材料を、減圧脱気システム(B)において脱気して、溶解した腐食性ガス(O、CO)を除去する。次いで、これをミキサー(C)に移し、材料を熱水の存在下で混合する。ブリケッティングおよび焼結の前に、湿った粉末を乾燥機(D)に移動して、水分を除去し、凝集CNT(E)を生成する。
【0063】
凝集材料の目標かさ密度は、0.1~0.8g/cm、必要に応じて0.2~0.6g/cmである。
【0064】
ブリケッティング
本方法の別の実施では、圧縮は、粗CNTを熱処理を受ける前に、凝集粗CNT粉末をブリケッティングして、粗CNTのブリケットを生成することをさらに含み得る。水溶液中の無機塩基の添加、または水の添加は、ブリケッティングステップの間に実施してもよい。この場合、ブリケッティング材料を生成する前に、水分を除去するための乾燥ステップを実施することができる。
【0065】
図3を参照すると、かさ密度をより高い値に増加させるために、凝集材料(E)が以下の通りに処理される:上記と同じ理由で、凝集材料を減圧脱気システム(F)において脱気する。次いで、これをミキサー(G)に移し、材料を、熱水の存在下、凝集ステップよりもはるかに長い時間、2ステップで混合する。次いで、湿った凝集材料を圧縮機(H)に送ってそのかさ密度を増加させる。ニブラー(I)を使用して圧縮材料を切断することによって、ブリケットを調製する。焼結の前に別の乾燥ステップが必要であり、湿った粉末を乾燥機(J)に移動して、ブリケットから水分を除去しブリケッティング材料(K)を生成する。
【0066】
ブリケッティング材料の目標かさ密度は、0.1~0.8g/cmの間、特に0.2~0.3g/cmの間である。
【0067】
ブリケッティングステップは任意選択であってもよいこと、および凝集が粗CNTのかさ密度を増加させるために実施される唯一のステップであってもよいことに留意すべきである。粗CNTの初期かさ密度に応じて、すなわち、初期かさ密度が十分高い場合、圧縮はかさ密度閾値に達するために凝集のみを含む。
【0068】
焼結の実施
本精製方法は、熱処理を含む焼結ステップであって、その間に圧縮粗CNTが、除去されるべき金属不純物の金属の蒸発温度を超えて加熱される、ステップを含む。したがって、金属不純物、特に鉄などの不純物は蒸発して、CNTの純度が改善され得る。焼結ステップは、例えば、気体窒素または塩素雰囲気下で実施することができる。
【0069】
本方法の一部の実施では、焼結温度は、1200℃~3000℃の間、必要に応じて1500℃~2800℃の間、さらに必要に応じて2000℃~2500℃の間、さらに必要に応じて2300℃であり得る。熱処理を実施する窯での滞留時間は、1時間~8時間の間、必要に応じて2時間~6時間の間、さらに必要に応じて2時間~4時間の間、さらに必要に応じて3時間であり得る。
【0070】
図1~5を参照すると、焼結ステップは、凝集、細粒またはブリケッティングCNTの形態の圧縮粗CNTを、連続窯またはバッチ式窯であり得る焼成炉に供給することを含み得る。気体焼結雰囲気は、有利には、塩素または窒素雰囲気であり得る。有利には、焼成炉は、連続して動作し、少なくとも1つの焼結ラインは、粗材料投入物を処理するのに必要な長さに応じて設計され得る。
【0071】
一部の実施では、本方法は、圧縮粗CNTを、パルス減圧システムにおいて塩素ガス雰囲気下で加熱処理にかけて、除去可能な塩素ガスおよび例えばブリケットの形態の精製CNTを生成することからなる焼結ステップを含む。排気塩素ガスは、確実な方法で炉から廃棄することができる。
【0072】
図2~5を参照すると、焼結ステップは、バッチ式窯である焼成炉において実施され得る。いくつかの焼結ユニットが設計され、並行に動作して、精製されることになる粗CNTの量に適合され得る。例えば、ブリケッティング後のかさ密度が約0.2g/cmである場合、少なくとも33のユニットが必要である。
【0073】
塩素ガスを使用して、高温での熱反応による塩素ガス化合物の形成により金属不純物(Fe、Cr、Co、Ni、Mnなど)が効率的に除去される。鉄およびクロムの反応は以下の通りである:
2Fe+3Cl→2FeCl
2Cr+3Cl→2CrCl
【0074】
結果として、金属不純物は、高温で塩素と反応し、化学的に塩素気体化合物に変換される。焼結の間に塩素ガスを使用することにより、酸溶液中または極度な高温(2800~3000℃)での他の利用可能な処理と比較して、CNT粉末に与える損傷の低減を含む実質的な利点を提示することができる。
【0075】
図3を参照すると、精製CNTを生成するために、ブリケッティング材料(K)が以下の通りに処理される:材料(E)を、焼結ステップ(L)(バッチ式または連続)、続いて必要に応じて、分散ステップ(M)にかけ、封入(N)後、精製CNT(O)が使用できるようになる。
【0076】
調整の実施
一部の実施では、本精製方法は、将来の用途のために適切な形態の精製CNTを調整することを含み得る。
【0077】
図6を参照すると、本方法は、CNTの精製凝集体またはブリケットを分散させ、それらのかさ密度を低減するための分散ステップを含み得る。
【0078】
機器には、タンク排出機、スクリューフィーダー、振動式撹拌器(1~4)および高速粉末加工機(1~4)が含まれ得る。
【0079】
フィーダーのスクリューおよび振動式撹拌機は、焼結後、精製CNTを高速粉末加工機に供給するために使用される。高速粉末加工機により、圧縮、せん断および衝撃力の組合せが粒子に適用され、結合剤を含まないナノ粒子の効果的な形成につながる。ローターの最高速度は、20~40m/秒の間であり、処理能力は、機械ユニットあたり約20~40Kg/時の間である。必要に応じて、調整後の目標かさ密度は、0.21~0.25g/cmの間である。
【0080】
やはり図6を参照すると、本方法は、精製CNTを封入して、高レベルの純度(金属不純物50ppm未満)が必要とされる様々な用途において使用できるようにするための封入ステップを含み得る。
【0081】
精製CNTは、一般に、容器に封入され、必要に応じて「Buck(登録商標)」または「Glatt(登録商標)」型の装置を使用することによって、金属不純物によるいかなるさらなる汚染も回避される。
【0082】
例えば、精製CNTは、容易に保存し、輸送するために、蓋および取手付きのプラスチックドラムに封入され得る。
【0083】
様々な操作パラメーター(焼結温度、炉における滞留時間を含む)が、重要な役割を果たし、最適化されるべきであり、具体的な用途のために除去されるべき不純物の量または達するべき純度のレベルに応じて十分選択されるべきであることが理解されるべきである。
【0084】
本精製方法の上述の態様の各々は、単壁カーボンナノチューブおよび/または多壁カーボンナノチューブに適用され得ることに留意すべきである。
【0085】
リチウムイオン電池の実施
精製CNTは、リチウムイオン電池のアノードおよびカソードベースの両方の材料において電気伝導性添加剤として使用することができるが、そのような用途に限定されないことに留意すべきである。
【0086】
本発明の別の態様では、本明細書に定義される通りのまたは本精製方法によって生成される通りの精製CNTを含む電極材料が提供される。電極材料は、単独の電気化学活材料として、またはLiFePOもしくはLiNi0.33Mn0.33Co0.33などの他の成分と組み合わせて、CNTを含み得る。電極材料はまた、導電材料として役立てるためにCNTを含み得る。
【0087】
例えば、電極材料は、CNTに加えて少なくとも1つの電気化学活材料を含み得る。電気化学活材料(EAM)の例には、限定なしに、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、酸化バナジウム、リチウム金属酸化物およびそれらの組合せの粒子が含まれる。例えば、電気化学活材料は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTiまたはそれらの組合せ、LiM’PO(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Coまたはそれらの組合せである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(式中、M’’は、Mn、Co、Niまたはそれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、TiまたはZr、およびそれらの組合せである)から選択することができる。そのようなEAM粒子は、例えば炭素またはCNTでさらにコーティングされ得る。
【0088】
電極材料は、さらなる導電材料(例えば、グラフェン、黒鉛、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)ブラック、Denka(登録商標)ブラック、VGCF(登録商標)のようなカーボンファイバー、有機前駆体の熱分解由来の非粉末炭素コーティングまたはそれらの組合せ)、無機粒子、塩および/または1種もしくは複数の結合剤などのさらなる構成成分も含み得る。結合剤の例には、限定なしに、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVDF(フッ化ポリビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが含まれる。
【0089】
電極材料は、乾燥混合物として、または溶媒中のスラリーとして調製することができ、例えば、ドクターブレード法またはスロットダイ法によって集電器上にコーティングすることができる。溶媒が存在する場合、乾燥ステップがさらに含まれ得る。
【0090】
本明細書に定義される通りの電極、電解質および対電極を含む電気化学セルもまた、例えば電気もしくはハイブリッド自動車における、または情報技術装置における、それらの使用とともに企図される。
【実施例
【0091】
実験および結果
本精製方法の各ステップは、精製されるCNTの量および生成される精製CNTの量に適合するように規模調整および設計することができる。例えば、プロセスステップ内の様々な操作を、バッチモードで同じ操作ラインで繰り返し実施してもよく、または複数の同等の操作ラインを並行してもしくは一列で操作してもよい。
【0092】
実施例1~3は、本発明による精製方法の1つまたは複数のステップの様々な実施を例示している。より具体的には、これらの実施例は、図1に例示され、窒素雰囲気下で熱処理が実施されるプロセスステップの異なる包括的選択肢を提供する。
【0093】
(実施例1)
(本発明による)
実施例1は、粗CNT粉末を凝集させて粗CNTの凝集体を形成するステップ、次いで、精製CNTの凝集体を生成する焼結ステップを含む、図4に例示される通りの精製方法の特定の実施である。凝集前にCNT粉末を脱気するため、および生成された凝集体を乾燥するための補足ステップをさらに実施して、精製方法の性能を改善する。
【0094】
図4を参照すると、供給スクリューT1を含む脱気装置を使用して粗CNT粉末(10)が脱気される。脱気現象は、空気および粗CNTの粉末粒子間の間隙を取り除くことによって、粉末の圧縮、およびしたがって、粗CNTの粉末のかさ密度の増加に寄与する。脱気は、後続の凝集ステップの成功率を増加させる予備ステップである。供給スクリューの最高速度は、0.5~1.5m/秒の間であり、スクリューの処理能力は、60~150Kg/時の間である。脱気は、約-20KPaの脱気圧力(合計の減圧と考えられる)を有するための減圧システムT2によってさらに確実になる。粗CNT粉末(10)のかさ密度は、0.04~0.11g/cmの間である。
【0095】
圧縮は、凝集の主ステップによりさらに実施され、その間、脱気粗CNT粉末(12)は、連続供給され一列につながる3つのミキサーT3に移される。凝集は、粉末が連続して3つのミキサーT3に供給されるように、3相により実施される。混合の第1の相は、60~80重量%の熱水に対して粗CNT約20~40重量%の比に従って、結合剤として利用される70℃の熱水の添加(14)により実施される。混合の第2および第3の相は、ミキサーあたり数秒の保持時間(3~30秒)により、粗CNT粉末の凝集体の大きさを増加させることを目的とする。各ミキサーのブレードの最高速度は、20~40m/秒の間に含まれ、各ミキサーの処理能力は、50~100kg/時の間に含まれる。最終的に得られる粗CNTの湿凝集体(16)のかさ密度は、0.2~0.3g/cmの間に含まれる。
【0096】
凝集は、粗CNTの湿凝集体(16)の乾燥で完了する。乾燥は、湿凝集体(16)を、流動床乾燥機T6に供給すること、粗CNTの凝集体を乾燥するためにその凝集体の間に乱流を生じさせることを含む。床は、空気循環により流動される。空気の加熱がさらに実施されて、湿凝集体(16)に熱がもたらされる。乾燥機T6に送られる空気は、少なくとも1つの熱交換機T9により加熱される。給気温度は100~180℃の間に含まれ、排気温度は50~120℃の間に含まれる。流動床における空気の速度は、0.5~3m/秒の間に含まれる。
【0097】
この乾燥に従って、凝集体の水分は減少し、さらには取り除かれ、乾燥粗CNT凝集体(18)が生成される。
【0098】
塵を低減し、現地の環境要求事項を満たすために、収集器T11が流動床乾燥機T6に連結されて、すべての微粒子が収集される。
【0099】
次いで、乾燥凝集体(18)の焼結が、当業者に利用可能かつ公知の方法(より詳細については例えば実施例5を参照されたい)に従って、炉T10において実施される。
【0100】
(実施例2)
(本発明による)
実施例2は、粗CNT粉末をブリケッティングして粗CNTのブリケットを形成するステップ、次いで、焼結してCNTの精製ブリケットを形成する、焼結ステップを含む、図5に例示される通りの精製方法の特定の実施である。
【0101】
ブリケッティング前に粉末を脱気するための補足ステップ、および生成されたブリケットを乾燥する補足ステップも実施して、精製方法の性能を改善する。
【0102】
図5によると、より高いかさ密度を有する脱気粗CNT粉末(12)を回収するために、スクリューフィーダーC1および減圧システムC2を含む実施例1に詳述されるのと同じ条件および機器を使用して、0.04~0.11g/cmの間のかさ密度を有する粗CNT粉末(10)の脱気が進行される。次いで、脱気粗CNT粉末(12)は、粗CNTの湿プライマー凝集体(14)を生成するために、連続供給され、10~20重量%の熱水に対して粗CNT80~90重量%の比で、結合剤として利用される70℃の水が添加されるミキサーC3に移される。
【0103】
次いで、これらの湿プライマー凝集体(14)は、少なくとも1つの縦型円錐型スクリューブレンダーC7に移される。この移動は、バッチ式で、供給スクリューC6により実施されるが、これは、縦型円錐型スクリューブレンダーC7における保持時間が、典型的な凝集ステップ(実施例1を参照されたい)よりも長く、機械ユニットあたり3~6分の間に含まれるからである。各ミキサーC7の処理能力は、0.5~1.5mの間に含まれる。ミキサーC7のスクリューの最高速度は、0.5~1.5m/秒の間に含まれる。生成される粗CNT凝集体(16)のかさ密度は、0.4~0.6g/cmの間に含まれる。
【0104】
次いで、粗CNT凝集体(16)は、スクリューコンベアC10により圧縮機C11に供給されて、凝集体(16)は大いに圧縮される。この圧縮は、その圧力が50~150トンの間に含まれる(2.2~15トン/cmの間に含まれる線形ローラー圧力に対応する)少なくとも1つのローラー、必要に応じて2つのローラーの使用を含む。各ローラーの直径は、300~600mmの間に含まれ、ローラーの幅は、100~500mmの間に含まれる。次いで、圧縮粗CNT(18)は粉砕機C13に送られ、圧縮粉末がブリケット(20)に切断されることによってブリケッティングが完了する。
【0105】
実施例1と同様に、乾燥ステップを、微量水分を低減または取り除くために実施することができる。乾燥は、粗CNTの湿ブリケット(20)を、ブリケットを乾燥するためにそのブリケットの間に乱流を生じさせることによって、流動床乾燥機C14に供給することを含む。床は、空気循環により流動される。空気の加熱も実施されて、ブリケット(20)に熱がもたらされる。乾燥機C14に送られる空気は、少なくとも1つの熱交換機C17により加熱される。給気温度は100~180℃の間に含まれ、排気温度は50~120℃の間に含まれる。流動床における空気の速度は、0.5~3m/秒の間に含まれる。この乾燥に従って、ブリケット(20)の水分は減少し、さらには取り除かれ、粗CNTの乾燥ブリケット(22)が生成される。
【0106】
塵を低減し、環境要求事項を満たすために、収集器C19が流動床乾燥機C14に連結されて、あらゆる微粒子が収集される。
【0107】
次いで、乾燥ブリケット(22)の焼結が、当業者に利用可能かつ公知の方法(より詳細については例えば実施例5を参照されたい)に従って、炉C23において実施される。
【0108】
(実施例3)
(本発明による)
実施例3は、焼結ステップ(200)に続いて、調整ステップ(300)を実施するために実施することができる任意選択のプロセスステップを例示する(図1を参照されたい)。
【0109】
図6によると、精製方法は、圧縮ステップ(凝集(102)またはブリケッティング(104))および焼結ステップ(200)に応じて、精製CNT凝集体(18)またはブリケット(22)を分散させるように設計された分散ステップ(302)を含み得る。分散は、少なくとも4つのNobilta(商標)型ミキサー、NOB-700により実施される。ローターの最高速度は、20~40m/秒の間に含まれ、処理能力は、機械ユニットあたり約20~40Kg/時の間に含まれる。分散後に得られるかさ密度は、0.21~0.25g/cmの間に含まれる。この例では、精製CNT量を適切に分散させるために、4つの操作ラインが並列に構成される。調整は、1~80Kg±10gの充填処理能力の、精製CNTの自動衛生秤量および充填システムの使用を含む封入ステップ(304)を含む。
【0110】
先行する実施例1および2に関して、当業者であれば、機器は例示のみを目的として提示されていることを理解するであろう。したがって、機器の大きさおよび操作ラインの数は、変わってもよく、精製される材料の容量および選択した機器の特徴に従って選択することができる。
実施例4~14では、以下の粗CNTが、精製方法の供給原料として使用される:
- C100 Graphistrength(登録商標):Arkema社によって販売されているCNT粉末:
かさ密度 0.097g/cm
灰含有量(空気中900℃で3時間か焼):6.75質量%
鉄含有量:9700ppm
- 市販のCNTペースト(Dongheng New Energy Technology Co.製)
乾燥抽出物(減圧下、120℃で3時間乾燥):6.8質量%
【0111】
(実施例4)
(従来技術)
高温処理によるC100 Graphistrength(登録商標)CNTの精製
熱処理のみを含むCNT精製方法を、従来技術において公知の方法に従って本実施例4で再現した。
【0112】
問題の熱処理を進行するために、重さ80gのC100 Graphistrength(登録商標)を、1.1Lの黒鉛るつぼに入れた。粗CNTを含有する黒鉛るつぼを、不活性ガスとして窒素流下、黒鉛化のために静止炉に入れた。炉内部の雰囲気温度プロファイルは、以下の通りに適用する:1)3.3℃/分の昇温速度により2400℃に昇温(合計12時間)、2)2400℃で12時間安定化、3)24時間で周囲温度(約25℃)に降温。したがって、操作の総継続時間は48時間である。
【0113】
次いで、精製C100 Graphistrength(登録商標)が得られ、これは、0.095g/cmのかさ密度および0%の灰含有量を特徴とする。かさ密度損失および灰含有量のゼロへの低減は、熱処理単独により、触媒残留物に対応するアルミニウム(Al)および鉄(Fe)ベースの金属不純物を除去することが可能であることを示している。
【0114】
(実施例5)
(本発明による)
C100 Graphistrength(登録商標)CNTの精製
10kgのC100 Graphistrength(登録商標)を、粗CNT粉末として、本発明による精製方法の以下の実施に供した:
ステップ1:ブリケッティング
圧縮は、粗CNT粉末に関して10重量%の量で添加される80℃の熱水の存在下、ミキサー中での粗CNT粉末の予備凝集を含む。次いで、得られた湿った凝集CNT粉末を、圧縮機(Kompaktor(登録商標)CS-25)に送って、そのかさ密度を増加させた。次いで、圧縮材料を、機械によるせん断を確実にするニブラーによりブリケットに切断した。次いで、これらのブリケットを乾燥機に移して水分を除去し、長さが数mm、例えば8~9mmの間の乾燥粗CNTブリケットを生成した。
【0115】
乾燥材料のかさ密度は、0.1~0.5g/cmの間に含まれ、より詳細には0.15~0.4g/cmの間に含まれ、さらにより詳細には0.17~0.25g/cmの間に含まれる。かさ密度のばらつきは、かさ密度がより高い値に達するのを防ぎ得る粗CNTの弾性に影響される。
【0116】
ステップ2:高温熱処理
本方法は、黒鉛るつぼに入れられた粗CNTブリケットを炉に供給することによって実施される高温熱処理を含む。窒素流によって不活性雰囲気が可能になる。熱処理ステップは、バッチ式炉で実施する。
【0117】
粗CNTブリケットの加熱処理を、図7に例示される温度プロファイルに従って実施する。温度は、4時間で2300℃まで、約25℃ずつ段階的に上昇させ、次いで、3時間30分にわたって2300℃で維持し、最後にブリケットを周囲温度(約25℃)に冷却する。
【0118】
冷却後のブリケットのかさ密度は、0.1~0.5g/cmの間、必要に応じて0.17~0.2g/cmの間に含まれ、より詳細には約0.18g/cmである。かさ密度は、熱処理に関わらず実質的に維持されることに注目されたい。
【0119】
熱処理後の鉄含有量分析により、10~50ppmの間の値が明らかになったが、これは、99.5%を超える金属不純物の低減という結論につながる。
【0120】
次いで、調整を、Nobilta(登録商標)NOB-300型の機器による分散により実施して精製ブリケットを分散させ(それらを凝集体に変換することによって)、4μmのオーダーの平均直径D50を有する凝集体を含む約0.24g/cmの最終かさ密度に達する。
【0121】
(実施例6)
(比較)
先行技術の方法による精製CNTの分散体の調製
実施例4(従来技術)による精製CNTの調整を、当業者に公知の方法に従って実施する。分散ディスク型ミキサー中、総容量1.5Lのイノックス容器に、94.8gのNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を投入する。第1のステップでは、0.2gのPVDF(フッ化ポリビニリデン樹脂)を、200rpmのミキサー回転速度で混合することによって、50℃でNMPに導入する。30分の混合後、実施例4による精製CNT5gを、ミキサーに導入する。次いで、すべてを、400rpmのミキサー回転速度で1時間混合する。
【0122】
この予備分散に続いて、混合物を、直径0.7mmのセラミックビーズを含む容量1Lの商標Dispermat(登録商標)SL(Brant ind.により提供)の横型ボールミルに導入する。粉砕を、再循環モード(数回の粉砕サイクル)で50分間実施する。
【0123】
5重量%の精製CNTを含む得られた分散体の粘度は、8500mPa・秒(Brookfield法によって測定)である。
【0124】
(実施例7)
(本発明による)
本発明による精製CNTの分散体の調製
実施例6に記載のものと同じ分散方法を、実施例5に詳述する通りの本方法の熱処理に従う精製CNTを使用することによって再現する。
【0125】
5重量%の精製CNTを含む精製CNTの分散体は、3200mPa・秒の粘度(Brookfield法による)を有した。
【0126】
本発明に従う熱処理による精製CNTから得られた分散体は、従来技術からの熱処理による精製CNTから得られた分散体よりもより流体のコンシステンシー(より低い粘度)を有することに注目されたい。有利なことに、したがって、得られた分散体は、あまりペースト状ではないコンシステンシーを有し、実施例6から得られた分散体と比較してより良好な加工性が可能である。
【0127】
(実施例8)
(比較参照)
市販のCNTの分散体
本発明の精製方法の効率を評価するために、精製CNTの参照分散体とみなして、市販の精製CNTのペーストを分析する。窒素下での熱質量分析(TGA)により、市販の分散体中の、5重量%のCNTおよび1.8重量%の有機添加剤の存在が確認された。さらに、この市販の分散体の粘度(Brookfield法による)は、10000~11000mPa・秒の間に含まれる。
【0128】
したがって、実施例6~8は、複数の供給源からの精製CNT(本方法による精製CNTを含む)を含む分散体を示し、これらの分散体を使用して、実施例9~11に記載の通りのLiNi0.33Mn0.33Co0.33(NMC)電極を製造し、これらの電極の性能を比較する。得られた結果は図8に提示しており、これは、電極の炭酸化添加剤として複数のCNT源の存在下でのNMC対リチウム電極の電力試験からの結果を集約している。
【0129】
実施例6~8の分散体を、実施例12~15に記載の通りのLiFePO(LFP)電極の製造にも使用し、これらの電極の性能を比較する。得られた結果は図9に提示しており、これは、電極の炭酸化添加剤として複数のCNT源の存在下でのLFP対リチウム電極の電力試験結果を集約している。
【0130】
(実施例9)
(比較)
電極製造のための実施例8からの市販のCNT分散体の使用および製造した電極の性能の評価
本実施例では、実施例8に提示される市販のCNT分散体を炭酸化添加剤として使用して、式LiNi0.33Mn0.33Co0.33(NMC)の活物質を有する電極を製造する。
【0131】
溶液を、遊星形ミキサー中で30分間、NMP溶媒の存在下で市販のCNT分散体を混合することによって調製する。溶液の組成は以下である:活物質としてNMC 92.5%、炭酸化添加剤として実施例8によるCNT 1%およびDenka Li-100 0.5%、CNTペースト中分散剤0.6%ならびに結合剤としてPVDF 5.4%。
【0132】
次いで、製造した電極を、減圧下120℃で一晩乾燥して残存するNMP溶媒を取り除く。カレンダー処理ステップを実施して、電極細孔を低減する。NMCの最終充填量は6.8mg/cmのオーダーである。
【0133】
これらの電極を、LiPFベースの有機電解質溶液の存在下でコインセルカソードの材料としてリチウムアノードに対して電気化学的に評価した。系のサイクル終点は、2.8~4.2Vであった。
【0134】
周囲温度での低速レジメン形成(C/24)の後、電極を以下のプロトコルに従う様々なレジメンで評価した:C/12レートでの充電およびC/12レートでの放電、C/8レートでの充電およびC/8レートでの放電、C/4レートでの充電およびC/4レートでの放電、次いで、充電は常にC/4レートに維持したまま、C/2、C、2C、4C、8C、10C、15C、20C、30C、35Cおよび40Cレートでの放電。
【0135】
得られた結果を図8に提示する。電池寿命の終わりが、前記バッテリーがその初期容量の80%を損失した状態に対応するとみなされる場合、こうして製造した電極の初期容量の80%の維持率は、4Cまで維持され、110mAh/gのオーダーである。
【0136】
(実施例10)
(比較)
電極製造のための実施例6からの精製CNTの分散体の使用および製造した電極の性能の評価
本実施例では、実施例8で得られた分散体からの精製CNTを、NMC電極(活物質として、N1/31/31/3をベースとする)における炭酸化添加剤として使用する。
【0137】
実施例9に記載の通りの溶液の調製を、実施例6に提示される方法に従って精製し分散させた1%のCNTを使用することによって再現する。得られた電極を、実施例9と同じように試験する。
【0138】
得られた結果を図8に提示する。電池寿命の終わりが、前記バッテリーがその初期容量の80%を損失した状態に対応するとみなされる場合、こうして製造した電極の初期容量の80%の維持率は、4Cまで維持され、110mAh/gのオーダーである。
【0139】
(実施例11)
(本発明による)
電極製造のための本方法による精製CNTの使用および製造した電極の性能の評価
【0140】
本実施例では、実施例5に提示されるステップから得られた精製CNT粉末をそのまま、すなわち、溶媒中でのその事前分散なしに、炭酸化添加剤として使用して、活物質としてNMCをベースとする電極を製造した。
【0141】
溶液を、遊星型ミキサー中、30分の滞留時間、溶媒としてNMPの存在下で調製する。取得物の組成は以下である:活物質としてNMC93%、炭酸化添加剤として実施例5による精製CNT 1.4%およびDenka Li-100 1%、ならびに結合剤としてPVDF 4.6%。
【0142】
次いで、得られた電極を、減圧下120℃で一晩乾燥して残存するNMP溶媒を取り除く。カレンダー処理ステップを実施して、電極細孔を低減する。NMCの最終充填量は約6.8mg/cmである。
【0143】
それによって製造した電極を、実施例9および10に記載の通りのLiPFベースの有機電解質溶液の存在下でコインセルカソードの材料としてアノードとしてリチウムに対して電気化学的に評価した。
【0144】
図8に例示される通り、本明細書で提案される方法による精製CNT粉末から製造した電極の初期容量の80%の維持率は、4Cまで維持され、110mAh/gのオーダーである。
【0145】
(実施例12)
(比較)
電極製造の実施例8からの市販のCNT分散体(ペースト)の使用および電極の性能の評価
【0146】
本実施例では、市販のCNT分散体を炭酸化添加剤として使用して、活物質としてLiFePO(LFP)をベースとする電極を製造する。
【0147】
溶液を、遊星型ミキサー中、30分間、溶媒としてNMPの存在下で調製する。得られた溶液の組成は以下である:活物質としてLFP 89.6%、CNT 2.7%、炭酸化添加剤としてDenka Li-100 2.7%、および結合剤としてPVDF 5%。次いで、ここで得られた電極を、減圧下120℃で一晩乾燥して残存するNMP溶媒を取り除く。カレンダー処理ステップを実施して、電極細孔を低減する。LFPの最終充填量は5.4mg/cmのオーダーである。
【0148】
これらの電極を、LiPFベースの有機電解質溶液の存在下で、アノードとしてのリチウムに対して、コインセルカソードの炭酸化材料として電気化学的に評価した。
【0149】
この系のサイクルの終点は2~4Vの間に含まれる。周囲温度での低速レジメン(C/24)形成の後、電極を以下のプロトコルに従う様々なレジメンで評価した:C/12レートでの充電およびC/12レートでの放電、C/8レートでの充電およびC/8レートでの放電、C/4レートでの充電およびC/4レートでの放電、次いで、充電は常にC/4レートに維持したまま、C/2、C、2C、4C、8C、10C、15C、20C、30C、35Cおよび40Cレートでの放電。
【0150】
得られた結果を図9に提示する。電池寿命の終わりが、前記バッテリーがその初期容量の80%を損失した状態に対応するとみなされる場合、これらの電極の初期容量の80%の維持率は、4Cまで維持され、これは117mAh/gのオーダーである。
【0151】
(実施例13)
(比較)
電極製造のための実施例6による精製CNT分散体の使用および製造した電極の性能の評価
実施例8による市販のCNTペーストの代わりに実施例6に従って調製した精製CNT分散体を使用することによって、実施例12に詳述するのと同じ電極製造方法に従う。
【0152】
得られた結果を図9に提示する。製造した電極の初期容量の80%の維持率は、10Cまで維持され、これは、125mAh/gのオーダーである。
【0153】
(実施例14)
(本発明による)
電極製造のための本方法による精製CNT分散体の使用および製造した電極の性能の評価
実施例8による市販のCNTペーストの代わりに実施例7に従って調製したCNT分散体を使用することによって、実施例9に詳述するのと同じ電極製造方法に従う。
【0154】
得られた結果を図9に提示する。製造した電極の初期容量の80%の維持率は、10Cまで維持され、これは、125mAh/gのオーダーである。
【0155】
これらの様々な実施例の要約では、本明細書に提案される方法に従って精製したCNTを含む電極の電気化学性能は、市販のまたは公知の方法に従って分散させた精製CNTを含む電極の性能と実質的に同じである。本明細書に提案される方法による精製CNTを含むLFPカソードにより、従来技術からのもの(125mAh/gである)より良好な性能に達することが可能になることに注目されたい。
【0156】
さらに、NMCベースのカソードにおいて、わずか0.5%のDenka Li-100とともに、本明細書に提案される方法に従って精製された粉末の形態のCNTを添加することにより、ペーストの形態で販売されている他の製品と同様の電気化学性能を得ることが可能になることが示された。
【0157】
したがって、NMCカソード、LFPカソードまたは本明細書に記載の他の材料において、本明細書に提案される方法に従って精製されたCNTを、ペーストへの後続の調整なしに粉末として使用することができることに留意されたい。市販の精製CNTは、一般に、ペーストとして使用され、ここでCNTは、これらのナノチューブの分散を維持するのを補助する他の反応物質の存在下でNMP中に分散されている。しかしながら、これらのペーストの寿命は、数か月のみのオーダーである。有利なことには、本明細書上記に提示される方法の実施に従って得られた精製CNT粉末の安定性により、その寿命を延長することが可能になる一方、電気化学用途に直接使用できる。
【0158】
これらの実施例は、リチウムイオン電池の電極材料において炭酸化添加剤として使用する場合、本明細書に提示される方法の実施に従って得られたCNTによって引き起こされる利点を強調している。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
金属不純物を含む粗カーボンナノチューブを精製する方法であって、
i)前記粗カーボンナノチューブを圧縮して、前記粗カーボンナノチューブのかさ密度よりも高いかさ密度を有する圧縮粗カーボンナノチューブを生成するステップ、および
ii)前記圧縮粗カーボンナノチューブを、気体雰囲気下での熱処理を含む焼結を行って、前記金属不純物の少なくとも一部を除去し、精製カーボンナノチューブを生成するステップ
を含む、方法。
(項2)
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブを凝集させて凝集カーボンナノチューブを生成することを含む、上記項1に記載の方法。
(項3)
前記凝集カーボンナノチューブのかさ密度が、0.1~0.8g/cm の間に含まれる、上記項2に記載の方法。
(項4)
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブをブリケッティングしてカーボンナノチューブのブリケットを生成することを含む、上記項1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項5)
粗カーボンナノチューブの前記ブリケットのかさ密度が、0.1~0.8g/cm の間に含まれる、上記項4に記載の方法。
(項6)
前記粗カーボンナノチューブの前記圧縮が、前記粗カーボンナノチューブを押出して押出粗カーボンナノチューブの細粒またはペレットを生成することを含む、上記項1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項7)
粗カーボンナノチューブの前記細粒またはペレットのかさ密度が、0.2~0.3g/cm の間に含まれる、上記項6に記載の方法。
(項8)
前記圧縮が、
- 凝集、
- ブリケッティング、および
- 押出
のうちの少なくとも1つのステップを含む、上記項1に記載の方法。
(項9)
前記圧縮が、前記粗CNTのかさ密度が少なくとも0.2g/cm である場合、前記凝集のみを含む、上記項8に記載の方法。
(項10)
熱処理の間の前記気体雰囲気が、塩素ガスを含み、前記金属不純物が、前記塩素ガスによる前記金属の塩素化後、パルス減圧システムによって除去される、上記項1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項11)
熱処理の間の前記気体雰囲気が、窒素ガスを含み、前記金属不純物が、蒸発によって除去される、上記項1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項12)
前記熱処理が、1200℃~3000℃の間に含まれる焼結温度で実施される、上記項1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項13)
前記熱処理が、プッシャー連続窯において実施される、上記項1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項14)
前記熱処理が、バッチ式窯において実施される、上記項1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項15)
粗カーボンナノチューブの前記圧縮の前、間または後に水溶液中の無機塩基を添加することまたは水を添加することを含む、上記項1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項16)
無機塩基の前記水溶液または前記水が、20~80℃の間の温度で添加される、上記項15に記載の方法。
(項17)
前記圧縮粗カーボンナノチューブから水分を除去するための乾燥ステップを含む、上記項15または16に記載の方法。
(項18)
直接適用のための調整精製カーボンナノチューブを生成するために、前記精製カーボンナノチューブを調整するステップを含む、上記項1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項19)
前記調整ステップが、前記精製カーボンナノチューブを分散させて、そのかさ密度を低減することを含む、上記項18に記載の方法。
(項20)
分散後に得られるかさ密度が、0.21~0.25g/cm の間に含まれる、上記項19に記載の方法。
(項21)
前記調整ステップが、前記精製カーボンナノチューブを封入することを含む、上記項18~20のいずれか一項に記載の方法。
(項22)
前記粗カーボンナノチューブが、10よりも大きい長さ/直径比、100~300m /gの間に含まれる比表面積および0.02~0.5g/cm の間に含まれるかさ密度を示す多壁型である、上記項1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項23)
前記精製カーボンナノチューブが、5ppm~200ppmの間の金属不純物含有量を有する、上記項22に記載の方法。
(項24)
前記精製カーボンナノチューブの金属不純物含有量が、5ppm~50ppmの間に含まれる、上記項23に記載の方法。
(項25)
前記金属不純物が鉄を含む、上記項1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項26)
電極材料を生成するための炭酸化添加剤としての、上記項23または24に記載の方法に従って生成された精製カーボンナノチューブの使用。
(項27)
上記項23または24に記載の方法に従って生成された精製カーボンナノチューブを含む電極材料。
(項28)
電気化学活材料として、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、酸化バナジウム、リチウム金属酸化物およびそれらの組合せの粒子をさらに含む、上記項27に記載の電極材料。
(項29)
前記さらなる電気化学活材料が、LiNi 0.33 Mn 0.33 Co 0.33 またはLiFePO である、上記項27または28に記載の電極材料。
(項30)
補助的な導電材料、無機粒子、塩および/または1種もしくは複数の結合剤をさらに含む、上記項27~29のいずれか一項に記載の電極材料。
(項31)
上記項27~30のいずれか一項に記載の電極材料を含む電極。
(項32)
リチウムイオン電池の正電極または負電極である、上記項31に記載の電極。
(項33)
上記項31に記載の電極、対電極および電解質を含む電気化学セル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9