(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】摩擦圧接方法及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B23K20/12 D
B23K20/12 C
(21)【出願番号】P 2019556160
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2018040520
(87)【国際公開番号】W WO2019102808
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017227236
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-028265(JP,B1)
【文献】特公昭49-028339(JP,B1)
【文献】特開昭55-19560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の主軸で各々把持した一対の材料を、一対の前記材料の対向する端面を各々接合面とし、一対の前記材料の互いの軸がずれた状態から互いの軸が一致する方向に、前記接合面を互いに接触させて所定の位置まで移動させ摩擦加熱する加熱工程と、
一対の前記材料を前記所定の位置で圧接する圧接工程と、を有する摩擦圧接方法であって、
各々の前記材料を軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転させながら前記加熱工程及び前記圧接工程を行
い、
前記加熱工程において一対の前記材料の軸を一致させる際に、一方の材料に対する他方の材料の移動速度を、外周縁の部分に比較して、軸心に向かって順次又は段階的に増加させることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項2】
一対の前記材料の軸が互いに一致する位置で前記圧接工程を行う、請求項1に記載の摩擦圧接方法。
【請求項3】
前記圧接工程の後、前記材料を、軸方向の一方側から見て前記加熱工程及び前記圧接工程におけるのと同一方向に同一回転数で回転させたまま切削する切削工程を行う、請求項1又は2に記載の摩擦圧接方法。
【請求項4】
対向する一対の主軸と、
一対の前記主軸で各々把持した一対の材料を、一対の前記材料の対向する端面を各々接合面とし、一対の前記材料の互いの軸がずれた状態から互いの軸が一致する方向に、前記接合面を互いに接触させて所定の位置まで移動させ摩擦加熱する加熱工程と、一対の前記材料を前記所定の位置で圧接する圧接工程とを行うように、一対の前記主軸の移動及び回転を制御する制御部と、を有する工作機械であって、
前記制御部が、一対の前記主軸を、軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転させながら前記加熱工程及び前記圧接工程を行う
とともに、前記加熱工程において一対の前記材料の軸を一致させる際に、一方の材料に対する他方の材料の移動速度を、外周縁の部分に比較して、軸心に向かって順次又は段階的に増加させるように制御することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
前記制御部が、一対の前記材料の軸が互いに一致する位置で前記圧接工程を行うように制御する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御部により移動が制御される工具を備え、
前記制御部が、前記圧接工程の後、一対の前記主軸を、軸方向の一方側から見て前記加熱工程及び前記圧接工程におけるのと同一方向に同一回転数で回転させたまま前記工具を移動させて該工具により前記材料を切削する切削工程を行う、請求項4又は5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦圧接方法及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向する一対の主軸を備えた旋盤等の工作機械を用いて一対の材料を摩擦圧接する方法として、一対の主軸で各々把持した一対の材料を、軸方向の一方側から見て互いに逆方向に回転させつつ互いの軸がずれた状態から互いの軸が一致するまで接合面を互いに接触させて摩擦加熱するとともに、一対の材料の軸が互いに一致した後に当該一対の材料を圧接するようにした摩擦圧接方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の従来の摩擦圧接方法では、一対の材料を、軸方向の一方側から見て互いに逆方向に回転させて摩擦加熱を行うようにしているので、摩擦加熱を行った後、各々の材料の回転を停止させてから圧接を行う必要があり、各々の材料の回転を停止させるために、各主軸を停止させる工程において、各々の材料を摩擦圧接が可能な状態に維持することが容易ではない場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、各々の材料を回転させた状態で摩擦圧接することができる摩擦圧接方法及び工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の摩擦圧接方法は、対向する一対の主軸で各々把持した一対の材料を、一対の前記材料の対向する端面を各々接合面とし、一対の前記材料の互いの軸がずれた状態から互いの軸が一致する方向に、前記接合面を互いに接触させて所定の位置まで移動させ摩擦加熱する加熱工程と、一対の前記材料を前記所定の位置で圧接する圧接工程と、を有する摩擦圧接方法であって、各々の前記材料を軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転させながら前記加熱工程及び前記圧接工程を行い、前記加熱工程において一対の前記材料の軸を一致させる際に、一方の材料に対する他方の材料の移動速度を、外周縁の部分に比較して、軸心に向かって順次又は段階的に増加させることを特徴とする。
【0007】
本発明の摩擦圧接方法は、上記構成において、一対の前記材料の軸が互いに一致する位置で前記圧接工程を行うのが好ましい。
【0008】
本発明の摩擦圧接方法は、上記構成において、前記圧接工程の後、前記材料を、軸方向の一方側から見て前記加熱工程及び前記圧接工程におけるのと同一方向に同一回転数で回転させたまま切削する切削工程を行うのが好ましい。
【0009】
本発明の工作機械は、対向する一対の主軸と、一対の前記主軸で各々把持した一対の材料を、一対の前記材料の対向する端面を各々接合面とし、一対の前記材料の互いの軸がずれた状態から互いの軸が一致する方向に、前記接合面を互いに接触させて所定の位置まで移動させ摩擦加熱する加熱工程と、一対の前記材料を前記所定の位置で圧接する圧接工程とを行うように、一対の前記主軸の移動及び回転を制御する制御部と、を有する工作機械であって、前記制御部が、一対の前記主軸を、軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転させながら前記加熱工程及び前記圧接工程を行うとともに、前記加熱工程において一対の前記材料の軸を一致させる際に、一方の材料に対する他方の材料の移動速度を、外周縁の部分に比較して、軸心に向かって順次又は段階的に増加させるように制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記制御部が、一対の前記材料の軸が互いに一致する位置で前記圧接工程を行うように制御するのが好ましい。
【0011】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記制御部により移動が制御される工具を備え、前記制御部が、前記圧接工程の後、一対の前記主軸を、軸方向の一方側から見て前記加熱工程及び前記圧接工程におけるのと同一方向に同一回転数で回転させたまま前記工具を移動させて該工具により前記材料を切削する切削工程を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱工程及び圧接工程を各々の材料を回転させた状態で行い、各々の材料を摩擦圧接が可能な状態に容易に維持することができる摩擦圧接方法及び工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である摩擦圧接方法を実施可能な工作機械の構成を概略で示す説明図である。
【
図2】(a)~(c)は、それぞれ加熱工程を行っている状態を示す説明図である。
【
図3】(a)~(d)は、それぞれ加熱工程における一対の接合面の状態を示す説明図である。
【
図4】圧接工程を行っている状態を示す説明図である。
【
図5】切削工程を行っている状態を示す説明図である。
【
図6】第1ワークと第2ワークの各工程における回転数を示す線図である。
【
図7】各工程における第1ワークの第2ワークに対するX軸方向の位置を示す線図である。
【
図8】(a)、(b)は、変形例の加熱工程を行っている状態を示す説明図である。
【
図9】(a)~(c)は、変形例の加熱工程における一対の接合面の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す工作機械1は、基台2上に配置される一対の主軸つまり第1主軸3aと第2主軸3bとを有している。第1主軸3aは第1主軸台4aに回転自在に支持され、第2主軸3bは第2主軸台4bに回転自在に支持されている。第1主軸3aと第2主軸3bは所定の間隔を空けて互いに対向している。
【0015】
第1主軸3aは先端に第1チャック5aを備え、第1チャック5aにより第1ワークW1を把持することができる。第2主軸3bは先端に第2チャック5bを備え、第2チャック5bにより第2ワークW2を把持することができる。
【0016】
第1主軸3aは第1駆動源6aにより回転駆動され、第2主軸3bは第2駆動源6bにより回転駆動される。第1駆動源6a及び第2駆動源6bとしては、例えば電動モータを採用することができる。第1主軸3aを第1駆動源6aで回転駆動することにより、第1主軸3aに把持された第1ワークW1を回転させることができる。第2主軸3bを第2駆動源6bで回転駆動することにより、第2主軸3bに把持された第2ワークW2を回転させることができる。
【0017】
第1主軸台4aは、第1主軸3aの軸線方向(Z軸方向)に延出する第1Z軸ガイドレール9a、第1Z軸ガイドレール9aにスライド自在に装着された第1サドル10a及び第1サドル10aに支持されて第1主軸3aの軸線方向に対して直交する水平方向(X軸方向)に延出する第1X軸ガイドレール11aを介して基台2に搭載されている。第1主軸3aは、それぞれ第1サドル10aと基台2との間及び第1サドル10aと第1主軸台4aとの間に設けられるボールネジ等を介して、該ボールネジを回転駆動するモータ等により第1主軸台4aと一体的にZ軸方向及びX軸方向に移動駆動される。
【0018】
第2主軸台4bは、第2主軸3bの軸線方向(Z軸方向)に延出する第2Z軸ガイドレール9b、第2Z軸ガイドレール9bにスライド自在に装着された第2サドル10b及び第2サドル10bに支持されて第2主軸3bの軸線方向に対して直交する水平方向(X軸方向)に延出する第2X軸ガイドレール11bを介して基台2に搭載されている。第2主軸3bは、それぞれ第2サドル10bと基台2との間及び第2サドル10bと第2主軸台4bとの間に設けられるボールネジ等を介して、該ボールネジを回転駆動するモータ等により、第2主軸台4bと一体的に、Z軸方向及びX軸方向に移動駆動される。
【0019】
図示する場合では、第1主軸3aと第2主軸3bの両方がZ軸方向及びX軸方向に移動駆動される構成としたが、例えば、第1主軸3aと第2主軸3bの何れか一方のみをZ軸方向及びX軸方向に移動駆動される構成とするなど、第1主軸3aと第2主軸3bとが相対的にZ軸方向及びX軸方向に移動可能な構成であればよい。
【0020】
工作機械1は、切削加工のための工具7を備えている。工具7は、移動手段8に装着され、移動手段8によって移動自在である。第1ワークW1、第2ワークW2は、第1主軸3aや第2主軸3bとともに切削加工に対応した所定の回転数(回転速度)で回転した状態で工具7の刃部7aが押し当てられることにより、工具7により切削加工される。工具7は、第1主軸3aでの第1ワークW1の加工用と、第2主軸3bでの第2ワークW2の加工用とを各別に設けることもできる。
【0021】
第1主軸3aと第2主軸3bの両方がZ軸方向及びX軸方向に移動駆動される構成とした場合では、移動手段8を設けず工具7を工具台に固定した構成とし、第1主軸3aと第2主軸3bとを工具7に対して相対移動させることで工具7の刃部7aを接合ワークW3に押し当てて切削加工を行う構成とすることもできる。
【0022】
工作機械1は制御部Cを有している。制御部Cは、例えばCPU(中央演算処理装置)やメモリ等の記憶手段を備えたマイクロコンピュータで構成することができる。制御部Cは、第1駆動源6a、第2駆動源6b、移動手段8、両主軸台4a、4bのZ軸及びX軸のスライド移動機構等に接続され、両主軸3a、3bの回転、工具7の移動、両主軸台4a、4bの移動などの作動を統合制御することができる。工作機械1は、例えばCNC旋盤等の旋盤によって構成することができる。
【0023】
第1ワークW1及び第2ワークW2は、例えば、軸方向を向く端面すなわち第1接合面S1、第2接合面S2が、それぞれ軸方向に対して垂直な平坦面を備える金属製の丸棒等とすることができる。第1ワークW1を第1主軸3aの後端から挿入される長尺の丸棒材とし、第1主軸3aにおいて切削加工されて残材として残る第1ワークW1を第2ワークW2とすることができる。
【0024】
第1主軸3aに第1ワークW
1を把持させるとともに第2主軸3bに第2ワークW
2を把持させる
図1に示す状態で、第1主軸3aと第2主軸3bとのZ軸及びX軸への相対移動により、
図2(a)に示すように、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを、第1接合面S1と第2接合面S2のZ軸方向位置が互いに一致するとともに、互いの軸がX軸方向にずれて第1接合面S1と第2接合面S2とが互いにX軸方向に離間した状態となるように配置する。
【0025】
第1主軸3aと第2主軸3bとの作動により、第1ワークW
1と第2ワークW
2とが軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転した状態で、
図2(a)に示す状態から、第1ワークW
1を第2ワークW
2に対してX軸方向に相対移動させ、同一方向に同一回転数で回転する第1接合面S1と第2接合面S2とを互いに接触させて摩擦加熱する(加熱工程)。加熱工程は、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを、
図2(b)に示すように互いの軸がずれた状態から、
図2(c)に示すように互いの軸が一致する状態に移行させるまで行われる。第1ワークW
1の第2ワークW
2に対するX軸方向への相対移動に際して、必要に応じて第1ワークW
1と第2ワークW
2とを互いに押し付けた状態で接触させることもできる。
【0026】
上記加熱工程においては、第1ワークW
1と第2ワークW
2は、軸方向の一方側から見て同一方向に同一回転数で回転しているので、
図3(a)に示すように第1接合面S1と第2接合面S2とがX軸方向に互いに離間した状態から、
図3(b)に示すように、第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁の部分において互いに接触し始めたときに最大の相対速度を有し、回転差による最も大きな摩擦熱を生じて大きな温度上昇を伴って加熱され、
図3(d)に示すように、互いの軸が一致した状態となるまで接合が可能な接合面の温度を維持したまま連続して摩擦加熱される。
【0027】
加熱工程においては、
図3(c)に示すように、第1接合面S1の中心部分は第2接合面S2の外周縁部分に回転差を有して接触し、第2接合面S2の中心部分は第1接合面S1の外周縁部分に回転差を有して接触することになるので、第1接合面S1の中心部分及び第2接合面S2の中心部分も摩擦熱により加熱される。
【0028】
図3(d)に示すように、第1主軸3aと第2主軸3bの軸が互いに一致すると、第1主軸3aと第2主軸3bとは共に回転した状態で相対的な回転数の差が0となり、第1主軸3aと第2主軸3bが互いに相対回転しない状態となって加熱工程は終了する。
【0029】
第1ワークW
1と第2ワークW
2の軸が一致して加熱工程が完了すると、次に、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを圧接する圧接工程が行われる。圧接工程は、
図4に示すように、互いの軸が一致するとともに同一方向に同一回転数で回転することで互いに相対的に回転が停止した状態となった第1ワークW
1と第2ワークW
2とを互いに接近させるようにZ軸方向に相対移動させ、第1接合面S1と第2接合面S2とを所定の圧力(アプセット圧)で軸線方向(Z軸方向)に押し付けることで行われる。
【0030】
加熱工程後の圧接工程によって、一対の材料としての第1ワークW1と第2ワークW2とが摩擦圧接により接合される。本工作機械1は、第1ワークW1と第2ワークW2とを摩擦圧接して接合ワークW3とする。本実施形態において、圧接工程は、第1ワークW1と第2ワークW2とを互いに押圧する方向に移動させる両方の主軸3a、3bに対する移動指令に基づいて、第1主軸3aと第2主軸3bを共に互いに近接する方向に移動させて行われる。
【0031】
第1主軸3aと第2主軸3bを共に近接する方向に移動させるため、例えば一方の主軸をZ軸方向に停止させた状態で他方の主軸をZ軸方向に移動させて第1ワークW1と第2ワークW2とを互いに押圧する場合に比較して、第1主軸3a及び第2主軸3bの位置と移動指令の位置との誤差に基づく制御部Cのエラーを容易に回避することができる。
【0032】
本実施形態の摩擦圧接方法では、上記の通り、加熱工程において、第1接合面S1の中心部分に第2接合面S2の外周縁部分が接触し、第2接合面S2の中心部分に第1接合面S1の外周縁部分が接触することにより、第1ワークW1と第2ワークW2とを同軸としたまま互いに相対回転させて摩擦加熱する場合に比べて、第1接合面S1の中心部分及び第2接合面S2の中心部分は各々十分に摩擦加熱される。したがって、圧接工程において、第1接合面S1と第2接合面S2を全体的に摩擦による温度上昇が生じるようにして、摩擦圧接による接合面の面積を増加させ、第1ワークW1と第2ワークW2とを、より接合強度が向上した摩擦圧接をすることができる。
【0033】
上記の通り、本実施形態の摩擦圧接方法では、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを同一方向に同一回転数で回転させて加熱工程を行うようにしているので、第1ワークW
1と第2ワークW
2の軸が一致して加熱工程が完了すると、第1接合面S1と第2接合面S2とは相対的に停止した状態となる。したがって、
図6に示すように、加熱工程が完了した後、第1ワークW
1と第2ワークW
2の回転を停止させることなく、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを加熱工程と同一の回転方向に同一の回転数で回転させたまま上記した圧接工程を連続して行うことができる。
【0034】
第1ワークW1を第2ワークW2に対してX軸方向に相対移動させる第1主軸3a及び第2主軸3bのX軸方向への移動は、加熱工程の完了に際して、第1接合面S1と第2接合面S2の温度が摩擦圧接に必要な温度を維持するように、相対的な回転差の低下による前記温度の低下を考慮して制御される。第1主軸3a及び第2主軸3bのX軸方向への移動速度等、移動の制御によって、第1ワークW1と第2ワークW2の互いの軸が一致した状態となるまで、第1接合面S1と第2接合面S2の接合が可能な温度を維持したまま連続して容易に摩擦加熱することができる。
【0035】
また、
図7に示すように、第1ワークW
1の第2ワークW
2に対するX軸方向の位置Xを変化させて加熱工程を行い、第1ワークW
1と第2ワークW
2の軸が一致し、位置Xが0となって加熱工程が完了するようにしているので、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを同心で接合する場合は、加熱工程が完了した後には、第1ワークW
1の第2ワークW
2に対するX軸方向の位置Xを変化させることなく、そのまま圧接工程を行うことができる。したがって、加熱工程の後、圧接工程を開始するまでの時間を短縮して、迅速に摩擦圧接を行うことができる。
【0036】
本実施形態の摩擦圧接方法は、圧接工程の後、材料である接合ワークW3を、軸方向の一方側から見て加熱工程及び圧接工程におけるのと同一方向に同一回転数で回転させたまま切削する切削工程を連続して行う構成とすることができる。
【0037】
加熱工程及び圧接工程における第1ワークW1と第2ワークW2の回転数は、適度な摩擦加熱を行うことができるとともに工具7による切削加工に適した回転数とするのが好ましい。
【0038】
接合ワークW
3の接合部における外周面には、
図4に示すように、第1ワークW
1と第2ワークW
2の摩擦熱によって軟化した部分が圧接の際に径方向外側に押し出されることによりバリBが生じる場合がある。上記切削工程においては、
図5に示すように、移動手段8により工具7の刃部7aをZ軸方向に移動させることにより、バリBを取り除くための切削加工を行うことができる。
【0039】
本実施形態の摩擦圧接方法では、切削工程における接合ワークW
3の軸方向の一方側から見た回転方向及び回転数は、加熱工程及び圧接工程における第1ワークW
1及び第2ワークW
2の回転方向及び回転数と同一とされているので、圧接工程が完了した後、第1ワークW
1と第2ワークW
2の回転数を調整することなく、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを加熱工程及び圧接工程と同一の回転方向に同一の回転数で回転させたまま上記した切削工程を連続して行うことができる。すなわち、第1主軸3a及び第2主軸3bの回転を停止させることなく、
図6に示すように、第1ワークW
1及び第2ワークW
2の回転方向、回転数を同一に維持したまま、加熱工程、圧接工程、切削工程の全ての工程を行うことができる。したがって、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを摩擦圧接した後に、迅速に接合ワークW
3の切削加工に移行することができ、加工時間を短縮することができる。
【0040】
また、
図7に示すように、摩擦圧接が完了した後に、第1ワークW
1の第2ワークW
2に対するX軸方向の位置Xを変化させることなく、そのまま連続して切削工程を行うことができ、さらに、圧接工程と切削工程の間で、第1チャック5aや第2チャック5bの解除が不要な場合は、この点からも加工時間を短縮することができる。なお接合ワークW
3のバリBを切削加工によって除去した後、接合ワークW
3を切削加工のために第1主軸3aで再度把持する際には第1チャック5aや第2チャック5bの解除は必要となる。
【0041】
図8(a)、(b)は、加熱工程の変形例の手順を示す説明図であり、
図9(a)~(c)は、変形例の加熱工程における一対の材料の軸方向の一方側から見た位置関係及び回転方向を示す説明図である。
図8、
図9においては、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付してある。
【0042】
上記実施形態では、
図2(a)に示すように、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを、第1接合面S1と第2接合面S2のZ軸方向位置が互いに一致するとともに、互いの軸がX軸方向にずれて第1接合面S1と第2接合面S2とが互いにX軸方向に離間した状態となるように配置した後、第1ワークW
1を第2ワークW
2に対してX軸方向に相対移動させて第1接合面S1と第2接合面S2とを互いに接触させて加熱工程を開始するようにしている。
【0043】
これに対し、
図8(a)に示すように、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを、第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁側の一部においてのみ互いに対向するようにZ軸方向に間隔を空けるとともに互いの軸をX軸方向にずらして配置した後、第1ワークW
1と第2ワークW
2とを互いに接近させるようにZ軸方向に相対移動させることで、
図8(b)に示すように、第1接合面S1の外周縁側部分と第2接合面S2の外周縁側部分とを互いに接触させ、加熱工程を開始する構成とすることもできる。この場合、簡単な制御で、第1接合面S1と第2接合面S2とを、所定の押付け力で確実に接触させることができる。
【0044】
上記変形例においても、
図9(a)に示すように、第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁の部分において互いに接触し始め、
図9(b)に示すように、第1接合面S1の中心部分及び第2接合面S2の中心部分が摩擦熱により加熱された後、
図9(c)に示すように、互いの軸が一致した状態となるまで接合が可能な接合面の温度を維持したまま連続して摩擦加熱が行われる。
【0045】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0046】
例えば、本実施形態の摩擦圧接方法は、
図1に示す工作機械1を用いて実施されるに限らず、対向する一対の主軸を備えたものであれば、他の工作機械等を用いて実施することもできる。また、第2ワークW
2を、第2主軸3bとは別に、第1主軸3aに対向して設けられる主軸で把持させて摩擦圧接することもできる。この場合、第2主軸3bとは別の第2ワークW
2を把持する主軸は、第2主軸3bと共に第2主軸台4bに設けることが望ましい。第2主軸3bを摩擦圧接とは別の切削加工等で使用することが可能となる。第2主軸3bにおける摩擦圧接とは別の切削加工は、第2主軸3bとは別の主軸による摩擦圧接と同時に行わせることが可能となる。
【0047】
前記実施の形態においては、第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁の部分において互いに接触してから互いの軸が一致した状態とするために第1主軸3aを移動させる例で説明をしたが、第2主軸3bを移動させても良いし、両方の主軸を相対的に移動させても良い。
【0048】
前記実施の形態においては、第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁の部分において互いに接触してから互いの軸が一致した状態となるまでの移動の軸をX軸とした場合を示したが、Y軸方向に移動駆動可能な構成であれば、Y軸方向への移動による本発明の摩擦圧接方法も可能である。
【0049】
第1接合面S1と第2接合面S2とが外周縁の部分において互いに接触してから互いの軸が一致した状態となるまでのX軸の移動速度を一定とする他、外周縁の部分に比較して、軸心に向かって順次または段階的に前記移動速度を増加して互いの軸心を一致させるような制御を行うことも可能である。加熱工程における移動速度を制御することにより接合面の温度を精密に制御することが可能となる。
【0050】
前記実施の形態においては、第1ワークW1、第2ワークW2として、軸方向を向く第1接合面S1、第2接合面S2が、それぞれ軸方向に対して垂直な平坦面とされた金属製の丸棒とした場合を示したが、軸方向を向く第1接合面S1、第2接合面S2が、それぞれ軸方向に対して垂直な平坦面とされたものであれば、他の材質のものや、多角柱状等の異なる外径寸法、形状のものとすることもできる。
【0051】
前記実施の形態においては、摩擦圧接の後、第1ワークW1と第2ワークW2とを加熱工程及び圧接工程と同一の回転方向に同一の回転数で回転させたまま切削工程を連続して行うようにしているが、第1ワークW1と第2ワークW2の回転数を摩擦圧接に適した回転数として摩擦圧接を行った後、第1ワークW1と第2ワークW2の回転数を切削加工に適した回転数に変更してから切削加工を行う構成とすることもできる。この場合においても、加熱工程、圧接工程及び切削工程を、第1ワークW1と第2ワークW2の回転を止めずに行うことができるので、加工時間を短縮することができる。
【0052】
前記実施の形態においては、第1ワークW1の軸と第2ワークW2の軸が互いに一致する位置で圧接工程を行うようにしているが、第1ワークW1の軸と第2ワークW2の軸が互いにずれた位置で圧接工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 工作機械
2 基台
3a 第1主軸
3b 第2主軸
4a 第1主軸台
4b 第2主軸台
5a 第1チャック
5b 第2チャック
6a 第1駆動源
6b 第2駆動源
7 工具
7a 刃部
8 移動手段
9a 第1Z軸ガイドレール
9b 第2Z軸ガイドレール
10a 第1サドル
10b 第2サドル
11a 第1X軸ガイドレール
11b 第2X軸ガイドレール
W1 第1ワーク(材料)
W2 第2ワーク(材料)
W3 接合ワーク(材料)
C 制御部
S1 第1接合面
S2 第2接合面
B バリ