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  • 特許-抗SIRPα抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】抗SIRPα抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221108BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221108BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221108BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019563581
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018062473
(87)【国際公開番号】W WO2018210793
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】17171285.4
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516205959
【氏名又は名称】ビョンディス・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Byondis B.V.
【住所又は居所原語表記】Microweg 22, NL-6545 CM Nijmegen, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フェアハイデン、ガイスバートゥス・フランシスクス・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ローウェンダル、ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】アレンズ、ローランド・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ベルク、ティモ・カース
(72)【発明者】
【氏名】マットルング、ハンケ・ロッティー
(72)【発明者】
【氏名】フランケ、カタリナ
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0242095(US,A1)
【文献】特表2008-505174(JP,A)
【文献】特表2017-510251(JP,A)
【文献】Journal of Immunology,2004年,Vol.173, No.4,pp.2562-2570
【文献】mAbs,2013年,Vol.5, No.6,pp.896-903
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域(VR)の相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2およびCDR3を含み;
a.HC VRのCDR1はアミノ酸配列HGISからなり、
b.HC VRのCDR2はアミノ酸配列TIGTGVITYFASWAKGからなり、
c.HC VRのCDR3はアミノ酸配列GSAWNDPFDPからなり、
d.LC VRのCDR1はアミノ酸配列QASQSVYGNNDLAからなり、
e.LC VRのCDR2はアミノ酸配列LASTLATからなり、
f.LC VRのCDR3はアミノ酸配列LGGGDDEADNVからなり、
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項1に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項2に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
a.配列番号35のHC VRアミノ酸配列および配列番号36のLC VRアミノ酸配列;
b.配列番号35のHC VRアミノ酸配列および配列番号37のLC VRアミノ酸配列;
c.配列番号13のHC VRアミノ酸配列および配列番号38のLC VRアミノ酸配列;または
g.配列番号13のHC VRアミノ酸配列および配列番号37のLC VRアミノ酸配列を含む、
請求項3に記載のヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
野生型Fc領域を含む抗SIRPα抗体と比較して、ヒトFcαまたはFcγ受容体への結合の低減を示す修飾Fc領域を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体。
【請求項6】
Euナンバリングで、L234、L235、G237、D265、D270、N297、A327、328およびP329からなる群から選択される1以上の位置におけるアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む、請求項5に記載の抗SIRPα抗体。
【請求項7】
アミノ酸置換がL234AおよびL235A;L234EおよびL235A;L234A、L235AおよびP329A;または、L234A、L235AおよびP329Gを含む、請求項6に記載の抗SIRPα抗体。
【請求項8】
アミノ酸置換がL234AおよびL235A;または、L234EおよびL235Aを含む、請求項7に記載の抗SIRPα抗体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片および1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
医薬としての使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体もしくはその抗原結合性断片、または請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項9に記載の医薬組成物の、ヒト固形腫瘍または血液悪性腫瘍を治療するための医薬の製造における使用。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項9に記載の医薬組成物と、1以上の他の抗がん治療剤との組合せの、ヒト固形腫瘍または血液悪性腫瘍を治療するための医薬の製造における使用。
【請求項13】
前記1以上の他の抗がん治療剤が、ターゲティング療法剤または免疫療法剤である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ターゲティング療法剤が、治療用抗体または抗体-薬物コンジュゲートである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記治療用抗体が、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む、腫瘍細胞表面の膜結合標的に対する治療用抗体である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記治療用抗体が、アネキシンA1、B7H3、B7H4、CA6、CA9、CA15-3、CA19-9、CA27-29、CA125、CA242、CCR2、CCR5、CD2、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD56、CD70、CD74、CD79、CD115、CD123、CD138、CD203c、CD303、CD333、CEA、CEACAM、CLCA-1、CLL-1、c-MET、Cripto、CTLA-4、DLL3、EGFL、EGFR、EPCAM、EPh(例えば、EphA2またはEPhB3)、エンドセリンB受容体(ETBR)、FAP、FcRL5(CD307)、FGF、FGFR(例えば、FGFR3)、FOLR1、GCC、GPNMB、HER2、HMW-MAA、インテグリンα(例えば、αvβ3およびαvβ5)、IGF1R、TM4SF1(またはL6抗原)、ルイスA様炭水化物、ルイスX、ルイスY、LIV1、メソテリン、MUC1、MUC16、NaPi2b、ネクチン4、PD-1、PD-L1、PSMA、PTK7、SLC44A4、STEAP-1、5T4抗原(またはTPBG、栄養膜糖タンパク質)、TF(組織因子)、トムセン-フリーデンライヒ抗原(TF-Ag)、Tag72、TNF、TNFR、TROP2、VEGF、VEGFRおよびVLAからなる群から選択される標的に結合する少なくとも1つのHC VRおよびLC VRを含む、単一特異性もしくは二重特異性抗体または抗体断片である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記治療用抗体が、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブおよびトラスツズマブからなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体-薬物コンジュゲートが、トラスツズマブエムタンシンまたはブレンツキシマブベドチンである、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、SIRPαに対する抗体、および、任意に他の抗がん治療剤と組み合わせたがんの治療におけるこれらの抗体の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
1990年代後半以来、がんの処置において治療用抗体が利用できる。これらの治療用抗体は、異なる経路を介して悪性細胞に作用する。抗体と悪性細胞上の標的との結合により誘発されるシグナル伝達経路は、細胞増殖の阻害またはアポトーシスをもたらす。治療用抗体のFc領域は、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)を誘発する。しかし、治療用抗体は、単剤療法では効果的ではないことが多い。治療用抗体の効能を改善するための1つの選択肢は、ADCCおよび/またはADCPの改善による。これは、例えば、アミノ酸置換で、Fc領域のFcγ受容体に対する親和性を改善することにより(Richardsら、Mol. Cancer Ther. 2008, 7(8), 2517-2527)、またはFc領域のグリコシル化に影響を及ぼすことにより(Hayesら、J. Inflamm. Res. 2016, 9, 209-219)なされている。
【0003】
治療用抗体のADCCおよび/またはADCPを改善する別の方法は、治療用抗体を、シグナル調節タンパク質αに対するアンタゴニスト性抗体(抗SIRPα)または抗CD47抗体(国際公開第2009/131453号)と組み合わせることである。CD47が、単球、マクロファージ、樹状細胞および好中球上で発現する阻害性免疫受容体であるSIRPαに結合すると、SIRPαは、免疫エフェクター細胞の食作用または他のFc受容体依存性細胞破壊機構によるがん細胞の破壊を阻止する阻害性シグナルを伝達する。
【0004】
腫瘍細胞は、治療用抗体により誘導される抗腫瘍免疫応答を回避する機構としてCD47の上方調節を使用する。抗CD47または抗SIRPα抗体は、CD47-SIRPα軸を介して発生した阻害性シグナル伝達を遮断し、ADCCおよび/またはADCPの増大をもたらす。
【0005】
CD47-SIRPα間相互作用と関連する大半の臨床研究は、単剤療法として、および治療用抗体との組合せ療法として、抗CD47抗体に焦点を合わせている(Weiskopf、Eur. J. Cancer, 2017, 76, 100-109)。抗がん治療剤としての抗CD47抗体に関する研究は、CD47が大半の正常組織内の細胞の表面上にもまた発現するという事実にもかかわらず、増大しつつある。
【0006】
抗SIRPα抗体を使用する抗がん単剤療法または組合せ療法についての研究は、ほとんど行われていない。抗SIRPα抗体についての研究の大部分は、CD47-SIRPα間相互作用に関する機構についての研究であり、マウス抗SIRPα抗体を使用して実施されており;例えば、マウス12C4および1.23Aは、トラスツズマブの好中球媒介性ADCCによるSKBR3細胞のオプソニン化を増大させた(Zhaoら、PNAS, 2011, 108(45), 18342-18347)。国際公開第2015/138600号は、とりわけ、セツキシマブによるin vitroにおける食作用を増大させるマウス抗ヒトSIRPα抗体である、KWAR23およびそのキメラFab断片について開示している。国際公開第2018/026600号では、N297A突然変異を含むヒトIgG Fcを伴うヒト化KWAR23が開示されている。国際公開第2013/056352号は、IgG 29AM4-5および他のIgGヒト抗SIRPα抗体について開示している。毎週3回、4週間にわたり8mg/kgで投与されたIgG 29AM4-5は、NOD scidγ(NSG)マウスの右大腿部に注入された初代ヒトAML細胞の白血病性生着を軽減した。
【0007】
SIRPαは、免疫エフェクター細胞上に存在する細胞外Ig様ドメインを有する膜貫通糖タンパク質である、シグナル調節タンパク質(SIRP)ファミリーのメンバーである。SIRPαのNH末端のリガンド結合ドメインは、高度に多型である(Takenakaら、Nature Immun. 2007, 8(12), 1313-1323)。しかし、この多型は、CD47への結合にそれほど影響を及ぼさない。SIRPαBIT(v1)およびSIRPα(v2)は、最も一般的で、最も差違の大きい(13残基異なる)多型体である(Hatherleyら、J. Biol. Chem. 2014, 289(14), 10024-10028)。他の、生物学的に特徴づけられたヒトSIRPファミリーメンバーは、SIRPβおよびSIRPγである。
【0008】
SIRPβはCD47に結合せず(van Beekら、J. Immunol. 2005, 175(12), 7781-7787, 7788- 7789)、かつ、少なくとも2つのSIRPβ多型変異体であるSIRPβ1v1(ENSP00000371018)およびSIRPβ1v2(ENSP00000279477)が知られている。SIRPβの天然リガンドは未知であるが、抗SIRPβ特異的抗体を使用するin vitro研究は、SIRPβの結合が、DAP12、SykおよびSLP-76のチロシンリン酸化で誘導されたマクロファージの食作用と、その後の、MEK-MAPK-ミオシン軽鎖キナーゼカスケードの活性化を促進することを示す(Matozakiら、J. Biol. Chem. 2004, 279(28), 29450-29460)。
【0009】
SIRPγは、T細胞および活性化NK細胞上で発現し、SIRPαと比較して10分の1の親和性でCD47に結合する。CD47-SIRPγ間相互作用は、抗原提示細胞とT細胞との接触、T細胞活性化の共刺激、およびT細胞増殖の促進に関与する(Piccioら、Blood, 2005, 105, 2421-2427)。さらに、CD47-SIRPγ間相互作用は、T細胞の経内皮遊走においても役割を果たす(Stefanisakisら、Blood, 2008, 112, 1280-1289)。
【0010】
当技術分野で知られた抗SIRPα抗体は、ヒトSIRPαに特異的でないか、または特異的過ぎるかのいずれかであるため、SIRPαに方向付けられた単剤または組合せ療法における使用にあまり適していない。先行技術による抗体であるKWAR23、SE5A5、29AM4-5および12C4は、ヒトSIRPγにも結合するので、特異的ではない。T細胞上で発現するSIRPγへの結合は、T細胞の増殖および動員に負の影響を及ぼす可能性がある。他の抗SIRPα抗体、例えば、1.23A mAbは、ヒトSIRPαの多型変異体であるSIRPαだけを認識し、少なくとも白色人種集団では主要な変異体であるSIRPαBITを認識しないというように、特異性があまりに限定的である(X.W.Zhaoら、PNAS, 2011, 108(45), 18342-18347)。
【0011】
抗SIRPα抗体を使用して治療用抗体のADCCを増大させることに加え、これらの抗体は、SIRPαを発現するがんを直接ターゲティングするのに使用してもよい。機能的Fc領域を有するマウス抗SIRPα抗体は、SIRPαを発現するRenca細胞とB16BL6黒色腫細胞が注入されたマウスにおいて腫瘍形成を緩徐化させたので、野生型ヒトFcを含む抗SIRPα抗体は、腎細胞癌および悪性黒色腫のようなSIRPαを発現するがんの治療に適している可能性がある(Yanagitaら、JCI Insight, 2017, 2(1), e89140)。
【0012】
結論として、SIRPγへの結合が低く、SIRPαとSIRPαBIT多型変異体の両者に特異的に結合し、単独の抗がん治療または治療用抗体と組み合わせた抗がん治療のいずれかにおける使用に適する抗SIRPα抗体が必要とされている。
【発明の簡単な説明】
【0013】
本発明は抗がん治療における使用に適するSIRPαに対する抗体に関する。さらに、本発明はヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における抗体の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ヒト好中球をエフェクター細胞として使用し、SKBR3 HER2陽性乳がん細胞上で測定した、トラスツズマブ(Tmab)単独、マウス12C4抗SIRPα抗体(mu12C4)と組み合わせたトラスツズマブ、マウス12C4の可変領域をヒトIgG定常領域とグラフトした抗体(12C4huIgG)と組み合わせたトラスツズマブ、および、マウス12C4の可変領域をL234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むヒトIgG定常領域とグラフトした抗体(12C4huIgGLALA)と組み合わせたトラスツズマブの、%細胞傷害作用により測定したADCCの比較。
図2】SKBR3細胞上の、トラスツズマブと組み合わせた、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むヒトIgG定常領域を有する抗SIRPα抗体1~9、抗SIRPα抗体である12C4huIgGLALA(12C4LALA)、ならびに抗CD47抗体であるB6H12huIgGLALA(B6H12LALA)の、トラスツズマブ(100%とした)に対するADCC%の比較。黒四角はSIRPαBIT変異体を有するドナーの好中球の実測値で、白丸はSIRPα変異体を有するドナーの好中球の実測値である。柱グラフは、全てのドナーの平均であり;誤差バーは標準偏差を表す。
図3】SKBR3細胞上の、トラスツズマブ単独、トラスツズマブと組み合わせた、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むヒトIgG定常領域を有する様々な濃度(用量反応曲線)の抗SIRPα抗体4、7、10、14、ならびに抗SIRPα抗体である12C4huIgGLALA(12C4LALA)の、ADCC%の比較。SIRPαBIT変異体を有するドナー2例(白三角、白丸)の好中球。柱グラフは2例のドナーの平均である。
図4】SKBR3細胞上の、トラスツズマブ単独、トラスツズマブと組み合わせたL234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むヒトIgG定常領域を有する抗SIRPα抗体4、7、10、13、14、15および16、ならびに抗SIRPα抗体である12C4huIgGLALA(12C4LALA)の、ADCC%の比較。SIRPαBIT変異体を有するドナーの好中球(白三角、白六角形、逆白三角、白ひし形)、SIRPα変異体を有するドナーの好中球(白丸、上半分黒丸)、および変異体が決定されなかったドナーの好中球(白四角)を使用した。柱グラフはドナーの平均である。
【発明の詳細な説明】
【0015】
SIRPαは腫瘍免疫回避機構において重要な役割を果たすことが示されているにもかかわらず、SIRPαに対する承認済みの治療剤はない。加えて、SIRPαは多様な悪性細胞上で発現し、このことはSIRPαを潜在的な腫瘍関連抗原としている。
【0016】
本発明は、2つの主要なSIRPα多型変異体であるSIRPαBITおよびSIRPαに対して特異的結合を示し、SIRPγに結合せず、治療用抗体のADCCおよび/またはADCPを増大させる、アンタゴニスト性の抗SIRPα抗体に関する。
【0017】
本明細書を通して使用される「抗体」という用語は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含むモノクローナル抗体(mAb)を指す。抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgA、IgE、IgGまたはIgM抗体であってもよい。好ましくは、抗体は、IgG抗体、より好ましくは、IgGまたはIgG抗体である。抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。さらにより好ましくは、抗体は、ヒト化またはヒトIgG抗体、最も好ましくは、ヒト化またはヒトIgGmAbである。抗体は、κ(カッパ)またはλ(ラムダ)軽鎖、好ましくはκ(カッパ)軽鎖を有してもよく、すなわち、ヒト化またはヒトIgGκ抗体であってもよい。抗体は、例えば、半減期を延長しおよび/またはエフェクター機能を増大もしくは減少するために、1以上の突然変異を導入することにより操作された定常領域を含んでもよい。
【0018】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」および「mAb」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、わずかに可能性のある自然発生の突然変異を除き、集団を構成する個々の抗体は同一である。抗体は、所望の抗原を表すペプチドの混合物で動物を免疫化することにより作出してもよい。Bリンパ球を単離し、骨髄腫細胞と融合させるか、または単一のBリンパ球を、順化培地およびフィーダー細胞の存在下で、数日間にわたり培養する。適切なBリンパ球またはハイブリドーマを選択するために、産生された抗体を含有する骨髄腫またはBリンパ球の上清をテストする。モノクローナル抗体は、Koehlerら、Nature, 1975, 256, 495-497に最初に発表されたハイブリドーマ法により、適切なハイブリドーマから調製してもよい。あるいは、適切なB細胞またはリンパ腫のRNAを溶解させ、RNAを単離し、逆転写し、シーケンシングしてもよい。抗体は、細菌、真核動物または植物細胞内で、組換えDNA法により作ってもよい(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature, 1919, 352, 624-628、およびMarksら、J. Mol. Biol. 1991, 222, 581-597に記載された技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0019】
本明細書を通して使用される「抗原結合性断片」という用語は、Fab、Fab’またはF(ab’)断片、単鎖(sc)抗体、scFv、単一ドメイン(sd)抗体、ダイアボディーまたはミニボディーを含む。
【0020】
ヒト化抗体では、重鎖(HC)および軽鎖(LC)の可変領域(VR)内の抗原結合性相補性決定領域(CDR)は、非ヒト種、一般に、マウス、ラットまたはウサギの抗体に由来する。これらの非ヒトCDRは、抗体の機能的特性、例えば、結合の親和性および特異性が保持される方法で、HCおよびLCの可変領域のヒトフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)と組み合わせる。ヒトFR内の選択されたアミノ酸を、対応する元の非ヒト種アミノ酸と交換して、低免疫原性を保持しながら、結合親和性を改善してもよい。代わりに、元の非ヒト種FRの選択されたアミノ酸を、それらの対応するヒトアミノ酸と交換して、抗体の結合親和性を保持しながら、免疫原性を低減してもよい。このようにして、ヒト化可変領域をヒト定常領域と組み合わせる。
【0021】
CDRは、カバット(Kabat, E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD., NIH publication no. 91-3242, pp. 662, 680, 689 (1991))、コチア(Chothiaら、Nature, 1989, 342, 877-883)、またはIMGT(Lefranc, The Immunologist 1999, 7, 132-136)による手法を使用して決定できる。本発明の文脈では、抗体の重鎖および軽鎖定常領域内の位置を指し示すためにEuナンバリングを使用する。「Euナンバリング」という表現は、Kabat ,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD., NIH publication no. 91-3242, pp. 662, 680, 689 (1991)におけるEuインデックスを指す。
【0022】
アンタゴニスト性の抗体は、特定の抗原に対して親和性を有し、当該抗体の抗原への結合は、受容体でアゴニストまたはインバースアゴニストの機能を阻害する。本発明の場合、アンタゴニスト性の抗SIRPα抗体のSIRPαへの結合は、CD47とSIRPαの結合を阻止するか、またはCD47-SIRPα結合により誘発される阻害性シグナルを途絶する。
【0023】
アンタゴニスト性の抗SIRPα抗体は、CD47が結合する部位と同じ部位に結合することで、CD47によるSIRPαのライゲーションを阻止し、その結果、免疫エフェクター細胞のFc受容体に依存する作用を負に調節するシグナル伝達を阻害することができる。アンタゴニスト性の抗SIRPα抗体は、CD47の結合部位と異なるSIRPαの部位、すなわち、アロステリックサイトに結合し、物理的なCD47-SIRPα間相互作用を直接妨害せず、例えば、SIRPαの三次元形状の変化よってSIRPαの阻害性シグナル伝達を阻害することができる。この三次元形状の変化は、CD47の結合による(下流の)シグナル伝達を阻止する。SIRPαがアロステリックサイトで結合される場合、CD47は依然としてSIRPαと結合している可能性があり、このことは、トロンボスポンジン1(TSP-1)への結合にCD47が利用できなくなる可能性がある。TSP-1のCD47へのライゲーションは、例えば、T細胞活性化の負の調節において役割を果たす(Soto-Pantojaら、Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 2015, 50(3), 212-230)。
【0024】
本明細書を通して使用される「結合親和性」という用語は、特定の抗原-抗体間相互作用の解離定数(K)を指す。Kとは、解離速度(koff)の会合速度(kon)に対する比である。従って、Kはkoff/konに等しく、モル濃度(M)で表される。Kが小さいほど結合親和性は強いということになる。一般に、K値は、当技術分野で公知の方法(例えば、E.S.Dayら、Anal. Biochem. 2013, 440, 96-107)によるバイオセンサーシステム(例えば、Biacore(登録商標))を使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される。「結合親和性」という用語は、例えば、ELISAアッセイにより測定されるか、またはフローサイトメトリーにより測定される、最大結合の半分をもたらす抗体の濃度(EC50)を指す場合もある。
【0025】
本明細書を通して使用される「特異的結合」という用語は、25℃で、SPRにより測定される、典型的には、10-7M未満、例えば、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、またはさらに低いKでの、抗体とその抗原との間の結合親和性を指す。
【0026】
本明細書を通して使用される「低親和性」という用語は、「~に結合しない」または「~に結合していない」という語句と互換的であり、ELISAアッセイで1500ng/mlを越えるEC50の、抗体とその抗原との間の結合親和性であるか、または、SPRで測定した時に、固定化された抗原と抗体との間で特異的結合が観察されない場合を指す。
【0027】
本明細書を通して使用される「高親和性」という用語は、25℃で、SPRにより測定される、典型的に、10-10M未満、10-11M、またはさらに低いKでの、抗体とその抗原との間の結合親和性を指す。
【0028】
特に、本発明は、
a.配列番号1のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号2のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
e.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
f.配列番号11のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
g.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
h.配列番号15のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号16のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
i.配列番号17のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号18のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域(VR)の相補性決定領域(CDR)を含み;
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0029】
好ましくは、本発明は、
a.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
e.配列番号11のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
f.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
g.配列番号15のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号16のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
h.配列番号17のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号18のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域(VR)の相補性決定領域(CDR)を含み;
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0030】
より好ましくは、本発明は、
a.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
e.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含み、
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0031】
さらにより好ましくは、本発明は、
a.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
c.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含み、
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0032】
最も好ましくは、本発明は、
a.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
b.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含み、
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0033】
好ましい態様では、本発明は上述した抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片に関し、ここで、抗体は、SIRPαBITとSIRPαの両者に対する特異的結合を示し、SIRPγに結合しない。
【0034】
より好ましい態様では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPαBITに10-9Mを下回るKで特異的に結合し、そして、SIRPαに10-7Mを下回るKで結合し、ここで、KはSPRにより25℃で測定される。好ましくは、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPαに、10-8Mを下回るKで結合する。
【0035】
別のより好ましい態様では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPαBITおよびSIRPαに10-9Mを下回るKで特異的に結合し、ここで、KはSPRにより25℃で測定される。
【0036】
さらにより好ましい態様では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPαBITおよびSIRPαに10-10Mを下回るKで特異的に結合する。好ましくは、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPαBITに10-10Mを下回るKで、そして、SIRPαに10-11Mを下回るKで特異的に結合する。典型的に、上述した抗SIRPα抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。好ましくは、抗SIRPα抗体はヒト化またはヒト抗体である。より好ましくは、抗SIRPα抗体はヒト化抗体である。特定の態様では、本発明のヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、
a.配列番号30のHCVRアミノ酸配列および配列番号31のLCVRアミノ酸配列;
b.配列番号32のHCVRアミノ酸配列および配列番号33のLCVRアミノ酸配列;
c.配列番号34のHCVRアミノ酸配列および配列番号8のLCVRアミノ酸配列;
d.配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号36のLCVRアミノ酸配列;
e.配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列;
f.配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号38のLCVRアミノ酸配列;ならびに
g.配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列
からなる群から選択されるHCVRおよびLCVRを含む。
【0037】
好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号30のHCVRアミノ酸配列および配列番号31のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0038】
別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号32のHCVRアミノ酸配列および配列番号33のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0039】
さらに別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号34のHCVRアミノ酸配列および配列番号8のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0040】
さらに別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号36のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0041】
さらに別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0042】
さらに別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号38のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0043】
さらに別の好ましい態様では、ヒト化抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0044】
ヒト(hu)SIRPαBITと(hu)SIRPαの両者への結合に加え、本発明の抗体はカニクイザルサル(cy)SIRPαにも結合することができ、このことは、動物モデルによるin vivo研究を可能にする。
【0045】
本発明の抗体は、CD47の結合部位と異なるSIRPαの部位、すなわち、アロステリックサイトに結合し、物理的なCD47-SIRPα間相互作用に直接妨害せず、SIRPαの阻害性シグナル伝達を阻害することができる。代わりに、抗体は、CD47が結合する同じ部位に結合することで、CD47によるSIRPαのライゲーションを阻止し、その結果、免疫エフェクター細胞のFc受容体に依存する作用を負に調節するシグナル伝達を阻害することができる。
【0046】
上述した抗SIRPα抗体またはそれらの抗原結合性断片は、公知の抗SIRPα抗体よりも特異的で、SIRPαBITとSIRPαの両者に優れた親和性を示す。その上、本発明の抗SIRPα抗体はSIRPγに結合しない。
【0047】
特定の一態様では、本発明の抗SIRPα抗体は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するFc領域を含む。このような抗SIRPα抗体は、ADCCおよび/またはADCPを誘導しうるので、SIRPα陽性ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍に対する単剤療法に適する。ヒト免疫エフェクター細胞は、ライゲーションされると、食作用、サイトカインの放出、ADCCおよび/またはADCPなどを誘発する、様々な活性化Fc受容体を有する。これらの受容体の例は、Fcγ受容体、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、FcγRIICおよびFcα受容体であるFcαRI(CD89)である。多様な天然の抗体アイソタイプは、これらの受容体に結合する。例えば、IgGは、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIIIBに結合し;IgGは、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIAに結合し;IgGは、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIIIBに結合し;IgGは、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIAに結合し;IgAはFcαRIに結合する。
【0048】
好ましい態様では、本発明の抗SIRPα抗体は、IgAまたはIgGアイソタイプのFc領域を含む。IgG、IgG、IgGまたはIgGアイソタイプのFc領域を含む抗SIRPα抗体が、より好ましく;IgG、IgGまたはIgGアイソタイプが、さらにより好ましい。IgGアイソタイプのFc領域を含む抗SIRPα抗体が、最も好ましい。
【0049】
ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するFc領域を含む抗SIRPα抗体は、SIRPαを発現するがんの治療に適する可能性があるが、in vitroで、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む他の抗体(すなわち、ADCCおよび/またはADCPを誘導することが可能な抗体)と組み合わせて試験すると、キメラ抗SIRPα IgG抗体は、期待される結果を示さなかった。in vitroでのADCCアッセイの結果は、キメラIgG抗SIRPα抗体は、マウス抗体を使用した以前の結果に基づき期待されるほど、このような他の抗体のADCCを増大させないことを示した。
【0050】
したがって、本発明は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体への結合の低減、または当該受容体に対する低親和性を示す抗SIRPα抗体に関する。このような抗SIRPα抗体は、類似する非修飾のFc領域と比較して、1以上のアミノ酸が他のアミノ酸により置換された修飾Fc領域を含む。結合の低減とは、修飾Fc領域を含む抗SIRPα抗体の活性化Fc受容体に対する親和性が、類似する非修飾のFc領域を含む同じ可変領域を有する抗SIRPα抗体の親和性より小さいことを意味する。活性化Fc受容体に対する抗体の結合親和性は、一般に、当技術分野で公知の方法、例えば、Harrisonら、J. Pharm. Biomed. Anal. 2012, 63, 23-28に記載の表面プラズモン共鳴(SPR)、またはフローサイトメトリーを使用して測定される。治療用抗体と組み合わせたとき、ヒトFcαまたはヒトFcγ受容体への結合の低減、または当該受容体に対する低親和性を示す抗体は、免疫エフェクター細胞のADCCおよび/またはADCPの増大によるがん細胞の破壊において、とりわけ効果的である。典型的に、本発明の抗SIRPα抗体のFc領域は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体への結合を低減するために修飾される。
【0051】
したがって、本発明の抗SIRPα抗体は、ヒトFcαまたはヒトFcγ受容体への結合の低減、または当該受容体に対する低親和性を示す修飾Fc領域を含む。例えば、Fcγ受容体に対するIgGの結合は、L234、L235、G237、D265、D270、N297、A327、328およびP329(Euナンバリング)からなる群から選択される1以上のIgGアミノ酸を置換することにより、低減することができ;IgGの結合は、例えば、以下のアミノ酸置換、V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330SおよびP331S、または、H268Q、V309L、A330SおよびP331S(IgGのEuナンバリングと同様のナンバリング)(Vafaら、Methods, 2014, 65, 114-126)のうちの1以上を導入することにより、低減することができ;IgGの結合は、例えば、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換、または、L234A、L235AおよびP331Sのアミノ酸置換(Leohら、Mol. Immunol. 2015, 67, 407-415)を導入することにより、低減することができ;IgGの結合は、例えば、S228P、F234AおよびL235Aのアミノ酸置換((IgGのEuナンバリングと同様のナンバリング)(Parekhら、mAbs, 2012, 4(3), 310-318)を導入することにより、低減することができる。Fcα受容体に対するIgAの結合は、例えば、L257R、P440A、A442R、F443RおよびP440Rのうちの1以上のアミノ酸置換(逐次的ナンバリング;Pleassら、J. Biol. Chem. 1999, 271(33), 23508-23514)を導入することにより、低減することができる。
【0052】
好ましくは、本発明の抗SIRPα抗体は、ヒトFcγ受容体への結合の低減、または当該受容体に対する低親和性を示す修飾Fc領域を含む。より好ましくは、修飾Fc領域はIgGアイソタイプのFc領域である。さらにより好ましくは、修飾Fc領域は、IgG、IgGまたはIgGアイソタイプのFc領域である。
【0053】
好ましい態様では、本発明の抗SIRPα抗体は、L234、L235、G237、D265、D270、N297、A327、328およびP329(Euナンバリング)からなる群から選択される、1以上の位置における1以上のアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む。
【0054】
好ましくは、抗SIRPα抗体は、N297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない修飾Fc IgG領域を含む。より好ましくは、抗SIRPα抗体は、N297位におけるアミノ酸置換を含まない修飾Fc IgG領域を含む。
【0055】
一態様では、修飾ヒトIgG Fc領域は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、D270A、D270E、D270N、N297A、N297G、A327Q、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される、1以上のアミノ酸置換を含む。好ましくは、1以上のアミノ酸置換は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、N297A、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される。
【0056】
別の態様では、修飾ヒトIgG Fc領域は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、D270A、D270E、D270N、A327Q、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される、1以上のアミノ酸置換を含む。好ましくは、1以上のアミノ酸置換は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0057】
好ましい態様では、修飾ヒトIgG Fc領域は、L234AおよびL235A、L234EおよびL235A、L234A、L235AおよびP329A、またはL234A、L235AおよびP329Gのアミノ酸置換を含む。好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0058】
別の好ましい態様では、本発明に従う抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235A、またはL234EおよびL235Aのアミノ酸置換、好ましくは、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0059】
本発明は、さらに、上記抗SIRPα抗体および1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。抗体のような治療用タンパク質の典型的な医薬製剤は、静脈内注入の前に(水への)溶解(すなわち、再構成)が必要な凍結乾燥ケーキ(凍結乾燥粉末)、または使用の前に融解が必要な凍結(水)溶液の形態である。
【0060】
典型的に、医薬組成物は凍結乾燥ケーキの形態で提供される。本発明において、医薬組成物(凍結乾燥前)に配合するのに適した薬学的に許容される賦形剤には、緩衝液(例えば、水中に塩を含有する、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液またはコハク酸緩衝液)、凍結防止剤(例えば、スクロース、トレハロース)、等張性修飾剤(例えば、塩化ナトリウム)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)および増量剤(例えば、マンニトール、グリシン)が含まれる。凍結乾燥タンパク質製剤に使用される賦形剤は、凍結乾燥工程および保存時におけるタンパク質の変性を防止する能力で選ばれる。
【0061】
本発明は、さらに、医薬としての使用のための、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物に関する。
【0062】
第1の態様では、本発明は、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための上記抗SIRPα抗体または医薬組成物に関する。本発明の抗SIRPα抗体は、例えば、乳がん、腎臓がんまたは黒色腫のような固形腫瘍、、または、例えば、急性骨髄性白血病(AML)のような血液悪性腫瘍の治療において使用してもよい。
【0063】
第2の態様では、本発明は、SIRPα陽性ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するFc領域を含む抗SIRPα抗体に関する。好ましくは、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するFc領域は、IgAまたはIgGアイソタイプのFc領域である。IgG、IgG、IgGまたはIgGアイソタイプのFc領域を含む抗SIRPα抗体が、より好ましく;IgG、IgGまたはIgGアイソタイプが、さらにより好ましい。SIRPα陽性ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、IgGアイソタイプのFc領域を含む抗SIRPα抗体が、最も好ましい。
【0064】
第3の態様では、本発明は、1以上の他の抗がん治療の使用と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物に関する。適切な抗がん治療は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、ターゲティング療法および免疫療法である。上記抗SIRPα抗体または医薬組成物は、1以上の他の抗がん治療の使用と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における同時使用または逐次的使用であってもよい。特に、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物は、1以上の他の抗がん治療の使用の後の、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのものであってもよい。
【0065】
好ましくは、本発明は、1以上の他の抗がん治療剤の使用と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物に関する。特に、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物は、1以上の他の抗がん治療剤の使用の後の、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのものであってもよい。
【0066】
適切な抗がん治療剤は、化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン療法剤、ターゲティング療法剤および免疫療法剤を含む。適切な化学療法剤は、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジンおよびアジリジン;代謝拮抗剤、例えば、抗葉酸剤、フルオロピリミジン、デオキシヌクレオシド類似体およびチオプリン;抗微小管剤、例えば、ビンカアルカロイドおよびタキサン;トポイソメラーゼIおよびII阻害剤;ならびに細胞傷害性抗生剤、例えば、アントラサイクリンおよびブレオマイシンを含む。
【0067】
適切な放射線療法剤は、放射性同位元素、例えば、131Iメタヨードベンジルグアニジン(MIBG)、リン酸ナトリウムとしての32P、223Ra塩化物、89Sr塩化物および153Smジアミンテトラメチレンホスホネート(EDTMP)を含む。
【0068】
ホルモン療法剤として使用されるのに適する薬剤は、ホルモン合成の阻害剤、例えば、アロマターゼ阻害剤およびGnRH類似体;ならびにホルモン受容体アンタゴニスト、例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよび抗アンドロゲンを含む。
【0069】
ターゲティング療法剤とは、腫瘍形成および増殖に関与する特定のタンパク質を妨害する治療剤であり、低分子薬;タンパク質、例えば、治療用抗体;ペプチドおよびペプチド誘導体;またはタンパク質-低分子ハイブリッド体、例えば、抗体-薬物コンジュゲートであってもよい。ターゲティングされた低分子薬物の例は、mTor阻害剤、例えば、エベロリムス、テムシロリムスおよびラパマイシン;キナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブ、ダサチニブおよびニロチニブ;VEGF阻害剤、例えば、ソラフェニブおよびレゴラフェニブ;ならびにEGFR/HER2阻害剤例えば、ゲフィチニブ、ラパチニブおよびエルロチニブを含む。ペプチドまたはペプチド誘導体であるターゲティング療法剤の例は、プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブおよびカルフィルゾミブを含む。
【0070】
免疫療法剤は、免疫応答を誘導するか、増強するか、または抑制する薬剤、例えば、サイトカイン(IL-2およびIFN-α);免疫調節性イミド薬、例えば、サリドマイド、レナリドマイドおよびポマリドマイド;治療用がんワクチン、例えば、タリモジェン ラヘルパレプベク;細胞ベースの免疫療法剤、例えば、樹状細胞ワクチン、養子T細胞およびキメラ抗原受容体改変T細胞;および、がん細胞上の膜結合型リガンドに結合した場合にFc領域を介してADCC/ADCPまたはCDCを誘発しうる治療用抗体を含む。
【0071】
好ましくは、本発明は、1以上の他の抗がん治療剤と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、上記抗SIRPα抗体または医薬組成物に関し、ここで、抗がん治療剤はターゲティング療法剤または免疫療法剤である。本発明の好ましいターゲティング療法剤は、治療用抗体または抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。最も好ましいターゲティング療法剤は治療用抗体である。
【0072】
本明細書を通して使用される「治療用抗体」という用語は、ヒト治療に適する上記抗体またはその抗原結合性断片を指す。ヒト治療に適する抗体は、特定のヒト疾患の治療において、十分な品質を有し、安全かつ有効である。品質は、GMPの確立されたガイドラインを使用して評価でき;安全性および有効性は、一般に、医薬品規制当局、例えば、欧州医薬品庁(EMA)または米国食品医薬品局(FDA)による確立されたガイドラインを使用して評価される。これらのガイドラインは当技術分野で周知である。
【0073】
好ましくは、治療用抗体は、医薬品規制当局、例えば、EMAまたはFDAにより承認された抗体である。大半の規制当局のオンラインデータベースが、抗体が承認されているのかどうかを調査するために利用できる。
【0074】
本明細書を通して使用される「ADC」という用語は、リンカーを介して上記抗体またはその抗原結合性断片とコンジュゲートさせた細胞傷害性薬を指す。典型的に、細胞傷害性薬、例えば、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、メイタンシノイド、またはアウリスタチン誘導体は、高度に強力である。リンカーは、切断可能リンカー、例えば、バリン-シトルリン(vc)またはバリン-アラニン(va)を含む切断可能ジペプチドであってもよく、または、非切断可能リンカー、例えば、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)であってもよい。
【0075】
典型的に、本発明の抗SIRPα抗体と組み合わせて使用するための治療用抗体は、アネキシンA1、B7H3、B7H4、CA6、CA9、CA15-3、CA19-9、CA27-29、CA125、CA242、CCR2、CCR5、CD2、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD56、CD70、CD74、CD79、CD115、CD123、CD138、CD203c、CD303、CD333、CEA、CEACAM、CLCA-1、CLL-1、c-MET、Cripto、CTLA-4、DLL3、EGFL、EGFR、EPCAM、EPh(例えば、EphA2またはEPhB3)、エンドセリンB受容体(ETBR)、FAP、FcRL5(CD307)、FGF、FGFR(例えば、FGFR3)、FOLR1、GCC、GPNMB、HER2、HMW-MAA、インテグリンα(例えば、αvβ3およびαvβ5)、IGF1R、TM4SF1(またはL6抗原)、ルイスA様炭水化物、ルイスX、ルイスY、LIV1、メソテリン、MUC1、MUC16、NaPi2b、ネクチン4、PD-1、PD-L1、PSMA、PTK7、SLC44A4、STEAP-1、5T4抗原(またはTPBG、栄養膜糖タンパク質(trophoblast glycoprotein))、TF(組織因子)、トムセン-フリーデンライヒ抗原(TF-Ag)、Tag72、TNF、TNFR、TROP2、VEGF、VEGFRおよびVLAからなる群から選択される標的に結合する少なくとも1つのHCVRおよびLCVRを含む、単一特異性または二重特異性抗体または抗体断片である。
【0076】
単一特異性治療用抗体が好ましい。腫瘍細胞表面上の膜結合標的に対する抗体がより好ましい。
【0077】
本発明の抗SIRPα抗体と組み合わせた使用に適する治療用抗体は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブおよびトラスツズマブを含む。
【0078】
本発明の抗SIRPα抗体と組み合わせた使用に適するADCは、トラスツズマブエムタンシンおよびブレンツキシマブベドチンを含む。
【0079】
好ましい態様では、本発明は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む腫瘍細胞の表面上の膜結合標的に対する治療用抗体と組み合わせた、前述の使用のための上記抗SIRPα抗体に関する。
【0080】
上述のとおり、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む治療用抗体は、これらの活性化Fc受容体への結合を介して、ADCCおよび/またはADCPを誘導することができる。ヒトIgG、IgEまたはIgAアイソタイプの治療用抗体は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む。
【0081】
本発明の使用に好ましい治療用抗体は、IgGまたはIgAアイソタイプの治療用抗体である。IgGアイソタイプ、例えば、IgG、IgG、IgGおよびIgG抗体の治療用抗体が、より好ましい。IgGまたはIgGアイソタイプの治療用抗体が、さらにより好ましい。IgGアイソタイプの治療用抗体が最も好ましい。
【0082】
好ましくは、本発明は、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む、腫瘍細胞の表面上の膜結合標的に対する治療用抗体の使用と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、
a.配列番号1のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号2のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
e.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
f.配列番号11のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
g.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
h.配列番号15のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号16のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
i.配列番号17のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号18のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含むヒト化抗SIRPα抗体に関し、ここで、当該抗SIRPα抗体は、野生型Fc領域を含む抗SIRPα抗体と比較した場合に、ヒトFcαまたはFcγ受容体への結合の低減を示す修飾Fc領域を含む。
【0083】
好ましい態様では、治療用抗体と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234、L235、G237、D265、D270、N297、A327、328およびP329(Euナンバリング)からなる群から選択される、1以上の位置における、1以上のアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む。
【0084】
好ましくは、治療用抗体と組み合わせたヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、N297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない修飾Fc IgG領域を含む。より好ましくは、抗SIRPα抗体は、N297位におけるアミノ酸置換を含まない修飾Fc IgG領域を含む。
【0085】
一態様では、修飾ヒトIgG Fc領域は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、D270A、D270E、D270N、N297A、N297G、A327Q、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される、1以上のアミノ酸置換を含む。
【0086】
別の態様では、治療用抗体と組み合わせたヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、D270A、D270E、D270N、A327Q、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される、1以上のアミノ酸置換を含む修飾Fc IgG領域を含む。好ましくは、1以上のアミノ酸置換は、L234A、L234E、L235A、G237A、D265A、D265E、D265N、328A、P329AおよびP329Gからなる群から選択される。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0087】
好ましい態様では、修飾ヒトIgG Fc領域は、アミノ酸置換であるL234AおよびL235A、L234EおよびL235A、L234A、L235AおよびP329A、またはL234A、L235AおよびP329Gを含む。好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0088】
別の好ましい態様では、治療用抗体と組み合わせたヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235A、またはL234EおよびL235Aのアミノ酸置換、好ましくは、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0089】
好ましい態様では、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む、腫瘍細胞の表面上の膜結合標的に対する治療用抗体の使用と組み合わせた、ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、
a.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
e.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含む。
【0090】
第2の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、
a.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
c.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含む。
【0091】
第3の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、
a.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
b.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含む。
【0092】
第4の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、
a.配列番号30のHCVRアミノ酸配列および配列番号31のLCVRアミノ酸配列;
b.配列番号32のHCVRアミノ酸配列および配列番号33のLCVRアミノ酸配列;
c.配列番号34のHCVRアミノ酸配列および配列番号8のLCVRアミノ酸配列;
d.配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号36のLCVRアミノ酸配列;
e.配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列;
f.配列番号13のHCVRアミノ酸配列、および配列番号38のLCVRアミノ酸配列;または
g.配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0093】
好ましい一態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号30のHCVRアミノ酸配列および配列番号31のLCVRアミノ酸配列とを含む。より好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0094】
別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号32のHCVRアミノ酸配列および配列番号33のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0095】
さらに別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号34のHCVRアミノ酸配列および配列番号8のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0096】
さらに別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号36のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0097】
さらに別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0098】
さらに別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号38のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0099】
さらに別の好ましい態様では、上記使用のためのヒト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域と、配列番号13のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列とを含む。
【0100】
より好ましくは、上記使用のための上記ト化抗SIRPα抗体は、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むFc領域を含み、修飾Fc IgG領域はN297AまたはN297Gのいずれかのアミノ酸置換を含まない。さらにより好ましくは、修飾Fc IgG領域はN297位におけるアミノ酸置換を含まない。
【0101】
野生型Fc領域を含む抗SIRPα抗体と比較した場合にヒトFcαまたはFcγ受容体への結合の低減を示す、上記修飾Fc領域を含む抗SIRPα抗体は、SIRPαBITまたはSIRPαとホモ接合性の異なるドナーに由来するエフェクター細胞としての好中球を使用する、治療用抗体のin vitroにおけるADCCを増強する。これらの抗体の全ては、大半のドナーの好中球を使用するin vitroにおけるADCCを増大させ、好ましい抗体は、全てのドナーの好中球を使用するin vitroにおけるADCCであってもなお、増大させる。
【0102】
[実施例]
免疫化プロトコールおよび選択
ウサギを、ヒト(hu)SIRPαBIT、ヒト(hu)SIRPαおよびカニクイザル(cy)SIRPαの細胞外ドメイン領域を表すペプチドの混合物で、繰り返し免疫した。異なる時点で採血し、リンパ球を濃縮した。一つのB細胞を、マイクロプレートの一つのウェルに加えた。これらのB細胞を、順化培地およびフィーダー細胞の存在下で、数日間培養した。この期間中、B細胞はモノクローナル抗体を産生し、培養培地(B細胞上清)へと放出した。これらの各B細胞上清をIgGの産生について解析し;その後、huSIRPαBITおよびhuSIRPα、cySIRPα、ならびに抗Fc抗体への特異的結合を決定した。適切な上清は、huSIRPαBITとhuSIRPαの両者、ならびにcySIRPαに結合する上清であった。ヒットピッキング工程の後、マウス(mu)SIRPαへの結合、ならびにhuSIRPβ1v1、huSIRPβ1v2およびhuSIRPγ(アンチターゲットとしての)への結合を測定した。加えて、SIRPαBITおよびSIRPαを過剰発現するCHO細胞への結合を決定した。親CHO細胞への結合を対照アッセイとして用いた。
【0103】
RNAの単離、逆転写およびシーケンシングに適するB細胞溶解物を選択した。抗体の軽鎖および重鎖の可変領域を遺伝子合成し、それぞれ、抗体の定常領域配列(配列番号26のκLCおよび配列番号27のヒトIgGHC-LALA形態)の直前にクローニングした。
【0104】
Tecan Freedom Evoプラットフォーム上の自動式手順を使用して、プラスミドに含まれる抗体配列をHEK293細胞に一過性にトランスフェクトした。プレート用オートサンプラーを有するDionex Ultimate 3000 HPLCシステムのアフィニティー精製(プロテインA)を使用して、免疫グロブリンを細胞上清から精製した。産生された抗体を、ELISAアッセイ(ELISA:huSIRPα、huSIRPαBIT、cySIRPα、muSIRPα、huSIRPβ1v1/β1v2/γ;細胞結合アッセイ:huSIRPα、huSIRPαBIT)により調べた。
【0105】
抗体の一過性発現
a)cDNA構築物および発現ベクターの調製
抗体のHCVRアミノ酸配列の各々を、N末端において、リーダー配列(抗体1~9、15、16について、配列番号28;抗体10~14について、配列番号39)へと接続し、C末端において、配列番号27のヒトIgG HC LALAの定常ドメインへと接続した。抗体12C4huIgGLALA、12C4huIgGまたは29AM4-5huIgGLALAのHCVRアミノ酸配列の各々を、N末端において、HAVT20リーダー配列(配列番号29)へと接続し、C末端において、配列番号27のヒトIgG HC LALAの定常ドメイン、または野生型ヒトIgG HC(配列番号25)へと接続した。結果として得られるキメラアミノ酸配列を、ヒト細胞(Homo sapiens)での発現にコドン最適化したcDNA配列へと、逆翻訳した。同様に、構築物のLCのためのキメラcDNA配列は、リーダー配列(抗体1~9、12について、配列番号28;抗体10、11、13~16について、配列番号40;12C4huIgGLALA、12C4huIgGおよび29AM4-5huIgGLALAについて、配列番号29)の配列を、N末端において、抗体1~16、12C4huIgGLALA、12C4huIgG、および29AM4-5huIgGLALAのLCVRへと接続し、C末端において、ヒトIgGκ軽鎖定常領域(配列番号26)へと接続することにより得た。表1に示したHCVRおよびLCVR配列を使用した。
【0106】
【表1】
【0107】
b)ベクターの構築およびクローニング戦略
抗体鎖の発現のために、CMV:BGHpA発現カセットを含有する哺乳動物の発現ベクターを使用した。HCまたはLC発現カセット(それぞれ、CMV:HC:BGHpAおよびCMV:LC-BGHpA)のいずれかを含有する最終ベクターを大腸菌NEB5α細胞へと導入し、この中で増やした。MaxiまたはMegaprepキット(Qiagen)を使用して、トランスフェクション用最終発現ベクターの大規模製造を行った。
【0108】
c)哺乳動物細胞内での一過性発現
以下の製造元の指示に従い、ExpiFectamineトランスフェクション試薬を使用して、市販のExpi293F細胞(Thermo Fisher)に発現ベクターをトランスフェクトした:細胞75×10個を300mLのFortiCHO培地中に播種し、300μgの発現ベクターを800μlのExpiFectamineトランスフェクション試薬と混合し、細胞へと添加した。トランスフェクションの1日後、1.5mlのエンハンサー1および15mlのエンハンサー2を培養物へと添加した。トランスフェクションの6日後、4,000g、15分間の遠心分離により細胞培養物上清を採取し、清澄化した採取物を、PESボトルフィルター/MF 75フィルター(Nalgene)により濾過した。
【0109】
抗体の結合および特異性
実験内容
ELISAアッセイ: ELISAのために、huSIRPα、huSIRPαBIT、huSIRPβ1v1、huSIRPβ1v2、huSIRPγおよびcySIRPαのリン酸緩衝塩類溶液(PBS)の各々を、マルチプルウェル黒色ポリスチレンプレートへと添加し、室温で、1時間かけて吸着させた。結合しなかったタンパク質は、標準的な洗浄緩衝液を使用して、3回の洗浄工程により除去した。その後、ブロッキング緩衝液をウェルへと添加した。室温で1時間インキュベーションした後、ウェルを標準的な洗浄緩衝液で3回洗浄した。様々な濃度の抗体を含む緩衝液をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。結合しなかった抗体は、標準的な洗浄緩衝液を使用して3回の洗浄工程により除去した。ヤギ抗ヒトIgG(Fab’):西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)緩衝液をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、十分な発色の後HClを添加した。450nm/620nmにおける吸光度を測定した。
【0110】
表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ: 親和性解析は、表面プラズモン共鳴装置(Biacore T200システム、GE Life Sciences)を用い、25℃における単一サイクルの反応速度解析により実施した。10μl/分で、60秒間、ストレプトアビジンコンジュゲート(20倍に希釈されたビオチン捕捉試薬、GE Life Sciences)を注入した後、ランニング緩衝液(150mMのNaCl、3mMのEDTAおよび0.005% v/vのポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Surfactant P20)を含む、pH7.4の10mM HEPES緩衝液)に、5μg/mlのSIRP抗原を、10μL/分で、60秒間注入することにより、ビオチン化分子用チップ(Sensor Chip CAP、GE Life Sciences)の表面にビオチン化SIRP抗原を捕捉した。1分後にベースラインの安定化を施し、この後、ランニング緩衝液(150mMのNaCl、3mMのEDTAおよび0.005% v/vのポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含む、pH7.4の10mM HEPES緩衝液)中の濃度を5段階で増大させた抗SIRP抗体を注入した。各工程について150秒間の会合時間を使用したが、最高濃度に限り1200秒間の解離時間を続け、全ての工程は30μL/分の流量で行った。再生は、6Mのグアニジン-HCl、0.25MのNaOH溶液(30μL/分の流量で60秒間)により実施した。抗SIRP(ブランク)を固定化しない基準フローチャネル、およびランニング緩衝液の注入を使用して、観察されたセンサーグラムに対して二重のブランク減算を実施した。全ての被験抗SIRP抗体について、1:1のラングミュアモデルにより、センサーグラムを当てはめた。Biacore T200評価ソフトウェア(v3.1)を使用して反応速度パラメータ(k、kおよびK)を計算した。
【0111】
フローサイトメトリー: ヒトSIRPαBIT抗原を内因的に発現するU937細胞、およびヒトSIRPα、SIRPαBITまたはcySIRPα抗原を発現するCHO-Sチャイニーズハムスター卵巣細胞(ExpiCHO-S)から、スクリーニングおよび単離された、非操作サブクローンに由来する細胞(96ウェルプレート内のウェル1つ当たりの細胞100,000個)を、氷冷FACS緩衝液(0.2% v/wのBSA(Sigma-Aldrich、St. Louis, MO)および0.02% v/wのNaN(Sigma-Aldrich)を含有する、1倍濃度のPBS(LONZA))で3回洗浄し、続いて、氷冷FACS緩衝液中に希釈した様々な濃度範囲の各一次mAbを(ウェル1つ当たり50μLずつ)添加した。4℃で30分間のインキュベーションの後、氷冷FACS緩衝液で細胞を3回洗浄し、ウェル1つ当たり50μLの二次mAb(希釈率を1:6,000とする、ヤギ抗ヒトIgG-APC、アフィニティー精製F(ab’)断片、Jackson Immuno Research)を添加した。4℃で30分間後、細胞を2回洗浄し、150μLのFACS緩衝液中に再懸濁させた。蛍光強度をフローサイトメトリー(BD FACSVerse、Franklin Lakes, NJ)で決定し、U937細胞およびExpiCHO-S細胞について、蛍光強度中央値(MFI-Median)として表示した。曲線は、GraphPad Prism(version 7.02 for Windows(登録商標), GraphPad, San Diego, CA)において、傾きが変動可能なS字型用量反応式(4パラメータ)を使用する、非線形回帰により当てはめた。EC50値は、4パラメータのロジスティックフィットを使用し、曲線の上部と下部との中間の応答を示すμg/mLによる濃度として計算した。
【0112】
結果
ELISAアッセイ: 抗体1~9および基準抗体の、ELISAにより得られた、huSIRPα、huSIRPαBIT、huSIRPβ、huSIRPβ1v2、huSIRPγ、cySIRPαへの結合についてのEC50値を、表2にまとめる。全ての抗体は、huSIRPαおよびhuSIRPαBITに結合する。抗体29AM4-5huIgGLALAおよび12C4huIgGLALAは、huSIRPβ1v1、huSIRPβ1v2およびhuSIRPγに結合する。抗体2~6、8および9は、huSIRPβ1v1およびhuSIRPγに対する低親和性を示す。抗体7は、huSIRPβ1v1に結合するが、huSIRPβ1v2およびhuSIRPγに対する親和性は小さい。抗体1は、huSIRPβ1v2およびhuSIRPγに結合する。
【0113】
【表2】
【0114】
SPRアッセイ: 基準抗体であるKWAR23、huIgG12C4LALAおよびSE5A5(製造業者から購入)と比較した、抗体4、7、10~14の、huSIRPα、huSIRPαBITおよびhuSIRPγへの結合についてのK値を、表3にまとめる。抗体4、7、10~14は、huSIRPαとhuSIRPαBITの両者に結合し、huSIRPγに結合しない。全ての基準抗体はhuSIRPγに結合する。
【0115】
【表3】
【0116】
フローサイトメトリーアッセイ: 多様な抗体の、細胞上に発現したhuSIRPα、huSIRPαBITおよび/またはcySIRPαへの結合を、フローサイトメトリーにより測定した。結合をEC50値で表示し、これを表4に示す。抗体2、4、5、7、8、10~14は、huSIRPα、huSIRPαBITおよびcySIRPαに結合する。抗体2、4、5、7、8、10~14は、低μg/mL範囲でcySIRPαに結合する。
【0117】
【表4】
【0118】
抗体によるCD47-SIRPα結合の遮断
実験
SIRPαもしくはSIRPαBITのいずれかをトランスフェクトしたCHO細胞、または対照としての親CHO細胞を、底部が透明なウェルプレート内の20μl細胞培地中に播種し、一晩インキュベートした。抗体1~9、29AM4-5huIgGLALA、または12C4huIgGLALA基準抗体を、Hisタグ(登録商標)CD47と抗Hisタグ(登録商標)蛍光検出抗体の混合物と併せでウェルに添加し、2時間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を細胞洗浄緩衝液で洗浄した。蛍光はスクリーニングシステム(CellInsight(登録商標)、ThermoScientific(登録商標))を使用して測定し、細胞1個当たりの全蛍光を決定した。
【0119】
結果
抗体29AM4-5huIgGLALA、12C4huIgGLALA、3および7は、CD47の、huSIRPαを発現するCHO細胞およびhuSIRPαBITを発現するCHO細胞の両者への結合を、完全に遮断し、抗体1、2、4~6、8および9は、CD47の、huSIRPαを発現するCHO細胞への結合も、huSIRPαBITを発現するCHO細胞への結合も遮断しない。
【0120】
ADCCアッセイ
SIRPαまたはSIRPαBITのいずれかについてホモ接合性であるドナーの好中球を単離し、Chaoら、PNAS, 2011, 108(45), 18342-18347に示された方法に従い培養した。ADCCは、51Cr放出アッセイまたは非放射性ユーロピウムTDA(EuTDA)細胞傷害作用アッセイ(DELFIA、PerkinElmer)を使用して測定した。SKBR3細胞を標的細胞として使用し、100μCiの51Cr(Perkin-Elmer)により、37℃で90分間、または、ビス(アセトキシメチル)2,2':6',2''-テルピリジン-6,6''-ジカルボキシレート)(Delfia BATDA試薬)により、37℃で5分間、標識化した。PBSによる2回の洗浄の後、1ウェル当たり5×10個の標的細胞を、適切な抗体の存在下、エフェクター対標的細胞比を50:1とする好中球と共に、96ウェルのU字底のプレート内の10%(v/v)のウシ胎仔血清(FCS)を補充したIMDM培養培地中で、37℃、5%COの下、4時間インキュベートした。インキュベーションの後上清を採取し、ガンマカウンター(Wallac)で放射能について解析するか、またはユーロピウム溶液(DELFIA、PerkinElmer)を添加し、分光光度計(Envision、PerkinElmer)を使用してユーロピウム2,2':6',2''-テルピリジン-6,6''-ジカルボン酸(EuTDA)の蛍光を測定した。細胞傷害作用の百分率は、[(被験放出-自然放出)/(総放出-自然放出)]×100%として計算した。全ての測定は、二回および/または三回行った。
【0121】
12C4IgGに対する12C4huIgGLALAのADCCデータ
図1に、ADCCアッセイの結果を%による細胞傷害作用として示す。エフェクター細胞としての好中球とトラスツズマブのみを使用し、SKBR3細胞を用いて測定された細胞傷害作用%は、マウス12C4抗体(mu12C4)と組み合わせたトラスツズマブの細胞傷害作用%より小さい。12C4の可変領域をヒトIgG定常領域とグラフトした抗体(12C4huIgG)と組み合わせたトラスツズマブは、12C4huIgGが低濃度の場合、トラスツズマブ単独の場合と同様な細胞傷害作用%を示す。12C4huIgGが高濃度では、細胞傷害作用%の減少が観察される。12C4の可変領域を、アミノ酸置換であるL234AおよびL235Aを含むヒトIgG定常領域とグラフトした抗体(12C4huIgGLALA)と組み合わせたトラスツズマブは、トラスツズマブ単独の細胞傷害作用%と比較して細胞傷害作用%の増大を示し、そして、12C4huIgGとトラスツズマブとの組合せと比較して、細胞傷害作用%の増大を示す。
【0122】
ADCCデータ
図2は、トラスツズマブと組み合わせた、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換(LALA)を含むヒトIgG1定常領域を有する抗体1~9の存在下における、トラスツズマブ単独(100%とした)と比べた、ヒト好中球によるADCC%を、12C4huIgGLALAと比較する。マウス抗CD47抗体のVRおよびL234AおよびL235Aのアミノ酸置換を含むヒトIgG定常領域を有するB6H12IgGLALA、ならびに媒体(トラスツズマブを伴わない)を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。黒四角はSIRPαBIT変異体(SIRPαBITについてホモ接合性)を有するドナーの好中球の実測値であり、白丸はSIRPα変異体(SIRPαについてホモ接合性)を有するドナーの好中球の実測値である。全ての抗体について、平均ADCCはトラスツズマブ単独と比較して増大した。抗体1、2、4、5、7および8について、平均ADCCの増大は、12C4huIgGLALAに誘導されるADCCの増大よりさらに増強された。抗体ごと、ドナーごとのADCCの増大を比較したところ、抗体1、3~6、8および9は、12C4huIgGLALAより小さなADCCの増大%の変動を示す。
【0123】
図3は、トラスツズマブと組み合わせた、L234AおよびL235Aのアミノ酸置換(LALA)を含むヒトIgG定常領域を有する様々な濃度のキメラ抗体4および7、ならびにヒト化抗体10および14の存在下における、ヒト好中球によるADCC%を、トラスツズマブ単独、および様々な濃度の12C4huIgGLALAと組み合わせたトラスツズマブと比較する。SIRPαBITについてホモ接合性のドナー2例の好中球を使用した。低濃度であってもなお、抗体4、7、10および14は、ADCCを増大させた。ADCCの増大は濃度依存的である。
【0124】
図4は、トラスツズマブ(Tmab)と組み合わせた、抗体4、7、10、13、14、15および16の存在下における、ヒト好中球によるADCC%を、トラスツズマブ単独、および12C4huIgGLALAの存在下におけるADCC%と比較する。トラスツズマブ単独と比較して、全ての抗体でADCCが増大した。トラスツズマブと組み合わせた抗体4、7、10、13、14、15および16の存在下における大半のドナーの好中球によるADCCの増大は、トラスツズマブと組み合わせた12C4huIgGLALAと比較して同等以上である。
【0125】
重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域(VR)のアミノ酸配列内の、CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列に下線を付した配列表(カバットによる方法を使用して決定された)
【0126】
【化1-1】
【0127】
【化1-2】
【0128】
【化1-3】
【0129】
【化1-4】
【0130】
【化1-5】
【0131】
【化1-6】
【0132】
【化1-7】
【0133】
【化1-8】
【0134】
【化1-9】
以下に、本願の出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] a.配列番号3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
b.配列番号5のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号6のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
c.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
d.配列番号9のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号10のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
e.配列番号11のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号12のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
f.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;
g.配列番号15のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号16のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
h.配列番号17のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号18のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、重鎖(HC)および軽鎖(LC)可変領域(VR)の相補性決定領域(CDR)を含み;
前記CDRはカバットによるナンバリングに従い決定される、
抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片。
[2] 前記抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、[1]に記載の抗体。
[3] a.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列;ならびに
b.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、HCVRおよびLCVRのCDRを含み;
前記抗体が、ヒト化抗体である、
[2]に記載の抗体。
[4] a.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号30のHCVRアミノ酸配列、ならびに配列番号31のLCVRアミノ酸配列;
b.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号32のHCVRアミノ酸配列、ならびに配列番号33のLCVRアミノ酸配列;
c.配列番号7のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号8のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号34のHCVRアミノ酸配列、ならびに配列番号8のLCVRアミノ酸配列;
d.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号35のHCVRアミノ酸配列、ならびに配列番号36のLCVRアミノ酸配列;
e.配列番号13のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号35のHCVRアミノ酸配列および配列番号37のLCVRアミノ酸配列;
f.配列番号13のHCVRアミノ酸配列、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号38のLCVRアミノ酸配列;または
g.配列番号13のHCVRアミノ酸配列、配列番号14のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに配列番号37のLCVRアミノ酸配列
を含む、[3]に記載のヒト化抗体。
[5] 野生型Fc領域を含む抗SIRPα抗体と比較して、ヒトFcαまたはFcγ受容体への結合の低減を示す修飾Fc領域を含む、[1]から[4]のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体。
[6] Euナンバリングで、L234、L235、G237、D265、D270、N297、A327、P328およびP329からなる群から選択される1以上の位置における、1以上のアミノ酸置換を含む修飾ヒトIgG Fc領域を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体。
[7] アミノ酸置換がL234AおよびL235A、L234EおよびL235A、L234A、L235AおよびP329A、またはL234A、L235AおよびP329Gを含む、[6]に記載の抗SIRPα抗体。
[8] アミノ酸置換がL234AおよびL235A、またはL234EおよびL235Aを含む、[7]に記載の抗SIRPα抗体。
[9] [1]から[8]のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体および1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
[10] 医薬としての使用するための、[1]から[8]のいずれか一項に記載の抗SIRPα抗体、または[9]に記載の医薬組成物。
[11] ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、抗SIRPα抗体または[9]に記載の使用のための医薬組成物。
[12] ヒト固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療における使用のための、抗SIRPα抗体または[10]に記載の使用のための医薬組成物と、1以上の他の抗がん治療剤との組合せ。
[13] 前記1以上の抗がん治療剤が、ターゲティング療法剤または免疫療法剤である、[12]に記載の使用のための組合せ。
[14] 前記ターゲティング療法剤が、治療用抗体または抗体-薬物コンジュゲートである、[12]に記載の使用のための組合せ。
[15] 前記治療用抗体が、ヒト免疫エフェクター細胞上に存在する活性化Fc受容体に結合するヒトFc領域を含む、腫瘍細胞表面の膜結合標的に対する治療用抗体である、[14]に記載の使用のための組合せ。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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