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特許7171620加圧される伸縮式フロントフォークレッグ、フロントフォーク、および乗物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】加圧される伸縮式フロントフォークレッグ、フロントフォーク、および乗物
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20221108BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F16F9/32 P
B62K25/08 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019566138
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064518
(87)【国際公開番号】W WO2018220202
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】17173880.0
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509343149
【氏名又は名称】オーリンス・レイシング・エービー
【氏名又は名称原語表記】OEHLINS RACING AB
【住所又は居所原語表記】Box 722, 194 27 Upplands Vaesby, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ワレン、マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルソン、エドビン
(72)【発明者】
【氏名】スンデバル、ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】リッチローウ、エリアス
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021505(JP,A)
【文献】特開2011-117533(JP,A)
【文献】特開平06-270875(JP,A)
【文献】特開2007-132511(JP,A)
【文献】特開2005-054863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
B62K 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮式フォークレッグ(100a、100b)を備える乗物用のフロントフォーク(10)であって、前記伸縮式フォークレッグ(100a、100b)は、
- 互いに対して伸縮するように構成された外側管(101)および内側管(102)と、
- 使用時に、前記乗物の2つの部品の間の動きを減衰させるために減衰流体を調節するように構成された、前記内側管(102)内に配置された主ピストン機構(120)とを備え、
前記伸縮式フォークレッグ(100a、100b)は、
- 前記内側管(102)内に配置され、前記減衰流体を加圧するように構成された加圧ピストン(130)と、前記加圧ピストン(130)は、前記主ピストン機構(120)に面する軸方向の第1の端部分(131)を備え、また加圧容積に面する軸方向に反対側の第2の端部分(132)をさらに備える、
- 加圧された流体を保持するための流体貯蔵器(150)と、前記流体貯蔵器は、前記加圧容積に流体結合される、
をさらに備え、
前記加圧ピストンは、前記内側管(102)の内部で、前記主ピストン機構と同軸に配置され、また前記流体貯蔵器(150)は、フォークレッグの底部本体(160)内に配置される
ことを特徴とする、フロントフォーク(10)。
【請求項2】
前記加圧ピストン(130)は、前記減衰流体に対して封止するように構成された第1の封止手段(133)と、前記加圧された流体に対して封止するように構成された第2の封止手段(134)とを備え、前記第1の封止手段および前記第2の封止手段は、前記加圧ピストン(130)の軸方向延長部に沿って軸方向にずれている、請求項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項3】
前記減衰流体は、減衰オイルなどの液体であり、また前記加圧された流体は、空気、窒素、COなどの気体である、請求項1または2に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項4】
前記内側管(102)の内部に配置されたシリンダケース(103)をさらに備え、前記加圧ピストン(130)は、前記シリンダケース(103)の内部に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項5】
前記減衰流体と周囲容積(170)の間に流体結合をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項6】
前記減衰流体と周囲容積の間の前記流体結合は、前記第1の封止手段(133)と前記第2の封止手段(134)の間に軸方向に位置する、前記シリンダケース(103)における開口部(104)により可能になる、請求項を引用する請求項を引用する請求項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項7】
前記加圧ピストン(130)の前記第1の封止(133)は、前記減衰流体と周囲容積の間の前記流体結合が、前記加圧ピストンが所定の軸方向位置にあるときに限って開放されるように、前記シリンダケース(103)における前記開口部(104)と相互作用するように構成される、請求項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項8】
前記主ピストン(120)と前記加圧ピストン(130)の間に配置され、前記加圧ピストン(130)の軸方向の動きを制限するように構成された中間の制限手段(140)をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項9】
前記制限手段(140)は、高いストローク速度において流体流れを制限するようにさらに構成される、請求項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項10】
前記伸縮式フォークレッグは、主として、圧縮ストロークまたはリバウンドストロークのそれぞれにおける動きを減衰させるように構成された圧縮レッグおよびリバウンドレッグのうちの一方である、請求項1からのいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項11】
前記主ピストン機構(120)は、減衰媒体の流れを制御するための電気的に制御される弁を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項12】
2本の伸縮式フォークレッグ(100a、100b)を備える、請求項1から11のいずれかに記載のフロントフォーク(10)。
【請求項13】
前記2本の伸縮式フォークレッグのうちの一方(100a)は、主として、圧縮ストロークにおける動きを減衰させるように構成された圧縮レッグであり、前記2本の伸縮式フォークレッグのうちの他方のもの(100b)は、主として、リバウンドストロークにおける動きを減衰させるように構成されたリバウンドレッグである、請求項12に記載のフロントフォーク(10)。
【請求項14】
乗物の車輪と乗物のシャーシの間の動きを減衰させるための、請求項1から13のいずれかに記載の伸縮式フロントフォークを備えることを特徴とする乗物(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、乗物用のフロントフォークの分野に関し、詳細には、加圧されるフロントフォークレッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車、自動二輪車、または自転車などの乗物の車輪とシャーシの間の相対的な動きを減衰させるために、緩衝器および減衰システムが使用される。従来の緩衝器は、通常、油圧オイル、または気体などの減衰流体で満たされた動作シリンダと、シリンダ内で移動可能に構成されたピストンロッド上に配置されたピストンとを備える。ピストンは、通常、シリンダを、第1および第2の動作チャンバへと分割するようにさらに構成され、流体の抵抗に抗してシリンダ内を移動し、次いで、減衰流体を減衰シリンダ内で移動させる。緩衝器、または減衰器は、乗物が走行するとき、伸縮して動くように乗物のシャーシと車輪の間に配置することができ、したがって、車輪および乗物の動きは、ピストンが流体の抵抗に抗してシリンダ内を移動することにより減衰される。自動二輪車、自転車、またはマウンテンバイクの特定の場合には、緩衝器は、フロントフォーク機構に、および/または乗り手と、自動二輪車もしくは自転車の後方部分との間に配置され得るが、いずれの場合も、乗り手に対する衝撃および振動を減衰させる。
【0003】
さらに、フロントフォークにおける緩衝器の減衰動力性能を向上させるために、減衰流体は、圧縮圧力で加圧され得る。しかし、加圧されるフロントフォークは、寸法を増加させる傾向があり、また多少高価になる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、向上させたフロントフォーク緩衝器システムを提供することは望ましいはずである。本発明は、フロントフォークの加圧機能が、前記減衰レッグの外側に配置された、加圧された流体を保持するための流体貯蔵器と流体接続された減衰フォークレッグの内側で同軸に配置された加圧ピストンにより達成され得るという本発明者の認識に基づいており、前記流体貯蔵器は、少なくとも部分的にフォークレッグと軸方向に重なるようになり得る。それにより、従来技術よりも費用がかからず、小型の加圧されたフォークレッグが提供される。さらに、減衰オイルを備える減衰システムにおいて、フロントフォークレッグの内側に加圧ピストンを配置することは、より少ない減衰オイルが使用され得るので、望ましくないヒステリシスが減少される驚くべき効果を生じている。望ましくないヒステリシスの減少は、すべての減衰オイルが、その中に何らかの空気/気体を備えること、またさらにオイルは、フォークレッグの外側のチャネル内を移動しないことに一部起因しており、それらが、望ましくないヒステリシスに寄与している可能性があるからである。
【0005】
上記で述べた利点は、提供される独立請求項によるフロントフォークレッグ、フロントフォーク、および乗物により達成される。いくつかの実施形態は、従属請求項において定義される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、乗物のフロントフォークに対する伸縮式フォークレッグは、互いに対して伸縮するように構成された外側管および内側管と、使用時に、乗物の2つの部分の間の動きを減衰させるために減衰流体を調節するように構成された、内側管内に配置される主ピストン機構とを備える。さらに、伸縮式フォークレッグは、内側管内に配置され、また減衰流体を加圧するように構成された加圧ピストンを備え、加圧ピストンは、主ピストン機構に面する軸方向の第1の端部分を備え、また加圧容積に面する軸方向に反対側の第2の端部分をさらに備える。さらに、伸縮式フォークレッグは、加圧された流体を保持するための流体貯蔵器を備え、流体貯蔵器は、加圧容積に流体結合される。さらに、加圧ピストンは、内側管の内部で主ピストン機構と同軸に配置され、また流体貯蔵器は、内側管の外部に少なくとも部分的に配置される。
【0007】
したがって、上記で示唆したように、従来の解決策よりも費用がかからず、小型であり、より少ない減衰オイルが使用され得るので望ましくないヒステリシスのレベルが低減される加圧されたフォークレッグが提供される。
【0008】
本出願の文脈において、「流体結合される」は、チャネル、パイプ、ホース、または他の流体接続手段など、任意の結合手段として理解されるべきである。さらに、本出願の文脈において、加圧ピストンは、「前記内側管の内部に[・・・]配置される」という表現は、加圧ピストンが、内側管の内部に位置する1つの(またはいくつかの)他の構成要素の内部に配置されることによって、内側管内に直接または間接的に配置され得る異なる実施形態を備える。
【0009】
さらに、加圧ピストンは、流体貯蔵器ではなく、内側管の内部に配置され、前記流体貯蔵器の内部で移動するピストンがないため、流体貯蔵器の寸法は、低い精度で作成され得る。
【0010】
一実施形態によれば、流体貯蔵器は、フォークレッグの底部本体に配置される。一実施形態では、流体貯蔵器は、フォークレッグの底部本体における開口部である。一実施形態では、開口部は、前記レッグの底部本体の中に開けられた穴である。それにより、流体貯蔵器は、フォークレッグの長さに影響を与えることなく、コンパクトに一体化され、また非常に費用効果の高い方法で達成され得る。
【0011】
さらに一実施形態によれば、加圧ピストンは、減衰流体に対して封止するように構成された第1の封止手段と、加圧された流体に対して封止するように構成された第2の封止手段とを備え、第1および第2の封止手段は、加圧ピストンの軸方向延長部に沿って軸方向にずれている。それにより、加圧ピストンは、各端部に適合された封止を用いて封止することができ、また各封止を通って漏れるどんな加圧された流体も、封止間で処理され得る。それにより、加圧ピストンは、気体を液体から分離するための分離ピストンとして働くことができる。
【0012】
一実施形態によれば、減衰流体は、減衰オイルなどの液体であり、また加圧される流体は、空気、窒素、COなどの気体である。
【0013】
さらに一実施形態によれば、加圧ピストンは、軸方向に圧力が軽減される。一実施形態では、気体側からの圧力、および減衰流体の圧力は互いに軽減する。
【0014】
一実施形態によれば、伸縮式フォークレッグは、内側管の内部に配置されたシリンダケースをさらに備えることができ、加圧ピストンは、シリンダケースの内部に配置される。それにより、シリンダケースおよび内側管は、減衰流体を保持するための周囲容積を画定することができる。
【0015】
さらに一実施形態によれば、伸縮式フォークレッグは、減衰流体と周囲容積の間に流体結合をさらに備える。それにより、減衰流体は、周囲容積の中に流入することができる。
【0016】
一実施形態によれば、減衰流体と周囲容積の間の流体結合は、第1の封止手段と第2の封止手段の間で軸方向に位置する、シリンダケースにおける開口部により可能になる。それにより、各封止を通って漏れるどんな液体または気体も、周囲容積へと流出することができる。
【0017】
さらに一実施形態によれば、加圧ピストンの第1の封止は、減衰流体と周囲容積の間の流体結合が、加圧ピストンが所定に軸方向位置にあるときに限って開放されるように、シリンダケースにおける開口部と相互作用するように構成される。それにより、減衰流体と周囲容積の間の結合は、通常の使用においては、第1の封止手段により閉じられ得るが、減衰流体を有する容積が非常に増加して、与圧を与える(preloading)ピストンの軸方向位置が、所定の軸方向位置に達したとき、減衰流体は、シリンダケースにおける開口部を通って周囲容積へと排出される。
【0018】
さらに一実施形態によれば、伸縮式フォークレッグは、主ピストンと加圧ピストンの間に配置されて、加圧ピストンの軸方向の動きを制限するように構成された中間の制限手段をさらに備える。それにより、中間制限部は、減衰器内に何らかの障害がある場合、加圧ピストンの軸方向移動を制限することができる。
【0019】
さらに一実施形態によれば、制限手段は、高いストローク速度において流体流れを制限するようにさらに構成される。それにより、逆止め弁が流れに対する制限を構成するように、逆止め弁の最大流れ容量に達したとき、加圧ピストンは、高いストローク速度で移動するのが阻止され得る。本文脈では、高いストローク速度は、例えば、2~6m/s、または3~5m/sとすることができる。
【0020】
さらに一実施形態によれば、主ピストン機構は、減衰流体の流れを制御するためのシムスタックと逆止め弁とを備える。それにより、減衰流体流れは、ピストン機構で制御され得る。
【0021】
さらに一実施形態によれば、伸縮式フォークレッグは、圧縮レッグおよびリバウンドレッグのうちの一方であり、主として、圧縮ストロークまたはリバウンドストロークのそれぞれにおける動きを減衰させるように構成される。
【0022】
それにより、圧縮およびリバウンドの微調整設定は、分離された状態に維持され得る。
【0023】
さらに一実施形態によれば、ピストンは、減衰媒体の流れを制御するための電気的に制御される弁を備える。
【0024】
さらに一実施形態によれば、電気的に制御される弁は、中空円筒の形を少なくとも部分的に有するスプールを備え、円筒は、第1の流体開口部と第2の流体開口部とを備え、したがって、流体の流れは、中空円筒を通り、第1および第2の流体開口部を介して、入口から出口に流れることができる。
【0025】
第2の態様によれば、上記で論じた目的は、上記の実施形態の任意の1つによる2本の伸縮式フォークレッグを備える、乗物用のフロントフォークにより達成される。
【0026】
さらに一実施形態によれば、2本の伸縮式フォークレッグのうちの一方は、主として、圧縮ストロークにおける動きを減衰させるように構成された圧縮レッグであり、また2本の伸縮式フォークレッグのうちの他方のものは、主として、リバウンドストロークにおける動きを減衰するように構成されたリバウンドレッグである。それにより、圧縮およびリバウンド微調整設定は、分離された状態に保たれ得る。
【0027】
第2の態様によれば、上記で論じた目的は、上記で述べた実施形態のいずれかによるフロントフォークを備える乗物によって達成される。
【0028】
一実施形態では、主ピストン機構は、主ピストンと、主ピストンに結合される主ピストンロッドとを備える。主ピストンは、第1のチャンバと第2のチャンバの間を移動する減衰流体を調節するように構成される。
【0029】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、以下の詳細な開示、図面、および添付の特許請求の範囲を調べたときに明らかになろう。当業者であれば、本発明の様々な特徴が組み合わされて、以下で述べられるもの以外の実施形態が生成され得ることを理解する。
【0030】
本発明は、添付図面を参照し、好ましい実施形態の以下の例示的および非限定的な詳細な説明によって理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1a】外側から見たフロントフォークレッグを示す図。
図1b】圧縮レッグである同じフォークレッグのB-Bに沿った横断面図。
図1c】フォークレッグ構成要素のより細部を開示する図1bの拡大図。
図2】リバウンドレッグの拡大図。
図3】2本のフォークレッグを有するフロントフォークを示す図。
図4a】フロントフォークを有する自動二輪車の左側面図。
図4b】フロントフォークを有する自動二輪車の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
すべての図は、概略的なものであり、必ずしも縮尺を合わせておらず、また概して、本発明を明確にするために必要な部分だけを示しており、他の部分は除外される、または単に示唆されるだけである。図の全体を通して、同じ参照記号は、同じ、または本質的に同じ特徴を指定する。
【0033】
図におけるフォークレッグは、圧縮を減衰させるための第1のレッグと、リバウンドを減衰させるための第2のレッグとを有するものとして示されているが、本発明は、レッグが、単一のレッグでリバウンド動作と圧縮動作を共に減衰させるように設計される場合にも等しく適用可能である。
【0034】
さらに図は、すべて内側シリンダ103を含んでいるが、前記内側シリンダを有しない本発明を実施することも可能なはずである。すなわち、加圧ピストンは、内側管102内に直接的に、または内側管102の内部に位置する1つ(またはいくつかの)他の構成要素の内部に配置されることにより、間接的に配置され得る。加圧ピストンが内側管内に直接的に配置される実施形態は、単一管のフォークレッグになるはずである。このような実施形態では、周囲容積170は、内側管の外側にあり得る。
【0035】
図1aおよび図1bは、外側から見たフロントフォークレッグ100aの概観を示し、また図1aの線「B-B」に沿った横断面で示すように含まれる。フロントフォークレッグ100aは、圧縮レッグであり、図1cでさらに詳細に示される。圧縮フロントフォークレッグ100aは、減衰流体を調節するための主ピストン機構120を備える。さらにそれは、第1の端部で、その減衰流体に面し(図の上方)、流体貯蔵器150に流体接続される他方の端部で、加圧気体に面する加圧ピストン130を備える。流体貯蔵器は、フォークレッグの底部本体160に配置される。
【0036】
圧縮フロントフォークレッグ100aが、次に、図1cにおける拡大図に関してさらに論じられる。ここで、図1bに関して上記で論じられたすべての構成要素がまた存在し、加えて、さらなる細部が示される。さらに、図2で示されるリバウンドフロントフォーク100bにおける構成要素は、図1cに関して述べられる構成要素の大部分を備える。
【0037】
図の底部から開始すると、フォークレッグの底部は、乗物の前輪の車輪軸に嵌合するための開口部161を備える。前輪軸は、固定機構162により固定され得る。
【0038】
さらに、フォークレッグの底部本体160に配置された流体貯蔵器150は、内側管102の内部への流体接続151を備える。示された実施形態では、流体接続151は、流体貯蔵器をシリンダケース(103)と接続する。流体接続は、任意の方法で達成され得るが、1つはシリンダケース側から、また1つは流体貯蔵器側からの2方向から穴あけされた2つの穴として示されている。さらに流体貯蔵器150は、端部キャップ152を備え、端部キャップにおいて、流体貯蔵器を望ましい圧力まで充填するための弁153が存在する。示された実施形態では、流体貯蔵器は、フォークレッグの底部本体160への穴である。それにより、簡単で、費用効果の高い流体貯蔵器が達成される。
【0039】
上の方に進むと、加圧ピストン130は、シリンダケース103内に配置され、シリンダケース103は、次いで、内側管102内に配置される。加圧ピストンは、減衰流体を加圧するように構成されるが、主ピストン機構120(図の上方)に面する軸方向の第1の端部分131を備え、また流体貯蔵器150に流体接続される加圧容積に面する軸方向に反対側の第2の端部分132をさらに備える。
【0040】
さらに加圧ピストン130は、減衰流体に対して封止するように構成された第1の封止手段133を備える。それはまた、加圧された流体に対して封止するように構成された第2の封止手段134を備える。さらに、第1および第2の封止手段は、加圧ピストン130の軸方向延長部に沿って軸方向にずれており、したがって、第1の封止手段133は、第1の端部分131上に/その近くに配置され、また第2の封止手段134は、第2の端部分132上に/その近くに配置される。
【0041】
シリンダケース103は、通常の使用下で、前記第1の封止手段133と、前記第2の封止手段134との間の軸方向に位置する開口部104を備える。開口部は、減衰流体と周囲容積170間の流体結合を可能にする。
【0042】
加圧ピストンの第1の封止133は、減衰流体と周囲容積170の間の流体結合が、加圧ピストン130が所定の軸方向位置にあるときに限って開くように、シリンダケース103における開口部104と相互作用するような寸法であり、またそのように適合される。所定の軸方向位置は、通常の使用下の状態よりも、フォークレッグ底部160に近い。それにより、減衰媒体は、加圧ピストンをフォークレッグ底部に向けてさらに押すのではなく、周囲容積170の中に逃げることができる。こうすることは、オイル/減衰媒体レベルに関してシステムに自己調整させる。
【0043】
したがって、開口部は、通常の使用中は、第1の封止手段133によって閉じられ得るが、減衰流体を有する容積が非常に増加して、与圧を与えるピストンの軸方向位置が所定の軸方向位置に達したとき、減衰流体は、シリンダケース103における開口部104を通って周囲容積170へと排出される。
【0044】
さらに上方に移動すると、フォークレッグは、主ピストンと加圧ピストンの間に配置された中間の制限手段140を備える。さらに圧縮レッグは、圧縮ストロークにおける圧力が、主ピストン121と端部ロック123の間に構成されるように、端部を形成する端部ロック部分123が取り付けられるさらなる管を備える。減衰媒体は、加圧ピストン130の上の空間と、主ピストン121の上の空間との間で前後に移送されるようになる。これは、2つの管の間の間隙で、内側パイプの上側領域における開口部を通って行われる。この開口部は、適切な程度に流れを絞るように、すなわち、制限手段140がリバウンドレッグで行うのと同様な方法で、圧縮ストローク中に構成された圧力に起因して、加圧ピストン130が移動するのを回避するように適合される。それに代えて、内側管の上側領域における絞らない開口部を使用し、絞りプレートを使用するのが好ましい可能性もある。これは、より適切な流れの動的性能を得る可能性があるからである。しかし、このような解決策は、費用がかかることになる。
【0045】
最後に、フォークレッグは、上記で論じたように、主ピストン機構120を備える。ピストン機構は、減衰流体の流れを制御するためのシムスタックと逆止め弁とを備える主ピストン121を備える。さらにピストン機構は、ピストンロッド122に接続される。
【0046】
図2で示されるリバウンドフォークレッグ100bに進むと、構成要素の大部分は、レッグ100aに対する圧縮に関して論じられた構成要素と同一である(または少なくともそれに対応している)。これは、フォークレッグの底部本体160、流体貯蔵器150、および加圧ピストン130機構を含むフォークレッグの下側部分に対して特にそうである。
【0047】
示された1つの差は、主ピストン121と加圧ピストン130の間に配置されるフォークレッグの中間制限手段140が、高いストローク速度(前に論じたように、このコンテキストにおいては、高いストローク速度は、約2~6m/sとすることができる)の減衰媒体の流体流れを制限するように構成された弁機構141を備えることである。
【0048】
さらに、主ピストン機構120は、圧縮フォークレッグ100aで示されたピストン機構と比較して幾分異なっている。リバウンドレッグにおいてもまた、ピストン機構は、減衰流体の流れを制御するためのシムスタックと逆止め弁とを有する主ピストン121を備える。
【0049】
次に進むと、図3は、2本のフォークレッグを有するフロントフォークを示しており、一方は、圧縮フォークレッグ100aとして示され、他方は、リバウンドフォークレッグ100bとして示されている。フォークレッグは、乗物の車輪の各側部に取り付けられ、また車輪と乗物のシャーシとの間の動きを減衰させるような寸法であり、またそのように適合される。
【0050】
さらに図4aは、フロントフォーク10を有する自動二輪車(乗物)1の左側面図を示し、または図4bは、フロントフォーク10を有する同じ自動二輪車1の右側面図を示す。図4aの左側の図から見たとき、圧縮フロントフォークレッグ100aが見え、図4bの右側の図から見たとき、リバウンドフロントフォークレッグ100bが見える。
【0051】
本発明は、図面および上記の説明で詳細に示され、述べられてきたが、このような説明および記述は、限定的なものではなく、説明用または例示的なものと見なされるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。当業者であれば、多くの変更、変形、および改変は、添付の特許請求の範囲で定義される範囲に含まれるものと考えられることが理解される。
【0052】
さらに、開示された実施形態に対する変形が、図面、開示、および添付の特許請求の範囲を調べることにより、特許請求される本発明を実行する当業者によって理解され、実施され得る。
【0053】
請求項において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、また不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数を排除しない。いくつかの手段が、相互に異なる従属請求項に記載されているだけで、これらの手段の組合せが、利点を取得するために使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、請求項の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 伸縮式フォークレッグ(100a、100b)を備える乗物用のフロントフォーク(10)であって、前記伸縮式フォークレッグ(100a、100b)は、
- 互いに対して伸縮するように構成された外側管(101)および内側管(102)と、
- 使用時に、前記乗物の2つの部品の間の動きを減衰させるために減衰流体を調節するように構成された、前記内側管(102)内に配置された主ピストン機構(120)とを備え、
前記伸縮式フォークレッグ(100a、100b)は、
- 前記内側管(102)内に配置され、前記減衰流体を加圧するように構成された加圧ピストン(130)と、前記加圧ピストン(130)は、前記主ピストン機構(120)に面する軸方向の第1の端部分(131)を備え、また加圧容積に面する軸方向に反対側の第2の端部分(132)をさらに備える、
- 加圧された流体を保持するための流体貯蔵器(150)と、前記流体貯蔵器は、前記加圧容積に流体結合される、
をさらに備え、
前記加圧ピストンは、前記内側管(102)の内部で、前記主ピストン機構と同軸に配置され、また前記流体貯蔵器(150)は、前記内側管の外部に少なくとも部分的に配置される
ことを特徴とする、フロントフォーク(10)。
[2] 前記流体貯蔵器(150)は、フォークレッグの底部本体(160)内に配置される、[1]に記載のフロントフォーク(10)。
[3] 前記加圧ピストン(130)は、前記減衰流体に対して封止するように構成された第1の封止手段(133)と、前記加圧された流体に対して封止するように構成された第2の封止手段(134)とを備え、前記第1の封止手段および前記第2の封止手段は、前記加圧ピストン(130)の軸方向延長部に沿って軸方向に変位される、[1]または[2]に記載のフロントフォーク(10)。
[4] 前記減衰流体は、減衰オイルなどの液体であり、また前記加圧された流体は、空気、窒素、CO などの気体である、[1]から[3]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[5] 前記内側管(102)の内部に配置されたシリンダケース(103)をさらに備え、前記加圧ピストン(130)は、前記シリンダケース(103)の内部に配置される、[1]から[4]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[6] 前記減衰流体と周囲容積(170)の間に流体結合をさらに備える、[1]から[5]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[7] 前記減衰流体と周囲容積の間の前記流体結合は、前記第1の封止手段(133)と前記第2の封止手段(134)の間に軸方向に位置する、前記シリンダケース(103)における開口部(104)により可能になる、[5]または[6]に記載のフロントフォーク(10)。
[8] 前記加圧ピストン(130)の前記第1の封止(133)は、前記減衰流体と周囲容積の間の前記流体結合が、前記加圧ピストンが所定の軸方向位置にあるときに限って開放されるように、前記シリンダケース(103)における前記開口部(104)と相互作用するように構成される、[7]に記載のフロントフォーク(10)。
[9] 前記主ピストン(120)と前記加圧ピストン(130)の間に配置され、前記加圧ピストン(130)の軸方向の動きを制限するように構成された中間の制限手段(140)をさらに備える、[1]から[8]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[10] 前記制限手段(140)は、高いストローク速度において流体流れを制限するようにさらに構成される、[9]に記載のフロントフォーク(10)。
[11] 前記伸縮式フォークレッグは、主として、圧縮ストロークまたはリバウンドストロークのそれぞれにおける動きを減衰させるように構成された圧縮レッグおよびリバウンドレッグのうちの一方である、[1]から[10]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[12] 前記主ピストン機構(120)は、減衰媒体の流れを制御するための電気的に制御される弁を備える、[1]から[11]のいずれか一項に記載のフロントフォーク(10)。
[13] 2本の伸縮式フォークレッグ(100a、100b)を備える、[1]から[12]のいずれかに記載のフロントフォーク(10)。
[14] 前記2本の伸縮式フォークレッグのうちの一方(100a)は、主として、前記圧縮ストロークにおける動きを減衰させるように構成された圧縮レッグであり、前記2本の伸縮式フォークレッグのうちの他方のもの(100b)は、主として、前記リバウンドストロークにおける動きを減衰させるように構成されたリバウンドレッグである、[13]に記載のフロントフォーク(10)。
[15] 乗物の車輪と乗物のシャーシの間の動きを減衰させるための、[1]から[14]のいずれかに記載の伸縮式フロントフォークを備えることを特徴とする乗物(1)。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4a
図4b