(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ワークピースの3次元表面の3次元データを取得する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20221108BHJP
G01B 11/25 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/25 H
(21)【出願番号】P 2019572446
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 DE2018100597
(87)【国際公開番号】W WO2019007460
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】102017114873.6
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511040469
【氏名又は名称】シェンク ロテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ロガラ マルティン
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0052024(US,A1)
【文献】特開2008-039707(JP,A)
【文献】特表2016-513242(JP,A)
【文献】特開2001-066115(JP,A)
【文献】特開平09-243573(JP,A)
【文献】特開2001-059713(JP,A)
【文献】米国特許第05148232(US,A)
【文献】独国特許出願公開第112016003805(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転可能であり且つ同軸の支持面を含む両端部を有するワークピースの3次元表面の3次元データを取得する方法であって、
ワークピースの同軸の支持面を、上向きに開口した支持要素(18、20)に受入れて、ワークピースを、その自重だけによって、水平方向の回転軸線を有する心出し位置に保持することと、
レーザ光断面法に従って作動し且つワークピースから或る半径方向距離のところに2つのセンサ(38、40)を有する光測定装置(37)を、前記光測定装置(37)のレーザ光平面がワークピースに向けられるように配置することと、前記2つのセンサ(
38、40)を、前記2つのセンサの間に位置し且つ前記回転軸線に対して半径方向にある前記レーザ光平面の一方の側と他方の側のデータをそれぞれのセンサ(
38、40)が取得するように配置することと、
前記光測定装置(37)を、静止しているワークピースの周りで移動させることと、ワークピースの少なくとも一部分の3次元表面の複数の点の3次元位置を、前記光測定装置(37)を移動させた複数の位置から測定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記光測定装置(37)のレーザ光平面は、前記回転軸線と平行である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光測定装置(37)の移動は、円形軌道に沿って行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記円形軌道に沿う前記光測定装置(37)の移動に加えて、前記円形軌道に対する接線方向の軌道に沿う前記光測定装置(37)の移動が行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記円形軌道に沿う前記光測定装置(37)の移動に加えて、前記円形軌道の軸線と平行な軸線に沿う前記光測定装置(37)の移動が行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記円形軌道に沿う前記光測定装置(37)の移動は、最大380°の中心角度に限定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記光測定装置(37)を、ワークピースの長手方向の複数のセクションごとに移動させ、長手方向の移動の各セクションにおいて、前記光測定装置(37)の移動は、静止しているワークピースの周りで行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
静止しているワークピースの周りの前記光測定装置の移動は、長手方向の移動の連続するセクションにおいて、両方向で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持要素(18、20)に受入れられたワークピースを、制御可能な整列装置(44)によって、所定の軸線方向位置及び所定の回転角度位置に整列させた後、ワークピースの3次元表面の3次元的データを取得する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
回転軸線を中心に回転可能であり且つ同軸の支持面を含む両端部を有するワークピースの3次元表面の3次元データを取得するための装置(1)であって、
フレーム(2)と、
前記フレーム(2)に配置され且つ上向きに開口した2つの支持要素(18、20)と、を有し、前記支持要素は、水平方向の支持軸線と同軸に配置され、ワークピースの同軸の支持面を前記支持軸線上の心出し位置に受入れるように形成され、ワークピースは、自重だけによって前記心出し心位置に且つ前記支持要素内に保持され、
更に、レーザ光断面法に従って作動する光測定装置(37)を有し、前記光測定装置(37)は、前記支持軸線から或る半径方向距離のところに且つホルダ(36)に、前記光測定装置(37)のレーザ光平面がワークピースに差し向けられるように配置され、前記光測定装置(37)は、少なくとも2つのセンサ(38、40)を有し、前記2つのセンサ(38、40)の各々は、前記2つのセンサ(38、40)の間に位置し且つ前記回転軸線に対して半径方向にある平面の異なる側のデータ取得するように配置され、
更に、前記支持軸線と同軸に前記フレーム(2)に配置された中空スピンドル(28)を有し、前記光測定装置(37)は、前記ホルダ(36)と一緒に前記中空スピンドル(28)に取付けられ、且つ、前記支持軸線周りの円形軌道に沿って前記中空スピンドル(28)の中を案内され、
更に、前記中空スピンドル(28)を両方の回転方向に駆動するように制御可能な回転ドライブ(30)と、
前記回転ドライブ(30)を制御するための電気制御デバイスと、
コンピュータと、を有し、前記コンピュータは、前記光測定装置によって測定された位置データを記憶して評価するデータメモリ及び評価デバイスを含む、装置(1)。
【請求項11】
前記中空スピンドル(28)、前記ホルダ(36)、及び前記光測定装置(37)は、第1の制御可能なリニアドライブ(24)によって、前記フレーム(2)に対して前記支持軸線の方向に一緒に移動可能である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記光測定装置(37)は、第2の制御可能なリニアドライブ(34)によって、前記支持軸線に対する接線方向に移動可能であり、前記第2の制御可能なリニアドライブ(34)は、前記中空スピンドル(28)に配置され且つ前記光測定装置(37)を支持する、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記光測定装置(37)は、制御可能な
前記回転ドライブ(30)によって、前記支持軸線を中心に回転可能である、請求項10~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
更に、前記フレーム(2)に対する前記光測定装置(37)の位置及び/又は経路を測定するように構成された独立した経路測定システムを有する、請求項10~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記中空スピンドル(28)及び前記回転ドライブ(30)は、第1の台(22)に取付けられた支持用直立部(26)に配置され、前記支持用直立部(26)は、前記第1の台(22)によって、前記フレーム(2)のガイドレール(4)上を前記支持軸線の方向に移動可能に案内される、請求項10~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
更に、前記支持要素(18、20)に受入れられたワークピースを軸線方向位置及び角度方向位置に整列させるように構成され且つ制御可能である整列装置(44)を有する、請求項10~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記整列装置(44)は、第2の台(46)に配置され、前記第2の台(46)と一緒に、前記フレーム(2)内の静止位置から整列位置に移動可能であり、前記静止位置は、前記光測定装置(37)の移動範囲の外側に位置し、前記整列位置は、前記支持軸線の下に位置する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記整列装置(44)は、前記支持軸線まで移動可能である整列ヘッド(50)と、ワークピースを把持してワークピースを整列させる空気圧作動式の把持器(52)を含む、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
前記整列装置(44)を静止位置から整列位置まで移動させるように制御可能な第3のリニアドライブ(48)が前記フレーム(2)に配置される、請求項16~18のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸の支持面を含む両端部を有し且つ回転軸線を中心に回転可能であるワークピースの3次元表面の3次元データを取得する方法、及び、かかる方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により知られている方法では、回転可能なワークピースブランクの機械加工軸線を決定するために、基準ワークピースとワークピースブランクを、測定装置の支持要素に受入れてクランプ留めする。ワークピースを、測定装置用ドライブによって、支持軸線を中心に回転させる間、基準ワークピースの表面領域及びワークピースブランクの表面領域を、レーザ光断面法に従って作動する光センサデバイスによって測定し、光センサデバイスを、それぞれのワークピースの上で直線ガイドに沿って移動させる。基準ワークピース及びワークピースブランクの表面領域で測定された3次元位置データを、コンピュータにより、基準部分面及びブランク面としてデータメモリに記憶させる。記憶させした2つの表面を互いに比較して決定された偏差は、不均衡効果と、そこから重心慣性主軸及びワークピースブランクの機械加工軸の位置とを計算するのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE 10 2013 100 899 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、回転軸線を中心に回転可能なワークピースの3次元表面の3次元データを取得する新しい方法を提供することにあり、かかる方法は、簡易且つ経済的な作動によって特徴付けられる。更に、かかる方法を実施する新しい装置が創造され、かかる装置を安価に製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載された特徴を有する方法によって、及び、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。かかる方法及び装置の有利な実施形態は、従属請求項において特定される。
【0006】
本発明によれば、回転軸線を中心に回転可能であり且つ同軸の支持面を含む両端部を有するワークピースの3次元表面の3次元データを取得する方法は、ワークピースを、上向きに開口した支持要素の同軸の支持面の上に受入れて、ワークピースを、その自重だけによって、水平方向の回転軸線を有する心出し位置に保持することと、レーザ光断面法に従って作動し且つワークピースから或る半径方向に距離のところに2つのセンサを有する光測定装置を、光測定装置のレーザ光平面がワークピースに差し向けられ且つ回転軸線と平行であるように配置することと、2つのセンサを、2つのセンサの間に位置しかつ回転軸線に対して半径方向にある平面の異なる側のデータを取得するように配置することと、光測定装置を、静止しているワークピースの周りで移動させることと、ワークピースの少なくとも一部分の3次元表面の複数の点の3次元位置を、光測定装置を移動させた複数の位置から測定することと、を含む。
【0007】
本発明による方法では、ワークピースは、測定処理中、静止したままであり、光測定装置を、静止しているワークピースの周りで円形に移動させる。本方法は、光測定装置の受け部へのワークピースの組込みが簡単であり、ワークピースの回転方向の固定用クランプを省略することができるという利点を有する。光測定装置の受け部は、クランプ手段を必要とせず、ワークピースを組込むとき、光測定装置の受け部の軸線方向移動は不要である。本方法はまた、ワークピースの受け部の回転可能な取付けを必要とせず、また、測定処理中にワークピースを回転させるように制御可能な回転ドライブも必要としない。光測定装置をワークピースの周りで移動させるためのドライブは必要であるけれども、このことは、特に重いワークピースの回転受け部に必要な軸受及びドライブと比較して、コスト効率的である。ワークピースの静止している受け部及びそれと関連したクランプ手段の省略により、光測定装置内へのワークピースの挿入及び測定後のワークピースの取出しを、大量生産用に設置されたプラントで通常利用可能である従来の搬送及び給送デバイスを用いて行うことができるという更なる利点を有し、その結果、給送のための特別なデバイスを必要としない。したがって、本方法に従って作動する光測定装置の既存生産ラインへの統合は、簡単である。
【0008】
本発明によれば、ワークピースの周りの光測定装置の移動は、円形軌道に沿って、連続的に行われてもよいし、いくつかの移動ステップで行われてもよい。円形軌道に沿う移動に加えられる光測定装置の重ね合わせ移動の1つは、円形軌道に対する接線方向の軌道に沿って、連続的に行われてもよいし、いくつかの移動ステップで行われてもよい。このようにして、ワークピースの切込みのデータを良好に取得することができ、個々の領域が影になることによる3次元表面の不完全な測定を回避することができる。好ましくは、光測定装置の移動は、円形軌道及びそれに重ね合わせられる接線方向に沿って行われ、光測定装置の流れるような高速且つ滑らかな移動により、センサの振動が回避され、また、その逆でもあり、ワークピース表面の位置測定は、両方の移動ステップで行われる。
【0009】
接線方向の軌道に沿う移動に対する変形例として、切り込み又は隠れた領域のデータをより良好に取得するために、円形軌道に沿う移動に、円形軌道の軸線と平行な軸線の周りの光測定装置の移動を重ね合わせてもよい。
【0010】
円形軌道に沿う光測定装置の移動は、本発明の更なる提案により、最大380°の中心角度に制限される。従って、光測定装置へのエネルギ供給及びコンピュータへの測定データの送信は、ケーブルによって行うことができ、ケーブルの過剰な変形のおそれもない。
【0011】
比較的長いワークピースを測定するために、本発明の方法によれば、光測定装置をワークピースの長手方向のセクションごとに移動させ、光測定装置を移動させた軸線方向の各セクションにおいて、軸線方向移動を停止させ、光測定装置を静止しているワークピースの周りで移動させる。この場合、光測定装置を移動させる軸線方向の連続するセクションにおいて、静止しているワークピースの周りの光測定装置の移動が両方向であるという点で更に有利である。このように、光測定装置の使用されない戻り移動及びこのために必要とされる時間が回避される。したがって、測定処理を、次の軸線方向部セクションに到達した直後に開始することができる。
【0012】
本発明によれば、回転軸線を中心に回転可能であり且つ同軸の支持面を含む両端部を有するワークピースの3次元表面の3次元データを取得するための有利な装置は、フレームと、フレームに配置され且つ上向きに開口した2つの支持要素と、を有し、支持要素は、水平方向の支持軸線と同軸に配置され、ワークピースを同軸の支持面上の心出し位置に受入れるように形成され、ワークピースは、自重だけによって心出し位置に且つ支持要素内に保持され、更に、レーザ光断面法に従って作動する光測定装置を有し、光測定装置は、支持軸線から或る半径方向距離のところに且つホルダに、光測定装置のレーザ光平面がワークピースに差し向けられるように配置され、光測定装置は、少なくとも2つのセンサを有し、2つのセンサの各々は、2つのセンサの間に位置し且つ回転軸線に対して半径方向にある平面の異なる側のデータを取得するように配置され、更に、回転軸線と同軸にフレームに配置された中空スピンドルを有し、光測定装置は、ホルダと一緒に中空スピンドルに取付けられ、且つ、支持軸線の周りの円形軌道に沿って中空スピンドルの中を案内され、更に、中空スピンドルを両方の回転方向に駆動するように制御可能な回転ドライブと、回転ドライブを制御するための電気制御デバイスと、コンピュータと、を有し、コンピュータは、光測定装置によって測定された位置データを記憶して評価するデータメモリ及び評価デバイスとを含む。
【0013】
本発明による装置は、その構成要素が低コストであること、したがって、低い生産コストであることによって特徴付けられる。ワークピースを支持面上にクランプ留めするクランプデバイスを必要とせず、クランプデバイスを支持し且つ測定処理中のワークピースの回転を可能にする任意の回転駆動式スピンドルも必要としない。本発明による装置は、光測定装置が比較的小さい質量のものであるので、コンパクト且つ安価に構成された光測定装置を移動させるように制御可能なドライブしか有していない。このため、コントローラによって定められた位置調節を実行することができるサーボドライブが、好ましくは適切である。制御可能な回転ドライブは、中空スピンドルを回転させ、光測定装置を支持軸線を中心とする円形軌道に沿って移動させる。第1の制御可能なリニアドライブは、中空スピンドル及び光測定装置を支持軸線の方向に移動させるのに使用され、第2の制御可能なリニアドライブは、光測定装置を支持軸線に対する接線方向に移動させるのに使用される。第2のリニアドライブの変形例として、光測定装置はまた、支持軸線と平行な軸線を中心に第2の制御可能な回転ドライブによって回転可能であってもよい。
【0014】
本発明の更なる提案によれば、装置は、フレーム及び/又は中空スピンドルに対する光測定装置の位置及び移動を測定する少なくとも1つの独立した経路測定システムを有する。経路測定システムは、フレームに対する支持軸線の方向の移動を測定する軸線方向測定システム、フレームに対する中空スピンドルの回転移動を測定する角度方向測定システム、中空スピンドルに対する光測定装置の接線方向移動を測定するリニア測定システム、中空スピンドルに対する光測定装置の回転角度位置を測定する角度測定システムを含む。独立した経路測定システムは、ワークピースの3次元表面の3次元データを取得する光測定装置の精度を高め、ドライブの遊びによる運動の逆転が生じて測定の精度が低下することを回避する。
【0015】
装置の好ましい実施形態では、中空スピンドル及び中空スピンドルを駆動する回転ドライブは、第1の台に取付けられた支持用直立部に配置され、支持用直立部は、第1の台によって、フレームのガイドレール上を支持軸線の方向に移動可能に案内される。本発明によりワークピースを受入れる支持要素も、フレームにしっかりと連結された直立部に配置され、フレームに対する少なくとも1つの直立部の取付けは、支持軸線の方向に調節可能である。
【0016】
再現可能な測定値に関して、支持要素に受入れられたワークピースは、フレームに対する軸線方向位置及び回転角度位置に正確に位置決めされなければならない。この目的のために、装置は、支持要素に受入れられたワークピースを軸線方向位置及び回転角度位置に配置するように設計された制御可能な整列装置を有する。整列装置は、第2の台に配置され、第2の台と一緒にフレーム内で移動可能であり、光測定装置の移動範囲の外側に位置する静止位置から支持軸線の下方の整列位置に移動可能である。装置は、更に、ワークピースを整列させるために支持軸線まで移動可能である整列ヘッドを更に有し、整列ヘッドは、空気圧作動式の把持器をし、それにより、ワークピースは、所定の整列位置内において移動可能である。
【0017】
図面に示す本発明の実施形態を参照して、本発明を以下により詳細に解説する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す装置1は、直方体フレーム2を有し、直方体フレーム2は、その上面に、フレーム2の長手方向に延びるガイドレール4が設けられる。ガイドレール4の両端部に、2つの直立部6、8が、鏡像をなすように配列される。直立部6、8はそれぞれ、ベースプレート10、12を有し、ベースプレート10、12は、その下面に設けられたガイド要素を有し、長手方向に移動可能にガイドレール4上に取付けられる。直立部6、8のベースプレート10、12は、締結手段(図示せず)を用いてフレーム2に締結されてもよい。直立部6、8の少なくとも一方の締結手段は、直立部6、8の間の距離を調節することができるように解除可能である。
【0020】
直立部6、8はそれぞれ、ベースプレート10、12から上向きにテーパする形状を有し、上端部を有し、ベースプレート10、12と平行であるアーム14、16が上端部に設けられる。アーム14、16は、互いに向かって延び、対向する自由端部のところに支持要素18、20を有する。支持要素18、20は、上面が開口した半円筒形状を有し、その前側に心出しプリズムを形成する壁を有する。この設計の結果、円筒形の支持面を有するワークピースは、上方から支持要素18、20に挿入され、ワークピースの円筒形の支持面は、支持軸線上の心出し位置に支持要素18、20によって配置され、ワークピース重量により心出し位置に保持される。
【0021】
フレーム2のガイドレール4の上を長手方向に移動可能である第1の台22が、直立部6と直立部8の間に取付けられる。第1の台22は、第1の制御可能なリニアドライブ24に接続され、それにより、第1の台22を、フレーム2の上を長手方向に移動させることができる。第1の台22は、支持用直立部26を支持し、支持用直立部26は、支持用開口を含む上端部に有し、中空スピンドル28が、回転可能に且つ支持要素18、20によって決定される支持軸線と同軸に、支持用開口内に取付けられる。中空スピンドル28は、回転ドライブ30によって歯付きベルト29を介して回転可能であり、回転ドライブ30も、支持用直立部26に取付けられる。回転ドライブ30によって、中空スピンドル28を、380°の回転角度だけ、時計回りに又は反時計回りに回転させることができる。
【0022】
支持要素18、20は、それらの位置を垂直方向に調節することができるようにアーム14、16の端部に取付けられる。このように、支持要素の垂直方向位置を、支持要素に受入れられるワークピースの支持面の様々な直径に適応させることができ、従って、支持軸線が中空スピンドル28の回転軸線と実質的に同軸であること、及び、異なるワークピースであっても支持軸線が機械ベッドから常に同じ距離にあることを達成することができる。
【0023】
中空スピンドル28は、それを貫通する中心開口32を有し、中心開口の内径は、支持要素18、20、支持要素18、20が受入れるワークピース(例えば、クランクシャフト)、及びアーム14、16が中心開口32の中を自由に通行することができる大きい寸法を有する。従って、中空スピンドル28及び支持用直立部26を台22と一緒に直立部6の近くに移動させて、アーム14を中空スピンドル28の中心開口32から突出させ、支持要素18を、支持用直立部26の直立部6から遠い方の側において、中空スピンドル28の外側に配置することができる。支持用直立部26がかかる位置にあれば、ワークピースを支持要素18、20に挿入したりそれから取出したりすることができるように、両方の支持要素18、20に上方から自由にアクセス可能である。かくして、直立部6に近接するように移動させた支持用直立部26のかかる位置は、ワークピースを装置1に載せたりおろしたりすることを意図している。
【0024】
中空スピンドル28の直立部8に面する側において、駆動部材35を有する第2のリニアドライブ34が、中空スピンドル28に取付けられ、駆動部材35は、支持軸線に対して垂直な平面内で支持軸線に対する接線方向に移動可能であり、ホルダ36を支持する。測定装置37が、ホルダ36に取付けられ、レーザ光断面法に従って作動する2つのセンサ38、40を有する。第2のリニアドライブ34及び測定装置37にエネルギを供給するために、及び、測定データをコンピュータに送信するために、巻き取り可能な可撓性ケーブルハーネス33が、中空スピンドル28上に配置され、可撓性ケーブルハーネス33の一方の端部は、支持用直立部26に取付けられ、そこで連続ケーブルハーネスに接続される。
【0025】
センサ38、40は、支持軸線に差し向けられ、センサ38、40のレーザ光平面は、支持軸線に対して平行である。センサ39とセンサ40の中心測定軸線は、支持軸線に対して傾斜し、その結果、各センサ38、40は、センサ38とセンサの40間に位置し且つ回転軸線に対して半径方向に位置する平面における異なる側をデータ取得する。透明な面39、41は、
図1に示す測定装置37の位置におけるセンサ38、40の平面測定領域の位置を示す。センサ38、40の平面測定領域は、同じ平面内にあってもよいし、2つの平行な平面内にあってもよい。
【0026】
再現可能な測定値を取得するために、支持要素18、20によって受入れられるワークピースを軸線方向位置及び角度方向位置に正確に位置決めすることが必要である。この機能は、第2の台46上に配置された制御可能な整列装置44によって行われ、整列装置44は、第2の台46と一緒に、フレーム2内において、アーム16の下方に位置する静止位置から、支持要素18と20の間に且つ支持軸線の下方に位置する整列位置に移動可能である。整列装置44を移動させるために、制御可能な第3のリニアドライブ48が、フレーム2に配置される。整列装置44は、整列ヘッド50を有し、整列ヘッドは、支持要素18、20に受入れられたワークピースまで上方に移動可能であり、空気圧作動式把持器52を備え、ワークピースは、空気圧作動式把持器52の中に把持され、ワークピースを、軸線方向移動及び回転によって、定められた軸線方向位置及び回転方向位置に移動させる。整列後、整列ヘッド50を下降させ、整列装置44を、アーム16の下の静止位置に移動させて戻す。整列させたワークピースは、測定処理中、その自重及び支持面と支持要素18、20との間の摩擦によって整列位置に保持される。
【0027】
正確で再現可能な測定値を取得するために、整列させたワークピースに対する光測定装置37の位置の正確な知識を有することも必要である。これを達成するために、装置1は、複数の独立した経路測定システムを有し、かかる経路測定システムにより、測定装置37の位置及び経路を測定することができる。
【0028】
この目的のために、第1の台22及び第2の台46と協働する軸線方向測定システム54が、ガイドレール4上に配置され、軸線方向測定システム54により、フレーム2に対する支持用直立部26及び整列装置44の軸線方向位置及び経路を測定することができる。中空スピンドル28と協働する回転角度測定システムが、支持用直立部26に設けられ、支持用直立部26に対する、かくして、フレーム2に対する中空スピンドル28の回転角度位置及び回転経路を測定する機能を有する。更に、リニア測定システムが、第3のリニアドライブ48に設けられ、中空スピンドル28に対する接線方向のホルダ36の位置及び経路を測定する。実際、リニアドライブ24、34、48及び回転ドライブ30は、それら自体の位置測定システムを有し、それらを制御するのに使用される。しかしながら、本発明により提供され且つリニアドライブ及び回転ドライブから独立した経路測定システムは、特に正確であり、リニアドライブ及び回転ドライブの遊び又は他の影響は、測定精度に影響を及ぼさない。
【0029】
上述した装置1は、回転軸線を中心に回転するワークピース、特にクランクシャフトの3次元表面の3次元データを取得することを意図していることが好ましく、例えば、ワークピースを機械加工するための機械加工軸線を測定値から計算することができ、機械加工軸線により、機械加工後のワークピースは、あるとしても最も少ないアンバランスしか有しない。測定を行うために、測定すべきワークピースを、ワークピースの両端部の同軸の支持面が支持要素18、20によって受入れられるようにデバイス1の中に挿入し、ワークピースを、支持要素18、20の支持軸線上の心出し位置に配置する。このために、支持用直立部26を、
図1に示す状態よりも直立部6に近づけ、測定装置37を、支持要素18、20内へのワークピースの挿入が中空スピンドル28及び測定装置37によって妨げられないように位置決めする。
【0030】
次いで、支持要素18、20内に受入れられ且つ
図1に部分的にのみ示されているワークピースWを、その軸線方向位置及び角度方向位置に整列装置44によって正確に位置決めする。この目的のために、整列装置44を、ワークピースの下に第3のリニアドライブ48によって移動させる。その後、整列ヘッドを上昇させ、ワークピースを、空気圧把持器52によって特定の角度方向位置及び軸線方向位置にし、かかる角度方向位置及び軸線方向位置において、ワークピースは、その自重によって摩擦で保持される。次いで、整列装置44を、直立部8上のアーム16の下の静止位置に戻す。
【0031】
ワークピースの3次元表面を測定するために、次の段階において、測定装置37を、測定を開始するのに適した初期位置に移動させる。初期位置において、支持用直立部26が直立部6の位置に移動させたときに測定装置37のセンサ38、40がワークピースの端部分をホルダ36の突出形状により測定範囲内にすでに捕らえているならば、支持用直立部26を直立部6まで移動させる。そうでなければ、支持用直立部26を初期位置に到達させるために、最初、支持用直立部26を直立部6上の静止位置からワークピースに向かって移動されなければならない。初期位置は、更に、中空スピンドル28の特定の角度位置を含み、かかる特定の角度位置は、この位置から中空スピンドル28の1回転を1つの回転方向で実行することができるように選択されることが好ましい。
【0032】
更に、第2のリニアドライブ34の駆動部材35の一定の接線方向位置を初期位置に設定する。これは、例えば、センサ38、40の光断面平面が支持軸線から離れた距離のところにあるときの駆動部材35の位置である。
【0033】
これらの初期位置から開始して、次に、測定装置37がアクティブであるとき、中空スピンドル28を時計回りに回転させる。回転移動は、一様であってもよいし、回転速度を変化させてもよい。回転移動の開始と同時に又は回転移動の開始から遅らせて第2のリニアドライブ34を作動させることによって、測定装置37を、接線方向である第1の方向に移動させ、それにより、測定値のデータを取得しながら、両方の移動を重ね合わせる。中空スピンドル28の、例えば約90度の、回転の後、第2のリニアドライブ34の接線方向移動は、一方の端に到達し、次いで、中空スピンドルを同じ方向に更に回転させながら、第2のリニアドライブ34を逆転させて、反対方向のがたつきなしに戻す。中空スピンドル28の、例えば270度の、回転の後、第2のリニアドライブ34を再び逆転させて、第1の方向に且つ接線方向に再び移動させ、中空スピンドル28が1回転したとき、測定装置37は、その初期位置に到達する。いったん測定装置37を、上述した処理においてワークピースの周りに移動させ、測定装置37のセンサ38、40によってデータが取得されたワークピースの部分は、同時に起る測定装置37の接線方向移動により、多くの異なる視野方向からデータが取得されており、それにより、取得した測定値は、データが取得されたワークピースの部分の完全な3次元モデルの計算を可能にする。
【0034】
ワークピースが、測定装置の1回転でデータを取得すべき部分よりも長ければ、ワークピースの次の隣接したセクションのデータを取得するのに対応する量だけ、支持用直立部26を、第1のリニアドライブ24を制御することによって支持用直立部8に向かって移動させる。中空スピンドル28及び第2のリニアドライブ34は、この処理では、前の測定移動の終端に到達した位置のままであり、かかる位置は、次いで、軸線方向に移動させた支持用直立部26と共に次の測定移動のための初期位置になる。その後、上述したように、中空スピンドル28を反時計回りに回転させることにより、測定装置37を、交互に接線方向に移動させる。第2の測定移動の終端のところにおいて、中空スピンドル28及び第2のリニアドライブ34は、再び、第1の測定移動の前にあった初期位置にある。
【0035】
ワークピースの長さに応じて、上述した測定移動の後、更に軸線方向に移動させた支持用直立部26によって更に多くの測定移動を実施してもよい。
【0036】
測定移動の上述した形態は、本発明によるデバイスを用いた様々な有利に実施可能な選択肢の1つに過ぎない。支持軸線に対して半径方向に見て、ワークピースの3次元形状のデータを完全に取得すべきであれば、測定装置の接線方向移動を省略して、ワークピースを中心とする測定装置の連続する回転で測定を行ってもよい。更に、正確なデータ取得は、ワークピースの1つ又は2つの側での測定装置の接線方向移動を必要とし、従って、測定装置の接線方向移動による補完的なデータの取得が行われる時だけ、測定装置が回転時にこれらの側に向いている。他の場合、測定装置の連続回転中に同時に、測定装置の回転移動及び接線方向移動が重なるように、測定装置が接線方向に前後に1回又は数回追加で移動される場合も有利であると考えられる。回転移動及び接線方向移動の定められた組合せも、ここでは有利である。少ない数の達成可能な測定値は、途切れない連続的な測定移動の時間利得によって相殺される。