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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】試薬容器ラックおよび検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20221108BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G01N35/02 B
G01N35/00 C
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020055616
(22)【出願日】2020-03-26
(62)【分割の表示】P 2018183052の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020109420
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 卓也
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6771519(JP,B2)
【文献】特開2011-013235(JP,A)
【文献】実開昭63-052765(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202979(US,A1)
【文献】特開2008-296940(JP,A)
【文献】特開2017-111050(JP,A)
【文献】特開2009-156808(JP,A)
【文献】特開2009-121993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 1/00-1/44
B01L 1/00-99/00
B65D 41/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置に取り出し可能に設置される試薬容器ラックであって、
開口が形成された前記試薬を収容する試薬容器を保持する保持部と、
前記試薬容器の前記開口が形成された開口端面と前記開口端面の周縁部から延びる外側面とを含む口部との間に間隔を隔てて前記口部を覆う蓋部と、を備え、
前記蓋部は、前記口部の周囲の前記試薬容器の外表面と接触することにより、前記蓋部と前記試薬容器の前記外表面とによって前記口部を囲んだ空間を形成するように設けられている、試薬容器ラック。
【請求項2】
前記口部は、未開封の前記試薬容器に予め装着されたキャップを取り外して開封した際に露出する部分である、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項3】
前記口部の前記外側面は、未開封の前記試薬容器に予め装着されたキャップと係合する容器係合部を含み、
前記蓋部は、前記口部の前記開口端面および前記容器係合部との間に前記空間を形成するように前記口部を覆う、請求項1または2に記載の試薬容器ラック。
【請求項4】
前記容器係合部は、前記キャップと係合するねじ部である、請求項3に記載の試薬容器ラック。
【請求項5】
前記蓋部は、前記口部と非接触状態で前記口部を覆うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の試薬容器ラック。
【請求項6】
前記蓋部は、天板と、前記天板から前記保持部側に延びる筒状の側壁とを有し、
前記側壁の内部形状が、前記口部の外形よりも大きい、請求項5に記載の試薬容器ラック。
【請求項7】
前記側壁は、前記側壁の端部において、前記試薬容器の前記口部と前記口部よりも外形が大きい胴部とを接続する中間部の外面に当接するように形成されている、請求項6に記載の試薬容器ラック。
【請求項8】
前記側壁は、弾性材料からなり、前記試薬容器と当接する当接部を有し、
前記当接部は、前記端部において、前記端部に沿って環状に設けられている、請求項7に記載の試薬容器ラック。
【請求項9】
前記側壁は、内周面において、前記試薬容器の前記口部よりも外形が大きい胴部、および前記口部と前記胴部とを接続する中間部の、少なくとも一方に当接するように形成されている、請求項6に記載の試薬容器ラック。
【請求項10】
前記側壁は、弾性材料からなり、前記試薬容器と当接する当接部を有し、
前記当接部は、前記側壁の内周面から中心に向けて突出するように設けられている、請求項9に記載の試薬容器ラック。
【請求項11】
前記蓋部と係合し、前記当接部が、前記保持部に保持された前記試薬容器に対して押圧された状態で前記蓋部を保持する係合部をさらに備える、請求項8または0に記載の試薬容器ラック。
【請求項12】
前記保持部と前記蓋部とを連結する支持部をさらに備える、請求項1~1のいずれか1項に記載の試薬容器ラック。
【請求項13】
前記支持部は、前記保持部と前記蓋部との間で前記試薬容器の正面および側面が露出するように、前記保持部と前記蓋部とを互いに離れた位置で連結している、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項14】
前記支持部は、前記蓋部を、前記試薬容器の前記口部を覆う閉鎖位置と、前記保持部に対する前記試薬容器の載置および取出しが可能な開放位置と、に移動可能に支持している、請求項1または1に記載の試薬容器ラック。
【請求項15】
前記支持部は、前記蓋部を前記閉鎖位置と前記開放位置とに回動させる第1ヒンジ部を介して、前記蓋部に連結されている、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項16】
前記蓋部は、前記試薬を吸引する吸引管を挿入するための挿入口と、前記挿入口を塞ぐ開閉可能な閉塞部と、を有する、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項17】
前記閉塞部は、前記挿入口を開閉可能なように第2ヒンジ部を介して回動可能に前記蓋部に連結されている、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項18】
前記閉塞部を前記挿入口に向けて付勢する付勢部材をさらに備える、請求項1に記載の試薬容器ラック。
【請求項19】
前記閉塞部は、被押圧部が前記保持部側に押圧されることにより、前記蓋部の前記第1ヒンジ部よりも前記蓋部の先端側の位置に配置された前記第2ヒンジ部を中心に回動するように設けられている、請求項1または1に記載の試薬容器ラック。
【請求項20】
複数の前記保持部を備え、
前記蓋部は、前記複数の保持部の少なくとも1つに保持された前記試薬容器の前記口部を覆うように設けられている、請求項1~19のいずれか1項に記載の試薬容器ラック。
【請求項21】
前記保持部は、前記試薬容器の底部を支持する載置部と、前記試薬容器の外周面と対向する側部とを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の試薬容器ラック。
【請求項22】
前記保持部の前記載置部は、前記試薬容器を載置させる傾斜した載置面を有し、
前記蓋部は、傾斜した前記口部との間に前記空間を形成するように構成されている、請求項2に記載の試薬容器ラック。
【請求項23】
前記載置部は、前記保持部において前記試薬容器の底部を所定高さおよび所定角度で支持し、前記保持部に対して着脱可能な交換部品として構成されている、請求項2に記載の試薬容器ラック。
【請求項24】
前記試薬容器の試薬は、血液凝固分析用試薬である、請求項1~2のいずれか1項に記載の試薬容器ラック。
【請求項25】
請求項1~2のいずれか1項に記載された試薬容器ラックと、
前記試薬容器ラックの蓋部を開閉する開閉機構と、
前記試薬容器ラックに載置された前記試薬容器の試薬を分注する試薬分注部と、
検体と試薬とを含む測定用試料に基づく信号を検出する検出部と、
前記検出部で検出された信号に基づいて前記検体の分析を行う分析部と、
を備えた、検体分析装置。
【請求項26】
前記試薬容器ラックの蓋部は、試薬を吸引する吸引管を挿入するための挿入口と、前記挿入口を塞ぐ開閉可能な閉塞部と、を有し、
前記開閉機構は、前記試薬分注部の吸引管が前記試薬容器から試薬を吸引する際に、前記閉塞部を動かして前記挿入口を開閉することにより、前記蓋部を開閉する、請求項2に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器ラックおよび試薬容器ラックを備えた検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置が知られている。検体分析装置では、吸引管などにより試薬容器から試薬が吸引されるため、試薬を収容した試薬容器が検体分析装置に開封状態で設置される。試薬容器が開封状態で設置されることにより、容器内部の試薬が蒸発し分析性能に影響を及ぼすことがある。
【0003】
試薬の蒸発を低減する方法として、試薬容器の口部に試薬の蒸発を抑制する蓋体を取り付けることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、図16に示すように、試薬容器に嵌入される嵌入筒部901と、装着時に試薬容器の口部に当接するフランジ部902と、フランジ部902の内周面に試薬容器の開口を覆うように配置された変形可能な蓋部903と、蓋部903の中央に形成された吸引具を受け入れるための開口904と、を有する試薬容器用蓋体900が開示されている。この試薬容器用蓋体900では、蓋部903が試薬容器の開口を部分的に覆うことにより、試薬の蒸発を抑制する。この試薬容器用蓋体900では、蓋部903が、切り込み905によって変形可能なので、吸引具が開口904に挿入された場合に吸引具が蓋部903に接触しても、蓋部903の変形によって吸引動作の妨げとならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4829624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の試薬容器用蓋体900では、開口904を介して試薬容器の内部が開放されているため、試薬容器内の試薬の蒸発を十分に抑制することはできない。また、試薬容器用蓋体900が試薬容器の口部内に直接接触すること、試薬の付着した吸引具が蓋部903に接触しやすいこと、などの理由から、一度使用した試薬容器用蓋体900を別の試薬容器に装着しようとすると、試薬のコンタミネーションの可能性が生じる。コンタミネーションの可能性を回避するには、蓋体を使い捨てにするか、蓋体を別の試薬容器に付け替える際に十分な洗浄を行う必要があった。
【0006】
そのため、ユーザの利便性の観点から、開封した試薬容器を検体分析装置に設置したままでも十分に試薬の蒸発を抑制でき、試薬容器を取り替えてもそのまま使用できるようにコンタミネーションの可能性を抑制できることが望まれている。
【0007】
この発明は、開封した試薬容器を検体分析装置に設置した状態で試薬の蒸発を効果的に抑制し、かつ、別の試薬容器に取り替えても試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による試薬容器ラック(100)は、試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置(200)に取り出し可能に設置される試薬容器ラック(100)であって、開口が形成された試薬を収容する試薬容器(90)を保持する保持部(10)と、試薬容器(90)の開口が形成された開口端面と開口端面の周縁部から延びる外側面とを含む口部(91)との間に間隔を隔てて口部(91)を覆う蓋部(20)と、を備え、蓋部は、口部の周囲の試薬容器の外表面と接触することにより、蓋部と試薬容器の外表面とによって口部を囲んだ空間を形成するように設けられている。
【0009】
第1の局面による試薬容器ラック(100)では、上記のように構成することによって、試薬容器(90)の口部(91)を覆う蓋部(20)と、試薬容器(90)とによって空間(CS)を形成し、この空間(CS)の内部に口部(91)を配置することができる。これにより、試薬容器(90)の内部は口部(91)を介して空間(CS)内に連通するのみで、蓋部(20)の外部からは隔離できる。その結果、試薬容器(90)に収容された試薬が外部に無制限に蒸発することが抑制されるので、開封した試薬容器を検体分析装置に設置した状態でも試薬の蒸発を効果的に抑制できる。さらに、蓋部(20)が口部(91)を覆っても、蓋部(20)と口部(91)との間に空間(CS)が形成されるので、試薬が付着する可能性のある口部(91)を介して蓋部(20)に試薬が付着することが抑制される。その結果、蓋部(20)が覆う試薬容器(90)を別の試薬容器(90)に取り替えても、試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、口部(91)は、未開封の試薬容器(90)に予め装着されたキャップ(95)を取り外して開封した際に露出する部分である。ここで、試薬容器(90)は、未開封の状態で封止用のキャップ(95)が口部(91)に装着された状態で販売等に供せられ、キャップ(95)を取り外した開封した状態で試薬容器ラック(100)にセットされ、検体分析装置(200)に設置される。試薬容器(90)を予め封止するキャップ(95)には、内部の試薬が付着している可能性があるため、キャップ(95)により覆われる部分には試薬が付着している可能性がある。そのため、上記構成によれば、キャップ(95)により覆われる口部(91)との間に空間(CS)を形成して口部(91)を覆う蓋部(20)によって、蓋部(20)への試薬付着の可能性をさらに低減できる。そのため、試薬容器ラック(100)にセットする試薬容器(90)を交換する際に、蓋部(20)を介した試薬のコンタミネーションの可能性を効果的に抑制できる。
【0011】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、口部(91)の外側面は、未開封の試薬容器(90)に予め装着されたキャップ(95)と係合する容器係合部(91b)を含み、蓋部(20)は、口部(91)の開口端面(91a)および容器係合部(91b)との間に空間(CS)を形成するように口部(91)を覆う。このように構成すれば、試薬吸引時に吸引管(121)を介して試薬が付着する可能性がある開口端面(91a)だけでなく、試薬容器(90)を予め封止するキャップ(95)を介して試薬が付着する可能性がある容器係合部(91b)に対しても、蓋部(20)が空間(CS)を介して覆うので、蓋部(20)への試薬付着の可能性を効果的に低減できる。
【0012】
この場合において、口部(91)の容器係合部(91b)は、キャップ(95)と係合するねじ部でありうる。
【0013】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、蓋部(20)は、口部(91)と非接触状態で口部(91)を覆うように構成されている。このように構成すれば、口部(91)を覆った状態で蓋部(20)が口部(91)と接触することが防止できるので、より確実に、試薬のコンタミネーションを抑制できる。
【0014】
この場合、好ましくは、蓋部(20)は、天板(21)と、天板(21)から保持部(10)側に延びる筒状の側壁(22)とを有し、側壁(22)の内部形状が、口部(91)の外形よりも大きい。このように構成すれば、口部(91)の周縁と側壁(22)との間の隙間を確保できる。そのため、口部(91)と天板(21)との接触のみならず、口部(91)の周縁が蓋部(20)と接触することが回避できるので、より一層確実に、試薬のコンタミネーションを抑制できる。
【0015】
上記蓋部(20)が天板(21)と側壁(22)とを有する構成において、好ましくは、側壁(22)は、側壁(22)の端部(22a)において、試薬容器(90)の口部(91)と口部(91)よりも外形が大きい胴部(92)とを接続する中間部(94)の外面に当接するように形成されている。このように構成すれば、試薬容器(90)の口部(91)から胴部(92)に至る間の中間部(94)で外径寸法が大きくなるので、側壁(22)の端部(22a)を中間部(94)に当接させることにより、側壁(22)よりも外径寸法が大きくなる試薬容器(90)であれば空間(CS)を形成できるようになる。そのため、蓋部(20)が使用可能な試薬容器(90)のサイズの範囲を容易に確保できる。
【0016】
上記側壁(22)の端部(22a)において試薬容器(90)の中間部(94)に当接する構成において、好ましくは、側壁(22)は、弾性材料からなり、試薬容器(90)と当接する当接部(23)を有し、当接部(23)は、端部(22a)において、端部(22a)に沿って環状に設けられている。このように構成すれば、当接部(23)の弾性変形により、側壁(22)の端部(22a)の当接部(23)と試薬容器(90)とを密着させることができる。これにより、蓋部(20)内に形成される空間(CS)の密閉度をさらに向上させることができるので、試薬の蒸発をさらに効果的に抑制できる。
【0017】
上記蓋部(20)が天板(21)と側壁(22)とを有する構成において、好ましくは、側壁(22)は、内周面(22b)において、試薬容器(90)の口部(91)よりも外形が大きい胴部(92)、および口部(91)と胴部(92)とを接続する中間部(94)の、少なくとも一方に当接するように形成されている。このように構成すれば、外径寸法の小さい試薬容器(90)であっても、側壁(22)の内周面(22b)で試薬容器(90)と当接して空間(CS)を形成できる。
【0018】
この場合、好ましくは、側壁(22)は、弾性材料からなり、試薬容器(90)と当接する当接部(23)を有し、当接部(23)は、側壁(22)の内周面(22b)から中心に向けて突出するように設けられている。このように構成すれば、当接部(23)の弾性変形により、側壁(22)の内周面(22b)の当接部(23)と試薬容器(90)とを密着させることができる。これにより、蓋部(20)内に形成される空間(CS)の密閉度をさらに向上させることができるので、試薬の蒸発をさらに効果的に抑制できる。また、当接部(23)が弾性変形するので、蓋部(20)が使用可能な試薬容器(90)のサイズの範囲を容易に確保できる。
【0020】
上記側壁(22)が、弾性材料からなる当接部(23)を有する構成において、好ましくは、蓋部(20)と係合し、当接部(23)が、保持部(10)に保持された試薬容器(90)に対して押圧された状態で蓋部(20)を保持する係合部(41)をさらに備える。このように構成すれば、蓋部(20)を係合部(41)に係合させることにより、当接部(23)が試薬容器(90)に押圧されて密着するように弾性変形した状態を保持できる。これにより、蓋部(20)内に形成される空間(CS)を密閉させた状態を容易に維持できる。
【0021】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、保持部(10)と蓋部(20)とを連結する支持部(30)をさらに備える。このように構成すれば、保持部(10)と蓋部(20)とを分離した別部品として備えるのではなく、保持部(10)と蓋部(20)とが支持部(30)を介してつながった単一の試薬容器ラック(100)を得ることができる。これにより、各部品を個別に管理せずに済み試薬容器ラック(100)の取り扱いが容易になるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0022】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、支持部(30)は、保持部(10)と蓋部(20)との間で試薬容器(90)の正面および側面が露出するように、保持部(10)と蓋部(20)とを互いに離れた位置で連結している。ここで、検体分析装置(200)では、試薬容器(90)を室温とは異なる温度で保管する場合がある。その場合、試薬容器(90)の大部分が試薬容器ラック(100)の蓋部や保持部などで覆われてしまうと、熱伝達が阻害され、試薬容器(90)内の試薬が設定温度に達するのが遅くなる。そこで、上記のように構成すれば、試薬容器(90)の口部(91)を蓋部(20)によって覆いつつ、蓋部(20)の外部では試薬容器(90)の広い範囲を試薬容器ラック(100)から外部に露出させて、熱伝達が阻害されるのを抑制することができる。その結果、試薬の蒸発を抑制しつつ、試薬容器(90)内の試薬温度を設定温度に速やかに到達させることができる。
【0023】
上記支持部(30)を備える構成において、好ましくは、支持部(30)は、蓋部(20)を、試薬容器(90)の口部(91)を覆う閉鎖位置(P1)と、保持部(10)に対する試薬容器(90)の載置および取出しが可能な開放位置(P2)と、に移動可能に支持している。このように構成すれば、保持部(10)と蓋部(20)とを支持部(30)によって連結する場合でも、蓋部(20)を移動させて保持部(10)への試薬容器(90)の載置や交換を容易に行うことができるので、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0024】
この場合、支持部(30)は、蓋部(20)を閉鎖位置(P1)と開放位置(P2)とに回動させる第1ヒンジ部(31)を介して、蓋部(20)に連結されていてもよい。
【0025】
上記支持部(30)が第1ヒンジ部(31)を介して蓋部(20)に連結される構成において、好ましくは、蓋部(20)は、試薬を吸引する吸引管(121)を挿入するための挿入口(24)と、挿入口(24)を塞ぐ開閉可能な閉塞部(25)と、を有する。このように構成すれば、蓋部(20)を閉鎖位置(P1)に配置して口部(91)を覆った状態のままで、閉塞部(25)を開放して、吸引管(121)による試薬吸引を行える。そのため、試薬吸引を行う際に蓋部(20)の全体を開放位置(P2)へ移動させる構成と比べて、試薬容器(90)の内部が外部に開放されることを抑制できるので、その分、試薬の蒸発を抑制できる。
【0026】
この場合、好ましくは、閉塞部(25)は、挿入口(24)を開閉可能なように第2ヒンジ部(26)を介して回動可能に蓋部(20)に連結されている。このように構成すれば、閉塞部(25)を回動させるだけで、容易に挿入口(24)を開閉できる。
【0027】
上記閉塞部(25)が第2ヒンジ部(26)を介して回動可能である構成において、好ましくは、閉塞部(25)を挿入口(24)に向けて付勢する付勢部材(27)をさらに備える。このように構成すれば、付勢部材(27)の付勢力によって、閉塞部(25)を閉じた状態での密閉度を向上させることができる。
【0028】
上記閉塞部(25)が第2ヒンジ部(26)を介して回動可能である構成において、好ましくは、閉塞部(25)は、被押圧部(25b)が保持部(10)側に押圧されることにより、蓋部(20)の第1ヒンジ部(31)よりも蓋部(20)の先端側の位置に配置された第2ヒンジ部(26)を中心に回動するように設けられている。なお、「蓋部の先端側」とは、第1ヒンジ部を中心とする半径方向の先端側のことである。このように構成すれば、閉塞部(25)を開放するために被押圧部(25b)を保持部(10)側に押圧した場合に、押圧力を、蓋部(20)を第1ヒンジ部(31)回りに保持部(10)側へ回転させる方向に作用させることができる。そのため、閉塞部(25)を開閉させる場合でも、蓋部(20)と試薬容器(90)との間の密閉度が低下することがない。
【0029】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、複数の保持部(10)を備え、蓋部(20)は、複数の保持部(10)の少なくとも1つに保持された試薬容器(90)の口部(91)を覆うように設けられている。このように構成すれば、たとえば1つの測定項目に対して複数の試薬が用いられる場合などに、使用する試薬容器(90)を同じ試薬容器ラック(100)にまとめて載置できるので、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。ここで、蒸発に起因する試薬濃度の変化が分析結果に影響しにくい試薬もあり、そのような試薬については蓋部(20)による試薬の蒸発抑制は必ずしも必要ではない。そのため、上記構成では、必要な試薬容器(90)に蓋部(20)を設けて、必要でない試薬容器(90)には蓋部(20)を設けないでおくことができるので、蓋部(20)を設けない保持部(10)では試薬容器(90)の載置や交換を簡易化できる。
【0030】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、好ましくは、保持部(10)は、試薬容器(90)の底部(93)を支持する載置部(11)と、試薬容器(90)の外周面と対向する側部(12)とを含む。このように構成すれば、載置部(11)によって試薬容器(90)を安定して支持し、側部(12)によって試薬容器(90)が位置ずれすることを抑制できる。
【0031】
この場合、好ましくは、保持部(10)の載置部(11)は、試薬容器(90)を載置させる傾斜した載置面(11a)を有し、蓋部(20)は、傾斜した口部(91)との間に空間(CS)を形成するように構成されている。このように構成すれば、試薬容器(90)を傾斜させて、高さが最も低くなる部分に試薬を集めることができる。これにより、試薬残量が少なくなった場合にも試薬を集めて吸引できるので、試薬のデッドボリュームを減少させることができる。そして、このように試薬容器(90)を傾斜させた状態でも、蓋部(20)によって口部(91)を覆うことにより試薬の蒸発を抑制できるので、蒸発による試薬の濃度変化を抑制しながら、試薬を極力有効利用することができる。
【0032】
この場合、好ましくは、載置部(11)は、保持部(10)において試薬容器(90)の底部(93)を所定高さおよび所定角度で支持し、保持部(10)に対して着脱可能な交換部品として構成されている。このように構成すれば、載置部(11)の交換によって、寸法の異なる試薬容器(90)を同じ高さに配置したり、最適な傾斜角度で保持したりすることができる。
【0033】
上記第1の局面による試薬容器ラック(100)において、試薬容器(90)の試薬は、血液凝固分析用試薬であってよい。
【0034】
この発明の第2の局面による検体分析装置(200)は、上記第1の局面のいずれかの試薬容器ラック(100)と、試薬容器ラック(100)の蓋部(20)を開閉する開閉機構(110)と、試薬容器ラック(100)に載置された試薬容器(90)の試薬を分注する試薬分注部(120)と、検体と試薬とを含む測定用試料に基づく信号を検出する検出部(130)と、検出部(130)で検出された信号に基づいて検体の分析を行う分析部(140)と、を備える。
【0035】
第2の局面による検体分析装置(200)では、上記第1の局面による試薬容器ラック(100)を備えることによって、開封した試薬容器を検体分析装置に設置した状態でも試薬の蒸発を効果的に抑制でき、かつ、蓋部(20)が覆う試薬容器(90)を別の試薬容器(90)に取り替えても、試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することができる。
【0036】
上記第2の局面による検体分析装置(200)において、好ましくは、試薬容器ラック(100)の蓋部(20)は、試薬を吸引する吸引管(121)を挿入するための挿入口(24)と、挿入口(24)を塞ぐ開閉可能な閉塞部(25)と、を有し、開閉機構(110)は、試薬分注部(120)の吸引管(121)が試薬容器(90)から試薬を吸引する際に、閉塞部(25)を動かして挿入口(24)を開閉することにより、蓋部(20)を開閉する。このように構成すれば、試薬容器ラック(100)の蓋部(20)と口部(91)との間に空間(CS)を形成した状態で、開閉機構(110)によって挿入口(24)の部分だけを局所的に開放して、吸引管(121)による試薬吸引を行える。そのため、試薬吸引を行う際に蓋部(20)の全体を試薬容器(90)から外して口部(91)を開放させる構成と比べて、試薬容器(90)の内部が外部に開放されることを抑制できるので、その分、試薬の蒸発を抑制できる。
【発明の効果】
【0037】
開封した試薬容器を検体分析装置に設置した状態で試薬の蒸発を効果的に抑制し、かつ、別の試薬容器に取り替えても試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】試薬容器ラックの概要を示す図である。
図2】口部の拡大図(A)、蓋部の構成例(B)および(C)を示す図である。
図3】検体分析装置の概要を示す図である。
図4】検体分析装置の具体的な構成例を示した模式図である。
図5】検体分析装置の制御的な構成を示したブロック図である。
図6】試薬容器ラックの具体的な構成例を示した斜視図である。
図7】蓋部を開放位置に配置した試薬容器ラックの斜視図である。
図8】試薬容器を載置して蓋部を閉じた状態の試薬容器ラックを示した斜視図である。
図9】試薬容器ラックの平面図である。
図10】試薬容器ラックの蓋部を通る縦断面を示した拡大断面図である。
図11】開閉機構が閉塞部を閉じた状態を示した模式図である。
図12】開閉機構が閉塞部を開いた状態を示した模式図である。
図13】検体分析装置の分析動作を説明するためのフロー図である。
図14】検体分析装置の試薬交換時の動作を説明するためのフロー図である。
図15】試薬容器の開封後経過時間に対する分析結果の乖離度の変化に関する実験結果を示した図である。
図16】従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
[試薬容器ラックの概要]
まず、図1を参照して、一実施形態による試薬容器ラック100の概要について説明する。
【0040】
試薬容器ラック100は、試薬を用いて検体の分析を行う検体分析装置200に使用される試薬容器ラックである。試薬容器ラック100は、検体分析装置200に設置され、少なくとも1つの試薬容器90を保持する。試薬容器90は、開封状態で試薬容器ラック100に保持される。たとえばユーザが、開封した試薬容器90を試薬容器ラック100にセットして、検体分析装置200の所定位置に設置する。検体分析装置200は、吸引管121などによって、試薬容器ラック100に保持された試薬容器90の内部から試薬を吸引することができる。吸引した試薬を用いて、検体の分析が行われる。試薬容器90は、所定回数の検体分析を行える量の試薬を収容する。試薬が消費され試薬容器90が空になった場合や、開封後使用期限に到達してそれ以上試薬を使用できなくなった試薬容器90は、試薬容器ラック100から取り出され、検体分析を行う場合には新たな試薬容器90と交換される。
【0041】
試薬容器90は、試薬を内部に収容する。試薬容器90は、液体を収容可能な筒状容器であり、液体の出入口となる開口が形成された口部91と、試薬を収容する空間を区画するための筒状の胴部92と、を備える。口部91は、試薬容器90の内部空間と外部とを連通する開口が露出する端面を含む。胴部92の下端が底部93によって塞がれており、胴部92の上端が口部91につながっている。試薬容器90は、通常、水平断面が円形の円筒状形状を有しうる。試薬容器90は、角筒形状など円筒以外の任意の筒状形状でありうる。以下では、便宜的に、試薬容器90が円形の水平断面形状を有する筒状容器である例を示す。
【0042】
特に限定されないが、通常、水平断面における胴部92の外形は、口部91の外形よりも大きい。試薬容器90は、水平断面における外形の大きさが異なる胴部92と口部91とを接続する中間部94を備えることがある。中間部94は、胴部92の上端部と口部91の下端部とを接続する。中間部94において、水平断面における試薬容器90の外形が、口部91に一致する形状から、胴部92の上端部に一致する形状となるように変化する。中間部94では、口部91から胴部92に近付くに従って連続的に外形が変化してもよいし、図1に示すように所定位置で非連続的に外形が変化してもよい。
【0043】
試薬は、液体である。試薬は、たとえば、検体分析による分析項目に応じた成分を含有した水溶液である。試薬は、たとえば、検体分析装置200において検体と混合されることにより、検体に含有する成分と反応する。試薬は、水分の蒸発によって、成分濃度が変化し、濃度変化が検体分析装置200による分析に影響する場合がある。
【0044】
本実施形態の試薬容器ラック100は、保持部10と、蓋部20と、を備える。
【0045】
保持部10は、試薬を収容する試薬容器90を保持する部分である。保持部10は、試薬容器90の一部と接触して支持することにより、試薬容器ラック100における試薬容器90の位置を保持する。保持部10は、たとえば試薬容器90の底部93を支持する。保持部10は、たとえば試薬容器90の両側面を挟み込んで把持する。保持部10は、たとえば試薬容器90に設けられたフランジ状の部分に係合して、試薬容器90を吊り下げるように保持しうる。
【0046】
蓋部20は、試薬容器90の口部91との間に気密空間CSが形成されるように口部91を覆うように構成されている。蓋部20は、試薬容器90の口部91の周囲を取り囲んで覆うように構成されている。蓋部20は、樹脂材料や金属材料などにより形成され、気体が透過しない程度の十分な厚みを有する。蓋部20は、試薬容器90の口部91の周囲の外表面と接触して、気密空間CSを形成する。気密空間CSは、蓋部20と試薬容器90の表面とによって囲まれた空間である。気密空間CSは、内部に口部91を含むように形成される。蓋部20と口部91との間に気密空間CSが形成されるので、蓋部20の表面は口部91から離れる。つまり、蓋部20は、試薬容器90の開口が形成された端面である口部91から離れた状態で、口部91を含む領域を覆うように設けられる。
【0047】
気密空間CSは、口部91を介して試薬容器90の内部空間と連通する。気密空間CSおよび試薬容器90の内部空間は、蓋部20と試薬容器90とによって、外部から隔離される。蓋部20と試薬容器90の表面とによって、気密空間CSの内部と外部との間で気体の流通が制限される。このため、試薬容器90内の試薬は、極微量が蒸発して試薬容器90の内部空間および気密空間CSの内部に放出されるのみとなる。気密空間CSは、厳密な意味で気密空間でなくてもよく、蓋部20と試薬容器90との当接箇所において、微小な凹凸や表面形状の変化によって不可避的に形成される僅かな隙間が存在することは許容する。
【0048】
蓋部20は、保持部10に保持された試薬容器90と接触して、口部91との間に気密空間CSを形成するように設けられる。検体分析装置200による試薬吸引の際には、たとえば、蓋部20が気密空間CSを形成する位置から移動され、口部91が外部に開放されうる。外部に開放された口部91を介して、吸引管121が試薬容器90内に進入して、内部の試薬が吸引管121により吸引される。試薬吸引が終了し、吸引管121が試薬容器90の外部へ移動すると、蓋部20が気密空間CSを形成する位置へ移動される。たとえば吸引管121が試薬容器90の外部へ移動する際、口部91の付近に試薬の液滴が付着する可能性がある。蓋部20は、気密空間CSを形成した状態で口部91との間に間隔が形成されるので、蓋部20に液滴が付着することが抑制される。試薬容器ラック100にセットされる試薬容器90が交換された場合にも、蓋部20が口部91との間に気密空間CSが形成されるように口部91を覆うので、別の試薬容器90内の液滴が蓋部20を介して新しい試薬容器90内に移動することが抑制される。
【0049】
このように、本実施形態の試薬容器ラック100では、試薬容器90の口部91を覆う蓋部20と、試薬容器90とによって気密空間CSを形成し、この気密空間CSの内部に口部91を配置することができる。これにより、試薬容器90の内部は口部91を介して気密空間CS内に連通するのみで、蓋部20の外部からは隔離できる。その結果、試薬容器90に収容された試薬が外部に無制限に蒸発することが抑制されるので、開封した試薬容器90を検体分析装置200に設置した状態でも試薬の蒸発を効果的に抑制できる。さらに、蓋部20が口部91を覆っても、蓋部20と口部91との間に気密空間CSが形成されるので、試薬が付着する可能性のある口部91を介して蓋部20に試薬が付着することが抑制される。その結果、蓋部20が覆う試薬容器90を別の試薬容器90に取り替えても、試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することができる。
【0050】
(蓋部の構成例)
図1の構成例では、蓋部20は、口部91と非接触状態で口部91を覆うように構成されている。図1では、蓋部20は、口部91との間に、隙間が形成されるように、口部91を覆う。図1では、口部91の上方に隙間CL1を隔てて、かつ、口部91の側方に隙間CL2を隔てて、蓋部20が口部91を覆う。これにより、口部91を覆った状態で蓋部20が口部91と接触することが防止できるので、より確実に、試薬のコンタミネーションを抑制できる。
【0051】
図1の構成例では、蓋部20は、天板21と、天板21から保持部10側に延びる筒状の側壁22とを有する。天板21は、口部91の上方を覆う。天板21は、蓋部20の上面を構成しうる。側壁22は、口部91の周囲を取り囲むように覆う。側壁22は、口部91の周囲を取り囲む筒状に形成される。天板21と筒状の側壁22とによって、蓋部20には、口部91を内部に収容可能な凹状の内部空間が形成されている。蓋部20と試薬容器90との接触により蓋部20の内部空間が閉じられることにより、気密空間CSが形成される。たとえば蓋部20が半球殻形状を有する場合など、蓋部20は天板21と側壁22とに区分できない形状であってもよい。
【0052】
天板21は、上方から見た形状が、試薬容器90の口部91の外形よりも大きい。つまり、天板21の周縁部が、口部91の周縁部よりも外側に配置される。蓋部20が口部91を覆う状態で、天板21は、口部91の上方に隙間CL1を隔てた位置に配置されている。図1では、天板21が平板形状を有する。天板21は、曲面状など非平板形状に形成されてもよい。図1では、天板21が水平方向に延びて蓋部20の上面を形成する。天板21は、傾斜していてもよい。
【0053】
側壁22は、蓋部20が試薬容器90の口部91を覆った状態で、天板21から保持部10に向けて延びている。図1の例では、側壁22が天板21の下面から下方向に延びている。図1の例では、側壁22が天板21の周縁部から延びている。側壁22は、天板21の周縁部よりも内側の位置から延びていてもよい。図1の例では、蓋部20と試薬容器90との当接位置から天板21までの上下方向の長さL1が、蓋部20と試薬容器90との当接位置から口部91までの上下方向の距離D1よりも大きい。
【0054】
筒状の側壁22は、水平面内において内側に試薬容器90の口部91を配置可能に構成されている。つまり、側壁22の内部形状が、口部91の外形よりも大きい。内部形状は、水平断面における筒状の側壁22の内周面の輪郭形状である。側壁22が円筒形状を有する場合、側壁22の内径が口部91の外径よりも大きい。このため、蓋部20が口部91を覆う状態で、側壁22は、口部91の側方に隙間CL2を隔てた位置に配置される。
【0055】
これにより、口部91の周縁と側壁22との間の隙間を確保できる。そのため、口部91と天板21との接触のみならず、口部91の周縁が蓋部20と接触することが回避できるので、より一層確実に、試薬のコンタミネーションを抑制できる。
【0056】
図1の例では、蓋部20は、側壁22が試薬容器90の口部91以外の容器外面に当接することにより、蓋部20と口部91との間に気密空間CSを形成するように口部91を覆う。これにより、蓋部20と口部91との接触を回避しつつ、側壁22と試薬容器90の容器外面との接触によって、蓋部20内に形成される気密空間CSの密閉度を向上させることができる。その結果、試薬の蒸発を効果的に抑制できる。
【0057】
また、図1の例では、側壁22は、側壁22の端部22aにおいて、試薬容器90の口部91と口部91よりも外形が大きい胴部92とを接続する中間部94の外面に当接するように形成されている。すなわち、側壁22の内径は、口部91の外径よりも大きく、胴部92の外径よりも小さい。そのため、側壁22の端部22aが、試薬容器90の平坦な中間部94に対して、上方から当接する。
【0058】
このように、試薬容器90の口部91から胴部92に至る間の中間部94で外径寸法が大きくなるので、側壁22の端部22aを中間部94に当接させることにより、側壁22よりも外径寸法が大きくなる試薬容器90であれば気密空間CSを形成できるようになる。つまり、蓋部20は、胴部92の外径が側壁22の内径よりも大きいサイズの任意の試薬容器90に対して、気密空間CSを形成できる。そのため、蓋部20が使用可能な試薬容器90のサイズの範囲を容易に確保できる。
【0059】
図1では簡略化して図示しているが、口部91は、図2(A)に示すように、未開封の試薬容器90に予め装着されたキャップ95を取り外して開封した際に露出する部分でありうる。すなわち、試薬容器90は、未開封の状態で封止用のキャップ95が口部91に装着された状態で販売等に供せられる。試薬容器90は、キャップ95を取り外した開封した状態で試薬容器ラック100にセットされ、検体分析装置200に設置される。輸送時や保管時に試薬容器90が転倒する場合などがあり、試薬容器90を予め封止するキャップ95には、内部の試薬が付着している可能性がある。そのため、キャップ95により覆われる部分には試薬が付着している可能性がある。そのため、キャップ95により覆われる口部91との間に気密空間CSを形成して口部91を覆う蓋部20によって、蓋部20への試薬付着の可能性をさらに低減できる。これにより、試薬容器ラック100にセットする試薬容器90を交換する際に、蓋部20を介した試薬のコンタミネーションの可能性を効果的に抑制できる。
【0060】
具体的には、口部91は、試薬容器90の開口が形成された開口端面91aと、未開封の試薬容器90に予め装着されたキャップ95と係合する容器係合部91bとを含む部分である。蓋部20は、口部91の開口端面91aおよび容器係合部91bとの間に気密空間CSを形成するように口部91を覆う。これにより、試薬吸引時に吸引管121を介して試薬が付着する可能性がある開口端面91aだけでなく、試薬容器90を予め封止するキャップ95を介して試薬が付着する可能性がある容器係合部91bに対しても、蓋部20が気密空間CSを介して覆うので、蓋部20への試薬付着の可能性を効果的に低減できる。
【0061】
口部91の容器係合部91bは、キャップ95と係合するねじ部でありうる。容器係合部91bは、開口端面91aの周縁部から胴部92側に延びる口部91の外側面を構成し、キャップ95の雌ねじ部と係合する。
【0062】
図2(B)に示す例では、側壁22は、弾性材料からなり、試薬容器90と当接する当接部23を有する。弾性材料からなる当接部23は、側壁22において、少なくとも試薬容器90と当接する位置に設けられている。すなわち、当接部23は、端部22aにおいて、端部22aに沿って環状に設けられている。側壁22の全体、または蓋部20の全体が、弾性材料から構成されていてもよい。蓋部20が試薬容器90に対して押圧されると、当接部23が試薬容器90に押し付けられて弾性変形する。当接部23の弾性変形により、側壁22の端部22aの当接部23と試薬容器90とを密着させることができる。これにより、蓋部20内に形成される気密空間CSの密閉度をさらに向上させることができるので、試薬の蒸発をさらに効果的に抑制できる。
【0063】
図2(C)の例では、側壁22は、内周面22bにおいて、試薬容器90の口部91よりも外形が大きい胴部92、および口部91と胴部92とを接続する中間部94の、少なくとも一方に当接するように形成されている。つまり、図2(B)に示した端部22aでの当接と異なり、図2(C)の側壁22は、内周面22bで試薬容器90の容器外面と当接する。側壁22の内周面22bには、内側に突出して内径が小さくなる部分が形成されている。このため、試薬容器90が、側壁22の端部22aを通過して、側壁22の内周面22bの一部と当接する。これにより、外径寸法の小さい試薬容器90であっても、側壁22の内周面22bで試薬容器90と当接して気密空間CSを形成できる。たとえば、図2(C)のように側壁22の端部22aの内径よりも外径が小さい試薬容器90に対しても、側壁22の内周面22bを当接させて気密空間CSを形成できる。図2(C)では側壁22の内周面22bが試薬容器90の中間部94と当接しているが、側壁22の内周面22bが試薬容器90の胴部92の外周面と当接してもよい。
【0064】
図2(C)の例においても、弾性材料からなる当接部23を設けてもよい。すなわち、図2(C)では、側壁22は、弾性材料からなり、試薬容器90と当接する当接部23を有する。当接部23は、側壁22の内周面22bから中心に向けて突出するように設けられている。蓋部20が試薬容器90に対して押圧されると、当接部23が試薬容器90に押し付けられて弾性変形する。当接部23の弾性変形により、側壁22の内周面22bの当接部23と試薬容器90とを密着させることができる。これにより、蓋部20内に形成される気密空間CSの密閉度をさらに向上させることができるので、試薬の蒸発をさらに効果的に抑制できる。
【0065】
図2(C)の例では、当接部23は、さらに、側壁22の端部22a側から天板21側へ向かうに従って内径が小さくなるように、突出している。つまり、当接部23が、側壁22の傾斜した内周面22bを構成している。このため、外径の異なる種々の試薬容器90であっても、当接部23の傾斜面のいずれかの位置で当接して、気密空間CSが形成できる。これにより、蓋部(20)が使用可能な試薬容器(90)のサイズの範囲を容易に確保できる。
【0066】
弾性材料からなる当接部23は、たとえば、側壁22のうち当接部23以外の部分と比較して、弾性変形しやすい。好ましくは、当接部23は、試薬容器90と当接して気密空間CSを密閉するためのシール部材により構成されている。シール部材は、たとえば天然ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムなど、柔軟で気体の透過性が小さい弾性材料からなる。そのため、当接部23は、試薬容器90に密着可能な弾性と、使用目的上、十分なシール性を有する。これにより、シール部材を密着させることによって、蓋部20と試薬容器90との間をより確実に密閉することができる。
【0067】
[検体分析装置の概要]
次に、図3を参照して、一実施形態による検体分析装置200の概要について説明する。
【0068】
検体分析装置200は、試薬を用いて検体中の成分に基づく信号を検出し、検体を分析する装置である。
【0069】
検体は、被検体から採取された生体由来の物質でありうる。検体には、検出対象成分が含まれる。検体に試薬を添加して反応させることにより、検出対象成分の測定用試料が調製される。被検体は、主としてヒトであるが、ヒト以外の他の動物であってもよい。検体分析装置200は、たとえば患者から採取された検体の臨床検査または医学的研究のための分析を行う。生体由来の検体は、たとえば、被検体から採取された血液(全血、血清または血漿)、尿、またはその他の体液などの液体、あるいは、採取された体液や血液に所定の前処理を施して得られた液体などである。また、検体は、たとえば、液体以外の、被検体の組織の一部や細胞などであってもよい。検体分析装置200は、検体中に含有される検出対象成分を検出する。検出対象成分は、たとえば、血液や尿検体中の所定の成分、細胞や有形成分を含んでもよい。検出対象成分は、DNA(デオキシリボ核酸)などの核酸、細胞および細胞内物質、抗原または抗体、タンパク質、ペプチドなどでもよい。
【0070】
検体分析装置200は、上述の試薬容器ラック100と、開閉機構110と、試薬分注部120と、検出部130と、分析部140と、を備える。
【0071】
検体分析装置200には、試薬容器90がセットされた試薬容器ラック100が設置される。検体分析に先だって、たとえばユーザが試薬容器ラック100に試薬容器90をセットし、試薬容器90の口部91を試薬容器ラック100の蓋部20によって覆った状態で、試薬容器ラック100を検体分析装置200の所定位置に配置する。
【0072】
開閉機構110は、試薬容器ラック100の蓋部20を開閉する。開閉機構110は、蓋部20の一部または全部を、移動させる。移動により、開閉機構110は、蓋部20によって気密空間CSが形成される状態と、少なくとも試薬分注部120が口部91にアクセスして試薬容器90からの試薬吸引が可能な状態と、に切り替えることができる。開閉機構110は、試薬分注部120による吸引時にのみ、蓋部20を試薬吸引が可能な状態とすることができる。
【0073】
開閉機構110は、たとえば、蓋部20に接触して蓋部20に外力を付与することにより、蓋部20の一部または全部を移動させる。開閉機構110は、蓋部20の所定箇所を押圧して移動させる押圧装置、蓋部20の所定箇所を把持して移動させる把持装置、磁力、圧力などにより蓋部20を吸着して移動させる装置、などにより構成されうる。後述するように、蓋部20の一部に開閉可能な挿入口が設けられる場合、開閉機構110は、蓋部20の挿入口の部分のみを移動させることによって、蓋部20を開閉してもよい。この場合、蓋部20は試薬容器90の口部91を覆った状態のまま、挿入口が開放されることにより気密空間CSが開放され、挿入口が閉じられることにより気密空間CSが形成される。
【0074】
試薬分注部120は、試薬容器ラック100に載置された試薬容器90の試薬を分注する。すなわち、試薬分注部120は、試薬容器ラック100に載置された試薬容器90の内部から試薬を吸引し、吸引した試薬を試薬容器90の外部の所定位置に吐出する。試薬分注部120は、たとえば検体を収容した反応容器、またはこれから検体が収容される反応容器に、試薬を分注する。分注された試薬は、検体と混合される。これにより、検体と試薬とを含む測定用試料が調製される。
【0075】
試薬分注部120は、たとえば試薬を吸引および吐出する吸引管121を含む。吸引管121は、たとえば両端が開放された直線状の管である。吸引管121は、一端が吸引用の負圧および吐出用の正圧を付与するポンプなどの圧力源(図示せず)と接続される。吸引管121は、他端から液体を吸引できる。試薬分注部120は、試薬容器90の内部と外部との間で吸引管121を移動させるための移動機構(図示せず)を含みうる。吸引管121を固定して、試薬容器ラック100の方が移動機構により移動してもよいし、吸引管121および試薬容器ラック100の両方が移動してもよい。
【0076】
検出部130は、検体と試薬とを含む測定用試料に基づく信号を検出する。検出部130は、たとえば、測定用試料における、検体中の成分と試薬との反応に伴う変化を検出する。検出部130による信号の検出方法は問わず、化学的方法、光学的方法、電磁気学的方法などの対象成分に応じた方法が採用できる。たとえば、検出部130は、イメージセンサを備えた撮像部、または、光電子増倍管、光電管、光ダイオードなどの光検出器を含みうる。検出部130は、光源を含みうる。検出部130は、放射線の検出を行う場合、たとえばシンチレーションカウンターなどの放射線検出器を含みうる。
【0077】
分析部140は、検出部130で検出された信号に基づいて検体の分析を行う。分析部140は、検出部130による検出結果に基づいて、たとえば検体に含まれる検出対象成分の有無、検出対象成分の数または量、検出対象成分の濃度や存在比率などの分析を行う。分析部140は、たとえば、検量線や標準試料の検出結果などの標準情報と検出部130による測定結果とに基づいて、検出対象成分に対する定量的な分析を行う。
【0078】
分析部140は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびハードディスクなどの記憶部とを備えたコンピュータにより構成されうる。プロセッサが記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、コンピュータを検体分析装置200の分析部140として機能させる。
【0079】
検体分析装置200では、開閉機構110により試薬容器ラック100の蓋部20が移動されて試薬容器90からの試薬吸引が可能な状態に切り替えられた後、開放された口部91を介して、試薬容器90内の試薬が試薬分注部120により吸引される。試薬容器90からの試薬吸引の後、蓋部20は、開閉機構110によって、気密空間CSを形成する。試薬分注部120は、吸引した試薬を吐出して、検体と試薬とを混合する。検体分析装置200は、検体と試薬とを含む測定用試料を調製する。検出部130が、調製された測定用試料から測定項目に応じた信号を検出する。分析部140が、検出部130の検出信号に基づいて分析を行う。
【0080】
このように、本実施形態では、検体分析装置200が試薬容器90の口部91を覆う蓋部20を有する試薬容器ラック100を備えるので、開封した試薬容器90を検体分析装置200に設置した状態でも試薬の蒸発を効果的に抑制でき、かつ、蓋部20が覆う試薬容器90を別の試薬容器90に取り替えても、試薬のコンタミネーションの可能性を抑制することができる。
【0081】
(検体分析装置の構成)
検体分析装置200のより具体的な構成例について説明する。検体分析装置200は、たとえば、血液凝固分析の自動分析装置(いわゆる血液凝固分析装置)である。
【0082】
(血液凝固分析)
血液凝固分析を行う検体分析装置200は、検出部130が受光部と送光部とを含み、検体に試薬を添加することにより調製された測定用試料に送光部から光を照射し、測定用試料に照射された光の透過光または散乱光を受光部により検出する。検体は、血液から分離された血漿または血清である。検体分析装置200は、凝固法、合成基質法、免疫比濁法または凝集法を用いて検体の分析を行う。分析部140は、検出した光に基づいて検体を分析する。
【0083】
凝固法では、測定用試料に光が照射され、試料からの透過光または散乱光の電気信号に基づいて、検体中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化する凝固時間が測定される。凝固法の測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)などがある。
【0084】
合成基質法では、測定用試料に光が照射され、試料からの透過光の電気信号に基づいて、測定用試料中の酵素に対する発色性合成基質の作用による発色度合いが測定される。合成基質法の測定項目としては、ATIII(アンチトロンビンIII)、α2-PI(α2-プラスミンインヒビター)、PLG(プラスミノーゲン)などがある。
【0085】
免疫比濁法では、検体中の凝固・線溶因子などに対して抗原抗体反応を生じる試薬が検体に添加され、試薬に含有される物質が抗原抗体反応の結果として凝集する。免疫比濁法では、測定用試料に光が照射され、試料からの透過光または散乱光の電気信号に基づいて、測定用試料中の試薬含有物質の凝集速度が測定される。免疫比濁法の測定項目としては、Dダイマー、FDP(フィブリン分解産物)などがある。
【0086】
凝集法では、測定用試料に光が照射され、試料からの透過光の電気信号に基づいて、測定用試料中の血小板などが凝集反応する過程の吸光度変化が測定される。凝集法の測定項目としては、vWF:RCo(フォンビルブランドリストセチンコファクター)や血小板凝集能などがある。
【0087】
(免疫測定)
また、たとえば、検体分析装置200は、免疫測定分析の自動分析装置(いわゆる免疫測定装置)でもよい。検体分析装置200は、血液中の対象成分と試薬中の成分との抗原抗体反応を利用して、対象成分を検出する。対象成分として、たとえば、血液に含まれる抗原または抗体、タンパク質や、ペプチドなどを検出する。免疫測定装置は、血清または血漿を検体として取得して、検体に含まれる抗原または抗体などを定量測定または定性測定する。なお、抗原抗体反応は、抗原と抗体との反応のみならず、アプタマー等の特異的結合物質を用いた反応を含む。アプタマーは、特定の物質と特異的に結合するように合成された核酸分子またはペプチドである。
【0088】
検体分析装置200は、試料から生じた光、すなわち、検体に含まれる被検物質に基づく化学発光を測定する。検体分析装置200は、検出部130が検出した光に基づいて測定データを生成する。
【0089】
ここで、化学発光とは、化学反応によるエネルギーを利用して発せられる光である。化学発光は、たとえば、化学反応により分子が励起されて励起状態になり、励起状態から基底状態に戻る時に放出される光である。検出部130が検出する化学発光は、たとえば、酵素免疫化学発光法(CLEIA)に基づくものであり、酵素と基質との反応により生じた光である。
【0090】
酵素免疫化学発光測定法では、たとえば2STEP法では、(1)反応容器中で検体中の被検物質を固相担体に担持させた後、(2)被検物質を担持した固相と液相とを分離する1次BF分離を行い、(3)反応容器中の被検物質を担持した固相に標識物質を結合させ、(4)2次BF分離を行い、(5)反応容器中に化学発光基質を加えて酵素反応を発生させる。酵素免疫化学発光測定法には、2STEP法の他に、公知の1STEP法、D-1STEP法(ディレイドワンステップ法)などがある。2STEP法の測定項目としてはHBsAgがある。1STEP法の測定項目としてはHBsAbがある。D-1STEP法の測定項目としてはFT3、FT4、TSHなどがある。
【0091】
なお、検出部130が検出する化学発光は、たとえば、化学発光分析法(CLIA)、電気化学発光分析法(ECLIA)、蛍光酵素測定法(FEIA法)、LOCI法(Luminescent Oxygen Channeling Immunoassay)、BLEIA法(生物発光酵素免疫法)などに基づく光であってもよい。
【0092】
(血球分析)
また、たとえば、検体分析装置200は、血球計数測定の自動分析装置(いわゆる血球分析装置)でもよい。検体分析装置200は、血液検体と試薬とを混合して調製した測定用試料を流路中に流し、流路中を流れる血球成分を検出し、計数する。血球分析用のユニットの検出部130は、たとえばフローサイトメトリー法により検出を行う。すなわち、検出部130は、試料を流通させる流路部と、流路部を流れる試料に測定光を照射する送光部と、試料に照射された光を検出する受光部とを含む。
【0093】
検出部130は、流路部に形成したシース液の流れの中に細胞などの粒子を流して、流れる粒子に送光部からレーザー光を照射し、散乱光や蛍光を受光部により検出する。検体分析装置200は、検出部130が検出した光に基づいて個々の粒子を解析する。たとえば、散乱光強度と蛍光強度をパラメータとして組み合わせたスキャッタグラムなどが作成され、スキャッタグラムの分布などに基づき試料が解析される。フローサイトメトリー法による測定項目としては、NEUT(好中球)、LYMPH(リンパ球)、MONO(単球)、EO(好酸球)、BASO(好塩基球)などがある。
【0094】
また、検体分析装置200は、たとえばシースフローDC検出法による検出を行う。すなわち、検出部130は、試料を流通させる開口部が設けられた流路部と、開口部を挟んで対向するように配置された一対の電極(図示せず)間の電気的な変化を検出する検出部130とを含む。検出部130は、開口部を通過するシース液の流れの中に細胞などの粒子を流して、電極間には直流電流を流す。検出部130は、粒子が開口部を通過する際のパルス状の電流変化に基づいて、個々の粒子を検出する。シースフローDC検出法による測定項目としては、WBC(白血球)数、RBC(赤血球)数、HGB(ヘモグロビン量)、HCT(ヘマトクリット値)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均ヘモグロビン量)、MCHC(平均ヘモグロビン濃度)、PLT(血小板数)などがある。
【0095】
(検体分析装置の具体的構成)
図4は、血液凝固分析を行う検体分析装置200の具体的な構成例を示す。図4に示す検体分析装置200は、測定部101、搬送部102および分析部140を備えている。
【0096】
検体分析装置200は、検体を収容する検体容器104から検体を吸引して、反応容器108に定量分注する機能を備えている。
【0097】
搬送部102には、検体ラック105が設置される。検体ラック105には、検体を収容した検体容器104が複数本設置できる。搬送部102は、ユーザにより設置された検体ラック105を搬送して、各検体容器104を所定の検体吸引位置501または502に位置付ける。検体ラック105および検体容器104には、バーコードなどに識別情報を記録したラベル(図示せず)が貼付されている。検体ラック105および検体容器104の識別情報は、搬送経路の途中に設置されたリーダ103により読み出され、分析部140に送信される。識別情報によって、検体容器104中の検体と、検体の測定結果とが対応付けられて管理される。
【0098】
測定部101は、検体容器104中の検体を吸引して、反応容器108に定量分注するための検体分注部151および152を備えている。
【0099】
検体分注部151および152は、検体分注用のピペット153を旋回可能に保持する分注アームにより構成されている。ピペット153は、図示しないポンプと接続されており、検体の定量吸引および吐出ができる。検体分注部151は、ピペット153を移動させて検体吸引位置501の検体容器104から所定量の検体を吸引できる。検体分注部152は、ピペット153を移動させて検体吸引位置502の検体容器104から所定量の検体を吸引できる。検体分注部151および152は、それぞれ、ピペット153を移動させて、吸引した検体を所定の検体分注位置503、504に配置された反応容器108内に吐出できる。
【0100】
測定部101は、検体分注部により吸引した検体に所定の試薬が添加されることにより調製された測定用試料に対して、光学的な測定を行う。
【0101】
測定部101は、検体および試薬を収容して測定用試料が調製される反応容器108を各部に移送する機構を備える。図4の構成例では、測定部101は、反応容器108を搬送する回転テーブル160を備える。回転テーブル160は、平面視でリング形状を有し、周方向に回転できる。回転テーブル160は、周方向に沿って配列された複数の保持孔161を含む。保持孔161には、それぞれ1つずつ反応容器108を設置できる。検体分注部151および152は、回転テーブル160に保持された新しい反応容器108に、吸引した検体を分注できる。検体分注部151および152は、回転テーブル160上の検体を収容する反応容器108から、検体を吸引することもできる。
【0102】
回転テーブル160は、周方向に回転することにより、回転テーブル160に配置された反応容器108を搬送する。
【0103】
新しい反応容器108は、容器収納部(図示せず)に多数収納されており、容器収納部から1つずつ取り出される。容器収納部から取り出された反応容器108は、回転テーブル160の保持孔161に設置される。
【0104】
図4の構成例では、検体分析装置200は、反応容器108中の検体に試薬を添加して、測定用試料を調製する機能を備えている。測定用試料は、検体と試薬との混合液である。
【0105】
測定部101は、反応容器108を搬送可能な把持機構170を備える。把持機構170は、反応容器108を把持して移送し、保持孔161に反応容器108を設置したり、保持孔161から反応容器108を取り出したりできる。また、把持機構170は、保持した反応容器108を廃棄口106に移送できる。
【0106】
測定部101は、測定に使用する試薬容器90を収容する試薬テーブル180と、試薬テーブル180に設置された試薬容器90から試薬を吸引および吐出するための試薬分注部120とを備える。図4の例では、試薬分注部120は、複数(2つ)設けられており、それぞれ試薬分注部120a、試薬分注部120bとする。
【0107】
試薬テーブル180は、回転テーブル160の内側に配置され、平面視で円形状を有する。試薬テーブル180には、試薬容器90をセットして試薬容器ラックを設置することができる。試薬テーブル180には、複数の試薬容器ラックを設置できる。試薬容器90の試薬は、血液凝固分析用試薬である。
【0108】
具体的には、試薬テーブル180は、中央部に配置された平面視で円形状の第1テーブル181と、第1テーブル181の外周に設けられた平面視で円環状の第2テーブル182と、を含む。
【0109】
図4の例では、第1テーブル181には、4つの試薬容器ラック100を周方向に沿って並べて設置可能である。第2テーブル182には、大型の試薬容器ラック300を3つ、周方向に沿って並べて設置可能である。なお、全ての試薬容器ラックが、蓋部20を備える必要はない。たとえば試薬の蒸発を抑制することが望まれる特定の試薬を収容する試薬容器90に対する専用のラックとして、蓋部20を備える試薬容器ラック100が用いられ得る。
【0110】
このように、試薬テーブル180には、複数の試薬容器90を保持した試薬容器ラック100および300を、周方向に沿って設置できる。試薬テーブル180は、周方向に回転可能であり、回転によって任意の試薬容器90を所定の試薬吸引位置に位置付けることができる。第1テーブル181と第2テーブル182とは、電動モータを備えた回転機構(図示せず)により、中心の回転軸183回りに、それぞれ独立して周方向に回転可能である。第1テーブル181は、回転により、第1テーブル181に設置されたそれぞれの試薬容器90を、試薬吸引位置505、506に移動させることができる。第2テーブル182は、回転により、第2テーブル182に設置されたそれぞれの試薬容器90を、試薬吸引位置505、506に移動させることができる。
【0111】
それぞれの試薬吸引位置505および506には、開閉機構110が設けられている。開閉機構110は、試薬吸引位置に配置された試薬容器90を保持する試薬容器ラックが、蓋部20を備える試薬容器ラック100である場合に、蓋部20の開閉を行う。
【0112】
また、試薬テーブル180には、個々の試薬容器90および各試薬容器ラック100(300)に付与された識別情報を読み取る試薬読取部184を備える。試薬の識別情報は、たとえば試薬の名称または種類、ロット番号、使用期限などの情報を含みうる。試薬容器ラック100(300)の情報は、個々の試薬容器ラックを識別する固有の識別番号(ID)などの情報を含みうる。第1テーブル181および第2テーブル182は、それぞれ、設置された試薬容器90および試薬容器ラック100を、試薬読取部184と正対する読取位置に移動させることができる。試薬の識別情報および試薬容器ラックの識別情報により、どの試薬が試薬テーブル180のどの位置に配置されているかが識別可能である。試薬容器ラックの識別情報により、どの試薬容器ラックが、蓋部20を有する試薬容器ラック100であるかが識別可能である。
【0113】
図4では、試薬テーブル180の上面を省略して内部空間を図示しているが、試薬テーブル180は、底面部、側面および上面部を備えた中空の箱状構造のケース部185を含む。ケース部185は、第1テーブル181および第2テーブル182を内部に収容している。ケース部185は、断熱性を有する材料により構成され、保温機能を有している。試薬テーブル180は、たとえばペルチェ素子などの温度調節部(図示せず)を備えている。試薬テーブル180は、内部に設置した試薬容器ラック100に保持された試薬容器90を所定の保管温度に保持する試薬保冷庫として構成されている。
【0114】
各試薬分注部120は、試薬分注用の吸引管121を備えている。吸引管121は、図示しないポンプと接続されており、試薬の定量吸引および吐出ができる。試薬分注部120aは、試薬テーブル180上の所定の試薬吸引位置505に位置付けられた試薬容器90から所定量の試薬を吸引できる。試薬分注部120aは、吸引管121を試薬分注位置507に移動させて、試薬分注位置507の反応容器108に所定量の試薬を吐出できる。
【0115】
試薬分注部120bは、試薬テーブル180上の所定の試薬吸引位置506に位置付けられた試薬容器90から所定量の試薬を吸引できる。試薬分注部120bは、吸引管121を試薬分注位置508に移動させて、試薬分注位置508の反応容器108に所定量の試薬を吐出できる。
【0116】
測定部101は、検体が分注された反応容器108を保持して加温するための回転テーブル190を備える。回転テーブル190は、検体を収容した複数の反応容器108をそれぞれ保持するための複数の保持孔191と、反応容器108を把持して移送するための把持機構192とを含む。回転テーブル190は、複数の保持孔191にそれぞれ保持された反応容器108を加温するためのヒータ(図示せず)を内蔵している。
【0117】
回転テーブル190は、平面視で円形状を有し、複数の保持孔191が周方向に沿って配列されている。回転テーブル190は、周方向に回転可能であり、ヒータによって所定温度に加温しながら、回転によって複数の保持孔191に設置された反応容器108を周方向に移送できる。把持機構192は、反応容器108を把持して移送し、保持孔191に反応容器108を設置したり、保持孔191から反応容器108を取り出したりできる。
【0118】
測定部101は、反応容器108中の測定用試料に基づく信号を検出するための検出部130を備える。検出部130は、検体を収容した反応容器108を設置するための容器設置部131と、容器設置部131に対応して設けられた受光部132(図5参照)と、容器設置部131に設置された反応容器108に対して信号検出用の光を照射するための送光部133(図5参照)とを含む。
【0119】
図4の構成例では、検出部130は、容器設置部131を複数備えている。検出部130は、複数の容器設置部131が所定間隔を隔てて直線状に2列配列されている。
【0120】
測定部101は、検出部130に反応容器108を移送するための把持機構175を含む。
【0121】
把持機構175は、直交する3軸方向であるX、YおよびZの各方向への移動機構(図示せず)を備え、反応容器108を把持して移送できる。把持機構175は、回転テーブル190の保持孔191から反応容器108を取り出して試薬分注位置507に移送し、試薬が分注された後の反応容器108を検出部130の容器設置部131に設置できる。また、把持機構175は、測定済みの反応容器108を容器設置部131から取り出して、廃棄口107に移送できる。
【0122】
検出部130では、容器設置部131に設置された反応容器108内の測定用試料に基づく光学的な信号の検出が行われる。送光部133(図5参照)は、検出部130の容器設置部131に設置された反応容器108に対して、信号検出用の光を照射する。送光部133は、発光ダイオードやハロゲンランプなどの光源を含む。送光部133は、光源からの光をそれぞれの容器設置部131に送るための光ファイバなどのライトガイドを含みうる。受光部132(図5参照)は、反応容器108に照射された光の透過光または散乱光を受光して、受光量に応じた電気信号を出力する。受光部132は、受光した光を電気信号に変換して出力する光電変換素子を含む。電気信号は、分析部140に送信される。分析部140は、受光部132から出力される電気信号に基づいて、検体を分析する。
【0123】
(検体分析装置の制御的な構成)
次に、図5を参照して、検体分析装置200の制御的な構成を説明する。
【0124】
検体分析装置200は、制御部210および記憶部220を含む。制御部210は、CPUまたはFPGA(field-programmable gate array)などのプロセッサを含む。記憶部220は、ROM、RAMおよびハードディスクなどの揮発性および/または不揮発性の記憶装置を含む。プロセッサは、記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより、検体分析装置200の制御部として機能する。制御部210は、上述した検体分析装置200の各部の動作を制御する。制御部210は、試薬分注部120の分注動作、検体分注部151および152の分注動作、試薬テーブル180の動作、各回転テーブルおよび各把持機構の動作、開閉機構110の動作、検出部130の受光部132および送光部133の送受光などの制御を行う。
【0125】
分析部140は、たとえば、パーソナルコンピュータにより構成される。分析部140は、たとえば、CPUなどのプロセッサと、ROM、RAMおよびハードディスクなどの記憶装置とを含んで構成される。プロセッサは、記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより、検体分析装置200の分析部140として機能する。検体分析装置200は、分析結果を表示する表示部230を含む。
【0126】
分析部140は、検体分析装置200の制御部210と電気的に接続され、検体分析装置200を制御する。また、分析部140は、検体分析装置200の検出部130の信号に基づいて検体を分析する。また、分析部140は、図示しないホストコンピュータとネットワークを介して接続され、ホストコンピュータから、検体分析装置200に対する測定オーダを取得する。分析部140は、取得した測定オーダを順番に実行するように、検体分析装置200を制御する。
【0127】
(試薬容器ラックの具体的構成例)
次に、図4に示した検体分析装置200の試薬テーブル180に設置される試薬容器ラック100の具体的な構成例を説明する。
【0128】
図6図10に示す試薬容器ラック100は、複数の保持部10を備えている。図6図10の例では、2つの保持部10(図7および図9参照)が設けられている。試薬容器ラック100には、2本の試薬容器90をそれぞれの保持部10に1本ずつセット可能である。これにより、たとえば1つの測定項目に対して複数の試薬が用いられる場合などに、使用する試薬容器90を同じ試薬容器ラック100にまとめて載置できるので、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0129】
蓋部20は、複数の保持部10の少なくとも1つに保持された試薬容器90の口部91を覆うように設けられている。このように、試薬容器ラック100が複数の保持部10を備えて複数の試薬容器90を保持可能である場合に、蓋部20は、全ての試薬容器90に対して設けられる必要はない。
【0130】
すなわち、蒸発に起因する試薬濃度の変化が分析結果に影響しにくい試薬もあり、そのような試薬については蓋部20による試薬の蒸発抑制は必ずしも必要ではない。そのため、図6図10の構成例では、必要な試薬容器90に蓋部20を設けて、必要でない試薬容器90には蓋部20を設けないでおくことができるので、蓋部20を設けない保持部10では試薬容器90の載置や交換を簡易化できる。
【0131】
一例として、試薬容器ラック100は、同一の測定項目の検体分析に使用される第1試薬を収容する試薬容器90および第2試薬を収容する試薬容器90を保持する。
【0132】
血液凝固分析の測定項目の一例として、測定項目は、たとえばATIIIである。ATIII用の試薬は、酵素試薬と基質との2種類を含む。蓋部20が設けられた保持部10aには、酵素試薬を収容した試薬容器90が載置される。蓋部20が設けられていない保持部10bには、基質を収容した試薬容器90が載置される。ATIIIの測定では、検体に酵素試薬が添加されると、検体中のATIIIと酵素とが不活性の複合体を生じ、さらに基質が添加されると、ATIIIの活性に応じた酵素の残存活性により基質が分解されて分解生成物を生じる。酵素試薬内の水分蒸発によって試薬濃度が上昇すると、酵素試薬の単位体積当たりの酵素含有量が増大し、試薬濃度に応じて残存活性の程度が変化することから、検出部130による検出結果に影響が生じる。一方、基質は、残存する酵素に応じた量だけ反応するように過剰量が含有されるため、試薬内の水分蒸発による濃度変化の影響は受けない。酵素試薬と基質とのうち、酵素試薬を収容した試薬容器90に対して、開封状態で蓋部20によって覆うことにより、酵素試薬の蒸発が抑制される。
【0133】
図6図10の例では、試薬容器ラック100は、試薬容器90の底部93(図10参照)を支持する保持部10と、試薬容器90の上方から口部91を覆う蓋部20と、保持部10と蓋部20とを連結する支持部30とを備える。支持部30は、保持部10から蓋部20に向けて上方に延びるように設けられ、上端部において蓋部20と連結されている。これにより、保持部10と蓋部20とを分離した別部品として備えるのではなく、保持部10と蓋部20とが支持部30を介してつながった単一の試薬容器ラック100を得ることができる。これにより、各部品を個別に管理せずに済み試薬容器ラック100の取り扱いが容易になるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0134】
支持部30は、蓋部20を、試薬容器90の口部91を覆う閉鎖位置P1(図8参照)と、保持部10に対する試薬容器90の載置および取出しが可能な開放位置P2(図7参照)と、に移動可能に支持している。閉鎖位置P1では、図8および図10のように、蓋部20が試薬容器90の口部91を含む上部を覆い、口部91との間に気密空間CS(図10参照)を形成するように配置される。開放位置P2では、蓋部20は、試薬容器90の上方から逸れた位置に配置される。試薬容器90の上側が開放されるので、保持部10への試薬容器90の設置および取り出しが円滑に行える。これにより、保持部10と蓋部20とを支持部30によって連結する場合でも、蓋部20を移動させて保持部10への試薬容器90の載置や交換を容易に行うことができるので、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0135】
支持部30は、蓋部20を閉鎖位置P1と開放位置P2とに回動させる第1ヒンジ部31(図7参照)を介して、蓋部20に連結されている。第1ヒンジ部31は、水平方向に回転軸を有し、蓋部20を上下方向に回動可能に支持している。このため、蓋部20は、開放位置P2から閉鎖位置P1へ移動する場合、第1ヒンジ部31回りの回動によって、保持部10に載置された試薬容器90の上方から下方に向けて移動して、試薬容器90を覆う。閉鎖位置P1において、蓋部20は、蓋部20の自重も含めて試薬容器90に対して上方から押圧されるようにして試薬容器90と当接する。
【0136】
〈蓋部〉
図10に示すように、蓋部20は、天板21と、天板21から保持部10側に延びる筒状の側壁22とを有する。天板21は、試薬容器90の口部91の外径よりも大きい円形の平板状に形成されている。側壁22は、天板21の周縁部から保持部10へ向けて下方向に延びた略円筒形状を有する。
【0137】
下方向に延びた側壁22の端部22aには、弾性材料からなり、試薬容器90と当接する当接部23が設けられている。当接部23は、端部22aにおいて、端部22aに沿って環状に設けられている。図10の例では、当接部23は、側壁22とは別部材として、側壁22に着脱可能に設けられたシール部材である。当接部23は、試薬容器90に対して押圧されることにより、試薬容器90に密着するように弾性変形する。
【0138】
蓋部20は、試薬容器90の口部91との間に気密空間CSが形成されるように口部91を覆うように設けられている。また、蓋部20は、口部91と非接触状態で口部91を覆うように構成されている。
【0139】
蓋部20は、側壁22が試薬容器90の口部91以外の容器外面に当接することにより、蓋部20と口部91との間に気密空間CSを形成するように口部91を覆うように構成されている。
【0140】
具体的には、側壁22の内部形状が、口部91の外形よりも大きい。気密空間CSを形成した状態で、口部91の水平方向の最大寸法が、長さL2である。側壁22の内径は、長さL2よりも大きい。このため、側壁22は、水平方向において、試薬容器90の口部91を内側に配置して、口部91から間隔を隔てるように設けられている。側壁22は、側壁22の端部22aにおいて、試薬容器90の中間部94の外面に当接するように形成されている。
【0141】
図10の例では、試薬容器90の中間部94は、胴部92の上端から、口部91に向けて外径を縮小する傾斜面を有する。中間部94は、胴部92の上端と、口部91のうち容器係合部91bの下端とを接続する。容器係合部91bには、試薬容器90のキャップ95(図2(A)参照)を取り付けるためのねじ部が形成されている。容器係合部91bは、口部91の開口端面91aに接続している。側壁22の端部22aに設けられた当接部23は、傾斜した中間部94に当接するように設けられている。
【0142】
当接部23の内径は、試薬容器90の中間部94の最大外径に対して僅かに小さい。蓋部20が気密空間CSを形成する場合、蓋部20が試薬容器90に向けて押圧されることにより、当接部23の内側に中間部94が嵌り込むように配置される。当接部23が中間部94の傾斜面によって内側から押し拡げられる密着するように変形する。なお、当接部23の変形量は、当接部23と中間部94との密着状態が形成される程度でよく、ごく僅かであってよい。
【0143】
ここで、図6図9に示すように、試薬容器ラック100には、蓋部20と係合し、当接部23が、保持部10に保持された試薬容器90に対して押圧された状態で蓋部20を保持する係合部41が設けられている。蓋部20を係合部41に係合させることにより、当接部23が試薬容器90に押圧されて密着するように弾性変形した状態を保持できる。これにより、蓋部20内に形成される気密空間CSを密閉させた状態を容易に維持できる。
【0144】
具体的には、蓋部20には、蓋部20と一体形成されたループ部29が接続している。ループ部29は、環状形状を有し、係合部41が形成された把持部40を内周側に挿入できる。
【0145】
係合部41は、ループ部29と係合するフック42(図7参照)を含む。係合部41は、2つの保持部10の間を繋ぐ接続部45から上方に立ち上がる把持部40に設けられている。蓋部20がループ部29とともに開放位置P2(図7参照)から閉鎖位置P1(図8参照)へ回動されると、把持部40がループ部29内に挿入され、係合部41のフック42とループ部29の内周面とが係合する。係合部41とループ部29(すなわち、蓋部20)との係合により、蓋部20が開放位置P2側へ移動するのが規制される。係合部41は、蓋部20が試薬容器90側に押圧されて当接部23が変形した状態で係合する位置に形成されている。このため、係合部41と蓋部20との係合により、当接部23と試薬容器90とが密着した状態が維持される。蓋部20を開放位置P2へ移動させる場合、把持部40を押し込み変形させると、係合部41のフック42が移動してフック42とループ部29との係合が解除される。
【0146】
また、図10に示すように、蓋部20は、試薬を吸引する吸引管121を挿入するための挿入口24と、挿入口24を塞ぐ開閉可能な閉塞部25と、を有する。
【0147】
挿入口24は、蓋部20のうち、天板21を上下に貫通するように形成されている。挿入口24は、蓋部20が気密空間CSを形成した状態で、試薬容器90の口部91の直上に位置するように形成されている。これにより、蓋部20を閉鎖位置P1に配置して口部91を覆った状態のままで、閉塞部25を開放して、吸引管121による試薬吸引を行える。そのため、試薬吸引を行う際に蓋部20の全体を開放位置P2へ移動させる構成と比べて、試薬容器90の内部が外部に開放されることを抑制できるので、その分、試薬の蒸発を抑制できる。
【0148】
閉塞部25は、挿入口24の全体を覆うように挿入口24よりも大きい外形形状を有する。閉塞部25は、平板形状を有し、挿入口24が形成された天板21の上面に上から重なるように配置されることにより、挿入口24を覆って塞ぐことが可能である。図10の例では、閉塞部25は、挿入口24を開閉可能なように第2ヒンジ部26を介して回動可能に蓋部20に連結されている。
【0149】
第2ヒンジ部26は、第1ヒンジ部31と同様に、水平方向に回転軸を有し、閉塞部25を上下方向に回動可能に支持している。第2ヒンジ部26は、蓋部20に設けられた軸受部26aに取り付けられている。第2ヒンジ部26は、天板21の上面に重なって挿入口24を塞ぐ閉塞位置Q1(図11参照)と、天板21の上面に対して立ち上がるように上方に向いて挿入口24を開放する開放位置Q2(図12参照)とに回動可能に閉塞部25を支持している。これにより、閉塞部25を回動させるだけで、容易に挿入口24を開閉できる。
【0150】
図10の例では、試薬容器ラック100は、閉塞部25を挿入口24に向けて付勢する付勢部材27を備える。付勢部材27は、閉塞部25を開放位置Q2から閉塞位置Q1に向かう方向に付勢する。付勢部材27の付勢力によって、閉塞部25は天板21の上面に向けて押圧されて当接する。これにより、付勢部材27の付勢力によって、閉塞部25を閉じた状態での密閉度を向上させることができる。付勢部材27は、たとえば第2ヒンジ部26に設けられたトーションバネである。
【0151】
図10の例では、閉塞部25は、挿入口24を塞ぐ状態で天板21との間にシール部28を形成する。具体的には、天板21の上面には、挿入口24の周縁部から上方向に突出する環状のリブ21aが形成されている。また、閉塞部25の天板21側の表面には、天板21に向けて下方向に突出する環状のリブ25aが形成されている。環状のリブ25aの内径が環状のリブ21aの外径よりも大きい。環状のリブ21aと環状のリブ25aとは、挿入口24の周囲に同心円状に形成されている。このため、閉塞部25が閉塞位置Q1にある場合、リブ21aとリブ25aとによって、ラビリンス構造のシール部28が形成される。これにより、閉塞部25が閉塞位置Q1にある場合の密閉度が向上する。
【0152】
〈保持部〉
保持部10は、図6に示すように、試薬容器90の底部93を支持する載置部11と、試薬容器90の外周面と対向する側部12とを含む。側部12は、試薬容器90の胴部92のうち下部の外周面に沿うように設けられている。これにより、載置部11によって試薬容器90を安定して支持し、側部12によって試薬容器90が水平方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0153】
保持部10の載置部11は、試薬容器90を載置させる傾斜した載置面11aを有する。載置面11aにより、試薬容器90は、保持部10上で傾斜した状態で保持される。傾斜した載置面11aにより、試薬容器90の内底面は、傾斜方向の一方側が他方側よりも低い位置になるように傾斜する。なお、蓋部20(図10参照)は、傾斜した口部91との間に気密空間CSを形成するように構成されている。
【0154】
図10に示すように、傾斜した載置面11aにより、試薬容器90を傾斜させて、高さが最も低くなる部分に試薬を集めることができる。試薬容器90内の試薬は、内底面のうち低い方の隅部CPに集められる。その結果、試薬残量が少なくなった場合にも集めた試薬を吸引できるので、試薬のデッドボリュームを減少させることができる。そして、このように試薬容器90を傾斜させた状態でも、蓋部20によって口部91を覆うことにより試薬の蒸発を抑制できるので、蒸発による濃度変化を抑制しながら、試薬を極力有効利用することができる。
【0155】
載置部11は、保持部10において試薬容器90の底部93を所定高さおよび所定角度で支持し、保持部10に対して着脱可能な交換部品として構成されている。載置部11は、保持部10の底部93上に設置され、ねじ部材11bなどにより保持部10の底部93に着脱可能に取り付られている。載置部11は、スナップフィットなどの係合により保持部10に装着されてもよい。
【0156】
交換部品としての載置部11は、たとえば、試薬容器ラック100の底面に対する載置面11aの傾斜角度θ、および試薬容器ラック100の底面からの高さ位置H1の少なくとも一方が異なる複数種類のバリエーションを含みうる。これにより、載置部11の交換によって、寸法の異なる試薬容器90を同じ高さに配置したり、最適な傾斜角度で保持したりすることができる。たとえば、載置部11を交換することによって、高さの異なる試薬容器90を保持部10に載置した場合にも、蓋部20との当接位置の高さを揃えることができる。
【0157】
図8に示すように、保持部10の側部12は、試薬容器90の胴部92の外周面に沿って上方に延びるように形成されている。一方、側部12は、保持部10に載置される試薬容器90の正面を境に、左右に分割されるように、水平方向の一方側と他方側とに設けられている。一方側の側部12aと他方側の側部12bとは、水平方向に間隔D2を隔てて隙間を形成し、試薬容器90の正面が露出するように形成されている。試薬容器90の識別情報は、バーコードラベルLBの形態で試薬容器90に貼付される。試薬容器90の識別情報を側部12aと側部12bとの間に配置することによって、試薬容器ラック100の外部の試薬読取部184による識別情報の読み取りができる。
【0158】
なお、蓋部20は、閉鎖位置P1に配置された状態で、側部12に対して、間隔D3を隔てた上方の位置に配置されている。このため、蓋部20と側部12との間隔D3の隙間が、試薬容器90の周方向に延びて試薬容器90の側面を露出させる。このように、試薬容器ラック100の支持部30は、保持部10と蓋部20との間で試薬容器90の正面および側面が露出するように、保持部10と蓋部20とを互いに離れた位置で連結している。ここで、検体分析装置200は、試薬テーブル180において試薬容器90を室温とは異なる温度で保管する。この際、試薬容器90の大部分が試薬容器ラック100の蓋部20や保持部10などで覆われてしまうと、熱伝達が阻害され、試薬容器90内の試薬が設定温度に達するのが遅くなる。これに対して、保持部10と蓋部20との間で試薬容器90の正面および側面を露出させることによって、試薬容器90の口部91を蓋部20によって覆いつつ、蓋部20の外部では試薬容器90の広い範囲を試薬容器ラック100から外部に露出させて、熱伝達が阻害されるのを抑制することができる。その結果、試薬の蒸発を抑制しつつ、試薬容器90内の試薬温度を設定温度に速やかに到達させることができる。
【0159】
また、側部12には、試薬容器ラック100の識別情報のバーコードラベルLBを貼付するための貼付領域13が設けられている。貼付領域13は、側部12aに設けられている。このため、試薬容器90のバーコードラベルLBと、試薬容器ラック100のバーコードラベルLBとが、並んで配置される。
【0160】
〈閉塞部の開閉〉
次に、試薬吸引時の閉塞部25の開閉について説明する。
【0161】
図11および図12に示すように、開閉機構110は、試薬分注部120の吸引管121が試薬容器90から試薬を吸引する際に、閉塞部25を動かして蓋部20の挿入口24を開閉することにより、蓋部20を開閉するように構成されている。これにより、試薬容器ラック100の蓋部20と口部91との間に気密空間CSを形成した状態で、開閉機構110によって挿入口24の部分だけを局所的に開放して、吸引管121による試薬吸引を行える。試薬吸引の後は、蓋部20により口部91を覆った状態のまま、開閉機構110によって挿入口24の部分だけを局所的に閉塞して、気密空間CSを再度形成できる。そのため、試薬吸引を行う際に蓋部20の全体を試薬容器90から外して口部91を開放させる構成と比べて、試薬容器90の内部が外部に開放されることを抑制できるので、その分、試薬の蒸発を抑制できる。
【0162】
試薬の吸引時には、まず、試薬テーブル180(図4参照)が、開閉機構110が配置された試薬吸引位置505または506に試薬容器90が配置されるように、試薬容器ラック100を移動させる。このとき、開閉機構110の直下の位置に蓋部20が配置される。
【0163】
閉塞部25は、挿入口24に対して第2ヒンジ部26を挟んで反対側まで延びた位置に被押圧部25b(図9図11参照)を有する。図12に示すように、開閉機構110が被押圧部25bを力点として保持部10側に押圧すると、第2ヒンジ部26を支点としてモーメントが作用し、閉塞部25の挿入口24側の部分が上方に回動して挿入口24が開放される。
【0164】
開閉機構110は、回転軸115と、回転軸115回りに回転するアーム部111と、アーム部111の先端に設けられた押圧片112と、アーム部111を駆動する駆動源113とを含む。駆動源113は、回転軸115から逸れた位置でリンクを介して連結されている。駆動源113は、たとえば電動モータであり、リンクを介してアーム部111との連結部114を水平方向に前進または後退させる。駆動源113の連結部114を前進させることにより、アーム部111が回転軸115回りに回転して、押圧片112が閉塞部25の被押圧部25bを押圧する。押圧片112が付勢部材27の付勢力に抗して被押圧部25bを押し下げることにより、閉塞部25が開放位置Q2(図12参照)へ回動される。開閉機構110が押圧片112を図11の位置に戻すと、付勢部材27の付勢力によって、閉塞部25が閉塞位置Q1に戻る。
【0165】
なお、図10および図12に示したように、閉塞部25は、被押圧部25bが保持部10側に押圧されることにより、蓋部20の第1ヒンジ部31よりも蓋部20の先端側の位置に配置された第2ヒンジ部26を中心に回動するように設けられている。つまり、第2ヒンジ部26は、蓋部20の第1ヒンジ部31と、第1ヒンジ部31からの半径方向における蓋部20の先端部(すなわち、ループ部29)との間の位置に配置されている。このため、蓋部20に対して、押圧片112から付与される押圧力は、第1ヒンジ部31回りに蓋部20を試薬容器90側に向けて回転させる方向(すなわち、閉鎖位置P1へ向かう方向)に作用し、押圧力によって蓋部20が開放位置P2側へ移動することがない。このように、閉塞部25を開放するために被押圧部25bを保持部10側に押圧した場合に、押圧力を、蓋部20を第1ヒンジ部31回りに保持部10側へ回転させる方向に作用させることができる。そのため、閉塞部25を開閉させる場合でも、蓋部20と試薬容器90との間の密閉度が低下することがない。
【0166】
開閉機構110は、試薬の非吸引時には閉塞部25を閉塞位置Q1(図11参照)に配置させる。つまり、押圧片112による押圧を行わない。開閉機構110は、試薬の吸引時に、押圧片112によって閉塞部25を開放位置Q2(図12参照)に配置させる。
【0167】
(検体分析装置の動作の説明)
次に、図4図12に示した検体分析装置200の動作を、図13および図14を用いて説明する。検体分析装置200の動作制御は、制御部210により行われる。
【0168】
ステップS1において、制御部210は、識別情報の読み取りの制御を行う。制御部210は、試薬テーブル180を回転させることにより、試薬読取部184の読取位置に、各試薬容器90の識別情報を記録したバーコードラベルLB(図8参照)および各試薬容器ラック100の識別情報を記録したバーコードラベルLBを、順次配置させる。制御部210は、読取位置に順次配置させたバーコードラベルLBから識別情報を試薬読取部184により読み取らせる。これにより、試薬テーブル180における個々の試薬容器ラック100の種類および位置、試薬テーブル180における個々の試薬容器90の種類および位置が、制御部210により取得される。
【0169】
検体容器104がセットされて、分析が開始されると、ステップS2において、制御部210は、検体と試薬とを混合して測定用試料を調製する制御を行う。制御部210は、搬送部102により検体容器104を検体吸引位置501または502に移動させ、検体分注部151または152により、検体容器104から、回転テーブル160に設置された反応容器108に検体を分注させる。
【0170】
また、制御部210は、試薬テーブル180により測定項目に応じた試薬容器90を試薬吸引位置505または506に移動させ、試薬分注部120aまたは120bにより、試薬容器90から反応容器108に検体を分注させる。この際、制御部210は、試薬吸引を行う試薬容器90が、蓋部20を有する試薬容器ラック100にセットされている場合、開閉機構110を動作させて、蓋部20の閉塞部25を閉塞位置Q1(図11参照)から開放位置Q2(図12参照)へ移動させる。制御部210は、試薬分注部120を動作させ、蓋部20の挿入口24および試薬容器90の口部91の開口を介して、吸引管121を試薬容器90の内部に進入させて、試薬を吸引させる。そして、制御部210は、吸引管121を試薬容器90および挿入口24の外部まで移動させ、分析対象の検体を収容した反応容器108に吸引した試薬を分注させる。吸引管121が挿入口24の外部まで移動すると、制御部210は、開閉機構110を動作させて、蓋部20の閉塞部25の押圧を解除する。付勢部材27の付勢力によって、閉塞部25が閉塞位置Q1へ移動される。
【0171】
また、制御部210は、測定項目に応じて、把持機構175により、反応容器108を回転テーブル190に移送し、回転テーブル190において反応容器108を加温させる。加温により、反応容器108内の検体と試薬とが所定の反応温度に加温される。試薬の分注は、測定項目に応じて1回または複数回行われる。たとえば測定項目がATIIIの場合、制御部210は、試薬容器ラック100の保持部10aに保持された試薬容器90から酵素試薬を反応容器108に分注させ、回転テーブル190において所定時間の間、所定温度に加温した後、試薬容器ラック100の保持部10bに保持された試薬容器90から基質を反応容器108に分注させる。これにより、測定用試料が調製される。
【0172】
ステップS3において、制御部210は、検出部130によって検体に基づく信号を検出させる。制御部210は、把持機構170により、測定用試料を収容した反応容器108を検出部130の容器設置部131に移送させ、送光部133により測定用の光を反応容器108に照射させ、受光部132により透過光を受光させる。制御部210は、受光部132の受光量に応じた電気信号を、検出部130の検出信号として、分析部140に送信する。制御部210は、透過光の検出を所定の測定時間の間継続して行う。
【0173】
ステップS4において、分析部140が、検出部130の信号に基づいて分析を行う。たとえば、測定項目がATIIIの場合、分析部140は、検出部130から取得した所定の測定時間に亘る受光量の信号に基づいて、吸光度の変化量を求める。分析部140は、取得した吸光度の変化量と、標準試料の検出結果から取得された基準値または検量線の情報とに基づいて、ATIIIの活性度を取得する。
【0174】
ステップS5において、分析部140が、分析結果を出力する。たとえば分析部140は、表示部230に分析結果を表示させる。また、分析部140は、たとえば分析結果を記録し、ネットワーク接続されたホストコンピュータに分析結果を出力する。これにより、検体分析装置200の分析動作が完了する。
【0175】
(試薬交換時の動作)
分析を継続すると、試薬容器90内の試薬残量が減少し、試薬の交換が必要となる場合がある。その場合、ユーザは、検体分析装置200の測定部101の動作を一旦停止させ、試薬交換作業を行う。
【0176】
図14のステップS11において、制御部210は、ユーザからの操作入力などに応じて、測定部101の動作を一時停止させる。測定部101の動作が停止すると、ユーザは、試薬交換作業を行う。試薬容器ラック100の試薬容器90の交換を行う場合、ユーザは、試薬テーブル180に保持された試薬容器ラック100を試薬テーブル180から取り出して、把持部40を押圧して蓋部20の係合を解除させ、蓋部20を閉鎖位置P1(図8参照)から開放位置P2(図7参照)へ移動させる。ユーザは、保持部10aに載置された試薬容器90を取り出して、新たに開封した試薬容器90と入れ替える。ユーザは、開放位置P2から、係合部41が蓋部20のループ部29に係合する閉鎖位置P1まで、蓋部20を移動させる。係合により、蓋部20の当接部23が試薬容器90に当接して、気密空間CSが形成される。ユーザは、試薬容器ラック100を試薬テーブル180にセットする。蓋部20が気密空間CSを隔てて試薬容器90の口部91を覆うので、蓋部20側に試薬が付着することがなく、蓋部20の交換や洗浄を行わないまま試薬容器90を交換しても、試薬のコンタミネーションのおそれが無く、試薬交換を速やかに行える。
【0177】
制御部210は、ステップS12において、測定部101の動作を再開するか否かを判断する。試薬交換作業が終わったユーザから動作再開を指示する入力操作を受け付けると、制御部210は、測定部101の動作を再開する。ステップS13において、制御部210は、交換された試薬容器90およびその試薬容器90を保持する試薬容器ラック100の識別情報の読み取りの制御を行う。制御部210は、試薬テーブル180を回転させることにより、試薬読取部184の読取位置に、対象となる試薬容器90のバーコードラベルLBおよび対象となる試薬容器ラック100のバーコードラベルLBを、順次配置させる。制御部210は、読取位置に順次配置させたバーコードラベルLBから識別情報を試薬読取部184により読み取らせる。
【0178】
ステップS14において、制御部210は、新たに読み取った識別情報により、試薬テーブル180に配置された試薬の情報を更新する。以上のようにして、試薬の交換が行われる。
【0179】
(実験結果)
次に、本実施形態の試薬容器ラック100による試薬の蒸発抑制効果を確認するために行った実験結果について説明する。
【0180】
蒸発抑制効果の確認実験は、同一の標準試料に対して、試薬容器90を検体分析装置200の試薬テーブル180にセットして、新品の試薬容器90の開封直後(経過時間0時間)に分析を行い、実験開始時の分析結果を基準値として取得した。その後、試薬容器90を試薬テーブル180内に保管したまま、予め設定した経過時間毎に定期的に標準試料の分析を行い、基準値に対する乖離度(%)を取得した。
【0181】
実験は、経過時間毎の分析を行う間の試薬容器90の保管方法を異ならせた複数ケースで行った。すなわち、実験は、本実施形態の試薬容器ラック100の蓋部20を用いて試薬容器90を保管した実施例と、開封状態のまま放置した比較例1と、図16に示した特許文献1に記載の試薬容器用蓋体900を試薬容器90の口部91の開口に装着して保管した比較例2と、分析の際の試薬吸引時以外ではキャップ95(図2(A)参照)を用いて試薬容器90を密閉保管した比較例3と、の4ケースについて実施した。実験は、測定項目ATIIIの分析について行った。つまり、ATIII用の酵素試薬に対して実験結果を収集した。分析結果は、開封直後、72時間経過時、114時間経過時、120時間経過時、144時間経過時、162時間経過時、にそれぞれ取得した。
【0182】
図15は、実験結果のグラフである。グラフの横軸が経過時間(時間)であり、縦軸が基準値からの乖離度(%)である。乖離度の許容範囲の目安として、基準値に対して上下20%を設定した。
【0183】
図15に示すように、試薬容器90を開封状態のまま放置した比較例1では、開封後72時間経過時には、乖離度がグラフの下限値(-40%)を下回った。試薬容器用蓋体900(図16参照)を試薬容器90に装着した比較例2では、114時間経過時に、乖離度が許容範囲を下回った。図10に示した試薬容器ラック100の蓋部20によって気密空間CSを形成して保管した実施例では、120時間経過時まで、乖離度が許容範囲内に収まる結果が得られた。実施例では、その後、144時間経過時には、乖離度が許容範囲を下回った。また、吸引を行う度に密閉保管して比較例3の場合、162時間経過時においても、乖離度は許容範囲内のままだった。
【0184】
以上から、本実施形態の試薬容器ラック100によれば、従来手法(比較例2)と比較して試薬の蒸発を抑制して、蒸発による分析結果への影響をより長期間に亘って抑制できることが確認された。
【0185】
また、実施例による120時間経過時で許容範囲に収まる結果から、たとえば1週間の月曜日から金曜日までの5日間に亘って、試薬容器90を継続して検体分析装置200にセットしたままの状態で、試薬を使用し続けられることが分かる。これにより、ユーザの試薬交換作業の頻度を低減し、ユーザの利便性を向上させることができることが分かる。
【0186】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0187】
10、10a、10b:保持部、11:載置部、11a:載置面、12、12a、12b:側部、20:蓋部、21:天板、22:側壁、22a:端部、22b:内周面、23:当接部、24:挿入口、25:閉塞部、25b:被押圧部、26:第2ヒンジ部、27:付勢部材、30:支持部、31:第1ヒンジ部、41:係合部、90:試薬容器、91:口部、91a:開口端面、91b:容器係合部、92:胴部、93:底部、94:中間部、100:試薬容器ラック、110:開閉機構、120、120a、120b:試薬分注部、121:吸引管、130:検出部、140:分析部、200:検体分析装置、CS:気密空間、P1:閉鎖位置、P2:開放位置
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