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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221108BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20221108BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20221108BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/46
H01M50/463 B
H01M50/449
H01M10/058
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020065623
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021163665
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】茅原 静佳
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053862(JP,A)
【文献】特開2002-015773(JP,A)
【文献】特開2018-152226(JP,A)
【文献】特開2017-095698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/449-50/463
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備え、
前記積層体は、正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に挟まれたセパレータと、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間を貼り合わせた接着層と、を有し、
少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、電解液が含浸する空間として、前記積層体の中央部に配された中央空間と、前記中央空間から端部に向けて連通する複数の放射状流路と、を有する、
二次電池。
【請求項2】
前記複数の放射状流路は、各放射状流路の、前記積層体の積層方向に垂直な面上の放射角度が略一定になるように配されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記複数の放射状流路は、各放射状流路の前記端部側の断面積が略一定になるように配されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記複数の放射状流路は、前記端部のうちの1つである第1端部へ向かう放射状流路の、前記積層体の積層方向に垂直な面上の放射角度が、前記第1端部以外の端部に向かう放射状流路の前記放射角度より大きくなるように配されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記複数の放射状流路は、前記端部のうちの1つである第1端部へ向かう放射状流路の前記第1端部側の断面積が、前記第1端部以外の端部に向かう放射状流路の端部側の断面積に比べて広くなるように配されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、隣り合う放射状流路の間が接着剤による壁で仕切られる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、隣り合う放射状流路の間が高密度の接着剤による壁で仕切られ、
各放射状流路は、前記壁の部分より低密度の接着剤が配された流路である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートの間に挟まれるセパレータと、を有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備えた二次電池を製造する二次電池製造方法であって、
前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートを積層させ、両面から加圧して前記積層体を生成する積層体生成工程と、
前記積層体生成工程により生成された前記積層体を前記ケースに収納し、前記積層体に電解液を含浸させる含浸工程と、
を備え、
前記電解液が含浸する空間として、前記積層体の中央部に配された中央空間と前記中央空間から端部に向けて連通する複数の放射状流路とを有するように、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層を形成する接着層形成工程を備える、
二次電池製造方法。
【請求項9】
前記接着層形成工程は、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層として、前記複数の放射状流路における隣り合う放射状流路の壁となる領域に接着剤を塗布する工程を含む、
請求項8に記載の二次電池製造方法。
【請求項10】
前記接着層形成工程は、
前記接着層を形成する全領域に接着剤を塗布する工程と、
少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層を形成する工程において、前記複数の放射状流路における隣り合う放射状流路の壁となる領域に凸部を設けた加圧部材で加圧する工程と、を含み、
隣り合う放射状流路の間が高密度の接着剤による壁で仕切られ、各放射状流路が前記壁の部分より低密度の接着剤が配された流路となるように、前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層を形成する、
請求項8に記載の二次電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び二次電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、正極シートと負極シートとによりセパレータを挟み込む構造により発電体を形成する。また、二次電池の収納方法として、複数の正極板と複数の負極板及び複数のセパレータを、正極シートと負極シートとの間にセパレータが挟まれる形態で積層する積層構造がある。
【0003】
特許文献1には、正極板と負極板とそれらの間に挟まれるセパレータとを備え、セパレータが、多孔質樹脂層と、間欠的に形成されて正極板又は負極板に直接対向する接着層とを有する積層電極体が記載されている。特許文献1に記載の積層電極体では、接着層が、セパレータの平面視においてセパレータの外縁から連続する波線パターンの接着剤非存在領域を残すよう配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-053862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層電極体では、接着剤非存在領域を通して電解液をセパレータ全体に効率良く含浸させることを目的としているが、波線パターンの両端側から電解液が含浸していくため中央部分まで電解液が含浸しないことがある。よって、より電解液を積層電極体(積層体)全体に含浸させることができるような、つまり含浸ムラがないように電解液を含浸させることができるような構造や製造方法が求められる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、正極シート、セパレータ、及び負極シートを積層した積層体に電解液をムラ無く含浸させることが可能な二次電池及びその製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る二次電池は、積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備え、前記積層体は、正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に挟まれたセパレータと、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間を貼り合わせた接着層と、を有し、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、電解液が含浸する空間として、前記積層体の中央部に配された中央空間と、前記中央空間から端部に向けて連通する複数の放射状流路と、を有する、ものである。
【0008】
この態様に係る二次電池は、複数の放射状流路と中央空間とを有する接着層により、効率的に電解液を含浸させることができるようになる。これにより、二次電池において、積層体に電解液をムラ無く含浸させておくことが可能になる。
【0009】
また、前記複数の放射状流路は、各放射状流路の、前記積層体の積層方向に垂直な面上の放射角度が略一定になるように配されている、ものとすることができる。或いは、前記複数の放射状流路は、各放射状流路の前記端部側の断面積が略一定になるように配されている、ものとすることもできる。いずれの構成でも、積層体がケース内において各辺から略均一に電解液を侵入させるような構造である場合において、積層体に電解液をムラ無く含浸させておくことができる。
【0010】
若しくは、前記複数の放射状流路は、前記端部のうちの1つである第1端部へ向かう放射状流路の、前記積層体の積層方向に垂直な面上の放射角度が、前記第1端部以外の端部に向かう放射状流路の前記放射角度より大きくなるように配されている、ものとすることもできる。或いは、前記複数の放射状流路は、前記端部のうちの1つである第1端部へ向かう放射状流路の前記第1端部側の断面積が、前記第1端部以外の端部に向かう放射状流路の端部側の断面積に比べて広くなるように配されている、ものとすることもできる。いずれの構成でも、積層体がケース内において他の端部に比べて第1端部から多くの電解液を侵入させるような構造である場合において、積層体に電解液をムラ無く含浸させておくことができる。
【0011】
また、前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、隣り合う放射状流路の間が接着剤による壁で仕切られる、ものとすることができる。これにより、放射状流路を容易に且つ確実に形成することができ、積層体に電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0012】
若しくは、前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層は、隣り合う放射状流路の間が高密度の接着剤による壁で仕切られ、各放射状流路は、前記壁の部分より低密度の接着剤が配された流路である、ものとすることもできる。これにより、放射状流路を容易に形成することができ、積層体に電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る二次電池製造方法は、正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートの間に挟まれるセパレータと、を有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備えた二次電池を製造する二次電池製造方法であって、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートを積層させ、両面から加圧して前記積層体を生成する積層体生成工程と、前記積層体生成工程により生成された前記積層体を前記ケースに収納し、前記積層体に電解液を含浸させる含浸工程と、を備え、前記電解液が含浸する空間として、前記積層体の中央部に配された中央空間と前記中央空間から端部に向けて連通する複数の放射状流路とを有するように、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間における前記接着層を形成する接着層形成工程を備える、ものである。
【0014】
この態様に係る二次電池製造方法は、複数の放射状流路と中央空間とを有する接着層により、効率的に電解液を含浸させることができるようになる。これにより、二次電池を製造するに際し、積層体に電解液をムラ無く含浸させることが可能になる。
【0015】
また、前記接着層形成工程は、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層として、前記複数の放射状流路における隣り合う放射状流路の壁となる領域に接着剤を塗布する工程を含む、ものとすることができる。これにより、放射状流路を容易に且つ確実に形成することができ、積層体に電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0016】
若しくは、前記接着層形成工程は、前記接着層を形成する全領域に接着剤を塗布する工程と、少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層を形成する工程において、前記複数の放射状流路における隣り合う放射状流路の壁となる領域に凸部を設けた加圧部材で加圧する工程と、を含み、隣り合う放射状流路の間が高密度の接着剤による壁で仕切られ、各放射状流路が前記壁の部分より低密度の接着剤が配された流路となるように、前記少なくとも前記セパレータ及び前記負極シートの間又は前記セパレータ及び前記正極シートの間に配する前記接着層を形成する、ものとすることもできる。これにより、放射状流路を容易に形成することができ、積層体に電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、正極シート、セパレータ、及び負極シートを積層した積層体に電解液をムラ無く含浸させることが可能な二次電池及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係る非水二次電池の外観の一例を示す図である。
図2】実施形態1に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す概略図である。
図3】実施形態1に係る非水二次電池に収容される積層体の一例及びその積層体における非水電解液の含浸の様子を示す図である。
図4図3の積層体の一部における非水電解液の含浸の様子を示す図である。
図5】比較例に係る非水二次電池のケースに収容される積層体及びその積層体における非水電解液の含浸の様子を示す概略図である。
図6】実施形態2に係る非水二次電池の一例及びそれに収容される積層体における非水電解液の含浸の様子を示す概略図である。
図7】実施形態2に係る非水二次電池の他の例及びそれに収容される積層体における非水電解液の含浸の様子を示す斜視図である。
図8】実施形態3に係る非水二次電池の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
図9図8の製造方法で用いる製造装置の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。また、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付すことがあり、重複する説明は適宜省略される。
【0020】
(実施形態1)
実施形態1について、図1図5を参照しながら、二次電池として、リチウムイオン二次電池等の非水二次電池を例に挙げて説明する。図1は、実施形態1に係る非水二次電池の外観の一例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る非水二次電池1は、ケース10、蓋11、負極極柱12、及び正極極柱13を備えることができる。なお、図1で例示する非水二次電池1を複数組み合わせることで組電池を形成することができ、非水二次電池1はその組電池の1つのセルとすることができる。
【0022】
ケース10には、非水二次電池1の電気エネルギーを蓄積する発電体が収納される。蓋11は、発電体をケース10に密閉するための蓋である。ケース10及び蓋11は、例えばアルミニウム又はその合金などとすることができる。負極極柱12及び正極極柱13は、ケース10内の発電体と電気的に接続され、発電体に対して電流の入出力を行うための電極である。また、負極極柱12及び正極極柱13は、図1に示すように、ケース10から突出するように設けられることができる。
【0023】
図1では図示を省略したが、非水二次電池1では、ケース内に格納される発電体に取り付けられる負極極柱12及び正極極柱13をケース外に取り出すための取り出し穴が蓋11に設けられる。そして、負極極柱12及び正極極柱13は、蓋11に設けられた取り出し穴を介してケース内に設けられる集電部品と接合される。
【0024】
本実施形態に係る非水二次電池1は、発電体を構成する積層体(積層電極体)の構造に主たる特徴を有し、その積層体の構造の例について、図2図4を参照しながら説明する。図2は、非水二次電池1のケース10に収納される積層体の一例を示す概略図である。図3は、非水二次電池1に収容される積層体の一例及びその積層体における非水電解液の含浸の様子を示す図で、図4は、図3の積層体の一部における非水電解液の含浸の様子(流速変化の様子)を示す図である。
【0025】
図2に示すように、ケース10内に収容される積層体20は、正極シート21と、負極シート23と、正極シート21と負極シート23の間に挟まれたセパレータ22と、図示しない接着層と、を有する。
【0026】
正極シート21、負極シート23には、各電極を構成する活物質塗工領域を有する。例えば、正極シート21には、活物質として、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2等が塗工される。また、負極シート23には、活物質として、例えば、黒鉛(C)、チタネイト(Li4Ti5O12)等が塗工される。
【0027】
正極シート21の枚数、負極シート23の枚数は問わない。積層体20の積層方向は図1に示す方向とすることができる。発電体として機能させるために、積層体20では、正極シート21と負極シート23とが交互に積層されることができ、正極シート21と負極シート23の間にセパレータ22が挟み込まれる。また、積層体20の一端又は両端の外側にも極板(正極シート21又は負極シート23)にセパレータ22が積層されることができる。
【0028】
また、図2に示すように、正極シート21は、電極を構成する活物質塗工領域21aと、活物質塗工領域21aから突出させた形状を有する活物質未塗工領域のタブ部21bと、を有することができる。負極シート23も同様に活物質塗工領域23a及びタブ部23bを有することができる。
【0029】
上述の接着層は、正極シート21、セパレータ22、及び負極シート23のそれぞれの間を貼り合わせる層であり、貼り合わせる熱可塑性樹脂等の接着剤を有することができる。この接着層は、図3の接着層24で例示するものであり、その詳細を後述する。
【0030】
なお、1つの電極シートと1つのセパレータ22との間の接着層24の厚みは一面で均一であることが好ましく、また積層体20に含まれる複数の接着層24のいずれでも共通の厚みであることが好ましい。また、本実施形態では、接着層を形成するための接着剤を予め塗布したセパレータ22に、正極シート21又は負極シート23を貼り合わせて積層体20を製造することを前提として説明する。但し、接着剤は、正極シート21や負極シート23に予め塗布してもよい。
【0031】
発電体として機能させるために、このような積層体20をケース10に収納した状態で、図示しない注液口(例えば負極極柱12及び正極極柱13を取り付ける前の蓋11に形成された穴など)から有機溶媒などの非水電解液を注入し、積層体20に含浸させる。また、積層体20は、非水電解液が積層体20の端面から極板とセパレータ22との間を通って(つまり接着層を通って)積層体20に含浸されることで、発電体として機能させることができる。
【0032】
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、次の群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。上記群は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる。支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種又は二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。また、非水電解液には、例えば、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)等の被膜形成剤が添加されているものとする。
【0033】
そして、図3に示すように、接着層24は、非水電解液が含浸する空間として、積層体20の中央部に配された中央空間24cと、中央空間24cから端部(外縁)に向けて連通する複数の放射状流路24bと、を有する。各放射状流路24bは、流路壁(壁)24aにより隔てておくことができる。つまり、接着層24は、そのような壁24aを有する。なお、壁24aは放射状流路24bに比べて非水電解液の含浸が難しい状態に形成されていればよい。なお、図3では接着層24がセパレータ22の上に形成されている様子を示している。
【0034】
このような構造の積層体20では、図3において矢印の大きさでその含浸の程度を示すように、放射状パターンの流路である複数の放射状流路24bと中央空間24cとを有する接着層24により、効率的に均等に非水電解液を含浸させることができるようになる。その結果、非水二次電池1において、積層体20に非水電解液をムラ無く含浸させておくことが可能になる。
【0035】
ここで、非水電解液が効率的に含浸される理由について説明する。図4において矢印で放射状流路24b内での流速を例示するように、下流(図4では左側から右側へと非水電解液が流れる)に進むほど、断面積が減少し流体の速度が増加する。これは、断面積が減少するような管内の流れでは流体の速度は増加するという流体力学の理論に基づくものである。そのため、壁24aと電極シート(正極シート21又は負極シート23)とセパレータ22とに囲まれる放射状流路24bでは、中央空間24cに向かうに連れて非水電解液の流速が大きくなり、含浸し易くなる。
【0036】
次に、図5を参照しながら比較例について説明する。図5は、比較例に係る非水二次電池のケースに収容される積層体及びその積層体における非水電解液の含浸の様子を示す概略図である。
【0037】
図5で示す比較例に係る積層体120は、正極シート121、セパレータ122、及び負極シート123を有するとともに、正極シート121とセパレータ122との間及びセパレータ122と負極シート123との間に面均一な接着層が形成されている。なお、この接着層については図5では図示を省略している。正極シート121は、電極を構成する活物質塗工領域121aと、活物質塗工領域121aから突出させた形状を有する活物質未塗工領域のタブ部121bと、を有する。負極シート123も同様に活物質塗工領域123a及びタブ部123bを有する。
【0038】
比較例では、ケース内に発電体の元となる積層体120が入れられた後に、非水電解液がケース内に注入されるが、積層体120の四辺(タブ部121b,123bを除く)において均一に接着層が形成される。そのため、比較例では、注液時、非水電解液の含浸は積層体120の各四辺から同様に進行し、積層体中央部Gが最後に含浸するため、積層体中央部Gは非水電解液の含浸が不十分になる。その場合、負極シート123のナトリウム塩がその中央部に押しやられ、中央部に高抵抗の負極被膜が形成されてしまう。その結果、積層体120から生成された発電体では、中央部と端部とで抵抗ムラが生じ、電気化学反応が不均一となってしまう。
【0039】
これに対し、図3に示した積層体20は、上述したように、放射状流路24bの存在によりスムーズに積層体20の中央部(中央空間24c)まで非水電解液を含浸させることができる。特に、非水電解液の流路が放射状になっていることにより、注液時の含侵ムラが解消され全体的に均一に濡らすことができる。また、接着層24は、放射状流路24bを有するため接着面積が小さくなることからも、注液時間、浸透時間が早くなると言える。よって、本実施形態における積層体20から生成された発電体では、比較例に対し、面方向の抵抗ムラを少なくすることができ、均一な電気化学反応を行わせることができる。
【0040】
次に、再度図3を参照しながら、放射状流路24bの形状例について説明する。
図3に示すように、複数の放射状流路24bは、各放射状流路24bの端部側(積層体20の外縁側)の断面積が略一定になるように配されることができる。図3では、上述したような断面積の条件を満たす一例として、放射状流路24bの厚みを同じとして、共通の幅Wを持つように図示している。
【0041】
これにより、積層体20が直方体形状でありケース10内において各辺(各側面)から略均一に非水電解液を侵入させるような構造である場合において、積層体20に非水電解液をムラ無く含浸させておくことができる。このような構造は、例えばセルに占める電極(主に正極シート21及び負極シート23)の体積密度が高くないような構造を指すことができる。また、この場合、各放射状流路24bの中央空間24c側の断面積も一定であることが好ましい。
【0042】
若しくは、複数の放射状流路24bは、各放射状流路24bの、積層体20の積層方向に垂直な面上の放射角度(図4における角度θ)が略一定になるように配されることができる。つまり、複数の壁24aは積層体面内において周方向に略均一に配されることができる。この場合、積層体20が直方体形状でありケース10内において各辺から略均一に非水電解液を侵入させるような構造である場合において、共通の幅Wを持たせた例に比べさらに、積層体20に非水電解液をムラ無く含浸させておくことができる。また、この場合にも、各放射状流路24bの中央空間24c側の断面積も一定であることが好ましい。
【0043】
また、接着層24は、隣り合う放射状流路24bの間が接着剤による壁24aで仕切られるものとして説明した。これにより、放射状流路24bを容易に且つ確実に形成することができ、積層体20に非水電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0044】
上述したように、壁24aは放射状流路24bに比べて非水電解液の含浸が難しい状態に形成されていればよい。よって、接着剤が壁24aの部分だけ配された構造の代替の構造として、次のような構造を採用することもできる。
【0045】
即ち、代替構造として、接着層24は、隣り合う放射状流路24bの間が高密度の接着剤による壁24aで仕切られ、各放射状流路24bを、壁24aの部分より低密度の接着剤が配された流路(壁24aの部分より疎に接着剤が配された流路)とすることもできる。なお、この場合でも、放射状流路24bを有するため接着面積を小さくすることができる。このような代替構造によっても、放射状流路24bを容易に形成することができ、積層体20に非水電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0046】
また、この場合、中央空間24cも壁24aの部分より低密度の接着剤が配された空間とすることができ、中央空間24cにおける接着剤の密度は放射状流路24bの密度と同等かそれより低密度とすることができる。このように、図3で図示した中央空間24cは完全な空洞にしない構成とすることもできる。但し、中央空間24cは完全な空洞としておくことにすることにより、接着剤が含まれる場合に比べて非水電解液の含浸ムラをより抑制することができる。
【0047】
また、上述したどのような構造の接着層24においても、接着剤は積層体20の端部(外縁)まで塗布することが好ましい。但し、上述したように端部まで放射状流路24bが続いている。端部まで接着剤を塗布することにより、端部からの剥がれや収縮を抑制することができるためである。
【0048】
(実施形態2)
実施形態2に係る非水二次電池について、図6及び図7を併せて参照しながら、主に実施形態1との相違点を中心に説明するが、実施形態1における様々な例が適用可能である。図6は、実施形態2に係る非水二次電池の一例及びそれに収容される積層体における非水電解液の含浸の様子を示す概略図である。図7は、実施形態2に係る非水二次電池の他の例及びそれに収容される積層体における非水電解液の含浸の様子を示す斜視図である。
【0049】
本実施形態では、図3の例における積層体20と異なり、非水電解液が入り難い端部(外縁)に向かう放射形状を他の端部に向かう放射形状に比べて密にする。換言すれば、本実施形態では、非水電解液が入り易い端部に向かう放射形状を他の端部に向かう放射形状に比べて疎にする。
【0050】
例えば、図6に示すように、複数の放射状流路24bは、第1端部(図6の上側の端部)へ向かう放射状流路24bの第1端部側の断面積が、第1端部以外の端部に向かう放射状流路の端部側の断面積に比べて広くなるように配されることができる。ここで、第1端部とは、図6における積層体20aの端部のうちの1つであり、図6の上側の端部を指すことができる。図6では、上述したような断面積の条件を満たす一例として、放射状流路24bの厚みを同じとして、第1端部側の幅W2がそれ以外の端部側の幅W1より大きくなるように図示している。
【0051】
つまり、図6の例では、複数の壁24aは積層体面内において周方向に均一に配されず、第1端部に向かう壁24aが他の端部に向かう壁24aに比べて疎に配されている。無論、第1端部以外の端部に向かう壁24aの中でも疎密を持たせて配置を行うことができ、その配置は非水電解液の侵入し易さにより決定しておけばよい。例えば、上面側だけではなく側面側に向かう壁24aも底面側に向かう壁24aに比べて疎に配することもできる。
【0052】
なお、図6における積層体20aは、図3の積層体20において複数の放射状流路24bを上述のような断面積の条件を満たすような構造にしたものであり、それ以外については基本的に積層体20と同様である。
【0053】
また、図6に示すように、積層体20aはケース10に対応するケース30に収納されている。そして、ケース30は、積層体20bに非水電解液を注液する注液口31を有する。例えば、注液口31には、非水電解液が収容された収容器32を差し込むことで、非水電解液をケース30の内部に注入することができる。その後、ケース30から収容器32が取り除かれ、注液口31が封止されることになる。
【0054】
このような構造は、積層体20aがケース30内において他の端部に比べて第1端部から多くの非水電解液を侵入させるような電池構造の一例である。収容器32から非水電解液が主に上側から注液されるためであり、特にケース30において高密度に積層された積層体20bが収容される場合には下側や両側面側からは上側からより非水電解液が含浸し難い状態となる。
【0055】
そして、図6で例示したような積層体20aは、このようにケース30内において第1端部に比べて他の端部から多くの非水電解液を侵入させるような構造である。そして、積層体20aは、そのような構造の非水二次電池の一部品である場合においても、複数の放射状流路24bの存在により非水電解液をムラ無く含浸させておくことができるという効果を奏することになる。
【0056】
ここでは、正極シートのタブ部21b及び負極シートのタブ部23bが第1端部側に有する例を挙げているが、タブ部の位置はこれらに限ったものではない。但し、タブ部は、極毎に束ねられることが多く、その場合、非水電解液の積層体20aへの侵入を阻害することがある。そのため、非水電解液の注液経路等だけでなく、そのような阻害部分の存在も考慮して、複数の放射状流路24bの形状や配置を決めておくことが、含浸ムラを無くす上で好ましいと言える。
【0057】
若しくは、複数の放射状流路24bは、上記第1端部(図6の上側の端部)へ向かう放射状流路の、積層体20aの積層方向に垂直な面上の放射角度が、第1端部以外の端部に向かう放射状流路の放射角度より大きくなるように配されていることもできる。なお、放射角度が大きいことは放射状流路24bも広いことを意味している。また、ここでの放射角度は図4の角度θに相当する角度である。
【0058】
積層体20aがこのような構造である場合には、上述した断面積の条件を満たす構造に比べてさらに、複数の放射状流路24bの存在により非水電解液をムラ無く含浸させておくことができる。無論、この場合も、積層体20aがケース30内において他の端部に比べて第1端部から多くの非水電解液を侵入させるような電池構造を採用した場合についての効果を説明している。
【0059】
図6に示す例とは異なる例について、図7を参照しながら説明する。図7に示す例でも、積層体20aに対応する積層体20bはケース30に収納されている。図7における積層体20bは、図3の積層体20や図6の積層体20aにおいて複数の放射状流路24bを次のような断面積の条件を満たすような構造にしたものであり、それ以外については基本的に積層体20や積層体20aと同様である。
【0060】
図7に示す非水二次電池は、積層体20bと注液口31との間を隔離する絶縁性の隔離部材33を備えている。例えば、正極シートのタブ部21bと負極シートのタブ部23bとを積層体20bの水平方向に沿って離間させて配置し、それによって生じる空間に隔離部材33を配設しておくことができる。この空間は、例えば、タブ部21bの集電部品とタブ部23bの集電部品との間に生じる空間とすることができる。なお、隔離部材33は、図7の紙面垂直方向にあるケース内壁などに固定しておくことができる。
【0061】
このように、隔離部材33は、積層体20bの端面を覆う(塞ぐ)ように配設されることができ、これにより非水電解液の上側からの浸入を阻害する役割を果たすことができる。よって、図7の例では、図6の例に比べて上側からの非水電解液の浸入が少なくなり、底面(及び側面)からの非水電解液の浸入が多くなるような構造となる場合がある。特に、非水二次電池が、上側からに比べて、非水電解液が貯まる底面からの非水電解液の浸入が多くなるような構造となる場合も、電極体の体積密度や隔離部材33の形状や配置によっては存在することになる。
【0062】
積層体20bは、そのような場合に対応するための複数の放射状流路24bの配置を採用した例であり、積層体20aにおける複数の放射状流路24b(及びそれを形成する複数の壁24a)と上下反転させたものとなっている。つまり、図7の例では、複数の壁24aは積層体面内において周方向に均一に配されず、底面側である第1端部に向かう壁24aが他の端部に向かう壁24aに比べて疎に配されている。また、底面側だけではなく側面側に向かう壁24aも上面側に向かう壁24aに比べて疎に配することもできる。
【0063】
ここでは、正極シートのタブ部21b及び負極シートのタブ部23bが底面側である第1端部と対向する端部側に有する例を挙げているが、タブ部は第1端部以外の端部の1又は複数箇所に有するなど、タブ部の位置はこれらに限ったものではない。
【0064】
その他、積層体20a又は積層体20bには、例えばPP(ポリプロピレン)等のテープが端部のみに又は一周以上巻かれることがあり、このようなテープによっても積層体の端面の一部が塞がれ、非水電解液の浸透が防がれることがある。よって、そのようなテープの存在も考慮して、複数の放射状流路24bの形状や配置を決めておくことが、含浸ムラを無くす上で好ましいと言える。例えば、テープが存在する領域は浸透し難いため、その領域を含む側の積層体端部を浸透し易いような複数の放射状流路24bとすることができる。
【0065】
(実施形態3)
実施形態3として、実施形態1,2に係る非水二次電池を製造する際に適用可能な製造方法について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、実施形態3に係る非水二次電池の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。図9は、図8の製造方法で用いる製造装置の一例を示す上面図である。ここでは、非水二次電池に収容される積層体として、図7で説明した積層体20bを製造する方法を例に挙げて説明するが、実施形態1,2で説明した様々な積層体が適用できる。
【0066】
本実施形態に係る製造方法(以下、本方法)は、積層加圧工程(ステップS1)、切断工程(ステップS2)、積層工程(ステップS3)、加圧工程(ステップS4)、及び含浸工程(ステップS5)を含むことができる。非水二次電池の各構成要素については、実施形態1,2で説明した通りである。また、ステップS1~S4は、正極シート、セパレータ、及び負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、正極シート、セパレータ、及び負極シートを積層させ、両面から加圧して積層体20bを生成する積層体生成工程の一例である。なお、タブ部は打ち抜き加工により適時形成することもできる。
【0067】
概略的に説明すると、本方法では、まず、ステップS1において負極シートの両側にセパレータを配した積層体(以下、第1積層体)を形成し、ステップS2においてそれを単位長さ毎に切断する。本方法では、その後、ステップS3,S4において、切断した単位長さの積層体(以下、第2積層体)に同じく単位長さの正極シートをさらに積層、加圧して積層体20bを形成し、ステップS5において非水電解液を含浸させる。
【0068】
ステップS1では、いずれもがロールに巻かれた長尺のセパレータ、負極シート、セパレータをこの順で積層させるように配した状態で、一対のローラを通過させ、第1積層体を形成する。一対のローラによって、セパレータ、負極シート、セパレータでなる第1積層体の両面から挟み込んで加圧することで、セパレータ、負極シート、セパレータのそれぞれの間を接着することができる。
【0069】
この接着のために、少なくとも一対のローラを通過させる際には接着層24を形成する全領域に接着剤を塗布しておく。例えば、ステップS1において使用するセパレータに、接着層24となる接着剤(接着バインダ)を両側全面又は負極シート側の全面に配しておくことができる。或いは、この接着剤は負極シートのセパレータ側の全面に配しておくこともできる。但し、この段階では放射状流路24b及び中央空間24cを含む接着層24は未形成とする。なお、このような加圧の工程や後述のステップS4の加圧工程は、加圧・接着工程と称することもでき、また加圧時には加熱を行うこともできる。
【0070】
具体的に、図9を参照して一対のローラを備えた製造装置について、並びにそれによる加圧・接着工程について説明する。図9では上側のローラ41のみ図示するが、ローラ41の下側にも積層体20bを挟むようにローラが配されることになる。その他、製造装置は、図示しないが、各部材が巻かれたローラ、各部材を搬送する搬送ローラ、一対のローラを通過後の積層体を引っ張る引張機構、及び、引張機構で生じさせる張力や各ローラの回転速度を制御する制御部を備えることができる。
【0071】
図9の例では、製造装置において、それぞれのロールに巻かれたセパレータ、負極シート、セパレータを引き出し、ローラ41がローラ軸42を中心に下方にある他のローラとともに図中の矢視方向に回転することで、負極シートの両側をセパレータで挟んだ第1積層体を押圧しながら通過させる。
【0072】
このとき、この第1積層体において、非水電解液が含浸する空間として、積層体20bの中央部に配された中央空間24cと中央空間24cから端部に向けて連通する複数の放射状流路24bとを有するように、接着層24を形成する。つまり、本方法では、このような接着層形成工程を含むことになる。
【0073】
特に図9の例を適用した接着層形成工程は、上述したように、ステップS1において、負極シートとその両側に配する2枚のセパレータのそれぞれの間の全領域に(全面に)接着剤を塗布する工程を含む。そして、この接着層形成工程は、次のような加圧部材で、接着剤が塗布された状態で積層された部材(ここでは第1積層体)の両面から加圧する工程を含むことができる。
【0074】
ここで用いられる加圧部材は、図9のローラ41で例示するように、隣り合う放射状流路24bの壁24aとなる領域に凸部41aを設けた加圧部材である。凸部41a以外は平坦部41bとなっている。ローラ41は、所謂、グラビアロールと称されるものとすることができる。グラビアロールを採用する場合でも、一方のローラのみに凸部41aを設けてもよいし、双方のローラに凸部41aを設けてもよい。
【0075】
そして、接着層形成工程は、このような工程を経ることで、隣り合う放射状流路24bの間が高密度の接着剤による壁24aで仕切られ、各放射状流路24bが壁24aの部分より低密度の接着剤が配された流路となるように、接着層24を形成する。接着剤は凸部41aで押圧された領域で高密度となり、それ以外の領域でそれと比較して低密度となる。このようなステップS1での接着により、壁24a、放射状流路24b、及び中央空間24cを含む接着層24が形成された状態で、負極シートとセパレータとが貼り合わせられることになる。
【0076】
その後、ステップS2において、例えば図9における一点鎖線で示す位置で切断し、負極シートの両側をセパレータで挟んだ単位長さの第2積層体を完成させる。なお、単位長さとは非水二次電池1に収納する際の長さを指す。また、切断は、一対のローラを通過後の位置に設けた切断装置で行うことができるが、一対のローラを通過した積層体を巻き取った後に別途、切断装置を用いて行うこともできる。なお、第1積層体の幅が非水二次電池1に収納する際の単位幅であることを前提として説明するが、第1積層体の幅も単位幅より広くてもよく、その場合、ステップS2において単位長さ且つ単位幅となるように第1積層体を切断して第2積層体を完成させるとよい。
【0077】
ステップS3では、正極シートと第2積層体との間に接着層を配して、正極シートと第2積層体を積層させ、積層体(以下、第3積層体)を構成する。第3積層体は、正極シートと第2積層体とのセットを複数積層して構成することができる。また、ステップS3で使用する正極シートは、元々ロールに巻かれた長尺のものを単位長さに、又は単位長さ及び単位幅に切断したものとすることもできる。
【0078】
ステップS3における積層時には、ステップS1において使用するセパレータに接着剤を負極シート側の全面に配し他方の面側に配していない場合には、まずステップS3においてセパレータの正極シート側の全面又は正極シートのセパレータ側の全面に、接着層24となる接着剤を配しておく。但し、この段階では、正極シートとセパレータとの間において、放射状流路24b及び中央空間24cを含む接着層24は未形成とする。
【0079】
ステップS3の処理後に実行されるステップS4では、その第3積層体の両面から加圧部材で挟み込んで加圧することで、正極シートとセパレータとの間を接着し、積層体20bを形成する。ここで使用する加圧部材は、図9で例示したような隣り合う放射状流路24bの壁24aとなる領域に凸部41aを設けた加圧部材である。この加圧部材としては、図9で例示した一対のローラを使用することができるが、一対の加圧板を使用することが製造の容易さから好ましい。
【0080】
加圧を行う際には、加圧対象となる第3積層体を、負極シートとセパレータとの間の接着層24において形成された放射状流路24b及び中央空間24cと位置合わせをするように、第2積層体と正極シートとを重ねて形成しておくことが好ましい。なお、このような位置合わせを行わない場合には、負極シートとセパレータとの間の放射状流路24bが完全に遮断されないように、加圧力を小さくするか加熱する温度を低くするなどの調整を行っておけばよい。
【0081】
本方法によれば、正極シート、負極シート、及びセパレータの各部材間において形成した、複数の放射状流路24bと中央空間24cとを有する接着層24により効率的に非水電解液を含浸させることができるようになり、積層体20bに非水電解液をムラ無く含浸させることが可能になる。
【0082】
ステップS4の処理後に実行されるステップS5では、加圧された積層体20bをケース30に収納し、積層体20bに非水電解液を含浸させる。本方法では、放射状流路24b及び中央空間24cを、ステップS1,S4においてそれぞれセパレータと負極シートとの間、セパレータと正極シートとの間に容易に形成することができ、形成された放射状流路24b及び中央空間24cによりステップS5において積層体20bに非水電解液をよりムラ無く含浸させることができる。その後、収容器32を取り外して、注液口31を封止するなどの後処理を行う。この後処理については本実施形態では問わない。
【0083】
また、接着層形成工程は、次のような代替工程とすることもできる。即ち、代替の接着層形成工程は、ステップS1,S3の双方の工程において、接着層24として複数の放射状流路24bにおける隣り合う放射状流路24bの壁24aとなる領域に接着剤を塗布する工程を含むようにすることができる。そして、ステップS1における加圧の工程では、一対の平滑ローラを用いることで、接着層24において、複数の壁24aが形成され、隣り合う壁24aにより放射状流路24b及び中央空間24cが形成された状態で、負極シートとセパレータとが貼り合わせられることになる。その後のステップS4の加圧工程では、一対の平滑ローラを用いることで、接着層24において、複数の壁24aが形成され、隣り合う壁24aにより放射状流路24b及び中央空間24cが形成された状態で、正極シートとセパレータとが貼り合わせられることになる。
【0084】
特に、このような代替工程では、接着層24が隣り合う放射状流路24bの間を接着剤による壁24aで仕切られるものとする構造を容易に形成することができ、放射状流路24bを空間とする構造であっても容易に形成することができる。これにより、放射状流路24bを容易に且つ確実に形成することができ、積層体に電解液をよりムラ無く含浸させることができる。
【0085】
また、以上の説明では、長い積層体を単位長さに切断することを前提に説明したが、元々単位長さのセパレータ、負極シート、正極シートを用意し、それらの間に接着層を挟むように積層し、加圧して接着することもできる。この場合にも、一対のローラを用いることはできるが、一対の加圧板などの他の加圧部材を用いることもできる。一対の加圧板を用いる場合、凸部41aのような凸部を有していればよい。一対の加圧板の一方のみに凸部41aのような凸部を設けてもよいし、双方にこのような凸部を設けてもよい。
【0086】
また、正極シートとセパレータとの間は、放射状流路24b及び中央空間24cを含む接着層24を形成しないこともできる。例えば、図8のステップS4において周囲が平面の一対のローラ又は加圧板などを使用することで、このような構成の積層体を形成することができる。或いは、上記の代替工程を採用する場合には、ステップS1の工程においてのみ、接着層24として複数の放射状流路24bにおける隣り合う放射状流路24bの壁24aとなる領域に接着剤を塗布する工程を含み、ステップS3の工程では全面に接着剤を塗布するようにすれば、このような積層体を形成することができる。
【0087】
いずれの場合でも、負極シート及びセパレータの各部材間において形成した、複数の放射状流路24bと中央空間24cとを有する接着層24により効率的に非水電解液を含浸させることができるようになり、積層体20bのセパレータと負極シートとの間に非水電解液をムラ無く含浸させることが可能になる。特に、第3積層体を、正極シートと第2積層体とのセットを多く積層して構成した場合であっても、先に負極シートとセパレータとの間で放射状流路24b等を形成できているため、そこに非水電解液をムラ無く含浸させることができる。
【0088】
また、同様の考え方で、正極シートとセパレータとの間だけ放射状流路24b及び中央空間24cを含む接着層24を形成し、負極シートとセパレータとの間は、放射状流路24b及び中央空間24cを含む接着層24を形成しないこともできる。その製造手順は、例えば、上述した手順において、正極シートと負極シートとを入れ替えて実施したものとすることができる。
【0089】
(他の実施形態等)
なお、本発明は上記実施形態1~3に限られたものではなく、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよいし、また、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~3で説明した各部材の形状や材質など、或いは製造方法は、例示したものに限らず、二次電池としての機能が果たせるもの、或いはそのような二次電池が製造できる方法であればよい。また、実施形態1~3では非水二次電池を例に挙げたが電解液は非水電解液に限ったものではなく、実施形態1~3は正極シート、セパレータ、負極シートが積層される積層体を備えた二次電池であれば、どのような二次電池についても適用できる。
【0090】
例えば、実施形態1~3では、積層構造の発電体をケースに収納した例を挙げて説明したが、発電体として捲回体(捲回体構造の発電体)を採用することもできる。この捲回体は、例えばセパレータ、正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータが積層された積層体が捲回されたものである。この捲回体は、捲回軸方向の端部を上下方向又は横方向としてケースに収納させることもでき、ケース内には1又は複数の捲回体を収納させることができる。このように収納された捲回体の場合、その上下方向又はその横方向から電解液が含浸していくことになる。上下方向に端部を収納した場合、横方向からの電解液の含浸がないが、上端及び下端において上述したような放射状流路が設けられていれば電解液の含浸を促進させることができる。また、横方向に端部を収納した場合、上下方向からの電解液の含浸がないが、右端及び左端において上述したような放射状流路が設けられていれば電解液の含浸を促進させることができる。よって、捲回軸方向の端部を上下方向又は横方向として捲回体を収納させた場合であっても、積層構造の発電体を採用した場合と同様に、本実施形態における抵抗ムラを低減させる効果を奏すると言える。
【符号の説明】
【0091】
1 非水二次電池
10、30 ケース
11 蓋
12 負極極柱
13 正極極柱
20、20a、20b 積層体
21 正極シート
21a 正極側の活物質塗工領域
21b 正極側のタブ部
22 セパレータ
23 負極シート
23a 負極側の活物質塗工領域
23b 負極側のタブ部
24 接着層
24a 壁
24b 放射状流路
24c 中央空間
31 注液口
32 収容器
33 隔離部材
41 ローラ
41a 凸部
41b 平坦部
42 ローラ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9