(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8234 20060101AFI20221108BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20221108BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221108BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221108BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L27/088 C
H01L29/78 301G
H01L21/28 301A
(21)【出願番号】P 2020092510
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519009105
【氏名又は名称】合肥晶合集成電路股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】夏目 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】田矢 真敏
(72)【発明者】
【氏名】金 起準
(72)【発明者】
【氏名】崔 助▲鳳▼
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-156290(JP,A)
【文献】特開2001-217412(JP,A)
【文献】特開2000-101084(JP,A)
【文献】特開平07-078975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/088
H01L 29/78
H01L 21/8234
H01L 21/336
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性が等しい第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタが混載された半導体装置であって、
前記第1MOSトランジスタは、ポリシリコンのゲート電極を備えており、
前記第1MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
前記第2領域は、ソースドレインと同極性の不純物が導入されており、
前記第1領域は、前記第2領域の不純物と反対極性の不純物が導入されており、
前記第2MOSトランジスタは、ソースドレインと同極性の不純物が導入されたポリシリコンのゲート電極を備えており、
前記第2領域の不純物の濃度は、前記第2MOSトランジスタのゲート電極の不純物の濃度よりも低い半導体装置。
【請求項2】
前記第1MOSトランジスタは、高電圧MOS構造であり、前記第2MOSトランジスタは、低電圧MOS構造である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、N型のMOS構造である請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1MOSトランジスタは、P型のMOS構造のゲート電極とN型のMOS構造のゲート電極とがカップリングした構造でない請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
MOSトランジスタが搭載された半導体装置であって、
前記MOSトランジスタは、ポリシリコンのゲート電極を備えており、
前記MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
前記第2領域は、ソースドレインと同極性の不純物が導入されており、
前記第1領域は、前記第2領域の不純物と反対極性の不純物が導入されており、
ゲートエッチング工程前に行われ、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程において前記第1領域に対応する第1注入領域をマスクし、ゲートエッチング工程後に行われ、前記プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程において前記第2領域に対応し前記第1注入領域に接する第2注入領域をマスクして製造された半導体装置のゲート電極と比較して、前記プレドープ工程におけるマスク範囲を除いて、等しい工程及び等しいインプラント条件とした場合に、前記MOSトランジスタのゲート電極は、前記第1領域への前記第2領域の不純物の拡散量が少ない半導体装置。
【請求項6】
前記MOSトランジスタは、N型の高電圧MOS構造である請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
シリコン基板の表面にポリシリコンを形成するポリシリコン形成工程と、
ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1注入領域よりも広い範囲がマスクされた状態で、前記ポリシリコンに対してソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程と、
前記ポリシリコンをエッチングしてゲート電極を形成するゲートエッチング工程と、
エッチングされた前記ゲート電極に対して前記第1注入領域以外の領域である第2注入領域をマスクした状態で、前記第1注入領域に前記プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1注入領域をマスクした状態で、前記第2注入領域に対してソースドレインと同極性の不純物をドープするソースドレイン形成工程を有する請求項
7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ソースドレイン形成工程の後に行われ、前記シリコン基板をアニールするアニール工程を有する請求項
8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積回路では、MOS構造の半導体が用いられている。MOSトランジスタでは、ソースドレインを形成する工程において例えばN型の不純物をドープしているが、N型の不純物は、ゲートのポリシリコンにも注入される。
【0003】
MOS型のトランジスタは、ソース及びドレインをつなぐ直線と垂直な方向にゲート幅が定義されているが、ゲート幅の端部において電界が局所的に高くなり、しきい値電圧が低下するキンク現象(ハンプ現象)が発見されている。
【0004】
キンク現象を改善するために、例えば、ゲートにおけるゲート幅の端部に近い位置にゲートの他の領域と反対極性の不純物をドープする技術(例えば特許文献1)等が提案されている。
【0005】
他方で、MOSトランジスタのパフォーマンスを向上させるために、ゲートのポリシリコンにN型の不純物を注入する技術が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、エッチングして電極が形成される前のゲートに対してN型の不純物を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5998848号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0096031号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲートに対して特許文献2のようにN型の不純物を注入し、特許文献1のように反対極性の領域を形成した場合には、ゲートには、N型の領域とP型の領域(ゲート幅の端部に近い)が形成される。しかしながら、N型の不純物がP型の領域に拡散する場合がある。拡散は例えばアニール工程において発生する。このように拡散が発生した場合には、形成したP型の領域が十分でなくなる可能性がある。P型の領域が狭まってしまうと、しきい値電圧の低下が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、しきい値電圧の低下を抑制することのできる半導体装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、極性が等しい第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタが混載された半導体装置であって、前記第1MOSトランジスタは、ポリシリコンのゲート電極を備えており、前記第1MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第2領域は、ソースドレインと同極性の不純物が導入されており、前記第1領域は、前記第2領域の不純物と反対極性の不純物が導入されており、前記第2MOSトランジスタは、ソースドレインと同極性の不純物が導入されたポリシリコンのゲート電極を備えており、前記第2領域の不純物の濃度は、前記第2MOSトランジスタのゲート電極の不純物の濃度よりも低い半導体装置である。
【0010】
上記のような構成によれば、極性の等しい第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタとが混載されており、第1MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域と、第1領域以外の第2領域とを有しており、第2MOSトランジスタは、ソースドレインと同極性の不純物が導入されたポリシリコンのゲート電極を備えている。そして、第2領域の不純物の濃度は、第2MOSトランジスタのゲート電極の不純物の濃度よりも低くされている。このため、第1領域が、第2領域の不純物の拡散によって狭小化することを抑制することが可能となる。このため、第1MOSトランジスタにおけるしきい値電圧の低下を抑制することができる。
【0011】
上記半導体装置において、前記第1MOSトランジスタは、高電圧MOS構造であり、前記第2MOSトランジスタは、低電圧MOS構造であることとしてもよい。
【0012】
上記のような構成によれば、高電圧MOS構造の第1MOSトランジスタと、低電圧MOS構造の第2MOSトランジスタとが混載される場合であっても、第1MOSトランジスタにおけるしきい値電圧の低下を抑制することができる。
【0013】
上記半導体装置において、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタは、N型のMOS構造であることとしてもよい。
【0014】
上記のような構成によれば、N型のMOS構造の第1MOSトランジスタのしきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0015】
上記半導体装置において、前記第2MOSトランジスタは、ゲートエッチング工程前において、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物がプレドープされており、前記第1MOSトランジスタは、ゲートエッチング工程前において、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物がプレドープされていないこととしてもよい。
【0016】
上記のような構成によれば、第2MOSトランジスタは、ゲートエッチング工程前においてゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物がプレドープされており、一方で、第1MOSトランジスタは、ゲートエッチング工程前において、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物がプレドープされていないため、効果的に、第2領域の不純物の濃度を第2MOSトランジスタのゲート電極の不純物の濃度よりも低くして、しきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0017】
上記半導体装置において、前記第1MOSトランジスタは、P型のMOS構造のゲート電極とN型のMOS構造のゲート電極とがカップリングした構造でないこととしてもよい。
【0018】
上記のような構成によれば、カップリング構造ではないMOSトランジスタを対象とすることができる。
【0019】
本発明の第2態様は、MOSトランジスタが搭載された半導体装置であって、前記MOSトランジスタは、ポリシリコンのゲート電極を備えており、前記MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第2領域は、ソースドレインと同極性の不純物が導入されており、前記第1領域は、前記第2領域の不純物と反対極性の不純物が導入されており、ゲートエッチング工程前に行われ、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程において前記第1領域に対応する第1注入領域をマスクし、ゲートエッチング工程後に行われ、前記プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程において前記第2領域に対応し前記第1注入領域に接する第2注入領域をマスクして製造された半導体装置のゲート電極と比較して、前記MOSトランジスタのゲート電極は、前記第1領域への前記第2領域の不純物の拡散量が少ない半導体装置である。
【0020】
上記のような構成によれば、参考例と比較して、MOSトランジスタのゲート電極は、第1領域への第2領域の不純物の拡散量が少ないこととすることができるため、第1領域の狭小化を抑制して、効果的にしきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。なお、参考例とは、ゲートエッチング工程前に行われ、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程において第1領域に対応する第1注入領域をマスクし、ゲートエッチング工程後に行われ、プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程において第2領域に対応し第1注入領域に接する第2注入領域をマスクして製造された半導体装置のゲート電極である。
【0021】
上記半導体装置において、前記MOSトランジスタは、N型の高電圧MOS構造であることとしてもよい。
【0022】
上記のような構成によれば、N型の高電圧MOS構造のトランジスタのしきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0023】
上記半導体装置において、MOSトランジスタは、プレドープ工程におけるゲート電極をマスクする範囲が第1領域に対応する第1注入領域よりも広く設定されていることとしてもよい。
【0024】
上記のような構成によれば、プレドープ工程におけるゲート電極をマスクする範囲が第1領域に対応する第1注入領域よりも広く設定されているため、より効果的に、第1領域への第2領域の不純物の拡散量を少なくして、しきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0025】
上記半導体装置において、前記MOSトランジスタは、ソースドレイン領域に不純物をドープするソースドレイン形成工程前において、前記第1領域に対応する前記第1注入領域においてドープされた不純物と、前記第2領域に対応する前記第2注入領域においてドープされた不純物との間に所定の間隔が空いていることとしてもよい。
【0026】
上記のような構成によれば、ソースドレイン形成工程前において、第1注入領域においてドープされた不純物と、第2注入領域においてドープされた不純物との間に所定の間隔が空いているため、第1領域への第2領域の不純物の拡散量を少なくして、しきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0027】
本発明の第3態様は、シリコン基板の表面にポリシリコンを形成するポリシリコン形成工程と、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1注入領域よりも広い範囲がマスクされた状態で、前記ポリシリコンに対してソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程と、前記ポリシリコンをエッチングしてゲート電極を形成するゲートエッチング工程と、エッチングされた前記ゲート電極に対して前記第1注入領域以外の領域である第2注入領域をマスクした状態で、前記第1注入領域に前記プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程と、を有する半導体装置の製造方法である。
【0028】
上記のような構成によれば、プレドープ工程において、ゲート幅の端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1注入領域よりも広い範囲がマスクされた状態で、ポリシリコンに対してソースドレインと同極性の不純物をドープし、逆極性インプランテーション工程において、エッチングされたゲート電極に対して第1注入領域以外の領域である第2注入領域をマスクした状態で、第1注入領域にプレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする。このため、第1注入領域においてドープされた不純物と、第2注入領域においてドープされた不純物との間に所定の間隔が空いているため、第1領域の狭小化を抑制して、しきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0029】
上記半導体装置の製造方法において、第1注入領域をマスクした状態で、第2注入領域に対してソースドレインと同極性の不純物をドープするソースドレイン形成工程を有することとしてもよい。
【0030】
上記のような構成によれば、ソースドレイン形成工程において、第1注入領域への不純物のドープを阻止することができる。
【0031】
上記半導体装置の製造方法において、ソースドレイン形成工程の後に行われ、シリコン基板をアニールするアニール工程を有することとしてもよい。
【0032】
上記のような構成によれば、不純物をドープしたシリコン基板をアニーリングによって活性化させることができおる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、しきい値電圧の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図の一例である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置のX-X´断面図の一例である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る半導体装置のY-Y´断面図の一例である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るLVNMOSの平面図の一例である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るLVNMOSのZ-Z´断面図の一例である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す図の一例である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す図の一例である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す図の一例である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す図の一例である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す図の一例である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す図の一例である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第7工程を示す図の一例である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の第8工程を示す図の一例である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の効果を説明する図の一例である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の平面図の一例である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る半導体装置のX-X´断面図の一例である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る半導体装置のY-Y´断面図の一例である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す図の一例である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す図の一例である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す図の一例である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す図の一例である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す図の一例である。
【
図23】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す図の一例である。
【
図24】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第7工程を示す図の一例である。
【
図25】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の第8工程を示す図の一例である。
【
図26】参考例の製造方法の第3工程を示す図の一例である。
【
図27】参考例に係る半導体装置のゲートにおける不純物分布状態を示す図の一例である。
【
図28】本発明の第2実施形態に係る半導体装置のゲートにおける不純物分布状態を示す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係る半導体装置、及びその製造方法の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、半導体装置1aの平面図(Top View)である。
図2は、半導体装置1aのX-X´断面図である。
図3は、半導体装置1aのY-Y´断面図である。
図1-
図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置1aは、P型基板と、Pウェル(HVPWELL)と、LDDと、ソースドレインSDと、ゲート電極Gと、STIと、活性領域(アクティブエリア)AAとを有している。なお、
図1-
図3において、ゲート電極Gに、不純物の注入領域を示す第1注入領域AI1と第2注入領域AI2を表している。本実施形態では、第1MOSトランジスタとしてHVNMOS(高電圧のNMOS)を例として説明するが、他の構造のMOSとしても良い。HVNMOSとは、動作電圧が概して18V以上の高電圧に分類されるMOSトランジスタである。
【0036】
P型基板には、後述するウェル等が形成されることによってMOS構造のトランジスタが形成される。
【0037】
Pウェルは、P型基板に対して上側に設けられている。シリコン基板の表面に対して不純物がドープされることでウェルが形成される。例えばボロン等のP型の不純物をドープすることでPウェルが形成される。
【0038】
LDDは、ソースドレインSDよりも不純物濃度の低い領域である。なお、LDDの不純物はソースドレインSDと同極性である。LDDは、ホットキャリアの発生を抑制し、しきい値電圧変化や電源耐圧劣化等を抑制している。
【0039】
ソースドレインSDは、トランジスタのソースドレインSDとして配置したい領域に不純物がドープされることによって形成される。例えば、N型の不純物がドープされることで、N型のソースドレインSDが形成される。
【0040】
ゲート電極Gは、ポリシリコンのゲート電極Gにより構成されている。ゲート電極Gに対応してゲート長Lとゲート幅Wが設定されている。ゲート電極Gは、アニール工程後において、第1領域A1と、第2領域A2とが形成される。第1領域A1及び第2領域A2は、それぞれ対応する第1注入領域AI1及び第2注入領域AI2に不純物がドープされることによって形成される。第1注入領域AI1又は第2注入領域AI2にドープされた不純物はアニール工程によって拡散する場合があり、微視的には第1領域A1と第1注入領域AI1(または第2領域A2と第2注入領域AI2)とは等しくならない。このため、以下の説明では、不純物がドープされる領域を第1注入領域AI1又は第2注入領域AI2といい、アニーリング工程後における対応する領域を第1領域A1及び第2領域A2として説明を行う。
【0041】
第1領域A1は、第2領域A2の不純物と反対極性の不純物が導入されている。後述するように、第2領域A2は、N型の不純物によって構成されるため、第1領域A1はP型の不純物によって構成される。後述するように、第1領域A1は、第1注入領域AI1に不純物がドープされることによって形成される。
【0042】
また、第1領域A1は、ゲート幅Wの端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられている。具体的には、ソースとドレインとを通過する直線に直交する方向(ゲート幅方向)にゲート幅Wが定義されている。そして、ゲート幅Wは、
図3に示されるように、ゲート電極Gの直下のPウェルにおいて、STIで挟まれた幅となる。このため、STIとPウェルとの境界を端部として、ゲート幅Wが定義される。その上で、ゲート幅Wの端部を通過する積層方向の延長線を仮想的に想定すると、ゲート電極Gにおいて、該延長線が通過する位置に第1領域A1が定義される。具体的には第1領域A1は、該延長線が通過するようにゲート電極Gに設けられている。このようにすることで、第1領域A1は、ゲート電極Gにおいてゲート幅Wの端部に近い位置に設けられることとなる。なお、第1注入領域AI1についても同様に延長線が通過する位置に設定されている。
【0043】
第2領域A2は、ソースドレインSDと同極性の不純物が導入されている。具体的には、第2領域A2は、N型の不純物によって構成されている。そして、第2領域A2は、ゲート電極Gにおいて、第1領域A1以外の領域となる。後述するように、第2領域A2は、第2注入領域AI2に不純物がドープされることによって形成される。
【0044】
なお、ゲート電極Gは、P型のMOS構造のゲート電極GとN型のMOS構造のゲート電極Gとがカップリングした構造でない。すなわち、本実施形態におけるHVNMOS(第1MOSトランジスタ)はカップリング構造ではない。
【0045】
STIは、例えばCVD法によって、溝をシリコン酸化膜で埋めることで形成される。
【0046】
半導体装置1aには、上記のようなHVNMOS(第1MOSトランジスタ)の他にもMOS構造のトランジスタ(第2MOSトランジスタ)が混載される。
【0047】
他のMOS構造のトランジスタは、例えば
図4及び
図5に示すようなLVNMOS(低電圧のNMOS)である。
図4ではLVNMOSの平面図(Top View)である。
図5は、LVNMOSのZ-Z´断面図である。LVNMOSとは、動作電圧が概して4V以下の低電圧に分類されるMOSトランジスタである。LVNMOSは、
図4及び
図5に示すように、P型基板と、Pウェル(LVPWELL)と、LDDa(エクステンション)と、ソースドレインSDaと、ゲート電極Gaと、STIと、活性領域(アクティブエリア)AAaとを有している。特にゲート電極Gaは、ソースドレインSDaと同極性の不純物が導入される。また、LVNMOSでは、
図4の平面図のLDDaと、活性領域AAaからゲート電極Gaを除いた領域との重複領域が、
図5の断面図におけるLDDaを構成している。そして、
図4の平面図におけるソースドレインSDaと、活性領域AAaからゲート電極Gaを除いた領域との重複領域、かつサイドウォールSWの下以外が、
図5の断面図におけるソースドレインSDaを構成している。すなわち、断面図におけるLDDaは、平面図としてみたときに活性領域AAa内かつゲート電極Ga以外に形成され、断面図におけるソースドレインSDaは、平面図としてみたときに活性領域AAa内かつゲート電極Ga及びサイドウォールSW以外に形成される。
【0048】
HVNMOSとLVNMOSとは、同じP型基板に対して形成されている。後述するように、HVNMOSには、プレドープによってゲート電極Gのエッチング前に不純物導入が行われない。このため、HVNMOSにおいて、第2領域A2の不純物の拡散による第1領域A1の狭小化を抑制して、しきい値電圧の低下を抑制する。
【0049】
換言すると、HVNMOS(第2領域A2)にはプレドープによる不純物が導入されないため、第2領域A2の不純物の濃度は、LVNMOSのゲート電極Gaの不純物の濃度よりも低い。
【0050】
次に、本実施形態における半導体装置1aの製造方法(プロセスフロー)の一例について図面を参照して説明する。
図6から
図13は、半導体装置1aの各製造工程を示した図である。なお、各図においては左側にLVNMOS(第2MOSトランジスタ)を形成し、右側にHVNMOS(第1MOSトランジスタ)を形成する場合を示している。なお、LVNMOSは、
図4におけるZ-Z´断面(ゲート幅方向に直交する断面)を示しており、HVNMOSは、
図1におけるY-Y´断面(ゲート幅方向に平行な断面)を示している。
図6から
図13の各工程では、それぞれ第1工程から第8工程の各工程を示している。
【0051】
図6の第1工程では、シリコン基板上のSTIを形成しない部分にレジストパターンを形成し、エッチング処理を行うことによって溝(トレンチ)を掘る。溝の形成が終了するとレジストパターンは除去される。そして、CVD法等が用いられ、シリコン酸化膜を形成し、形成した溝が埋められる。溝に形成されたシリコン酸化膜はSTIとなる。そして、シリコン基板の表面を研磨等し、溝の中だけにシリコン酸化膜を残し、他のシリコン酸化膜を除去する。
【0052】
また、第1工程では、シリコン基板の表面に対して不純物をドープしてウェルを形成する。例えばボロン等の不純物をドープすることでPウェルを形成する。具体的には、LVNMOSに対してLVPWELLが形成され、HVNMOSに対してHVPWELLが形成される。
【0053】
また、第1工程では、シリコン基板の表面においてシリコン酸化膜(絶縁膜)Goxを形成する。HVNMOSの方が高電圧仕様であるため、シリコン酸化膜Goxは、HVNMOSの方が厚く形成される。
【0054】
図7の第2工程(ポリシリコン形成工程)では、ゲート電極GのポリシリコンPolyをシリコン酸化膜Goxの上に形成する。このようにして、シリコン基板の表面にポリシリコンPolyを形成する。
【0055】
図8の第3工程では、プレドープ工程である。プレドープとは、ゲートエッチングの前段階において、ポリシリコンに不純物をドープする工程である。ドープする不純物は、ソースドレインSDと同極性の不純物である。すなわちNMOSの場合にはN型の不純物がドープされることとなる。プレドープ工程では、インプラント条件は例えばリン(P)が1×10^15[atoms/cm^2]以上6×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。このように、プレドープ工程においてドープする不純物はリンであるため、後述するようにアニール工程において拡散が生じる。
【0056】
プレドープ工程では、HVNMOSに対する不純物のドープはブロックされる。すなわち、HVNMOSに対してはレジストパターンL1が形成され、プレドープのための不純物は、HVNMOSのポリシリコンにはドープされない。つまり、プレドープ工程においては、ヒ素よりも拡散係数が高い(熱による拡散距離が大きい)不純物のドープがブロックされる。一方で、LVNMOSに対しては、プレドープのための不純物がドープされる。
【0057】
図9の第4工程では、ゲートエッチング工程である。すなわち、シリコン基板の表面に形成されたポリシリコンを、ゲート設計値(設計寸法)に基づいてエッチングし、ゲート電極Gを成形する。
【0058】
図10の第5工程では、LVNMOSに対してエクステンション(低濃度不純物ドレイン)LDDaが形成される。具体的には、リンやヒ素等の不純物が注入されNLDDが形成される。
【0059】
また、第5工程では、ゲート電極Gに対してサイドウォールSWも形成される。
【0060】
図11の第6工程(逆極性インプランテーション工程)では、第1領域A1に対応する第1注入領域AI1に対して不純物がドープされる。第6工程では、LVNMOSはレジストパターンL2でマスクされる。また、HVNMOSについても、第1領域A1を形成する第1注入領域AI1以外の領域はレジストパターンL2でマスクされる。このようなマスク状態において、P型の不純物が第1注入領域AI1に対してドープされる。これによって、HVNMOSのゲート電極Gにおける第1注入領域AI1にP型の不純物が注入され、アニール工程後に第1領域A1となる。逆極性インプランテーション工程(インプランテーション工程)では、インプラント条件は例えばボロン(またはほう素ジフルオリド)が1×10^15[atoms/cm^2]以上5×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。
【0061】
図12の第7工程(ソースドレイン形成工程)では、ソースドレインSDが形成される。具体的には、N型の不純物が注入されることによって、ソースドレインSDが形成される。なお、HVNMOSにおける第1注入領域AI1には不純物が注入されないようにレジストパターンL3が形成されている。このためHVNMOSの第1注入領域AI1以外の領域であるLVNMOSのゲート電極GaやHVNMOSのゲート電極Gの第2注入領域AI2等にはN型の不純物がドープされる。ソースドレイン形成工程では、インプラント条件は例えばヒ素(As)が1×10^15[atoms/cm^2]以上5×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。
【0062】
図13の第8工程では、ソースドレイン形成工程の後に行われ、シリコン基板をアニールする(アニール工程)。このようにアニーリングが行われることによって、シリコン基板が活性化及び安定化させる。
【0063】
このようにして、半導体装置1aは製造される。なお、上記の各工程は一例であり、各工程により製造される場合に限定されない。
【0064】
上記のように各工程が実行されることによって、
図1のようにHVNMOSが形成される。ここで、HVNMOSは、プレドープの工程において不純物(P)の注入が行われない。このため、アニール工程においても第2注入領域AI2のN型の不純物(プレドープ工程における不純物)が第1注入領域AI1へ拡散侵入して、第1領域A1がゲート幅方向(ソースとドレインを通過する直線に垂直な方向)において縮小してしまうことを抑制することができる。このため、第1領域A1のサイズを十分に設定することができ、しきい値の低下減少が抑制される。なお、ソースドレイン形成工程でドープしているヒ素は、リンと比較して拡散量が小さい。換言すると、ヒ素と比較してリンは拡散係数が高い。このため、HVNMOSのゲート電極Gの第2注入領域AI2へはN型の不純物であるヒ素がドープされるが、アニール工程が行われても第1注入領域AI1への拡散侵入は少ない。
【0065】
次に、本実施形態における半導体装置1aの効果について図面を参照して説明する。
図14は、ドレイン電流-ゲート電圧特性(Id-Vgカーブ)を示す図である。
図14は、HVNMOSにプレドープにおいて不純物を導入した場合を参考例としている。
図14では、参考例の特性をPexとして示し、本実施形態のHVNMOSの特性をP1として示している。そして、しきい値は、所定のドレイン電流を得るためのゲート電圧として定義されるため、
図14では、所定のドレイン電流をI1として、Pexに対応するしきい値電圧をVeとして示し、P1に対応するしきい値電圧をV1として示している。
【0066】
参考例では、Pexとして表されるように、キンク現象が発生してしきい値電圧(
図14のVe)が低下している。これは、プレドープした不純物が第1領域A1へ侵食して第1領域A1が狭小化したためである。これに対して、本実施形態におけるHVNMOSでは、キンク現象が抑制され、しきい値電圧(
図14のV1)の低下が改善されている。このため、HVNMOSとして適切なしきい値が設定される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置、及びその製造方法によれば、極性の等しいHVNMOSとLVNMOSとが混載されており、HVNMOSのゲート電極Gaは、ゲート幅Wの端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1領域A1と、第1領域A1以外の第2領域A2とを有しており、LVNMOSは、ソースドレインSDと同極性の不純物が導入されたポリシリコンのゲート電極Gaを備えている。そして、第2領域A2の不純物の濃度は、LVNMOSのゲート電極Gaの不純物の濃度よりも低くされている。このため、第1領域A1が、第2領域A2の不純物の拡散によって狭小化することを抑制することが可能となる。このため、HVNMOSにおけるしきい値電圧の低下を抑制することができる。
【0068】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置、及びその製造方法について説明する。
本実施形態では、第1実施形態と異なる方法でしきい値電圧の低下を抑制する場合について説明する。以下、本実施形態に係る半導体装置、及びその製造方法について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0069】
図15は、半導体装置1bの平面図である。
図16は、
図15の半導体装置1bのX-X´断面図である。
図17は、
図15の半導体装置1bのY-Y´断面図である。なお、本実施形態における半導体装置1b(HVNMOS)の構成は、第1実施形態のHVNMOSの構成と基本的に等しいである。
図15-
図17に示すように、第1実施形態と同様に、P型基板と、Pウェル(HVPWELL)と、LDDと、ソースドレインSDと、ゲート電極Gと、STIと、活性領域(アクティブエリア)AAとを有している。そして、
図15-
図17において、ゲート電極Gに、不純物の注入領域を示す第1注入領域AI1と第2注入領域AI2を表している。後述するように、本実施形態では、第1注入領域AI1と、プレドープ工程において第2注入領域AI2へ注入される不純物との間にはスペース(
図15のS)が設けられる。本実施形態では、HVNMOS(高電圧のNMOS構造)を例として説明するが、他の構造のMOSとしても良い。
【0070】
ゲート電極Gは、アニール工程後において、第1領域A1と、第2領域A2とが形成される。第1領域A1及び第2領域A2は、それぞれ対応する第1注入領域AI1及び第2注入領域AI2に不純物がドープされることによって形成される。第2注入領域AI2には、ソースドレインSDと同極性の不純物であるN型の不純物がドープされる。第1注入領域AI1には、第2注入領域AI2と反対極性の不純物がドープされている。
【0071】
ゲート電極Gにおいて注入された不純物はアニール工程において拡散する。特に、プレドープにおいてドープされるN型の不純物は濃度が高く、アニール工程において拡散する。すなわち、第2注入領域AI2におけるN型の不純物が第1注入領域AI1側へ拡散することとなる。拡散量が多いと第1領域A1が狭小化し、しきい値電圧の低下を招く可能性もある。このため、第1注入領域AI1及び第2注入領域AI2にドープされる不純物は、拡散を考慮して注入範囲が設定される。
【0072】
具体的には、プレドープ工程におけるゲート電極Gをマスクする範囲が第1注入領域AI1よりも広く設定されている。これによって、ソースドレイン形成工程前(すなわちアニール工程前)において、第1注入領域AI1においてドープされた不純物と、第2注入領域AI2においてドープされた不純物との間に所定の間隔(スペース領域S)が空いていることとなる。これによって、アニーリングを行っても、第2注入領域AI2におけるN型の不純物が第1注入領域AI1に拡散することを抑制する。
【0073】
すなわち、本実施形態におけるHVNMOSのゲート電極Gは、参考例(詳細は後述)のプロセスで製造した場合と比較して、第1領域A1への第2領域A2の不純物の拡散量が少ないこととなる。
【0074】
参考例とは、プレドープにおける不純物の注入範囲と逆極性インプランテーション工程における不純物の注入範囲とが接している場合である。具体的には、参考例とは、ゲートエッチング工程前に行われ、ゲート電極のポリシリコンにソースドレインと同極性の不純物をドープするプレドープ工程において第1注入領域AI1をマスクし、ゲートエッチング工程後に行われ、プレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする逆極性インプランテーション工程において第1注入領域AI1に接する第2注入領域AI2をマスクして製造する場合である。なお、本実施形態における半導体装置1bの製造方法(プロセスフロー)と、参考例における半導体の製造方法とは、等しい各工程(マスクは異なる)が行われ、各工程におけるインプラント条件(不純物注入条件)は等しいとする。なお、インプラント条件とは、インプラントを行う不純物の濃度条件である。
【0075】
このように、第1領域A1へ拡散する反対極性の不純物の拡散量を抑制することができるため、第1領域A1の狭小化を抑制することができる。第1領域A1が適切に形成されることによって、しきい値電圧の低下が抑制される。
【0076】
STIは、例えばCVD法によって、溝をシリコン酸化膜で埋めることで形成される。
【0077】
半導体装置1bには、上記のような HVNMOS(第1MOSトランジスタ)の他にもMOS構造のトランジスタ(第2MOSトランジスタ)が混載されることとしてもよい。具体的には、半導体装置1bには、
図4-
図5に示すLVNMOSが混載されることとしてもよい。
【0078】
次に、本実施形態における半導体装置1bの製造方法(プロセスフロー)の一例について図面を参照して説明する。
図18から
図25は、半導体装置1bの各製造工程を示した図である。なお、各図においては左側にLVNMOSを形成し、右側にHVNMOSを形成する場合を示している。
図18から
図25の各工程では、第1工程から第8工程の各工程を示している。
【0079】
図18の第1工程では、シリコン基板上にSTIを形成しない部分にレジストパターンを形成し、エッチング処理を行うことによって溝(トレンチ)を掘る。溝の形成が終了するとレジストパターンは除去される。そして、CVD法等が用いられ、シリコン酸化膜を形成し、形成した溝が埋められる。溝に形成されたシリコン酸化膜はSTIとなる。そして、シリコン基板の表面を研磨等し、溝の中だけにシリコン酸化膜を残し、他のシリコン酸化膜を除去する。
【0080】
また、第1工程では、シリコン基板の表面に対して不純物をドープしてウェルを形成する。例えばボロン等の不純物をドープすることでPウェルを形成する。具体的には、LVNMOSに対してLVPWELLが形成され、HVNMOSに対してHVPWELLが形成される。
【0081】
また、第1工程では、シリコン基板の表面においてシリコン酸化膜(絶縁膜)Goxを形成する。HVNMOSの方が高電圧仕様であるため、シリコン酸化膜Goxは、HVNMOSの方が厚く形成される。
【0082】
図19の第2工程(ポリシリコン形成工程)では、ゲート電極GのポリシリコンPolyをシリコン酸化膜Goxの上に形成する。このようにして、シリコン基板の表面にポリシリコンPolyを形成する。
【0083】
図20の第3工程では、プレドープ工程である。プレドープとは、ゲートエッチングの前段階において、ポリシリコンに不純物をドープする工程である。ドープする不純物は、ソースドレインSDと同極性の不純物である。すなわちNMOSの場合にはN型の不純物がドープされることとなる。プレドープ工程では、インプラント条件は例えばリン(P)が1×10^15[atoms/cm^2]以上6×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。このように、プレドープ工程においてドープする不純物はリンであるため、後述するようにアニール工程において拡散が生じる。
【0084】
プレドープ工程では、第1注入領域AI1よりも広い範囲がレジストパターンL4でマスクされた状態で、ポリシリコンに対してソースドレインSDと同極性の不純物をドープする。このようにすることによって、第1注入領域AI1よりも広い範囲において不純物のドープがされない。換言すると、ゲート電極Gにおいて、第1注入領域AI1を含み、第1注入領域AI1からゲート幅方向において所定のスペース領域Sを有する領域(マスク範囲)へはプレドープにおける不純物はドープされない。つまり、プレドープ工程においては、ヒ素よりも拡散係数が高い(熱による拡散距離が大きい)不純物が第1注入領域に対してスペース領域Sを空けてドープされることとなる。
【0085】
図21の第4工程では、ゲートエッチング工程である。すなわち、シリコン基板の表面に形成されたポリシリコンを、ゲート設計値(設計寸法)に基づいてエッチングし、ゲート電極Gを成形する。
【0086】
図22の第5工程では、LVNMOSに対してエクステンション(低濃度不純物ドレイン)LDDaが形成される。具体的には、リンやヒ素等の不純物が注入されNLDDが形成される。
【0087】
また、第5工程では、ゲート電極Gに対してサイドウォールSWも形成される。
【0088】
図23の第6工程(逆極性インプランテーション工程)では、第1注入領域AI1に不純物がドープされる。第6工程では、LVNMOSはレジストパターンL2でマスクされる。また、HVNMOSについても、第1領域A1を形成する第1注入領域AI1以外の領域である第2注入領域AI2はレジストパターンL2でマスクされる。このようなマスク状態において、プレドープ工程でドープした不純物と逆極性であるP型の不純物がドープされる。これによって、HVNMOSのゲート電極Gにおける第1注入領域AI1にP型の不純物が注入され、第1領域A1が形成される。逆極性インプランテーション工程では、インプラント条件は例えばボロン(またはほう素ジフルオリド)が1×10^15[atoms/cm^2]以上5×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。
【0089】
このように第6工程が実行されると、ゲート電極Gには、プレドープ工程におけるN型の不純物と、逆極性インプランテーション工程におけるP型の不純物が注入された状態となる。具体的には、逆極性インプランテーション工程によって、第1注入領域AI1にP型の不純物が注入され、プレドープ工程によって、第1注入領域AI1及びスペース領域S以外の領域にN型の不純物が注入される。すなわち、ソースドレイン形成工程前におけるゲート電極Gでは、第1注入領域AI1においてドープされた不純物と、第2注入領域AI2においてドープされた不純物との間に所定の間隔(スペース領域S)が空くこととなる。
【0090】
図24の第7工程(ソースドレイン形成工程)では、ソースドレインSDが形成される。具体的には、N型の不純物が注入されることによって、ソースドレインSDが形成される。なお、HVNMOSにおける第1注入領域AI1には不純物が注入されないようにレジストパターンL3によりマスクされている。このためHVNMOSの第1注入領域AI1以外の領域であるLVNMOSのゲート電極GaやHVNMOSのゲート電極Gの第2注入領域AI2等にはソースドレインSDと同極性の不純物であるN型の不純物がドープされる。ソースドレイン形成工程では、インプラント条件は例えばヒ素(As)が1×10^15[atoms/cm^2]以上5×10^15[atoms/cm^2]以下程度となる。なお、本実施形態では第1注入領域AI1に対してレジストパターンL3を構成しているが、第1注入領域AI1及びスペース領域Sをマスクするようにレジストパターンを構成することとしてもよい。
【0091】
図25の第8工程では、ソースドレイン形成工程の後に行われ、シリコン基板をアニールする(アニール工程)。このようにアニーリングが行われることによって、シリコン基板が活性化及び安定化させる。
【0092】
このようにして、半導体装置1bは製造される。なお、上記の各工程は一例であり、各工程により製造される場合に限定されない。
【0093】
このようにHVNMOSを形成する場合でも、
図14と同様に、しきい値電圧の低下を効果的に抑制することができる。
【0094】
次に、参考例における半導体装置の製造方法(プロセスフロー)の一例について図面を参照して説明する。なお、参考例における製造方法は、本実施形態におけるプレドープ工程(第3工程)以外の工程(第1工程から第2工程、第4工程から第8工程)と等しい。
【0095】
図26は、参考例における第3工程(プレドープ工程)を示している。ドープする不純物は、本実施形態の第3工程と同様に、ソースドレインSDと同極性の不純物である。プレドープ工程では、第1注入領域AI1がレジストパターンL6でマスクされた状態で、ポリシリコンに対してソースドレインSDと同極性の不純物をドープする。すなわち、第1注入領域AI1において不純物のドープがされない。
【0096】
このような状態において、第6工程(逆極性インプランテーション工程)が行われると、第2領域A2に対応し第1注入領域AI1に接する第2注入領域AI2をマスクしてP型の不純物が注入される。すなわち、プレドープ工程において第2注入領域AI2に注入した不純物(N型)と、逆極性インプランテーション工程において第1注入領域AI1に注入した不純物(P型)との間にスペースが存在しない。このような状態でアニール工程が行われると、N型の不純物が第1注入領域AI1へ拡散浸食することとなり、最終的に形成される第1領域A1の領域範囲が狭くなる現象が生ずる。このため、参考例では、しきい値電圧の低下が発生する可能性がある。
【0097】
次に、半導体装置1bのゲート電極Gにおける不純物分布状態について説明する。
図27では、参考例のプロセスで製造されたHVNMOSのゲート電極Gの不純物分布状態を示している。
図28では、本実施形態におけるHVNMOSのゲート電極Gの不純物分布状態を示している。なお、各濃度分布曲線は、アニール工程後(拡散発生後)の状態を示している。
【0098】
図27に示すように、参考例では、逆極性インプランテーション工程におけるP型の不純物の注入領域と、プレドープ工程におけるN型の不純物の注入領域とが接している。なお、ソースドレイン形成工程におけるN型の不純物の注入領域についても接している。このような状態でアニール工程が行われると、ソースドレイン形成工程におけるN型の不純物はW1として示すように第1注入領域AI1側へ少々拡散する。逆極性インプランテーション工程におけるP型の不純物についてもW2として示すように第2注入領域AI2側へ拡散する。これに対して、プレドープ工程における不純物は主としてリンが用いられるため、W3として示すように第1注入領域AI1側へ大量に拡散する。これによって、極性の異なる不純物同士の間で再結合等が発生し、N型の不純物濃度はW4のようになり、P型の不純物濃度はW5のようになる。これによって、第1領域A1と第2領域A2の範囲が決定される。すなわち、参考例では、プレドープ工程におけるN型の不純物が多く拡散し、第1領域A1が第1注入領域AI1に対して大幅に小さくなる。これによって第1領域A1を十分に形成することができずしきい値の低下が発生する可能性がある。
【0099】
これに対して、
図28に示すように、本実施形態では、逆極性インプランテーション工程におけるP型の不純物の注入領域と、プレドープ工程におけるN型の不純物の注入領域との間にスペース領域Sを設けている。なお、ソースドレイン形成工程におけるN型の不純物の注入領域については、ヒ素はプレドープ工程のリンと比較して拡散長が短いためP型の不純物の注入領域と接してもよいし、スペース領域を設けることとしてもよい。
図28では、スペース領域を設ける場合について説明している。このような状態でアニール工程が行われると、ソースドレイン形成工程におけるN型の不純物はZ1として示すように第1注入領域AI1側へ少々拡散する。なお、ソースドレイン形成工程でドープしているヒ素は、リンと比較して拡散量が小さい。換言すると、ヒ素と比較してリンは拡散係数が高い。このため、アニール工程が行われても第1注入領域AI1への拡散侵入は少ない。逆極性インプランテーション工程におけるP型の不純物についてもZ2として示すように第2注入領域AI2側へ拡散する。これに対して、プレドープ工程における不純物は主としてリンが用いられるため、Z3として示すように第1注入領域AI1側へ大量に拡散するが、スペース領域Sが設けられているため、第1注入領域AI1への拡散量は参考例と比較して少ない。これによって、N型の不純物濃度はZ4のようになり、P型の不純物濃度はZ5のようになり、第1領域A1と第2領域A2の範囲が決定される。すなわち、本実施形態では、プレドープ工程におけるN型の不純物が第1注入領域AI1へ拡散することをスペース領域によって抑制している。これによって、第1注入領域AI1が狭くなることを抑制して、第1注入領域AI1と第1領域A1とを略等しい範囲とすることができる。これによって第1領域A1を十分に形成することができ、しきい値の低下を抑制する。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置、及びその製造方法によれば、プレドープ工程において、ゲート幅Wの端部を通過する積層方向の延長線を通過するようにそれぞれの端部に対応して設けられた第1注入領域AI1よりも広い範囲がマスクされた状態で、ポリシリコンに対してソースドレインSDと同極性の不純物をドープし、逆極性インプランテーション工程において、エッチングされたゲート電極Gに対して第1注入領域AI1以外の領域である第2注入領域AI2をマスクした状態で、第1注入領域AI1にプレドープ工程でドープした不純物と逆極性の不純物をドープする。このため、第1注入領域AI1においてドープされた不純物と、第2注入領域AI2においてドープされた不純物との間に所定の間隔が空いているため、第1領域A1の狭小化を抑制して、しきい値電圧の低下を抑制することが可能となる。
【0101】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0102】
なお、上記の各実施形態では、第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタをN型として説明したが、P型としてもよい。
【0103】
具体的には、第1実施形態の第1MOSトランジスタ(NMOS(HVNMOS))は、P型とした場合には、PMOS(HVPMOS)となる。すなわち、HVPMOSとした場合の第1MOSトランジスタは、P型基板と、Nウェル(HVNWELL)と、LDDと、ソースドレインSD(P型)と、ゲート電極Gと、STIとを有している。なお、第2MOSトランジスタについてもPMOS(LVPMOS)となる。そして、プレドープ工程では、プレドープのための不純物は、HVPMOSのポリシリコンにはドープされない。プレドープ工程では、例えばホウ素(B)のドープが行われる。そして、逆極性インプランテーション工程では、HVPMOSの第1注入領域に対してN型の不純物がドープされる。そして、ソースドレイン形成工程では、HVPMOSの第2注入領域に対してP型の不純物(例えばAs)がドープされる。そしてアニール工程が実行される。すなわち、HVPMOSへはプレドープ工程における不純物(B)のドープが行われない。このため、第1領域が狭小化してしまうことが抑制される。なお、第2注入領域へは、ソースドレイン形成工程においてAsがドープされているが、AsはBと比較して拡散量が小さい。このため、第1実施形態のHVNMOSと同様に、HVPMOSにおいても、第1領域の狭小化が抑制される。
【0104】
また、第2実施形態の第1MOSトランジスタ(NMOS(HVNMOS))は、P型とした場合には、PMOS(HVPMOS)となる。すなわち、HVPMOSとした場合の第1MOSトランジスタは、P型基板と、Nウェル(HVNWELL)と、LDDと、ソースドレインSD(P型)と、ゲート電極Gと、STIとを有している。なお、第2MOSトランジスタについてもPMOS(LVPMOS)となる。そして、プレドープ工程では、HVPMOSにおいて、第1注入領域よりも広い範囲(第1注入領域+スペース領域)に対して不純物のドープがされない。プレドープ工程では、例えばホウ素(B)のドープが行われる。そして、逆極性インプランテーション工程では、HVPMOSの第1注入領域に対してN型の不純物がドープされる。そして、ソースドレイン形成工程では、HVPMOSの第2注入領域に対してP型の不純物(例えばAs)がドープされる。そしてアニール工程が実行される。すなわち、ソースドレイン形成工程前におけるゲート電極では、第1注入領域においてドープされたN型の不純物と、第2注入領域においてドープされたP型の不純物(B)との間に所定の間隔(スペース領域)が空くこととなる。このため、第1領域が狭小化してしまうことが抑制される。なお、第2注入領域へは、ソースドレイン形成工程においてAsがドープされているが、AsはBと比較して拡散量が小さい。このため、第2実施形態のHVNMOSと同様に、HVPMOSにおいても、第1領域の狭小化が抑制される。
【符号の説明】
【0105】
1a :半導体装置
1b :半導体装置
A1 :第1領域
A2 :第2領域
AI1 :第1注入領域
AI2 :第2注入領域
G :ゲート電極
Ga :ゲート電極
Gox :シリコン酸化膜
L :ゲート長
L1 :レジストパターン
L2 :レジストパターン
L3 :レジストパターン
L4 :レジストパターン
L6 :レジストパターン
S :スペース領域
SD :ソースドレイン
SDa :ソースドレイン
SW :サイドウォール
W :ゲート幅