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▶ ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】顎矯正インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20221108BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B17/15
A61B17/80
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020134954
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2019034465の分割
【原出願日】2011-04-01
(65)【公開番号】P2020192346
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】12/770,088
(32)【優先日】2010-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377463
【氏名又は名称】ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ フラー
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ツィリヒ
(72)【発明者】
【氏名】マーク クリスティアン メツガー
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02179701(EP,A1)
【文献】特開2006-081747(JP,A)
【文献】米国特許第05373860(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/80 - 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎骨に固定されるように構成された骨切り術案内インプラントであって、前記骨切り術案内インプラントは、
上顎骨の第1の部分の形状に対応するように予め成形されたプレート部材であって、非線形の波形が前記プレート部材を上顎骨と位置合わせする位置合わせ機構として構成されるように、上顎骨の特定の表面部分と合致する非線形の波形を術前に定める、プレート部材と、
前記プレート部材から延びるテンプレート部分であって、前記テンプレート部分の一部は、上顎骨の第2の部分の形状と合致するように術前に成形されており、前記テンプレート部分は、上顎骨の前記第1の部分を上顎骨の前記第2の部分から分離する境界を定めるように、上顎骨の骨切り術の切断案内経路を定め、それにより切断器具が前記骨切り術の切断案内経路に沿って上顎骨を切断した後に、前記第1の部分が前記第2の部分からセグメント化される、テンプレート部分と、
を備え、
前記骨切り術案内インプラントは、前記骨切り術案内インプラントを上顎骨に固定するように骨ねじを受け入れるねじ穴を定める、骨切り術案内インプラント。
【請求項2】
前記テンプレート部分は、前記切断案内経路を定めるように結びつく複数のフィンガを有する、請求項1に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項3】
前記フィンガのそれぞれの開口部が前記切断案内経路を定めるように、前記フィンガの各々が開口部を定める、請求項2に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項4】
前記プレート部材は、ドリルを受け入れるように構成された複数の開口を定め、前記複数の開口は、骨固定インプラントの穴と整合する予備穴を外科医が上顎骨に穿孔するためのテンプレートを提供する、請求項2または3のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項5】
前記フィンガは、上顎骨の前記第2の部分の特定の部分に対応する非線形の波形を含む、請求項2に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項6】
前記プレート部材は、前記ねじ穴を定める、請求項1から5のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項7】
前記プレート部材は、上顎骨の前記第1の部分の術前の形状に対応するように予め成形され、前記テンプレート部分は、上顎骨の前記第2の部分の術前の形状と一致するように術前に成形される、請求項1から6のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項8】
前記テンプレート部分の少なくとも別の一部は、上顎骨の前記第1の部分の術前の形状の少なくとも一部と合致するように術前に成形される、請求項1から7のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項9】
前記テンプレート部分は、前記骨切り術案内インプラントが上顎骨に固定されたときに、前記テンプレート部分が上顎骨の前記第1の部分から上顎骨の前記第2の部分に延びるように構成される、請求項1から8のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の骨切り術案内インプラントと、
請求項1から9のいずれか1項に記載の骨ねじと、
を含む、顎矯正用の手術キット。
【請求項11】
上顎骨の前記第1の部分に対応するように予め成形されたプレート部材と、
前記プレート部材から延び、上顎骨の前記第2の部分に対応するように予め成形された少なくとも1本のフィンガと、
を含む骨固定インプラントをさらに含む、請求項10に記載の顎矯正用の手術キット。
【請求項12】
前記骨固定インプラントの前記プレート部材は、前記プレート部材を第1の部分と第2の部分に分割するブリッジ部分を含む、請求項11に記載の手術キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2010年4月29日に出願された米国特許出願第12/770088号明細書の一部継続出願であり、ここで引用したことによりその開示内容は全部が本明細書に記載されたものとして本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
顎矯正手術は、概して、構造、成長、睡眠時無呼吸、TMJ疾患に関連する顎(すなわち下顎骨)、上顎骨及び顔面の条件を修正するために又は矯正問題を修正するために行われる。例えば、著しく後退した上顎又は開咬を有する個人に対して、上顎骨切り術が有効である。このような手技において、外科医は、両眼窩の下側で切断を行い、上顎骨の分割された部分を上顎骨の一体の部分から分離させる。口蓋及び全ての上側の歯を含む分割された部分全体は、一つのユニットとして移動することができる。次いで、分割された部分は、上側の歯と下側の歯とが適切に咬み合うまで移動させられる。歯が再位置決めされると、小さなスクリュ及びプレートが使用されて、自然の骨の癒合が生じるまで上顎骨の分割された部分を新たな位置に固定する。
【0003】
幾つかの顎矯正手術は複数のプレートを上顎骨に固定し、上顎骨の分割された部分を第2の一体の部分に対して保持する。想像できるように、複数のプレートの適応及び使用は、手技を不必要に長くかつ複雑にする。
【0004】
同様に、個人は、外傷又は腫瘍による下顎骨再建を必要とすることがある。腫瘍を除去するために、外科医は、腫瘍のそれぞれの側において下顎骨を切断し、これにより、腫瘍を下顎骨から分離する。腫瘍が除去されると、下顎骨は第1の部分と第2の部分とに分離される。必要であれば、第1の部分及び/又は第2の部分は整復され、自然の骨癒合が生じるまで第1の部分と第2の部分とを互いに固定するために小さなスクリュ及びプレートが使用される。
【0005】
上顎骨及び下顎骨を伴う顎矯正手術のためのその他のプレートシステムは、手技を完了するために外科医、歯科医、矯正歯科医などのような複数の分野を必要とする。その結果、しばしば、分野の間で誤解が生じる。これらの欠点及びその他の欠点は、顎矯正手術において使用されるこのようなプレートシステムに起因する。
【0006】
したがって、顎矯正手術を計画及び実施するためのより優れかつより正確な方法を達成することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、概して、顎矯正手術において使用されるインプラントの改良、特に、顎矯正手術において使用するための、特定の患者用のプレートの改良に関する。しかしながら、開示されたインプラントは、この特定の用途に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施の形態において、インプラントは、少なくとも第1の下顎骨部分を、骨間隙によって第1の下顎骨部分から分離された第2の下顎骨部分に固定するよう構成されている。骨インプラントは、プレート部材と、プレート部材に結合された少なくとも1つのガイドとを有する。プレート部材は、下顎骨と整合させられたときに下顎骨の術後形状に対応する形状を有する、術前に曲げられた本体を有する。プレート部材は、術前に曲げられた本体を貫通しておりかつプレート部材を下顎骨に固定するために骨固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの固定開口を形成している。少なくとも1つのガイドは、骨間隙を形成するために下顎骨が分離させられた後でインプラントが下顎骨に対して位置決めされるときに、プレート部材を下顎骨と整合させるよう術前に構成されている。
【0009】
少なくとも第1の下顎骨部分を、骨間隙によって第1の下顎骨部分から分離された第2の下顎骨部分に対して固定するよう構成された予め構成されたインプラントをカスタマイズする方法が提供される。インプラントをカスタマイズするために、まず、患者の下顎骨の術前三次元モデルがコンピュータに獲得され、この時、下顎骨の第1の部分と下顎骨の第2の部分とは第1の相対位置を形成している。下顎骨の術前三次元モデルは、下顎骨の第1の部分と下顎骨の第2の部分とが第2の相対位置を形成している計画された術後形状に操作される。所望の位置に配置されると、骨固定インプラントは、下顎骨の計画された術後形状に合致するようカスタム製造される。インプラントは、下顎骨の第1の部分及び第2の部分に取り付けられるよう予め曲げられたプレート部材と、プレート部材に結合された少なくとも1つのガイドとを有する。ガイドは、骨間隙を形成するために下顎骨が分離させられた後でインプラントが下顎骨に対して位置決めされるときに、プレート部材を下顎骨と整合させるよう予め構成されている。
【0010】
前記概要、及び実施の形態の例の以下の詳細な説明は、添付された概略的な図面に関連して読んだ場合によりよく理解される。発明を例示するために、図面は、現時点で好適な実施の形態を示している。しかしながら、発明は、図面に開示された特定の手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】上顎骨に固定された骨固定インプラントを備えた頭骨の斜視図である。
図2A】1つの実施の形態にしたがって構成された骨固定インプラントの斜視図である。
図2B図2Aに示された骨固定インプラントの正面図である。
図2C図2Aに示された骨固定インプラントの平面図である。
図2D図2Aに示された骨固定インプラントの左側の側面図である。
図3A】1つの実施の形態にしたがって構成された骨切り術案内インプラントの斜視図である。
図3B図3Aに示された骨切り術案内インプラントの正面図である。
図3C図3Aに示された骨切り術案内インプラントの平面図である。
図3D図3Aに示された骨切り術案内インプラントの左側の側面図である。
図4図2A図2Dの骨固定インプラントと、図3A図3Dの骨切り術案内インプラントとを、個々の患者の上顎骨に対応するようにカスタマイズする方法を示す図である。
図5A】手術される上顎骨を含む頭骨の正面図である。
図5B図5Aに示した頭骨の上顎骨の術前形状を示す、拡大した詳細な図である。
図5C】上顎骨に取り付けられた、図3A図3Dの骨切り術案内インプラントを示す、図5Bに示した上顎骨の正面図である。
図5D】骨切り術案内インプラントによって形成された案内穴を通って上顎骨に穿孔された穴を示す、図5Cに示した上顎骨の正面図である。
図5E】穿孔された穴を示す、図5Dに示した上顎骨の正面図である。
図5F】切断ガイドとしての穴を用いて上顎骨において行われる骨切り術を示す、図5Eに示した上顎骨の正面図である。
図5G】術後形状に整復された上顎骨の分割された部分を示す、図5Fに示した上顎骨の正面図である。
図5H】上顎骨に取り付けられた、図2A図2Dの骨固定インプラントを示す、図5Gに示した上顎骨の正面図である。
図5I】上顎骨に取り付けられた骨固定インプラントを示す、図5Hに示した上顎骨の正面図である。
図5J】除去された骨固定インプラントのブリッジ部分を示す、図5Iに示した上顎骨の正面図である。
図6】別の実施の形態による骨固定インプラントの斜視図であり、骨固定インプラントは、第1の部分と第2の部分とに分離された下顎骨に固定されるよう構成されている。
図7A図6に示された骨固定インプラントの斜視図であり、骨固定インプラントは、プレート部材と、プレート部材に結合された複数のガイドとを有する。
図7B図7Aに示されたガイドの分解図であり、ガイドは、ガイド本体と、ガイド本体を貫通しかつプレート部材を収容するよう構成されたチャネルと、ガイド本体を厚さ方向に貫通した厚さ方向開口と、厚さ方向開口内で並進可能なプッシャとを有する。
図7C】プレート部材に結合されたガイドのうちの1つの部分的な平面図である。
図7D図7Cに示したガイドを線7D-7Dに沿って見た断面図である。
図7E図7Cに示したガイドを線7E-7Eに沿って見た断面図である。
図8A図6に示されたインプラントと共に使用するための、別の実施の形態により構成されたガイドの斜視図であり、ガイドは、下顎骨の表面に対応するよう予め成形されるよう構成されている。
図8B図8Aに示したガイドの上方から見た断面図である。
図8C図8Aに示したガイドの側方から見た断面図である。
図9A】下顎骨の術前形状を示す斜視図である。
図9B】下顎骨が第1の部分と第2の部分とに分割された後の、図9Aに示した下顎骨の斜視図である。
図9C】下顎骨の第1及び第2の部分に取り付けられた、図7A図7Eの骨固定インプラントの斜視図である。
図9D】下顎骨の第1及び第2の部分に完全に取り付けられた骨固定インプラントの斜視図である。
図9E】ガイドが除去された、下顎骨の第1及び第2の部分に完全に取り付けられた骨固定インプラントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、顎矯正手術において使用される骨固定インプラント10は、患者の頭骨12、特に、骨切り術のような分割手技によって上顎骨14が第1の“分割された”部分18と第2の“一体の”部分22とに分離させられた後における患者の上顎骨14のような、下に位置する骨に固定されるよう設計されている。上顎骨14の第1の部分18は、通常、上側の歯を支持しており、骨切り術が行われた後に頭骨12から完全に分離されているのに対し、上顎骨14の第2の部分22は頭骨12と一体のままである。骨固定インプラント10は、上顎骨の第1及び第2の部分に取り付けられ、これにより、骨形成が生じる間、上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して支持及び保持するよう構成されている。インプラント10は、手術中の合併症及び患者が手術室で過ごす時間を最小限に減じるように術前にカスタマイズされている。
【0013】
用語は、以下の説明において便宜のためにのみ用いられ、限定するものではない。“右”、“左”、“下”、“上”との用語は、参照されている図面での方向を示している。“内”若しくは“遠位”、及び“外”若しくは“近位”との用語は、それぞれ、インプラント及びインプラントの関連する部分の幾何学的中心に向かう方向と、それから離れる方向とを示す。“前”、“後”、“上”、“下”、“内側”、“外側”との用語、及び関連する用語及び/又はフレーズは、参照される人体における好適な位置及び向きを示し、限定しようとするものではない。用語は、上に列挙した用語、それらの派生語、及び同じ由来の用語を含む。
【0014】
図2A図2Dを参照すると、インプラント10及びインプラントの様々な構成部材は、ここでは長手方向“L”及び横方向“A”に沿って水平方向に、かつ厚さ方向“T”に沿って鉛直方向に延びているものとして説明される。本明細書においてそうでないことが明示されない限り、“横方向”、“長手方向”及び“厚さ方向”との用語は、様々な構成部材の直交する方向成分を説明するために用いられる。インプラント10が上顎骨14のような上顎骨上に埋め込まれた場合、厚さ方向Tは、概して上下方向(若しくは尾頭方向)に沿って鉛直に延びるのに対し、長手方向L及び横方向Aによって形成された平面は、水平方向に、概して内側-外側方向及び前後方向によって形成された解剖学的平面において延びる。したがって、“鉛直方向”及び“水平方向”という方向に関する用語は、単に分かりやすさ及び例示のために例示したインプラント10及びその構成部材を説明するために用いられている。
【0015】
図2A図2Dに示したように、骨固定インプラント10は、長手方向Lに延在しかつ湾曲した長手方向プレート部材30と、長手方向部材30から鉛直方向に延びた保持構造34とを有する。長手方向プレート部材30は、上縁38と、実質的に上顎骨と同一平面上に位置するよう構成された骨係合面と、骨係合面とは反対側の外面とを有する。したがって、保持構造34は、長手方向部材30の上縁38から上方へ延びている。図1に示したように、骨形成が生じる間、骨固定インプラント10は上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して支持及び保持する。骨固定インプラント10及びその構成部材は、様々な生体適合性材料、例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミックから、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)及び生体再吸収(bioresorbable)材料のようなポリマから形成することができる。物理的又は化学的特性を高めるために又は薬物を提供するために、骨固定インプラント10にコーティングが付加若しくは塗布されてよい。コーティングの例は、プラズマ溶射されたチタンコーティング、又はヒドロキシアパタイトを含む。
【0016】
図1及び図2A図2Dに示したように、長手方向部材30は、上顎骨14の第1の部分18に取り付けられるよう構成されている。概して、長手方向部材30は、長手方向部材30を第1の部分46と第2の部分50とに分離する中央ブリッジ部材42を有する。第1及び第2の部分46,50は、ブリッジ部材42から、各々の接合部54から延びている。図示のように、第1の部分46はブリッジ部材42から第1の方向に延びているのに対し、第2の部分50はブリッジ部材42から、第1の方向とは概して反対の第2の方向に延びている。図2Cに最もよく示したように、第1の部分46及び第2の部分50は各々、長手方向に延びながら横方向Aに湾曲している。したがって、図2Cに最もよく示したように、長手方向部材30は、概してC字形の構造を形成するように湾曲させられている。さらに、図2B及び図2Dに最もよく示したように、第1の部分46及び第2の部分50は各々、長手方向に延びながら厚さ方向Tに傾斜している。長手方向部材30の曲率及び形状は、概して上顎骨14の形状に対応している。
【0017】
さらに加えて、長手方向部材30の第1及び第2の部分46及び50は、長手方向部材30の外面から骨係合面まで貫通した複数の固定エレメント収容開口/穴58を有する。各々の穴58は、スクリュのような固定エレメントを収容するよう構成されている。しかしながら、あらゆる固定エレメントが満足できるものであることを理解すべきである。インプラント10は、固定エレメントを長手方向部材30の各々の穴58に通して上顎骨14の第1の部分18に挿入することによって上顎骨14の第1の部分18に固定されるよう構成されている。
【0018】
長手方向部材30のブリッジ部材42は、長手方向Lに延在したプレート62と、プレート62の各々の端部から横方向Aに延びた延長部66と、プレート62の内面から同様に横方向に延びた、中央に配置された突出部70とを有する。接合部54は、各々の延長部66の後端に配置されている。つまり、長手方向部材30の第1及び第2の部分46,50はそれぞれ、ブリッジ部材42の各々の延長部66の後端から延びている。ブリッジ部材42は、インプラント10が上顎骨14に固定されると、接合部54において長手方向部材30から除去されてよい。接合箇所54は、インプラント10が上顎骨14に固定されるとブリッジ部材42が容易に除去されるように、弱くなっている。例えば、ブリッジ部材42をつまみ取ることによってブリッジ部材42が除去されるように、接合部54は、薄くなっているか、パーフォレーションが設けられているか、又はその他の方式で構成されていてよい。しかしながら、スニップ又はプライヤによって接合箇所54を切断することによってブリッジ部材42が除去されてよいことを理解すべきである。ブリッジ部材42は除去可能であるので、患者に残されるインプラント10の量は最小限に減じられる。
【0019】
図2Bに示したように、ブリッジ部材は、さらに、ブリッジ部材42のプレート62と突出部70との両方を横方向に貫通した基準穴74を有する。インプラント10はまず、固定エレメントを基準穴74に通して上顎骨14内へ挿入することにより上顎骨14に固定される。基準穴74に挿入された固定エレメントは、上顎骨14への完全な固定のために外科医がインプラント10を正確に位置合わせする間、インプラント10を上顎骨14に一時的に固定する。
【0020】
長手方向部材30、特に第1及び第2の部分46,50は、上顎骨14の第1の部分18の術後形状に対応するよう予め成形されている。これに関して、長手方向部材は、分割手技の後の上顎骨の第1の部分の外面に対応するように、分割手技の前に予め成形されている。上顎骨14へのインプラント10の配置の前に手作業による曲げが不要であるように部材30が予め成形されていることが好ましいが、部材30は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に最小限の曲げ(例えば部材30を上顎骨14に固定する場合に行われる曲げ)のみが必要とされるよう予め成形されていてよい。図2Cに最もよく示したように、第1及び第2の部分46,50は、上顎骨14の第1の部分18の特定の表面部分に対応する複数の非線形の波形78を有する。しかしながら、上顎骨14の第1の部分18の形状は、上顎骨14の術前形状と術後形状との間で変化させられなくてもよいことを理解すべきである。したがって、長手方向部材30は、上顎骨14の第1の部分18の術前形状と術後形状との両方に対応するよう予め成形されていてよい。
【0021】
図2A図2Dに示したように、インプラント10の保持構造34は、少なくとも1つのフィンガ80、例えば長手方向部材30の上縁38から上方へ延びた複数のフィンガ80を有する。例示的な実施の形態によれば、2つのフィンガ80が、長手方向部材30の第1及び第2の部分46及び50の各々から延びている。しかしながら、あらゆる数のフィンガ80が第1及び第2の部分46及び50から延びていてよいことを理解すべきである。図示したように、各々のフィンガ80は、フィンガ80を上顎骨14の第2の部分22に固定するために、固定エレメント、例えばスクリュを収容するよう構成された少なくとも1つの固定エレメント収容開口又は穴84を有する。しかしながら、あらゆる固定エレメントが満足できることを理解すべきである。例示された実施の形態は、2つの穴84を有する各々のフィンガ80を示しているが、各々のフィンガは、あらゆる数、例えば1,2,3,4,等の穴を有してよいことを理解すべきである。
【0022】
図2Bに最もよく示したように、フィンガ80は、長手方向部材30の第1及び第2の部分46,50に沿って互いに間隔を置いて配置されていて、フィンガが延び始めている部分46,50における箇所に対して実質的に垂直に延びている。つまり、長手方向プレート部材30は、非線形であり、縁部38に沿った複数の異なる箇所において接線を形成する。したがって、各々のフィンガ80は、フィンガ80が延び始める縁部38における箇所において形成される接線に対して垂直に延びている。しかしながら、フィンガ80は垂直に延びていなくてもよく、長手方向部材30に対して所定の角度で延びていてもよいことを理解すべきである。好適には、インプラント10全体にわたる均等な力の分布をさらに高めるために、各々のフィンガ80が長手方向部材30の縁部38から延びている箇所と長手方向部材30の固定エレメント穴58が整合させられるように、各々のフィンガ80が長手方向部材30から延びている。
【0023】
保持構造34又はフィンガ80は、上顎骨14の第2の部分22の術後形状に対応するよう予め成形されており、上顎骨の第1の部分の形状及び関係に対応する固定部材を提供するように、第1及び第2の部分46,50から延びている。これに関して、フィンガ80は、分割手技の後の上顎骨の第2の部分の外面に対応するように、分割手技の前に予め成形されている。フィンガ30は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に手作業による曲げが不要であるように予め成形されているのが好ましいが、フィンガ80は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に最小限の曲げのみが必要とされるように予め成形されていてよい。したがって、図2Cに最もよく示したように、フィンガ80は、上顎骨14の第2の部分22の特定の表面部分に対応する複数の非線形の波形90を有する。フィンガ80は予め成形されているので、フィンガ80は、上顎骨14の所望の位置においてのみ正確に合致し、正確な整合、ひいては所望の修正された形状を達成したという確証を外科医に提供する。
【0024】
インプラント10が上顎骨に固定される前に、上顎骨14を第1の部分18と第2の部分22とに分離させるために骨切り術が行われる。外科医のためのガイドを提供するために、上顎骨14に骨切り術が行われる前に、一時的な骨切り術案内インプラント110が上顎骨14に固定される。特に、骨切り術案内プレート110は、骨切り術を行う間に外科医が追従するためのテンプレートを提供する。例えば、骨切り術案内インプラント110は、外科医が、骨切り術を行う間に追従するために、上顎骨に案内穴を形成することを可能にする。これにより、骨切り術案内インプラントは、ドリル案内インプラントとして働く。骨切り術案内インプラントは、骨インプラント10を埋め込む間に外科医が追従するためのテンプレートも提供する。骨切り術案内インプラント110は、外科手術中の合併症及び患者が手術室において過ごす時間を最小限に減じるよう術前にカスタマイズされてもいる。
【0025】
図3A図3Dに示したように、骨切り術案内インプラント110は、長手方向Lに延在しかつ湾曲した長手方向プレート部材130と、長手方向部材130から厚さ方向Tで鉛直方向に延びた複数のフィンガ若しくは突出部134を有するテンプレート部分132とを含む。インプラント10と同様に、骨切り術案内インプラント110は、上縁138と、上顎骨と実質的に同一平面に位置するよう構成された骨係合面と、骨係合面とは反対側の外面とを有する。骨切り術案内インプラント110と、その構成部材とは、様々な生体適合性材料、例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミックから、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び生体再吸収性材料のようなポリマから形成することができる。物理的又は化学的特性を高めるために又は薬剤を提供するために骨切り術案内インプラント110にコーティングが付加又は塗布されてよい。コーティングの例は、プラズマ溶射されたチタンコーティング又はヒドロキシアパタイトを含む。
【0026】
図3Cに最もよく示したように、長手方向プレート部材130は、中央接合部154から互いに反対方向に延びた第1の部分146及び第2の部分150を有する。各部分146及び150は、長手方向に延びながら横方向Aに湾曲している。したがって、図3Cに示したように、長手方向部材130は、骨固定インプラント10と同様に概してC字形の構造を形成するように湾曲させられている。さらに、図3B及び図3Dに最もよく示したように、第1の部分146及び第2の部分150はそれぞれ、長手方向に延びながら厚さ方向Tに傾斜している。長手方向部材130の曲率及び形状は、上顎骨14の形状に対応するよう構成されているべきである。
【0027】
図3Bに示したように、長手方向プレート部材130は、さらに、外面から骨係合面まで中央接合部154の近くにおいてプレート部材130を貫通した基準穴174を有する。骨切り術案内インプラント110は、まず、固定エレメントを基準穴174に通して上顎骨14内へ挿入することによって上顎骨14に固定される。基準穴174に挿入された固定エレメントは、一時的であり、骨切り術ガイドが提供されるように外科医が正確にインプラント110を整合させる間、利用される。
【0028】
図3A図3Dに示したように、長手方向プレート部材130は複数の開口若しくは穴176を形成している。図3Bに最もよく示したように、例示した実施の形態は、各々の部分146及び150に3つの穴176を有する。穴176は、互いに間隔を置いて配置されており、骨インプラント10の長手方向部材30によって形成された穴58と整合する予備穴を外科医が上顎骨14に穿孔するためのテンプレートを提供する。したがって、外科医は、骨インプラント10の穴58を予め穿孔された穴と整合させることによって、骨切り術が行われた後に骨インプラント10を上顎骨14の第1の部分18にどこで固定するかが分かる。しかしながら、場合によっては、長手方向プレート部材130は開口176を有さず、つまり、骨インプラント10を適切に整合させるために、予め穿孔された穴は不要であることを理解すべきである。
【0029】
図3A図3Dに示したように、骨切り術案内インプラントのフィンガ134は、長手方向部材130の上縁138から上方へ延びている。特に、2つのフィンガ134が、長手方向部材130の第1及び第2の部分146及び150の各々から延びている。しかしながら、あらゆる数のフィンガ134が第1及び第2の部分146及び150から上方へ延びていてよいことを理解すべきである。
【0030】
図3Bに最もよく示したように、フィンガ134は、長手方向部材130に沿って間隔を置いて配置されており、フィンガが延び始める長手方向部材130における箇所に対して実質的に垂直に延びている。つまり、長手方向部材130は、非線形であり、縁部138に沿った様々な箇所において接線を形成する。したがって、フィンガ134は、フィンガ134が延び始める縁部138における箇所において形成された接線に対して垂直に延びている。しかしながら、フィンガ134は、垂直に延びていなくてもよく、長手方向部材130に対して角度を成して延びていてもよいことを理解すべきである。
【0031】
図3Bに示したように、骨切り術案内インプラント110の各々のフィンガ134は、開口若しくは穴180を形成している。穴180は、ドリルビットを収容するよう構成されており、これにより、案内穴が上顎骨14に穿孔され、これにより、案内経路を形成し、この案内経路に沿って骨切り術が行われる。図示したように、骨固定インプラント10が上顎骨14の第1の部分18を第2の部分22に対して確実に保持するように、骨切り術が沿って行われる案内経路が適切に配置されるように、フィンガ134の穴180は位置決めされる。つまり、上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して確実に保持するために骨インプラント10のフィンガ80が骨切り術部を跨いで延びるよう十分な長さを有するように、骨切り術部は配置される。
【0032】
骨切り術案内インプラント110、特に長手方向部材130及びフィンガ134は、上顎骨14の第1の部分18及び第2の部分22の術前形状、及び相対位置に対応するよう予め成形されている。図3Cに最もよく示したように、長手方向部材130及びフィンガ134は、上顎骨14の第1の部分18及び第2の部分22の特定の部分に対応する複数の非線形の波形190を有する。
【0033】
図4を参照すると、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110は、術前に製造及び成形される。顎矯正手術が行われる前に、患者の頭骨、特に患者の上顎骨、例えば上顎骨14の三次元画像が得られる。これは、好適には1mm未満、最適なものとしては0.2mm~1mmごとのスライス(断層)を有するCTスキャニング装置200又は同様のものによって行われてよい。スライスのための高解像度が好ましい。なぜならば、CTスキャンスライスから上顎骨14の正確な形状が決定されるべきであるからである。上顎骨14の形状に対応する三次元データを提供する限り、CTスキャニング装置以外の他のスキャニング装置200が使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0034】
患者の頭骨若しくは上顎骨の三次元画像が得られると、この画像はコンピュータ204にロードされ、外科医などの使用者による操作のために頭骨の仮想モデルを形成する。コンピュータ204は、ローカル(CTスキャニング装置200と同じ全体エリア)であるか、又は画像がネットワークを通じて送信されねばならないリモートであってよい。同様に、コンピュータ204にロードされた画像は、ローカル又はリモートで作業する使用者によって操作されてよい。しかしながら、通常、画像は、顎矯正手術を行う外科医によってリモートで操作される。
【0035】
頭骨の仮想モデルは、技術分野において一般的な標準的なソフトウェアを使用して外科医によって操作されてよい。例えば、ベルギー国ルーヴァンにビジネスの場所を有するMaterialise社から市販されているソフトウェアであるMimicsは、CTスキャニング装置200から得られた仮想モデルを処理及び操作するために使用されてよい。このソフトウェアにより、外科医は、患者の上顎骨を分析し、患者の顎矯正手術を術前に計画することができる。この計画は、骨固定インプラント及び骨切り術案内インプラントの形状及び設計を含む。
【0036】
患者の頭骨又は上顎骨の仮想モデルを用いて、外科医は、まず、図3A図3Dに示された骨切り術案内インプラント110のような骨切り術案内インプラントの仮想モデルを形成する。これは、頭骨の仮想モデルにおいてどこで骨切り術を行うべきかを決定し、次いで、仮想モデルにおいて仮想骨切り術を実際に実施することによって行われる。仮想骨切り術が完了すると、外科医は、骨切り術案内インプラント110の仮想モデルを形成し始めることができる。この時点において、頭骨、特に上顎骨の仮想モデルは、まだ術前の形状及び位置を有することを理解すべきである。したがって、作成されている骨切り術案内インプラント110の長手方向プレート部材130及びフィンガ134は、患者の上顎骨の術前形状に対応する。骨切り術案内インプラント110のフィンガ134に形成される穴180は、頭骨の仮想モデルにおいて実施された仮想骨切り術に対応するように、仮想モデルに形成される。したがって、仮想モデルを使用して作成された骨切り術案内インプラント110は、骨切り術を行うときに外科医が追従するための案内経路を形成する穴180を形成する。これにより、患者において実施される実際の骨切り術は、仮想モデルにおいて実施された仮想骨切り術と一致する。
【0037】
骨切り術案内インプラント110の仮想モデルが完成した後、外科医又はその他のオペレータは、上顎骨14の仮想モデルの第1の部分18(カットオフ部分)を第1の望ましくない位置から第2の望ましい位置へ操作する。第1の部分18が位置決めされ、仮想モデルが、外科医によって認められた、患者の上顎骨の術後の形状及び位置を示すと、図2A図2Dに示された骨固定インプラント10のような骨固定インプラントの仮想モデルを形成することができる。この時点で、頭骨、特に上顎骨の仮想モデルは、術後の形状及び位置を有することを理解すべきである。したがって、作成されている骨固定インプラント10の長手方向プレート部材30及びフィンガ80は、患者の上顎骨の術後形状に対応する。
【0038】
骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10の仮想モデルは、コンピュータ204からCAD/CAMフライス盤若しくは製造機械220等にダウンロード若しくは伝送される。製造機械220は、あらゆる所望の材料から骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10を機械加工する。骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10が製造されると、外科医は、患者に対して顎矯正手術を開始する。
【0039】
図5A図5Jは、骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10を使用して顎矯正手術を行う方法の例を示している。手術の前には、骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10は、個々の患者の上顎骨に実質的に対応するよう予め成形されていることを理解すべきである。図5Aは、整復する必要のある上顎骨14を有する頭骨12の例を示している。図5Bは、図5Aに示された上顎骨14の詳細な図である。図示したように、この時点の上顎骨14は、術前形状を有する。骨切り術を上顎骨14において実施し、これにより、以下で説明するように、第1の部分18を整復することができるように、上顎骨14を第1の部分18と第2の部分22とに分離させる。
【0040】
図5Cに示したように、骨切り術案内インプラント110は上顎骨14に配置される。前述のように、骨切り術案内インプラント110は、上顎骨14の術前形状に対応するよう予め成形されており、したがって、上顎骨14に対して同一平面に位置する。言い換えれば、長手方向プレート部材130及びフィンガ134の両方は、上顎骨14の術前形状に対応するよう予め成形される。適切に位置決めされると、スクリュ300を骨切り術案内インプラント110の基準穴174に挿入し、ドライバ300を用いてスクリュを上顎骨14にねじ込むことによって、骨切り術案内インプラント110は上顎骨14に一時的に固定される。
【0041】
図5Dに示したように、次いで、外科医は、ドリルビット304を用いて上顎骨14に穴を穿孔する。図示したように、ドリルビット304は、骨切り術案内インプラント110のフィンガ134によって形成された穴180に挿入される。前述のように、穴180は、骨切り術を実施する際に外科医が追従するための切断経路を外科医が形成することができるように、予め計画及び位置決めされている。例えば、図5Eに示したように、骨切り術案内インプラント110を用いて上顎骨14に4つの穴320が穿孔される。4つの穴320が示されているが、骨切り術案内インプラント110を用いてあらゆる数の穴320が形成されるように骨切り術案内インプラント110が構成されてよいことを理解すべきである。例えば、骨切り術案内インプラント110は、6つの穴320が上顎骨に形成されるように、6つのフィンガ134を有するように形成されてよい。
【0042】
図5Dに示したように、骨切り術案内インプラント110の長手方向部材130によって形成された穴176に、ドリルビット304又は別のドリルビットが挿入される。図5Eに示したように、骨切り術案内インプラント110を使用して上顎骨14に6つの穴324が穿孔される。6つの穴324が示されているが、骨切り術案内インプラント110を使用してあらゆる数の穴324が形成されるように、骨切り術案内インプラント110が構成されていてよいことを理解すべきである。穴324は、外科医が骨インプラント10を上顎骨に適切に配置するためのガイドとして働く。骨インプラント10が上顎骨14に確実に固定されることを保証するために、穴324は、骨インプラント10によって形成された穴58よりも小さい。つまり、スクリュが固定されるときに、スクリュのねじ山が骨の一部を捕捉する。
【0043】
図5Fに示したように、骨切り術案内インプラント110が取り外され、外科医は、穴320によって形成された切断経路に沿って上顎骨14に対して骨切り術330を行う。例示した実施の形態において、切断経路は、1つの穴320から隣接する穴320まで、骨切り術が完了するまで延びている。図5Gに示したように、骨切り術330が上顎骨を第1の部分18と第2の部分22とに分離させる。例えば図5Gに示したように、第2の部分22は頭骨と一体のままであるが、第1の部分18は、外科医によって整復されるために自由となる。
【0044】
上顎骨14の第1の部分18が整復されると、骨固定インプラント10が上顎骨14に配置される。前述のように、骨固定インプラント10は上顎骨14の術後形状に対応するよう予め成形されているので、上顎骨14の第1の部分18が整復された後でさえも上顎骨14に対して同一平面に位置する。言い換えれば、骨プレート10の長手方向プレート部材30及びフィンガ80の両方は、上顎骨14の術後形状に対応するよう予め成形されている。適切に位置決めされると、骨固定インプラント10は、スクリュを骨固定インプラント10の基準穴74に挿入しかつスクリュをドライバ300によって上顎骨14にねじ込むことによって、上顎骨14に一時的に固定される。ほとんどの場合、骨固定インプラント10の基準穴74は、骨切り術案内インプラント110を上顎骨14に一時的に固定するために使用されたスクリュによって上顎骨14に形成された穴と一列に並ぶ。
【0045】
図5H及び図5Iに示したように、骨固定インプラント10の穴58及び穴84に複数のスクリュ340が挿入される。図示したように、骨固定インプラント10のフィンガ80は、スクリュ340によって上顎骨14の第2の部分22に固定され、骨固定インプラント10の長手方向部材30は、スクリュ340によって上顎骨14の第1の部分18に固定される。したがって、骨固定インプラント10は、骨切り術部330のそれぞれの側において上顎骨14に固定される。
【0046】
図5Jに示したように、次いで、ブリッジ部材42が骨固定インプラント10から除去され、これにより、骨固定インプラント10を2つの別個の部分350に分離する。これにより、骨固定インプラント10は、骨固定インプラント10が骨に固定された後に2つの別個のインプラントセグメント若しくはセクションに分離されるよう構成された1つの骨固定インプラント10であると考えられる。前述のように、ブリッジ部材42は、つまみ取ることによって、又はブリッジ部材を接合部54において切り取るためにプライヤ又はスニップを使用することによって除去される。しかしながら、ブリッジ部材42は、当該技術分野において公知のあらゆる方法を使用して除去されてよい。
【0047】
ブリッジ部材42が除去されると、骨固定インプラント10は完全に装着される。したがって、手術が完了し、インプラント10は患者内に残るか又は後で除去される。
【0048】
骨固定インプラント10と骨切り術案内インプラント110とは別々に又はキットとして販売されてよいことを理解すべきである。しかしながら、骨切り術案内インプラント110と骨固定インプラント10とは、これらが同じキットの一部であるとしても、異なる時に製造及び配達されてよいことを理解すべきである。キットは、骨固定インプラント10を上顎骨14に固定するために必要な固定エレメントの全て及び手技を完了するために必要なあらゆる工具を含んでいてもよい。
【0049】
別の実施の形態において、図6を参照すると、骨固定インプラント410は、例えば下顎骨414が、少なくとも第1の骨部分418と、骨間隙426によって第1の骨部分418から分離された第2の骨部分422とに分割された後に、下顎骨414のような下に位置する骨に固定されるよう設計されている。例えば、骨間隙426は、骨切り術のような分割手技によって、又は外傷、又は例えば臨界寸法の欠陥により形成することができる。骨固定インプラント410は第1及び第2の部分418及び422に取り付けられるよう構成されており、これにより、第1及び第2の部分418及び422を互いに固定し、骨間隙426における骨形成を促進する。インプラント410は、手術中の合併症及び患者が手術室で過ごす時間を減じるように術前にカスタマイズされている。インプラント410は、3つ以上の骨部分を互いに固定してもよいことを理解すべきである。
【0050】
図7A図7Eに示したように、骨固定インプラント410は、長手方向Lに延在しかつ湾曲した長手方向プレート部材430と、プレート部材430に結合された複数のガイド434とを有する。長手方向プレート部材430は、下顎骨に当接するよう構成された骨係合面と、骨係合面とは反対側の外面とを有する。図6に示したように、骨固定インプラント410は、骨形成が生じる間、下顎骨の第1の部分418と下顎骨の第2の部分422とを互いに対して結合及び保持する。骨固定インプラント410及びその構成部材は、様々な生体適合性材料、例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミック、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)及び生体再吸収性材料のようなポリマから形成することができる。物理的又は化学的特性を高めるために又は薬剤を提供するために、コーティングが骨固定インプラント410に付加若しくは塗布されていてよい。コーティングの例は、プラズマ溶射されたチタンコーティング又はヒドロキシアパタイトを含む。
【0051】
図6及び図7A図7Eに示したように、長手方向プレート部材430は下顎骨414を包み込むよう構成されており、これにより、プレート部材430は、間隙426を跨いで延び、下顎骨414の第1の部分418と第2の部分422とに取り付けることができる。したがって、図7Aに最もよく示したように、長手方向プレート部材430は、概してC字形の構造を形成するよう湾曲させられている。さらに、プレート部材430の端部はそれぞれ、長手方向に延びながら厚さ方向Tに角度づけられている。長手方向部材430の曲率及び形状は概して下顎骨414の形状に対応している。
【0052】
さらに加えて、長手方向部材430は、長手方向部材430の外面から骨係合面まで貫通した複数の固定エレメント収容開口若しくは穴458を有する。各々の穴458は、スクリュのような固定エレメントを収容するよう構成されている。しかしながら、あらゆる固定エレメントが満足できることを理解すべきである。インプラント410は、少なくとも1つの固定エレメントが下顎骨414の第1の部分418に係合しかつ少なくとも1つの固定エレメントが下顎骨414の第2の部分422に係合するように固定エレメントを長手方向部材430の穴458に挿入することによって、下顎骨414の第1の部分418及び第2の部分422の両方に固定されるよう構成されている。
【0053】
図7A及び図7Bに示したように、プレート部材430はさらに、プレート部材430の上側及び下側に沿って複数の凹所若しくは凹み462を形成している。凹所462により、プレート部材430は、下顎骨414の形状に従うように予め曲げられる。
【0054】
特に、長手方向部材430は、下顎骨414の第1の部分418及び第2の部分422の術後形状に対応するよう予め曲げられていてよい。これに関して、長手方向部材430は、分割手技の後の下顎骨414の第1及び第2の部分の全体形状に対応するように、分割手技の前に予め曲げられている。部材430は、下顎骨414へのインプラント410の配置の前に手作業による曲げが必要とされないように予め曲げられていることが好ましいが、部材430は、下顎骨414へのインプラント410の配置の前に最小限の曲げ(例えば下顎骨414に部材を固定するときに生じる曲げ)のみが必要とされるように予め曲げられていてよい。しかしながら、下顎骨414の第1の部分418及び第2の部分422の形状は、下顎骨414の術前形状と術後形状との間で変更されなくてもよい。したがって、長手方向部材430は、下顎骨414の第1の部分418及び第2の部分422の術前形状若しくは位置と術後形状若しくは位置との両方に対応するよう予め曲げられていてよい。
【0055】
図7Aに示したように、インプラント410のガイド434は、プレート部材430に沿って間隔を置いて配置されており、ガイド434がプレート部材430の各端部の近くに結合され、ガイド434が、下顎骨414の第1の部分と第2の部分との間に形成された間隙426の近くでプレート部材430に結合されるようになっている。ガイド434は、望みに応じてプレート部材430に沿ったいずれの箇所において結合されてもよいことを理解すべきである。
【0056】
図7B図7Eに示したように、各々のガイド434は、ガイド本体480と、本体480を厚さ方向に貫通したプッシャ開口484と、プッシャ開口484内で並進可能なプッシャ488とを有する。図7Cに示したように、プッシャ開口484は実質的に矩形であるが、厚さ方向の開口484は、プッシャ488が開口484内で並進することができる限り、あらゆる所望の形骨接触面状を有してよいことを理解すべきである。図7B及び図7Dに示したように、ガイド本体480はさらに、本体480の前面からプッシャ開口484内へ延びたボア492を有する。ボア492は、プッシャ488に係合しかつプッシャ488を所定の位置でロックするよう構成されたセットスクリュ496を収容するよう構成されている。
【0057】
図7Dに示したように、プッシャ488は、厚さ方向部分500と、厚さ方向部分500の下端から下顎骨414に向かって延びた横方向部分504とを有する。したがって、プッシャ488は実質的にL字形の構造を形成している。図示したように、厚さ方向部分500は、プッシャ開口484によって収容されるよう構成されており、プッシャ開口484内で並進可能である。厚さ方向部分500は、実質的に平坦であり、プッシャ488が所定の位置にロックされる際にセットスクリュ496によって係合されるよう構成された外側接触面508を有する。セットスクリュ496は、プッシャ488に対して押し付けられるプラグであるか、又はボア492によって形成されたねじ山に係合するねじ山を有してよい。図7Dに示したように、横方向部分504も実質的に平坦であり、インプラント410が適切に位置決めされたときに下顎骨414の底部に当接するよう構成された上側骨接触面512を有する。プッシャ488がプッシャ開口484内で鉛直方向上方に並進させられると、骨接触面512はガイド本体480に近づく。したがって、インプラント410(又は少なくともプレート部材)の位置は、プッシャ開口484内のプッシャ488の位置に応じて調節可能である。
【0058】
図7D及び図7Eに示したように、ガイド434は、さらに、ガイド本体480を長手方向に貫通したプレート収容チャネル516を有する。図7Dに示したように、チャネル516は、ガイド434をプレート部材430の前側の外面上に配置させる開口520を形成している。図7Eに示したように、ガイド434は、さらに、本体480を通ってチャネル516内へ延びた固定収容開口524を有する。固定収容開口524は、プレート部材430の固定収容開口458のうちのいずれか1つと整合するよう構成されている。したがって、固定エレメント528は、ガイド434の開口524を通ってプレート部材430の開口458内へ挿入され、これにより、ガイド434をプレート部材430に固定する。ガイド434はプレート部材430に永久に又は一時的に固定される。
【0059】
ガイド434は、骨間隙を形成するために下顎骨が分離された後にインプラント410が下顎骨に対して位置決めされるときにプレート部材430を下顎骨と整合させるように、術前に構成されている。これに関して、プッシャ488は、分割手技の前に予め調節されてよく、これにより、インプラント410が下顎骨414に対して位置決めされるときに、プレート部材430は、分割手技後の第1の部分418及び第2の部分422と適切に整合させられる。下顎骨414へのインプラント410の配置の前に付加的な調節が必要とされないようにプッシャ488が予め調節されることが好ましいが、プッシャ488は、下顎骨414へのインプラント410の配置の前に最小限のさらなる調節のみが必要とされるように予め調節されてよい。プッシャ434は予め調節されているので、インプラント410は、下顎骨414の所望の位置においてのみ正確に適合し、外科医に対し、インプラントと下顎骨とが正確な整合、ひいては所望の修正された形状を達成したという確証を提供する。
【0060】
別の実施の形態において、図8A及び図8Bを参照すると、骨固定インプラント410は複数のガイド574を有する。図示したように、各々のガイド574は、下顎骨414の術後形状に対応するよう予め構成又はさもなければ予め成形されたガイド本体580を有する。図示したように、ガイド本体580は、少なくともプレート部材固定部分584と、整合部分588とに分離されている。図示したように、ガイド574はさらに、プレート部材固定部分584を貫通した固定収容開口592を有する。開口592は、プレート部材430の固定開口458のうちのいずれか1つと整合するよう構成されており、これにより、固定エレメント594が開口592を通って開口458内へ通過し、これにより、ガイド574をプレート部材430に結合する。ガイド本体580は、プレート部材430に永久に取り付けられるようオーバーモールドされてよいか、又は、ガイド580がプレート部材430に取り付けられたときに、固定部分584がプレート部材430に対して同一平面に位置するように、プレート部材430の形状に対応するようオーバーモールドされてよい。
【0061】
図8A及び図8Bに示したように、整合部分588が下顎骨414の外面に当接するよう構成されるように、整合部分588は固定部分584から延びている。図8Bに示したように、整合部分588は、下顎骨414の術後形状に対応するよう術前に成形された、内側の骨接触面596を形成している。つまり、各々のガイド本体580は、下顎骨が分離された後でインプラントが下顎骨に対して位置決めされるときにプレート部材430を下顎骨と整合させるために、下顎骨の特定の部分に対応するよう術前に成形されている。
【0062】
これに関して、ガイド本体580は、分割手技の後の下顎骨414の一部の外面に対応するように、分割手技の前に予め成形されている。ガイド本体580は、下顎骨414へのインプラント410の配置の前に手作業による曲げが不要であるように予め成形されていることが好ましいが、ガイド本体580は、下顎骨414へのインプラント410の配置の前に最小限の曲げが必要とされるように予め成形されていてよい。したがって、整合部分588、又は少なくとも整合部分588の骨接触面596は、下顎骨414の特定の表面部分に対応する複数の非線形の波形600を形成している。ガイド本体580は予め成形されているので、下顎骨414の所望の位置においてのみ正確に合致し、インプラントの正確な整合を達成したという確証を外科医に提供する。
【0063】
骨インプラント10と同様に、骨インプラント410は術前に製造及び構成される。顎矯正手術が行われる前に、患者の頭骨、特に患者の下顎骨、例えば下顎骨414の三次元画像が得られる。これは、好適には1mm未満、最適なものとしては0.2mm~1mmごとのスライス(断層)を有するCTスキャニング装置(例えば図4に示された装置200)又は同様のものによって行われてよい。スライスのための高解像度が好ましい。なぜならば、CTスキャンスライスから下顎骨414の正確な形状が決定されるべきであるからである。下顎骨414の形状に対応する三次元データを提供する限り、CTスキャニング装置以外の他のスキャニング装置200が使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0064】
患者の頭骨又は下顎骨の三次元画像が得られると、この画像はコンピュータ(例えば図4に示されたコンピュータ204)にロードされ、外科医などの使用者による操作のために頭骨の仮想モデルを形成する。コンピュータ204は、ローカル(CTスキャニング装置200と同じ全体エリア)であるか、又は画像がネットワークを通じて送信されねばならないリモートであってよい。同様に、コンピュータ204にロードされた画像は、ローカル又はリモートで作業する使用者によって操作されてよい。しかしながら、通常、画像は、顎矯正手術を行う外科医によってリモートで操作される。
【0065】
頭骨の仮想モデルは、技術分野において一般的な標準的なソフトウェアを使用して外科医によって操作されてよい。例えば、ベルギー国ルーヴァンにビジネスの場所を有するMaterialise社から市販されているソフトウェアであるMimicsは、CTスキャニング装置200から得られた仮想モデルを処理及び操作するために使用されてよい。このソフトウェアにより、外科医は、患者の下顎骨を分析し、患者の顎矯正手術を術前に計画することができる。この計画は、骨固定インプラント414の形状及び/又は構成を含む。
【0066】
三次元モデルを用いて、外科医又はその他のオペレータは、(i)間隙426を形成するために下顎骨414を切断し、(ii)下顎骨414の第1の部分418を第1の望ましくない位置から第2の所望の位置へ整復し、かつ/又は(iii)下顎骨414の第2の部分422を第1の望ましくない位置から第2の所望の位置へ整復する、ことによって、下顎骨414を操作してよい。第1の部分418及び/又は第2の部分422が位置決めされ、仮想モデルが、外科医によって認められるような患者の下顎骨の術後の形状及び位置を示すと、骨固定インプラント、例えば図7A図7E又は図8A及び図8Bに示された骨固定インプラント410の仮想モデルを形成することができる。この時点で、頭骨、特に下顎骨の仮想モデルが術後の形状及び位置を有することを理解すべきである。したがって、制作されている骨固定インプラント410の長手方向プレート部材430及びガイド434又は474は、患者の下顎骨の術後の形状若しくは位置に対応する。
【0067】
ガイド434を有する骨固定インプラント410の場合、骨固定インプラント410の仮想モデルがダウンロードされ、ガイド434のプッシャ488が、モデルのものと合致するよう予め構成される又は予め調節される。ガイド本体574を有する骨固定インプラント410の場合、インプラント410の仮想モデルは、コンピュータ204からCAD/CAMフライス盤/製造機械220(例えば図4に示された機械220)等に伝送される。製造機械220は、下顎骨414の術後形状に従うようにあらゆる所望の材料からガイド574を機械加工する。ガイド434が調節されるか、又はガイド574がフライス削りされると、外科医は、患者に対して顎矯正手術を開始してよい。
【0068】
図9A図9Eは、骨固定インプラント410を用いて顎矯正手術を行う方法の例を示している。手術の前に、骨固定インプラント410は、個々の患者の下顎骨に実質的に対応するよう予め構成されていることを理解すべきである。図9Aは、整復される必要がある下顎骨414の例を示している。図示したように、この時点の下顎骨414は術前形状を有する。骨切り術が下顎骨414に対して行われ、これにより、図9Bに示したように下顎骨414を第1の部分418と第2の部分422とに分離させる。
【0069】
骨切り術が行われ、間隙426が形成されると、必要であるならば、下顎骨414の第1の部分418及び/又は第2の部分422は術後形状に整復されてよい。次いで、骨固定インプラント410が下顎骨414に配置される。前述のように、骨固定インプラント410は、下顎骨414の術後形状に対応するよう予め構成されており、したがって、所定の位置に配置されたときに適切に整合させられる。図9Cに示したように、ガイド434を含む実施の形態の場合、プッシャ488の上側の骨接触面512はそれぞれ、インプラント410が適切に位置決めされると、下顎骨414の底面に当接する。
【0070】
択一的に、ガイド574を含む実施の形態の場合、インプラント410が適切に位置決めされると、ガイド574の整合部分588は下顎骨414に対して同一平面に位置する。
【0071】
図9C及び図9Dに示したように、適切に位置決めされると、プレート部材430の固定開口458に複数のスクリュ640が挿入される。図示したように、プレート部材430は、下顎骨414の第1の部分418及び第2の部分422に固定される。したがって、骨固定インプラント410は、間隙426のそれぞれの側において下顎骨414に固定される。
【0072】
図9Eに示したように、次いで、ガイド434(又はガイド574)は、骨固定インプラント410から除去され、これにより、プレート部材430が下顎骨414に固定されたままに残す。したがって、手術は完了し、インプラント10は、患者内にとどまるか、後で除去されてよい。
【0073】
広い発明の概念から逸脱することなく、上述の実施の形態に対して変更を加えることができることは当業者によって認識されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施の形態に限定されるのではなく、この記載によって定義された本発明の思想及び範囲内の変更を網羅することが意図されている。例えば、骨固定インプラント10は除去可能なブリッジ部材42を有するものとして示されているが、骨固定インプラントは、装着された後にそのままにされてもよいことを理解すべきである。言い換えれば、骨固定インプラント10の長手方向部材30は、骨プレート10の装着後に1つの部品のままであるよう構成された1つの連続的なプレートであってよい。さらに、骨切り術案内インプラント110の穴180が、骨切り術が穴に沿って実施されるために案内経路が形成されるように、インプラント110のフィンガ134に位置決めされているが、穴180は、択一的なガイドを形成するよう位置決めされてもよい。例えば、穴180は、骨固定インプラント10の長手方向部材30によって形成された穴58と一列に並ぶ穴を上顎骨に形成するよう位置決めされていてよい。このような場合、骨切り術は穴180の上方で実施される。さらに、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110は、上顎骨を伴う顎矯正手術において使用するために説明されており、かつ骨固定インプラント410は、下顎骨を伴う顎矯正手術において使用するために説明されているが、骨固定インプラント410は、下顎骨を伴う顎矯正手術において使用されてもよいことを理解すべきである。さらに加えて、骨固定インプラント10、骨切り術案内インプラント110、本絵固定インプラント410及び記載された概念は、顎矯正手術に限定されず、骨の第1の分割された部分を骨の第2の一体の部分に固定する必要がある身体の他の部分のための手術において使用されてもよい。
【0074】
本願発明は、以下であってもよい。
1.少なくとも第1の下顎骨部分を、骨間隙によって第1の下顎骨部分から分離された第2の下顎骨部分に対して固定するよう構成されたインプラントであって、
下顎骨と整合させられたときに前記下顎骨の術後形状に対応する形状を有する、術前に曲げられた本体を有するプレート部材であって、該プレート部材は、前記術前に曲げられた本体を貫通しかつ前記プレート部材を前記下顎骨に固定するために骨固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの固定開口を形成している、プレート部材と、
該プレート部材に結合された少なくとも1つのガイドであって、該少なくとも1つのガイドは、前記骨間隙を形成するために前記下顎骨が分離された後で該下顎骨に対して前記インプラントが位置決めされるときに、前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるよう術前に構成されているガイドと、を備えることを特徴とする、インプラント。
2.前記少なくとも1つのガイドは、前記下顎骨の術後形状に対応するよう予め成形されたガイド本体を有する、1記載のインプラント。
3.前記ガイド本体は整合部分を有し、該整合部分は内側の骨接触面を形成しており、該内側の骨接触面は、前記下顎骨が少なくとも第1の骨部分と第2の骨部分とに分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに、前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるために前記下顎骨の術後形状に対応するよう予め成形されている、2記載のインプラント。
4.前記ガイド本体は、生体適合性材料から形成されている、2記載のインプラント。
5.前記インプラントは3つのガイドを有し、各ガイドは、前記下顎骨が少なくとも第1の骨部分と第2の骨部分とに分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに、前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるために該下顎骨の術後形状に対応するよう予め成形されたガイド本体を有する、2記載のインプラント。
6.少なくとも1つのガイドは、ガイド本体と、該ガイド本体を貫通した固定エレメント開口とを有し、該固定エレメント開口は、前記ガイドを前記プレート部材に一時的に結合するために固定エレメントを収容するよう構成されている、1記載のインプラント。
7.前記プレート部材は、固定エレメントを収容しこれにより前記インプラントを前記下顎骨に固定するよう構成された少なくとも1つの開口を有する、1記載のインプラント。
8.前記少なくとも1つのガイドは、ガイド本体と、該ガイド本体を厚さ方向に貫通したプッシャ開口と、該プッシャ開口内に配置されたプッシャとを有し、前記プッシャは、前記下顎骨が少なくとも第1の骨部分と第2の骨部分とに分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに、前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるために前記下顎骨の底部に当接するよう構成されている、1記載のインプラント。
9.前記プッシャは、前記プッシャ開口内で厚さ方向に沿って調節可能である、8記載のインプラント。
10.前記少なくとも1つのガイドは、さらに、ガイド本体を横方向に通ってプッシャ開口内へ延びたボアを有し、該ボアは、セットスクリュを収容しこれにより前記プッシャを前記ガイド本体にロックするよう構成されている、9記載のインプラント。
11.前記少なくとも1つのガイドは、さらに、前記ガイド本体を長手方向に貫通した骨プレート収容チャネルを有し、該骨プレート収容チャネルは、前記少なくとも1つのガイドが前記骨プレートに結合されたときに該骨プレートを収容するよう構成されている、8記載のインプラント。
12.前記プッシャは、厚さ方向部分と、該厚さ方向部分の遠位端部から前記下顎骨に向かって延びた横方向部分とを有する、8記載のインプラント。
13.前記プッシャは、前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされたときに該下顎骨に当接するよう構成された骨接触面を形成している、8記載のインプラント。
14.少なくとも第1の下顎骨部分を、骨間隙によって前記第1の下顎骨部分から分離された第2の下顎骨部分に対して固定するよう構成された予め成形されたインプラントをカスタマイズする方法であって、
コンピュータにおいて患者の下顎骨の術前の三次元モデルを獲得し、この時、前記下顎骨の第1の部分と前記下顎骨の第2の部分とは第1の相対位置を形成しており、
前記下顎骨の術前の三次元モデルを、前記下顎骨の前記第1の部分と前記下顎骨の前記第2の部分とが第2の相対位置を形成している計画された術後形状に操作し、
前記下顎骨の計画された術後形状に合致するように骨固定インプラントをカスタム製造し、前記インプラントは、前記下顎骨の前記第1の部分と前記第2の部分とに取り付けられるように予め曲げられたプレート部材と、該プレート部材に結合された少なくとも1つのガイドとを有し、該ガイドは、前記下顎骨が分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるよう作用的に構成されていることを特徴とする、方法。
15.前記少なくとも1つのガイドは、前記下顎骨が分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに前記プレート部材を前記下顎骨と整合させるために、前記下顎骨の術後形状に対応するよう予め成形されたガイド本体を有する、14記載の方法。
16.前記ガイド本体は、前記プレート部材上にオーバーモールドされている、15記載の方法。
17.前記ガイド本体は、生体適合性材料から形成されている、15記載の方法。
18.前記少なくとも1つのガイドは、ガイド本体と、該ガイド本体を厚さ方向に貫通したプッシャ開口と、該プッシャ開口内に配置されたプッシャとを有し、該プッシャは、前記下顎骨が分離させられた後で前記インプラントが前記下顎骨に対して位置決めされるときに、前記下顎骨の底部に当接するよう術前に位置決めされている、14記載の方法。
19.さらに、前記厚さ方向開口内でプッシャを術前に調節することを含む、18記載の方法。
20.前記第2の相対位置は、前記第1の相対位置と異なる、14記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E