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特許7171692光電子装置、光電子装置のノイズを抑制するための方法、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】光電子装置、光電子装置のノイズを抑制するための方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20221108BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20221108BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20221108BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L31/08 Z
G01J1/02 B
G01J1/44 P
H04N5/369
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020501234
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018068761
(87)【国際公開番号】W WO2019011972
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】17382456.6
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512117362
【氏名又は名称】フンダシオ インスティチュート デ サイエンセズ フォトニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】512171032
【氏名又は名称】インスティトゥシオ カタラナ デ レセルカ イ エストゥディス アヴァンカッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】フランク、コッペンス
(72)【発明者】
【氏名】スティン、グーセンス
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシモス、コンスタンタトス
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522117(JP,A)
【文献】特開昭58-108426(JP,A)
【文献】特開平08-201164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0048950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/119
H01L 27/146-27/148
H04N 5/357-5/378
G01J 1/44-1/46
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの2次元層を含む輸送構造(T)と、
入射光を吸収し、前記輸送構造(T)の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造(P)と、
前記輸送構造(T)のそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレイン(D)電極及びソース(S)電極と、
を含む光電子デバイスを備える光電子装置において、
電圧発生器を含み、少なくとも1つの周波数成分fを有する電圧発振時間依存信号を生成して、この電圧発振時間依存信号を少なくとも前記ドレイン(D)電極及びソース(S)電極の一方に印加するように構成された制御ユニットと、
前記光増感構造(P)に光が当たると、前記ドレイン(D)電極とソース(S)電極との間の前記輸送構造(T)に作成されたチャネル内に生成される出力電気信号から必要な電気信号を抽出するように構成された信号抽出ユニットであって、fを下回る周波数の前記出力電気信号の少なくともそれらの成分をカットして、前記必要な電気信号を提供するように適合された、信号抽出ユニットと、
を含む変調ユニットを備えるノイズ抑制手段をさらに備え、
前記光電子デバイスが導電性の第1のゲート電極構造(Gb)と、前記導電性の第1のゲート電極構造(Gb)と前記輸送構造(T)との間に配置された誘電体構造(De)と、をさらに含み、前記制御ユニットが、前記電圧発振時間依存信号(VBD)を、前記導電性の第1のゲート電極構造(Gb)と前記ドレイン(D)電極及びソース(S)電極の少なくとも一方との間に印加するように構成されている、
ことを特徴とする、光電子装置。
【請求項2】
前記導電性の第1のゲート電極構造(Gb)が導電性底部ゲート電極構造である、請求項1に記載の光電子装置。
【請求項3】
前記制御ユニットが前記導電性の第1のゲート電極構造(Gb)と前記ドレイン(D)電極との間に前記電圧発振時間依存信号(VBD)を印加するように構成されている、請求項1又は2に記載の光電子装置。
【請求項4】
前記光電子デバイスが、前記光増感構造に電気的に接続されたさらなる電極(Et)をさらに含み、前記制御ユニットが、少なくとも1つの周波数成分fを有するさらなる電圧発振時間依存信号(VTD)を生成して、この電圧発振時間依存信号(VTD)を、前記電圧発振時間依存信号(VBD)の印加と同時に、さらなる電極(Et)と前記ドレイン(D)電極及びソース(S)電極の一方との間に印加するように構成されている、請求項1、2、又は3に記載の光電子装置。
【請求項5】
前記光電子デバイスが、前記光増感構造の上に配置されたさらなる誘電体構造と、前記さらなる誘電体構造(Def)の上に配置された導電性の第2のゲート電極構造(Gt)と、をさらに含み、前記制御ユニットが、少なくとも1つの周波数成分fを有するさらなる電圧発振時間依存信号(VTD)を生成して、この電圧発振時間依存信号(VTD)を、前記電圧発振時間依存信号(VBD)の前記印加と同時に、前記導電性の第2のゲート電極構造(Gt)と前記ドレイン(D)電極及びソース(S)電極の一方との間に印加するように構成されている、請求項1、2、又は3に記載の光電子装置。
【請求項6】
前記導電性の第2のゲート電極構造(Gt)が導電性の頂部ゲート電極構造である、請求項5に記載の光電子装置。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記電圧発振時間依存信号(VBD)及び前記さらなる電圧発振時間依存信号(VTD)が前記制御ユニットによって選択された最大電圧値(VTD、2;VBD、2)と最小電圧値(VTD、1;VBD、1)との間で発振して、前記光電子デバイスの応答性を前記最大電圧値(VTD、2;VBD、2)で有限の値から、前記最小電圧値(VTD、1;VBD、1)でゼロの値まで調整し、その逆も行いながら、前記チャネルの電荷キャリア密度(nchを一定に維持するように、前記電圧発振時間依存信号(VBD)及び前記さらなる電圧発振時間依存信号(VTD)を生成するように構成されている、請求項4、5、又は6に記載の光電子装置。
【請求項8】
前記電圧発振時間依存信号(VBD)及び前記さらなる電圧発振時間依存信号(VTD)が最大180°位相がシフトしている、請求項4、5、6、又は7に記載の光電子装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの2次元層がグラフェンで作られ、前記制御ユニットが、前記電圧発振時間依存信号(VBD)が大きさは等しいが符号が反対の、前記制御ユニットによって選択された最大(VBDmax)電圧値と最小(VBDmin)電圧値との間で発振するように前記電圧発振時間依存信号(VBD)を生成し、それにより、前記チャネルの電荷キャリア密度(nch)が前記グラフェンの電荷中性点を中心として少なくとも周波数fで最大電荷キャリア密度値と最小電荷キャリア密度値との間で変調され、前記グラフェン層の前記導電率(σ)が周波数2fで変調され、光が前記光増感構造(P)に当たると周波数fの成分を含むように構成されている、請求項3に記載の光電子装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの2次元層がグラフェンで作られ、前記制御ユニットが、前記チャネルにキャリア密度オフセットがある場合、前記電圧発振時間依存信号(VBD)が基準に対して大きさが等しく、符号が同じである、前記制御ユニットによって選択された最大(VBDmax)電圧値と最小(VBDmin)電圧値との間で発振するように前記電圧発振時間依存信号(VBD)を生成し、それにより、前記チャネルの電荷キャリア密度(nch)が、少なくとも周波数fで最大電荷キャリア密度値と最小電荷キャリア密度値との間で前記グラフェンの電荷中性点を中心に変調され、前記グラフェン層の前記導電率(σ)が周波数2fで変調され、光が前記光増感構造(P)に当たると周波数fの成分を含むように構成されている、請求項3に記載の光電子装置。
【請求項11】
前記最大電荷キャリア密度値と最小電荷キャリア密度値が、符号が反対である、請求項9又は10に記載の光電子装置。
【請求項12】
前記最大電荷キャリア密度値及び最小電荷キャリア密度値の絶対値が、大きさが等しい、請求項11に記載の光電子装置。
【請求項13】
前記最大電荷キャリア密度値及び最小電荷キャリア密度値が残留電荷キャリア密度値である、請求項9、10、11、又は12に記載の光電子装置。
【請求項14】
前記光電子デバイスが、
前記光増感構造(P)に電気的に接続されたさらなる電極(Et)、又は
前記光増感構造(P)の上に配置されたさらなる誘電体構造(Def)、及び前記さらなる誘電体構造(Def)の上に配置された導電性第2ゲート電極構造(Gt)、
をさらに含み、
前記制御ユニットがさらなる電圧信号を生成して、前記電圧発振時間依存信号(VBD)の印加と同時に、前記さらなる電極(Et)又は第2のゲート電極構造(Gt)に印加し、それにより、前記光電子デバイスの応答性が一定且つゼロを上回って維持されるように構成されている、
請求項9から13のいずれか一項に記載の光電子装置。
【請求項15】
前記制御ユニットが、前記さらなる電圧信号を生成して、前記さらなる電極(Et)又は第2のゲート電極構造(Gt)に印加し、それにより、前記光電子デバイスの応答性が最大値で一定に維持されるように構成されている、請求項14に記載の光電子装置。
【請求項16】
前記制御ユニットが、前記電圧発振時間依存信号(VBD)又は前記導電性の第1のゲート電極構造(Gb)に印加される他の電圧に対する前記光電子デバイスの応答性の依存性を補償する補償機構をさらに備え、前記補償機構が、補償電圧を生成して、前記さらなる電極(Et)又は第2のゲート電極構造(Gt)に印加するように構成された補償電圧源を備える、
請求項15に記載の光電子装置。
【請求項17】
少なくとも1つの2次元層を含む輸送構造(T)と、
入射光を吸収し、前記輸送構造(T)の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造(P)と、
前記輸送構造(T)のそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレイン(D)電極及びソース(S)電極と
を含む光電子デバイスを備える光電子装置において、
電圧発生器を含み、少なくとも1つの周波数成分fを有する電圧発振時間依存信号を生成して、この電圧発振時間依存信号を少なくとも前記ドレイン(D)電極及びソース(S)電極の一方に印加するように構成された制御ユニットと、
前記光増感構造(P)に光が当たると、前記ドレイン(D)電極とソース(S)電極との間の前記輸送構造(T)に作成されたチャネル内に生成される出力電気信号から必要な電気信号を抽出するように構成された信号抽出ユニットであって、fを下回る周波数の前記出力電気信号の少なくともそれらの成分をカットして、前記必要な電気信号を提供するように適合された、信号抽出ユニットと、
を含む変調ユニットを備えるノイズ抑制手段をさらに備え、
前記制御ユニットが前記電圧発振時間依存信号(VSD)を前記ドレイン(D)電極とソース(S)電極との間に印加し、前記電圧発振時間依存信号(VSD)が、前記光電子デバイスの応答性がゼロであるより高い値(VSD、off)と前記光電子デバイスの応答性が最大であるより低い値(VSD、max)との間で発振するように、前記電圧発振時間依存信号(VSD)を生成するように構成されている、
ことを特徴とする、光電子装置。
【請求項18】
前記信号抽出ユニットに加えて、又は前記信号抽出ユニットによって実施される、必要な電気信号から光信号の大きさを抽出するように適合された光信号抽出ユニットを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の光電子装置。
【請求項19】
前記電圧発振時間依存信号、又は電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧発振時間依存信号を計算することと、計算された前記電圧発振時間依存信号又は前記電圧発振時間依存信号及び前記さらなる電圧発振時間依存信号前記光電子デバイスのそれぞれの電極及び/又はゲート電極構造に前記印加することと、前記出力電気信号から前記必要な電気信号を抽出するための前記信号抽出ユニットの動作と、を含む前記制御ユニットの前記動作を実行することを含む、請求項4~8及び請求項4~8のいずれか一項を引用する請求項18のうちのいずれか一項に記載の光電子装置のノイズを抑制するための方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の光電子装置の、光検出器又は画像センサとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、外部変調機構を使用することなく、装置自体の光電子デバイス上で動作する変調機構を有するノイズ抑制手段を備える光電子装置に関する。
【0002】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による光電子装置のノイズを抑制するための方法に関する。
【0003】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様による光電子装置の光検出器又は画像センサとしての使用に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の請求項1のプリアンブル条項の特徴を備える光検出器などの光電子装置は、当技術分野で知られており、
少なくとも1つの2次元層を含む輸送構造と、
入射光を吸収し、輸送構造の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造と、
前記輸送構造のそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレイン電極及びソース電極と、
を含む光電子デバイスを備える。
【0005】
いくつかのノイズ源は、その種の装置の性能に悪影響を及ぼし、高いノイズ等価放射照度又はノイズ等価電力を引き起こし、これにより、装置は、低レベルの光レベルを検出できなくなる。
【0006】
前記ノイズを低減させるために、最新技術では、光電子装置を、光電子装置の外部にある、光学チョッパー及びロック・イン・アンプによって一般的に形成された変調コンポーネントを含む外部ノイズ抑制手段を既に含むより広範なシステムに統合することが知られている。
【0007】
前記外部変調コンポーネントを含めることには、とりわけ、最終製品のコスト及びサイズの増加、より多くのコンポーネントを制御する必要があるため、その動作に必要な制御の複雑さの増加、そして同期して、電力消費の増加、より多くの熱損失及び電気損失などのいくつかの欠点がある。
【0008】
前記欠点はすべて、前記光電子装置を使用することができる可能な用途を制限する。
【0009】
また、前記外部ノイズ抑制手段で達成される結果は、ノイズ低減の点から、改善することができる。
【0010】
Liuらの「A graphene-based broadband optical modulator」、Nature(2011)は、グラフェンに基づく変調器(シャッタ)を開示しており、上述のタイプの光電子装置とは対称的に、光が2次元材料、すなわちグラフェンに吸収され、上述の光電子装置とは違ってとりわけ、垂直に当たらない光に対する光検出器としての使用が制限されており、すなわち、画像センサとして使用することができない。
【0011】
したがって、上述したような光電子デバイスを含む光電子装置を提供することによって、ここで見出されるギャップをカバーするが、外部ノイズ抑制手段を使用する必要性に関連する上述の欠点がない最新技術の代替手段(すなわち、光を吸収するために2次元層を使用しない)を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Liu et al.,“A graphene-based broadband optical modulator”, Nature (2011)
【発明の概要】
【0013】
そのために、本発明は、第1の態様において、知られているやり方で、
少なくとも1つの2次元層を含む輸送構造と、
入射光を吸収し、輸送構造の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造と、
前記輸送構造のそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレイン電極及びソース電極と、
を含む光電子デバイスを備える光電子装置に関する。
【0014】
従来技術で知られている装置とは対照的に、本発明の装置は、特徴的なやり方で、
電圧発生器を含み、少なくとも1つの周波数成分ω/2π、すなわちfを有する電圧発振時間依存信号を生成して、この電圧発振時間依存信号を少なくとも上述のドレイン電極及びソース電極の一方に印加するように構成された制御ユニットと、
光増感構造に光が当たると、ソース電極とドレイン電極との間の輸送構造に作成されたチャネル内に生成される出力電気信号から必要な電気信号を抽出するように構成された信号抽出ユニットであって、ω/2π、すなわちfよりも低い周波数の前記出力電気信号の少なくともそれらの成分をカットして、前記必要な電気信号を提供するように適合された、信号抽出ユニットと、
を含む変調ユニットを備えるノイズ抑制手段をさらに備える。
【0015】
本発明によると、以下で説明するように、1/fノイズが抑制すべき主なノイズであるため、より高い変調周波数fを使用することが好ましい。したがって、ノイズ抑制は、変調周波数が高いほど強くなる。
【0016】
の適切な値は、一部の実施形態では、50Hzを上回り、最大100MHzの値である。
【0017】
好ましい実施形態では、上述の誘電体構造は、1つ若しくは複数の誘電体層を含み、及び/又は上述の光増感構造体は、1つ若しくは複数の光増感層を含む。
【0018】
本発明の文脈において、入射光を吸収し、輸送構造の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造は、光増感構造での光吸収が結果として輸送構造内部の電荷キャリア密度の変化をもたらすという事実を指す。
【0019】
これは、例えば、以下のプロセスによる可能性がある。
【0020】
光子の吸収によって光増感構造内で生成された電子-正孔対からの電子(又は正孔)は、輸送構造に移動することができ、一方、電子-正孔対の正孔(又は電子)は、光増感構造、又は光増感構造と輸送構造との間の界面、例えばそれらの間に配置された誘電体構造などにトラップされたままである。一部の実施形態では、光増感構造は、輸送構造の上方、例えば真上などに配置されている。あるいは、他の一部の実施形態では、光増感構造は、輸送構造の下、例えば真下などに配置され、そのため、光子は、光子が吸収される光増感構造に到達する前に輸送構造を横切らなければならない。
【0021】
あるいは、光増感構造での光吸収は、光増感構造の表面の近くで束縛電荷となる。これにより、電荷が輸送構造に含まれる2次元層に引き込まれ、その導電率が変化する。
【0022】
この意味で、光増感構造及び輸送構造によって形成されたヘテロ接合は、再結合を遅らせ、単一の吸収光子でいくつかの電気キャリアを収集することを可能にし、輸送構造に含まれる2次元材料の高いキャリア移動度と組み合わされて、結果として非常に高い光伝導ゲイン及び応答性をもたらす。
【0023】
一部の実施形態では、光増感構造は、光吸収半導体、2D材料、ポリマー、色素、量子ドット(例えば、コロイド量子ドットなど)、強誘電体、ペロブスカイト、及び/又はそれらの組み合わせを含む。
【0024】
光増感構造は、例えば、前述の材料の混合物を含有するナノコンポジット薄膜を含んでもよい。また、光増感構造は、単層構造であってもよく、あるいは、前述の材料の1つ又は複数が互いに積み重ねられた異なる層を構成する多層構造であってもよい。
【0025】
光増感構造が量子ドットを含むこれらの実施形態では、これらの材料は、好ましくは、以下のタイプ、すなわち、Ag2S、Bi2S3、CdS、CdSe、CdHgTe、Cu2S、CIS(二硫化銅インジウム)、CIGS(セレン化銅インジウム)、CZTS(銅亜鉛スズ硫化物)、Ge、HgTe、InAs、InSb、ITO(酸化インジウムスズ)、PbS、PbSe、Si、SnO2、ZnO、及びZnSのうちの1つ又は複数である。
【0026】
同様に、一部の実施形態では、輸送構造に含まれる少なくとも1つの2次元材料は、以下の材料、すなわち、グラフェン、MoS2、MoSe2、WS2、WSe2、黒リン、SnS2、PbSnSb14(フランケイト)及びh-BN(六方晶窒化ホウ素)のうちの1つ又は複数を含む。
【0027】
一部の実施形態、すなわち、以下で詳細に説明する少なくとも第1、第2、及び第3の実施形態(以下で説明する第4の実施形態ではなく)では、光電子デバイスは、導電性の第1のゲート電極構造と、導電性の第1のゲート電極構造と輸送構造との間に配置された誘電体構造と、をさらに含み、制御ユニットは、導電性の第1のゲート電極構造とドレイン電極及びソース電極の少なくとも一方、好ましくはドレイン電極との間に、上述の電圧発振時間依存信号を印加するように構成されている。
【0028】
好ましい実施形態では、前記導電性の第1のゲート電極構造は、導電性底部ゲート電極構造であるが、代替として、あまり好ましくない実施形態では、導電性の第1のゲート電極構造は、導電性の頂部ゲート電極構造である。
【0029】
第1の実施形態によると、光電子デバイスは、光増感構造に電気的に接続されたさらなる電極をさらに備え、制御ユニットは、少なくとも1つの周波数成分ω/2π、すなわちfを有するさらなる電圧発振時間依存信号を生成して、このさらなる電圧発振時間依存信号を、電圧発振信号の印加と同時に、さらなる電極とドレイン電極及びソース電極の一方(好ましくはドレイン電極)との間に印加するように構成されている。電圧発振時間依存信号とさらなる電圧発振時間依存信号との間の位相を制御することができる。
【0030】
第2の実施形態では、光電子デバイスは、光増感構造の上に配置されたさらなる誘電体構造と、さらなる誘電体構造の上に配置された導電性の第2のゲート電極構造と、をさらに含み、制御ユニットは、少なくとも1つの周波数成分ω/2π、すなわちfを有するさらなる電圧発振時間依存信号を生成して、このさらなる電圧発振時間依存信号を、導電性の第1のゲート電極構造とドレイン電極及びソース電極の一方(好ましくはドレイン電極)との間に印加される電圧発振時間依存信号の印加と同時に、導電性の第2のゲート電極構造とドレイン電極及びソース電極の一方(好ましくはドレイン電極)との間に印加するように構成されている。電圧発振時間依存信号とさらなる電圧発振時間依存信号との間の位相を制御することができる。
【0031】
好ましい実施形態では、前記導電性の第2のゲート電極構造は、導電性の頂部ゲート電極構造であるが、代替として、あまり好ましくない実施形態では、導電性の第2のゲート電極構造は、導電性底部ゲート電極構造である。
【0032】
前記第1及び第2の実施形態の一部の実装態様では、制御ユニットは、上述の電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧発振時間依存信号を生成して、輸送構造に作成されたチャネル内の電荷キャリア密度を実質的に一定に維持するように構成されている。
【0033】
好ましくは、制御ユニットは、電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧発振時間依存信号が、制御ユニットによって選択された最大電圧値と最小電圧値との間で発振して、光電子デバイスの応答性を、(例えば、光増感構造から輸送構造への電荷移動の量子効率を調整することによって)最大電圧値での有限値(一般的に応答性が最大)から、最小電圧値でのゼロまで調整し、その逆も行いながら、輸送構造に作成されたチャネル内の電荷キャリア密度を実質的に一定に維持するという上述の目標を達成するように、電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧発振時間依存信号を生成するように構成されている。
【0034】
第1及び第2の実施形態の特定の場合では、電圧発振信号及びさらなる電圧発振信号は、最大180°位相がシフトしている。
【0035】
上述の電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧発振時間依存信号の両方に対する実施形態は、正弦波信号、矩形波、三角波などのあらゆる種類の周期信号を包含する。
【0036】
第3の実施形態では、少なくとも1つの2次元層は、グラフェンで作られ、制御ユニットは、上述の電圧発振時間依存信号が、大きさが等しいか又は実質的に等しいが、符号が反対の、制御ユニットによって選択された最大電圧値と最小電圧値との間で発振するように、電圧発振時間依存信号を生成し、それにより、輸送構造に作成されたチャネル内の電荷キャリア密度が、グラフェンの電荷中性点を中心に、最大電荷キャリア密度値と最小電荷キャリア密度値(+nと-n、ここでnは自由に選択可能)との間で少なくともω/2π、すなわちfの周波数で変調され、グラフェン層の導電率が主に周波数ω/π、すなわち2fで変調され、一方で、光が光増感構造に当たると、周波数ω/2π、すなわちfの成分が増加するように構成されている。
【0037】
前記第3の実施形態のわずかな変形形態では、制御ユニットは、輸送構造に作成されたチャネル内にキャリア密度オフセットがある場合、電圧発振時間依存信号が、基準に対して大きさ(すなわち、ピーク振幅)が等しいか又は実質的に等しいが、符号が同じである最大電圧値と最小電圧値との間で発振するように、電圧発振時間依存信号を生成するように構成されている。
【0038】
好ましくは、最大電荷キャリア密度値と最小電荷キャリア密度値は、符号が反対である。
【0039】
前記第3の実施形態及びそのわずかな変形形態の実施態様では、最大電荷キャリア密度値及び最小電荷キャリア密度値の絶対値は、大きさが等しいか又は実質的に等しい。
【0040】
前記第3の実施形態及びそのわずかな変形形態のより精密な実施態様では、光電子デバイスは、
光増感構造に電気的に接続されたさらなる電極、又は
光増感構造の上に配置されたさらなる誘電体構造、及びさらなる誘電体構造の上に配置された導電性の第2のゲート電極構造
をさらに含む。
【0041】
第3の実施形態及びそのわずかな変形形態の前記より精密な実施態様では、制御ユニットは、さらなる電圧信号を生成して、電圧発振時間依存信号の印加と同時に、さらなる電極又は第2のゲート電極構造に印加し、それにより、光電子デバイスの応答性が一定且つゼロを上回って、好ましくは最大値又は実質的に最大値に維持されるように構成されている。
【0042】
電圧発振時間依存信号又は導電性の第1のゲート電極構造に印加される他の電圧に対する光電子デバイスの応答性の依存性を補償するために、第3の実施形態及び前記そのわずかな変形形態の変形形態では、制御ユニットは、前記依存性を補償するための補償機構をさらに備え、前記補償機構は、補償電圧を生成して、さらなる電極又は第2のゲート電極構造に印加するように構成された補償電圧源を備える。
【0043】
上述の第3の実施形態及びそのわずかな変形形態は、光電子装置だけでなく、デバイスに印加されるソース・ドレイン・バイアスに依存するグラフェン・ベースの検知デバイスを含む非光電子装置のノイズ抑制にも使用することができる。コンダクタンスの変化の検出に依存するグラフェン・ベースの検知デバイスは、1/fノイズによって制限される。しかしながら、この1/fノイズは、装置が少なくとも以下の要素、すなわち、
導電性底部ゲート電極構造と、
導電性底部ゲート電極構造の上に配置された誘電体構造/層Deと、
誘電体構造Deの上に配置された1つ又は複数の2次元グラフェン層を含む輸送構造と、
輸送構造のそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレイン電極及びソース電極と、
を含む限り、第3の実施形態で上述したスキームを実施することによって低減させることができる。
【0044】
コンダクタンスの変化を検知することに依存するグラフェン・ベースの検知デバイスは、純粋なグラフェン、改質グラフェン、官能化グラフェンの3つのカテゴリに分類することができる。
【0045】
本明細書では、純粋なグラフェンとは、以下のセンサを実現するためにさまざまなやり方でパターニングすることができる(多結晶又は単結晶)単層グラフェンの連続シートを指す。
【0046】
ひずみセンサ:グラフェンを引き伸ばすことによって、コンダクタンスが変更される。
【0047】
電荷センサ:例えば、吸収されたガス分子の検知又は神経信号の検知のために、対象とする分析物が電荷をグラフェンに移動させるか、又はグラフェンのコンダクタンスを変更する電界を引き起こす。別の用途は、生体内の電気信号を直接検知するためのものである。
【0048】
圧力センサ:グラフェンは、2つのボリュームの間に配置され、2つの領域の間に圧力差があると変形し、この変形により、コンダクタンスの変化が引き起こされる。
【0049】
本明細書では、改質グラフェンとは、以下のセンサを実現するために構造的又は化学的に改質されたグラフェンのシートを指す。
【0050】
ひずみセンサ:グラフェンを引き伸ばすことによって、コンダクタンスが変更される。
【0051】
温度センサ:温度の違いによりコンダクタンスの変化が引き起こされる。
【0052】
特定の生体分子に対する選択性を高める化学結合リンカー分子を使用したバイオセンサ。対象とする分子がリンカーに結合すると、電荷がグラフェンに移動するか、又はグラフェンに電気が誘起される。これにより、グラフェンのコンダクタンスが変更される。
【0053】
本明細書では、官能化グラフェンとは、グラフェンを以下の分析物のいずれかに感作する物理吸着層で官能化された(多結晶又は単結晶)グラフェンの連続シートを指す。
【0054】
光:本明細書の他の実施形態で言及されているように、例えば、光電子デバイスにコロイド量子ドットを使用する。
【0055】
リンカー分子が物理吸着された生体分子。対象とする分子がリンカーに結合すると、グラフェンに電荷が移動するか、又はグラフェンに電気が誘起される。これにより、グラフェンのコンダクタンスが変更される。
【0056】
上述の非光電子装置は、別の発明を形成することができるさらなる独立した態様を構成する。
【0057】
本発明は、第4の実施形態も含み、制御ユニットは、ソース電極とドレイン電極との間に電圧発振時間依存信号を印加し、電圧発振時間依存信号が、光電子デバイスの応答性がゼロ又は実質的にゼロとなるより高い値と、光電子デバイスの応答性が最大又は実質的に最大となるより低い値(すなわち、前記より高い値よりも低い)との間で発振するように、電圧発振時間依存信号を生成するように構成されている。言い換えれば、第4の実施形態では、ノイズ抑制は、ソース・ドレイン・バイアスを変調することによって実行される。
【0058】
前記第4の実施形態では、少なくとも1つの2次元層は、一般にグラフェンで作られるが、MoS2、MoSe2、WS2、WSe2、黒リン、SnS2及びPbSnSb14(フランケイト)などの他の代替の2次元材料も使用することができる。
【0059】
前記第4の実施形態の実施態様では、制御ユニットは、電圧発振信号を生成して、輸送構造に作成されたチャネル内の電荷キャリア密度を実質的に一定に維持するように構成されている。
【0060】
上述の実施形態のいずれかの実施態様では、信号抽出ユニットは、ω/2πを上回る周波数の出力電気信号のそれらの成分をカットするようにも適合されている。
【0061】
好ましくは、本発明の第1の態様の光電子装置は、信号抽出ユニットに加えて、又は信号抽出ユニットによって実施される、必要な電気信号から光信号の大きさを抽出するように適合された光信号抽出ユニットを含む。
【0062】
一部の実施形態では、本発明の第1の態様の装置のデバイスの異なる構造は、デバイスに含まれる基板(の上又は下)に配置されている(互いに積み重ねられている)。
【0063】
一実施形態では、前記基板は、シリコンなどの半導体材料で作られている。
【0064】
一実施形態では、前記基板は、可撓性及び/又は透明基板である。
【0065】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による光電子装置のノイズを抑制するための方法に関し、上述の電圧発振時間依存信号、又は、電圧発振時間依存信号及びさらなる電圧時間依存発振信号を計算することと、光電子デバイスのそれぞれの電極及び/又はゲート電極構造への電圧発振時間依存信号の印加と、出力電気信号から必要な電気信号を抽出するための上述の信号抽出ユニットの動作と、を含む、上述の制御ユニットの動作を実行することを含む。
【0066】
一実施形態では、本発明の第2の態様の方法は、本明細書で説明される関連付けられた実施形態のいずれかに対して、上で示した光信号抽出ユニットの動作を実行することをさらに含む。
【0067】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様による光電子装置の光検出器又は画像センサとしての使用に関する。
【0068】
本発明の用途は、幅広い光検出の分野にある。2D材料を含む輸送構造、及び入射光を吸収して輸送構造の導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造に基づく光検出器は、より低い光レベルの検出を可能にし、検出器又はセンサのノイズ等価放射照度又はノイズ等価電力を低減させるため、本発明から恩恵を受ける。
【0069】
本発明を使用して、画像センサ(1次元アレイ又は2次元アレイ)を含む、垂直に当たる光の光検出器を実施することができる。
【0070】
さらに、本発明は、例えば、物体で反射又は放射された光を検出するように構成された光電受信器の形態の距離検知用途にも使用することができる。
【0071】
本発明の他の用途には、周囲光検知、LIDAR(光検出と測距(Light Detection and Ranging)、又はレーザ画像検出と測距(Laser Imaging Detection and Ranging))システム、及び単一ピクセル光検出器が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
以下に、本発明のいくつかの好ましい実施形態を添付の図面を参照して説明する。これらは、本発明の範囲を限定することなく、例示目的のためにのみ提供される。
図1】装置のデバイスの概略断面図の図(a)及びデバイス及び電子接続スキームを含む装置の図(b)によって、本発明の第1の態様の光電子装置の第1の実施形態を示す。
図2】量子効率をVTDで調整することができる方法を示すプロットである(Nikitskiyら、2016)。
図3図1の第1の実施形態に対して提案された変調スキームの概略図である。
図4図1の第1の実施形態に対して得られた検出結果を概略的に示すプロットであり、デバイスが一定の光信号で照明され、以下に説明するような頂部電極及び底部ゲート変調が実施された場合の結果として得られた信号を実線で示している。破線では、バンドパス・フィルタリング後の結果として得られた検出信号がプロットされており、明確にするために、信号は、オフセットされている。
図5】第2の実施形態に対する、本発明の第1の態様の装置の光電子デバイスの概略断面図である。
図6】第3及び第4の実施形態に使用することができる構成による、本発明の第1の態様の装置の光電子デバイスの概略断面図である。
図7】デバイスのグラフェン層のキャリア密度の関数としての光信号dR/Rのプロットとともに、第3の実施形態に対して提案された変調スキームを表す概略図であり、描かれた矢印は、第3の実施形態に対してノイズ抑制を実現するために、キャリア密度を変調する必要がある範囲を示す。
図8】以下で説明するように底部ゲートの変調時に、第3の実施形態の装置を用いて得られたデバイス出力波形の異なるグラフ表示を概略的に示す図である。上方のプロットは、光のない出力信号を示し、中間のプロットは、一定照明での出力信号を示し、下方のプロットは、バンドパス・フィルタリング後の一定照明での出力信号を示す。
図9】第3の実施形態に対して、本発明の装置の実際の実施態様について得られた結果を示すプロットであり、出力検出信号の大きさのFFTを変調周波数に関係付けている。
図10】第4の実施形態に対して、本発明の装置の光電子デバイスの応答性を、50mW/mの一定放射照度でソース・ドレイン・バイアスの関数として示すプロットである。
図11図6に示したものの代替構成に対する本発明の第1の態様の装置の光電子デバイスの概略断面図であるが、本デバイスは、第4の実施形態にも使用することができる。
図12】一実施形態に対して、本発明の装置によって実施される完全な読み出しチェーンの概略図である。
図13a】以下で説明する実施形態1、2、及び3のいくつかの実施に対して、図12の光信号抽出ユニットで実行される相関二重サンプリング・タイミング・シーケンスである。
図13b】以下で説明する実施形態4のいくつかの実施に対して、図12の光信号抽出ユニットで実行される相関二重サンプリング・タイミング・シーケンスである。
図14】光信号抽出方法として相関二重サンプリングを使用する実施形態1及び2の一部の実施態様に対して、図12の完全な読み出しチェーンを実施する本発明の装置の実施態様である。
図15】実施形態3のノイズ抑制スキームを実施するのに実行可能な非光電子装置の非光電子デバイスの概略断面図である。
図16図1、5、6、及び11に示すデバイス構造のいずれかを含むが、本発明のノイズ抑制手段がない光電子装置に対して従来の読み出しを使用する、グラフェン-量子ドット・ハイブリッド検出器で従来の読み出しを使用して測定を行って得られた2つのプロットによって、本発明によって抑制されるノイズのタイプを示す。プロット(a)は暗い条件下で得られた信号の時間トレースを示し、プロット(b)は得られたノイズスペクトルを示す。
図17】正弦波で変調された0.4W/mの1550nm照明下で、図6に従って作られたデバイスを用いて得られた検出器信号を示す。プロット(a)において、実施形態3によるノイズ抑制技法を使用して、113Hzの正弦波底部ゲート変調(VBDを、オフセット値3.07Vを中心に最大3.211V及び最小2.929Vで発振させた)で得られた時間トレースが示される一方で、プロット(b)は従来の読み出しを使用して0Vの一定の底部ゲート電圧で得られた時間トレースを示す。1.25Hzの同じ読み出し帯域幅が両プロットを得るために使用された。
図18図17のプロットを得るために作製された同じ検出器に対して、実施形態3のノイズ抑制技法を使用した(a)及び従来の読み出しによる(b)、ノイズ等価放射照度の測定を示す。ノイズ抑制技法では、80μW/mのノイズ等価放射照度が得られる一方で、従来の読み出しでは、10mW/mしか得られない。これは、125倍の改善である。
図19図17及び図18に対して作製された同じ検出器に対して、実施形態3による、ω/2π、すなわちfにおいて暗い条件下で得られた信号の大きさを変調周波数ω/2π、fの関数として示す図である。バンドパスフィルタは、変調周波数を中心に1.25Hzの帯域幅に設定された。破線は、視線をガイドするためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下では、第1、第2、第3、及び第4の実施形態として識別される上記のものは、それぞれ実施形態1、2、3、及び4と呼ばれ、添付の図面を参照して説明される。
【0074】
本発明によって抑制されるノイズのタイプは、1/fノイズである。先行技術の出版物(Konstantatosら、Nature Nanotechnology 2012、Goossensら、Nature Photonics 2017)で述べられているように、構造的には本発明の1つであるがノイズ抑制手段のない先行技術のデバイスは、1/fノイズによって制限される。
【0075】
このタイプのノイズが、プロトタイプに対して図16に示されており、プロット(b)では、傾いた直線は、傾きが1/fであり、1/f又はフリッカーノイズが光電子装置のノイズを支配している。50Hzのピークは、測定装置によって引き起こされた干渉である。
【0076】
実施形態1:底部ゲート及び頂部コンタクト変調を介して実施される電子シャッタ:
本実施形態の場合、本発明の第1の態様の光電子装置の光電子デバイスは、図1(a)に示される構成、すなわち基板Sbと、その上に配置された
導電性底部ゲート電極構造Gbと、
導電性底部ゲート電極構造Gbの上に配置された誘電体構造/層Deと、
誘電体構造Deの上に配置された1つ又は複数の2次元層を含む輸送構造Tと、
輸送構造Tの上に配置され、入射光を吸収して輸送構造Tの導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造/層P(半導体光吸収体)と、
光増感構造Pに電気的に接続された(オーミック接続またはショットキー接続)頂部電極Etと、
輸送構造Tのそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレインD電極及びソースS電極と、
を有する。
【0077】
図1(b)は、図1(a)のデバイスと、本発明のノイズ抑制手段の変調ユニットに含まれる制御ユニット(図示せず)の電圧発生器VBD、VTD、及びVSDを含む電子接続スキームと、を含む光電子装置を示す。
【0078】
図1(a)に示すデバイスの量子効率は頂部電極電圧VTDを使用して0から実質的に80%まで調整でき、これが、図2に示されており、ここでEQEは、外部量子効率を指し、Rは、応答性を指す。
【0079】
電荷キャリア密度n、したがって2D材料のチャネル(すなわち、輸送構造T)の抵抗Rchは、頂部電極及び底部ゲートの両方を用いて調整することができる。
頂部電極:nch=C*VTD/q
底部ゲート:nch=C*VBD/q
【0080】
ここで、C及びCはそれぞれ、輸送構造Tに対する頂部電極Et及び底部ゲート電極Gbのキャパシタンス、nchは、2D材料チャネル内の平均キャリア密度、qは、輸送構造Tのチャネル内の電荷を指す。
【0081】
以下の関係で記述される電圧VTD、2、VTD、1、VBD、2、及びVBD、1の組み合わせでは、キャリア密度、したがってRchは、一定である。
/C=(VTD、2-VTD、1)/(VBD、2-VBD、1)(1)
【0082】
ここで、VTD=VTD、1で量子効率が0であり、VTD=VTD、2及びVBD=VBD、2で量子効率が最大であると仮定すると、VBDを式(1)で与えられるVBD、1に設定することによって、動作点VTD、2、VBD、2とVTD、1、VBD、1とを切り替えて、2D材料の抵抗を一定に保ちながらデバイスの感度を調整することができる。この変調を図3に示す。
【0083】
前記変調を実施するためには、頂部電極Et及び底部ゲート電極Gbにそれぞれの発振信号、例えば、正弦波信号(又は任意の他の周期信号の矩形波、三角波など)を印加する必要がある。
頂部電極:VTD=VTD、1+0.5*abs(VTD、2-VTD、1)*(sin(ω*t+π+φ)+1)
底部ゲート:VBD=VBD、1+0.5*abs(VBD、2-VBD、1)*(sin(ω*t+φ)-1)
【0084】
ここで、光信号は、周波数ωに現れるはずである。
【0085】
前のセクションでそれぞれ電圧発振信号及びさらなる電圧発振信号と呼ばれた前記発振信号VTD、VBDは、本発明の制御ユニットの電圧発生器によって生成される。
【0086】
本発明の第1の態様の装置の変調ユニットは、光が光増感構造Pに当たるとソースS電極とドレインD電極との間の輸送構造Tに作成されたチャネル内に生成される出力電気信号から必要な電気信号を抽出、すなわち、前記出力電気信号の読み出しを実施する信号抽出ユニットを含む。
【0087】
前記信号抽出ユニットは、ω/2πを下回る周波数の出力信号の少なくともそれらの成分をカットして、必要な出力信号を提供するように適合されている。これは、さまざまなやり方で実施することができる。すなわち、
ロック・イン・アンプ。
<ω/2πのハイパスフィルタ(位相情報が失われる)。
c1<ω/2π及びfc2>ω/2πのバンドパスフィルタ(位相情報が失われる)。
【0088】
ハードウェア又はソフトウェアで実施される後処理高速フーリエ変換(位相情報が失われる)。
【0089】
図4は、実施形態1に対して得られた検出結果を示し、図1のデバイスが一定の光信号で照射され、上述したような頂部電極と底部ゲート変調が実施された場合の、結果として得られた検出信号を実線で示す。破線で、バンドパス・フィルタリング後の検出信号をプロットしており、明確にするために、信号は、オフセットされている。わかりやすくするために、図4には示されていないが、結果として得られた検出信号にはfを下回る周波数のノイズも含まれている。バンドパス・フィルタリングは、図示されたfを上回るノイズ及び図示されていないfを下回るノイズの両方をフィルタリングする。
【0090】
実施形態2:底部ゲート及び頂部ゲート変調を介して実施される電子シャッタ:
本実施形態2では、本発明の第1の態様の光電子装置の光電子デバイスは、図5によって表される構成、すなわち、頂部電極を含む代わりに、さらなる誘電体構造Defによって光増感構造Pから分離された頂部ゲートGtを含む点で図1のものとは異なる構成を有する。
【0091】
実施形態2の光電子装置は、図5のデバイスと、図1(b)に示すような、すなわち、本発明のノイズ抑制手段の変調ユニットに含まれる制御ユニット(図示せず)の電圧発生器VBD、VTD、及びVSDを含む電子接続スキームと、を含むが、電圧発生器VTDは、(頂部電極Etの代わりに)頂部ゲートGtに接続されている。
【0092】
実施形態1で説明したのと同じ理由により、変調は、頂部ゲートGt及び底部ゲート電極Gbに印加されるそれぞれの発振信号(電圧発振信号VTD及びさらなる電圧発振信号VBD)、例えば正弦波信号(又は任意の他の周期信号の矩形パルス、三角波など)を使用して実施される。
頂部ゲート:VTD=VTD、1+0.5*abs(VTD、2-VTD、1)*(sin(ω*t+π+φ)+1)
底部ゲート:VBD=VBD、1+0.5*abs(VBD、2-VBD、1)*(sin(ω*t+φ)-1)
ここで、光信号は、周波数ωに現れるはずである。
【0093】
読み出し及び信号抽出は、実施形態1と同じやり方で、すなわち、本発明の第1の態様の装置の変調ユニットの信号抽出ユニット(図示せず)によって実施することができ、バンドパス・フィルタリングが適用されると図4に示すものと同様の結果を提供する。
【0094】
実施形態3:底部ゲート変調を使用したノイズ抑制:
本実施形態では、本発明の第1の態様の光電子装置の光電子デバイスは、図6に示される構成、すなわち基板Sbと、その上に配置された、
導電性底部ゲート電極構造Gbと、
導電性底部ゲート電極構造Gbの上に配置された誘電体構造/層Deと、
誘電体構造Deの上に配置された1つ又は複数の2次元グラフェン層を含む輸送構造Tと、
輸送構造Tの上に配置され、入射光を吸収して輸送構造Tの導電率の変化を引き起こすように構成及び配置された光増感構造/層P(半導体光吸収体)と、
輸送構造Tのそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレインD電極及びソースS電極と、
を有する。
【0095】
この場合、本発明は、グラフェンの両極性伝導性から特に恩恵を受ける。
【0096】
輸送構造Tのグラフェン・チャネルの導電率は、次式によって記述される。
【数1】
【0097】
ここで、n*は、グラフェンの残留キャリア密度、nchは、グラフェン・チャネルの平均キャリア密度、eは、電子電荷、μは、グラフェンの移動度である。
【0098】
底部ゲート電極Gbが変調される場合、nchに対して次のように書くことができる。
ch=C・V・sinω
【0099】
この変調(図7参照)は、σの変調をもたらすが、σとnchの非線形関係のために、σのこの変調は、周波数2ωで生じる。
【0100】
ここで、光がデバイスに当たっている場合を考えると、これは、グラフェン・チャネル内に一定のキャリア密度nlightを誘起し、したがってチャネルの導電率は、
【数2】
である。
【0101】
ここで、導電率は、周波数ωも含み、(周波数領域の)大きさが光誘起密度nlightに比例する。
【0102】
ωよりも小さい周波数と大きい周波数の周辺の信号をカットする信号抽出が実施されると、ノイズの抑制が達成される。
【0103】
この抑制の理由は、効果的な準静的な照明が、デバイスノイズがより低い(多くの場合、1/fノイズによって支配される)より高い周波数の信号をもたらすからである。1/fノイズの原因は、電荷密度、移動度、又はコンタクトノイズのいずれかである。実施形態3のノイズ抑制スキームは、ノイズが移動度ノイズによって支配されている場合に最もよく機能する。
【0104】
したがって、実施形態3では、制御ユニット(図示せず)は、電圧発振信号VBD図1(b)でVBDとして、すなわち底部ゲート電極Gbとドレイン電極Dとの間に接続されている)が、大きさが等しいか又は実質的に等しいが、符号が反対の、又は輸送構造に作成されたチャネル内に電荷密度オフセットがある場合は符号が同じである、制御ユニットによって選択された最大VBDmax(又はVBD、1)電圧値と最小VBDmin(又はVBD、2)電圧値との間で発振するように電圧発振信号VBDを生成し、それにより、グラフェン・チャネルの電荷キャリア密度nchが周波数ω/2πで最大電荷キャリア密度値nch*と最小電荷キャリア密度値-nch*(残留電荷キャリア密度値又は他のタイプの電荷キャリア密度の値)との間で変調され、グラフェン層の導電率σが周波数ω/πで変調され、光増感構造Pに光が当たると周波数ω/2πの成分を含むように構成されている。
【0105】
好ましくは、図7に示すように、最大及び最小電荷キャリア密度値は、符号が反対で、大きさが等しいか又は実質的に等しい。
【0106】
読み出し及び信号抽出は、実施形態1と同じやり方で、すなわち、本発明の第1の態様の装置の変調ユニットの信号抽出ユニット(図示せず)によって実施することができる。
【0107】
図7は、実施形態3に使用される電圧発振信号VBD、そしてまた図6のデバイスで得られた光信号dR/Rのプロットを、デバイスのグラフェン層Tのキャリア密度の関数として示しており、描かれた矢印は、第3の実施形態に対してノイズ抑制を達成するためにキャリア密度を変調する必要がある典型的な範囲を示す。
【0108】
この実施形態3のノイズ抑制スキームの概略的及び実際的な実施態様が図8(概略的)及び図9(現実的な実際的実施態様)に波形で示されている。
【0109】
特に、図8は、上述したような底部ゲート電極Gbの変調時のデバイス出力波形の異なる概略的なグラフ表示を示し、図9は、本発明の装置の実際的な実施態様に対して得られた、周波数f=225Hzで変調された結果を示す。非線形効果のために、2*fにピークが現れている(「光なし」の線)。一定の光で照明すると、fにピークが現れる(「光あり」の線)。
【0110】
図4と同様に、図8では、わかりやすくするために、結果として得られる検出信号にはfを下回る周波数のノイズも含まれている。バンドパス・フィルタリングは、図示されたfを上回るノイズ及び図示されていないfを下回るノイズの両方をフィルタリングする。
【0111】
図示されていないが、本実施形態3のより精密な実施態様では、光電子デバイスは、前のセクションで既に説明したように、光電子デバイスの応答性を一定且つゼロを上回って維持することを実行するために、及び/又は補償電圧を生成して、頂部電極若しくは頂部ゲート電極構造に印加するために、光増感構造Pに電気的に接続された頂部電極、又はさらなる誘電体構造によって光増感構造Pから分離された導電性頂部ゲート電極構造をさらに含む(すなわち、図5に示すような)。
【0112】
本明細書の前のセクションで述べたように、実施形態3は、光電子装置だけでなく、デバイスに印加されるソース・ドレイン・バイアスに依存する非光電子グラフェン・ベースの検知デバイスを含む非光電子装置のノイズ抑制にも使用することができる。
【0113】
そのような非光電子グラフェン・ベースのデバイスの実施形態は、図15に示されており、
導電性底部ゲート電極構造Gbと、
導電性底部ゲート電極構造Gbの上に配置された誘電体構造/層Deと、
誘電体構造Deの上に配置された1つ又は複数の2次元グラフェン層を含む輸送構造Tと、
輸送構造Tのそれぞれの別個の位置に電気的に接続されたドレインD電極及びソースS電極と、
を含む。
【0114】
図6に示すデバイスに対して説明した実施形態3のノイズ抑制スキームは、図15のデバイスに対しても機能する。
【0115】
上述の図9は、光が照射されるとfにピークが現れることを示す。ノイズ抑制が働くことは、まだ証明されていない。これを証明するために、実験結果が図17及び図18に提供されており、これは、ノイズ抑制が実施形態3に従って実際に機能することを示している。
【0116】
具体的には、図6に示す構造を有するデバイスが作成された。ローカルゲートは、ニッケルで作られ、誘電体層は、50nmのAlであり、ソース及びドレイン電極は、パラジウムで作られた。グラフェンをW×L=30×60μmのチャネルに転写してパターニングし、その後PbSコロイド量子ドットの増感層を堆積させた。
【0117】
検出器の信号を2つの異なるやり方で読み取った。
1.実施形態3によるノイズ抑制:正弦波ゲート変調(VBDを、最大3.211V及び最小2.929Vでオフセット値3.07Vを中心に正弦波発振させた)を印加して、ドレイン電極Dと底部ゲート電極構造Gbとの間の中性点を中心に電荷キャリア密度を、f=113Hzで、ソース-ドレイン電極に一定電圧をバイアスして変調した。センサに入射する光を1Hzの周波数で変調しながら、検出器に光を照射して、1.25Hzの帯域幅を有するロック・イン・アンプでソース・ドレイン電流を読み取った(この光変調は、ノイズ抑制をよりよく示すために適用されただけである)。図17(a)は、結果として得られた信号を示す。
2.従来の読み出し:0Vの一定電圧を底部ゲート電極構造Gbとドレイン電極Dとの間に印加し(これは最大の光応答の設定である)、一定のソース・ドレイン・バイアスをかけた。信号は、電流アンプを使用して読み取られ、出力信号が検出器のノイズによって制限されていることを確認した。結果として得られたデータが図17(b)にプロットされている。
【0118】
図17(a)を図17(b)と比較することによって、実施形態3で説明した技法がノイズを著しく低減させることが明確にわかる。
【0119】
ノイズ低減の定量的な洞察を得るために、図18に示すように、作製したデバイスを用いて、実施形態3のノイズ抑制技法を適用して(図18(a))及び従来の読み出しを用いて(図18(b))、ノイズ等価放射照度の測定を実行した。この図に示すように、ノイズは125分の1に減少した。ノイズ抑制は、理論的には、
【数3】
=10.6倍抑制され、したがって中性点を中心に輸送チャネルのキャリア密度を変調するという別の利点があることに留意されたい。
【0120】
実施形態3で説明したような1/fノイズの抑制をさらに証明するために、図6の構造に従ってさらに作製されたデバイスから図19にプロットされたデータセットも収集した。図19は、変調周波数を約100Hzまで上げると、信号の大きさ(この測定が暗い条件下で実行されたときのノイズの大きさ)が減少することを明確に示している。100Hzを超えると、信号は、再び増加し、これは、底部ゲート電極構造Gb及び誘電体構造Deが、底部ゲート電極構造Gbに印加された変調信号のハイパスフィルタ(約2pFのゲート容量を有する)として機能するためである。ゲート容量が小さくなると、ノイズ抑制が機能する変調周波数領域が広がり、したがってノイズ抑制の効果が高まる。
【0121】
実施形態4:ノイズ抑制のためのソース・ドレイン電圧変調:
この実施形態4では、本発明の第1の態様の光電子装置の光電子デバイスは、図6に示す構成又は図11に示す構成も有する。
【0122】
この場合、ノイズ抑制は、検出器の応答が0(又は実質的に0)になるように大きなソース・ドレイン・バイアスVSD、offを印加することによって、光応答をオフにすることができるという観察に基づいて、ソース・ドレイン・バイアスを変調することによって実施される。図10は、この効果を示す。
【0123】
したがって、本発明に従ってバイアスをVSD、max(又はVSD、1)(応答性が最大であるソース・ドレイン・バイアス)とVSD、off(又はVSD、2)との間で変調して、デバイスの内蔵シャッタを実施することができる。
【0124】
このようなシャッタは、ソースS電極及びドレインD電極に印加される周波数ωを有する電圧発振信号、例えば正弦波信号(又はその他の周期信号の矩形パルス、三角波など)を使用して実施することができる。
SD=0.5*abs(VSD、off-VSD、max)*(1+sin(ω*t+φ))
【0125】
制御ユニット(図示せず)は、ソースS電極とドレインD電極との間に電圧発振信号VSDを印加し、この電圧発振信号VSDが光電子デバイスの応答性がゼロ又は実質的にゼロになるより高い値VSD、offと光電子デバイスの応答性が最大又は実質的に最大となるより低い値VSD、maxとの間で発振するように、電圧発振信号VSDを生成するように構成されている。
【0126】
実施形態4による光検出器のプロトタイプの応答性が50mW/mの一定放射照度でソース・ドレイン・バイアスの関数として図10に示されている。
【0127】
最終出力信号のノイズを抑制するための読み出し及び信号抽出は、実施形態1と同じやり方で実施することができる。バンドパス・フィルタリングが適用されると、信号抽出の前後の検出器出力波形は、図4の波形と同一又は同様になる。
【0128】
出力検出信号、すなわち、上記の必要な電気信号を生成した後、実際の光信号を抽出する必要がある。以下の図12では、一実施形態に対して、完全な信号読み出しチェーンが示されており、上で既に開示された制御ユニット、光電子デバイス、及び信号抽出ユニットに加えて、さらなるブロック、特に光信号抽出ユニットが本発明の装置に含まれている。
【0129】
光信号の抽出は、以下のやり方で実施することができる。
【0130】
出力検出信号の時間トレースを記録し、出力検出信号の最大値S及び最小値Sを測定し、その場合、光信号の大きさは、S-Sである。
【0131】
図9に示すように、フィルタリングに高速フーリエ変換(FFT)が使用される場合、光信号の大きさは、周波数f=ω/2πにおける値である。
【0132】
ロック・イン・アンプをフィルタリングに使用する場合、光信号は、ロック・イン・アンプによって直接出力され、すなわち、図12に示す光信号抽出ユニットは、信号抽出ユニットによって実施される。
【0133】
異なる実施形態に対して以下に説明するような相関二重サンプリング型光信号抽出。
【0134】
前記実施形態に相関二重サンプリング型の光信号抽出が実行される場合、光信号は、VBD、2(又はVSD、1、又はVTD、1)の信号から、信号抽出ユニットからのVBD、1(又はVSD、2、又はVTD、2)の信号を減算することによって得られる。時間依存信号が矩形波の場合、時間シーケンスに対する読み出しは、以下のやり方で実施することができる。
1:値VBD、1(及び/又はVSD、2、及び/又はVTD、2)を有する電圧を印加する。
2:出力検出信号の大きさを読み取り、これは値Sであり、Sを記憶する。
3:値VBD、2(及び/又はVSD、1、及び/又はVTD、1)を有する電圧を印加する。
4:出力検出信号の大きさを読み取り、これは、値Sであり、Sを記憶する。
-Sが光信号の大きさを与える。
【0135】
信号S及びSは、例えば、電流又は電圧とすることができる。
【0136】
図13aには、上述した相関二重サンプリング・タイミング・シーケンスであるが、具体的には、実施形態1、2、及び3に対して示されている。デバイス構造に頂部ゲートが実装されていない場合は、VTDシーケンスを無視することができる。
【0137】
図13bでは、上述した相関二重サンプリング・タイミング・シーケンスであるが、具体的には、実施形態4に対して示されている。
【0138】
図14は、光信号抽出方法として上述の相関二重サンプリングを使用して、実施形態1及び2に対して図12の完全な読み出しチェーンを実施する本発明の装置の例示的な実施態様を示す。
【0139】
図14では、出力電気信号が光電子デバイスから信号抽出ユニットに直接送られているが、他の実施形態(図示せず)では、例えば、平衡読み出しスキームが実施される場合は、そうではないことに留意されたい。
【0140】
当業者は、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に変更及び修正を導入することができる。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19