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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
F16J15/34 L
F16J15/34 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020501760
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019005941
(87)【国際公開番号】W WO2019163726
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018029215
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】板谷 壮敏
(72)【発明者】
【氏名】吉野 顯
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-058897(JP,U)
【文献】国際公開第2015/108107(WO,A1)
【文献】実開平02-005654(JP,U)
【文献】特開2007-303328(JP,A)
【文献】特開2017-078451(JP,A)
【文献】特開2011-075102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0006560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 - 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転側密封環と、
ケース内に設けられ前記回転側密封環と摺動する固定側密封環と、
前記固定側密封環を前記回転側密封環へ付勢する付勢部材と、
前記ケースと前記固定側密封環との回転方向の相対移動を規制する係合手段と、を備えるメカニカルシールであって、
前記付勢部材は前記固定側密封環より径方向外側に配設されており、
前記係合手段は、前記ケースの外周部よりも内径側に配置され、
前記ケースは、前記外周部から内径方向に延設され前記係合手段の前記回転密封環側への移動を規制する抜け止め手段を有していることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】
前記係合手段は、該係合手段と前記固定側密封環との回転方向の相対移動を規制する内側係合部、及び、前記内側係合部より外径側において前記係合手段と前記ケースとの回転方向の相対移動を規制する外側係合部を備えることを特徴とする請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記固定側密封環は前記内側係合部より内径側に配設され、前記付勢部材は前記内側係合部より外径側に配設されることを特徴とする請求項2に記載のメカニカルシール。
【請求項4】
前記係合手段は、前記内側係合部より内径側において前記固定側密封環の端面と当接する第1当接部、前記内側係合部より外径側において前記付勢部材と当接する第2当接部、及び、前記第1当接部と前記第2当接部との間に前記固定側密封環の外周部を覆う周壁部を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸に密封状態で取付けられた回転側密封環と、ハウジングに密封状態で取付けられた固定側密封環とが互いに摺動して、ハウジングと軸との間をシールするメカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転側に密封状態で取付けられたメイティングリングと、ハウジングに密封状態で取付けられたシールリングとが互いに摺動して、ハウジングと回転側との間をシールするメカニカルシールであって、ハウジングに固定されるとともにシールリングを収納する環状ケースと、シールリングをメイティングリン側へ押圧するばねと、環状ケースとシールリングとの周方向の相対移動を規制する係合リングと、を備えるメカニカルシールがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、軸に密封状態で取付けられた回転用密封環と、シールハウジングに取付けられた固定用密封環とが互いに摺動して、シールハウジングと軸との間をシールするメカニカルシール装置であって、シールハウジングに固定されるとともに固定用密封環を収納するカートリッジと、固定用密封環とカートリッジの間に配設されるゴム製のベローズと、固定用密封環を回転用密封環側へ押圧するスプリングを備えるメカニカルシールがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平2-5654号公報(第1図)
【文献】特開2005-207520号公報(第6、7頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のメカニカルシールにあっては、シールリングと該シールリングをメイティングリン側へ押圧するばねとが軸方向に一列に配置されているため、メカニカルシールの全長が長くなってしまう。このため、モーターなどの機器の軸封部に適用する場合に、従来シール使用されてきたオイルシールに比べ、機器の軸方向長さが長くなってしまい、軸方向寸法を厳しく制限される機器にメカニカルシールに適用することが困難となってしまう場合がある。
【0006】
また、特許文献2のメカニカルシールにあっては、ゴム製のベローズに所定の長さを設けることで可撓性を向上させ、固定用密封環は回転用密封環の動きに追従してシール性を向上させることができる。しかしながら、ベローズの軸方向長さが長いため、メカニカルシール装置の軸方向寸法が大きくなってしまい、軸方向寸法を厳しく制限される機器にメカニカルシールを適用することが困難となってしまう場合がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、シール性能を損なうことなく、軸方向寸法を短くできるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のメカニカルシールは、
回転側密封環と、
ケース内に設けられ前記回転側密封環と摺動する固定側密封環と、
前記固定側密封環を前記回転側密封環へ付勢する付勢部材と、
前記ケースと前記固定側密封環との回転方向の相対移動を規制する係合手段と、を備えるメカニカルシールであって、
前記付勢部材は前記固定側密封環より径方向外側に配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、径方向のスペースを利用して、付勢部材を固定側密封環より径方向外側に配置することにより、メカニカルシールの軸方向寸法を短くすることができる。
【0009】
本発明のメカニカルシールは、
前記係合手段は、該係合手段と前記固定側密封環との回転方向の相対移動を規制する内側係合部、及び、前記内側係合部より外径側において前記係合手段と前記ケースとの回転方向の相対移動を規制する外側係合部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、固定側密封環と係合手段との回転方向の相対移動を規制する内側係合部と、ケースと係合手段との回転方向の相対移動を規制する外側係合部とを径方向に離間して配置するので、固定側密封環及び付勢部材の配置の自由度が増し、メカニカルシールの軸方向寸法を短くすることができる。
【0010】
本発明のメカニカルシールは、
前記固定側密封環は前記内側係合部より内径側に配設され、前記付勢部材は前記内側係合部より外径側に配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、付勢部材と固定側密封環とを径方向に離間して配置できるので、メカニカルシールの軸方向寸法を短くすることができる。
【0011】
本発明のメカニカルシールは、
前記係合手段は、前記内側係合部より内径側において前記固定側密封環の端面と当接する第1当接部、前記内側係合部より外径側において前記付勢部材と当接する第2当接部、及び、前記第1当接部と前記第2当接部との間に前記固定側密封環の外周部を覆う周壁部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、係合手段は、内側係合部より内径側において固定側密封環の端面と当接する第1当接部と、内側係合部より外径側において付勢部材と当接する第2当接部付勢部材とを備えるので、固定側密封環と付勢部材とを径方向に離間して配置することができ、メカニカルシールの軸方向寸法を短くすることができるとともに、第1当接部と第2当接部との間に周壁部を設けることによって係合手段の断面二次モーメントを大きくできるので、係合手段のたわみを低減して、付勢部材の付勢力を確実に固定側密封環に伝達し、確実に密封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。図1の上半分の断面は係合手段の内側係合部と外側係合部を通らない断面、下半分は係合手段の内側係合部と外側係合部を通る断面を示す。
図2】実施例2におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。図2の上半分の断面は係合手段の内側係合部を通らない断面、下半分は係合手段の内側係合部と外側係合部を通る断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下説明するメカニカルシールは一例であり、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1に係るメカニカルシール1について図1を参照しながら説明する。
【0015】
メカニカルシール1は、摺動面Sの外側(被密封流体側)から内側(漏れ側)に向かって漏れようとする被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものである。メカニカルシール1は、回転軸6と一体的に回転可能な状態に設けられた回転側カートリッジ10と、ハウジング5に非回転状態で固定される固定側カートリッジ20とからなる。
【0016】
回転側カートリッジ10は、回転軸6に固定されたスリーブ12と、スリーブ12内にカップガスケット13を介して固定され、回転軸6と一体に回転する回転側密封環11から主に構成される。
【0017】
一方、固定側カートリッジ20は、ハウジング5に固定されるケース22と、ケース22内にて非回転状態で、かつ、軸方向移動可能な状態で設けられた環状の固定側密封環21と、ケース22と固定側密封環21との間に設けられたシール部材23と、固定側密封環21を軸方向に付勢する付勢部材24と、ケース22と固定側密封環21との回転方向の相対移動を規制する係合手段25から主に構成される。
【0018】
メカニカルシール1は回転側密封環11と固定側密封環21とが互いに摺動面Sにて相対摺動することにより、被密封流体が摺動面Sの外側から内側へ流出するのを防止するものである。なお、回転側密封環11及び固定側密封環21の材質は、耐摩耗性に優れた炭化ケイ素(SiC)及び自己潤滑性に優れたカーボンなどから選定されるが、例えば、両者がSiC、あるいは、いずれか一方がSiCであって他方がカーボンの組合せが可能である。以下、回転側カートリッジ10、固定側カートリッジ20を構成する部材について説明する。
【0019】
図1を参照して、最初に回転側カートリッジ10の各構成について説明する。スリーブ12は、断面椀状をなす環状部材で、回転軸6に圧入固定される内筒部12a、該内筒部12aの一端から径方向外側に延設される壁部12b、及び該壁部12bの外径側端部から内筒部12aが延びる方向に延設される外筒部12cから構成される。スリーブ12の開口部12pは、固定側カートリッジ20側に向くように回転軸6に固定される。
【0020】
図1に示すように、回転側密封環11は、断面略矩形の環状部材からなる。回転側密封環11の前面側には固定側密封環21と対向摺動する摺動面Sが設けられている。なお、回転側密封環11と固定側密封環21の回転中心が厳密に一致していない場合にも対応できるように、摺動面Sの外径を大きく、かつ、内径を小さくして、外径側の密封部余裕代及び内径側の密封部余裕代が形成され、後述する固定側密封環21の摺動面Sの径方向幅より大きく形成されている。また、本実施例においては、回転側密封環11の摺動面Sの径方向幅が固定側密封環21の摺動面Sの径方向幅より大きく形成されているが、本発明はこれに限定されることなく、逆の場合においても適用できることは勿論である。
【0021】
図1に示すように、カップガスケット13は、断面L字状の環状部材であり、ゴム等の弾性体からなる。カップガスケット13は、回転側密封環11の外周部とスリーブ12の外筒部12cとの間で適切な締め代が付与され、回転側密封環11とスリーブ12との密封性と固定力が確保される。また、回転側密封環11の摺動面S、固定側密封環21の摺動面Sの少なくとも一方には表面テクスチャリングが施され、回転側密封環11と固定側密封環21との摺動にともなう摩擦、摩耗が低減されるとともに、密封性を向上させている。これにより、回転側密封環11とスリーブ12は係合等の機械的な回り止めを使用することなく、回転側密封環11とスリーブ12との間に配設されたカップガスケット13が発生する面圧による摩擦固定力のみで回転方向の移動を規制することができるので、構造を簡略化でき、軸方向寸法を低減することができる。
【0022】
そして、回転側密封環11は、スリーブ12の環状空間内に、摺動面Sがスリーブ12の開口部12pを向くように収容され、回転側密封環11の背面側及び外周側をカップガスケット13によってスリーブ12に対して密封、固定され、回転側カートリッジ10が構成される。
【0023】
つぎに、図1に基づいて固定側カートリッジ20を構成するケース22、固定側密封環21、シール部材23、付勢部材24及び係合手段25について説明する。
【0024】
固定側密封環21は、断面略矩形の環状部材からなり、回転側密封環11と対向摺動する摺動面Sを有する。固定側密封環21の摺動面Sは、軸方向に突出した環状部に形成されている。固定側密封環21は、漏れ側から回転側密封環11に向かって付勢部材24によって押圧されることにより、摺動面Sには所定の面圧が付与された状態で回転側密封環11と相対摺動する。
【0025】
係合手段25は、付勢部材24の付勢力を固定側密封環21に伝達する役目、固定側密封環21の回転方向の移動を規制する役目、及び、付勢部材24が脱落しないように保持する役目を有する。固定側密封環21と付勢部材24との間に配置される係合手段25は、固定側密封環21の摺動面Sの反対側端面と当接する第1当接部25a、固定側密封環21より外径側に配置される付勢部材24と当接する第2当接部25c、及び、第1当接部25aの外径側端部と第2当接部25cの内径側端部に連接され、固定側密封環21の外周部を覆う周壁部25bを有する。また、周壁部25bの一部には複数の凹部25d(本発明に係る内側係合部)が周方向に離間して形成され、凹部25dは固定側密封環21の外周部に形成された溝部21bと係合して固定側密封環21の回転方向の相対移動を規制する。さらに、係合手段25の第2当接部25cの外周部には複数の溝部25e(本発明に係る外側係合部)が周方向に離間して形成され、溝部25eは後述するアダプタ27の舌部27dと係合して係合手段25とケース22との回転方向の相対移動が規制される。
【0026】
ケース22は固定側密封環21、係合手段25等を収納するホルダ26、該ホルダ26の外筒部26cに嵌合されるアダプタ27から構成される。ホルダ26は椀状の部材で、ハウジング5にアダプタ27を介して圧入固定される外筒部26c、該外筒部26cの一端から径方向内側に延設される底部26b、及び該底部26bの内径側端部から外筒部26cの延出方向に延設される内筒部26aから主に構成される。また、内筒部26aの外周面にはシール部材23が配設され固定側密封環21とホルダ26との間をシールする。
【0027】
アダプタ27は、ハウジング5に当接するフランジ部27c、フランジ部27cの内径側端部から軸方向に延設され、ホルダ26の外筒部26cに外嵌合される外筒部27b、外筒部27bの端部から径方向内側へ延設される壁部27aから主に構成される。さらに壁部27aにはフランジ部27cに向かって延設される複数の舌部27dが周方向に離間して配設され、舌部27dは係合手段25の溝部25eと係合して係合手段25とケース22との回転方向の相対移動を規制する。
【0028】
付勢部材24は係合手段25の第2当接部25cとケース22の底部26bとの間に配設され、係合手段25を挟んでケース22の開口部22p側に配置された固定側密封環21を係合手段25の第1当接部25aを介して回転側密封環11側へ押し付け、摺動面Sに所定の圧力を付与する。付勢部材24はコイルドウェーブスプリング、コイルスプリング等が用いられる。
【0029】
シール部材23は、ホルダ26の内筒部26aの外周面と固定側密封環21の内周面21aとの間に配設され、固定側密封環21とホルダ26との間をシールする。シール部材23はOリングのほか、シール機能は発揮できるものであれば、断面形状が矩形状、X状等を有する環状に形成されたゴム等の弾性部材であってもよい。
【0030】
ホルダ26の底部26bと係合手段25との間に付勢部材24を配置し、係合手段25を挟んでケース22の開口部22p側にシール部材23によって密封された固定側密封環21を配置し、該ホルダ26の外筒部26cにアダプタ27が嵌合され、固定側カートリッジ20が構成される。また、アダプタ27の壁部27aは付勢部材24によって軸方向に押圧される係合手段25の抜け止めとして機能し、アダプタ27の舌部27dは係合手段25の溝部25eと係合して係合手段25とケース22との回転方向の相対移動を規制し、係合手段25の凹部25dは固定側密封環21の溝部21bと係合して固定側密封環21の回転方向の相対移動を規制する。
【0031】
以上の構成を有するメカニカルシール1は以下の効果を奏する。
【0032】
軸方向寸法に余裕がない場合でも径方向のスペースを利用して、付勢部材24を固定側密封環21の最外周部より径方向外側に配置することにより、メカニカルシール1の軸方向寸法を短くすることができる。
【0033】
固定側密封環21と係合手段25との相対移動を規制する凹部25d(内側係合部)とケース22と係合手段25との回転方向の相対移動を規制する溝部25e(外側係合部)とを径方向に離間して配置するので、固定側密封環21の回り止めの配置及び付勢部材24の配置の自由度が増し、メカニカルシール1の軸方向寸法を短くすることができる。
【0034】
係合手段25は、凹部25d(内側係合部)より内径側において固定側密封環21の端面と当接する第1当接部25aと、凹部25d(内側係合部)より外径側において付勢部材24と当接する第2当接部25cとを径方向に離間して配設することにより、固定側密封環21と、該固定側密封環21を軸方向に付勢する付勢部材24とを径方向に離間して配設することができ、メカニカルシール1の軸方向寸法を短くすることができる。
【0035】
係合手段25は、凹部25d(内側係合部)より内径側において固定側密封環21の端面と当接する第1当接部25a、凹部25d(内側係合部)より外径側において付勢部材24と当接する第2当接部25c、及び、第1当接部25aの外径側端部と第2当接部25cの内径側端部とに接続されるとともに固定側密封環21の外周部を覆う周壁部25bから構成されるので、係合手段25の断面二次モーメントを大きくできる。これにより、固定側密封環21の端面を押圧する第1当接部25aと、付勢部材24によって押圧される第2当接部25cとが径方向に離間することによってモーメントが発生しても、係合手段25のたわみを小さく抑えることができ、付勢部材24の付勢力を確実に固定側密封環21に伝達することができ、確実に密封することができる。
【0036】
係合手段25は、固定側密封環21の摺動面Sの反対側端面に当接する第1当接部25aと、付勢部材24に当接する第2当接部25cと、第1当接部25aと第2当接部25cとの間に固定側密封環21の外周部を覆う周壁部25bと、を備えることで、ケース22の底部26bと係合手段25の第2当接部25cとの間に配置される付勢部材24と、係合手段25を挟んでケース22の開口部22p側に配置される固定側密封環21とを径方向に離間して配置できるので、メカニカルシール1の軸方向寸法を短くすることができる。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に係るメカニカルシール2につき、図2を参照して説明する。実施例2のメカニカルシール2の回転側カートリッジ10は実施例1と同じであるが、固定側カートリッジ30が実施例1と相違する。具体的には、実施例1において、シール部材23、固定側密封環21、付勢部材24及び係合手段25を収納するケース22は、ホルダ26とアダプタ27の2つの部品から構成されていたが、実施例2はアダプタを使用しないでケース28が構成される点で相違する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
固定側密封環21を収納するケース28は椀状の部材で、ハウジング5に圧入固定される外筒部28c、該外筒部28cの一端から径方向内側に延設される底部28b、及び該底部28bの内径側端部から外筒部28cの延出方向に延設される内筒部28aから主に構成される。また、内筒部28aの外周面にはシール部材23が配設され固定側密封環21とケース28との間をシールする。
【0039】
ケース28の内部には複数の爪部29が周方向に離間して設けられ、該爪部29は係合手段25の溝部25eと係合して係合手段25とケース28との回転方向の相対移動が規制される。
【0040】
また、係合手段25と固定側密封環21との回転方向の相対移動を規制する構成は実施例1と同じである。すなわち、係合手段25の周壁部25bの一部には複数の凹部25d(本発明に係る内側係合部)が周方向に離間して形成され、該凹部25dは固定側密封環21の外周部に形成された溝部21bと係合して固定側密封環21の回転方向の相対移動を規制する。
【0041】
ケース28の底部28bと係合手段25の第2当接部25cとの間に付勢部材24を配置し、係合手段25を挟んでケース28の開口部28p側にシール部材23によって密封された固定側密封環21を配置し、該ケース28の外周端部28dを全周に亘って内径側へ折り曲げ、係合手段25の軸方向の抜け止めを行い、固定側カートリッジ30が構成される。
【0042】
実施例2のメカニカルシール2は、実施例1のメカニカルシール1が奏する効果に加え、以下の効果を発揮する。
【0043】
メカニカルシール2のケース28は同一寸法を有する円筒面に形成されるので、ハウジング5に対し、固定側カートリッジ30を右方向又は左方向から挿入して組み立てることができるので、製造上の自由度が向上する。
【0044】
メカニカルシール2は、実施例1のメカニカルシール1のようにアダプタ27を使用しないので、部品点数を減らすことができ、軸方向寸法を短縮できる。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施例では、回転側密封環11とスリーブ12は係合等の機械的な回り止めを使用することなく、回転側密封環11とスリーブ12の内筒部12aとの締め代による摩擦固定力のみで回転方向の移動を規制していたが、これにかぎらない。たとえば、回転側密封環11の外周面、スリーブ12の内周面を互いに嵌合可能な多角形に形成して、回り止めを構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 メカニカルシール
2 メカニカルシール
5 ハウジング
6 回転軸
10 回転側カートリッジ
11 回転側密封環
12 スリーブ
13 カップガスケット
20 固定側カートリッジ
21 固定側密封環
22 ケース
23 シール部材
24 付勢部材
25 係合手段
25a 第1当接部
25b 周壁部
25c 第2当接部
25d 凹部(内側係合部)
25e 溝部(外側係合部)
26 ホルダ
27 アダプタ
28 ケース
30 固定側カートリッジ
S 摺動面
図1
図2