(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】膨張可能な医療用バルーン
(51)【国際特許分類】
A61B 5/07 20060101AFI20221108BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20221108BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B5/07
A61B5/1473
A61B5/00 N
(21)【出願番号】P 2020505456
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 FR2018051847
(87)【国際公開番号】W WO2019025694
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518131285
【氏名又は名称】ディアノシク
【氏名又は名称原語表記】DIANOSIC
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】マルク、オーギュスタン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、バスティード
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0051449(US,A1)
【文献】特開2007-082954(JP,A)
【文献】特表2017-512604(JP,A)
【文献】特開2006-102361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0161851(US,A1)
【文献】国際公開第2016/065082(WO,A1)
【文献】特表2012-505041(JP,A)
【文献】国際公開第2016/179563(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/064437(WO,A1)
【文献】特開2011-115614(JP,A)
【文献】特表2009-528085(JP,A)
【文献】特開2009-291476(JP,A)
【文献】特開2005-028189(JP,A)
【文献】特開2002-011101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0010709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A61B 5/00- 5/01
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物の体の腔所に収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、腔所を圧迫することを意図した、膨張可能な医療用バルーン(10)であって、
- その壁部(14)が柔軟な膨張可能材料で作製されているバルーン本体(12)と、
- 前記バルーン本体(12)内に流体を導入して、圧力下で膨張させるための膨張開口部(22)と、
- 前記腔所の生体組織および/またはこの腔所内に存在する生体液の、生物学的量を測定するための少なくとも1つの
測定装置(31)と、
を含んだ膨張可能な医療用バルーンにおいて、前記測定装置(31)は、
- 前記バルーン本体(12)の壁部(14)の外面(44)に取り付けられ、測定された生物学的量を検知する電気測定信号を供給するように設計された外部センサ(42)と、
- 前記バルーン本体(12)の内部に位置し、電気測定信号を処理して、前記生物学的量の少なくとも1つの測定値を提供するように設計された処理装置(52)を含む内部モジュール(48)と、
を含
み、
前記外部センサ(42)は、前記バルーン本体(12)の壁部(14)を通して形成された道管(62)を通過する1つまたは複数の電気ワイヤ(60)によって、電気測定信号を前記内部モジュール(48)に送信する、ことを特徴とする膨張可能な医療用バルーン
(10)。
【請求項2】
密封材料(64)が、前記道管(62)を塞いでいる、ことを特徴とする請求項
1に記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項3】
前記密封材料(
64)は
、接着剤を含む、ことを特徴とする請求項
2に記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項4】
人間または動物の体の腔所に収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、腔所を圧迫することを意図した、膨張可能な医療用バルーン(10)であって、
- その壁部(14)が柔軟な膨張可能材料で作製されているバルーン本体(12)と、
- 前記バルーン本体(12)内に流体を導入して、圧力下で膨張させるための膨張開口部(22)と、
- 前記腔所の生体組織および/またはこの腔所内に存在する生体液の、生物学的量を測定するための少なくとも1つの測定装置(31)と、
を含んだ膨張可能な医療用バルーンにおいて、前記測定装置(31)は、
- 前記バルーン本体(12)の壁部(14)の外面(44)に取り付けられ、測定された生物学的量を検知する電気測定信号を供給するように設計された外部センサ(42)と、
- 前記バルーン本体(12)の内部に位置し、電気測定信号を処理して、前記生物学的量の少なくとも1つの測定値を提供するように設計された処理装置(52)を含む内部モジュール(48)と、
を含み、
前記内部モジュール(48)は、前記バルーン本体(12)の壁部(14)の内面(50)に取り付けられる、ことを特徴とす
る膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項5】
密封材料(
64)は、前記内部モジュール(48)を、前記バルーン本体(12)の壁部(14)の内面(50)に取り付ける接着剤を含む、ことを特徴とする
、請求
項4に記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項6】
前記内部モジュール(48)は、前記生物学的量の測定値を、前記膨張可能なバルーン(10)が挿入された人間または動物の体の外部に位置する装置に伝送するように設計された無線通信装置(54)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項7】
前記内部モジュール(48)は、前記生物学的量の測定値を記憶するためのメモリ(56)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれかに記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項8】
前記外部センサ(42)は、前記バルーン本体(12)の壁部(14)の外面(44)に、
前記外面(44)に印刷されることにより、又は、接着剤により、取り付けられている、ことを特徴とする請求項1乃至
2及び請求項4のいずれかに記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【請求項9】
前記バルーン本体(12)は、膨張された際に、人間または動物の体の鼻腔(32)の内部形状に従うように事前形成されている、ことを特徴とする、耳鼻咽喉科または脳神経外科で使用するための、請求項1乃至
8のいずれかに記載の膨張可能な医療用バルーン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間または動物の体の腔所に収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、この腔所の壁部を圧迫することを意図した、膨張可能な医療用バルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、耳鼻咽喉科において、この種のバルーンは、患者の鼻腔に挿入され、次いで、正しい位置に配置されると、空気、ゲル化した水または生理血清などの流体を用いて膨張される。この種のバルーンの一般的な用途は、鼻腔の内壁を圧迫することによる、出血の治療である。
【0003】
特に、本発明は、人間または動物の体の腔所に収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、この腔所を圧迫することを意図した、医療用のバルーンに適用され、このバルーンは、
- その壁部が柔軟な膨張可能材料で作製されているバルーン本体と、
- バルーン本体内に流体を導入して、圧力下で膨張させるための膨張開口部と、
- 腔所の生体組織および/またはこの腔所内に存在する生体液の、生物学的量を測定するための少なくとも1つの装置と、
を含む。
【0004】
この種のバルーンは、例えば、WO2016/067153A1の番号で公開されているPCT国際特許出願に記載されている。この刊行物では、測定装置は、SpO2とも呼ばれる“パルス”酸素飽和度を測定することを意図している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な方法では、バルーン本体の外面に測定装置を配置することは、困難となり得る。実際に、腔所内の流体の流れを妨げないように、および/または腔所の生体組織を刺激しないように、測定装置は、突出を可能な限り小さくしなければならない。しかし、例えばCN104055525Aの番号で公開されている中国特許出願に記載されているように、筐体を設けて、腔所の生物媒質の攻撃から測定装置の電子部品を保護する必要がある。この筐体の存在は、測定装置のサイズを大きくし、その空間要件を増大させるため、突出の小さい測定装置を作ることは困難である。
【0006】
よって、上述した問題および制約の少なくともいくつかを無くすことを可能にする、膨張可能な医療用バルーンを提供することが、望まれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、人間または動物の体の腔所に収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、腔所を圧迫することを意図した、医療用のバルーンが提案され、この医療用のバルーンは、
- その壁部が柔軟な膨張可能材料で作製されているバルーン本体と、
- バルーン本体内に流体を導入して、圧力下で膨張させるための膨張開口部と、
- 腔所の生体組織および/またはこの腔所内に存在する生体液の、生物学的量を測定するための少なくとも1つの装置と、
を含んでおり、測定装置は、
- バルーン本体の壁部の外面に取り付けられ、測定された生物学的量を検知する電気測定信号を供給するように設計された外部センサと、
- バルーン本体の内部に位置し、電気測定信号を処理して、生物学的量の少なくとも1つの測定値を提供するように設計された処理装置を含む内部モジュールと、を含むことを特徴とする。
【0008】
これにより、外部センサのみが、バルーン本体の外面から突出しており、よって、測定装置は、少ない突出を有する。さらに、内部モジュール用に保護筐体を設けることは、もはや必要ではなく、これは、内部モジュールが非攻撃性環境、通常は空気、ゲル化した水または生理血清内にあるためである。
【0009】
任意で、外部センサは、バルーン本体の壁部を通して形成された1つまたは複数の道管を通過する1つまたは複数の電気ワイヤによって、電気測定信号を内部モジュールに送信する。
【0010】
また、任意で、密封材料が、道管を塞いでいる。
【0011】
また、任意で、密封材料は、センサを、バルーン本体の壁部の外面に取り付ける接着剤を含む。
【0012】
また、任意で、内部モジュールは、バルーン本体の壁部の内面に取り付けられている。
【0013】
また、任意で、密封材料は、内部モジュールを、バルーン本体の壁部の内面に取り付ける接着剤を含む。
【0014】
また、任意で、内部モジュールは、生物学的量の測定値を、膨張可能なバルーンが挿入された人間または動物の体の外部に位置する装置に伝送するように設計された無線通信装置をさらに含む。
【0015】
また、任意で、内部モジュールは、生物学的量の測定値を記憶するためのメモリをさらに含む。
【0016】
また、任意で、外部センサは、バルーン本体の壁部の外面に印刷されている。
【0017】
また、任意で、膨張可能な医療用バルーンは、耳鼻咽喉科または脳神経外科で使用するためのものであり、バルーン本体は、膨張された際に、人間または動物の体の鼻腔の内部形状に従うように事前形成されている。
【0018】
本発明は、単なる例として与えられ、添付の図面を参照してなされる以下の説明を用いて、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る、膨張可能な医療用バルーンの概略構造を模式的に示す図。
【
図2】
図1のバルーンのための例示的な形状を示す図。
【
図3】膨張させる前の、鼻腔内の
図1のバルーンの配置を示す図。
【
図4】膨張させた後の、鼻腔内の
図1のバルーンの配置を示す図。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る、膨張させる前の、膨張可能な医療用バルーンの概略構造を模式的に示す図。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る、膨張させた後の、膨張可能な医療用バルーンの概略構造を模式的に示す図。
【
図7】膨張可能なバルーンの壁部に取り付けられた、生物学的量を測定するための装置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に模式的に示される膨張可能な医療用バルーン10は、その壁部14が柔軟な膨張可能材料、例えばシリコーン、またはこれらの特性を有する他の任意の同等の材料で作製されているバルーン本体12を含む。バルーンは、人間または動物の体の腔所、例えば鼻腔に、収縮状態で挿入され、次いで、この腔所内で膨張されて、腔所を圧迫することを意図している。バルーンは、概して、細長い形状をしており、近位の膨張端部16と、腔所の後方に位置する、遠位の位置決め端部18とを有する。壁部14の外部は、好適には、易滑性の生成物で被覆され、腔所の生体組織に対して攻撃性を持たない。
【0021】
近位端部16は、第1の開口部と、この第1の開口部に導かれる膨張エンドピース22とを有する剛性支持部20を含む。このエンドピース22は、注射器を挿入して、圧力下で空気、ゲル化した水、生理血清などの流体、あるいは他の任意の適切な流体を用いて、バルーン本体12を膨張させることを容易にする。エンドピースには、注射器または膨張装置を取り外す際に、どのような漏れもなしに流体の注入または吸引を可能にする、弁または膨張のための他の適切なシステムを設けることができる。
【0022】
さらに、剛性支持部20は、任意で、バルーン本体12内に内視鏡を挿入することを意図した第2の開口部24を有する。この第2の開口部24は、例えば、バルーン本体12内に導入された流体のどのような漏れも防ぎつつ、内視鏡を挿入することを可能にする弁または任意のシステムの形態をとる。
【0023】
この場合、バルーン10内の内視鏡による、より良好な環境の観察のために、流体を可能な限り透明または半透明にすることが好適であり、あるいはさらに必要である。
【0024】
また、この場合、バルーン10は、バルーン本体12内で延び、かつバルーン本体12の壁部14と一体ではない閉じた遠位端部28を有する、細長いソックス26をさらに含んでもよい。細長いソックスは、内部で第2の開口部24が開口する、内視鏡の形状に対して相補的な形状の細長いキャップであると理解されるべきである。ソックスは、内視鏡を、バルーン本体12内にある流体と接触させずに挿入することを可能にする。ソックスは、好適には、任意で弾性の柔軟な材料、例えばシリコーンまたは同じ性質の任意の材料で形成されている。
【0025】
バルーン本体12の壁部14は、壁部14の残り部分よりも高い剛性の、ソールと呼ばれる細長い部分30を局所的に有し、このソール30は、近位端部16から遠位端部18まで延びる。ソールは、バルーン本体12の基部を形成し、バルーンが収縮状態であっても、バルーン10の所望の腔所への挿入とメンテナンスを容易にする。さらに、ソールは、バルーン10の膨張の間に、事前応力を加えた方向を与えることにより、ガイド機能を実行する。
【0026】
実際には、ソール30は、所望の剛性機能を確保する任意の材料からなる、バルーン本体12の壁部14に対して加えられる追加部とすることができる。この材料は、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエチレンポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エチレンポリテレフタレートなどのポリマーから、あるいはポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから、非限定的なやり方で選択することができる。あるいは、この材料は、バルーン本体12の壁部14の残りの部分と一体に形成されてもよいが、そうした場合、この材料は、その壁部14の残りの部分よりも実質的に大きい厚さを有し、その剛性を高める。
【0027】
さらに、膨張可能なバルーン10は、鼻腔の生体組織および/または鼻腔内に存在する生体液の少なくとも1つの生物学的量を元の位置で測定するための、1つまたは複数の装置31を含む。生物学的量は、例えば、ヘモグロビンレベル、タンパク質レベル、グルコースレベル、乳酸レベルまたはラクテートレベルを含む。
【0028】
バルーン10は、バルーン10の内圧を測定するための1つまたは複数の装置33を、さらに含んでもよい。
【0029】
図2に示すように、バルーン10は、耳鼻咽喉科または脳神経外科で使用するために設計することができる。この場合、バルーン本体12の壁部14は、膨張した形態で人間または動物の体の鼻腔の内部形状に適合するように、事前に形成することができる。
【0030】
図3は、収縮した形態にある、鼻腔32内の
図1および
図2のバルーン10の位置決めを示している。バルーン本体12の壁部14の残りの部分よりも高い剛性のソール30によって、バルーン10は、鼻腔32に容易に挿入される。一旦位置決めされると、注射器34を用いて、流体が、エンドピース22を通してバルーン本体12内に導入される。このように進めることにより、バルーン本体内部の圧力は、容易に制御される。
【0031】
これにより、
図4に示される結果が得られるまで、バルーン10を膨張させることが可能となり、この膨張に従って、バルーン本体12は、鼻腔32の壁部の形状に適合することにより、鼻腔32の内部空間全体を占める。
【0032】
図5の断面図に示される、変更のない要素には上記と同じ参照符号を使用する別の実施形態によれば、バルーン10は、エンドピース22の延長部で外向きに延びる、取り外し可能な剛性挿入ロッド36をさらに含む。この剛性ロッド36は、腔所内へのバルーン10の設置を促進することを可能にし、この設置が正しく実行されると、壊すかまたは除去することができる。この操作の前または後に、注射器34を用いて、バルーン10を膨張させることができる。
【0033】
この別の実施形態のバルーン10は、ソール30に沿って、またはその内部に、ソール30に対する補強材として延びる、取り外し可能な剛性の設置用ワイヤ38をさらに含む。これは、例えばニッケルチタン合金製であり、この材料は、形状記憶と弾性の興味深い特性を有している。
【0034】
最後に、この他の実施形態のバルーン10は、ソール30の延長部の遠位端部18に、補強材40を含む。この遠位補強材40は、ソール30と同様に、バルーン本体12の壁部14の残りの部分よりも高い剛性を有し、かつ、例えばソール30に対して90°に近い角度に成形され、ソール30と協働して、膨張中のバルーン10のどのような伸びも防止する。具体的には、所望の剛性機能を確保する任意の材料からなる、ソール30の遠位端部にて追加された追加部からなることができる。この材料は、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエチレンポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エチレンポリテレフタレートなどのポリマーから、またはポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから、非限定的なやり方で選択することができる。
【0035】
この別の実施形態のバルーン10は、
図5では、収縮した形態で示され、
図6では、剛性ロッド36および取り外し可能な剛性ワイヤ38が除去された、膨張した形態で示されている。
【0036】
図7を参照すると、測定装置31は、バルーン12が腔所内で膨張した際に、鼻腔の生体組織および/または鼻腔内に存在する生体液と接触するために、バルーン本体12の壁部14の外面44に取り付けられた外部センサ42を、最初に含む。外部センサ42は、自発的に、または電気バイアスに応答して、測定された生物学的量を検知する電気測定信号を提供するように構成されている。電気測定信号は、例えば、電流または電圧などのアナログ信号である。
【0037】
例えば、測定された生物学的量がグルコースレベルである場合、外部センサ42は、2つの電極を有することができる。よって、電圧の形態の電気バイアスが外部センサ42に印加されると、外部センサは、電極間に存在する生体組織および/または生体液内のグルコースレベルに応じた、電流の形態の電気信号を提供する。
【0038】
測定装置31が、拡散反射分光法の原理に従って動作する別の例では、外部センサ42は、組織の塊と相互作用することを意図した電磁放射(例えば光)の放出器と、組織の塊と相互作用した電磁放射の少なくとも1つの受容体と、を含んでもよい。受容体は、1つまたは複数のフォトダイオードを含んでもよいが、これに限定されない。拡散反射分光装置の例は、例えば、US2011/0105865A1の番号で公開されている米国特許出願に記載されている。
【0039】
外部センサ42は、好ましくは0.5mm未満、より好ましくは0.3mm未満の厚さを有し、バルーン本体12の壁部14と可能な限り同一平面となっている。例えば、外部センサ42は、バルーン本体12の壁部14の外面44に印刷されたセンサとすることができる。この場合、センサは、一般的に、0.1~0.3mmの厚さを有する。この種のセンサは、バルーン本体12の変形に十分に耐えるという利点を、さらに有する。
【0040】
好ましくは、バルーン本体12の壁部14は、外部センサ42において、壁部14の残りの部分よりも高剛性の、補強材と呼ばれる部分47を局所的に有する。実際には、ソール30と同様に、補強材47は、所望の剛性機能を確保する任意の材料からなる、バルーン本体12の壁部14に対して追加された追加部であってもよい。あるいは、
図7に示されるように、補強材47は、バルーン本体12の壁部14の残りの部分と一体に作製することができるが、この壁部14の残りの部分よりも実質的に厚い厚さを持たせて、その剛性を高めている。補強材47は、バルーン本体12の過度の変形、したがってバルーン10の膨張中の外部センサ42の劣化を、局所的に回避することを可能にする。
【0041】
測定装置31は、バルーン本体12に配置された内部モジュール48をさらに含み、鼻腔に存在する生体液から保護される。内部モジュール48は、例えば、バルーン本体12の壁部14の内面50に取り付けられている。
【0042】
内部モジュール48は、電気測定信号を受信および処理して、好ましくはデジタル形式で、生物学的量の連続測定値を提供することを意図した処理装置52を含む。処理装置52は、例えばプリント回路基板を含む。外部センサ42が、電気バイアスに応じて電気測定信号を提供するように構成されている場合、処理装置52は、このバイアスを供給するように構成することができる。
【0043】
内部モジュール48は、バルーン10が挿入されている人間または動物の体の外部に配置された外部装置、好ましくは計算装置に、測定値を伝送するように構成されている無線通信装置54をさらに含む。計算装置は、例えば、スマートフォン、タブレットまたはデスクトップコンピュータである。
【0044】
無線通信装置54の代わりに、またはこれに加えて、内部モジュール48は、例えばバルーン10を腔所から取り出した後に測定値を読むための、測定値を記憶するためのメモリ56を、さらに含むことができる。
【0045】
電子モジュール48は、その要素と、特に処理装置52、無線通信装置54および/またはメモリ56に電力供給するための、化学電池などの電源58をさらに含むことができる。
【0046】
外部センサ42は、内部モジュール48に対して、バルーン本体12の壁部14を通して形成された1つまたは複数の導管62を通過する電気ワイヤ60によって、電気測定信号を送信する。
【0047】
バルーン12の内部および外部の間の密封は、導管62を塞ぐ架橋ゲルなどの密封材料64によって確保される。密封材料64は、その密封機能に加えて、壁部の外面44へのセンサ42の取り付けおよび/または壁部14の内面50への内部モジュール48の取り付けを可能にする、例えば接着剤を含む。
【0048】
さらに、1つまたは複数の放射線不透過性マーカー66を、バルーン本体12の壁部14、例えばその外面44に設けることができる。放射線不透過性マーカー66は、例えば、各外部センサ42の近傍、例えば1ミリメートル以内に設けられる。よって、バルーン本体12および/または外部センサ42の位置を見て操作し、それらが適切に配置され、それらの機能を正しく実行することを確実にすることが可能である。外部センサ42が、撮像(MRI、スキャナ、放射線検査、超音波など)によって直接見える場合、放射線不透過性マーカー66を省くことが可能である。
【0049】
バルーン本体12上の測定装置31の存在は、よって、さまざまな生物学的パラメータの遠隔監視を可能にし、その情報は、耳鼻咽喉科、脳神経外科または他の医療専門分野で有用である。
【0050】
専用のソフトウェアをプログラミングして、測定値が収まるべき標準間隔に対する、測定値のずれを検出することができる。ずれが検出された場合、自動警告を、医療従事者に対して(例えば電子メールまたはショートテレフォンメッセージ(SMS)により)送信することができ、これにより医療従事者は、例えば、インプラント10が取り付けられた患者に警告を行う。代替的または追加的に、自動警告を、患者に、あるいは、医療従事者および/または患者の呼び出しを担当するコール処理センターに、直接送信することができる。測定値が得られると、医療従事者は、それらを用いて、患者が退院した後の潜在的に予期せぬ出来事に対応したり、診断を実行または改善したりすることができ、これにより、患者の治療を個人化することを可能にする。さらに、取得した測定値を用いて、記録または他の任意の種類のデータベースを構築したり、提供したりすることができる。
【0051】
上述したような膨張可能な医療用バルーンは、その存在が生体液の流れを妨げたり、生体組織を損傷したりすることなしに、生物学的量の測定値を得ることを可能にすることが明らかである。
【0052】
その簡素な構造によって、設計および製造がさらに容易であり、よって、一度使用した後に、捨てることができる。
【0053】
膨張可能な医療用バルーンは、特に、耳鼻咽喉科、頭頸部手術、または脳神経外科の医療手術のために適合されている。特に整形外科または消化器外科の、他の外科手術にも用いることができる。手術に関して言及せずに、例えば一般的に診察中に発生する出血などの、全ての種類の鼻出血または鼻窩の出血を治療するための、簡素な圧迫装置として使用することもできる。
【0054】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されないことに留意されたい。
【0055】
特に、ソール30および遠位補強40の形状は、全ての所望の用途に適合することができる。したがって、これらは、潜在的に非常に多様である。
【0056】
より一般的には、当業者には、開示されたばかりの教示を考慮して、上述の実施形態に様々な修正を加え得ることが明らかとなる。添付の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書に記載の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、特許請求の範囲がその定式化によりカバーすることを目的とし、かつ、その予測が、開示された教示の実施に当業者の一般的な知識を適用することにより当業者の手に届く範囲内にある、すべての同等物を含むと解釈されるべきである。