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特許7171704耐火性製品を製造するためのバッチ、耐火性製品の製造法、耐火性製品および合成原料の使用法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】耐火性製品を製造するためのバッチ、耐火性製品の製造法、耐火性製品および合成原料の使用法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20221108BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20221108BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20221108BHJP
   C04B 35/043 20060101ALI20221108BHJP
   C04B 35/76 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C04B35/66
C04B35/80 300
C09K21/02
C04B35/043
C04B35/76
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020511749
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068766
(87)【国際公開番号】W WO2019068380
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】17194673.4
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503069193
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・マヨセノヴィック
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ガイト
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ニリカ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ニーフォル
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171171(JP,A)
【文献】特開2000-351678(JP,A)
【文献】特開2000-233966(JP,A)
【文献】特開平08-157270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267812(US,A1)
【文献】特表2017-525639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、すなわち
1.1 少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る基礎成分と、
1.2 少なくとも1つの合成原料であって、以下の特徴すなわち、
1.2.1 前記合成原料は物体から成り、該物体は以下の特徴すなわち、
1.2.1.1 前記物体は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成り、
1.2.1.2 前記物体は、粘土鉱物の割合が、前記物体の総質量に対して10質量%より少ないという特徴を備え、
1.2.2 前記物体は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(1から5):(3から10)である、
という特徴を有する合成原料と
を含む、焼結された耐火性製品を製造するためのバッチであって、
1.3 バッチが、遊離炭素を有さないバッチの総質量に対して、1質量%より少ない割合の遊離炭素を備える、バッチ
【請求項2】
前記物体は、以下の耐火性のセラミック原料、すなわち、マグネシア、スピネル、コランダム、ジルコニア、フォルステライト、クロマイト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウムのうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含む、請求項1に記載のバッチ。
【請求項3】
前記物体は、長さが1mmから30mmの範囲である、請求項1あるいは2に記載のバッチ。
【請求項4】
前記物体は、前記バッチの総容量に対して、0.5から30容量%の範囲の容量で前記バッチ内に存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のバッチ。
【請求項5】
前記基礎成分は、バッチの総容量に対して、70から99.5容量%の範囲の容量割合でバッチ内に存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のバッチ。
【請求項6】
前記基礎成分は、以下の耐火性のセラミック原料、すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル、コランダム、フォルステライト、クロマイトあるいはムライトのうちの少なくとも1つを含む、請求項1からのいずれか1項に記載のバッチ。
【請求項7】
セラミック燃焼によって前記バッチから製造される耐火性製品において、一方の前記基礎成分から形成される製品領域と、他方の前記物体から形成される製品領域とが、それらのそれぞれの構造に関して異なるように、前記基礎成分と前記物体とが前記バッチ内に存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のバッチ。
【請求項8】
以下の特徴すなわち、
9.1 請求項1からのいずれか1項に記載のバッチを利用できるようにするという特徴と、
9.2 前記バッチを燃焼させて焼結された耐火性製品にするという特徴と
を含む、焼結された耐火性製品の製造法。
【請求項9】
以下の特徴すなわち、
10.1 少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに結合された粒子から成る第1の領域と、
10.2 第2の領域であって、該第2の領域は以下の特徴すなわち、
10.2.1 前記第2の領域は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成り、
10.2.2 前記第2の領域は、粘土鉱物の割合が、前記第2の領域の総質量に対して10質量%より少ないという特徴と、
10.2.3 前記第2の領域は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(1から5):(3から10)であるという特徴とを備える第2の領域と、
10.3 前記第2の領域は、前記第1の領域において無秩序に設けられているという特徴と、
10.4 一方の前記第1の領域と他方の前記第2の領域は、それらのそれぞれの構造に関して異なっているという特徴と
を含む、焼結された耐火性製品。
【請求項10】
前記第2の領域は、以下の耐火性のセラミック原料、すなわち、マグネシア、スピネル、コランダム、ジルコニア、フォルステライト、クロマイト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウムのうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含む、請求項に記載の製品。
【請求項11】
前記第2の領域は、長さが1mmから30mmの範囲である、請求項あるいは10に記載の製品。
【請求項12】
前記第2の領域は、前記製品の総容量に対して、0.5から30容量%の範囲の容量割合で前記製品内に存在する、請求項から11のいずれか1項に記載の製品。
【請求項13】
前記第1の領域は、前記製品の総容量に対して、70から99.5容量%の範囲の容量割合で前記製品内に存在する、請求項から12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項14】
前記第1の領域は、以下の耐火性のセラミック原料、すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル、コランダム、フォルステライト、クロマイトあるいはムライトのうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含む、請求項から13のいずれか1項に記載の製品。
【請求項15】
以下の特徴すなわち、
17.1 合成原料は物体から成り、該物体は以下の特徴すなわち、
17.1.1 前記物体は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成り、
17.1.2 前記物体は、粘土鉱物の割合が、前記物体の総質量に対して10質量%より少なく、
17.1.3 前記物体は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(1から5):(3から10)である、
という特徴を備え、
17.2 前記合成原料は、焼結された耐火性製品を製造するためのバッチ内で、該バッチから製造可能な耐火性のセラミック製品の弾性モジュールを減少させるために使用されるという特徴
を有する合成原料の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性製品を製造するためのバッチと、耐火性製品の製造法と、耐火性製品と、合成原料の使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主旨における「耐火性製品」という用語は、耐火性のセラミック(つまり焼結された)製品も、炭素結合を有する特にそれぞれ加工温度が600℃以上の耐火性製品、好ましくはDIN51060:2000-6に従った耐火性材料つまり耐火度がSK17より大きい材料も意味している。耐火度の算出は、特にDIN EN993-12:1997-06に従って行われ得る。
【0003】
「バッチ」と呼ばれるのは、周知のように、温度処理によってつまりたとえば焼結された耐火性製品を製造するためのセラミック燃焼によって耐火性製品を製造可能な、1つあるいは複数の成分から成る組成物もしくは原料である。
【0004】
あらゆるセラミック製品のように、耐火性製品特に耐火性のセラミック製品も、通常は脆弱性が高い。しかしながら耐火性製品の高い脆弱性は、製品の耐火性質を悪化させかねず、特にたとえば製品の耐熱衝撃性を低下させかねない。それゆえ従来技術からは、耐火性製品の脆弱性を減少させてそれによってその耐熱衝撃性を改善させるための技術が知られている。それでたとえば知られているのは、製品のマトリックス内に包含されるいわゆる可塑剤によって耐火性製品の脆弱性を減少させることと、それによって製品の耐熱衝撃性を改善させることとである。この可塑剤の効能は、可塑剤が耐火性製品の基礎成分とは別の熱膨張挙動を備えるので、製品のセラミック燃焼時とそれに続く冷却時に、可塑剤と基礎成分との間で張力が生じることに起因する。これによって製品にミクロ亀裂が形成され、このミクロ亀裂は、製品に機械的な負荷がかかった場合に、破壊エネルギーの一部を相殺し、それによって製品の脆弱性による破壊の危険を減少させることができる。しかしながら、既知の可塑剤を用いることの欠点は、耐火性製品の脆弱性をこれによってしばしば望ましい規模で減少させることができないということである。さらに、特に可塑剤の所与の熱膨張挙動に基づいて、一方の基礎成分と他方の可塑剤との間の熱膨張挙動の差が定められており、それゆえミクロ亀裂に必要な可塑剤と基礎成分との間の張力が、しばしば望ましい規模で調節できないということが、欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脆弱性が低いもしくは耐熱衝撃性が高い耐火性製品を製造可能なバッチを利用できるようにするという課題を基礎としている。さらに本発明は、バッチから製造可能な耐火性製品の脆弱性を減少させ、もしくはその耐熱衝撃性を高めることができる可塑剤を備えるバッチを利用できるようにするという課題を基礎としている。さらに本発明は、バッチから製造可能な耐火性製品の脆弱性を望ましい規模で減少させ、もしくはその耐熱衝撃性を望ましい規模で高めることができる可塑剤を備えるバッチを利用できるようにするという課題を基礎としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のさらなる課題は、脆弱性が低いもしくは耐熱衝撃性が高い耐火性製品を利用できるようにすることにある。
【0007】
本発明のさらなる課題は、そのような耐火性製品の製造法を利用できるようにすることにある。
【0008】
本発明に従えば本課題は、
以下の成分、すなわち
少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る基礎成分と、
少なくとも1つの合成原料であって、以下の特徴すなわち、
合成原料は物体から成り、物体は以下の特徴すなわち、
物体は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成り、物体は、粘土鉱物の割合が、物体の総質量に対して10質量%より少ないという特徴を備え、
物体は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(≧1および≦長さ):(≧3)である、
という特徴を有する合成原料とを含む、耐火性製品を製造するためのバッチを利用できるようにすることによって、解決される。
【0009】
意外にも本発明に従って判明したのは、耐火性製品内で互いに焼結された粒子から成る物体が、バッチから製造される耐火性製品での脆弱性を著しく減少させることができる可塑剤として作用するということである。耐火性製品の脆弱性のこのような減少もしくはその耐熱衝撃性の改善は特に、製品の弾性モジュール(Eモジュール)の著しい減少において示される。それで、焼結体から成る本発明に従った合成原料を含むバッチから製造されている耐火性製品は、対応するバッチから製造されてはいるが焼結体から成る合成原料を有さずに製造されている耐火性製品と比較して、Eモジュールが著しく減少している。
【0010】
可塑剤としての物体の正確な効能は、まだ最終的に解明されていない。発明者の推測では、物体の個別の幾何学形状と組成とに基づいて、その物体を含むバッチの燃焼時に、物体の周りに局所的な張力フィールドが構成され、その張力フィールドが、その際に製造される耐火性製品にミクロ亀裂を生じさせて、それによって製品の脆弱性が減少する。
【0011】
このような背景で、本発明に係るバッチのさらなる本質的な利点がもたらされる。それで、物体によって耐火性製品に形成されるミクロ亀裂の規模を、物体の構造と幾何学形状とを個別に調節することによって調節できる。それによって、通常は予め定められた熱膨張挙動を有する材質から可塑剤が形成されている従来技術とは異なって、本発明に係るバッチから製造される製品において、可塑剤である物体の作用の規模を、物体の幾何学形状および/あるいは組成によって個別に調節できる。
【0012】
しかしながら本発明に従えば、焼結体を含むバッチから製造される耐火性製品の耐火性質が悪化しかねないこと、特にそのような製品の高耐火性が悪化しかねないことも確認された。それで、製品の比較的低い使用温度ですでに物体が溶融相を形成する限りで、物体の組成が存在する場合に、そのような製品の加圧軟化で特に悪化した値が示される。その限りで本発明に従って確認されたのは、物体は粘土鉱物の割合が10質量%より少なくなるので、比較的低い温度でつまり特に1400℃よりも低い温度でさらに好ましくは1450℃で、物体は、耐熱性を損なう低溶融相を全く形成しないということである。
【0013】
粘土鉱物とは、ここでは特にアルミノケイ酸塩、特にカオリン群の粘土鉱物特にカオリナイトと理解される。本発明に係るバッチから製造される耐火性製品の耐火性質を、その加圧軟化に関して悪化させないようにするために、その限りで意図されているのは、それぞれ物体の総質量に対して、物体の粘土鉱物の割合が10質量%より少なく、特に好ましくは粘土鉱物が0質量%の割合にできる限り近い割合であること、つまりより好ましくは9質量%より少なく、さらに好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは2質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0014】
本発明に従って確認されたのは、物体が粘土鉱物であるムライトの割合を備える場合、特に本発明に係るバッチから製造される耐火性製品の耐火性質が、その加圧軟化に関して悪化するということである。それゆえ本発明に従って好ましく意図されているのは、それぞれ物体の総質量に対して、物体のムライトの割合が7質量%より少なく、より好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0015】
同様に、物体内で場合によっては形成され得る溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、物体の総質量に対して、物体のSiOの割合が30質量%より少なく、より好ましくは20質量%より少なく、さらに好ましくは10質量%より少なく、さらに好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0016】
同様に、物体内での溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、物体の総質量に対して、物体のガラス相の割合が10質量%より少なく、さらに好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは2質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0017】
最後に、同様に物体内での溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、物体の総質量に対して、物体のアルカリの総質量特にNaOとKOとLiOの総質量が3質量%より少なく、さらに好ましくは2質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0018】
本発明に係るバッチの物体は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成る。それによって各物体は、それぞれ1つあるいは複数の耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から形成されている、独自の焼結体となっている。これらの焼結体は、本発明に係るバッチが、それから製造される耐火性製品の脆弱性を減少させるために備える合成原料となっている。
【0019】
基本的に、互いに焼結された粒子から成る物体は、少なくとも1つの任意の耐火性のセラミック原料から形成されていてよい。好ましくは物体は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含む。すなわち、マグネシア、スピネル、コランダム、ジルコニア、フォルステライト、クロマイト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウム。一実施形態に従えば、物体は上記の耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子を、それぞれ物体の総質量に対して、少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、あるいは100質量%まで含む。
【0020】
マグネシア(MgO)は物体内で、原料である焼結マグネシアあるいは溶融マグネシアのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。「スピネル」とは、スピネル群の少なくとも1つの鉱物のことである。特に、スピネルは物体内で、鉱物であるマグネシアスピネル(MgAl)、鉄スピネル(FeAl)、ガラクサイト(MnAl)、クロマイト(FeCr)、プレオナスト((Mg,Fe)(Al,Fe))、ピクロクロマイト(MgCr)、ハウスマン鉱(Mn)、マグネタイト(Fe)あるいは亜鉛尖晶石(ZnAl)のうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。コランダムは物体内で、原料である溶融コランダム、焼結コランダムあるいは焼成アルミナのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。ジルコニア(ZrO)は物体内で、完全にあるいは部分的に安定して、たとえば酸化物であるCaO、MgOあるいはYのうちの少なくとも1つによって安定して存在してよい。
【0021】
特に物体は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含んでよい。すなわち、マグネシア、スピネルあるいはコランダム、好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダム、特に好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいは焼結コランダム、しかもそれぞれ物体の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0022】
上記の原料に応じて、物体は、以下の鉱物相のうちの少なくとも1つを含んでよい。すなわち、ペリクレース(MgO)、マグネシアスピネル、鉄スピネル、ガラクサイト、クロマイト、プレオナスト、ピクロクロマイト、ハウスマン鉱、マグネタイトあるいは亜鉛尖晶石、コランダム(Al)、ジルコニア、フォルステライト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウム。特に物体は、上記の鉱物相を、それぞれ物体の総質量に対して、少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも98質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0023】
好ましい一実施形態に従って意図されているのは、物体が、鉱物相であるペリクレース、マグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダム、特に好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダムのうちの少なくとも1つを含んでおり、しかもそれぞれ物体の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、たとえば100質量%まで含むことである。
【0024】
物体は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(≧1および≦長さ):(≧3)である。言い換えれば、物体の幅は物体の厚さよりも大きいか同じであり、物体の長さよりも小さいか同じであり、さらに物体の長さは物体の厚さの3倍よりも大きいか同じである。
【0025】
それによって物体は、ほぼピン状あるいはプレート状の幾何学形状を備える。物体がほぼピン状の幾何学形状を備えるか、あるいはプレート状の幾何学形状を備えるかは、物体の厚さと長さとに対する幅の比率に依存する。物体の幅が厚さと同じかあるいはほんの僅かに大きければ、物体は、ほぼピン状の形状を備える。これに対して物体の幅がより大きく、特に長さよりもほんの僅かに小さいかあるいは同じであれば、物体は、ほぼプレート状の形状を備える。
【0026】
好ましい一実施形態に従えば、物体は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(1から5):(3から5)であり、前に述べられたように、物体の幅は長さよりも小さいか同じである。
【0027】
本発明に従って判明したのは、厚さ対幅対長さが本発明に係る比率の場合に、物体はその可塑的作用を、特に長さが1mm以上で特に効果的に発揮するということである。発明者の推測では、物体は、およそこの長さ以上で初めて、耐火性製品にミクロ亀裂を生じさせるのに十分な張力フィールドを物体の周りに構成する。さらに本発明に従って確認されたのは、この長さ以上の物体は、製品の破損あるいは破壊すら招きかねない製品のミクロ亀裂を、長さが約1mm以上で効果的に克服できるということである。その限りで物体は、製品の破損を招きかねない製品の亀裂拡大を阻止するかあるいは防ぐことができる。さらに本発明に従って判明したのは、長さが約30mm以上の物体は、その物体を用いて耐火性製品を製造した場合に簡単に壊れるので、物体は定義された長さではバッチおよびそれから製造される耐火性製品内にはもはや存在しないということである。このような背景で、好ましい一実施形態に従った物体は、長さが1mmから30mmの範囲である。その限りで物体は、長さが好ましくは大きくとも30mm、より好ましくは大きくとも25mm、さらに好ましくは大きくとも20mm、さらに好ましくは大きくとも15mmであってよい。さらに物体は、長さが好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは長さが少なくとも2mm、さらに好ましくは少なくとも3mm、さらに好ましくは少なくとも5mm、さらに好ましくは少なくとも8mm、さらに好ましくは少なくとも10mmであってよい。特に好ましくは物体は、長さが3mmから15mmの範囲であり、全く特に好ましくは長さが5mmから15mmの範囲である。
【0028】
本発明に従って判明したのは、可塑剤としての物体の作用が、特に基礎成分の原料の粒子の粒子径に対する物体の長さの比率に依存し得るということである。その際本発明に従って判明したのは、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る基礎成分が粒子の形状で存在し、物体の長さが、少なくとも基礎成分の最大の粒子の平均的な粒子径の長さに相当するならば、物体は、ミクロ亀裂形成体ひいては可塑剤としてその作用を特に有利に発揮するということである。言い換えれば、物体の長さは、少なくとも基礎成分の最大の粒子の平均的な粒子径の長さである。
【0029】
基礎成分の最大の粒子の平均的な粒子径は、特にDIN EN ISO13383-1:2016-11に従って決定できる。
【0030】
本発明に従って判明したのは、物体が固有の容量割合でバッチ内もしくはそれから製造される製品内に存在するならば、物体は、可塑剤としてその作用を特に有利なやり方で耐火性製品内で発揮するということである。その限りで意図されていてよいのは、物体が、バッチの総容量に対して、0.5から30容量%の範囲の割合でバッチ内に存在するということである。その限りで意図されていてよいのは、物体が、バッチの総容量に対して、少なくとも0.5容量%の容量割合で、より好ましくは少なくとも1容量%の容量割合で、さらに好ましくは少なくとも1.5容量%の容量割合で、さらに好ましくは少なくとも2容量%の容量割合でバッチ内に存在するということである。さらに意図されていてよいのは、物体が、バッチの総容量に対して、多くとも30容量%の容量割合で、より好ましくは多くとも25容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも20容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも15容量%の容量割合でバッチ内に存在するということである。その限りで物体は、それぞれバッチの総容量に対して、好ましくは1から20容量%の範囲の割合で、より好ましくは1から15容量%の範囲の割合で、さらに好ましくは2から15容量%の範囲の割合でバッチ内に存在してよい。本発明に従って判明したのは、物体が上記より少ない質量割合でバッチ内もしくはそれから製造される製品内に存在するならば、物体は、可塑剤としてその作用を発揮できないかあるいは不十分な程度でしか発揮できないということである。さらに本発明に従って判明したのは、物体が上記より多い割合でバッチ内に存在するならば、物体による製品でのミクロ亀裂形成は、あまりに大規模なものになり得るということである。しかしながら、ミクロ亀裂形成があまりに大規模なものになることによって、製品の強度は悪化しかねない。
【0031】
ここでなされた容量%での記載がバッチの総容量に対するものである限り、バッチの総容量は、バッチの投入容量である。
【0032】
基礎成分は、バッチの総容量に対して、70から99.5容量%の範囲の容量割合でバッチ内に存在してよい。その限りで基礎成分は、バッチの総質量に対して、たとえば多くとも99.5容量%の容量で、より好ましくは多くとも99容量%の質量割合で、さらに好ましくは多くとも98.5容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも98容量%の容量割合でバッチ内に存在してよい。好ましくは基礎成分は、それぞれバッチの総容量に対して、80から99容量%の範囲の容量割合で、より好ましくは85から99容量%の範囲の容量割合で、さらに好ましくは85から98容量%の範囲の容量割合でバッチ内に存在してよい。
【0033】
個々の場合で別のことが記載されていない限り、バッチの総容量あるいは総質量に対する成分の容量割合あるいは質量割合についてここでなされた記載は、バッチが同様に備え得る、考えられ得る容量割合あるいは質量割合の遊離炭素を有さない、バッチの総容量もしくは総質量に対するものである。周知のように遊離炭素は、特にグラファイト、カーボンブラックあるいは炭素担体のような形状で存在してよい。
【0034】
意図されていてよいのは、物体と基礎成分とが、100質量%つまりバッチの総質量まで加えられることである。それによってこの実施形態では、バッチは、基礎成分と物体との他に、また考えられ得る割合の遊離炭素の他に、さらなる成分を備えていない。
【0035】
一実施形態に従って意図されているのは、バッチが、基礎成分と物体との他に、バッチの総容量に対して、10容量%より少なく、より好ましくは9容量%よりも少なく、さらに好ましくは5容量%よりも少なく、さらに好ましくは1容量%よりも少ない容量割合で、さらなる成分を備えることである。
【0036】
バッチが、焼結された耐火性のセラミック製品を製造するために使われる限り、特に意図されていてよいのは、バッチが、遊離炭素を有さないバッチの総質量に対して、10質量%より少なく、より好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ない割合の遊離炭素を備えることである。
【0037】
バッチが、焼結された耐火性のセラミック製品を製造するために使われる限り、対応して意図されていてよいのは、物体と基礎成分とが、それぞれバッチの総質量に対して、少なくとも90質量%まで、より好ましくは95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで加えられることである。
【0038】
バッチが、炭素結合された耐火性製品を製造するために、あるいは混合結合を有する(つまりセラミック結合と炭素結合とを有する)耐火性製品を製造するために使われる限り、特に意図されていてよいのは、バッチが、遊離炭素を有さないバッチの総質量に対して、最大30質量%までの割合の、好ましくは1から30質量%の範囲の割合の、さらに好ましくは3から30質量%の範囲の割合の遊離炭素を備えることである。
【0039】
バッチが、炭素結合された耐火性製品を製造するために、あるいは混合結合を有する耐火性製品を製造するために使われる限り、意図されていてよいのは、物体と基礎成分と遊離炭素とが、それぞれバッチの総質量に対して、少なくとも90質量%まで、より好ましくは95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで加えられることである。
【0040】
本発明に従えば、基礎成分は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つを含んでよい。すなわち、マグネシア、ドロマイト(Doloma)、スピネル(特にマグネシアスピネル)、コランダム、フォルステライト、クロマイト、クロムコランダム、マグネシア・クロマイトあるいはムライト、しかもそれぞれ基礎成分の総質量に対して、好ましくは少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0041】
好ましくは特に意図されていてよいのは、基礎成分が、本発明に係るバッチから製造される耐火性のセラミック製品の耐火性を高める原料を含んでいることである。その限りで特に意図されていてよいのは、基礎成分が、原料であるフォルステライトおよび/あるいはムライトを含まないかあるいは僅かな規模でしか含まないということである。その限りで基礎成分は好ましくは、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つを含んでもよい。すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル(特にマグネシアスピネル)、コランダム、クロマイト、クロムコランダムあるいはマグネシア・クロマイト、さらに好ましくはマグネシア、ドロマイト、マグネシアスピネルあるいはコランダム、より好ましくはマグネシア、さらに好ましくは焼結マグネシア、しかもそれぞれ基礎成分の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、さらに好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも98質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0042】
基礎成分がマグネシアの形状で存在する限り、基礎成分は、原料である焼結マグネシアあるいは溶融マグネシアのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。基礎成分がドロマイトの形状で存在する限り、基礎成分は、たとえば原料である焼結ドロマイトあるいは溶融ドロマイトのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。基礎成分がコランダムの形状で存在する限り、基礎成分は、原料である溶融コランダム、焼結コランダムあるいは焼成アルミナのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。
【0043】
意図されていてよいのは、基礎成分はもっぱら塩基性の原料から、つまりMgO基の原料つまり特に以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成ることである。すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル(特にマグネシアスピネル)あるいはフォルステライト。
【0044】
意図されていてよいのは、基礎成分は、基礎成分の総質量に対して、少なくとも50質量%まで、より好ましくは少なくとも60質量%まで、さらに好ましくは少なくとも70質量%まで、さらに好ましくは少なくとも80質量%まで、さらに好ましくは少なくとも90質量%まで、MgOから成る。
【0045】
基礎成分もしくは基礎成分の原料は、好ましくは粒子形状で、つまり粒子の形状で存在する。これらの粒子とは、特に個々のつまり互いに焼結されていない粒子のことである。
【0046】
好ましくは意図されているのは、基礎成分の粒子は、最大粒子径つまり平均的な粒子径が最大で10mmの粒子を備えることである。基礎成分を構成する原料の最大の粒子の平均的な粒子径は、一実施形態に従えば、最大で10mm、より好ましくは最大で8mm、さらに好ましくは最大で6mm、さらに好ましくは最大で5mmである。最大の粒子の平均的な粒子径は、DIN EN623-3:2003に従って決定されている。
【0047】
各耐火性製品のように、本発明に係るバッチの粒子も、特定の構造を備える。
【0048】
さらに、本発明に係るバッチの基礎成分も、本発明に係るバッチの燃焼によって、特定の構造を形成する。
【0049】
本発明に従えば、「構造」という用語は、セラミックの領域におけるこの用語の一般的な定義の主旨において、セラミック製品における位相の種類と量とも、その大きさと形状と配向と分布とも理解される。
【0050】
好ましくは本発明に従って意図されているのは、燃焼によってバッチから製造される耐火性製品において、一方の基礎成分から形成される製品領域と、他方の物体から形成される製品領域とが、それらのそれぞれの構造に関して異なるように、基礎成分と物体とがバッチ内に存在するということである。言い換えれば、本発明に係るバッチの燃焼によって製造される耐火性製品において、基礎成分から形成される領域は、物体から形成される領域とは別の構造を備える。
【0051】
本発明に従って確認されたのは、物体の幾何学形状だけでなくその構造も、可塑剤としてその有効性に影響し得るということである。その際確認されたのは、物体が、本発明に係るバッチから製造される耐火性製品において、ミクロ亀裂を多く形成すればするほど、つまり可塑剤として強く作用すればするほど、物体の構造が、基礎成分から形成される領域の構造と大きく異なるということである。この理由から意図されていてよいのは、本発明に係るバッチの燃焼後にそれから製造される耐火性製品において基礎成分から形成される構造とは別の構造を、物体が備えることである。この目的を達成するために、当業者は、従来技術からの数多くの可能性を利用できる。特に当業者に知られているのは、耐火性製品の構造は、構造の形成に用いられる原料の種類と性状とに依存して、つまり特に用いられる原料の種類とそのそれぞれの質量割合とそのそれぞれの粒子サイズとに依存して形成されるということである。
【0052】
本発明の対象は、以下の特徴すなわち、
本発明に係るバッチを利用できるようにするという特徴と、
バッチを燃焼させて耐火性製品にするという特徴と
を含む、耐火性製品の製造法でもある。
【0053】
本発明に係る方法のために利用できる本発明に係るバッチは、たとえば混合装置においてたとえば強制ミキサにおいて、混合されてよい。これによって、物体および基礎成分の原料の完全混和が可能となるので、物体は不規則かつ均等にバッチの容量に亘って、ひいてはバッチから製造される耐火性製品の容量に亘っても分散している。バッチの混合前および/あるいは混合中に、バッチには一般的なバインダ、特に生バインダ(Grunbinder(uはウムラウト付))たとえばリグニンスルホン酸が添加されてよい。この生バインダは特に、バッチから成形される素地に生強度を付与するのに使われてよい。
【0054】
バッチは、場合によっては混合されて、たとえばプレスによって成形体いわゆる素地に成形されてよい。
【0055】
素地は、たとえば乾燥機内でたとえば乾燥炉内で乾燥されてよい。
【0056】
バッチは、場合によっては素地に成形されて場合によっては乾燥されて、引き続いて燃焼されて耐火性製品になってよい。燃焼は特に、炉内で行われてよい。
【0057】
本発明に係るバッチが、耐火性のセラミック製品を製造するために使われる限り、燃焼は、バッチの成分が互いに焼結する焼結燃焼として行われる。バッチの燃焼は、バッチの成分を焼結するのに適した温度で行われてよい。この温度は、バッチの成分の種類と性状とに依存して選択される。たとえば燃焼は、1400℃から1600℃までの範囲の温度で行われてよい。
【0058】
本発明に係るバッチが、炭素結合された耐火性製品を製造するために使われる限り、バッチの成分を互いに結合するバッチの炭素が、炭素結合を形成するように、燃焼は行われる。バッチの燃焼は、炭素結合を形成するのに適した温度で行われてよい。この温度は、バッチの成分の種類と性状とに依存して選択される。たとえば燃焼は、還元雰囲気中で1400℃から1600℃までの範囲の温度で行われてよい。
【0059】
バッチの燃焼後に、バッチを冷却できる。冷却後に、耐火性製品が出来上がる。
【0060】
本発明の対象は、
特に本発明に係る方法によって製造され得、かつ以下の特徴すなわち、
少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに結合された粒子から成る第1の領域と、
第2の領域であって、第2の領域は以下の特徴すなわち、
第2の領域は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成り、第2の領域は、粘土鉱物の割合が、第2の領域の総質量に対して10質量%より少ないという特徴と、
第2の領域は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(≧1および≦長さ):(≧3)であるという特徴とを備える第2の領域と、
第2の領域は、第1の領域において無秩序に設けられているという特徴と、
一方の第1の領域と他方の第2の領域は、それらのそれぞれの構造に関して異なっているという特徴と
を含む耐火性製品でもある。
【0061】
本発明に係る耐火性製品が、本発明に係るバッチから本発明に係る方法によって製造されている限り、第1の領域は燃焼によって基礎成分から形成されており、第2の領域は燃焼によって物体から形成されている。
【0062】
製品が、耐火性のセラミック製品として存在する限り、第1の領域の粒子は、焼結結合で互いに結合されており、もしくは第1の領域は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から存在する。製品が、炭素結合された耐火性製品として存在する限り、第1の領域の粒子は、炭素結合で互いに結合されており、もしくは第1の領域は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成り炭素結合で互いに結合された粒子から存在する。
【0063】
第1の領域はその限りで、燃焼中に、物体が耐火性製品の第2の領域として中に埋設されているマトリックスを形成する。特に第2の領域は、基礎成分から形成されるマトリックス内に島状に、つまり互いに隔離されたより小さな領域の形状で埋設されている。
【0064】
その際第2の領域は、耐火性製品において、上で説明された可塑剤としてのその作用を発揮するが、そのことは、耐火性製品の弾性モジュールが著しく少ないことによって指し示されている。
【0065】
しかしながら、本発明に従えば、別の構造を有する第2の領域を含む耐火性のセラミック製品の耐火性質が悪化しかねないこと、特にそのような製品の高耐火性が悪化しかねないことも確認された。それで、製品の比較的低い使用温度ですでに領域が溶融相を形成する限りで、領域の組成が存在する場合に、そのような製品の加圧軟化で特に悪化した値が示される。その限りで本発明に従って確認されたのは、第2の領域は粘土鉱物の割合が10質量%より少なくなるので、比較的低い温度でつまり特に1400℃よりも低い温度であるいはより好ましくは1450℃より低い温度で、第2の領域は、製品の耐熱性を損なう低溶融相を全く形成しないということである。
【0066】
本発明に係る耐火性のセラミック製品は、好ましくは加圧軟化の値T0.5が>1400℃、より好ましくは>1450℃、さらに好ましくは>1500℃である。加圧軟化の値は、DIN EN ISO1893:2008-09に従って決定されている。
【0067】
粘土鉱物とは、ここでは特にアルミノケイ酸塩、特にカオリン群の粘土鉱物特にカオリナイトと理解される。本発明に係る耐火性のセラミック製品の耐火性質を、その加圧軟化に関して悪化させないようにするために、その限りで意図されているのは、それぞれ第2の領域の総質量に対して、第2の領域の粘土鉱物の割合が10質量%より少なく、特に好ましくは粘土鉱物が0質量%の割合にできる限り近い割合であること、つまりより好ましくは9質量%より少なく、さらに好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは2質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0068】
本発明に従って確認されたのは、第2の領域が粘土鉱物であるムライトの割合を備える場合、特に本発明に係る耐火性のセラミック製品の耐火性質が、その加圧軟化に関して悪化するということである。それゆえ本発明に従って好ましく意図されているのは、それぞれ第2の領域の総質量に対して、第2の領域のムライトの割合が7質量%より少なく、より好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0069】
同様に、第2の領域内で場合によっては形成され得る溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、第2の領域の総質量に対して、第2の領域のSiOの割合がそれぞれ30質量%より少なく、特に20質量%より少なく、より好ましくは10質量%より少なく、さらに好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0070】
同様に、第2の領域内での溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、第2の領域の総質量に対して、第2の領域のガラス相の割合が10質量%より少なく、より好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは3質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0071】
最後に、同様に第2の領域内での溶融相の割合をできる限り小さく抑えるために、意図されていてよいのは、第2の領域の総質量に対して、第2の領域のアルカリの総質量特にNaOとKOとLiOの総質量が3質量%より少なく、より好ましくは2質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ないことである。
【0072】
本発明に係る製品の第2の領域は、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る互いに焼結された粒子から成る。
【0073】
基本的に、互いに焼結された粒子から成る第2の領域は、1つの任意の耐火性のセラミック原料から形成されていてよい。好ましくは第2の領域は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る。すなわち、マグネシア、スピネル、コランダム、ジルコニア、フォルステライト、クロマイト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウム、しかもそれぞれ第2の領域の総質量に対して、好ましくは少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、あるいは100質量%までから成る。
【0074】
マグネシア(MgO)は第2の領域内で、原料である焼結マグネシアあるいは溶融マグネシアのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。スピネルとは、スピネル群の少なくとも1つの鉱物のことである。特にスピネルは、鉱物であるマグネシアスピネル(MgAl)、鉄スピネル(FeAl)、ガラクサイト(MnAl)、クロマイト(FeCr)、プレオナスト((Mg,Fe)(Al,Fe))、ピクロクロマイト(MgCr)、ハウスマン鉱(Mn)、マグネタイト(Fe)あるいは亜鉛尖晶石(ZnAl)のうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。コランダムは、原料である溶融コランダム、焼結コランダムあるいは焼成アルミナのうちの少なくとも1つの形状で存在してよい。ジルコニア(ZrO)は、完全にあるいは部分的に安定して、たとえば酸化物であるCaO、MgOあるいはYのうちの少なくとも1つによって安定して存在してよい。
【0075】
特に第2の領域は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子から成ってよい。すなわち、マグネシア、スピネルあるいはコランダム、好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダム、特に好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいは焼結コランダム、しかもそれぞれ第2の領域の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、あるいは100質量%までから成ってよい。
【0076】
上記の原料に応じて、第2の領域は、以下の鉱物相のうちの少なくとも1つを含んでよい。すなわち、ペリクレース(MgO)、マグネシアスピネル、鉄スピネル、ガラクサイト、クロマイト、プレオナスト、ピクロクロマイト、ハウスマン鉱、マグネタイトあるいは亜鉛尖晶石、コランダム(Al)、ジルコニア、フォルステライト、ジルコニアコランダム、ジルコニアムライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウムあるいはチタン酸カルシウム。特に第2の領域は、上記の鉱物相を、それぞれ第2の領域の総質量に対して、少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも98質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0077】
好ましい一実施形態に従って意図されているのは、第2の領域が、鉱物相であるペリクレース、マグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダム、特に好ましくはマグネシアスピネル、鉄スピネルあるいはコランダムのうちの少なくとも1つを含んでおり、しかもそれぞれ第2の領域の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、たとえば100質量%まで含むことである。
【0078】
第2の領域は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(≧1および≦長さ):(≧3)である。言い換えれば、第2の領域の幅は第2の領域の厚さよりも大きいか同じであり、第2の領域の長さよりも小さいか同じであり、さらに第2の領域の長さは第2の領域の厚さの3倍よりも大きいか同じである。
【0079】
それによって第2の領域は、ほぼピン状あるいはプレート状の幾何学形状を備える。第2の領域がほぼピン状の幾何学形状を備えるか、あるいはプレート状の幾何学形状を備えるかは、第2の領域の厚さと長さとに対する幅の比率に依存する。それぞれの第2の領域の幅が厚さと同じかあるいはほんの僅かに大きければ、第2の領域は、ほぼピン状の形状を備える。これに対して第2の領域の幅がより大きく、特に長さよりもほんの僅かに小さいかあるいは同じであれば、第2の領域は、ほぼプレート状の形状を備える。
【0080】
好ましい一実施形態に従えば、第2の領域は、(厚さ):(幅):(長さ)の比率が(1):(1から5):(3から5)であり、前に述べられたように、第2の領域の幅は長さよりも小さいか同じである。
【0081】
上でバッチの物体に関して対応して説明されたように、判明したのは、第2の領域は、その可塑的作用と製品内での亀裂拡大を阻止するための作用とを、長さが約1mm以上で特に効果的に及ぼすことができるということである。さらに本発明に従って判明したのは、長さが約30mm以上の第2の領域は簡単に壊れかねないということである。このような背景で、好ましい一実施形態に従った第2の領域は、長さが1mmから30mmの範囲である。その限りで第2の領域は、長さが好ましくは大きくとも30mm、より好ましくは大きくとも25mm、さらに好ましくは大きくとも20mm、さらに好ましくは大きくとも15mmであってよい。さらに第2の領域は、長さが好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは長さが少なくとも2mm、さらに好ましくは少なくとも3mm、さらに好ましくは少なくとも5mm、さらに好ましくは少なくとも8mm、さらに好ましくは少なくとも10mmであってよい。特に好ましくは第2の領域は、長さが3mmから15mmの範囲であり、さらに好ましくは長さが5mmから15mmの範囲である。
【0082】
本発明に従って判明したのは、可塑剤としての第2の領域の作用が、特に第1の領域の原料の粒子の粒子径に対する第2の領域の長さの比率に依存し得るということである。その際本発明に従って判明したのは、少なくとも1つの耐火性のセラミック原料から成る第1の領域が互いに焼結された粒子の形状で存在し、第2の領域の長さが少なくとも第1の領域の最大の粒子の平均的な粒子径の長さに相当するならば、第2の領域は、ミクロ亀裂形成体ひいては可塑剤としてその作用を特に有利に発揮するということである。言い換えれば、第2の領域の長さはそれぞれ、少なくとも第1の領域の最大の粒子の平均的な粒子径の長さである。
【0083】
第1の領域の最大の粒子の平均的な粒子径は、特にDIN EN623-3:2003に従って決定できる。
【0084】
本発明に従って判明したのは、第2の領域が固有の容量割合で製品内に存在するならば、第2の領域は、可塑剤としてその作用を特に有利なやり方で耐火性製品内で発揮するということである。その限りで意図されていてよいのは、第2の領域が、製品の総容量に対して、0.5から30容量%の範囲の容量で製品内に存在するということである。その限りで意図されていてよいのは、第2の領域が、製品の総容量に対して、少なくとも0.5容量%の容量割合で、より好ましくは少なくとも1容量%の容量割合で、さらに好ましくは少なくとも1.5容量%の容量割合で、さらに好ましくは少なくとも2容量%の容量割合で製品内に存在するということである。さらに意図されていてよいのは、第2の領域が、製品の総容量に対して、多くとも30容量%の容量割合で、より好ましくは多くとも25容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも20容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも15容量%の容量割合で製品内に存在するということである。その限りで第2の領域は、それぞれ製品の総容量に対して、好ましくは1から20容量%の範囲の割合で、より好ましくは1から15容量%の範囲の容量割合で、さらに好ましくは2から15容量%の範囲の容量割合で製品内に存在してよい。本発明に従って判明したのは、第2の領域が上記より少ない容量割合で耐火性製品内に存在するならば、第2の領域は、可塑剤としてその作用を発揮できないかあるいは不十分な程度でしか発揮できないということである。さらに本発明に従って判明したのは、第2の領域が上記より多い割合で製品内に存在するならば、第2の領域による製品でのミクロ亀裂形成は、あまりに大規模なものになり得るということである。しかしながら、ミクロ亀裂形成があまりに大規模なものになることによって、製品の強度は悪化しかねない。
【0085】
第1の領域は、耐火性製品の総容量に対して、70から99.5容量%の範囲の容量割合で耐火性のセラミック製品内に存在してよい。その限りで第1の領域は、耐火性のセラミック製品の総容量に対して、たとえば多くとも99.5容量%の質量割合で、より好ましくは多くとも99容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも98.5容量%の容量割合で、さらに好ましくは多くとも98容量%の容量割合で耐火性のセラミック製品内に存在してよい。好ましくは第1の領域は、それぞれ耐火性のセラミック製品の総容量に対して、80から99容量%の範囲の容量割合で、より好ましくは85から99容量%の範囲の容量割合で、さらに好ましくは85から98容量%の範囲の容量割合で耐火性のセラミック製品内に存在してよい。
【0086】
個々の場合で別のことが記載されていない限り、製品の総容量あるいは総質量に対する領域もしくは位相の容量割合あるいは質量割合についてここでなされた記載は、特に本発明に係る製品が炭素結合された製品の形状で同様に備え得る、考えられ得る容量割合あるいは質量割合の遊離炭素を有さない、製品の総容量もしくは総質量に対するものである。上記の主旨における遊離炭素は、コークス化した炭素と、炭素結合で結合されて存在する炭素とを含む。
【0087】
意図されていてよいのは、第1の領域と第2の領域とが、100質量%つまり耐火性のセラミック製品の総質量まで加えられることである。それによってこの実施形態では、耐火性のセラミック製品は、第1の領域と第2の領域との他に、また考えられ得る割合の遊離炭素の他に、さらなる領域もしくは位相を備えていない。
【0088】
一実施形態に従って意図されているのは、耐火性のセラミック製品が、第1の領域と第2の領域との他に、耐火性のセラミック製品の総容量に対して、10容量%より少なく、より好ましくは9容量%よりも少なく、さらに好ましくは5容量%よりも少なく、さらに好ましくは1容量%よりも少ない容量割合で、さらなる領域もしくは位相を備えることである。
【0089】
耐火性のセラミック製品が、焼結された耐火性のセラミック製品の形状で存在する限り、特に意図されていてよいのは、耐火性のセラミック製品が、遊離炭素を有さない耐火性のセラミック製品の総質量に対して、10質量%より少なく、より好ましくは5質量%より少なく、さらに好ましくは1質量%より少ない割合の遊離炭素を備えることである。
【0090】
耐火性のセラミック製品が、炭素結合された耐火性製品の形状であるいは混合結合を有する(つまりセラミック結合と炭素結合とを有する)耐火性製品の形状で存在する限り、特に意図されていてよいのは、耐火性のセラミック製品が、遊離炭素を有さない製品の総質量に対して、最大30質量%までの割合の、好ましくは1から30質量%の範囲の割合の、さらに好ましくは3から30質量%の範囲の割合の遊離炭素を備えることである。
【0091】
好ましくは第1の領域は、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含む。すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル(特にマグネシアスピネル)、コランダム、フォルステライト、クロマイト、クロムコランダム、マグネシア・クロマイトあるいはムライト、しかもそれぞれ第1の領域の総質量に対して、好ましくは少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%まで含む。
【0092】
好ましくは特に意図されていてよいのは、第1の領域が、本発明に係る耐火性のセラミック製品の耐火性を高める原料の互いに焼結された粒子を含んでいることである。その限りで特に意図されていてよいのは、第1の領域が、原料であるフォルステライトおよび/あるいはムライトの互いに焼結された粒子を含まないかあるいは僅かな規模でしか含まないということである。その限りで第1の領域は好ましくは、以下の耐火性のセラミック原料のうちの少なくとも1つから成る互いに焼結された粒子を含んでもよい。すなわち、マグネシア、ドロマイト、スピネル(特にマグネシアスピネル)、コランダム、クロマイト、クロムコランダムあるいはマグネシア・クロマイト、特に好ましくはマグネシア、ドロマイト、マグネシアスピネルあるいはコランダム、さらに特に好ましくはマグネシア、全く特に好ましくは焼結マグネシア、しかもそれぞれ第1の領域の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも98質量%まで、さらに好ましくは少なくとも99質量%まで、あるいは100質量%までから成る粒子を含んでよい。
【0093】
上記の原料に応じて、第1の領域は、以下の鉱物相のうちの少なくとも1つを含んでよい。すなわち、ペリクレース、スピネル(特にマグネシアスピネル)、コランダム、フォルステライトあるいはピクロクロマイト、好ましくは鉱物相であるペリクレース、スピネル(特にマグネシアスピネル)あるいはコランダムのうちの少なくとも1つ、特に好ましくはペリクレース、しかもそれぞれ第1の領域の総質量に対して、好ましくはそれぞれ少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%まで、さらに好ましくは少なくとも98質量%まで、さらに好ましくは99質量%まで、あるいは100質量%まで含んでよい。
【0094】
好ましくは意図されているのは、第1の領域の粒子は、最大粒子径が10mmである。第1の領域を形成している原料の最大の焼結粒子の最大での粒子径は、一実施形態に従えば、最大で10mm、より好ましくは最大で8mm、さらに好ましくは最大で6mm、さらに好ましくは最大で5mmである。最大の粒子の平均的な粒子径は、DIN EN623-3:2003に従って決定されている。
【0095】
本発明に従って意図されているのは、一方の第1の領域と、他方の第2の領域とが、それらのそれぞれの構造に関して互いに異なるということである。言い換えれば、耐火性のセラミック製品において、第1の領域は第2の領域とは別の構造を備える。
【0096】
本発明に従って確認されたのは、製品内の第2の領域の効果にとって、製品内でのその配置が重要となることである。それで確認されたのは、第2の領域が、第1の領域から形成されるマトリックス内に無秩序に設けられていれば、第2の領域は、製品の脆弱性を特に効果的に減少させることができるということである。従って第2の領域は、無秩序につまり不規則にもしくは統一的な方向づけなしに、製品の容量に亘って分散している。なぜなら、この場合第2の領域は、均等に製品の容量に亘って張力フィールドを構成でき、それによって、製品の脆弱性を減少させて製品の弾性を向上させるミクロ亀裂を生成できるからである。その限りで本発明に従って確認されたのは、第2の領域が、広範囲にあるいは完全に統一的に方向づけられて、つまりたとえば主に同じ方向に方向づけられて、製品内に決して存在してはならないということである。なぜならこの場合、製品の破損あるいは破壊すら招きかねない張力フィールドが製品内に構成されかねないからである。
【0097】
製品が、本発明に係るバッチによって製造される限りで、特に、製品の製造時にバッチの成分を互いに混和させることによって、特に互いに完全混和させることによって、製品内の第2の領域の不規則性を改善できる。
【0098】
本発明の対象はさらに、物体から成る前述のような合成原料を、耐火性製品を製造するためのバッチ内で、バッチから製造可能な耐火性製品の弾性モジュールを減少させるために使用する方法である。
【0099】
その際本使用法は、特に本発明に係る方法に従うという条件付きで行うことができる。
【0100】
本発明のさらなる特徴は、請求項と以下に記述される本発明の実施例とからもたらされる。
【0101】
ここで開示される本発明のすべての特徴は、個々にあるいは組み合わせて、任意に互いに組み合わせ可能である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本発明に係るバッチは4つ製造され、それらはそれぞれ、焼結マグネシアの形状の耐火性のセラミック原料から成る基礎成分と合成原料とを備えていた。
【0103】
基礎成分の焼結マグネシアは、焼結マグネシアに対して、以下の粒子サイズ分散で存在した。
1から5mm:50質量%
0.1から<1mm:20質量%
<0.1mm:30質量%
【0104】
さらに焼結マグネシアは、焼結マグネシアに対して、以下の化学組成を備えていた。
MgO:96.4質量%
CaO:2.0質量%
SiO:0.7質量%
Fe:0.1質量%
残り:0.8質量%
【0105】
合成原料は、焼結コランダムから成る互いに焼結された粒子からそれぞれ形成された、小プレート状の物体あるいはピン状の物体のどちらかから成っていた。小プレート状の物体とピン状の物体内の鉱物相コランダム(Al)の割合はそれぞれ、>99.8質量%であった。小プレート状の物体は、長さと幅がそれぞれ約3から10mmの範囲であり、厚さが約1mmであった。ピン状の物体は、厚さと幅がそれぞれ約1mmであり、長さが約8mmであった。
【0106】
これらの成分から、以下の表1においてV1からV4が付けられている4つのバッチが製造され、それらのそれぞれの組成は、表1に記載されている。
【0107】
比較目的で、本発明に係るものではないさらなる2つのバッチが製造された。これらのバッチは一方では同様に、実施例の本発明に係るバッチも備える焼結マグネシアを備えていた。しかし本発明に係るものではないバッチは、本発明に係るバッチの合成原料のうちの1つを備えておらず、粒子サイズが0.5から1mmの範囲であり貴コランダムに対してAlの割合が99.8質量%である貴コランダム(Edelkorund)の形状のさらなる原料を備えていた。表1においてV5とV6が付けられている、本発明に係るものではないこれらのバッチの組成は、同様に表1に記載されている。
【0108】
【表1】
【0109】
表1におけるバッチ例V1からV6についての記載はそれぞれ、それぞれのバッチの総容量に対する容量%での記載である。
【0110】
バッチV1からV6は、本発明に係る方法に従って処理された。このためにバッチV1からV6はまず、ミキサ内で混合された。混合中にバッチV1からV6はそれぞれ、リグニンスルホン酸の形状の生バインダと混和された。その際バインダは、バインダを有さないバッチの総質量に対して、バッチV1からV6にそれぞれ3.9%の質量割合で添加された。
【0111】
続いてバッチV1からV6は、プレス機で130MPaのプレス圧で素地に成形され、その後で120℃の温度で24時間乾燥機で乾燥された。
【0112】
乾燥された素地は最後に燃焼されて、耐火性のセラミック製品となった。燃焼は炉内で、1600℃の温度で6時間かけて行われた。その際バッチV1からV6の成分はそれぞれ、耐火性のセラミック製品へ焼結した。
【0113】
バッチV1からV4の燃焼によって得られた焼結された耐火性のセラミック製品は、基礎成分の焼結マグネシアの互いに焼結された粒子から成るそれぞれ1つの第1の領域を備えていた。さらに、バッチV1とV3から製造された製品は、それぞれのバッチV1とV3の小プレート状の物体から形成されている第2の領域をそれぞれ備えていた。それに応じて、バッチV2とV4から製造された製品は、それぞれのバッチV2とV4のピン状の物体から形成されている第2の領域をそれぞれ備えていた。その際焼結された焼結マグネシアから成る第1の領域はそれぞれ、製品のマトリックスを形成し、当該マトリックス内には、第2の領域がそれぞれ島状に埋設されていた。第2の領域の構造は、溶融コランダムから成る互いに焼結された粒子から成るそれぞれ内側の領域と、溶融コランダムから成る粒子の内側領域を取り囲む、マグネシアスピネルから成る縁部領域とから形成されていた。第2の領域のマグネシアスピネルから成るこの縁部領域は、燃焼中に、一方の小プレート状の物体とピン状の物体の溶融コランダムと他方の基礎成分の焼結マグネシアとから形成された。バッチV1とV3から成る製品内の第2の領域の幾何学形状は、小プレート状の物体の幾何学形状に対応し、バッチV2とV4から成る製品内の第2の領域の幾何学形状は、ピン状の物体の幾何学形状に対応した。
【0114】
バッチV1からV4の混合に基づいて、小プレート状の物体とピン状の物体はそれぞれ均等かつ不規則に、バッチV1からV4の容量に亘って分散し、それによって第2の領域はそれぞれ均等かつ無秩序に、それぞれの耐火性のセラミック製品内で、第1の領域から形成されたマトリックス内に設けられていた。
【0115】
第1の領域は、製品内で、焼結マグネシアから成る互いに焼結された粒子の構造を形成した。第1の領域はそれぞれ、主に鉱物相であるペリクレースから成っていた。それによって、第1の領域の構造と第2の領域の構造はそれぞれ互いに明確に異なっており、しかも特にそれぞれの鉱物相であるペリクレースもしくはコランダム/マグネシアスピネルに関して、異なっていた。
【0116】
特有の幾何学形状および第1の領域とは異なる構造に基づいて、第2の領域は、製品内でそれぞれ可塑剤として作用した。この可塑的作用は、耐火性のセラミック製品の弾性モジュールが著しく減少したことで、証明できた。
【0117】
バッチV5とV6の燃焼によって得られた焼結された耐火性のセラミック製品は、焼結マグネシアの互いに焼結された粒子から成るそれぞれ1つの第1の領域を備えており、当該粒子は、マグネシアスピネルから成る領域に沈積していた。このマグネシアスピネルは、セラミック燃焼中に、焼結マグネシアと貴コランダムとから形成された。このマグネシアスピネルは製品内で、従来技術から知られる可塑剤のような作用をした。
【0118】
バッチV1からV6から製造された耐火性のセラミック製品の脆弱性を決定できるようにするために、バッチV1からV6から製造された耐火性のセラミック製品の弾性モジュール(Eモジュール)が決定された。その際Eモジュールは、ASTM C 1419-99a(2009年に再承認された)に従った音の伝播時間から決定された。
【0119】
以下の表2には、それに従って得られたこれらの測定の結果が記載されており、本発明に係るバッチV1からV4から製造された耐火性のセラミック製品にはV1からV4が付けられており、従来技術に従ったバッチV5とV6から製造された耐火性のセラミック製品にはV5とV6とが付けられている。
【0120】
【表2】
【0121】
表2に記載された値から分かるように、コランダムから成る焼結された粒子から成る物体から成る合成原料を、バッチV1からV4から製造された耐火性のセラミック製品内のバッチV1からV4内で、本発明に従って用いることによって、Eモジュールは、物体の代わりに貴コランダムを備えるということでバッチV1からV4とは異なるバッチから製造された製品内のEモジュールに比べて、著しく減少できた。