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特許7171717超音波を使用するバルーンカテーテルと解剖学的組織との接触の判定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】超音波を使用するバルーンカテーテルと解剖学的組織との接触の判定
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20221108BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B34/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020522970
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018055134
(87)【国際公開番号】W WO2019083727
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】15/792,404
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キース・ジョセフ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウィルチンスキ・マリベス
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-537890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257732(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0327836(US,A1)
【文献】特開2000-271235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
A61B 34/20
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
患者の体内に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端に連結されており、周囲の解剖学的組織の治療を行うように構成されている膨張可能バルーンと、
前記バルーンの内部で前記シャフトの前記遠位端の周囲に円周方向に分配されており、それぞれの半径方向において超音波を送信し、かつそれぞれの超音波反射を受信するように構成されている、超音波トランスデューサの半径方向のアレイと、
前記超音波トランスデューサから受信した前記超音波反射に基づいて、前記バルーンと前記周囲の解剖学的組織との機械的接触の程度を推定し、ユーザに出力するように構成されている、プロセッサと、
を備える、医療システム。
【請求項2】
前記膨張可能バルーンが、RFアブレーション、マイクロ波アブレーション、不可逆性電気穿孔法、冷凍アブレーション、血管形成術、弁形成術、及び肺拡張治療、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサの半径方向のアレイが、それぞれの半径方向において前記超音波を送信し、かつ前記膨張可能バルーンの外周全体にわたる前記それぞれの半径方向において前記それぞれの超音波反射を受信するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記半径方向の1つ又は2つ以上が、前記膨張可能バルーン上に配置された電極の方を向いている、請求項3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記超音波反射に基づいて、前記膨張可能バルーン上の複数の場所と前記周囲の解剖学的組織の表面上の複数のそれぞれの部位との間のそれぞれの半径方向距離を計算し、前記半径方向距離に基づいて、前記バルーンと前記周囲の解剖学的組織の前記表面との前記機械的接触の程度を推定するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記それぞれの半径方向距離を表すピークを含む、それぞれの一次元エコープロファイルを分析することによって、前記半径方向距離を計算するように構成されている、請求項5に記載の医療システム。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサの各々が、それぞれの半径方向でのそれぞれの一次元エコープロファイルを生成するように構成されている、請求項6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、他のエコープロファイルとは独立して、前記それぞれの半径方向に沿って各エコープロファイルを分析するように構成されている、請求項6に記載の医療システム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記半径方向距離をグラフ様式で前記ユーザに提示するように構成されている、請求項5に記載の医療システム。
【請求項10】
前記プロセッサが、所与の割合で、又は要求に応じて、表示された前記半径方向距離を更新するように構成されている、請求項9に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲性医療機器、具体的には超音波を用いる体内医療用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
侵襲性超音波技術が、体内の解剖学的組織を評価するために使用されている。例えば、米国特許出願公開第2003/0208119号は、体内の組織の画像を作成するための医療用装置を記載している。この装置は、回転超音波トランスデューサなどの撮像装置を担持するシャフトを含む。この装置は、オプションとして膨張可能バルーンを含む。
【0003】
別の例として、米国特許第5,588,432号は、カテーテルと、カテーテルに組み込まれた超音波装置と、カテーテル上に装着された電極と、を備える、心臓内で使用するための音響撮像システムを記載している。超音波装置は、心臓の内部構造に向かって超音波信号を方向付けて、超音波画像を作成し、電極は、内部構造と電気的に接触するように配設される。カテーテル上に装着された音響マーカーは、電気的に刺激されたときに音波を放射する。中央処理ユニットは、内部構造のグラフィカル表現を作成し、データ項目を、複数のデータ項目に対応する内部構造内のそれぞれの複数の場所を表す場所において、グラフィカル表現上に重ね合わせる。表示システムは、複数のデータ項目がその上に重ね合わせられるグラフィカル表現を表示する。
【0004】
米国特許第5,190,046号は、腔又は通路の壁に接近して撮像するための超音波撮像バルーンカテーテルを記載している。器具は、遠位開口部がバルーンによって包み込まれている主ルーメンを有する細長いカテーテルを含む。超音波トランスデューサ要素を担持している、予め形状が与えられた超音波カテーテルを、カテーテルを通して前進させて、膨張したバルーンの中へ挿入することができる。超音波カテーテルの遠位部分の形状は、超音波トランスデューサ要素を、カテーテルルーメンの半径方向外向きに、好ましくはバルーンの壁に隣接して位置決めし、したがって、腔又は通路の壁に近い画像を中央に置き、対象の壁の一部分においてより深い深度を画像に与える。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0105509号は、その遠位端の近くで共通ルーメンの周りに配置されたバルーン血管形成装置を備えるカテーテルシステムを記載している。このバルーンカテーテルは、バルーンを膨張させるときに展開されるステントと予め嵌合されている。共通ルーメンは、カテーテル本体の近位領域内で複数のルーメンと連通して、移動可能なガイドワイヤを通じたカテーテルの位置決めと、処理されている身体通路の所望領域へのカテーテル及び撮像装置又は介入装置の好都合な送達とを可能にする。ステント展開のための手順は、オプションとして、ステント展開の前後に超音波によってルーメンを撮像して、ステントを必要とする部位を識別し、身体通路の分岐セグメントに重ならない長手方向位置にステントが展開されていること、及び展開されたことを確認し、かつステントが最適な直径まで半径方向に開かれたことを確実にする工程を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、シャフトと、膨張可能バルーンと、超音波トランスデューサの半径方向のアレイと、プロセッサと、を含む、医療システムを提供する。シャフトは、患者の体内に挿入するように構成されている。膨張可能バルーンは、シャフトの遠位端に連結されており、周囲の解剖学的組織の治療を行うように構成されている。超音波トランスデューサは、バルーンの内部でシャフトの遠位端の周囲に円周方向に分配されており、それぞれの半径方向において超音波を送信し、かつそれぞれの超音波反射を受信するように構成されている。プロセッサは、超音波トランスデューサから受信した超音波反射に基づいて、バルーンと周囲の解剖学的組織との機械的接触の程度を推定し、ユーザに出力するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、膨張可能バルーンは、RFアブレーション、マイクロ波アブレーション、不可逆性電気穿孔法、冷凍アブレーション、血管形成術、弁形成術、及び肺拡張治療、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサの半径方向のアレイは、それぞれの半径方向において超音波を送信し、かつ膨張可能バルーンの外周全体にわたるそれぞれの半径方向においてそれぞれの超音波反射を受信するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、半径方向の1つ又は2つ以上が、膨張可能バルーン上に配置されたRFアブレーション電極の方を向いている。
【0010】
一実施形態では、プロセッサは、超音波反射に基づいて、膨張可能バルーン上の複数の場所と周囲の解剖学的組織の表面上の複数のそれぞれの部位との間のそれぞれの半径方向距離を計算し、この半径方向距離に基づいて、バルーンと周囲の解剖学的組織の表面との機械的接触の程度を推定するように構成されている。
【0011】
別の実施形態では、プロセッサは、それぞれの半径方向距離を表すピークを含む、それぞれの一次元エコープロファイルを分析することによって、半径方向距離を計算するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサの各々は、それぞれの半径方向でのそれぞれの一次元エコープロファイルを生成するように構成されている。
【0013】
一実施形態では、プロセッサは、他のエコープロファイルとは独立して、それぞれの半径方向に沿って各エコープロファイルを分析するように構成されている。
【0014】
別の実施形態では、プロセッサは、半径方向距離をグラフ様式でユーザに提示するように構成されている。
【0015】
一実施形態では、プロセッサは、所与の割合で、又は要求に応じて、表示された半径方向距離を更新するように構成されている。
【0016】
追加的に、本発明の一実施形態に従って、シャフトの遠位端に連結された膨張可能バルーンを患者の体内に挿入して、周囲の解剖学的組織の治療を行うことを含む、方法が提供される。バルーンの内部でシャフトの遠位端の周囲に円周方向に分配される超音波トランスデューサの半径方向のアレイを使用して、超音波がそれぞれの半径方向において送信され、それぞれの超音波反射が受信される。超音波トランスデューサから受信した超音波反射に基づいて、バルーンと周囲の解剖学的組織との機械的接触の程度が推定され、ユーザに出力される。
【0017】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による、膨張可能バルーン及び超音波プローブを備える、カテーテルに基づいたアブレーションシステムの概略描写図である。
図2A】本発明の一実施形態による、超音波プローブによって生成されたエコープロファイルを例示するグラフである。
図2B】本発明の一実施形態による、超音波プローブによって生成されたエコープロファイルを例示するグラフである。
図3A】本発明の一実施形態による、肺静脈の心門と部分的に接触している無線周波数(Radio Frequency、RF)アブレーション用膨張可能バルーン壁の概略描写図である。
図3B】本発明の一実施形態による、肺静脈の心門と部分的に接触している無線周波数(Radio Frequency、RF)アブレーション用膨張可能バルーン壁の概略描写図である。
図4】本発明の一実施形態による、モニタ上で医師に表示される膨張可能バルーン壁と肺静脈の心門との間の半径方向距離の線図の概略描写図である。
図5】本発明の一実施形態による、バルーン壁と周囲の解剖学的組織との接触の程度を定量的に推定するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概要
いくつかの心臓アブレーション手順は、アブレーション電極をその上に有する膨張可能バルーンを使用して行われる。そのような手順は、一般に、膨張可能バルーンが標的の周囲の解剖学的組織の表面と完全に接触して位置決めされることを必要とする。完全な接触とは、膨張可能バルーン壁と、バルーンの外周全体にわたって延在する標的の周囲の解剖学的組織表面との継続的な接触を意味する。
【0020】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、超音波に基づいた侵襲性医療機器、並びに超音波データを分析及び視覚化する方法を提供し、これらは、生理食塩水で膨張させたバルーン壁が、治療前及び治療中に、処理される周囲の解剖学的組織の表面と実際に完全に接触していることを、治療している医師が確認することを可能にする。
【0021】
いくつかの実施形態では、医療機器、例えばカテーテルの遠位端は、シャフトと、シャフトの遠位端に連結されたアブレーション電極を有する膨張可能バルーンと、を備える。バルーンの内部には、複数の超音波トランスデューサのアレイが、シャフト軸の周囲に半径方向に分配される。
【0022】
バルーンの位置決め中に、例えば心臓の左心房内で、バルーン壁は、最初に、周囲の解剖学的組織表面と(すなわち、バルーンの全外周にわたってバルーンと組織との接触を達成する標的に対して)部分的にのみ接触する。開示される発明の実施形態では、周囲の解剖学的組織に近接するバルーン壁は、バルーンの周囲の複数のそれぞれの半径方向においてなされる、複数のトランスデューサ超音波プローブによって行われる反復測定を特徴とする。
【0023】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、そのような複数組の測定値を受信し、測定値から、バルーン壁にわたって分配されたそれぞれの場所の組と、周囲の解剖学的組織の表面にわたって分配された複数のそれぞれの部位との間の一組のそれぞれの半径方向距離を計算するように構成されている。
【0024】
一実施形態では、バルーンの所与の外周の周囲に分配された一組のそのような半径方向距離は、モニタ上にグラフ様式で医師に提示される。この提示は、周囲の解剖学的組織に対するバルーン外周を示す断面図を含むことができ、図を定量化するために半径方向距離も提示される。バルーンをナビゲートする医師は、所与のリフレッシュレートで更新される図を有することができ、及び/又は図の更新を命令することができる。代替的又は追加的に、一組の半径方向距離を、任意の他の更新可能なフォーマットでモニタ上に提供することができる。オプションの一実施形態では、円周方向の接触の割合がモニタ上にグラフ様式で医師に提示され、グラフでは、100パーセント(100%)が、生理食塩水で膨張させたバルーン外周の全体が解剖学的組織と接触していることを意味する。
【0025】
開示される技法は、バルーンが患者の標的解剖学的組織と完全に接触しているという高度な確実性を伴って、医師が膨張可能バルーンをナビゲートし、バルーンを位置決めするのを支援するためのツールを医師に提供する。したがって、開示される技法は、バルーンカテーテル治療の安全性及び有効性を向上させることによって、明白な付加価値を有する。
【0026】
更に、開示される技法は、典型的には、高速であり、計算の複雑性はわずかしか必要としない。例えば、各超音波トランスデューサは、特定の半径方向において一次元エコープロファイルのみを生成する。プロセッサは、典型的には、各エコープロファイルを別個に分析して、その半径方向でのバルーン壁と組織との間の距離を計算する。
【0027】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、膨張可能バルーン40及び超音波プローブ50を備える、カテーテルに基づいたアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、カテーテル21を備え、カテーテルのシャフト22の遠位端は、シース23を通して台29の上に横になっている患者28の心臓26の中へ挿入される。カテーテル21の近位端は、制御コンソール24に接続されている。本明細書に記載される実施形態では、カテーテル21は、心臓26内の組織の電気的検知及び/又はアブレーションなどの任意の好適な治療及び/又は診断目的で使用することができる。
【0028】
医師30は、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、心臓26内の標的位置へシャフト22の遠位端をナビゲートする。シャフト22の挿入中に、バルーン40は、シース23によって畳み込まれた構成で維持されている。バルーン40を畳み込まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置までの経路に沿って血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0029】
一実施形態では、挿入画25に示される膨張可能バルーン40は、心臓26の標的位置におけるRFアブレーション、冷凍アブレーション、血管形成術、弁形成術、肺拡張、マイクロ波アブレーション、及び/又は不可逆性電気穿孔法などの治療を行うように構成されている。挿入画45は、肺静脈の心門54にナビゲートされた膨張可能バルーン40を示す。挿入画45に示されるように、シャフト遠位端22は、バルーン40内部に超音波プローブ50を収容している。超音波プローブ50は、シャフト遠位端において、シャフト遠位端の周辺に円周方向に分配される複数の超音波トランスデューサ52のアレイを備える(下の図3Aに示す)。
【0030】
制御コンソール24は、カテーテル21からの信号を受信するとともに、心臓26内でカテーテル21を介して治療を施し、更にシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインタフェース回路38を備えるプロセッサ41、通常は汎用コンピュータを備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、超音波トランスデューサ52から複数の測定値を受信し、これらの測定値から、バルーン40の壁が、バルーン40の外周全体にわたって心門54の周囲の解剖学的組織と接触している程度を計算するように構成することができる(外周の実施例を図3B及び図4に示す)。一実施形態では、バルーン40の壁がバルーン40の外周全体にわたる解剖学的組織に近接する程度は、例えば線図55のグラフィカル形態で、モニタ27上で医師30に提示される。
【0032】
プロセッサ41は、通常、汎用コンピュータを備え、このコンピュータには、本明細書に記載されている機能を実行するソフトウェアがプログラムされている。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/若しくは記憶されてもよい。
【0033】
図1に示す例示的な構成は、単に概念をわかりやすくする目的で選択されたものである。本開示の技法は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。例えば、システム20は、他の構成要素を含み、非心臓カテーテル治療を行うことができる。
【0034】
超音波を使用するバルーンカテーテルと解剖学的組織との接触の判定
図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態による、超音波プローブ50によって生成された一次元エコープロファイルを例示するグラフである。一次元エコープロファイルは、異なる方向A及び方向Bからそれぞれ反射された超音波によって生成されるが、この超音波は、最初に超音波トランスデューサ52(図3Aを参照されたい)のうちの2つによって生成された。これらの図は、いくつかの分析後の一次元エコープロファイルを示し、このプロファイルは、トランスデューサからの距離の関数として、電圧の形態で提供される。
【0035】
本文脈において、「エコープロファイル」という用語は、トランスデューサからの距離の関数として、反射された超音波の振幅を表す任意の表現を指す。各エコープロファイルは、一次元であり、それぞれのトランスデューサ52によって生成されたものであり、カテーテル軸に対するそれぞれの半径方向に関係する。
【0036】
示されるように、図2Aのエコープロファイルの包絡線は、2つの明瞭な特徴、すなわち、約200×10-3を中心とするピーク62、及び約550×10-3インチを中心とするピーク64を含む。これらのピークは、バルーン壁及び周囲の解剖学的組織表面からの反射によって生成された。図2Aにマークされているように、バルーン40の壁及び周囲の解剖学的組織表面は、所与の方向Aに沿って半径方向距離「s」66だけ離れており、プロセッサ41は、この距離を計算するように構成することができる。以下の説明において、距離「s」66は、一般的に、バルーン40の壁と周囲の解剖学的組織の表面との間の任意の一組の1つ又は2つ以上の距離を識別するために使用される。
【0037】
図2Bは、別のエコープロファイルを示し、図中、約400×10-3インチを中心とする単一のピーク67のみが見られる。ピーク67は、単一の反射面と関連付けられる。この信号は、バルーン壁及び周囲の解剖学的組織表面が、方向Bに沿って空間的に区別することができないこと、すなわち、接触していることを示す。
【0038】
図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態による、肺静脈の心門54と部分的に接触している無線周波数(RF)膨張可能バルーン40の壁の概略描写図である。本図はまた、以下で図2A及び図2Bに提供されているデータの種類を視覚化するために使用される。示されるように、バルーン40は、RFアブレーション電極51を備えるが、心門54のRFアブレーション治療を始める前に電極51の表面の各々の一部が心門54に接触することが望ましい。
【0039】
図3Aは、心門54に対するバルーン40の設置の側面図を提供する。明らかに、バルーン40は、まだ最適に位置決めされておらず、例えばバルーン40の壁がバルーンの外周全体にわたって心門54と完全に接触しておらず、そのため、シャフト遠位端22を更に前進させて、その端部に接触させなければならない。この状況は、異なる方向A及び方向Bからそれぞれ受信した、図2A及び図2Bに示される2つの信号によって例示される。
【0040】
方向A及び方向Bにおける一次元エコープロファイルは、超音波が伝搬し、反射されるアブレーション電極51の接触の質に関する情報を医師30に提供する。示されるように、半径方向距離「s」66は、方向Aに沿ったバルーン40の壁を覆って配置された電極と心門54との間の間隙の測定値を定量的に提供する。バルーン40の外周全体にわたって半径方向距離「s」66の測定を可能にするために、超音波プローブ50は、バルーン40の内部に位置し、シャフト遠位端22内に円周方向に分配される複数の超音波トランスデューサ52を備える。
【0041】
図3Bは、バルーン40と心門54との間の空間関係の正面図を提供する。本図は、別の観点から、図2A及び図2Bに例示する方向A及び方向Bに沿った測定によって示されるようなバルーン40壁と心門54との接触の部分性を更に示す。図3Bに示されるように、バルーン40の壁は、多数の外周44を備える。周囲の解剖学的組織との完全な接触が達成される特定の外周は、その周囲の解剖学的組織に依存する。図3Bから読み取れるように、バルーン40と心門54との空間関係を完全に理解するには、バルーン40の外周44全体にわたる複数の方向において複数の半径方向距離の測定を必要とする。
【0042】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ52の半径方向は、バルーン40上の電極51の位置と整列される。換言すれば、各トランスデューサ52は、それぞれの電極52の方向に超音波を送信し、その方向から超音波反射を受信するように構成されている。この構成を裏付ける理論的根拠は、電極における接触の質が特に重要であり、別の場所における接触の質にはあまり関心が持たれないということである。それでも、代替の実施形態では、トランスデューサ52は、任意の他の好適な位置において電極52に対して位置決めすることができる。
【0043】
図2の例示的なデータ、及びそのデータが関連する図3の画像図は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されている。開示される技法は、他のシステムアーキテクチャを使用して同様に適用することができる。例えば、超音波プローブ50は、必要とされる半径方向の解像度に応じて、異なる数のトランスデューサを収容することができる。超音波プローブ50は、2つ以上の列の超音波トランスデューサ52を収容することができ、これらは、ほぼ同時又は同時に、バルーン40の複数のそれぞれの異なる外周44全体にわたって二組以上の測定値を生成することができる。その場合、方向A及び方向Bは、それぞれ、心門54の界面に沿った方向の「アレイA」及び「アレイB」を表す。更にまた、プロセッサ41は、バルーン40の壁と、バルーンの1つ又は2つ以上の外周44全体にわたる周囲の解剖学的組織表面との間の半径方向距離「s」66の二次元アレイを生成することができる。プロセッサ41は、バルーン40の外周44全体にわたって完全な接触が達成されるバルーンの最適な設置に、どのようにバルーン40を更にナビゲートするのかを医師30に指示するために、前方視マップなどのグラフィカルな立体像を更に生成することができる。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態による、モニタ27上で医師30に表示された半径方向距離の線図の概略描写図である。線図55は、バルーン40の外周44全体にわたるバルーン40壁と心門54を取り囲む標的との間の複数の半径方向の距離「s」66を医師30に示す。更にまた、線図55は、半径方向の距離「s」66の強調表示した数値68を医師30に提示する。
【0045】
図4に示される例示的な構成は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。距離情報を医師30にグラフ様式で、かつ数値的に提示するために使用することができる数多くの他の方式が存在する。例えば、2つ以上の外周44全体及びそれぞれの半径方向距離「s」66の組を、任意の所与の時点で、モニタ27上に並列して表示することができる。
【0046】
図5は、本発明の一実施形態による、バルーン40の壁と周囲の解剖学的組織との接触の程度を定量的に推定するための方法を概略的に示すフローチャートである。この手順は、医師30が周囲の解剖学的組織内にバルーンを位置決めしながらバルーン接触の質を評価するために、医師が測定サイクルを開始することによって始まる。測定サイクルは、バルーンの外周にわたる複数の半径方向において複数の超音波測定値を取得することによって始まる。そのために、測定工程70で、超音波トランスデューサ52は、バルーン40の外周44全体にわたるそれぞれの複数の半径方向に沿って複数の測定値を生成する。そのような測定の例を、図2に提供する。
【0047】
計算工程72で、プロセッサ41は、それぞれの測定方向が外周44全体にわたる外周44全体の半径方向において、バルーン40と周囲の解剖学的組織の表面との間の複数のそれぞれの半径方向の距離「s」66を計算する。
【0048】
表示工程74で、モニタ27は、半径方向の距離「s」66の線図55を医師30に表示する。評価工程76の後に、決定工程79で、医師30は、接触の質が満足なものであるかどうかを判定する。医師30が、(工程79で)接触の質が実際に満足なものであると結論する場合、医師30は、処理工程78で、アブレーション治療などの計画した医療処置を始める。医師30が、(工程79で)接触の質に満足しない場合、医師は、再整列工程80で、バルーンを再位置付けする。本手順は、工程70及び工程72にループバックし、医師30がバルーン接触プロセスを完了するまで進行する。
【0049】
図5に示される例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。代替の実施形態において、開示される技法は、例えば医師に程度を提示することなどに基づいた、任意の他の好適なナビゲーション及び設置支援スキームを使用することができ、この程度は、例えば、バルーンと標的解剖学的組織との接触のパーセンテージ又は度合いを提供するものであり、それはバルーン外周とのいかなる接触も存在しない0パーセントから、バルーン外周全体が解剖学的組織と接触している100パーセント(100%)までの範囲である。オプションの実施形態では、モニタ27は、バルーン40を、標的とする周囲の解剖学的組織内のバルーンに最適な設置場所に更にナビゲートするための、視覚的なガイド又は方向を医師30に表示することができる。別のオプションの実施形態では、接触の自動判定に基づいて、制御コンソール24は、個々のRF電極への電力送達を有効又は無効にすることができる(すなわち、組織と接触していると認められた電極のみに、RF電力送達を可能にする)。
【0050】
本明細書に記載されている実施形態は、主に、心臓治療に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、耳鼻咽喉学、神経学、sinuplasty(副鼻腔形成術)、食道拡張、及び肺血管形成術におけるなどの、他の用途に使用することもできる。
【0051】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮すべきとする点を除き、本出願の不可欠の一部とみなすものとする。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 医療システムであって、
患者の体内に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端に連結されており、周囲の解剖学的組織の治療を行うように構成されている膨張可能バルーンと、
前記バルーンの内部で前記シャフトの前記遠位端の周囲に円周方向に分配されており、それぞれの半径方向において超音波を送信し、かつそれぞれの超音波反射を受信するように構成されている、超音波トランスデューサの半径方向のアレイと、
前記超音波トランスデューサから受信した前記超音波反射に基づいて、前記バルーンと前記周囲の解剖学的組織との機械的接触の程度を推定し、ユーザに出力するように構成されている、プロセッサと、
を備える、医療システム。
(2) 前記膨張可能バルーンが、RFアブレーション、マイクロ波アブレーション、不可逆性電気穿孔法、冷凍アブレーション、血管形成術、弁形成術、及び肺拡張治療、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
(3) 前記超音波トランスデューサの半径方向のアレイが、それぞれの半径方向において前記超音波を送信し、かつ前記膨張可能バルーンの外周全体にわたる前記それぞれの半径方向において前記それぞれの超音波反射を受信するように構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
(4) 前記半径方向の1つ又は2つ以上が、前記膨張可能バルーン上に配置された電極の方を向いている、実施態様3に記載の医療システム。
(5) 前記プロセッサが、前記超音波反射に基づいて、前記膨張可能バルーン上の複数の場所と前記周囲の解剖学的組織の表面上の複数のそれぞれの部位との間のそれぞれの半径方向距離を計算し、前記半径方向距離に基づいて、前記バルーンと前記周囲の解剖学的組織の前記表面との前記機械的接触の程度を推定するように構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
【0053】
(6) 前記プロセッサが、前記それぞれの半径方向距離を表すピークを含む、それぞれの一次元エコープロファイルを分析することによって、前記半径方向距離を計算するように構成されている、実施態様5に記載の医療システム。
(7) 前記超音波トランスデューサの各々が、それぞれの半径方向でのそれぞれの一次元エコープロファイルを生成するように構成されている、実施態様6に記載の医療システム。
(8) 前記プロセッサが、他のエコープロファイルとは独立して、前記それぞれの半径方向に沿って各エコープロファイルを分析するように構成されている、実施態様6に記載の医療システム。
(9) 前記プロセッサが、前記半径方向距離をグラフ様式で前記ユーザに提示するように構成されている、実施態様5に記載の医療システム。
(10) 前記プロセッサが、所与の割合で、又は要求に応じて、表示された前記半径方向距離を更新するように構成されている、実施態様9に記載の医療システム。
【0054】
(11) 方法であって、
シャフトの遠位端に連結された膨張可能バルーンを患者の体内に挿入して、周囲の解剖学的組織の治療を行うことと、
前記バルーンの内部で前記シャフトの前記遠位端の周囲に円周方向に分配される超音波トランスデューサの半径方向のアレイを使用して、それぞれの半径方向において超音波を送信し、それぞれの超音波反射を受信することと、
前記超音波トランスデューサから受信した前記超音波反射に基づいて、前記バルーンと前記周囲の解剖学的組織との機械的接触の程度を推定し、ユーザに出力することと、
を含む、方法。
(12) 前記治療を行うことが、前記膨張可能バルーンを使用して、RFアブレーション、マイクロ波アブレーション、不可逆性電気穿孔法、冷凍アブレーション、血管形成術、弁形成術、及び肺拡張治療、のうちの少なくとも1つを行うことを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記超音波を送信することが、それぞれの半径方向において前記超音波を送信し、かつ前記膨張可能バルーンの外周全体にわたる前記それぞれの半径方向から前記それぞれの超音波反射を受信することを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記超音波を送信することが、前記超音波の1つ又は2つ以上を、前記膨張可能バルーン上に配置された電極に向かって送信することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記機械的接触の程度を推定することが、前記膨張可能バルーン上の複数の場所と前記周囲の解剖学的組織の表面上の複数のそれぞれの部位との間の半径方向距離を計算することと、計算された前記半径方向距離に基づいて、前記機械的接触の程度を推定することと、を含む、実施態様11に記載の方法。
【0055】
(16) 前記半径方向距離を計算することが、前記それぞれの半径方向距離を表すピークを含む、それぞれの一次元エコープロファイルを分析することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記一次元エコープロファイルを分析することが、前記超音波トランスデューサの各々によって、それぞれの半径方向での一次元エコープロファイルを生成することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記エコープロファイルを分析することが、他のエコープロファイルとは独立して、各エコープロファイルを分析することを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記機械的接触の程度を出力することが、前記半径方向距離をグラフ様式で前記ユーザに提示することを含む、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記半径方向距離を提示することが、所与の割合で、又は要求に応じて、表示された前記半径方向距離を更新することを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5