(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】SFTSVに結合可能なナノ抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20221108BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221108BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221108BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221108BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20221108BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20221108BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
C07K16/10
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 S
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K48/00
G01N33/531 A
G01N33/569 L
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020538725
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 CN2019097350
(87)【国際公開番号】W WO2021012195
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520248726
【氏名又は名称】源道隆(蘇州)医学科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Y-CLONE MEDICAL SCIENCES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 513, Building B2, BioBay, No. 218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215000, China
(73)【特許権者】
【識別番号】518148331
【氏名又は名称】パンジェン バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】呉 喜林
(72)【発明者】
【氏名】呉 稚偉
(72)【発明者】
【氏名】李 彦磊
(72)【発明者】
【氏名】潘 逸
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516348(JP,A)
【文献】特表2010-534465(JP,A)
【文献】特開2009-040780(JP,A)
【文献】特開2018-023381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補性決定領域であるCDR1、CDR2及びCDR3を含み、CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ以下の表に示す配列を有することを特徴とするSFTSVに結合可能な抗体。
【請求項2】
前記CDR1、CDR2及びCDR3に順に交差配列される4つのフレーム領域FR1、FR2、FR3及びFR4をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体である、ことを特徴とする請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
VHHである、ことを特徴とする請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
ラクダ由来のVHHまたはヒト化のVHHである、ことを特徴とする請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体の、SFTSV検出剤またはSFTSV治療薬物の製造における使用。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体をコードする、
ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載の
ポリヌクレオチドの、SFTSV治療薬物の製造における使用。
【請求項9】
検出抗体と、固体マトリックスと、前記固体マトリックスにコーティングされるコーティング抗体とを含み、前記検出抗体及び前記コーティング抗体は、それぞれ請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体のうちの1種である、ことを特徴とするSFTSV検出キット。
【請求項10】
前記検出抗体のCDR配列は、
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181である、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176である、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である、ことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬分野に関する。さらに特に、SFTSVに結合可能なポリペプチド、前記ポリペプチドの、SFTSV検出剤またはSFTSV治療薬物の製造における使用、及びSFTSV検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome、SFTS)は、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus、SFTSV)によって引き起こされる急性感染症であり、主に、ダニ咬傷又は急性患者の血液、粘膜接触により伝染し、臨床における主な症状は、発熱、血小板減少症、白血球減少症、及び胃腸管、肝臓、腎臓を含む複数の器官の機能異常である。2009年に、SFTSが湖北及び河南で最初に報告されて以外、中国では、16個の省が症例報告を発行しており、2014年の時点までの確認された症例数は3500を超え、かつ発病率が近年絶えずに増加しており、また、韓国、日本、アラブ及び米国において、いずれもSFTS症例が報告されており、該病気の流行地域が拡大していることを示している。現在報告されているSFTSの死亡率は6.3%~30%であるが、韓国及び日本が2016年に公布した死亡率はそれぞれ35.4%及び50%に達した。しかしながら、今まで、臨床においてSFTSに対する特異的な治療薬物がなく、広域スペクトル抗ウイルス療法と対症療法しか実施できず、SFTSの予防及び制御に大きな困難をもたらす。
【0003】
特異的中和抗体は、抗ウイルス治療において非常に良好な臨床効果を有し、例えば、呼吸器合胞体ウイルスモノクローナル抗体Palivizumab及び狂犬病ウイルス抗血清等である。研究によれば、SFTSV表面糖タンパク質(Glycoprotein N、GN)に対する中和抗体は患者の生存率に重要な作用を奏する。以前の研究の結果は、血清に抗GN抗体を有するSFTS患者が全て良好に回復したが、血清にGN抗体を有さないSFTS患者の死亡率が66.7%に達したことを示した。これらの研究は、GNを標的とする中和抗体療法がSFTSVに対抗する効果的な方法であることを示す。
【0004】
1993年、ラクダ科に由来する新型の天然抗体が発見された。該抗体は、軽鎖を自然に欠き、重鎖のみで構成され、その重鎖は、2つの定常領域(CH2及びCH3)、1つのヒンジ領域、及び1つの重鎖可変領域(Variable heavy chain domain、VHH、すなわち、抗原結合部位)を含み、該重鎖可変領域の相対分子量は約13KDaで、通常の抗体の1/10のみであり、かつ分子の高さ及び直径がいずれもナノレベルであり、現在取得可能な最小の機能的抗体断片であり、それにより、ナノボディ(Nanobody、Nb)とも呼称される。ナノボディは、安定性が高く(90℃の条件で分解しない)、親和力が高く、ヒト由来抗体との相同性が80%を超え、毒性及び免疫原性がいずれも低い等の特徴を持つため、最近、免疫診断キットの研究開発、図像学の研究開発、及び、腫瘍、炎症、感染症、神経系疾患等の分野における抗体薬物の研究開発に幅広く用いられる。
【0005】
現在、既知の抗GNのSFTS中和抗体は、2013年に、ファージディスプレイSFTS患者抗体ライブラリースクリーニングによって得られたMab4-5であり、そのIC50は2μg/ml~44.2μg/mlである。中和抗体のIC50は低いほど良好であり、抗体の使用量を大幅に節約して生産コストを節約できるとともに、抗体がインビボで有効な濃度を維持する時間を長くすることができる。以前にSFTS患者の血清の抗体価を検出しており、GNタンパク質に対する抗血清は約100の希釈倍数に過ぎず、これは、抗体価の低いSFTS患者の血清で抗体ライブラリーを構築すると高効率の中和抗体のスクリーニングを制限する可能性があることを示す。従って、新たな技術的手段により、より効果的で安定した、IC50がより低いSFTSV特異的中和抗体を取得することが期待されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、抗原でラクダを免疫することによって、ラクダ由来のナノボディ及びそのVHHを取得し、急性感染したSFTS患者の診断及び治療に用いる。これらの研究に基づいて、本発明は、3つの相補性決定領域CDR1~3を含み、CDR1配列がSEQ ID NO:1~74に示される配列の1つであるかまたはそれを含み、CDR2配列がSEQ ID NO:75~151に示される配列の1つであるかまたはそれを含み、CDR3配列がSEQ ID NO:152~232に示される配列の1つであるかまたはそれを含む、SFTSVに結合可能なポリペプチドを提供する。
【0007】
1つの特定の実施形態では、前記ポリペプチドは、前記CDR1~3に交差配列される4つのフレーム領域FR1~4をさらに含む。たとえば、FR1~4配列を、SEQ ID NO:235~237に示されるように設計することができるが、本発明の範囲は、これに限られない。抗体の特異的識別及び結合能力が、主にCDR領域配列によって決定され、FR配列からの影響が大きくなく、種によって設計できることは、本分野での周知のものである。たとえば、ヒト由来、マウス由来またはラクダ由来のFR領域配列を設計して上記CDRを接続でき、それにより、SFTSVに結合可能なポリペプチドまたはドメイン。
【0008】
1つの好適な実施形態では、前記ポリペプチドは、モノクローナル抗体である。
【0009】
1つの好適な実施形態では、前記ポリペプチドは、VHHである。
【0010】
1つの好適な実施形態では、前記ポリペプチドは、ラクダ由来のVHHまたはヒト化のVHHである。
【0011】
1つの特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、
II)CDR1の配列がSEQ ID NO:54でありかつCDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、又は
CDR1の配列がSEQ ID NO:22でありかつCDR2の配列がSEQ ID NO:100である。
【0012】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR1の配列がXXXSTAYY(SEQ ID NO:233)であり、Xは、任意のアミノ酸であり、たとえばCDR1の配列がSEQ ID NO:4、25、26、62、73から選択され、
II)CDR2の配列がSEQ ID NO:78、80、84、90、103から選択され、
III)CDR3の配列がSEQ ID NO:155、157、161、169、172、179、180、181、210、218、229、230、231から選択される。
【0013】
1つの特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:78であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:155であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:78であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:157であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:80であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO: 157であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:157であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:169であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:172であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:180であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:210であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:229であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:230であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:231であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:90であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:161であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:90であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:179であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:25であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:103であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:179であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:26であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:80であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:87であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:26であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:157であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:62であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:218であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:73であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:80であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:157である。
【0014】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR1の配列がSEQ ID NO:5であり、
II)CDR2の配列がSEQ ID NO:79であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:156であり、又は
CDR2の配列がSEQ ID NO:79であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:157である。
【0015】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR1の配列がSEQ ID NO:6であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:81であり、
II)CDR3の配列がSEQ ID NO:158、213または228である。
【0016】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR1の配列がSEQ ID NO:24であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:102であり、
II)CDR3の配列がSEQ ID NO:178、189または225である。
【0017】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
I)CDR3の配列がSEQ ID NO:170であり、
II)CDR1の配列がSEQ ID NO:66であり、かつCDR2の配列がSEQ ID NO:93であり、又は
CDR1の配列がSEQ ID NO:65であり、かつCDR2の配列がSEQ ID NO:143であり、又は
CDR1の配列がSEQ ID NO:16であり、かつCDR2の配列がSEQ ID NO:93であり、又は
CDR1の配列がSEQ ID NO:68であり、かつCDR2の配列がSEQ ID NO:93である。
【0018】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:21であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:98であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:89であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:106であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:27であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:104であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:18であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:95であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:173である。
【0019】
他の特定の実施形態では、前記ポリペプチドのCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:47であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:125であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:202であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:60であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:142であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:202であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:60であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:138であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:216である。
【0020】
本発明は、上記ポリペプチドの、SFTSV検出剤またはSFTSV治療薬物の製造における使用をさらに提供する。
【0021】
本発明は、上記ポリペプチドの核酸コード配列をさらに提供する。
【0022】
1つの実施形態では、前記核酸コード配列は、DNAコード配列またはRNAコード配列である。
【0023】
1つの特定の実施形態では、前記核酸コード配列は、遺伝子発現カセットに存在する。
【0024】
本発明は、上記核酸コード配列の発現カセットを含む発現ベクターをさらに提供する。
【0025】
1つの好適な実施形態では、前記発現ベクターは、ウィルスベクターである。
【0026】
1つの好適な実施形態では、前記発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)である。
【0027】
本発明は、上記核酸コード配列及び発現ベクターの、SFTSV治療薬物の製造における使用をさらに提供する。
【0028】
本発明は、検出抗体と、固体マトリックスと、前記固体マトリックスにコーティングされるコーティング抗体とを含み、前記検出抗体及び前記コーティング抗体がそれぞれ、上記ポリペプチドのうちの1種であるSFTSV検出キットをさらに提供する。
【0029】
1つの特定の実施形態では、前記検出抗体のCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である。
【0030】
1つの特定の実施形態では、前記コーティング抗体のCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:6であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:81であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:158であり、または
CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である。
【0031】
1つの好適な実施形態では、
I)前記検出抗体のCDR配列は、以下のとおりである。CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、
II)前記コーティング抗体のCDR配列は、以下のとおりである。CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:6であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:81であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:158であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である。
【0032】
1つの好適な実施形態では、
I)前記検出抗体CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、
II)前記コーティング抗体のCDR配列は、以下のとおりである。CDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である。
【0033】
他の好適な実施形態では、
I)前記検出抗体CDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166であり、
前記コーティング抗体のCDR配列は、以下のとおりである。
CDR1の配列がSEQ ID NO:4であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:84であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:181であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:54であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:132であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:176であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:6であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:81であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:158であり、またはCDR1の配列がSEQ ID NO:13であり、CDR2の配列がSEQ ID NO:99であり、かつCDR3の配列がSEQ ID NO:166である。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、致死率が高いが、効果的なワクチン及び特異的抗ウイルス薬物がないSFTSに対して、ナノ抗体薬物の開発及び診断キットの研究開発を行い、GNタンパク質を製造し、フタコブラクダを免疫し、ファージライブラリーを用いてナノボディをディスプレイするプラットフォーム技術等によって、GNに特異的結合されるナノ抗体VHHをスクリーニングし、そのCDR配列を同定し、ヒト化のVHH-huFc1(SNB)を構築するとともに、ヒト化マウスモデルでSFTSV感染の治療におけるSNBによる治療効果をインビボ評定する。本発明は、SFTSの臨床治療にナノ抗体の潜在的かつ新しい薬を提供するとともに、SFTSの診断に対応する検出キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】sGNでラクダを3回目、4回目免疫した1週間後の抗血清力価の検出曲線である。
【
図2】ラクダを4回目免疫した1週間後の異なる希釈度の抗血清がVero細胞のin vitroのSFTSVウイルス感染を阻害する曲線であり、免疫前の血清を対照として使用する。
【
図3】sGN-VHHファージ抗体ライブラリーをテンプレートとして増幅されたPCR生成物の電気泳動図である。
【
図4】sGN-VHHファージ抗体ライブラリーのパニングアッセイであり、ここで、AはsGNタンパク質に対してパニングされた後のファージライブラリーのELISA検出統計図であり、Bは2回目(2
nd)及び3回目(3
rd)パニングされた後のファージ抗体ライブラリーからそれぞれ96個のクローンを選択してファージELISA検出を行った統計図である。
【
図5】VHH抗体の原核生物発現のELISA検出統計図であり、各ドットは1つのクローンを表し、縦座標はsGNのOD450/空白対照のOD450であり、比が5.0より大きい場合陽性として定義される。
【
図6】陽性VHH抗体がSFTSVウイルス感染を中和する実験の統計図であり、1つのドットは1つのクローンを表し、Y軸は異なるウイルスに対する相対阻害率である。
【
図7】異なる精製濃度のSNBとsGNタンパク質の結合のELISA検出を示し、異なる色は異なるクローン番号を表す。
【
図8】異なる濃度の抗体が存在する環境でウイルス感染によって得られた蛍光染色の写真であり、蛍光ドットはSFTSVウイルスを表し、ウイルス非感染の細胞を非感染対照(No infection control)として使用し、抗体を加えないウイルス感染細胞を感染対照(infection control)として使用する。
【
図9】
図7で統計された蛍光ドットに基づいて得られた抗体のSFTSVウイルスに対する阻害率を示す図である。
【
図10】チャレンジ後の異なるマウスの相対阻害率の統計図であり、相対阻害率は1日目~9日目のウイルス量/6日目のウイルス量であり、ヒト免疫グロブリン(Hu-IgG)を対照として使用する。
【
図11】SNB二重抗体サンドイッチELISAで検出したsGNタンパク質の統計図であり、ここで、それぞれSNB01(A)、SNB02(B)及びSNB37(C)を検出抗体とし使用し、Dはコーティング抗体SNB01であり、検出抗体SNB37の二重抗体サンドイッチELISAで検出した異なる濃度のsGNのOD450統計曲線を示す。
【
図12】コーティング抗体SNB01、検出抗体SNB37の二重抗体サンドイッチELISAで検出した異なる濃度のSFTSVウイルスのOD450の統計曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.免疫原の調製
NCBIウエブサイトにおけるHB29 SFTSVのGNタンパク質配列及び遺伝子配列情報に基づいて、ラクダによるGNタンパク質に対する特異的抗体の生成を効果的に誘導できるペプチドsGNを分析して設計し、His-tag(sGN-his)又はウサギFc(sGN-rFc)をC末端に接続して後続の精製及び検出を行った。
【0037】
2.ラクダ免疫と抗血清の取得
250μgのsGN-rFcタンパク質と250μlのフロイント完全アジュバントの乳化混合物でフタコブラクダを1回目免疫し、14日目、28日目、42日目に、sGN-rFcタンパク質と250μlのフロイント不完全アジュバントで3回追加免疫し、2回目及び3回目の免疫の1週間後、採血して抗血清力価を検出し、4回目の免疫の1週間後、ファージ抗体ライブラリーの構築のために200mlの血液を採血した。
【0038】
抗血清力価をELISAで検出し、0.5μg/ml濃度のGNタンパク質を用いて検出プレートをコーティングし、勾配希釈された抗血清又は精製された抗体100μlを各ウェルに加え(免疫前のラクダの血清を対照として使用した)、37℃で1.5hインキュベートし、2回洗浄し、1:10000に希釈されたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識Goat anti-Llamma IgG (H+L)二次抗体を各ウェルに加え、37℃で1hインキュベートし、4~6回洗浄した後、100μlのTMB基質を加え、37℃で10minインキュベートし、50μl 0.2MのH2SO4で反応を停止し、OD 450nmを測定した。ELISAで検出された血清力価は、OD450が空白対照の2.1倍以上且つ0.2より大きい場合の最高の希釈倍数として規定された。
【0039】
結果が
図1に示され、3回目及び4回目の免疫の抗血清力価はそれぞれ2.19×10
6及び4.61×10
6であった。これで分かるように、該抗原は、ラクダによるGNタンパク質に対する特異的な高力価の抗血清の生成を誘導することができた。
【0040】
該高力価のラクダ抗血清がSFTSVウイルス感染を効果的に阻害できるかどうかをさらに検証するために、ウイルス感染の中和実験を行った。異なる希釈濃度の抗血清及び免疫前血清をそれぞれSFTSVウイルスと60minインキュベートし、その後Vero細胞に移し、48h後、sGNタンパク質の細胞免疫蛍光染色によってSFTSVの感染を判断した。中和実験の結果は、sGNによって誘導された抗血清が90%のSFTSV感染を阻害するID90は、540倍希釈度以上であることを示した(
図2)。以上より、sGNは高力価抗血清を誘導しており、且つ該抗血清はSFTSVウイルス感染を効果的に阻害する能力を有した。
【0041】
3.VHHファージライブラリーの構築及びパニング
免疫後の200mlのラクダの末梢血を収集し、リンパ球分離液(GE Ficoll-Paque Plus)でラクダのPBMCを分離して取得し、TRIzol操作マニュアルに基づいて、RNAを抽出し、oligo(dT)を利用してcDNAに戻し、プライマー増幅、及び分子クローニング等の技術により、ラクダのVHH遺伝子をphagemidプラスミドにクローニングし、TG1細菌を形質転換し、VHHファージライブラリーを得た。sGN-VHHファージライブラリーの構築が成功したがどうかをさらに確認するために、sGNで免疫したラクダのVHH標的遺伝子をPCR増幅した結果、標的バンドが500bpであり、大きさが予想に一致し(
図3)、該sGN-VHHファージ抗体ライブラリーにはVHH遺伝子が含まれていることを表した。50個のクローンを選択してシークエンシングし、シークエンシングの結果は、シークエンシングされた配列には完全に同じの反復配列がないことを示し、比較の結果は、差分配列がほとんどCDR結合領域に位置することを示した。検出した結果、該構築されたsGN-VHHファージ抗体ライブラリーの容量が2.0×10
9であり、陽性率が100%であり、配列多様性(Diversity)が100%であり、フレームレート(In frame rate)が95%より大きかった。
【0042】
M13KO7ヘルパーファージの助けを借りて、VHH-phagemid形質転換された細菌を用いて、ファージ抗体ライブラリーを復活し、PEG/NaClで沈殿した。50μg/mlのコーティングしたsGN-Hisタンパク質でファージ抗体ライブラリーを3回濃縮した。濃縮されたファージを、溶離して、形質転換し、プレートコーティングし、モノクローナルを選択してファージとsGNタンパク質ELISAの結合アッセイを行い、結合値>1.0のクローンをシークエンシングし、発現ベクターpVAX1にクローニングし、293F細胞にトランスフェクトしてナノモノクローナル抗体を発現して生成した。
【0043】
パニングされた後のライブラリーとGNタンパク質の結合検出を行った。ファージELISAの結果は、濃縮前のsGN-VHHファージライブラリーとsGNタンパク質の結合値が0.57であり、1回目、2回目、3回目濃縮された後のファージライブラリー値がそれぞれ0.98、2.2、3.0であることを示した(
図4A)。濃縮された後のライブラリーにおけるsGN-VHHタンパク質に結合した陽性ファージの割合を更に検証するために、2回目及び3回目の濃縮後のライブラリーからそれぞれ96個のクローンを選択して単一のファージELISA検出を行った。結果は、2回目のライブラリーにおいて、24.5%の単一のファージクローンが陽性であり、3回目のライブラリーにおいて、67%のファージクローンが陽性であり、且つ結合の平均値が約3.0であり(
図4B)、sGNタンパク質のパニングによって、高結合能力を有するsGN-VHHファージライブラリーの濃縮が成功したことを、示した。
【0044】
4.VHHの原核生物発現ライブラリーの構築及びVHHの発現
上記2回目及び3回目のパニング濃縮後の2nd-sGN-VHH及び3rd-sGN-VHHファージ抗体ライブラリーをPCR増幅し、抗体ライブラリーにおけるすべてのVHHの遺伝子断片を取得して精製し、VHHの遺伝子断片を原核生物発現ベクターにクローニングし、SS320株を形質転換して、VHHの原核生物発現抗体ライブラリーを構築し、原核生物発現抗体ライブラリーをプレートにコーティングし、一晩培養し、翌日、1000個のモノクローナルコロニーをランダムに選択し、IPTGを用いて誘導して抗体上清を発現し、抗体の上清とsGNタンパク質のELISA結合検出を行った。
【0045】
結果は、細菌の上清がsGNタンパク質に結合したが、空白対照に結合せず、sGN結合値/空白対照値は5.0より大きいことを示した(
図5及び表1)。これらの配列をシークエンシングして比較し、反復配列を除去し、最終的に142個のVHH抗体配列(SEQ ID NO:1~142)を得た。さらなる実験により、この142個のVHH抗体及びVHH抗体から得られたCDRは全てSFTSVウイルスに特異的に結合できることを実証した。
【0046】
表1 142個のVHH抗体とsGNタンパク質の結合値及びその配列
【0047】
該配列がSFTSVウイルス感染を良好に阻害できるか否かをさらに検証するために、122個のVHH抗体の細菌上清を処理後にSFTSVウイルスとインキュベートし、抗体がSFTSVウイルス感染を阻害できるか否かをテストした。中和実験の結果は、23個の抗体が50%以上の阻害効果を達成できることを示した(
図6)。抗体番号は、それぞれG77、G78、G79、G87、G95、G103、G109、G111、G112、G113、G114、G116、G117.1、G121、G124、G125、G126、G131、G133、G145、G170及びG171であった。
【0048】
5.VHH-huFc(SNB)の真核生物発現
分子クローニング技術により、上記23個のナノモノクローナル抗体VHH遺伝子をヒトFc遺伝子と融合させて、pVAX1真核生物発現ベクターに挿入し、Nb-huFc-pVAX1発現プラスミドを構築して形成した。構築されたNb-huFc-pVAX1を、293F細胞にトランスフェクトし、Nb-huFc(SNB)を発現して生成し、且つProtein Gを利用して精製した。精製されたVHH-huFc1(SNB)抗体を収集してELISA測定を行って、一部の抗体が非常に良好な結合能力を有することを示した(
図7)。構築されたヒト化抗体の対応する配列番号が表2に示された。
【0049】
表2 ヒト化抗体SNBの対応する元の抗体の番号及びCDR配列
【0050】
BIAcore x100装置を介して、アミノカップリングキットの手引書に基づいて、4000 RUのsGNタンパク質をCM5チップにカップリングし、カップリングされたチップをエタノールアミンで密封した。抗体を各濃度に勾配希釈した。Bioevaluation version 4.0ソフトウェアで検出プログラムを設定した。抗体の濃度を低濃度から高濃度へ検出し、各濃度ごとに2回繰り返し検出し、結合時間を180秒間、流速を30μl/minに設定し、解離時間を180秒間、流速を30μl/minに設定し、pH2.5 10mMのグリシンの場合、流速を30μl/minに設定し、時間が30秒間であり、チップの表面を活性化して、再生し、PBSで5秒間バランスを取り、流速が30μl/minであった。実験のデータを分析して、結合、解離及び親和定数を取得した。結果が表3に示され、ほとんどの抗体の親和力が10-9(Nano moleレベル)に達することができ、そのうち、2つの抗体SNB02とSNB07が10-10(Pico moleレベル)に達することができた。これで分かるように、親和力の高いVHH-huFc1(SNB)抗体を取得した。
【0051】
表3 SNB親和力の概要
注:kaは結合定数であり、kdは解離定数であり、KDは親和力である。
【0052】
6.Vero細胞のSFTSV感染におけるSNBの中和
VHH-huFc1におけるSNB02とSNB16を選択してin vitro中和実験を行った。抗体を異なる濃度に勾配希釈して、SFTSVウイルスとともに、5%のCO2で37℃において1時間インキュベートし、1.5×104個のVero細胞を加え、5%のCO2で37℃において、インキュベーターで48時間培養した後、細胞の上清を除去し、4%のパラホルムアルデヒドを加えて15min固定し、洗浄して密封し、抗GNのウサギポリクローナル血清(1:1000に希釈される)を加え、4℃で一晩放置し、PBSTで洗浄した後、50μlの抗ウサギ二次抗体(Alexa Fluor 488 Anti-Rabbit IgG (H+L), Code: 111-545-144,Jackson ImmunoResearch Laboratories,1:1000に希釈される)を加え、室温で40minインキュベートしてから、10minDAPI染色し、洗浄して、蛍光顕微鏡で写真を撮って観察し、緑色のスポットと蛍光強度を統計して中和阻害率と中和力価を計算し、阻害率=[1-(サンプル群の蛍光強度の平均値-細胞対照群CCの蛍光強度の平均値)/(対照処理群の蛍光強度の平均値-細胞対照群CCの蛍光強度の平均値)]×100%であった。中和力価(ID50又はND50)は、阻害率が50%である場合の希釈度の倍数として表された。
【0053】
結果は
図8及び9に示され、SNB02は、非常に良好な中和活性を有し、抗体濃度が9μg/mlである場合、阻害率が83.5%に達することができた。ヒト化マウスモデルでSNB02の効果を評定した。
【0054】
7.SNBによるSFTSインビボ感染の治療
ImmunodeficientNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ (NCG)マウスは南京大学モデル動物所から購入され、NSGマウスに類似し、該マウスはSCIDマウスの上でIL2受容体遺伝子がないため、インビボでマウスT細胞、B細胞及び非常に少数のNK細胞がない。1.0~15×10
7個のPBMCを4~6週齢のNCGマウスに腹腔内注射し、3週間後、採血して、ヒトCD45
+、CD3
+、CD4
+及びCD8
+を染色して、ヒトT細胞を検出した。ヒトCD45陽性細胞の割合が5%以上に達し、マウスのヒト化に成功したと判定した。2×10
7個のTCID50のSFTSVウイルスを接種し、感染後の3日目、6日目に、それぞれ一回抗体治療を行い、すなわち、400μgのSNB02抗体/マウス(抗体の量が約20mg/kgマウスである)を腹腔内注射した。毎回抗体治療の前及び9日目に採血し、マウスの血液におけるウイルス量を検出し、それにより、マウスがSFTSウイルスに正常に感染しているかどうか及びSNB抗体がマウスへのSFTSV感染を制御できるかどうかを判断し、ヒトIgGを対照として使用した。結果は
図11に示され、治療を完了した3日後(9日目)、マウスのインビボのウイルス量を検出し、SNB02治療を受けた9匹のマウスのうち、7匹のマウスのインビボのウイルス量がいずれも非常に良好に阻害され、Hu-IgG治療を受けた対照群のマウスでは、インビボのSFTSウイルスが大量に増殖し、2つの群のウイルス阻害率の比較分析によれば、SNB02がSFTSウイルス感染を有意に制御できることを示した(
図10)。
【0055】
8.AAVウイルスベクターに搭載されたSNB02によるインビボ実験
アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、非病原性の野生型アデノ随伴ウイルスに由来し、安全性が高く、宿主細胞の範囲が広く(分裂細胞と非分裂細胞)、免疫原性が低く、インビボで外来遺伝子を発現する時間が長い等の特徴を有するため、最も将来性のある遺伝子導入ベクターの1つと見され、世界中で、遺伝子治療及びワクチン研究において幅広く応用されている。
【0056】
AAV Helper-Freeウイルスパッケージングシステムは、Cell Biolabs, San Diego USAから購入された。分子クローニング技術により、上記SNB02のDNAコード配列をpAAV-MCSプラスミドに挿入し、シークエンシングにより構築が成功したと証明した後、構築されたプラスミドpAAV-AbをpHelper及びpAAV-DJプラスミドと、1:1:1の質量比で、PEIトランスフェクション試薬を用いてAAV-293T細胞に共トランスフェクトした。トランスフェクトした後、それぞれ48、72、96及び120時間に上清を収集し、5xPEG8000(sigma)で濃縮し、最終的に、1.37g/mlの塩化セシウムで精製した。精製されたAAVをPBSに溶解し、アッセイして分注し、-80℃で保存した。
【0057】
上記ヒト化マウスに2×107個のTCID50のSFTSVウイルスを接種し、感染後の3日目に採血して、AAV-SNB02(1×1011gc/100μl)を筋肉内注射し、6日目、9日目及び12日目に採血し、ウイルス量を検出し、AAV-GFPを対照群として使用した。結果は、AAV-SNB02を注射したマウスのインビボのSFTSVウイルス量がいずれも非常に低く、対照群のマウスのインビボのSFTSVウイルスが大量に増殖していることを示した。
【0058】
9.二重抗体サンドイッチELISA
各濃度のSNB抗体を用いて検出プレートをコーティングし、各ウェル100μlであり、37℃で2hインキュベートし、2~4回洗浄し、10%ウシ血清で密封し、各ウェル200μlであり、37℃で1hインキュベートし、2~4回洗浄し、勾配希釈されたタンパク質を各ウェルに加え、ウイルス又はサンプル100μlを、37℃で1.5hインキュベートし、2回洗浄し、1:200~1:10000に希釈されたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識SNB抗体100μlを各ウェルに加え、37℃で1hインキュベートし、4~6回洗浄した後、100μlのTMB基質を加え、37℃で10minインキュベートし、50μl 0.2MのH2SO4で反応を停止し、OD450nmを測定した。ELISAで検出された陽性サンプルは、OD450が空白対照(すなわち非コーティング被検出物であり、図においてNegでマークされている)の2.1倍以上であり且つその光密度値が0.2より大きい場合の最高の希釈倍数として規定された。
【0059】
結果は、コーティング抗体がSNB02又はSNB07であり、検出抗体がSNB01である場合に、該組み合わせはsGNタンパク質と陰性対照タンパク質を識別でき(
図11A)、検出抗体がSNB02である場合に、ELISAアッセイバックグラウンドが非常に高く(
図11B)、検出抗体がSNB37であり、コーティング抗体がSNB01、SNB02及びSNB07である場合に、ELISAはsGNタンパク質と陰性対照タンパク質を識別できる(
図11C)ことを示した。SNB抗体は、二重抗体サンドイッチELISA検出sGNキットの開発に適用でき、SNB01とSNB37の二重抗体の組み合わせの検出感度は3.9ng/mlであった(
図11D)。測定した結果、SFTSV真正ウイルスを検出する該組み合わせの感度が3.75×10
6gc/mlであり(
図12)、該キットがSFTSVの真正ウイルスを検出できるだけでなく、コピー数が10^6のSFTSVの真正ウイルスも検出できた。これで分かるように、該ナノ抗体二重抗体サンドイッチ検出キットは、SFTSVウイルス感染の検出に適用できた。
【0060】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則から逸脱することなく、行われるいかなる補正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【配列表】