(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】物質混合物の触媒変換のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/652 20060101AFI20221108BHJP
B01J 23/888 20060101ALI20221108BHJP
B01J 27/188 20060101ALI20221108BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221108BHJP
C07C 29/60 20060101ALI20221108BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20221108BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
B01J23/652 Z
B01J23/888 Z
B01J27/188 Z
B01J35/10
C07C29/60
C07C31/10
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020545345
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 AT2019060065
(87)【国際公開番号】W WO2019165486
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-01-06
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513277290
【氏名又は名称】オーエムファウ ダウンストリーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】パウル シェーフェル
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0317901(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105688906(CN,A)
【文献】国際公開第2017/208497(WO,A1)
【文献】特開平09-255326(JP,A)
【文献】特開2007-326849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005614(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255171(US,A1)
【文献】特開2010-018602(JP,A)
【文献】特開平08-165260(JP,A)
【文献】特開2013-224267(JP,A)
【文献】特開2008-019397(JP,A)
【文献】特表2001-524541(JP,A)
【文献】特開2008-074764(JP,A)
【文献】特開2005-015323(JP,A)
【文献】特表2010-539300(JP,A)
【文献】SHANTHI PRIYA, S. et al.,Applied Catalysis A: General,2015年03月28日,Vol.498,pp.88-98,DOI:10.1016/j.apcata.2015.03.025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 29/60
C07C 31/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器(2)中における触媒変換のための方法
であって、
触媒の基材が無機材料及び/又は金属酸化物を含み、
前記基材が10~25Åの表面における孔径を備え、
前記触媒が、シリコタングステン酸又はリンタングステン酸、及び白金、ルテニウム、銅又はニッケルを含み、
グリセロールを含有する前記物質混合物が、粗製グリセロールであり、
前記粗製グリセロールが、少なくとも60wt%のグリセロール分を有する液体混合物であり、
前記液体混合物が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び/又は塩素及びリンを含む1~10wt%のミネラル分、並びに5wt%より多い水分を含有し、かつ
グリセロールを含有する前記物質混合物の反応が、固定床反応器(2)中で連続的に行われる、
触媒変換のための方法。
【請求項2】
前記基材が押出ペレッ
トであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固定床反応器(2)が単段式であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
シリコン、タングステン、ジルコニウム及び/又はアルミニウムの混合酸化
物が、
前記触媒の基材として使用さ
れる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
以下の工程
のうち1つ又は複数を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法:
貯蔵コンテナ(3)からグリセロールを含有する物質混合物を取り出す工程、
グリセロールを含有する
前記物質混合物をろ
過する工程、及び/又は
混合器(5)中で、グリセロールを含有する
前記物質混合物を水と混
合する工程。
【請求項6】
以下の工程
のうち1つ又は複数を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法:
グリセロールを含有する
前記物質混合物を
、熱交換器(6
)を用いて加熱する工程、
グリセロールを含有する
前記物質混合物
に水素を添加する工程、
方法が断熱となるように、反応前のグリセロールを含有する
前記物質混合物への熱輸送のために、固定床反応器(2)中で反応した物質混合物の熱を熱交換器(6)に戻す工程。
【請求項7】
水素が、固定床反応器(2)中で反応した
前記物質混合物から分離装置(9)によって回収さ
れることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応が、固定床反応器(2)中で、150~300
℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応が、固定床反応器(2)中で、10~100ba
rの圧力で行われることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器中における触媒変換のための方法及び装置に関するものであり、触媒の基材は無機材料及び/又は金属酸化物を含む。さらに、本発明は、触媒、及びグリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器中における触媒変換のための触媒を製造するための方法に関するものであり、触媒の基材は無機材料及び/又は金属酸化物を含む。
【背景技術】
【0002】
産業化及び現代化のために、エネルギーのための、特に燃料のための要求は、長期間にわたって増加してきている。この理由のために、多くの指令が発行され、例えば欧州連合(EU)によって、化石燃料からの温室効果ガスの排出を削減する指令が発行されてきた。化石燃料は再生可能エネルギーによって部分的に取って代わられている。EUでは、例えば、再生可能エネルギー指令の現行の改正されたバージョン(RED II)によって、このことが規制されていて、RED IIはエネルギーの14%の割合が再生可能な原材料に由来しなければならないことを規定している。さらなる目標は、指令中で明示される原材料の限定的なリストから製造することが許可されるバイオ燃料のみを用いて、輸送分野における燃料に、2022年から0.2e%(エネルギーパーセント)、2025年から1e%、及び2030年には3.5e%の量の高度なバイオ燃料(advanced biofuels)を追加することである。高度なバイオ燃料の利点は、高度なバイオ燃料は直接的には食糧生産と競合しないこと、及びそれゆえに減少した間接的土地利用変化(ILUC)しかもたらさないことである。現在は、これらの成分の製造のためのごく少数の産業的方法しかない。そのプロセスの多くは、小規模に試験されるのみであり、それゆえにこの種類の成分は高価であり、十分な量を獲得するのは困難である。
【0003】
粗製グリセロールは、EUの指令によってリストに挙げられる出発材料である。バイオディーゼル製造から、約10wt%のグリセロールが、副生成物として粗製グリセロールの形態で得られる。粗製グリセロールは、通常、プロセスに関係する理由のために、塩化ナトリウム、水、メタノール、硫酸、モノグリセリド、ジグリセリド、灰、分離が十分でない脂肪残余物及び他の物質によって汚染される。用語「粗製グリセロール」(crude glycerol)は、本発明の意図の中で、少なくとも60wt%のグリセロール分を有し、加えて1~10wt%のミネラル分、すなわちカチオン分、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素及びリン、並びに5wt%より多い水分もまた有する液体混合物を意味すると理解される。粗製グリセロールは、とりわけその好都合な価格、液性及び良好な入手しやすさのために、高度なバイオ燃料の製造に有意に貢献する大きな発展性を有する。エネルギーの観点から、対応するモノアルコール、すなわち1-プロパノール(n-プロパノール)及び/又は2-プロパノール(イソプロパノール)を、グリセロール(プロパン-1,2,3-トリオール)から、化学量論に基づいて製造することが最も有利である。加えて、高度なバイオプロパノールの一層高いエネルギー密度のために、高度なバイオエタノールを用いる場合より、混和成分として比較的少ない量が要求される。高度なバイオプロパノールの製造のための最も見込みがある出発材料は、バイオディーゼル製造の副生成物としての粗製グリセロールである。
【0004】
高価値の又は有用な化学物質へのグリセロールの変換のための多くの様々なプロセス、例えばグリセロールの、酸化、エステル化及び水素化分解が、既に試験及び分析されてきた。
【0005】
例えば、米国特許第8507736号明細書は、グリセロールから短鎖のアルコールを製造するための方法を示していて、短鎖のアルコールがバイオディーゼル製造の副生成物として製造される。具体的には、生成物流(product stream)は、生成物流中の一価アルコールの合計の質量の50%より多くを占めるプロパノールとともに、エタノール、メタノール及びプロパノールの混合物を含んでよい。処理は、脱水及び水素化の両方を含む単一の反応工程で行うことができる。使用される触媒は、脱水触媒と水素化触媒の混合物であってよく、脱水触媒はタングステン及びジルコニウムの酸化物を含有してよく、水素化触媒は白金族の金属を含有してよい。単一の工程での反応は約300℃で行われる。
【0006】
さらに、米国特許第8946458号明細書は、酸素化炭化水素を処理するための触媒、方法及び反応器システムのシリーズを開示している。特有の記載は、バイオディーゼル製造からの副生成物としてのグリセロールの応用としての使用から作られている。これから得られる生成物は、1-プロパノール及びアセトンを、他のものの中で含む。説明されている多くの様々な触媒とともに、異種の水素化脱酸素(HDO)触媒が反応のために使用されている。ドーピングに関して、タングステン―ジルコニウム担体上に白金及びモリブデンを有する二金属の触媒を使用することができることが記載されている。100~300℃の範囲が、4~140barの圧力における反応温度として与えられている。
【0007】
欧州特許第2016037号明細書は、グリセロールを含む水性供給材料を処理するための、単一の触媒プロセスで、及びその場で発生させた水素を使用して、とりわけアルコールを、特にエタノール及びプロパノールを含むアルコールを製造する方法を示している。触媒担体は、タングステンを用いて処理されたシリコン又はジルコニウムであってよい。これに関連して、ジルコニウムの酸化物の使用がとりわけ好ましいことが記載されている。触媒はまた、遷移金属、例えば白金又はロジウムを含有してよい。方法は2つの化学工程で行われ、そのために、80~400℃及び100~300℃の、異なる、しかし重複する温度範囲が明示されている。
【0008】
中国特許第101054339号明細書は、多くのチューブを有する固定床触媒を用いた、連続的なプロセスにおける、バイオディーゼルの副生成物であるグリセロールのn-プロパノールへの処理のための方法を示している。使用される触媒担体は、とりわけ活性成分として、タングステン、ロジウム、モリブデン及び白金とともに、ZrO2を含む。反応温度は、180~360℃である。
【0009】
さらなる方法は、例えば米国特許第8075642号明細書、独国特許出願公開第102008026583号明細書、Wangらによる”Catalytic transformation of glycerol to 1-propanol by combining zirconium phosphate and supported Ru catalysts”、RCS Advances vol.6、16 March 2016、pp 29769-29777、中国特許第103706392号明細書、Xufeng Linらによる”Hydrogenolysis of Glycerol by the Combined Use of Zeolite and Ni/Al
2
O
3
as Catalysts:A Route for Achieving High Selectivity to 1-Propanol”、Energy&Fuels vol.28、No.5、15 May 2014、pp 3345-3351、及び国際公開第2013/163561号において開示されている。
【0010】
しかし、全ての現在の利用可能な方法は、1つ又は複数の本質的な欠点を有する。通常、精製グリセロールを直接処理することが可能なだけであり、粗製グリセロール又は不純なグリセロールを直接処理することはできない。粗製グリセロールから精製グリセロールを得るために、全ての製造されたグリセロールを精製グリセロールにさらに処理することはできないが、不純物を除去せねばならない。しばしば、唯一の純化工程は、粗製グリセロールからメタノールを回収することである。多数の純化プロセスがないために、粗製グリセロールは、精製グリセロールよりかなり安価である。特に、これらの要件を十分に満たす、公知の触媒又は触媒の製造のための方法はなく、従って連続的な操作を妨げている。従来技術は、例えば塩又は硫黄を触媒に付着させる場合があり、従って触媒の有効性を減少させる。さらに、全ての方法は、複雑であるか、低い選択性若しくは低い変換速度を有するか、及び/又は実行するのに高い費用がかかるかである。
【発明の概要】
【0011】
従って、本発明の目的は、全て又は幾つかの上で記載された欠点を克服すること、並びに特に、グリセロールの変換率及び生成物プロパノールへの選択性の両方が高い方法、装置、触媒、並びに触媒の製造のための方法を作り出すことである。別の目的は、コストのかかる予備の、純化又は調製を用いずに、粗製グリセロールを燃料又は混和可能な燃料成分にさらに処理することである。さらなる目的は、プロセスの進行の間に、触媒として活性な、しばしば容易に水に溶ける化合物が溶出するのを妨げるために、触媒として活性な化合物を触媒の基材に固定化することである。さらに、提案された方法を実験室から大規模なプラントへと十分な規模に移行することが可能であるはずであり、すなわち、提案された方法は適切な大規模化を可能とするはずである。さらに、副生成物、例えば二量体化生成物及びケトンの生成が制限される条件が達成されるはずである。
【0012】
このことは、独立請求項の対象及び方法によって達成される。
【0013】
特に、このことは、触媒の基材が10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åの表面における孔径を備える、上で説明された、グリセロールを含有する物質混合物をプロパノールに変換するための方法及び装置によって達成される。さらに、このことは、触媒の基材が10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åの表面における孔径を備える、上で説明された、グリセロールを含有する物質混合物をプロパノールに変換するための触媒によって、及び触媒の基材の製造のためのベース材料が10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åの表面における孔径を備えるか、又は触媒の基材の製造のためのベース材料がUSYゼオライトを含むかである、上で説明された、グリセロールを含有する物質混合物をプロパノールに変換するための触媒を製造するための方法によって達成され、触媒の基材が10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åの表面における孔径を備えるように、USYゼオライトは脱アルミニウム化される。前記孔径はまた、基材の内側に、又はその一部に提供されてもよい。
【0014】
試験は、この製造方法によって、及び前記孔のサイズを有する基材を選択することによって、触媒として活性な、その他の点では、通常は高い水溶性を有する物質、例えばシリコタングステン酸は、触媒基材によく固定化されていることを示した。このことは、例えば液体、液相中で起こる反応の場合、例えば25~25barの圧力の下で、触媒、特に脱水触媒は水和、すなわち水に溶解すること、によって溶解することはできず、安定して固定化されたままであり、従って、活性中心は自由にアクセス可能であり、水性反応にもかかわらず保持されることを意味する。
【0015】
有利には、反応は単一の工程で起こるべきである。先行研究は、反応において、脱水に次いで水素化がなければならないため、結合された触媒システムが必要であることを示唆した。それゆえに、反応を単一の工程で行うことができるように、2つの異なる触媒の系を1つの基材に結合することは有利である。触媒として活性な物質、特に脱水触媒、例えばシリコタングステン酸は、一方では物理化学的相互作用、おそらくは吸着のファンデルワールス力のために、並びに他方では理想的な孔径及びその孔径に由来する触媒として活性な物質の影響の受けにくさのために、最も有望である。さらに、触媒として活性な物質、特に脱水触媒は、その分子サイズのために、特に粗い孔中で付着が起こるとともに、好ましくは表面の近くに付着され、水素化触媒とは対照的に、脱水触媒は基材中にさらに進んで入り込むことができない。
【0016】
グリセロールを含有する物質混合物をプロパノールに変換するための方法に関して、使用される触媒の基材が押出ペレット、好ましくはセラミックである場合、そのことは有利である。有利には、触媒ペレットの押し出し及び続く調整によって、有機バインダーは基材表面でほとんど残余物無く揮発して、ペレットは対応する強度を獲得する。
【0017】
好ましくは、グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの変換は、固定床反応器中で、上で説明された触媒を用いて連続的に行われる。このようにして、可能な限り高いグリセロールの処理量を達成することができ、加えて、85%超の、プロパノールへの非常に高い変換率を達成することができる。触媒の特殊な基材によって可能となる、その他の点では水溶性である脱水触媒の固定化によって、触媒活性はこの高いレベルで長期間維持され、触媒はインターバルを変化させ、従ってプラントの中断時間を最小に減少させる。固定床反応器は好ましくは単段式である。
【0018】
方法の好ましい異なる形において、シリコン、タングステン、ジルコニウム及び/又はアルミニウムの混合酸化物、好ましくは二酸化ジルコニウム、(好ましくは合成アルミノケイ酸塩及びアルミノリン酸塩)ゼオライト、好ましくはVFIゼオライト又はVPI-5ゼオライト、脱アルミニウム化されたUSYゼオライト及び/又は二酸化アルミニウムが触媒のための基材として使用される。このような基材は、試験シリーズの進行に対して特に好都合であると判明した。
【0019】
触媒が白金のドープを含む場合、そのことはまた有利である。従来技術によれば、触媒として活性な第二の触媒物質として白金を基材に固定化することに問題はない。現在の従来技術によれば、ZrO2は、グリセロールのプロパノールへの変換のための有利な触媒ではないが、しかし触媒のための担体材料としては、ZrO2は、その高い熱安定性、高い硬度及び還元条件下での良好な安定性のために多くの反応で有利である。酸性中心は、おそらく脱水工程のために必要であり、脱水工程の中で、アセトール及び3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドは生成し得るグリセロールの生成物である。リンタングステン酸もまた、脱水工程を可能とするものである場合がある。有利には、金属触媒は中間生成物の水素化の要因である。貴金属、例えば白金は、おそらく水素分子を活性化するために、水素化触媒であることが知られている。ルテニウムもまた、他の触媒ほどには硫黄に対して感受性がないため、水素触媒であり得る。卑金属(非貴金属)、例えば銅又はニッケルもまた、水素触媒であり得る。一般に、触媒は、酸性中心と水素化中心(hydrogenation centres)との最適な比を含むべきであり、有利には、触媒被毒に対して可能な限り抵抗するものであるべきである。基材に加えて、好ましくは、触媒の組成物は0.5~5wt%、好ましくは1~3wt%、特に好ましくはおおよそ1.5wt%の、白金、ルテニウム、銅又はニッケルの割合、及び5~20wt%、好ましくは7.5~15wt%、特に好ましくはおおよそ12wt%のシリコタングステン酸又はリンタングステン酸の割合からなる。
【0020】
出発材料として、すなわちグリセロールを含有する物質混合物として、粗製グリセロール、工業用グリセロール及び/又は純化グリセロールを使用することが可能である。粗製グリセロールが使用される場合、粗製グリセロールは低価格を特徴とし、様々な方法の副生成物であるために、そのことは特に有利である。さらに、高度なバイオ燃料のための(法的な)ガイドラインは、とりわけ指令(EU)2015/1513、付属書類IX、パートA、「RED II]としてもまた知られる指令によれば、通常は粗製グリセロールのみを含む。グリセロール含有量及び不純物の割合に関して、工業用グリセロールは、粗製グリセロールと純化グリセロールの間である。
【0021】
好ましくは、方法の第一の工程において、グリセロールを含有する物質混合物は、貯蔵コンテナから取り出され、有利には、ろ過され、グリセロールを含有する物質混合物の質に応じて、特に汚染の程度に応じて物質混合物に含有される、任意の未溶解の固体及び望ましくない付随する物質を特に除去する。グリセロールを含有する物質混合物は、この工程の前又は後に、任意選択で遠心分離されてよい。好ましくは次いで、(好ましくは前処理された)グリセロールを含有する物質混合物は水と混合及び希釈され、好ましくは、グリセロール含有量は5~80%、特に好ましくは10~60%、より一層好ましくは15~50%に調整され、所望の生成物の収率構造(yield structure)に応じて、グリセロール含有量は、化学量論的に可能な、最終生成物における1-プロパノールの所望の濃度(物質の量)の0.7~0.9倍に調節される。この工程が行われた場合、下で、グリセロールを含有する物質混合物は、この工程で得られた、元々の(好ましくは前処理された)グリセロールを含有する物質混合物と水との混合物をいう。
【0022】
有利な方法の工程において、好ましくは、グリセロールを含有する物質混合物は、好ましくは150~300℃、特に好ましくは190~250℃、より一層好ましくはおおよそ220℃で、熱交換器、好ましくは準断熱反応の実行のためのエコノマイザーを用いて加熱される。好ましくは、水素は、グリセロールを含有する物質混合物に、好ましくは静的な混合器中で添加され、化学量論的に可能な、最終生成物における1-プロパノールの所望の濃度(物質の量)の10~60倍より過剰に水素は調整される。
【0023】
この工程が行われた場合、グリセロールを含有する物質混合物は、(任意の先の添加及び純化に加えて)水素と混合された物質混合物をいう。
【0024】
次いで、グリセロールを含有する物質混合物は、好ましくは連続的な触媒固定床反応器を通過する。好ましくは、プロセス流体(グリセロールを含有する反応した物質混合物)は、固定床反応器の後に、熱の投入のために熱交換器に導かれる。有利には、プロセスの熱からのエネルギーは、固定床反応器中での反応の前にグリセロールを含有する物質混合物の余熱を確実にするのに十分であり、すなわち(プラントを始動させるときを除いて)外部の反応エネルギーを与える及び/又は除去する必要がなく、従って反応は有利なことに断熱である。
【0025】
有利には、次いで、プロセス中間体は、元々の圧力の、好ましくは0.2~0.02倍、特に好ましくは0.1~0.03倍、より一層好ましくはおおよそ0.04倍に膨張する。好ましくは次いで、水素は反応した物質混合物から分離装置によって回収され、回収された水素はコンプレッサーによって再圧縮されて、固定床反応器中での反応の前に物質混合物に添加された新しい水素に追加される。反応のために使用される水素の合計の量に対する回収された水素の割合は、好ましくは50~99%、特に好ましくは70~97%である。
【0026】
さらに有利な方法の工程において、有機目標留分は、好ましくは物理的に、特に好ましくは蒸留によって、反応した物質混合物から得ることができ、すなわち、含有され、かつ副生成物として形成されるプロセス水が除去され、純粋なプロパノールが得られる。好ましくは、1-プロパノールと2-プロパノールとの両方が得られる。好ましくは、生成物流は10~22wt%の2-プロパノール及び60~85wt%の1-プロパノール、例えば20wt%の2-プロパノール及び70wt%の1-プロパノールを含有する。一方で、2つの内1つのみもまた得ることができる。好ましくは、1-プロパノール及び/又は2-プロパノールは、処理カスケード(treatment cascade)によって固定床反応器中で反応した物質混合物から水を最初に除去して純粋なプロパノールを得ることによって得られ、分離されたプロセス水は水混合器、通常は従来型の混合器中で新しい水に追加され、水混合物は、特に好ましくは方法中のより速い時点において、特に混合器中で混合するために使用され、より一層好ましくは、回収されたプロセス水は、方法において使用される合計の水の80~100%、好ましくは90~100%の割合を有する。代わりに又は加えて、得られた有機目標留分もまた、さらなる方法の工程において、より長い鎖の炭化水素を作り上げるために、すなわち、それらをオリゴマー化するために、使用することができる。
【0027】
好ましくは、反応は、固定床反応器中で、150~300℃、好ましくは190~250℃、特に好ましくは210~230℃の温度で行われる。実験は、より低い温度では変換率が低く、一方で、高い温度はプロパノールについてより低い選択性をもたらし、記載された温度間隔で、とりわけ210~230℃の間隔で、エネルギー入力と変換率と選択性との間の最適な比に関して、効率は良好であることを示した。
【0028】
好ましい異なる形において、変換は、固定床反応器中で、10~100bar、好ましくは15~75bar、より一層好ましくは25~50barの圧力で行われ、これは、先述の条件の下で、特に良好な効率がまた達成されるからである。
【0029】
特に、本発明による方法の結果として得られる生成物流は0.1~5wt%のメタノール(MeOH)、3~6wt%のエタノール(EtOH)、10~22wt%の2-プロパノール、3~6wt%のアセトン及び60~85wt%の1-プロパノールを含む。0.05wt%より少ない生成物中のグリセロール含有量が、好ましくは達成される。
【0030】
1つの実施態様において、粗製グリセロールが使用され、その化学分析は以下の組成を示した。
Na:0.13wt%
Ca:<0.01wt%
K:0.61wt%
Al:<0.001wt%
Si:<0.001wt%
Fe:0.0004wt%
Cr:<0.0001wt%
Ni:<0.0001wt%
S:0.5448wt%
Cl:<0.0001wt%
V:<0.001wt%
Zn:<0.001wt%
炭素:32.30wt%
水素:9.80wt%
水:14.0wt%
グリセロール含有量:79.9wt%
酸価:0.45mg KOH/g
【0031】
この実施態様において、処理は0.80h-1の毎時重量空間速度(WHSV)で、33mol/molの水素/グリセロールの比で、反応器より高い温度に分布する218~225℃の温度である220℃の平均反応温度で、及び50barの圧力で行った。このことは、以下の生成物組成を結果としてもたらした。
メタノール:0.3wt%
エタノール:5.6wt%
2-プロパノール:13.9wr%
アセトン:5.5wt%
1-プロパノール:74.6wt%
【0032】
他の分析物を追跡すると、無機構成要素及び水は抽出蒸留によって除去されていた。
【0033】
変換率は、WHSV又は水素/グリセロールのモル比、及び温度に依存する。例として以下の変換率が達成される。
【0034】
例1:WHSV:0.07h
-1;水素/グリセロールの比:133mol/mol
【表1】
【0035】
例2:WHSV:0.07h
-1;水素/グリセロールの比:66mol/mol
【表2】
【0036】
例3:WHSV:0.15h
-1;水素/グリセロールの比:32mol/mol
【表3】
【0037】
例4:WHSV:0.21h
-1;水素/グリセロールの比:33mol/mol
【表4】
【0038】
変換率(in%)は、(グリセロール(インプット)-グリセロール(アウトプット))/グリセロール(アウトプット)・100として計算した。より高い温度は、より高い変換率に有利に働く。同様に、より高いモル比は、より高い変換率に有利に働く。80wt%より多い、好ましくは90wt%より多いグリセロールをプロパノールに変換することができる。
【0039】
グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器中における触媒変換のための、本発明による装置に関して、触媒の基材が好ましくはセラミックの押出ペレットである場合、そのことは有利である。
【0040】
さらに、触媒の基材がシリコン、タングステン、ジルコニウム及び/又はアルミニウムの混合酸化物、好ましくは二酸化ジルコニウム、アルミノケイ酸塩ゼオライト及び/又はアルミノリン酸塩ゼオライト、好ましくはVFIゼオライト及び/又はVPI-5ゼオライト、脱アルミニウム化されたUSYゼオライト及び/又は二酸化アルミニウムである場合、そのことは有利である。基材が白金のドープを含む場合、そのことはまた有利である。固定床反応器は、より一層好ましくは連続的な操作に適している。
【0041】
好ましくは、装置は、以下のオブジェクト:
-グリセロールを含有する物質混合物のための貯蔵コンテナ、
-グリセロールを含有する物質混合物中に含有される未溶解の固体及び/又は望ましくない付随する物質を除去するための、ろ過装置、
-グリセロールを含有する物質混合物を水で希釈するための第一の混合器、
-グリセロールを含有する物質混合物を加熱するための熱交換器、好ましくはエコノマイザー、
-グリセロールを含有する物質混合物に水素を添加するための、好ましくは静的な第二の混合器、
-固定床反応器中で変換された物質混合物を熱交換器に戻すためのライン、
-固定床反応器中で反応した物質混合物から水素を回収するための分離装置、及び好ましくは、出発水素に供給することができ、出発水素と混合することができる回収された水素を圧縮するための、コンプレッサー、
-有利には、混合器中のグリセロールを含有する希釈された物質混合物の製造のための再使用のために、抽出剤によって純粋なプロパノールとプロセス水とを分離し、抽出回路のための抽出剤が処理カスケード中で回収され、好ましくはプロセス水もまた回収される、処理カスケード11、
のうち1つ又は複数を含む。
【0042】
グリセロールを含有する物質混合物のグリセロールへの固定床反応器中における触媒変換のための本発明による触媒に関して、基材、好ましくはセラミックが押出ペレットである場合、そのことは有利である。さらに、触媒の基材がシリコン、タングステン、ジルコニウム及び/又はアルミニウムの混合酸化物、好ましくは二酸化ジルコニウム、アルミノケイ酸及び/又はアルミノリン酸塩ゼオライト、好ましくはVFIゼオライト及び/又はVPI-5ゼオライト、脱アルミニウム化されたUSYゼオライト及び/又は二酸化アルミニウム、並びに好ましくは白金のドープを含む場合、及び/又は触媒が固定床反応器の連続的な操作に適している場合、そのことは有利である。
【0043】
グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器中における触媒変換のための触媒を製造するための本発明による方法に関して、最終的には、基材の表面における孔径が、その表面において、10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åとなるように、基材のベース材料が適切な孔のサイズ、10~25Å、好ましくは12~20Å、特に好ましくはおおよそ15Åの、特に表面における孔径をあらかじめ備えることが必要である。ベース材料の孔径が未だ対応する範囲にない場合、USYゼオライトの場合と同様に、適切な手段によって、特に脱アルミニウム化によって、まず孔径を適切なサイズにすることが必要である。USYゼオライトは、超安定化(Y-)ゼオライトとして知られるものである。これらは、実際には非常に小さい孔のサイズを有するが、機械的には極度に安定である。この特性は、例えば高い反応性及び固有の重量によってもたらされる圧縮負荷のために大規模化に特に関連する。これらのUSYゼオライトが脱アルミニウム化される、すなわちアルミノケイ酸塩複合材の画定された部分が次いで化学的に除去される場合、孔のサイズを、特に前述の所望の基材の表面における孔径に適切に拡張することができる。要約すると、孔のサイズ、機械的安定性、及び表面の相互作用のためのポテンシャル又は例えばシリコタングステン酸の固定化のための物理吸着が、基材材料の選択のための決定的な基準である。元々は適した孔のサイズを有さないUSYゼオライトの、触媒の基材の製造のためのベース材料としての使用に関して、脱アルミニウム化が錯化剤、とりわけエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を用いて行われる場合、そのことは有利である。
【0044】
シリコン、タングステン、ジルコニウム及び/又はアルミニウムの混合酸化物、好ましくは二酸化ジルコニウム、アルミノケイ酸塩及び又はアルミノリン酸塩ゼオライト、好ましくはVFIゼオライト及び/又はVPI-5ゼオライト、脱アルミニウム化されたUSYゼオライト及び/又は二酸化アルミニウムが、触媒の基材(担体材料)のためのベース材料として使用される場合、そのことは有利である。
【0045】
好ましくは、有機バインダーは、まずベース材料中に入れられ、ベース材料は好ましくは粉末形態であり、次いで、これらは均一に混練されてベース混合物を形成し、有機バインダーは、次いで、実質的に残余物なく、特に実質的に基材表面で燃やされる。好ましくは、ポリマー、好ましくはポリスチレンと水との、分散体、特に好ましくはナノ分散体が有機バインダーとして使用され、好ましくは、分散体のポリマー含有量は5wt%より少なく、特に好ましくは1wt%より少ない。次いで、ペレットは、好ましくは5~120bar、特に好ましくは20~100bar、より一層好ましくは40~80barの圧力の下で、1~8mm、好ましくは2~6mm、特に好ましくは3~4mmの直径に、及び/又は0.25~4cm、好ましくは0.4~3cm、特に好ましくは0.5~2cmの長さに、基礎のマス(basic mass)から押し出され、好ましくは、ペレットは400~1000℃、好ましくは500~750℃、より一層好ましくはおおよそ600℃の温度で、24~168h、好ましくは36~96h、より一層好ましくはおおよそ48hの期間、調整される。
【0046】
さらに、1000gの基材材料当たり、好ましくは、0.5~3L、好ましくはおおよそ1.5Lの、15~300mmol/L、好ましくはおおよそ75mmol/LのH2PtCl6・6H2Oの水溶液を含浸のために使用して、押し出された基材のペレットに白金を含浸させる場合、そのことは有利である。好ましくは次いで、ペレットは乾燥されて、これは60~120℃、好ましくはおおよそ90℃の温度で行われる。次いで、ペレットは250~450℃、好ましくはおおよそ350℃で、6~24h、好ましくはおおよそ12hの間、有利には焼成される。
【0047】
さらに有利であるのは、これに次ぐ、白金をドープした基材への、0.5~3L、好ましくはおおよそ1.5Lの、25~100mmol/L、好ましくはおおよそ50mmol/Lの脱水触媒の表面固定のための水性シリコタングステン酸の含浸、好ましくは、これに次ぐ、60~120℃、好ましくはおおよそ90℃での乾燥、及び好ましくは、これに次ぐ、250~450℃、好ましくはおおよそ350℃における、6~24h、好ましくはおおよそ12hの間の焼成である。
【0048】
この製造方法を使用して、先に画定された孔のサイズを有する基材を選択することで、試験は、他の点では高い水溶性を有する触媒、特に脱水触媒、例えばシリコタングステン酸は、触媒基材に固定化されることを示した。このことは、液体、液相中で、及び上で記載された圧力の下で行われる反応の間、脱水触媒は水和によって溶解することはできず、安定的に固定化されたままであり、さらに活性中心は自由にアクセス可能なままであることを意味する。脱水触媒、特にシリコタングステン酸の固定化は、おそらくは、一方では(おそらくは吸着効果を有するファンデルワールス力の)物理化学的相互作用のため、並びに他方では理想的な孔径及びその孔径による水和のための脱水触媒のアクセス不可能性のためである。
【0049】
代わりに可能なことは、続く含浸について孔径を考慮する必要がないように、脱水触媒、例えばシリコタングステン酸化物を直接的に担体材料、例えば二酸化ジルコニウム中に共押し出しをすることである。しかし、この代わりの案は非常にコストがかかり、かつ複雑であることが判明している。
【0050】
本発明は、図面に示される好ましい実施態様に基づいて、下でさらに説明されるが、しかし、本発明は、決してそれに限定されるべきではない。図面は、具体的には以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器中における触媒変換のための方法及び装置の好ましい実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、グリセロールを含有する物質混合物のプロパノールへの固定床反応器2中における触媒変換のための装置1の好ましい実施態様を示す。特に、貯蔵コンテナ3から取り出される粗製グリセロールが出発材料として使用される。次いで、グリセロールを含有する物質混合物は、好ましくはポンプによって、ろ過装置4に供給され、ろ過装置4中でろ過され、グリセロールを含有する物質混合物の質に応じてその中に含有される場合がある任意の未溶解の固体及び望ましくない付随する物質を除去する。具体的な実施態様において、ろ過装置は2つの重複して配置されたバックフラッシュ可能(back-flushable)なろ過器からなり、好ましくは、制御バルブがそれぞれのバックフラッシュ可能なろ過器の上流に配置される。グリセロールを含有するろ過された物質混合物は、次いで、混合容器5中で水と混合されて、希釈され、結果としてもたらされるグリセロール含有量は、好ましくは10~60%である。混合容器5はセーフティバルブ(圧力リリーフバルブ)を備える。
【0053】
グリセロールを含有するろ過及び希釈された物質混合物は、次いで、エコノマイザー熱交換器6によって加熱され、グリセロールを含有する物質混合物はポンプによってエコノマイザー熱交換器6に供給され、次いで、静的な混合器7中で水素が添加され、有利には次いで、混合物は冷却器を通過する。次いで、この混合物は連続的な触媒固定床反応器2に供給され、固定床反応器2は、同様に、好ましくはセーフティバルブを備える。反応した物質混合物は、ライン8を経由して熱入力のために熱交換器6中に供給される。プロセスの廃熱のエネルギーは、グリセロールを含有するろ過及び混合された物質混合物を予熱するのに十分であり、通常は外部の反応エネルギーを与える必要がない。従って、反応は断熱である。この例外は、当然ながらスイッチオンプロセスの間である。
【0054】
次いで、変換された物質混合物は、固定床反応器中で変換された物質混合物からの水素の回収のために、フラッシュバルブを経由して分離装置9、特に蒸気-液体分離器又はフラッシュドラムに供給される。気体流を再生利用する水素は空気冷却器を通過し、揮発性の高い有機付随成分は分離器の容器中で再濃縮される。次いで、気体流を再生利用する水素の一部は、制御バルブの下流で、副生成物気体(特に主としてプロパン)の排出のためにフレアされ、気体流を再生利用するフレアされた水素の割合は0.5%より少なく、特に好ましくは0.1%より少ない。次いで、回収された水素はコンプレッサー10中で再圧縮されて新しい水素に追加され、グリセロールを含有する物質混合物は静的な混合器7中で水素と混合され、1つのサイクルにおける、水素投入量における再生利用された水素の割合は、好ましくは70~97%である。次いで、純粋なプロパノールは、処理カスケード11中で、反応した物質混合物から得ることができ、反応した物質混合物は熱交換器及び冷却器を経由して処理カスケード11に供給され、抽出回路のための抽出剤は同一の処理カスケード中で回収することができ、グリセロールを含有する希釈された物質混合物の製造における再使用のためのプロセス水もまた回収され、回収されたプロセス水は水混合器12中で新しい水と混合され、次いで、混合器5中で、グリセロールを含有する物質混合物に添加される。好ましくは、回収されたプロセス水の割合は、サイクルの合計の水投入量の80~100%、より一層好ましくは90~100%を構成する。
【0055】
処理カスケード11に供給された、反応した物質混合物は、まず制御バルブを通過して分離装置に送られ、分離装置に抽出剤としてトルエンが供給され、分離装置の中でプロセス水が、反応した物質混合物から分離され、既に説明されたように、次いで、プロセス水は制御バルブを経由して水混合器12に供給され、あわせて、よごれた水はさらなる制御バルブを経由して除去される。さらに、プロパノールとトルエンとの混合物は分離装置から第一の抽出カラムに供給され、第一の抽出カラムにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が抽出剤として添加される。この抽出カラムにおいて、目標留分(プロパノール)を含有する上部生成物は108℃で抽出され、次いで、プロパノールは30℃で濃縮カラムによって得られる。さらに、トルエンとNMPとの混合物は、第一の抽出カラムから、例えば160℃の温度で蒸発カラムによって分離され、第二の抽出カラムに、例えば134℃で供給される。この第二の抽出カラムにおいて、下部生成物は抜き取られ、残ったトルエンは蒸留によって取り除かれ、エネルギー投入のために第二の抽出カラムに供給しなおされ、次いで、未蒸発のNMPは、約232℃で、ポンプによって、第一の抽出カラムに再び供給しなおされ、プロパノールの沈降のために、静的な混合器中で新しいNMPと混合される。第二の抽出カラムにおいて、上部生成物もまた分離装置から抽出剤として引き抜かれ、トルエンは125℃より低い温度で濃縮されて、ポンプによって供給され、静的な混合器中で新しいトルエンと混合される。
【0056】
図面中に示され、図面と併せて説明される実施態様は、本発明を説明するために提供され、本発明を限定しない。実施態様において述べられた温度は、例として理解されるだけであり、他の温度も可能である。