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特許7171751排ガス浄化触媒、排ガスの浄化方法、及び排ガス浄化触媒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒、排ガスの浄化方法、及び排ガス浄化触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20221108BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221108BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221108BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20221108BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221108BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J37/02 301D
B01J37/08
C01B3/40
B01D53/94 220
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020549206
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037244
(87)【国際公開番号】W WO2020067000
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018185081
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016218
【氏名又は名称】ユミコア日本触媒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】荻野 祐司
(72)【発明者】
【氏名】羽田 有佑
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126631(WO,A1)
【文献】特開2013-039552(JP,A)
【文献】特開2001-070791(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133086(WO,A1)
【文献】特開2010-022918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/63
B01J 37/02
B01J 37/08
B01D 53/94
C01B 3/40
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性三次元構造体と、
前記耐火性三次元構造体の表面上に設けられた第一触媒層と、
前記第一触媒層の前記耐火性三次元構造体とは反対側に設けられた第二触媒層とを備え、
前記第一触媒層は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、ロジウム元素とを含み、
前記第二触媒層は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、パラジウム元素と、ストロンチウムを含む酸化物、炭酸塩、又は硫酸塩と、を含み、
前記第二触媒層は、前記セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物に担持されたパラジウムを含み、
前記第二触媒層に含まれるセリウムの量が、二酸化セリウム換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり10g以上25g以下である、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記第一触媒層の複合酸化物がイットリウムを含み、前記第一触媒層に含まれるイットリウムの量が、酸化イットリウム(Y)換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり0.1g/L以上15g/L以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する前記第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比が1.1以上3.8以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記第二触媒層が酸化ストロンチウムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記第二触媒層が酸化アルミニウムを含み、
前記第二触媒層に含まれる酸化アルミニウムの量が前記耐火性三次元構造体1リットル当たり80g以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
水蒸気改質(SR)反応によって生じる水素の量が、水性ガスシフト(WGS)反応によって生じる水素の量よりも多い、請求項1から5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項7】
S/W比が1.8以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒を用いる、排ガスの浄化方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒の製造方法であって、
耐火性三次元構造体の表面上に第一スラリーを塗布し、塗布された前記第一スラリーを乾燥及び焼成して第一触媒層を形成する第一ステップと、
前記第一触媒層の表面上に第二スラリーを塗布し、塗布された前記第二スラリーを乾燥及び焼成して第二触媒層を形成する第二ステップとを有し、
前記第一スラリーはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸ロジウムとを含み、
前記第二スラリーはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸パラジウムと、ストロンチウムを含む化合物とを含み、
前記第二触媒層に含まれるセリウムが、二酸化セリウム換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり10g以上25g以下であるように前記第二ステップを行う、排ガス浄化触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒と、排ガスの浄化方法と、排ガス浄化触媒の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するために、様々な触媒が使用されている。ガソリンエンジン車においては、排ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO)の三成分を同時に浄化する三元触媒が知られている。三元触媒の主要な成分はロジウム、パラジウム等の貴金属と、セリウム・ジルコニウム複合酸化物等の酸素貯蔵材(OSC;Oxygen Storage Component)である。
【0003】
排ガスに関する規制は世界的に年々厳しくなっており、将来的に、更に厳しくなっていくことが想定される。そのため、より優れた排ガス浄化性能を発揮する触媒の開発が求められている。近年では、三元触媒による排気ガス浄化性能を向上させるために、耐火性三次元構造体の上に上層および下層の二層を配置して構成される二層触媒において、RhとCe・Zr・Nd複合酸化物とを上層に、Pdを下層に担持することで、スチームリフォーミング(水蒸気改質、SRとも言う)反応を促進させ、NOの還元反応を促進する触媒も提案されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-263582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、SR反応を促進させることによって触媒の排ガス浄化性能が向上することが知られているものの、その排ガス浄化性能は十分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、排ガス浄化性能が向上した排ガス浄化触媒と、効率的に排ガスを浄化することができる排ガスの浄化方法と、排ガス浄化性能が向上した排ガス浄化触媒の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、排ガス浄化触媒におけるロジウムおよびパラジウムの配置と、セリウムの量とを最適化することで、水性ガスシフト(Water Gas Shift、WGSとも言う)反応よりもSR反応を促進させることができるとの知見を得るに至った。また、上記最適化により排ガス浄化触媒の排ガス浄化性能を向上させることができるとの知見を得るに至った。
かかる知見に鑑み、上記課題を解決するべく、本願では以下の態様を採用している。
【0008】
(1)第一の態様に係る排ガス浄化触媒は、耐火性三次元構造体と、前記耐火性三次元構造体の表面上に設けられた第一触媒層と、前記第一触媒層の前記耐火性三次元構造体とは反対側に設けられた第二触媒層とを備え、前記第一触媒層は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、ロジウム元素とを含み、前記第二触媒層は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、パラジウム元素とを含み、前記第二触媒層に含まれるセリウムの量が、二酸化セリウム換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり10g以上25g以下である。
【0009】
(2)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、前記第一触媒層の複合酸化物がイットリウムを含み、前記第一触媒層に含まれるイットリウムの量が、酸化イットリウム(Y)換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり0.1g/L以上15g/L以下でもよい。
【0010】
(3)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、前記第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する前記第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比が1.1以上3.8以下でもよい。
【0011】
(4)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、前記第二触媒層が第二族金属元素を含んでもよい。
【0012】
(5)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、前記第二触媒層が酸化アルミニウムを含んでよく、前記第二触媒層に含まれる酸化アルミニウムの量は前記耐火性三次元構造体1リットル当たり80g以下でよい。
【0013】
(6)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、水蒸気改質(SR)反応によって生じる水素の量が、水性ガスシフト(WGS)反応によって生じる水素の量よりも多くてもよい。
【0014】
(7)上記態様に係る排ガス浄化触媒は、S/W比が1.8以上でもよい。
【0015】
(8)第二の態様に係る排ガスの浄化方法は、上記排ガス浄化触媒を用いる。
【0016】
(9)第三の態様に係る排ガス浄化触媒の製造方法は、耐火性三次元構造体の表面上に第一スラリーを塗布し、塗布された前記第一スラリーを乾燥及び焼成して第一触媒層を形成する第一ステップと、前記第一触媒層の表面上に第二スラリーを塗布し、塗布された前記第二スラリーを乾燥及び焼成して第二触媒層を形成する第二ステップとを有し、前記第一スラリーはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸ロジウムとを含み、前記第二スラリーはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸パラジウムとを含み、前記第二触媒層に含まれるセリウムが、二酸化セリウム換算で、前記耐火性三次元構造体1リットル当たり10g以上25g以下であるように前記第二ステップを行う。
【発明の効果】
【0017】
上記態様に係る排ガス浄化触媒は、優れた排ガス浄化性能を提供することができる。
また、上記態様に係る排ガスの浄化方法は、効率的に排ガスを浄化することができる。
また、上記態様に係る排ガス浄化触媒の製造方法は、優れた排ガス浄化性能を有する排ガス浄化触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る排ガス浄化触媒Cの断面模式図である。
図2】WGS反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2のCO浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。
図3】SR反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2の炭化水素(HC)浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。
図4】模擬排ガス浄化反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2のNO浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
本実施形態に係る排ガス浄化触媒は、水性ガスシフト(WGS;Water Gas Shift)反応よりも水蒸気改質(SR;Steam Reforming)反応を促進させる。また、WGS反応およびSR反応の結果として生成するHによって、本実施形態に係る排ガス浄化触媒は窒素酸化物(NO)の還元反応等を促進する。ここで、各反応は以下のように表すことができる。
SR反応: C+nHO→nCO+((m/2)+n)H
+3HO→3CO+6H プロピレンの場合
WGS反応: CO+HO→CO+H
によるNO還元反応: H+NO→N+H
【0021】
ここで、WGS反応よりもSR反応を促進させる触媒とは、該触媒にガスを接触させた際に、WGS反応による水素生成量よりもSR反応による水素生成量が多い触媒である。WGS反応による水素生成量は、WGS反応でのCO浄化率から算出することができる。また、SR反応による水素生成量は、SR反応での炭化水素浄化率から算出することができる。WGS反応による水素生成量に対するSR反応による水素生成量の比をS/W比とする。S/W比は1よりも大きいことが好ましく、1.8以上5.0以下がより好ましく、1.9以上3.0以下がさらに好ましく、2.0以上2.5以下が最も好ましい。S/W比が上記の範囲である本発明の触媒は、SR反応によってHを効率良く生成するとともに、WGS反応によってもHを生成する。このため本発明の触媒は、HによってNOを効率良く還元することができる。従来の触媒は、WGS反応が起こりやすく、S/W比は1.7以下となりやすい。
【0022】
S/W比は、具体的に次のように計算することができる。
S/W=[{(m/2)+n}×CHC×VHC]/[CCO×VCO
式中、各パラメータは以下の通りである。
CO:WGS反応での触媒入口におけるCOのモル濃度
CO:WGS反応での触媒出口におけるCO浄化率
HC:SR反応での触媒入口におけるCのモル濃度
HC:SR反応での触媒出口におけるC浄化率
【0023】
[排ガス浄化触媒]
図1は、本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cの断面模式図を示す。図1に示す排ガス浄化触媒Cは、ガソリンを燃料として使用する内燃機関からの排ガスを浄化するために用いられてよい。特に、本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cは、MPI(Multi Port Injection)エンジンからの排ガスを浄化するのに適している。図1に示されるように、本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cは、耐火性三次元構造体10と、第一触媒層20と、第二触媒層30とを備える。
【0024】
「耐火性三次元構造体」
耐火性三次元構造体10は、一般的な排ガス浄化触媒に使用されるものと同様のものでよい。耐火性三次元構造体10の全長は、特に制限されず、好ましくは10mm以上1000mm以下、より好ましくは15mm以上300mm以下、さらに好ましくは20mm以上150mm以下である。耐火性三次元構造体10はハニカム状の構造を有してもよい。
【0025】
耐火性三次元構造体10の開口部の孔数は、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失、浄化率等を考慮して適当な範囲に設定することができる。例えばセル密度(セル数/単位断面積)は100セル/平方インチ以上1200セル/平方インチ以下であれば十分に使用可能であり、200セル/平方インチ以上900セル/平方インチ以下であることが好ましく、400セル/平方インチ以上700セル/平方インチ以下であることが更に好ましい。耐火性三次元構造体10のガス通過口の形状(セル形状)は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形等とすることができる。
【0026】
耐火性三次元構造体10としては、フロースルー型(オープンフロー型)と、ウォールフロー型とのいずれのタイプも使用することができる。フロースルー型の耐火性三次元構造体10はガス流路がガス導入側からガス排出側まで連通しており、ガスは流路をそのまま通過することができる。一方で、ウォールフロー型の耐火性三次元構造体10は、ガス導入側が市松状に目封じされており、ガス流路の一方が開孔であれば同一の流路の他方が閉孔となっている。ウォールフロー型の耐火性三次元構造体10は、ガス流路の壁面に存在する微細な孔を通して、ガスが他のガス流路へと流通可能になっており、開孔から導入された排ガスは、他の流路を通って耐火性三次元構造体10の外に出る。フロースルー型の耐火性三次元構造体10は、空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体は、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。
【0027】
耐火性三次元構造体10の材料は、一般的な排ガス浄化触媒に使用されるものと同様のものでよい。耐火性三次元構造体10は、金属製、セラミックス製などを用いることができ、好ましくは、コージェライト、ステンレス、炭化ケイ素(SiC)、ムライト、アルミナ(α-アルミナ)、又はシリカであり、より好ましくはコージェライト、ステンレス、又はSiCである。耐火性三次元構造体10の材料がコージェライト、ステンレス、又はSiCであることにより、触媒の耐久性が向上する。
【0028】
「触媒層」
(第一触媒層)
第一触媒層20は、耐火性三次元構造体10の表面上に設けられている。第一触媒層20と耐火性三次元構造体10との間には、別の層を有してもよい。
【0029】
第一触媒層20は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、ロジウム(Rh)とを含む。ロジウムは水性ガスシフト(WGS)反応、及びNOの還元反応を促進する。
【0030】
コストを抑えつつ、十分な触媒性能を得るために、第一触媒層20に含まれるロジウムの量は、0.1g/L(「g/L」は前記耐火性三次元構造体10の体積1リットル当たりの成分の質量を示す。以下、「g/L」は他の成分に対しても同様に用いる。)以上、10g/L以下であることが好ましく、0.2g/L以上3g/L以下であることがより好ましく、0.3g/L以上1g/L以下であることが更に好ましい。金属元素の定量方法としては公知の分析手法を用いることができる。例えば、ICP発光分光分析や蛍光X線分析を用いることができる。
【0031】
第一触媒層および後述する第二触媒層に用いる貴金属(パラジウム、ロジウム)の原料としては、硝酸塩や塩化物塩などを用いることができ、硝酸塩がより好ましい。
【0032】
第一触媒層20中のロジウムは、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物および/またはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外の無機酸化物からなる担体に担持された状態で、第一触媒層20中に存在してよく、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物に担持されることが好ましい。セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物にロジウムが担持されることでWGS反応が進行しやすくなる。
【0033】
第一触媒層20中の複合酸化物は、セリウム及びジルコニウムを含む。第一触媒層20中の複合酸化物がジルコニウムを含むことによって、セリウムの酸素欠陥が生じやすくなり、WGS反応を促進させることができる。
【0034】
また、第一触媒層20中のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物は、ランタン、イットリウム、ネオジム、プラセオジム等の希土類元素を更に含むことが好ましい。第一触媒層20中の複合酸化物が希土類元素を含むことによって、耐熱性を向上させることができる。特に、第一触媒層20中の複合酸化物がランタン及び/又はイットリウムを含む場合、第一触媒層20中のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物は、耐熱性が向上するため、高温の排ガスに触媒が曝された後においてもWGS反応が促進される。
【0035】
ここで、本発明における複合酸化物とは、複数の金属酸化物の複合体を意味する。複合酸化物は複数の種類の金属を含んでよく、複合酸化物は均一な結晶構造を有してよい。複合酸化物はセリウム及びジルコニウムを含んでよく、希土類元素をさらに含んでもよい。第一触媒層20中の複合酸化物は、立方晶、立方晶蛍石型構造、正方晶、又は単斜晶の結晶構造を有しているものが好ましく、より好ましくは立方晶、又は立方晶蛍石型構造であり、さらに好ましくは立方晶蛍石型構造である。
【0036】
第一触媒層20中の複合酸化物に含まれる各元素の存在比には特に制限はない。しかし、WGS反応よりもSR反応を促進させる機能と耐熱性とを両立させるために、第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるセリウムを二酸化セリウム(CeO)に換算した量は、第一触媒層20中の複合酸化物の質量に対して10質量%以上49質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下がより好ましく、22質量%以上32質量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
同様に、第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるジルコニウムを二酸化ジルコニウム(ZrO)に換算した量は、複合酸化物の質量に対して21質量%以上89質量%以下であることが好ましく、51質量%以上71質量%以下であることがより好ましく、59質量%以上63質量%以下であることが更に好ましい。セリウム及びジルコニウムの他に、イットリウム、ランタンが複合酸化物に含まれることが好ましい。また、ネオジム又はプラセオジムなどが含まれても良い。イットリウム、ランタン、ネオジム又はプラセオジムが含まれる場合には、これらの元素を含む量の合計で100質量%である。
【0038】
同様に、第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるイットリウムを酸化イットリウム(Y)に換算した量は、第一触媒層20中の複合酸化物の質量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上13質量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
同様に、第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるランタンを酸化ランタン(La)に換算した量は、第一触媒層20中の複合酸化物の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上6質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
第一触媒層20中の複合酸化物に含まれる各元素の量は特に制限されない。しかし、第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるセリウムを二酸化セリウムとして換算した量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して1g/L以上20g/L以下であることが好ましく、3g/L以上15g/L以下であることがより好ましく、4g/L以上10g/L以下であることが更に好ましい。第一触媒層20に含まれるセリウム元素の量が上記範囲であることにより、複合酸化物は、WGS反応を促進することができる。
【0041】
第一触媒層20中の複合酸化物に含まれるに含まれるジルコニウムを二酸化ジルコニウムとして換算した量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して1g/L以上60g/L以下であることが好ましく、3g/L以上47g/L以下であることがより好ましく、8g/L以上27g/L以下であることが更に好ましい。第一触媒層20に含まれるセリウム元素の量が上記範囲であることにより、複合酸化物は、WGS反応を促進することができる。
【0042】
第一触媒層20中の複合酸化物は、イットリウムを含むことが好ましい。第一触媒層20に含まれるイットリウムを酸化イットリウム(Y)として換算した量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して0.1g/L以上15g/L以下であることが好ましく、0.5g/L以上8g/L以下であることがより好ましく、0.9g/L以上3.9g/L以下であることが更に好ましい。第一触媒層20に含まれるイットリウム元素の量が上記範囲であることにより、複合酸化物は、WGS反応を促進することができる。
【0043】
第一触媒層20中のロジウムを担持するセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の形態は特に制限されない。しかし、触媒成分であるロジウムを均一に分散担持するために、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積が大きなセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物にロジウムを担持することが好ましい。具体的に、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物のBET比表面積は、20m/g以上150m/g以下が好ましく、25m/g以上110m/g以下がより好ましく、35m/g以上85m/g以下が更に好ましい。
【0044】
第一触媒層20中のロジウムを担持する無機酸化物(セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外)としては、排ガス浄化触媒に通常用いられるものを使用することができる。例えば、α-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等のアルミナ、ジルコニア、酸化珪素(シリカ)等の単独酸化物、ジルコニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア等の複合酸化物又は混合物、並びにこれらの混合物が用いられる。好ましくは、γ-アルミナ、θ-アルミナ、ジルコニア、ジルコニア-アルミナ、又はランタン-アルミナである。
【0045】
第一触媒層20中のロジウムを担持する無機酸化物(セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外)の形態は特に制限されない。しかし、触媒成分であるロジウムを均一に分散担持するために、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積が大きな無機酸化物にロジウムを担持することが好ましい。具体的に、無機酸化物のBET比表面積は、20m/g以上350m/g以下が好ましく、30m/g以上250m/g以下がより好ましく、35m/g以上180m/g以下が更に好ましい。
【0046】
また、無機酸化物の平均粒径は特に制限されないが、スラリーの均一性等を考慮すると、無機酸化物の平均粒径は0.5μm以上150μm以下が好ましく、1μm以上100μm以下がより好ましく、2μm以上50μm以下が更に好ましい。ここで、本明細書中、「平均粒径」は、レーザー回折法によって測定された粒子径の平均値である。
【0047】
第一触媒層20中のロジウムを担持する無機酸化物(セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外)の量は、特に制限されない。しかし、ロジウムを担持する無機酸化物の使用量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して20g/L以上140g/L以下が好ましく、30g/L以上100g/L以下が更に好ましい。この範囲の使用量を採用することによって、ロジウムを十分に分散することができ、ロジウムの高い触媒性能を得ることができる。
【0048】
(第二触媒層)
第二触媒層30は、第一触媒層20の耐火性三次元構造体10とは反対側に設けられている。第一触媒層20と第二触媒層30との間には、別の層を有してもよい。
【0049】
第二触媒層30は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、パラジウム元素(Pd)とを含む。パラジウムは水蒸気改質(SR)反応、水性ガスシフト(WGS)反応、並びにCO及びHCの酸化反応を促進する。
【0050】
コストを抑えつつ、十分な触媒性能を得るために、第二触媒層30に含まれるパラジウムの量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して0.1g/L以上20g/L以下であることが好ましく、1g/L以上10g/L以下であることがより好ましく、3g/L以上8g/L以下であることが更に好ましい。
【0051】
第二触媒層30中のパラジウムは、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物および/またはセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外の無機酸化物からなる担体に担持された状態で、第二触媒層30中に存在してよく、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物に担持されることが好ましい。セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物に担持されることでWGS反応およびSR反応が進行しやすくなる。
【0052】
第二触媒層30中のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物は、SR反応及びWGS反応を促進させる。第一触媒層20のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と同様の複合酸化物を、第二触媒層30のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物として用いることができる。第二触媒層30の複合酸化物の組成は、第一触媒層20の複合酸化物の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
第一触媒層20における複合酸化物は、イットリウムを含むことが好ましい。また、第一触媒層20の複合酸化物と第二触媒層30の複合酸化物との両方がイットリウムを含んでもよい。複合酸化物がイットリウムを含むことにより、複合酸化物の耐熱性が向上し、高温の排気ガスに曝された後でもSR反応及びWGS反応を促進させることができる。
【0054】
第二触媒層30中の複合酸化物に含まれる各元素の存在比には特に制限はない。しかし、WGS反応よりもSR反応を促進させる機能と耐熱性とを両立させるために、第二触媒層30中の複合酸化物に含まれるセリウムを二酸化セリウムに換算した量は、第二触媒層30中の複合酸化物の質量に対して10質量%以上49質量%以下であることが好ましく、20質量%以上47質量%以下がより好ましく、30質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0055】
同様に、第二触媒層30中の複合酸化物に含まれるジルコニウムを二酸化ジルコニウムに換算した量は、複合酸化物の質量に対して21質量%以上89質量%以下であることが好ましく、30質量%以上71質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上63質量%以下であることが更に好ましい。セリウム及びジルコニウムの他に、イットリウム、ランタンが含まれることが好ましい。また、ネオジム又はプラセオジムなどが含まれても良い。イットリウム、ランタン、ネオジム又はプラセオジムが含まれる場合には、これらの元素を含む量の合計で100質量%である。
【0056】
同様に、第二触媒層30中の複合酸化物に含まれるイットリウムを酸化イットリウムに換算した量は、第二触媒層30中の複合酸化物の質量に対して0質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上8質量%以下であることが更に好ましい。
【0057】
同様に、第二触媒層30中の複合酸化物に含まれるランタンを酸化ランタン(La)に換算した量は、第二触媒層30中の複合酸化物の質量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上13質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
第二触媒層30に含まれるセリウムを二酸化セリウムとして換算した量は、耐火性三次元構造体10の1リットル当たり10g以上25g以下であり、10g以上22g以下であることが好ましく、10g以上18g以下であることがより好ましく、10g以上15g以下であることがより好ましく、11g以上13g以下であることが更に好ましい。
【0059】
第二触媒層30に含まれるセリウム元素の量が上記範囲内であることにより、排ガス浄化触媒Cは高いNOの浄化性能を示すことができる。
【0060】
第二触媒層30に含まれるイットリウムを酸化イットリウム(Y)として換算した量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して0g/L以上15g/L以下であることが好ましく、0.3g/L以上8.0g/L以下であることがより好ましく、0.5g/L以上3.6g/L以下であることが更に好ましい。第二触媒層30に含まれるイットリウム元素の量が上記範囲であることにより、複合酸化物は、SR反応を促進することができる。
【0061】
第二触媒層30中のセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の形態は特に制限されない。しかし、触媒成分であるパラジウムを均一に分散担持するために、BET比表面積が大きなセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物にパラジウムを担持することが好ましい。具体的に、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物のBET比表面積は、20m/g以上150m/g以下が好ましく、25m/g以上110m/g以下がより好ましく、35m/g以上85m/g以下が更に好ましい。
【0062】
第二触媒層30中の複合酸化物は、立方晶、立方晶蛍石型構造、正方晶、又は単斜晶の結晶構造を有しているものが好ましく、より好ましくは立方晶、立方晶蛍石型構造、又は正方晶であり、さらに好ましくは立方晶蛍石型構造である。
【0063】
第二触媒層30に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物は、耐火性三次元構造体1リットルあたり22g以上85g以下であることが好ましく、25g以上75g以下であることがより好ましく、30g以上62g以下であることが最も好ましい。このような範囲であることでSR反応を促進することができる。
【0064】
第一触媒層20および第二触媒層30に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の合計量は、耐火性三次元構造体1リットルあたり23g以上140g以下であることが好ましく、30g以上100g以下であることがより好ましく、50g以上90g以下であることが最も好ましい。第二触媒層30に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量は、第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量よりも大きいことが好ましく、第一触媒層20に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する第二触媒層30に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比は、1.1以上3.8以下であることが好ましく、1.1以上3.5以下であることがより好ましく、1.5以上3.0以下であることが最も好ましい。
【0065】
第二触媒層30中のパラジウムを担持する無機酸化物(セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外)の量は、特に制限されない。しかし、パラジウムを担持する無機酸化物の量は、耐火性三次元構造体10の体積に対して10g/L以上200g/L以下が好ましく、30g/L以上80g/L以下が更に好ましい。この範囲の使用量を採用することによって、パラジウムを十分に分散することができ、パラジウムの高い触媒性能を得ることができる。
【0066】
第二触媒層30は、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物以外の無機酸化物として酸化アルミニウムを含むことができ、第二触媒層30に含まれる酸化アルミニウムの量は、耐火性三次元構造体10の1リットル当たり80g以下でよく、10g以上70g以下であることが好ましく、42g以上60g以下であることが更に好ましい。第二触媒層30に含まれる酸化アルミニウムの量が上記範囲内であることにより、排ガスに含まれる一酸化炭素が第一触媒層20まで拡散しやすくなる。その結果、第一触媒層20におけるWGS反応が促進され、排ガス浄化触媒Cの排ガス浄化性能が向上する。
【0067】
第二触媒層30は、第二族金属元素を更に含むことが好ましい。第二触媒層30がパラジウムと第二族金属元素とを含むことにより、パラジウムの酸化性能が向上する。パラジウムと第二族金属元素とを共に使用することによってパラジウムの酸化性能が向上する理由としては、第二族金属元素が塩基性であることで酸化パラジウムを形成するためと考えられる。第二触媒層30に含まれる第二族金属元素としては、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムが好ましく、より好ましくはバリウムまたはストロンチウムであり、最も好ましくはストロンチウムである。第二族金属元素の形態としては酸化物、炭酸塩、硫酸塩が好ましく、より好ましくは酸化物である。第二触媒層30が酸化ストロンチウム(SrO)を含むことが最も好ましい。
【0068】
第二触媒層30中の第二族金属元素の量を酸化物に換算した量は、耐火性三次元構造体10の1リットル当たり20g以下であり、0.5g以上16g以下であることが好ましく、0.8g以上12g以下であることがより好ましく、1.0g以上10g以下であることが更に好ましく、5.0g以上10g以下であることが更に好ましい。
【0069】
従来、排ガス浄化触媒が耐火性三次元構造体10上に二層の触媒層を含む場合、耐火性三次元構造体10側の触媒層がパラジウム等の比較的耐熱性の低い触媒成分を含み、耐火性三次元構造体10とは反対側(供給される排ガスに近い側)の触媒層がロジウム等の比較的耐熱性の高い触媒成分を含む構成とされていた。
【0070】
一方、本実施形態にかかる排ガス浄化触媒Cは、耐火性三次元構造体10側の第一触媒層20がロジウム元素を含み、耐火性三次元構造体10とは反対側の第二触媒層30がパラジウム元素を含み、第二触媒層30のセリウム元素量が所定の範囲内である。本実施形態にかかる排ガス浄化触媒Cは、触媒の排ガス浄化性能が向上する。この理由は、以下のように理解することができる。
【0071】
耐火性三次元構造体10側の第一触媒層20における触媒反応を排ガスが享受するためには、排ガスは、耐火性三次元構造体10とは反対側の第二触媒層30を通過(拡散)して第一触媒層20に到達する必要がある。例えば、一酸化炭素は分子サイズが比較的小さいので、比較的容易に第一触媒層20まで到達することができる。しかし、炭化水素(HC)は分子サイズが比較的大きいので、第二触媒層30を十分に拡散することができない。その結果、SR反応は、第二触媒層30の寄与が大きくなる。ここで、ロジウム及びパラジウムは、いずれもSR反応及びWGS反応の触媒として機能することができるが、SR反応については、ロジウムよりもパラジウムの方が、触媒性能が高いと考えられる。そのため、耐火性三次元構造体10とは反対側の第二触媒層30がパラジウムを含む本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cは、高い排ガス浄化性能を示すと理解することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cは、SR反応によって多くの水素を発生する。従って、本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cは、排ガス浄化反応試験においても、SR反応によって生じる水素の量が、WGS反応によって生じる水素の量よりも多いことが好ましい。この場合、排ガス中のNOを効率良く浄化することができる。ここで、排ガス浄化反応試験として、模擬排ガスを用いた模擬排ガス浄化反応試験を用いてもよい。本願における模擬排ガス浄化反応試験とは、CO、NO、C、CO、O、HO、及びバランスのNからなる混合気体を、400℃以上600℃以下の温度、例えば500℃の温度で、排ガス浄化触媒Cに流通させる試験である。
【0073】
[排ガスの浄化方法]
一実施形態において、排ガスの浄化方法は上記排ガス浄化触媒を用い、上記排ガス浄化触媒を排ガスに接触させるステップを有する。
【0074】
本実施形態に係る排ガスの浄化方法は、所定の排ガスに対して特に有用である。所定の排ガスとは、COを10ppm以上50000ppm以下含み、炭化水素を炭素(C1)換算で10ppm以上50000ppm以下含み、窒素酸化物を10ppm以上50000ppm以下含む排ガスである。このような組成を有する排ガスのCOは酸化により無害化され、炭化水素は酸化により無害化され、窒素酸化物は還元により無害化される。排ガスに含まれるCOは100ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以上5000ppm以下であることが更に好ましい。排ガスに含まれる炭化水素は炭素換算で100ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以上7000ppm以下であることが更に好ましい。排ガスに含まれる窒素酸化物は100ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、300ppm以上3000ppm以下であることが更に好ましい。
【0075】
本実施形態に係る排ガスの浄化方法は、ガソリンエンジン等の内燃機関からの排ガスを浄化するために使用されてよく、特に、ガソリンエンジンからの排ガスを浄化するために使用されてよい。排ガスは、1000h-1以上500000h-1以下の空間速度で排ガス浄化触媒に供給されてよく、好ましくは5000h-1以上150000h-1以下の空間速度で供給されてよい。また、排ガスは、0.1m/秒以上8.5m/秒以下の線速度で供給されてよく、好ましくは0.2m/秒以上4.2m/秒以下の線速度で供給されてよい。このような流速で排ガスが供給されることにより、排ガスを効率的に浄化することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る排ガスの浄化方法では、排ガスの浄化を促進するために、高温の排ガスが供給されてよい。例えば、100℃以上1000℃以下の排ガスが触媒に供給されてよく、300℃以上700℃以下の排ガスが供給されることが好ましい。このような温度の排ガスを供給することによって、触媒の熱劣化を抑制しつつ、高効率で排ガスを浄化することができる。
【0077】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
以下、排ガス浄化触媒Cの製造方法を具体的に説明する。
【0078】
本実施形態に係る排ガス浄化触媒Cの製造方法は、第一ステップと、第二ステップとを有する。第一ステップは、耐火性三次元構造体10の表面上に第一スラリーを塗布し、塗布された第一スラリーを乾燥及び焼成して第一触媒層20を形成するステップである。第二ステップは、第一触媒層20の表面上に第二スラリーを塗布し、塗布された第二スラリーを乾燥及び焼成して第二触媒層30を形成するステップである。
【0079】
(第一ステップ)
第一スラリーは、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸ロジウムとを含む。複合酸化物としては、第一触媒層20の複合酸化物として上述した組成のものを用いることができる。第一スラリーは、ロジウムを高分散に担持するための無機酸化物を更に含むことができる。無機酸化物は、酸化アルミニウム(アルミナ)等、第一触媒層20のロジウム担体として上述した無機酸化物を用いることができる。必要に応じて、第一スラリーは、pHを調整するための成分や界面活性剤等を含んでもよい。
【0080】
第一スラリーは、ボールミル等の従来技術として公知の湿式粉砕により用意することができる。アトライター、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミル等の公知な手段を利用して第一スラリーを用意してもよい。湿式粉砕条件は特に制限されない。例えば、湿式粉砕時の温度は5℃以上40℃以下でよく、好ましくは15℃以上25℃程度(室温)である。また、湿式粉砕時間は、各成分がスラリー中で十分に分散するように、好適に設定されればよい。湿式粉砕の際に用いられる溶媒としては、水、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどのアルコールが使用でき、特に水が好ましい。溶媒の量は特に制限されず、各成分がスラリー中で均一に分散できる量を用いればよい。
【0081】
第一スラリーにおける固体成分の濃度は特に制限されないが、例えば、第一スラリーにおける複合酸化物と無機酸化物との合計が、スラリー全体に対して0.5質量%以上60質量%以下であればよい。
【0082】
耐火性三次元構造体10の表面上に第一スラリーを塗布し、塗布された第一スラリーを乾燥及び焼成することで第一触媒層20を得ることができる。耐火性三次元構造体10としては上述のものを使用することができ、例えばコージェライトのハニカム担体を用いることができる。第一スラリーを耐火性三次元構造体10の表面上に塗布する方法としては、任意の公知な方法を用いることができる。例えば、ウォッシュコート法を用いて耐火性三次元構造体10の表面上に第一スラリーを塗布してよい。
【0083】
乾燥工程は、主として第一スラリーに含まれる溶媒を除去する工程であり、焼成工程は主として第一スラリーに含まれる硝酸成分を除去する工程である。乾燥工程と焼成工程は別個のステップとして行われてもよいし、同一のステップとして連続的に行われてもよい。乾燥及び焼成は、それぞれ独立に、任意の雰囲気で行われてよい。例えば、大気中、水素等の還元ガスを含む還元雰囲気中、不活性ガス雰囲気中、又は真空中で、乾燥及び焼成が行われてよい。乾燥温度は0℃以上300℃以下でよく、100℃以上200℃以下が好ましい。乾燥時間は1分以上3時間以下でよく、10分以上1時間以下が好ましい。焼成温度は100℃以上1200℃以下でよく、300℃以上1000℃以下が好ましく、400℃以上700℃以下が更に好ましい。焼成時間は1分以上10時間以下でよく、10分以上2時間以下が好ましい。必要に応じて、乾燥及び焼成の後に、還元雰囲気で加熱処理を行ってもよい。還元雰囲気は、水素や一酸化炭素等の還元ガスを1体積%以上10体積%以下含むことが好ましく、例えば水素5%及び窒素95%の混合気体でよい。処理温度は200℃以上800℃以下でよく、300℃以上700℃以下が好ましく、処理時間は1時間以上10時間以下でよく、2時間以上5時間以下が好ましい。例えば、還元ガスを10ml/分以上100ml/分以下で流しながら、200℃以上800℃以下で1時間以上10時間以下、処理してもよい。
【0084】
(第二ステップ)
第二スラリーは、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物と、硝酸パラジウムとを含む。複合酸化物としては、第二触媒層30の複合酸化物として上述した組成のものを用いることができる。第二スラリーは、パラジウムを高分散に担持するための無機酸化物を更に含むことができる。無機酸化物は、酸化アルミニウム(アルミナ)等、第二触媒層30のパラジウム担体として上述した無機酸化物を用いることができる。第二スラリーは、第二族金属元素を含有する化合物を含むことが好ましい。例えば、第二スラリーが水酸化ストロンチウムを含むことが好ましい。必要に応じて、第二スラリーは、pHを調整するための成分や界面活性剤等を含んでもよい。
【0085】
第二スラリーは、第一スラリーと同様の方法で用意されてよい。例えば、溶媒として水を用いたボールミルによって第二スラリーを用意することができる。
【0086】
第二スラリーにおける固体成分の濃度は特に制限されないが、例えば、第二スラリーにおける複合酸化物と無機酸化物との合計が、スラリー全体に対して0.5質量%以上60質量%以下であればよい。
【0087】
第一触媒層20の表面上に第二スラリーを塗布し、塗布された第二スラリーを乾燥及び焼成することで第二触媒層30を得ることができる。第二スラリーを第一触媒層20の表面上に塗布する方法としては、任意の公知な方法を用いることができる。例えば、ウォッシュコート法を用いて第二スラリーを塗布してよい。
【0088】
乾燥工程は、主として第二スラリーに含まれる溶媒を除去する工程であり、焼成工程は主として第二スラリーに含まれる硝酸成分を除去する工程である。乾燥工程と焼成工程は別個のステップとして行われてもよいし、同一のステップとして連続的に行われてもよい。乾燥及び焼成は、第一ステップと同様の条件で行われてよい。必要に応じて、乾燥及び焼成の後に、第一ステップと同様に、還元雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0089】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例
【0090】
[実施例1]
<排ガス浄化触媒の製造>
二酸化セリウム(CeO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)を30:60:2:8の質量比で含む複合酸化物を用意した。当該複合酸化物のBET比表面積は、79.5m/gであり、複合酸化物の結晶構造は、立方晶蛍石型構造であった。次に、硝酸ロジウム水溶液、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)、及び複合酸化物を、ロジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物=0.50:75.84:20.0の質量比となるように秤量した。ここで、使用した酸化アルミニウムの平均粒径は73μmであり、そのBET比表面積は154m/gであった。また、複合酸化物の平均粒径は11μmであった。秤量した酸化アルミニウム及び複合酸化物を水に分散させ、分散溶液に硝酸ロジウム水溶液を添加した。得られた溶液をスリーワンモーターで攪拌した後、ボールミルにて湿式粉砕することで第一スラリーを作製した。
【0091】
続いて、二酸化セリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムを36:48:10:6の質量比で含む複合酸化物を用意した。当該複合酸化物のBET比表面積は、79.4m/gであり、複合酸化物の結晶構造は、立方晶蛍石型構造であった。次に、硝酸パラジウム水溶液、酸化アルミニウム、複合酸化物、及び水酸化ストロンチウムを、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム(SrO)=5.5:52.8:58.6:8.5の質量比となるように秤量した。秤量した酸化アルミニウム、複合酸化物、及び水酸化ストロンチウムを水に分散させ、分散溶液に硝酸パラジウム水溶液を添加した。得られた溶液をスリーワンモーターで攪拌した後、ボールミルにて湿式粉砕することで第二スラリーを作製した。
【0092】
次に、直径24mm、長さ30mm、円筒形(0.0136L)、1平方インチ当たり600セル、四角形のセル形状、セル壁厚み3mil、コージェライト製の、耐火性三次元構造体を用意した。
【0093】
上記耐火性三次元構造体に第一スラリーを塗布し、150℃の空気雰囲気で15分乾燥後、550℃の空気雰囲気で30分焼成し、第一触媒層を形成した。
【0094】
次に、第一触媒層上に第二スラリーを塗布し、第一スラリーと同様に乾燥、焼成することによって第二触媒層を形成した。こうして排ガス浄化触媒を得た。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比は2.9であった。
【0095】
[実施例2]
第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:41.7:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比は2.1であった。
【0096】
[実施例3]
第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:33.3:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の質量の比は1.7であった。
【0097】
[比較例1]
第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:20.0:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量の比は1.0であった。
【0098】
[比較例2]
第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:78.6:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量の比は3.9であった。
【0099】
[比較例3]
第一スラリーに複合酸化物を加えなかったこと、及び、第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:61.7:8.5に変更したこと以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層には、セリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物は含まれていない。
【0100】
[比較例4]
第一スラリーに含まれる化合物の質量比を、ロジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物=0.50:75.84:50.0の質量比となるように変更し、第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:20.0:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量の比は0.4であった。
【0101】
[比較例5]
第一スラリーに含まれる化合物の質量比を、ロジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物=0.50:75.84:74.0の質量比となるように変更し、第二スラリーに含まれる化合物の質量比を、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:0:8.5に変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。この触媒の第一触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量に対する第二触媒層に含まれるセリウムとジルコニウムとを含む複合酸化物の量の比は0であった。
【0102】
[比較例6]
第一スラリーが、硝酸パラジウム水溶液、酸化アルミニウム、複合酸化物、及び酸化ストロンチウムを、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:20.0:8.5の質量比で含み、第二スラリーが、硝酸ロジウム水溶液、酸化アルミニウム、及び複合酸化物を、ロジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物=0.50:75.84:41.7の質量比で含むように変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。
【0103】
[比較例7]
第一スラリーが、硝酸パラジウム水溶液、酸化アルミニウム、複合酸化物、及び酸化ストロンチウムを、パラジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物:酸化ストロンチウム=5.5:52.8:20.0:8.5の質量比で含み、第二スラリーが、硝酸ロジウム水溶液、酸化アルミニウム、及び複合酸化物を、ロジウム:酸化アルミニウム:複合酸化物=0.50:75.84:78.6の質量比で含むように変更した以外は、実施例1と同様に排ガス浄化触媒を作製した。
【0104】
各実施例及び比較例で作製された排ガス浄化触媒において、耐火性三次元構造体の体積1L当たりに担持された各成分の質量が表1に示されている。数値の単位は[g/L]であり、小数点以下1桁の数値が示されている。
【0105】
【表1】
【0106】
<耐熱処理>
上記で製造した排ガス浄化触媒の耐熱処理を行った。各排ガス浄化触媒を、V型8気筒、4.6リットルエンジンの排気口から25cm下流側に設置した。当該耐熱処理は、触媒の初期劣化を想定したものである。触媒床部(触媒入口側端面から1インチの中心)の温度が1000℃となるように設定し、50時間排ガスを流し、耐熱処理を行った。
【0107】
<一酸化炭素浄化性能の評価(水性ガスシフト(WGS)反応試験)>
耐熱処理後の排ガス浄化触媒について、模擬ガスを用いて一酸化炭素浄化性能の評価(水性ガスシフト(WGS)反応試験)を行った。ガス条件が表2に示されている。耐熱処理を行った触媒のガス流入側端面から1cm手前の温度を500℃に保持し、表2に示したWGS1(酸素あり)の混合ガスを触媒に5分間流した。WGS1の混合ガスの温度は500℃とした。次に、表2に示したWGS2(酸素なし)の混合ガスを5分間触媒に流した。WGS2の混合ガスの温度は500℃とした。WGS2導入後5分後に、排ガス浄化触媒を通過した気体を非分散型赤外分光法で分析し、水性ガスシフト反応による一酸化炭素の浄化率を求めた。また、同時に、質量分析法により水素の生成を確認した。
【0108】
<炭化水素浄化性能の評価(水蒸気改質(SR)反応試験)>
耐熱処理後の排ガス浄化触媒について、模擬ガスを用いて炭化水素浄化性能の評価(水蒸気改質(SR)反応試験)を行った。ガス条件が表2に示されている。耐熱処理を行った触媒のガス流入側端面から1cm手前の温度を500℃に保持し、表2に示したSR1(酸素あり)の混合ガスを5分間触媒に流した。SR1の混合ガスの温度は500℃とした。次に、表2に示したSR2(酸素なし)の混合ガスを5分間流した。SR2の混合ガスの温度は500℃とした。SR2導入後5分後に、排ガス浄化触媒を通過した気体を水素イオン化検出器で分析し、水蒸気改質反応による炭化水素の浄化率を求めた。また、同時に、質量分析法により水素の生成を確認した。
【0109】
【表2】
【0110】
<模擬排ガス浄化性能の評価>
耐熱処理後の触媒に、ガソリン車両の排ガス(特に、加速域の排ガス)を模擬した混合ガスを流通し、模擬排ガス浄化性能の評価(過渡性能評価)を行った。ガス条件を下記表3に示す。耐熱処理を行った触媒のガス流入側端面から1cm手前の温度を500℃に保持し、表3のLeanを8秒間、Richを1秒間、交互に触媒に流通させた。Lean及びRichのガス温度は、いずれも500℃とした。LeanとRichをそれぞれ10回繰り返し、1回目から10回目までの各回におけるRich時における一酸化炭素の浄化率の平均値、炭化水素の浄化率の平均値、及びNOの浄化率の平均値をそれぞれ算出した。
【0111】
【表3】
【0112】
各実施例及び比較例で作製された排ガス浄化触媒の、一酸化炭素浄化性能の評価結果と、炭化水素浄化性能の評価結果と、模擬排ガス浄化性能の評価結果とを表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
図2は、WGS反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2のCO浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。図2を参照すると、第二触媒層のセリウム元素の量を変化させてもCO浄化率があまり変化していないことが分かる。
【0115】
図3は、SR反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2の炭化水素(HC)浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。図3を参照すると、CO浄化率の挙動とは異なり、第二触媒層のセリウム元素の量を変化させることによってHC浄化率が大きく変化していることが分かる。
【0116】
<S/W比>
表4の結果から、実施例の触媒は、S/W比が比較例の触媒よりも高かった。この結果から、実施例の触媒は比較例の触媒よりもSR反応が促進されていることが分かる。
【0117】
図4は、模擬排ガス浄化反応試験における実施例1から3並びに比較例1及び2のNO浄化率を、第二触媒層に含まれる、二酸化セリウムの量に換算したセリウムの量に対してプロットした図である。NOの浄化(還元)は、WGS反応由来の水素と、SR反応由来の水素との両方が寄与する。図2及び図3等に示されたように、WGS反応由来の水素の量は、第二触媒層のセリウム元素の量にあまり影響を受けない。一方で、SR反応由来の水素の量は、第二触媒層のセリウム元素の量に大きく影響される。その結果、第二触媒層のセリウム量に対するNO浄化率の挙動は、第二触媒層のセリウム量に対するHC浄化率の挙動と類似したものとなっている。
【0118】
また、表4を参照すると、模擬排ガス浄化反応試験において、比較例1及び2の浄化率は、実施例1から3の浄化率よりも低い。比較例1及び2の触媒は、第二触媒層に含まれるセリウムの量が実施例1から3の触媒と異なる。この結果から、第二触媒層に含まれるセリウムの量が、CO浄化率、HC浄化率、及びNO浄化率に大きな影響を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、自動車等の内燃機関からの排ガスを浄化するために利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
C 排ガス浄化触媒
10 耐火性三次元構造体
20 第一触媒層
30 第二触媒層
図1
図2
図3
図4