(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】基材をカーテンコーティングするための方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/30 20060101AFI20221108BHJP
B05D 1/34 20060101ALI20221108BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221108BHJP
C09D 5/04 20060101ALI20221108BHJP
C09D 103/04 20060101ALI20221108BHJP
C09D 171/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B05D1/30
B05D1/34
B05D7/24 301K
C09D5/04
C09D103/04
C09D171/02
(21)【出願番号】P 2020551908
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019015326
(87)【国際公開番号】W WO2019190623
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】モハンマド カリム、アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】プジャリ、サスワティ
(72)【発明者】
【氏名】サスジンスキィ、ウェズロウ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フランシス、ロレーンヌ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァルホ、マルシオ エス.
(72)【発明者】
【氏名】イェダブ、ヴィニータ
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表平5-504423(JP,A)
【文献】特開2002-254022(JP,A)
【文献】特開平9-173975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B05C 5/00- 5/04
C09D 1/00-10/00;
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をカーテンコーティングする方法であって、
2つ以上の液体を同時に適用して、前記基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含み、前記複数の層が、
ずり減粘液体を含む底部液体層、および
粘弾性液体を含む上部液体層、を含む、方法。
【請求項2】
前記ずり減粘液体が、水溶液中にキサンタンガムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ずり減粘液体が、前記ずり減粘液体の総重量に基づいて、0.1~1重量パーセントの量のキサンタンガムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粘弾性液体が、前記粘弾性液体の総重量に基づいて、0.01~1重量パーセントの量のポリエチレンオキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粘弾性液体が、1~1050Pa.sの伸長粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粘弾性液体が、20~72mN/mの表面張力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、紙、ポリマーフィルム、シリコーンでコーティングされた紙、金属、および金属化フィルムからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基材をカーテンコーティングする方法であって、
ずり減粘液体を含む底部液体層を配合することと、
粘弾性液体を含む上部液体層を配合することと、
前記底部液体層が、前記基材に衝突するように、前記底部液体層および前記上部液体層をコーティングダイを通して同時にかつ移動する基材上にポンプ輸送することと、を含む、方法。
【請求項9】
基材をカーテンコーティングする方法であって、
2つ以上の液体を同時に適用して、前記基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含み、前記複数の層が、
ずり速度の増加と共に減少するずり粘度を有するずり減粘液体を含むずり減粘液体層、および
粘弾性液体を含む粘弾性液体層、を含み、
前記ずり減粘液体層が、前記基材の表面に衝突する、方法。
【請求項10】
中間液体層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材をカーテンコーティングする方法に関する。いくつかの実施形態では、開示された方法は、基材に2つ以上の液体層を同時に適用することを含み、複数の層は、ずり減粘液体を含む底部液体層および粘弾性液体を含む別の液体層を含む。
【0002】
いくつかの実施形態では、開示された方法は、ずり減粘液体を含む底部層液体を配合することと、粘弾性液体を含む別の層液体を配合することと、底部層液体が、基材に衝突し、それによって底部層を形成して、他の層液体が、底部液体層の上に別の液体層を形成するように、底部液体および他の層液体をコーティングダイを通して同時にかつ移動する基材上にポンプ輸送することと、を含む。ずり減粘液体を含む底部液体層および粘弾性液体を含む他の層を含めることは、カーテンコーティング窓の拡大を提供する。
【0003】
開示の背景と概要
カーテンコーティングは、移動する基材上に流体コーティングを作成するプロセスである。次いで、コーティングされた基材は、種々の用途に使用することができる。液体カーテンは、コーティングする液体(複数可)をダイを通してポンプ輸送することによって形成され、それが、移動する基材に衝突するまで、重力下で落下する薄い液体シートを作成し、それにより液体層が形成される。多層コーティングだけでなく、連続的な基材(つまり、ウェブ)または個別のオブジェクト上にコーティングを作成することも可能である。特に連続コーティングでは、速度を上げることおよびコーティングの厚さを減らすことが、それぞれプロセスの経済性にとって重要である。カーテンコーティングの用途は多種多様であるが、その操作は、難しく、均一なコーティングは、コーティング窓と呼ばれる特定の範囲の操作パラメーターでのみ得られる。カーテンコーティングを制限する2つの主要な物理的メカニズムは、臨界流量を下回る液体カーテンの分解および特定のウェブ速度を超えると発生する空気連行である。
【0004】
本開示では、カーテンコーティング窓は、弾性が強化された粘弾性液体層が、多層カーテンコーティングアプローチを介してずり減粘液体層と同時に堆積される多層アプローチを使用することによって拡大される。これは、コーティングされた基材の表面に直接衝突するずり減粘液体層のより薄いコーティングの堆積を可能にする。
【0005】
コーティングする液体における弾性(つまり、伸長粘度が大きい粘弾性液体)は、コーティング中のカーテンの安定性を高め、これにより、プロセスをより低い流量で実行し、より薄いコーティングの作成が可能になる。すなわち、液体における弾性により、最小流量、またはそれを下回るとカーテンが不安定になり液柱に分かれる流量が減少する。さらに、ずり減粘液体(つまり、ずり速度の増加と共に減少する粘度を有する液体)の使用は、比較的大きな基材速度で起こる空気連行の開始を遅らせることにより、コーティング速度の範囲を増やすことができる。
【0006】
上記の2種類の液体を多層液体カーテンとして適用することにより、多層液体カーテン中の1つの層が、弾性のある液体および多層液体カーテン中の底部層(つまり、多層液体カーテン中の最下部または背面液体層)は、ずり減粘液体を含み、カーテン窓のサイズを大幅に拡大することができる。カーテン窓を拡大すると、既存のコーティング方法と比較したときに、操作手順(例えば、コーティング速度)および製品品質の向上(例えば、いかなる欠陥もなくカーテンの厚さを下げる)の点で大きな利点を可能にする。
【0007】
基材上にカーテンコーティングを形成するそのような方法が、本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、2つ以上の液体を同時に適用して基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含む、基材をカーテンコーティングする方法が開示され、複数の層は、ずり減粘液体を含む底部層および粘弾性液体を含む上部液体層を含む。
【0008】
さらに、ずり減粘液体を含む底部層液体を配合することと、粘弾性液を含む上部層液体を配合することと、底部層液体が、基材に衝突するように、底部層液体および上部層液体をコーティングダイを通して同時にかつ移動する基材上にポンプ輸送することと、を含む基材をカーテンコーティングする方法が開示される。
【0009】
なおさらに、2つ以上の液体を同時に適用して基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含む、基材をカーテンコーティングする方法が開示され、複数の層は、ずり減粘液体層および粘弾性液体層を含み、ずり減粘液体層は、基材の表面に衝突する。開示された方法は、任意選択で、カーテンコーティングに堆積された中間層であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書では、以下の図を参照する。
【
図1】本開示によるカーテンコーティングプロセスの概略図である。
【
図2】いくつかのずり減粘液体についての粘度対ずり速度のプロットを示す図である。
【
図3】いくつかの粘弾性液体についてのずり粘度対ずり速度のプロットを示す図である。
【
図4】いくつかの粘弾性溶液についてのトルートン比の観点で表された伸長粘度対ヘンキーひずみのプロットを示す図である。
【
図5】少量のPEOを含むずり減粘液体溶液についての粘度対ずり速度のプロットを示す図である。
【
図6】少量のPEOを含むずり減粘液体溶液についてのトルートン比の観点で表された伸長粘度対ヘンキーひずみのプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示された方法は、従来のアプローチに従って適用されたカーテンコーティングと比較して、改善された速度範囲および安定性を有するカーテンコーティングを提供する。上述のように、開示された方法は、2つ以上の液体を同時に適用して、基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含む。複数の層は、コーティングされる基材に直接衝突するずり減粘液体層または底部液体層を含む。複数の層は、底部液体層の上に配向される、つまり、底部液体層に対して上部液体層であり、基材と直接接触していない粘弾性液体層をさらに含む。複数の層は、底部液体層の上に配向された1つ以上の中間液体層をさらに含み得る。すなわち、カーテンコーティングは、2つの層-ずり減粘液体を含む底部液体層および粘弾性液体を含む上部液体層のみを含有することができ、またはカーテンコーティングは、最下部の液体層が、ずり減粘液体を含み、1つ以上の上部液体層(複数可)が、粘弾性液体を含むのであれば、3、4、5、またはそれ以上の層を含有することができる。本明細書で使用される場合、「上部」は、必ずしも「最上部」を意味するものではない。
【0012】
ずり減粘液体層
ずり減粘液体層は、ずり減粘液体を含む。本明細書で使用される場合、ずり減粘液体は、ずり速度の増加と共に減少するずり粘度を有する液体である。以下でさらに詳述するように、ずり減粘液体層は、コーティングされる基材に直接衝突する。その点で、ずり減粘液体層は、カーテンコーティング中の底部液体層である。
【0013】
この開示に従って使用するための好適なずり減粘液体の例には、キサンタンガムを含む水溶液、アクリル乳濁液を含むポリマー乳濁液、ならびにずり速度の増加でより低い粘度および伸長速度で大幅に上昇しない伸長粘度を示すポリマー溶液が含まれる。例えば、実施例でさらに説明するように、蒸留水に溶解したキサンタンガムは、この開示によるずり減粘液体層での使用に好適である。いくつかの実施形態では、ずり減粘液体溶液中に存在するキサンタンガムの量は、ずり減粘液体溶液の総重量に基づいて、0.1~1重量パーセント、または0.15~0.3重量パーセントである。
【0014】
粘弾性液体層
粘弾性液体層は、粘弾性液体を含む。本明細書で使用される場合、粘弾性液体は、伸長速度と共に上昇する伸長粘度を有するように伸長増粘挙動を示す液体である。粘弾性液体層は、ずり減粘液体層または底部液体層の上に配向される。すなわち、ずり減粘液体層は、コーティングされる基材と粘弾性液体層との中間に配向される。実施例に示されるように、この配列は、様々なカーテンコーティング用途におけるコーティング窓の拡大を提供する。いくつかの実施形態では、粘弾性液体は、Lucy E.Rodd,Timothy P.Scott,Justin J.Cooper-White,Gareth H.McKinley,「Capillary Break-up Rheometry of Low-Viscosity Elastic Fluids」,HML Report Number 04-P-04,2004で詳述されるように、CaBERレオメーター技術を使用して測定される際に、高ひずみで1~1050Pa.sの伸長粘度(μe)を有する。いくつかの実施形態では、粘弾性液体は、ウィルヘルミープレート法に従って測定した際に、20~72mN/mの表面張力(σ)を有する。
【0015】
本開示による使用に好適な粘弾性液体の例には、高分子量ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリビニルアルコール(「PVOH」)、ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」)などのような弾性ポリマーを含む水溶液が含まれるが、これらに限定されない。例えば、約8×106g/モルの分子量を有するPEOは、本開示による粘弾性液体としての使用に好適である。いくつかの実施形態では、粘弾性液体溶液中に存在するPEOの量は、粘弾性液体溶液の総重量に基づいて、0.01~1重量パーセント、または0.025~0.1重量パーセント、または0.025~0.08重量パーセント、または0.025~0.05重量パーセントである。
【0016】
任意選択的な添加剤
いくつかの実施形態では、ずり減粘液体層および/または粘弾性液層中に添加剤を任意選択で含めることができる。そのような添加剤の例には、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、およびそれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
カーテンコーティングの形成
上記の液体層は、様々な方法で基材上にカーテンコーティングすることができる。コーティングされる好適な基材には、紙基材、ポリマーフィルム基材、シリコーンコーティングされた紙またはフィルム基材、金属基材、金属化フィルム基材、ガラス基材、および厚紙基材が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、好ましい基材には、シリコーンコーティングされた紙またはフィルム基材が含まれる。
【0018】
図1は、本開示によるカーテンコーティングプロセスの概略図を示す。
図1では、ポンプ102は、粘弾性液体をリザーバ104から質量流量計(例えば、コリオリタイプの流量計)に送達し、これは、スライドコーティングダイ108に入る前に粘弾性液体の質量流量および密度を測定する。液体は、供給スロットを出て、傾斜面を流れ落ちてから、多層液体カーテンの最上層を形成する。ポンプ110は、リザーバ112からスライドコーティングダイ108にずり減粘液体を送達する。ずり減粘液体はまた、供給スロットを出て、傾斜面を流れ落ちてから、多層カーテンの最下層を形成する。ずり減粘溶液の質量流量は、ポンプ110を較正することによって決定することができる。両方の液体は、重力加速度下で、回転シリンダー114に付着するまで流れ落ちる。
【0019】
本開示の実施例
本開示を、開示される接着剤組成物および既存の接着剤組成物を例示する例(例示的実施例「IE」、比較例「CE」、総称して「実施例」)を説明することによって、ここで、さらに詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、実施例に限定されない。
【0020】
ずり減粘液体
実施例で使用するための水性ずり減粘溶液は、キサンタンガムを蒸留水に溶解することにより、2つの濃度(水溶液の総重量に基づいて、0.15および0.30重量%)で調製される。次いで、2.7mMのドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)および少量の食品グレードの青#1色染料を溶液に添加し、撹拌する。キサンタンガム溶液は、
図2に詳述されるようにずり減粘挙動を示す。同じ溶媒(すなわち、蒸留水)中の異なるキサンタンガム濃度は、同様の高ずり粘度μ
1000を有するが、低ずり粘度μ
0は、異なる。
【0021】
溶液の表面張力は、Krussから入手可能なK10ST(商標)デジタル張力計でウィルヘルミープレート法を使用して測定される。ずり粘度曲線は、クエットセル形状のTA Instrumentsから入手可能なAR-G2(商標)レオメーターを使用して得られる。密度は、メスフラスコおよび実験室の天秤で測定される。ずり減粘溶液の伸長粘度μ
eは、液体フィラメントの急速な分解のため、キャピラリー破断式伸長レオメーター(「CaBER」)レオメーター法を使用して測定するには低すぎる。
表1は、これらのずり減粘溶液の表面張力および粘度の詳細を示す。
【表1】
【0022】
粘弾性液体
実施例では、粘弾性液体として、ポリエチレンオキシドの水溶液(約8×10
6g/モルの分子量)が使用される。少量の高分子量ポリマーポリエチレンオキシドを蒸留水に添加して、粘弾性液体を得る。粘弾性液体溶液の表面張力は、界面活性剤(2.77mMのSDS)を添加することによって減少される。少量の食品グレードの赤#40色染料を溶液に添加して、二重層カーテンにおける粘弾性液体層とずり減粘液体層(青)とを区別する。表面張力は、Krussから入手可能なK10ST(商標)デジタル張力計でウィルヘルミープレート法を使用して測定される。ずり粘度曲線は、クエットセル形状のTA Instrumentsから入手可能なAR-G2(商標)レオメーターを使用して得られる。密度は、カーテンコーティングのセットアップで使用されるコリオリ型質量流量計によって測定される。
図3は、ずり速度の関数としての粘弾性液体溶液のずり粘度を示す。ずり粘度μpへのポリエチレンオキシドの寄与は、粘弾性液体溶液粘度と溶媒(つまり、蒸留水)粘度との差、例えば、μ
p≡μ
0-μ
sとして定義される。
【0023】
粘弾性液体溶液の見掛け伸長粘度は、CaBER法を使用して調べられる。現在の溶液の緩和時間λは、ポリエチレンオキシドの濃度に基づいて74~764msで変動する。
【0024】
伸長粘度は、伸長粘度対ずり粘度間の比率を表すトルートン比Trで表すことができる。
【数1】
【0025】
トルートン比対ヘンキーひずみεは、
【数2】
のように定義され、D
pは、
図4に表された液体ブリッジの初期直径である。
【0026】
実施例で使用されるすべての粘弾性液体溶液についての物理的性質(例えば、高ひずみでの伸長粘度)を表2に表す。
【表2】
【0027】
粘弾性を有するずり減粘液体
実施例で使用するための粘弾性を有するずり減粘液体は、キサンタンガムを99.85の蒸留水および0.005重量%のPEOに溶解することにより、0.15重量%の濃度で調製される。次いで、2.7mMのSDSおよび少量の食品グレードの青#1色染料を溶液に添加し、撹拌する。最後に、0.005重量%のPEOを溶液にゆっくりと添加する。キサンタンガム/PEO溶液は、
図5および6に示すように、粘弾性を有するずり減粘挙動を示す。表3は、粘弾性を有するずり減粘液体の物理的性質を詳細に示す。
【0028】
粘弾性を有するずり減粘溶液の表面張力は、Krussから入手可能なK10ST(商標)デジタル張力計でウィルヘルミープレート法を使用して測定される。ずり粘度μ曲線は、クエットセル形状を有するTA Instrumentsから入手可能なAR-G2(商標)レオメーターを使用して得られた。密度は、メスフラスコおよび実験室の天秤で測定される。
【表3】
【0029】
ニュートン液体溶液
実施例では、ニュートン液体として、ポリエチレングリコールの水溶液(PEG、8000g/モル)を使用する。PEG溶液は、PEG粉末を蒸留水に溶解することによって、20重量%の濃度で調製する。次いで、2.77mMのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および少量の食品グレードの赤#40色染料を溶液に添加し、撹拌する。PEG溶液は、ニュートン挙動を示す。表4は、PEG溶液の物理的性質を詳細に示す。PEG溶液の伸長粘度は、CaBERを使用して測定できなかった。PEG溶液は、ニュートン挙動を示すため、そのトルートン比は、3であると想定した。20重量%のPEG溶液の伸長粘度は、約0.06Pa.sであると推定される。
【表4】
【0030】
表5に詳細に示した実施例は、ずり減粘底部液体層と粘弾性上部液体層(1<μe<1050Pa.s)との組み合わせが、強化されたカーテン安定性、つまり、より低いアクセス可能な最小流量(Q分)をもたらす方法を詳細に示している。キサンタンガム溶液を有する単層カーテン(CE1およびCE2)はいずれも、底部液体層としてこれらの流体および上部液体層として0.025~0.1重量%のPEO溶液を含有する二重層カーテン(IE1~IE6)よりも高い最小流量をもたらす。
【0031】
より高い濃度のPEO(CE3~CE8)は、結果としてμ
e>1050Pa.sとなり、表5に示されているように、液体カーテンが、ローラーの最高速度(164.2cm/s)よりも低い速度で、移動するウェブ(
図1に模式的に示されているように、実施例のセットアップではガラスローラー)と共に引張るようなビードプルをもたらす。
【0032】
上部液体層をPEOの代わりにPEGで増粘してカーテン安定性を改善させた場合(つまり、上部液体層として、ニュートン粘度はあるが伸長粘度はない)は、上部液体層として20重量%のPEG溶液および底部液体層として0.15重量%のキサンタンガム溶液を使用して調製したCE9に示されるように、カーテン安定性の改善は、観察されない。この場合の最小総流量Q分は、Q分=(16.12±0.61)cm3/sに等しく、20重量%のPEG層単独の最小流量は、5.74cm3/sに相当する。比較すると、0.15重量%のキサンタンガム溶液を有する底部液体層および0.025重量%のPEO溶液を有する上部液体層の二重層の総最小流量Q分は、Q分=(14.56±1.8)cm3/sであり、0.025重量%のPEO層の最小流量は、0.66cm3/sのみである。
【0033】
少量のPEOが底部液体層に添加され、伸長粘度が増加する場合、ビードプルおよび空気連行が観察され、ガラスローラーの速度が上がるにつれてビードプルがカーテンを前方に引張る。底部液体層として非常に少量のPEO(つまり、0.005重量%のPEO)および上部液体層として粘弾性溶液(つまり、0.025重量%のPEO)を有するCE 10における二重層は、0.15重量%のキサンタンガムを使用して、製造される。ガラスローラーの速度が上がるとビードプルが観察され、ビードプルの程度が大きくなる。
【0034】
表5は、様々な実施例についての最小流量を詳細に示す。二重層カーテンコーティングを使用した実施例の場合、個々の層の合計である総最小流量に加えて、各層の最小流量を詳細に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0035】
上で説明される実施形態に加えて、特定の組み合わせの多くの実施形態が本開示の範囲内にあり、それらのうちのいくつかを以下に説明する。
実施形態1.基材をカーテンコーティングする方法であって、
2つ以上の液体を同時に適用して、基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含み、複数の層が、
ずり減粘液体を含む底部液体層、および
粘弾性液体を含む上部液体層、を含む、方法。
実施形態2.ずり減粘液体が、ずり速度の増加と共に減少する見掛け粘度を有する、任意の先行するまたは後続の実施形態の方法。
実施形態3.ずり減粘液体が、水溶液中にキサンタンガムを含む、任意の先行するまたは後続の実施形態の方法。
実施形態4.ずり減粘液体が、ずり減粘液体の総重量に基づいて、0.1~1重量パーセントの量のキサンタンガムを含む、任意の先行するまたは後続の実施形態の方法。
実施形態5.ずり減粘液体が、ずり減粘液体の総重量に基づいて、0.15~0.3重量パーセントの量のキサンタンガムを含む、任意の先行するまたは後続の実施形態の方法。
実施形態6.粘弾性液体が、粘弾性液体の総重量に基づいて、0.01~1重量パーセントの量のポリエチレンオキシドを含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態7.粘弾性液体が、粘弾性液体の総重量に基づいて、0.025~0.1重量パーセントの量のポリエチレンオキシドを含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態8.粘弾性液体が、粘弾性液体の総重量に基づいて、0.025~0.08重量パーセントの量のポリエチレンオキシドを含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態9.粘弾性液体が、粘弾性液体の総重量に基づいて、0.025~0.05重量パーセントの量のポリエチレンオキシドを含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態10.粘弾性液体が、1~1050Pa.sの伸長粘度を有する、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態11.粘弾性液体が、20~72mN/mの表面張力を有する、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態12.基材が、紙、ポリマーフィルム、シリコーンでコーティングされた紙、金属、および金属化フィルムからなる群から選択される材料を含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。
実施形態13.基材をカーテンコーティングする方法であって、
ずり減粘液体を含む底部液体層を配合することと、
粘弾性液体を含む上部液体層を配合することと、
底部液体層が、基材に衝突するように、底部液体層および上部液体層をコーティングダイを通して同時にかつ移動する基材上にポンプ輸送することと、を含む、方法。
実施形態14.基材をカーテンコーティングする方法であって、
2つ以上の液体を同時に適用して、基材上に複数の層をそれぞれ形成することを含み、複数の層が、
ずり速度の増加と共に減少するずり粘度を有するずり減粘液体を含むずり減粘液体層、および
粘弾性液体を含む粘弾性液体層、を含み、
ずり減粘液体層が、基材の表面に衝突する、方法。
実施形態15.中間液体層をさらに含む、任意の先行または後続の実施形態の方法。