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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】発電ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20221108BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221108BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20221108BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221108BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/35
H02J7/10 L
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/42 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008388
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2020158711の分割
【原出願日】2013-06-25
(65)【公開番号】P2021073835
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2012143765
(32)【優先日】2012-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 実
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】▲ひろ▼木 正明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】桃 純平
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-160635(JP,A)
【文献】特開2001-178011(JP,A)
【文献】特開平10-304585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/35
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路と、
第2の回路と、
第3の回路と、
電源と、
前記第1の回路と、前記第2の回路と、前記第3の回路と、前記電源に電気的に接続される制御回路と、を有し、
前記第1の回路は、蓄電装置と、第1のトランジスタと、第1のダイオードと、温度センサを有し、
前記第1のトランジスタは、pチャネル型トランジスタであり、
前記第1のトランジスタのドレインは、前記蓄電装置の正極に電気的に接続され、
前記第1のダイオードのアノードは、前記蓄電装置の前記正極に電気的に接続され、
前記温度センサは、前記蓄電装置の温度を検知する機能を有し、
前記第1のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2の回路は、第1の抵抗と、第2のトランジスタと、を有し、
前記第1の抵抗の一方の端子は、前記第2のトランジスタのドレインと、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第1の抵抗の他方の端子は、前記第1の回路と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第3の回路は、第2の抵抗と、第3のトランジスタと、を有し、
前記第2の抵抗の一方の端子は、前記第2の回路と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2の抵抗の他方の端子は、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの他方は、前記電源に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続し、
前記制御回路は、
前記温度センサから入力されたデータに基づいて、前記第1のトランジスタの前記ゲートに信号を入力する機能と、前記第2のトランジスタの前記ゲートに信号を入力する機能と、を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が第1の温度より低い場合は、前記第1のトランジスタをオフにし、前記蓄電装置の充電を行わない機能を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が前記第1の温度以上第2の温度より低い場合は、前記第1のトランジスタをオンにし、前記蓄電装置の充電を許容する機能を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が前記第2の温度以上である場合は、前記第2のトランジスタをオフにし、前記蓄電装置への充電を行わない機能を有する発電ユニット。
【請求項2】
第1の回路と、
第2の回路と、
第3の回路と、
電源と、
前記第1の回路と、前記第2の回路と、前記第3の回路と、前記電源に電気的に接続される制御回路と、を有し、
前記第1の回路は、蓄電装置と、第1のトランジスタと、第1のダイオードと、温度センサを有し、
前記第1のトランジスタは、pチャネル型トランジスタであり、
前記第1のトランジスタのドレインは、前記蓄電装置の正極に電気的に接続され、
前記第1のダイオードのアノードは、前記蓄電装置の前記正極に電気的に接続され、
前記温度センサは、前記蓄電装置の温度を検知する機能を有し、
前記第1のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2の回路は、第1のコンデンサと、第1の抵抗と、第1のコイルと、第2のダイオードと、第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のコンデンサの一方の端子は、前記第1の抵抗の一方の端子と、前記第1のコイルの一方の端子と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第1のコンデンサの他方の端子は、接地され、
前記第1の抵抗の他方の端子は、前記第1の回路と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第1のコイルの他方の端子は、前記第2のダイオードのカソードと、前記第2のトランジスタのドレインに電気的に接続され、
前記第2のダイオードのアノードは、接地され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースは、前記第3の回路に電気的に接続され、
前記第3の回路は、第2のコンデンサと、第2の抵抗と、第2のコイルと、第3のダイオードと、第3のトランジスタと、を有し、
前記第2のコンデンサの一方の端子は、前記第2の抵抗の一方の端子と、前記第2の回路と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2のコンデンサの他方の端子は接地され、
前記第2の抵抗の他方の端子は、前記第2のコイルの一方の端子と、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第2のコイルの他方の端子は、前記第3のダイオードのカソードと、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方に電気的に接続され、
前記第3のダイオードのアノードは、接地され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記制御回路に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの他方は、前記電源に電気的に接続され
前記制御回路は、
前記温度センサから入力されたデータに基づいて、前記第1のトランジスタの前記ゲートに信号を入力する機能と、前記第2のトランジスタの前記ゲートに信号を入力する機能と、を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が第1の温度より低い場合は、前記第1のトランジスタをオフにし、前記蓄電装置の充電を行わない機能を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が前記第1の温度以上第2の温度より低い場合は、前記第1のトランジスタをオンにし、前記蓄電装置の充電を許容する機能を有し、
前記温度センサが検知した前記蓄電装置の温度が前記第2の温度以上である場合は、前記第2のトランジスタをオフにし、前記蓄電装置への充電を行わない機能を有する発電ユニット。
【請求項3】
請求項又は請求項において、
前記制御回路は、前記第1の回路に流れる第1の電流値と、前記電源から前記第3の回路を介して前記第2の回路に流れる第2の電流値を測定する機能を有する発電ユニット。
【請求項4】
請求項において、
前記制御回路は、前記電源の電圧に基づいて前記第2の電流値を制御する機能を有する発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は蓄電ユニット及び太陽光発電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォンに代表される携帯端末或いは、電気自動車などのモータ
の電源として、リチウム二次電池のような蓄電装置が広く利用されている(特許文献1参
照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-269426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような携帯端末や電気自動車等は、低温から高温にわたる広い温度範囲で使用される
。このため、これらに搭載される蓄電装置には、広い温度範囲で電池特性が十分に発揮で
きることが要求される。
【0005】
例えば、現在広く普及しているリチウム二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
)やリン酸鉄リチウム(LiFePO)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの
吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカルボナートやジエチル
カルボナートなどの有機溶媒に、LiBFやLiPF等のリチウム塩からなる溶質を
溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0006】
しかし、このような蓄電装置、特に負極の活物質に黒鉛等の炭素材料を用いた蓄電装置で
は、低温では負極の電気抵抗が増加するため、負極電位が低下する。充電時に電極電位が
負になると炭素材料にデンドライト状リチウム(以下、デンドライトと記す)が形成され
、電極間の短絡や、活物質の剥離による不可逆容量の形成等の問題が生じる。このため、
デンドライトが形成されない電極電位で充電する必要があるが、その場合には、負極の抵
抗増大に応じたより低い電流値による充電が必要となるため、高速に充電することができ
ないという問題点がある。
【0007】
負極に炭素材料を用い、電解液の溶媒としてエチレンカルボナートを用いたリチウム電池
では、充電及び放電時に溶媒が還元分解され、負極活物質表面に不動態被膜が形成される
。不動態被膜が形成されると、電解液のさらなる還元分解が抑制されるため、リチウムイ
オンの挿入が優先的に生じる。このため、蓄電装置が安定して動作することができる。
【0008】
しかしながら、負極活物質表面に不動態被膜が形成された蓄電装置を高温で充電すると不
動態被膜が破壊され、蓄電装置の安全性を損なうという問題点がある。
【0009】
また、非水溶媒を電解液として有する蓄電装置を高温で充電すると、蓄電装置が発火する
恐れがある。
【0010】
以上に鑑みて、開示される発明の一態様では、低温から高温にわたる広い温度範囲におい
て安全に動作することが可能な蓄電ユニットを得ることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示される発明の一態様は、蓄電装置に隣接してヒータが設置され、当該ヒータで蓄電装
置を加熱する蓄電ユニットである。
【0012】
蓄電ユニットはさらに、蓄電装置に隣接して配置され、蓄電装置の温度を検知する温度セ
ンサと、温度センサが検知した蓄電装置の温度の情報が入力される制御回路を有し、制御
回路は当該ヒータのオン及びオフを制御する。
【0013】
蓄電装置を充電する際、蓄電装置の温度が所定の温度(第1の温度T1とする)よりも低
い場合は、制御回路は蓄電装置の充電を禁止し、ヒータにより蓄電装置を加熱する。
【0014】
第1の温度より低い温度とは、例えば、上記デンドライトが形成されてしまう温度である
。このような低い温度では充電を禁止することで、電極間の短絡や、活物質の剥離による
不可逆容量の形成等の問題を回避することができる。また、負極の抵抗が増大せず、高速
に充電することが可能となる。
【0015】
蓄電装置を充電する際、蓄電装置の温度が第1の温度以上である場合は、制御回路はヒー
タによる蓄電装置の加熱を行わず、蓄電装置の充電を許容する。
【0016】
なお、制御回路は、蓄電装置の温度に関わらず、蓄電装置の放電を許容する構成とする。
【0017】
ヒータとして、例えばPTC(Positive Temperature Coeff
icient)サーミスタを用いることができる。サーミスタとは温度変化に対して電気
抵抗の変化が大きい抵抗体であり、PTCサーミスタは所定の温度(キュリー温度(キュ
リー点ともいう)Tc)以上で電気抵抗が急増する正の温度係数を有するサーミスタであ
る。またPTCサーミスタは、電流を流すと自己発熱により抵抗が増大し、電流が流れに
くくなる。このような正の温度係数を有するPTCサーミスタは、BaTiOに微量の
希土類を添加する等によって作製することができる。
【0018】
ヒータとしてPTCサーミスタを用いる場合は、キュリー温度Tcを第1の温度として設
定し、PTCサーミスタのスイッチング機能を利用してヒータのオン及びオフを切り替え
ることもできる。この場合、温度センサは必ずしも必要ではない。従って、温度センサを
持たない構成も開示される発明の一態様である。
【0019】
ここで、PTCサーミスタはキュリー温度Tcが0℃以上10℃以下のものを用いるとよ
い。具体的には、例えば概略5℃とするとよい。
【0020】
またヒータとして、温度によらず抵抗がほぼ一定のヒータを用いてもよい。
【0021】
蓄電装置を充電する際、定電圧充電は行わず、定電流充電のみを行うことが好ましい。定
電圧充電を高温(例えば60℃以上)で行うと、充電時間が長くなってしまい、電解液が
劣化するからである。
【0022】
また制御回路は、蓄電装置の温度が第1の温度よりも高い第2の温度T2となった場合、
電解液の劣化や蓄電装置の破壊等を防ぐために、充電を禁止する構成としてもよい。第2
の温度は使用者が決定すればよい。例えば、充電によって不動態被膜が破壊される温度や
、蓄電装置が発火する温度とすることができる。
【0023】
以上により、最適な温度範囲で蓄電装置の充電を行うことができ、蓄電装置の破壊、異常
動作、容量の低下を抑制することができる。
【0024】
開示される発明の一態様において、蓄電装置は負極の活物質に炭素材料が用いられたリチ
ウム二次電池であることを特徴とする。
【0025】
開示される発明の一態様は、上記蓄電ユニットと太陽電池を有し、当該蓄電装置には、当
該太陽電池により発電された電力が蓄えられることを特徴とする太陽光発電ユニットであ
る。
【発明の効果】
【0026】
開示される発明の一態様により、低温から高温にわたる広い温度範囲において安全に動作
することが可能な蓄電ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】蓄電装置を説明する図。
図2】蓄電ユニットを説明する図。
図3】蓄電ユニットの回路図、ヒータの電気抵抗の温度依存性、及び、温度とトランジスタのゲート電圧VGSの関係を示す図。
図4】キュリー温度Tcより低い場合における蓄電ユニットの動作を示す図。
図5】キュリー温度Tc以上の場合における蓄電ユニットの動作を示す図。
図6】蓄電ユニットを説明する図。
図7】蓄電ユニットの回路図、及び、温度とトランジスタのゲートに印加される電圧の関係を示す図。
図8】温度T1より低い場合の蓄電ユニットの動作を示す図。
図9】温度T1以上の場合の蓄電ユニットの動作を示す図。
図10】蓄電ユニットを説明する回路図。
図11】蓄電ユニットを説明する回路図。
図12】温度T1より低い場合の蓄電ユニットの動作を示す図。
図13】温度T1以上の場合の蓄電ユニットの動作を示す図。
図14】蓄電ユニットを説明する回路図。
図15】蓄電ユニットを説明する回路図。
図16】太陽光発電ユニットの断面図。
図17】太陽光発電ユニットを説明する回路図。
図18】太陽光発電ユニットを説明する回路図。
図19】太陽光発電ユニットを説明する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し
、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書
に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変
更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限
定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機
能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、同様のも
のを指す際には同じハッチパターンを使用し、特に符号を付さない場合がある。
【0029】
なお、図面等において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、説明を分かりやすくする
ために実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発
明は、必ずしも図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0030】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同
を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0031】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限
定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、
その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配
線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0032】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることがで
きるものとする。
【0033】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタ
などのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有す
る素子などが含まれる。
【0034】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」また
は「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極
」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外し
ない。
【0035】
[実施の形態1]
本実施の形態を以下に説明する。
【0036】
<蓄電装置の構成>
本実施の形態の蓄電装置について、以下に説明する。
【0037】
図1(A)は蓄電装置300の断面図である。図1(A)に示す蓄電装置300は、正極
集電体301及び正極活物質層302を有する正極311、負極集電体305及び負極活
物質層304を有する負極312、並びに、正極311及び負極312との間に挟持され
る電解質308を有している。
【0038】
正極311は、正極集電体301上に、CVD法、スパッタリング法、または塗布法によ
り、正極活物質層302を形成することで、形成される。
【0039】
正極集電体301は、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の
金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等と合金化しない材料を用いるこ
とができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱
性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコ
ンと反応してシリサイドを形成する金属元素、例えばジルコニウム、チタン、ハフニウム
、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッ
ケル等で形成しても良い。正極集電体301は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチ
ングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を有していても良い。
【0040】
正極活物質層302に含まれる正極活物質は、リチウムイオン等のキャリアイオンの挿入
及び脱離が可能な材料であればよく、例えば、LiFeO、LiCoO、LiNiO
、LiMn、V、Cr、MnO等の化合物を用いることができる
。塗布法を用いて正極活物質層302を形成する場合は、正極活物質に導電助剤や結着剤
を添加して正極ペーストを作製し、正極集電体301上に塗布して焼成させればよい。
【0041】
正極活物質として、オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO
MはFe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いるこ
とができる。代表例としては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、Li
MnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO
、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、
0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiN
CoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)
、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g
<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
【0042】
正極活物質として、一般式Li(2-j)MSiO(Mは、Fe(II)、Mn(II
)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合ケイ酸塩
を用いることができる。代表例としては、Li(2-j)FeSiO、Li(2-j)
NiSiO、Li(2-j)CoSiO、Li(2-j)MnSiO、Li(2-
j)FeNiSiO、Li(2-j)FeCoSiO、Li(2-j)Fe
MnSiO、Li(2-j)NiCoSiO、Li(2-j)NiMn
SiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2-j)FeNi
SiO、Li(2-j)FeNiMnSiO、Li(2-j)NiCo
MnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li
(2-j)FeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r<1、
0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
【0043】
なお、キャリアイオンがリチウムイオン以外のアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム
やカリウム等)、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリ
ウム等)、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、正極活物質として、該
金属のリン酸塩やケイ酸塩を用いてもよい。
【0044】
なお、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入及び脱離に関わる物質を指す。電極(を
作製する時には、活物質と共に、導電助剤、結着剤、溶媒等の他の材料を混合したものを
活物質層として集電体上に形成する。よって、活物質と活物質層は区別される。よって正
極活物質及び正極活物質層302、並びに、後述する負極活物質及び負極活物質層304
は区別される。
【0045】
正極活物質層302に導電助剤としてグラフェンを用いると、電子伝導性の高い電子伝導
のネットワークを構築するため、特に効果的である。
【0046】
グラフェンは、炭素が形成する六角形の骨格が二次元状に広がった結晶構造をもつ炭素材
料である。グラフェンはグラファイトの一原子面を取り出したものである。
【0047】
グラフェンは、1~100層程度形成すればよい。単層のグラフェンをグラフェンシート
と呼ぶことがある。
【0048】
正極活物質層302では、グラフェンが重なり合い、かつ、複数の正極活物質粒子と接す
るよう分散させてもよい。この場合、正極活物質層302中に、グラフェンによる電子伝
導のためのネットワークを形成する。これにより、正極活物質粒子同士がグラフェンによ
ってリンクされ、電子伝導性の高い正極活物質層302を形成することができる。
【0049】
正極活物質層302に含まれる結着剤(バインダ)には、代表的なポリフッ化ビニリデン
(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロリド、エ
チレンプロピレンジエンポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタ
ジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリラート、ポリエチレン、
ニトロセルロース等を用いることができる。
【0050】
負極312は、負極集電体305上に、CVD法、スパッタリング法、または塗布法によ
り、負極活物質層304を形成することで、形成される。
【0051】
負極集電体305には、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン等の金属、及びアルミニウ
ム-ニッケル合金、アルミニウム-銅合金など、導電性の高い材料を用いることができる
。負極集電体305は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパ
ンドメタル状等の形状をとることができる。
【0052】
負極活物質層304に含まれる負極活物質として、金属の溶解・析出、または金属イオン
の挿入・脱離が可能な材料であれば、特に限定されない。負極活物質としては、例えば、
リチウム金属、炭素系材料、シリコン、シリコン合金、スズなどを用いることができる。
例えば、炭素系材料としては、粉末状もしくは繊維状の黒鉛を用いることができる。塗布
法を用いて負極活物質層304を形成する場合は、負極活物質に導電助剤や結着剤を添加
して負極ペーストを作製し、負極集電体305上に塗布して乾燥させればよい。導電助剤
としてグラフェンを用いると、上述のように伝導性の高い電子伝導ネットワークを構築で
きるため、特に効果的である。
【0053】
負極活物質としてシリコンを用いて負極活物質層304を形成する場合においても、負極
活物質層304の表面にグラフェンを形成することが好ましい。シリコンは充放電サイク
ルにおけるキャリアイオンの吸蔵・放出に伴う体積の変化が大きいため、負極集電体30
5と負極活物質層304との密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしまう。
そこで、シリコンを含む負極活物質層304の表面にグラフェンを形成すると、充放電サ
イクルにおいてシリコンの体積が変化したとしても、負極活物質層304の表面に形成さ
れたグラフェンが、負極集電体305と負極活物質層304との密着性の低下を抑制する
。これにより、電池特性の劣化が低減されるため好適である。
【0054】
なお、負極活物質層304にリチウムをプレドープしてもよい。リチウムのプレドープ方
法としては、スパッタリング法により負極活物質層304表面にリチウム層を形成しても
よい。または、負極活物質層304の表面にリチウム箔を設けることで、負極活物質層3
04にリチウムをプレドープすることもできる。
【0055】
正極311及び負極312との間に挟持された電解質308は、溶質と溶媒を有している
。溶質として、キャリアイオンを有する材料を用いる。溶質の代表例としては、LiCl
、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSON等のリチウ
ム塩がある。
【0056】
なお、キャリアイオンがリチウムイオン以外の金属イオンの場合、溶質として、該金属の
塩を用いてもよい。
【0057】
電解質の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な非プロトン性有機溶媒が好ましい
。代表例としては、エチレンカルボナート(EC)、プロピレンカルボナート、ジメチル
カルボナート、ジエチルカルボナート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル
、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いるこ
とができる。また、電解質の溶媒としてゲル化された高分子材料を用いることで、漏液性
等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。代表例と
してはシリコーンゲルが挙げられ、その他主鎖骨格としてアクリル系ポリマー、ポリアク
リロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー
を有するゲル等が挙げられる。また、電解質の溶媒としてイオン液体(常温溶融塩)を一
つまたは複数用いることもできる。
【0058】
また、電解質308として、硫化物や酸化物等の無機物材料を有する固体電解質を用いる
ことができる。固体電解質を用いる場合には電池全体を固体化できるため、漏液のおそれ
がなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0059】
ラミネート型の蓄電装置の一例について、図1(B)を参照して説明する。
【0060】
図1(B)に示すラミネート型の蓄電装置310は、正極集電体301および正極活物質
層302を有する正極311と、負極集電体305および負極活物質層304を有する負
極312と、セパレータ307と、電解質308と、外装体309を有する。外装体30
9内に設けられた正極311と負極312との間にセパレータ307が設置されている。
また、外装体309内は電解質308で満たされている。
【0061】
セパレータ307は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリ
エチレン等の絶縁体を用いることができる。セパレータ307の内部にも電解質308が
含浸している。
【0062】
正極集電体301および負極集電体305は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼
ねている。そのため、正極集電体301および負極集電体305の一部は、外装体309
から外側に露出するように配置される。
【0063】
外装体309には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカルボナート、アイオノ
マー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等
の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド
系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィル
ムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断
するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解質性を有する。
【0064】
なお本実施の形態の蓄電装置の一例として、リチウム二次電池について説明したが、これ
に限定されない。本実施の形態の蓄電装置の別の例として、電気二重層キャパシタを用い
てもよい。電気二重層キャパシタは、低温でもデンドライトが形成されないという利点が
ある。
【0065】
<蓄電ユニットの構成>
図2に本実施の形態の蓄電ユニットの構成を示す。図2(A)は、蓄電ユニットに含まれ
る蓄電装置310、ヒータ400、温度センサ410を示している。蓄電装置310の詳
細な説明は上述したので、ここでは省略する。なお蓄電装置として、図2ではラミネート
型の蓄電装置310を用いるが、別の形状の蓄電装置を用いてもよい。ヒータ400は端
子401a及び端子401bを有しており、温度センサ410は端子411a及び端子4
11bを有している。
【0066】
図2(B)に蓄電装置310、ヒータ400、及び温度センサ410を外装体500内部
に設置する蓄電ユニット、図2(C)に蓄電装置310及びヒータ400を外装体500
内部に設置する蓄電ユニットを示す。
【0067】
図2(B)に示す蓄電ユニットにおいて、温度センサ410、ヒータ400、蓄電装置3
10は、外装体500の内部に、それぞれ隣接して設置されている。温度センサ410は
、蓄電装置310の温度を検出するために設置される。
【0068】
図2(C)に示す蓄電ユニットでは温度センサ410が設置されておらず、ヒータ400
及び蓄電装置310が外装体500の内部に設置されている。
【0069】
ヒータ400として、例えば、PTCサーミスタを用いる。これにより、ヒータ400の
過熱を防止することが可能である。本実施の形態では、ヒータ400として板状のPTC
サーミスタを用いて蓄電装置310を均一に加熱する。PTCサーミスタはキュリー温度
Tcが0℃以上10℃以下のものを用いるとよい。具体的には、例えば概略5℃とすると
よい。
【0070】
また、ヒータ400としてPTCサーミスタではなく、温度によらず抵抗がほぼ一定のヒ
ータを用いてもよい。
【0071】
温度センサ410として、例えば、NTCサーミスタ(NTC:Negative Te
mperature Coefficient)を用いる。NTCサーミスタは、温度の
上昇に対して抵抗が減少するサーミスタである。ただし、温度センサ410としてNTC
サーミスタに限定されず、他の種類の温度センサを用いてもよい。
【0072】
温度センサ410は、蓄電装置310に隣接して設置される。温度センサ410は、蓄電
装置310の温度Tを検知して、当該温度Tにより充電の可否を制御する。一方後述のよ
うに、ヒータ400としてPTCサーミスタを用い、PTCサーミスタの抵抗の温度依存
性を利用して充電の可否を制御する回路構成を有していても構わない。
【0073】
外装体500は、内部に温度センサ410、ヒータ400、蓄電装置310を設置可能な
空洞を持つ筐体である。外装体500の材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の樹脂、紙、セラミック等を用い
ればよい。
【0074】
外装体500の材料として、断熱効果を有する材料を用いると(例えばセラミック)、低
温においてヒータ400の熱を外部に発散することなく、効率的に保温できるので好適で
ある。
【0075】
外装体500の端子501a及び端子501bは、蓄電装置310の正極集電体301お
よび負極集電体305に電気的に接続される端子であってもよいし、正極集電体301お
よび負極集電体305そのものであってもよい。
【0076】
外装体500の端子502a及び端子502bは、温度センサ410の端子411a及び
端子411bに電気的に接続される端子であってもよいし、端子411a及び端子411
bそのものであってもよい。
【0077】
外装体500の端子503a及び端子503bは、ヒータ400の端子401a及び端子
401bに電気的に接続される端子であってもよいし、端子401a及び端子401bそ
のものであってもよい。
【0078】
図2(B)に示す蓄電ユニットでは、蓄電装置310の温度を温度センサ410にて検知
し、蓄電装置310の充電の可否が温度に応じて制御される。
【0079】
これにより、蓄電装置310が低温、あるいは高温で充電されることを防ぎ、デンドライ
トの形成や不動態被膜の破壊、さらには、蓄電装置310の発火を防ぐことができる。
【0080】
なお、蓄電ユニットを、不動態被膜が破壊される温度に達しない温度、又は、蓄電装置3
10が発火する温度に達しない温度で使用し、かつ、ヒータ400としてPTCサーミス
タを用いた場合には、図2(C)に示す蓄電ユニットのように、温度センサ410の設置
を省略することができる。この場合、PTCサーミスタのスイッチング機能により、ヒー
タ400が高温になった場合に加熱を自動的に停止することができる。
【0081】
[実施の形態2]
以下に、PTCサーミスタの電気抵抗の温度依存性を利用して充電の可否を制御する回路
について説明する。
【0082】
<回路構成>
図3(A)に、ヒータ400としてPTCサーミスタを用いた場合の蓄電ユニットの回路
の一部を示す。
【0083】
図3(A)に示す回路250は、蓄電装置300、温度センサ410、PTCサーミスタ
を用いたヒータ400、抵抗201、トランジスタ202、ダイオード203、端子21
1、並びに、端子212を有している。
【0084】
蓄電装置300として、上述の蓄電装置310を用いてもよいし、別の形状の蓄電装置を
用いてもよい。蓄電装置300の正極は、トランジスタ202のドレイン(D)、及び、
ダイオード203のアノードに電気的に接続されている。蓄電装置300の負極は、温度
センサ410の一方の端子、抵抗201の一方の端子、及び、端子212に電気的に接続
されている。蓄電装置300の正極及び負極間にかかる電圧をVbtとする。なお、トラ
ンジスタのソース、ドレインは、印加されている電圧によって入れ替わる場合があるが、
ここでは、回路構成の理解を容易にするため、pチャネル型トランジスタにおいて、充電
時に電位が高い端子をソースと呼び、低い端子をドレインと呼ぶ。また、nチャネル型ト
ランジスタでは、電位が高い方の端子をドレインと呼び、低い端子をソースと呼ぶ。
【0085】
温度センサ410として、図3(A)に示す回路250では、NTCサーミスタを用いる
。温度センサ410は、蓄電装置300及びヒータ400に電気的に接続されており、か
つ、蓄電装置300に隣接して設置される。
【0086】
温度センサ410の他方の端子は、端子THMに電気的に接続されている。
【0087】
ヒータ400は、上述のようにPTCサーミスタであり、一方の端子は、トランジスタ2
02のゲート(G)、及び、抵抗201の他方の端子に電気的に接続されている。ヒータ
400の他方の端子は、トランジスタ202のソース(S)、ダイオード203のカソー
ド、及び、端子211に電気的に接続されている。
【0088】
トランジスタ202は、pチャネル型トランジスタである。なおトランジスタ202のゲ
ートとソース間に印加される電圧を、ゲート電圧VGSとする。
【0089】
抵抗201は、抵抗値Rsを有する抵抗である。
【0090】
ヒータ400及び抵抗201それぞれにおいて、温度と抵抗の関係を図3(B)に示す。
図3(B)に示されるように、ヒータ400はキュリー温度Tcで急激に抵抗が増大する
。一方、抵抗201は、温度が変化しても抵抗値Rsはほぼ一定である。
【0091】
図3(C)に、充電時(端子211に正電圧を、端子212に負電圧を印加した状態)の
温度とトランジスタ202のゲート電圧VGSとの関係を示す。キュリー温度Tcより低
い温度では、ゲート電圧VGSは、トランジスタ202のしきい値電圧Vthよりも高い
一定の負電圧を維持しており、トランジスタ202はオフ状態である。キュリー温度Tc
でゲート電圧VGSは急激に減少し、キュリー温度Tc以上の温度では、ゲート電圧VG
Sは、しきい値電圧Vthよりも十分に低い一定の負電圧となり、トランジスタ202は
オン状態となる。回路250では、トランジスタ202のソース(端子211)よりもド
レイン(蓄電装置300の正極)の電圧を低くすると、ダイオード203には順バイアス
電圧が印加されるため、蓄電装置300が放電状態となる。他方、トランジスタ202の
ソースよりもドレインの電圧を高くすることで、蓄電装置300は充電可能な状態となり
、ダイオード203には逆バイアスの電圧が印加されているため、トランジスタ202の
オン、オフにより、充電の許容、禁止を制御することができる。以下にその詳細について
説明する。
【0092】
<<キュリー温度Tcより低い温度での動作>>
図3(A)に示す回路において、温度Tがキュリー温度Tcより低い温度での動作を、図
4に示す。本実施の形態において、キュリー温度Tcは0℃以上10℃以下とし、具体的
には、例えば概略5℃とする。
【0093】
図4では、充電時(端子211に正電圧、端子212に負電圧を印加したとき)の電流を
二点鎖線、放電時の電流を一点鎖線で示している。なお、キュリー温度Tcより低い温度
では、蓄電装置300は充電されないが、放電は行うことができる。
【0094】
ヒータ400がキュリー温度Tcより低い温度に置かれると、ヒータ400の抵抗が減少
する(図3(B)参照)。よって、ヒータ400及び抵抗201に電流が流れるため、ゲ
ート電圧VGSは、ヒータ400及び抵抗201の合成抵抗に応じた電圧となり、しきい
値電圧Vthを越えると(図3(C)参照)、pチャネル型トランジスタであるトランジ
スタ202はオフ状態となる。
【0095】
この状態では、電流の流れる方向はダイオード203の逆方向となるので、端子211か
ら蓄電装置300への電流の経路はカットされ、蓄電装置300は充電されない。すなわ
ち、蓄電装置300の充電が禁止された状態である。
【0096】
図4に示すように電流は、端子211、ヒータ400、抵抗201、及び端子212に流
れ、ヒータ400が発熱し、蓄電装置300を加熱することができる。
【0097】
ヒータ400により蓄電装置300が加熱されて温度がキュリー温度Tc以上になると、
ヒータ400の抵抗が増加し、ヒータ400に電流が流れなくなり、かつトランジスタ2
02がオン状態となる。これにより、ヒータ400による加熱が停止されると共に、蓄電
装置300への充電が許容される。この動作の詳細については後述する。
【0098】
一方、放電時では、トランジスタ202はオフ状態であるが、ダイオード203に順方向
のバイアス電圧が印加されている。よって、蓄電装置300からの放電電流は、端子21
2、蓄電装置300、ダイオード203、及び、端子211に流れる。
【0099】
<<キュリー温度Tc以上の温度での動作>>
図3(A)に示す回路250において、温度Tがキュリー温度Tc以上の温度での動作を
図5に示す。
【0100】
図5では、充電時(端子211に正電圧、端子212に負電圧を印加したとき)の電流を
二点鎖線、放電時の電流を一点鎖線で示している。ヒータ400がキュリー温度Tc以上
の温度に置かれると、ヒータ400の抵抗が増加する(図3(B)参照)。よって、ヒー
タ400及び抵抗201には電流が流れず、トランジスタ202のゲート電圧VGSはし
きい値Vthよりも低くなる(図3(C)参照)。
【0101】
トランジスタ202は、pチャネル型トランジスタであるので、オン状態となる。
【0102】
上記の状態では、充電電流はダイオード203の逆方向であるが、トランジスタ202は
オン状態であるので、充電電流は端子211、トランジスタ202、蓄電装置300、及
び端子212に流れ、蓄電装置300に電力が蓄電される。すなわち、充電が許容される
【0103】
また放電時には、トランジスタ202がオン状態であることに加えて、放電電流の流れる
方向はダイオード203の順方向となる。蓄電装置300からの放電電流は、トランジス
タ202及びダイオード203の両方を通る。つまり、蓄電装置300からの放電電流は
、端子212、蓄電装置300、トランジスタ202、ダイオード203、及び、端子2
11に流れる。以上により、蓄電装置300に蓄えられた電力を放電することができる。
【0104】
<<第2の温度以上での動作>>
図3(A)に示す回路250では、温度Tがキュリー温度Tc以上の温度で充電が許容さ
れる。従って、蓄電装置300の温度Tが、不動態被膜が破壊される程度の高温、又は、
蓄電装置300が発火する恐れがある高温となっても、充電が許容される。
【0105】
そこで、蓄電装置300の温度Tの上限値として第2の温度T2を使用者が設定し、温度
センサ410によって検知される蓄電装置300の温度TがT2に達した場合、蓄電装置
300への充電を禁止する構成とする。これにより、不動態被膜が破壊されることや、蓄
電装置300が発火することを防ぐことができる。
【0106】
以上により、低温でも高温でも安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることができる。
【0107】
図6に、前記回路250を含む蓄電ユニットを示す。蓄電ユニットはさらに電流制御回路
550、及び制御回路570を有しており、電源561及び負荷562と接続することが
可能である。
【0108】
電流制御回路550は、コンデンサ551、抵抗552、コイル553、ダイオード55
4、トランジスタ555を有しており、降圧型DC-DCコンバータを利用した電流制御
回路である。
【0109】
コンデンサ551の一方の端子は、抵抗552の一方の端子、コイル553の一方の端子
、制御回路570の端子SENSE+に電気的に接続されている。また、蓄電装置300
を放電する際、負荷562がコンデンサ551の一方の端子に接続される。コンデンサ5
51の他方の端子は接地されている。
【0110】
抵抗552の他方の端子は、制御回路570の端子SENSE-、回路250の端子21
1に電気的に接続されている。抵抗552の両方の端子にかかる電圧は、制御回路570
の端子SENSE+及び端子SENSE-にかかる電圧と同じである。これにより、抵抗
552を流れる電流の電流値を測定することができる。
【0111】
コイル553の他方の端子は、ダイオード554のカソード、トランジスタ555のドレ
インに電気的に接続されている。
【0112】
ダイオード554のアノードは接地されている。
【0113】
トランジスタ555はnチャネル型トランジスタであり、ゲートは制御回路570の端子
GSに電気的に接続されている。
【0114】
トランジスタ555のソースは、蓄電装置300の充電時、電源561に電気的に接続さ
れる。
【0115】
電源561は、蓄電装置300を充電するための電力を供給する。電源561は直流電源
でも良く、交流電源(例えば、商用電源)でも良い。交流電源の場合、交流-直流変換器
(AC-DCコンバータ、又は、AC-DCインバータともいう)を用いれば良い。
【0116】
制御回路570は、端子SENSE+及び端子SENSE-の電圧を検知することで、端
子SENSE+及び端子SENSE-間を流れる電流、すなわち、抵抗552に流れる電
流の電流値を測定する。制御回路570は、端子THMに入力された温度センサ410か
らの情報(信号)に基づいてパルス幅変調(Pulse Width Modulati
on:PWM)信号を生成し、端子GSからトランジスタ555のゲートへ入力すること
により、抵抗552に流れる電流の電流値を制御する。抵抗552に流れる電流の電流値
を制御するということは、回路250の端子211及び端子212間の電流、さらに具体
的には、蓄電装置300への充電電流又は蓄電装置300からの放電電流を制御するとい
うことを意味する。
【0117】
温度T2以上の温度では、制御回路570は、端子THMに入力される、温度センサ41
0によって検知された蓄電装置300の温度Tの情報に基づいて、トランジスタ555を
オフにし、蓄電装置300への充電を禁止する。
【0118】
以上本実施の形態により、低温でも高温でも安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることが
できる。
【0119】
また、温度センサ410を省略した構成(図2(C)参照)の蓄電ユニットを図14に示
す。
【0120】
蓄電装置300の負極の不動態被膜が破壊される温度、又は、蓄電装置300が発火する
温度より低い温度で使用するのであれば、図14に示す回路を用いることにより、最適な
温度範囲で充電可能な蓄電ユニットを得ることができる。
【0121】
以上本実施の形態により、低温及び高温で安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることがで
きる。
【0122】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0123】
[実施の形態3]
本実施の形態では、ヒータ400としてPTCサーミスタではなく、温度によらず抵抗が
ほぼ一定のヒータを用い、かつ、温度センサを用いた蓄電ユニットについて説明する。
【0124】
<回路構成1>
図7(A)に、本実施の形態の蓄電ユニットの回路の一部を示す。
【0125】
図7(A)に示す回路260は、蓄電装置300、温度センサ410、ヒータ400、ト
ランジスタ261、ダイオード262、トランジスタ263、ダイオード264、端子2
21、端子222、端子THM、並びに、端子HCONを有している。
【0126】
蓄電装置300の正極は、トランジスタ261のドレイン、及び、ダイオード262のア
ノードに電気的に接続されている。蓄電装置300の負極は、温度センサ410の一方の
端子、トランジスタ263のソース、ダイオード264のアノード、及び、端子222に
電気的に接続されている。蓄電装置300の正極及び負極間にかかる電圧をVbtとする
【0127】
ヒータ400の一方の端子は、トランジスタ261のソース、ダイオード262のカソー
ド、及び、端子221に電気的に接続されている。ヒータ400の他方の端子は、トラン
ジスタ263のドレイン、ダイオード264のカソードに電気的に接続されている。
【0128】
温度センサ410として、本実施の形態ではNTCサーミスタを用いる。温度センサ41
0は、蓄電装置300に隣接して設置する。ただし、後述のように、ヒータ400の温度
で動作を切り替えるため、蓄電装置300、ヒータ400、及び、温度センサ410は、
可能な限り近づけて設置することが望ましい。温度センサ410の他方の端子は、端子T
HMに電気的に接続されている。
【0129】
トランジスタ261はpチャネル型トランジスタであり、ゲートはトランジスタ263の
ゲート、及び、端子HCONに電気的に接続されている。トランジスタ263はnチャネ
ル型トランジスタである。
【0130】
図7(B)に、トランジスタ261のゲート及びトランジスタ263のゲートに印加され
る電圧VHCON(すなわち、端子HCONに印加される電圧)と温度との関係を示す。
なお図7(B)における温度は、温度センサ410によって検知された温度Tである。
【0131】
温度Tが温度T1より低い場合、電圧VHCONを高レベル電圧(「H」と表記)とする
。ここで、高レベル電圧(H)とは、pチャネル型トランジスタであるトランジスタ26
1のしきい値電圧、及び、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ263のしきい
値電圧よりも高い電圧とする。
【0132】
温度Tが、所定の温度T1以上の場合、電圧VHCONを低レベル電圧(「L」と表記)
とする。ここで、低レベル電圧(L)とは、pチャネル型トランジスタであるトランジス
タ261のしきい値電圧、及び、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ263の
しきい値電圧よりも低い電圧とする。なお、温度T1とは、使用者によって決定された任
意の温度である。以下に回路の動作の詳細について説明する。
【0133】
<<T1より低い温度での動作>>
図7(A)に示す回路260において、温度Tが温度T1より低い温度での動作を、図8
に示す。
【0134】
図8では、端子221に正電圧、端子222に負電圧を印加したときの電流を二点鎖線、
放電時の電流を一点鎖線で示している。
【0135】
温度がT1より低い温度の時、電圧VHCONを高レベル電圧(H)とする(図7(B)
参照)。高レベル電圧(H)がゲートに印加されると、pチャネル型トランジスタである
トランジスタ261はオフ状態、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ263は
オン状態となる。
【0136】
この場合、端子221、ヒータ400、トランジスタ263、及び端子222に電流が流
れる。なお、電流の流れる方向は、ダイオード264の逆方向であるので、ダイオード2
64には電流は流れない。よって、ヒータ400が発熱し、蓄電装置300を加熱するこ
とができる。
【0137】
また、トランジスタ261がオフ状態であり、電流の流れる方向がダイオード262の逆
方向であるので、蓄電装置300への電流の経路がカットされ、蓄電装置300は充電さ
れない。
【0138】
ヒータ400により蓄電装置300が加熱され、蓄電装置300が温度T1以上になると
、ヒータ400の加熱を終了し、蓄電装置300への充電が許容される。この動作の詳細
については後述する。
【0139】
一方、放電時では、トランジスタ261の状態に係わらず、放電電流の流れる方向はダイ
オード262の順方向となる。つまり、蓄電装置300からの放電電流は、端子222、
蓄電装置300、ダイオード262、及び、端子221に流れる。以上により、蓄電装置
300から放電することができる。
【0140】
<<T1以上の温度での動作>>
図7(A)に示す回路260において、温度TがT1以上での動作を、図9に示す。
【0141】
図9では、充電時(端子221に正電圧、端子222に負電圧を印加したとき)の電流を
二点鎖線、放電時の電流を一点鎖線で示している。
【0142】
温度がT1以上の温度の時、電圧VHCONを低レベル電圧(L)とする(図7(B)参
照)。低レベル電圧(L)がゲートに印加されると、pチャネル型トランジスタであるト
ランジスタ261はオン状態、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ263はオ
フ状態となる。トランジスタ263がオフ状態であり、電流の流れる方向がダイオード2
64の逆方向であるので、ヒータ400には電流が流れない。
【0143】
上記の状態で充電を行うと、トランジスタ261はオン状態であるが、充電電流の流れる
方向はダイオード262の逆方向となるので、端子221から蓄電装置300への充電電
流の経路は、トランジスタ261のみを通る。充電電流が端子221、トランジスタ26
1のソース及びドレイン、蓄電装置300、及び端子222に流れることにより、蓄電装
置300が充電される。
【0144】
また放電時には、トランジスタ261がオン状態であることに加えて、放電電流の流れる
方向はダイオード262の順方向となる。蓄電装置300からの放電電流は、トランジス
タ261及びダイオード262の両方を通る。つまり、蓄電装置300からの放電電流は
、端子222、蓄電装置300、トランジスタ261のソース及びドレイン、ダイオード
262、及び、端子221に流れる。以上により、蓄電装置300から放電することがで
きる。
【0145】
<<T2以上の温度での動作>>
図7(A)に示す回路260では、T1以上の温度で、上述のように、充電が許容される
。従って、蓄電装置300の温度Tが、不動態被膜が破壊される程度の高温、又は、蓄電
装置300が発火する恐れがある高温となっても、充電が許容される。
【0146】
そこで、蓄電装置300の温度Tの上限値(上限温度T2)を使用者が設定し、温度セン
サ410によって検知される蓄電装置300の温度がT2に達した場合、蓄電装置300
への充電を禁止する。これにより、不動態被膜が破壊されることや、蓄電装置300が発
火することを防ぐことができる。
【0147】
以上により、低温でも高温でも安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることができる。
【0148】
図10に、回路260を含む蓄電ユニットの回路を示す。蓄電ユニットは、回路260、
電流制御回路550、及び制御回路580を有している。
【0149】
制御回路580は、温度センサ410の情報を端子THMで受け取り、当該情報を基に、
端子HCONの電圧VHCONを高レベル電圧(H)又は低レベル電圧(L)に切り替え
る。また、端子SENSE+及び端子SENSE-の電圧を検知することで、端子SEN
SE+及び端子SENSE-間を流れる電流、すなわち、抵抗552に流れる電流の電流
値を測定する。また、制御回路580の端子GSからトランジスタ555のゲートへ、パ
ルス幅変調信号を入力することにより、抵抗552に流れる電流の電流値を制御する。
【0150】
温度T1より低い温度、及び、温度T2以上の温度では、制御回路580は、蓄電装置3
00の温度Tの情報に基づいて電圧VHCONとして高レベル電圧をトランジスタ261
と263のゲートに出力し、蓄電装置300の充電を禁止する。また、パルス幅変調信号
を制御することにより、トランジスタ555をオフ状態とし、電源561から蓄電装置3
00への充電を禁止することができる。
【0151】
上限温度T2以上の温度では、制御回路580は蓄電装置300の温度Tの情報に基づい
てパルス幅変調信号を制御してトランジスタ555をオフ状態とし、電源561から蓄電
装置300への充電を禁止することができる。
【0152】
<回路構成2>
以下に、図7(A)及び図10とは異なる回路構成を有する蓄電ユニットについて説明す
る。
【0153】
図11に示す回路270は、図7(A)に示す回路260と、トランジスタ261のゲー
トが、端子HCONではなく、端子CCONと電気的に接続されている点で異なる。すな
わち、図7(A)の回路260ではトランジスタ261のゲート及びトランジスタ263
のゲートへの電圧の印加を同一の端子HCONで行うが、図11の回路270では別々の
端子CCON及び端子HCONで行う。
【0154】
<<T1より低い温度での動作>>
図11に示す回路270において、温度TがT1より低い場合の動作を、図12(A)及
図12(B)に示す。
【0155】
図12(A)では、端子221に正電圧、端子222に負電圧を印加したときの電流を二
点鎖線、図12(B)では、放電時の電流を一点鎖線で示している。
【0156】
図12(A)に示すように、端子221に正電圧、端子222に負電圧を印加し、電圧V
HCONを高レベル電圧(H)、電圧VCCONを高レベル電圧(H)とする。
【0157】
高レベル電圧(H)がゲートに印加されると、pチャネル型トランジスタであるトランジ
スタ261はオフ状態、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ263はオン状態
となる。
【0158】
この場合、端子221、ヒータ400、トランジスタ263、及び端子222に電流が流
れる。なお電流の流れる方向はダイオード264の逆方向であるので、ダイオード264
には電流は流れない。よって、ヒータ400が発熱し、蓄電装置300を加熱することが
できる。また、トランジスタ261がオフ状態であるので、蓄電装置300への電流の経
路がカットされ、蓄電装置300は充電されない。
【0159】
一方図12(B)に示すように、放電時には、電圧VHCONを高レベル電圧(H)、電
圧VCCONを低レベル電圧(L)とする。
【0160】
低レベル電圧(L)がゲートに印加されると、pチャネル型トランジスタであるトランジ
スタ261はオン状態となる。高レベル電圧(H)がゲートに印加されると、nチャネル
型トランジスタであるトランジスタ263はオン状態となる。
【0161】
放電時では、トランジスタ261がオン状態であり、放電電流の流れる方向はダイオード
262の順方向となる。つまり、蓄電装置300からの放電電流は、端子222、蓄電装
置300、ダイオード262、及び、端子221に流れる。以上により、蓄電装置300
から放電することができる。
【0162】
ここで、図7(A)に示す回路260に対する、図11に示す回路270の有利点につい
て述べる。
【0163】
図7(A)に示す回路260では、T1より低い温度での放電時にトランジスタ261を
オフ状態とするため、放電電流はダイオード262のみに流れる。ダイオード262の順
方向電圧降下により、蓄電装置300に蓄えられた電力の一部が、放電時に失われる恐れ
が生じる。
【0164】
一方、図11に示す回路270では、温度T1より低い温度での放電時にトランジスタ2
61をオン状態とする。そのため、放電電流はダイオード262及びトランジスタ261
の両方を流れる。これにより、ダイオード262の順方向電圧降下が起こらず、蓄電装置
300に蓄えられた電力の損失を抑制することができる。
【0165】
<<T1以上の温度での動作>>
図11に示す回路270において、温度TがT1以上の温度での動作を、図13に示す。
【0166】
図13では、充電時(端子221に正電圧、端子222に負電圧を印加したとき)の電流
を二点鎖線、放電時の電流を一点鎖線で示している。温度TがT1以上の時、電圧VHC
ONを低レベル電圧(L)とする。低レベル電圧(L)がゲートに印加されると、nチャ
ネル型トランジスタであるトランジスタ263はオフ状態となる。また、端子CCONの
電圧VCCONも低レベル電圧(L)とする。低レベル電圧(L)がゲートに印加される
と、pチャネル型トランジスタであるトランジスタ261はオン状態となる。このため、
充電電流の流れる方向はダイオード262の順方向である。トランジスタ263がオフ状
態であり、充電電流の流れる方向がダイオード264の逆方向であるので、ヒータ400
には電流が流れない。
【0167】
上記の状態で充電を行うと、トランジスタ261はオン状態であるが、充電電流の流れる
方向はダイオード262の逆方向となるので、充電電流は、端子221、トランジスタ2
61、蓄電装置300、及び端子222に流れることにより、蓄電装置300が充電され
る。
【0168】
また放電時には、トランジスタ261がオン状態であることに加えて、放電電流の流れる
方向はダイオード262の順方向となる。蓄電装置300からの放電電流の経路は、端子
222、蓄電装置300、トランジスタ261、ダイオード262、及び、端子221に
流れる。以上により、蓄電装置300から放電することができる。
【0169】
<<T2以上の温度での動作>>
図11に示す回路270では、温度T1以上の温度で、上述のように、充電が許容される
。この場合、蓄電装置300の温度Tが、不動態被膜が破壊される程度の高温、又は、蓄
電装置300が発火する恐れがある高温となっても、充電が許容される。
【0170】
そこで、蓄電装置300の温度Tの上限値(上限温度T2)を使用者が設定し、温度セン
サ410によって検知される蓄電装置300の温度がT2に達した場合、蓄電装置300
への充電を禁止する。これにより、不動態被膜が破壊されることや、蓄電装置300が発
火することを防ぐことができる。
【0171】
以上により、低温でも高温でも安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることができる。
【0172】
図15に、回路270を含む蓄電ユニットの回路を示す。図15に示す蓄電ユニットは、
回路270、電流制御回路550、及び制御回路590を有している。
【0173】
制御回路590は、温度センサ410の情報を端子THMで受け取り、当該情報を基に、
端子HCONの電圧VHCONを高レベル電圧(H)又は低レベル電圧(L)に切り替え
る。また制御回路590は、温度センサ410からの情報を基に、端子CCONの電圧(
電圧VCCONとする)を高レベル電圧(H)又は低レベル電圧(L)に切り替える。
【0174】
制御回路590は、端子SENSE+及び端子SENSE-の電圧を検知することで、端
子SENSE+及び端子SENSE-間を流れる電流、すなわち、抵抗552に流れる電
流の電流値を測定する。また、制御回路590の端子GSからトランジスタ555のゲー
トへ、パルス幅変調信号を入力することにより、抵抗552に流れる電流の電流値を制御
する。
【0175】
上限温度T2以上の温度では、制御回路590は、蓄電装置300の温度Tの情報に基づ
いてパルス幅変調信号を制御してトランジスタ555をオフ状態にし、電源561から蓄
電装置300への充電を禁止する。
【0176】
以上本実施の形態により、低温及び高温で安全に動作可能な蓄電ユニットを得ることがで
きる。
【0177】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0178】
[実施の形態4]
本実施の形態では、蓄電装置に蓄えられる電力の電源として、太陽電池を用いた例につい
て説明する。
【0179】
本実施の形態の蓄電ユニットを太陽電池と組み合わせた太陽光発電ユニット100の一例
図16に示す。
【0180】
図16に示す太陽光発電ユニット100は、蓄電装置300、ヒータ400、及び、温度
センサ410を有する蓄電ユニット、太陽電池200、並びに、制御装置600を有して
いる。蓄電ユニットは、太陽電池200の受光面と反対側の面に設けられている。また、
蓄電ユニット、並びに、制御装置600は、配線403によって電気的に接続されている
【0181】
太陽光発電ユニット100の回路構成を図17に示す。太陽光発電ユニット100は、ヒ
ータ400としてPTCサーミスタを用いる回路250(図3(A)参照)を有するもの
とする。
【0182】
太陽光発電ユニット100は、太陽電池200、抵抗611、抵抗612、MPPT回路
650(MPPT:Maximum Power Point Tracking(最大
電力点追従))、電流制御回路550、回路250、制御回路670を有している。なお
、電流制御回路550及び回路250は、図6に示す構成と同じである。
【0183】
抵抗611の一方の端子は太陽電池200の一方の端子に電気的に接続されている。抵抗
611の他方の端子は、抵抗612の一方の端子、及び、制御回路670の端子VIN_
SNSに電気的に接続されている。抵抗612の他方の端子は接地されている。
【0184】
太陽電池200が発電した直流電力の電圧をVSBとし、抵抗611及び抵抗612それ
ぞれの抵抗値をR1及びR2とすると、端子VIN_SNSに印加される電圧は、R2/
(R1+R2)×VSBとなる。そのため、端子VIN_SNSに印加される電圧を検知
することにより、太陽電池200が発電した直流電力の電圧VSBを検知することができ
る。
【0185】
MPPT回路650は、コンデンサ651、抵抗652、コイル653、ダイオード65
4、トランジスタ655を有しており、降圧型DC-DCコンバータを利用した電流制御
回路である。
【0186】
コンデンサ651の一方の端子は、電流制御回路550、抵抗652の一方の端子、制御
回路670の端子SENSE1-に電気的に接続されている。コンデンサ651の他方の
端子は接地されている。
【0187】
抵抗652の他方の端子は、コイル653の一方の端子、制御回路670の端子SENS
E1+に電気的に接続されている。抵抗652の両方の端子にかかる電圧は、制御回路6
70の端子SENSE1+及び端子SENSE1-にかかる電圧と同じである。これによ
り、抵抗652を流れる電流の電流値を測定することができる。
【0188】
コイル653の一方の端子は、抵抗652の他方の端子に電気的に接続されている。コイ
ル653の他方の端子は、ダイオード654のカソード、トランジスタ655のソース又
はドレインの一方に電気的に接続されている。ダイオード654のアノードは接地されて
いる。
【0189】
トランジスタ655はnチャネル型トランジスタであり、ゲートは制御回路670の端子
GS1に電気的に接続されている。制御回路670からトランジスタ655のゲートへ、
パルス幅変調信号が入力されることにより、抵抗652に流れる電流の電流値を制御する
ことができる。
【0190】
トランジスタ655のソース又はドレインの他方は、抵抗611の一方の端子に電気的に
接続されている。
【0191】
太陽電池200が発電した直流電力の電圧VSBは、太陽電池200の状態によって変化
する。そこで、MPPT回路650が、電圧VSBに応じて電流値を変化させることで、
太陽電池200から取り出せる電力の電力を最大化することができる。
【0192】
なお、電流制御回路550及び回路250の詳細な説明については、図6に示す電流制御
回路550及び回路250の説明を援用すればよい。ただし、図17においては、図6
制御回路570の端子GS、端子SENSE+、端子SENSE-を、図17の制御回路
670の端子GS2、端子SENSE2+、端子SENSE2-に読み替える。
【0193】
また、図14と同様に、不動態被膜が破壊される温度、又は、蓄電装置300が発火する
温度より低い場合で使用するのであれば、図17の回路250において、温度センサ41
0を省略した構成にしてもよい。
【0194】
図18に、図17とは異なる構成を有する太陽光発電ユニットの回路構成を示す。太陽光
発電ユニット100は、温度によらず抵抗がほぼ一定のヒータ400を用いる回路260
図7(A)参照)を有するものとする。
【0195】
太陽光発電ユニット100は、太陽電池200、抵抗611、抵抗612、MPPT回路
650、電流制御回路550、回路260、制御回路680を有している。なお、太陽電
池200、抵抗611、抵抗612、MPPT回路650は、図17に示す構成と同じで
ある。ただし、図17に示す制御回路670は、図18では制御回路680に読み替える
【0196】
また電流制御回路550及び回路260は、図10に示す構成と同じである。ただし、図
10の制御回路580の端子GS、端子SENSE+、端子SENSE-を、図18では
制御回路680の端子GS2、端子SENSE2+、端子SENSE2-に読み替える。
【0197】
図19に、図17及び図18とは異なる構成を有する太陽光発電ユニットの回路構成を示
す。太陽光発電ユニット100では、温度によらず抵抗がほぼ一定のヒータ400を用い
る回路270(図11参照)を有するものとする。
【0198】
太陽光発電ユニット100は、太陽電池200、抵抗611、抵抗612、MPPT回路
650、電流制御回路550、回路270、制御回路690を有している。なお、太陽電
池200、抵抗611、抵抗612、MPPT回路650は、図17に示す構成と同じで
ある。ただし、図17に示す制御回路670は、図19では制御回路690に読み替える
【0199】
また電流制御回路550及び回路270は、図15に示す構成と同じである。ただし、図
15の制御回路590の端子GS、端子SENSE+、端子SENSE-を、図19の制
御回路690の端子GS2、端子SENSE2+、端子SENSE2-に読み替える。
【0200】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0201】
100 太陽光発電ユニット
200 太陽電池
201 抵抗
202 トランジスタ
203 ダイオード
211 端子
212 端子
221 端子
222 端子
250 回路
255 回路
260 回路
261 トランジスタ
262 ダイオード
263 トランジスタ
264 ダイオード
270 回路
300 蓄電装置
301 正極集電体
302 正極活物質層
304 負極活物質層
305 負極集電体
307 セパレータ
308 電解質
309 外装体
310 蓄電装置
311 正極
312 負極
400 ヒータ
403 配線
401a 端子
401b 端子
410 温度センサ
411a 端子
411b 端子
500 外装体
501a 端子
501b 端子
502a 端子
502b 端子
503a 端子
503b 端子
550 電流制御回路
551 コンデンサ
552 抵抗
553 コイル
554 ダイオード
555 トランジスタ
561 電源
562 負荷
570 制御回路
580 制御回路
590 制御回路
611 抵抗
612 抵抗
650 MPPT回路
651 コンデンサ
652 抵抗
653 コイル
654 ダイオード
655 トランジスタ
670 制御回路
680 制御回路
690 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19