(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】光学的に透明なせん断増粘流体及びそれを含む光学ディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20221108BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221108BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221108BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221108BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
B05D7/24 302P
B05D7/24 303B
(21)【出願番号】P 2021021784
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2021-02-15
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テヤン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】イーシャン・ソン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214390(JP,A)
【文献】特開2016-069476(JP,A)
【文献】特開2019-164293(JP,A)
【文献】特開2011-18508(JP,A)
【文献】特表2020-514464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0338142(US,A1)
【文献】特開2016-101716(JP,A)
【文献】国際公開第2014/098025(WO,A1)
【文献】特開平10-204328(JP,A)
【文献】特表2021-509180(JP,A)
【文献】特開2018-20552(JP,A)
【文献】特開2003-147017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C09C 1/00- 3/12
C09D 1/00- 10/00
C09D 15/00- 17/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40~100nmの範囲の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子;
ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)である少なくとも1種のポリマー;
並びに、
アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される液体媒体
を含む光学的に透明なせん断増粘流体であって、前記少なくとも1種のポリマーは、前記液体媒体に実質的に可溶性であ
り、前記固体ナノ粒子は、前記せん断増粘流体の総重量を基準として50~60重量%の量で存在し及び、前記少なくとも1種のポリマーが、前記せん断増粘流体の総重量を基準として15~20重量%の量で存在する、光学的に透明なせん断増粘流体。
【請求項2】
テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、ヘキサメトキシメチルメラミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジグリシジルエーテル、コハク酸、プロパントリカルボン酸、イソシアネート及びブロックイソシアネートからなる群から選択される架橋剤を更に含む、請求項1に記載のせん断増粘流体。
【請求項3】
前記固体ナノ粒子は、1.3~2.0の屈折率を有し、及び前記少なくとも1種のポリマーは、前記固体ナノ粒子と同じ屈折率を有する、請求項1
又は2に記載のせん断増粘流体。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリマーは、250℃未満の温度で架橋されている、請求項
1~3のいずれか一項に記載のせん断増粘流体。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリマーは、紫外線(UV)架橋されている、請求項
1~3のいずれか一項に記載のせん断増粘流体。
【請求項6】
前記固体ナノ粒子は、無機又は有機ナノ粒子である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のせん断増粘流体。
【請求項7】
前記無機ナノ粒子は、シリカナノ粒子であり、及び前記シリカナノ粒子は、アルコール中でオルトケイ酸テトラエチルを加水分解することによって作られた単分散で均一なサイズのシリカナノ粒子である、請求項
6に記載のせん断増粘流体。
【請求項8】
前記シリカナノ粒子は、オルガノアルコキシシラン又はメタリルシランの有機ケイ素化合物によって変性されている、請求項
7に記載のせん断増粘流体。
【請求項9】
第1の光学的に透明な層と、前記第1の光学的に透明な層上に配置されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載のせん断増粘流体とを含む保護アセンブリ。
【請求項10】
前記せん断増粘流体上に配置された第2の光学的に透明な層を更に含む、請求項
9に記載の保護アセンブリ。
【請求項11】
保護アセンブリを製造する方法であって、
(a)
ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)である少なくとも1種のポリマーを提供する工程;
(b)前記少なくとも1種のポリマーを
アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される液体媒体に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程;
(c)
40~100nmの範囲の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子を前記ポリマー溶液に分散させて、光学的に透明なせん断増粘流体(STF)を形成する工程
であって、前記固体ナノ粒子は、前記せん断増粘流体の総重量を基準として50~60重量%の量で存在し及び、前記少なくとも1種のポリマーが、前記せん断増粘流体の総重量を基準として15~20重量%の量で存在する工程;
(d)前記せん断増粘流体を第1の光学的に透明な層上にコーティングして、STF層を形成する工程;及び
(e)前記STF層をある量の硬化エネルギーに曝露して、硬化されたSTF層を形成する工程
を含む方法。
【請求項12】
保護アセンブリを製造する方法であって、
(a)
ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)である少なくとも1種のポリマーと架橋剤とを提供する工程;
(b)前記少なくとも1種のポリマーと前記架橋剤とを
アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される液体媒体に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程;
(c)
40~100nmの範囲の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子を前記ポリマー溶液に分散させて、光学的に透明なせん断増粘流体(STF)を形成する工程
であって、前記固体ナノ粒子は、前記せん断増粘流体の総重量を基準として50~60重量%の量で存在し及び、前記少なくとも1種のポリマーが、前記せん断増粘流体の総重量を基準として15~20重量%の量で存在する工程;
(d)前記せん断増粘流体を第1の光学的に透明な層上にコーティングして、STF層を形成する工程;及び
(e)前記STF層をある量の硬化エネルギーに曝露して、硬化されたSTF層を形成する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学的に透明なせん断増粘流体及び光学的に透明なせん断増粘流体を含む保護アセンブリに関する。本開示は、電子デバイス、特に光学ディスプレイデバイスにおける光学的に透明なせん断増粘流体の使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子デバイスには、画像を表示するための光学ディスプレイパネルが含まれている。そのようなデバイスの例には、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット、ラップトップコンピューター、ナビゲーションシステム及びテレビなどのモバイルデバイスが含まれる。光学ディスプレイパネルは、多くの場合、擦り傷、指紋、外力の衝撃による損傷などから保護するためのカバーウィンドウを有する。例えば、損傷は、光学ディスプレイパネルを含む電子デバイスを落下させることによって引き起こされる可能性がある。そのようなカバーウィンドウは、光学的に透明な膜を含み、光学的に透明な接着剤を使用してディスプレイ基材に取り付けられる。
【0003】
最近、フレキシブルディスプレイデバイスが開発され、広く使用されている。フレキシブルディスプレイデバイスは、フレキシブルディスプレイパネルを採用する。そのようなパネルは、曲げることができるか、折り畳むことができるか、又は丸めることができる。従来のリジッドディスプレイと比較して、フレキシブルディスプレイは、曲げることができる/可撓性を有する特徴を可能にするために、カバーウィンドウの厚さ及び剛性を大幅に減らす必要がある。ポリマー膜は、フレキシブルディスプレイデバイスのカバーウィンドウでよく使用されている。その結果、カバーウィンドウの下にあるディスプレイパネルの壊れやすい構成要素(例えば、有機発光層、TFTアレイ及びバリア層)は、外部からの衝撃又は衝突による損傷をより受けやすい。損傷には、カバーウィンドウの凹み又はひび割れ、個々の層間の層間剥離、ディスプレイモジュールのピクセル損傷が含まれ、これらは、全て電子部品に悪影響を及ぼす。ディスプレイの製造業者は、ディスプレイデバイスの下にある壊れやすい電子部品を外力による衝撃下で保護するために使用できる効果的な耐衝撃性材料を常に探し求めている。
【0004】
せん断増粘流体(STF)は、せん断速度に伴って粘度が増加する流体である。場合により、高せん断速度において、STFは、固体のような特性を有する材料に変換される。そのような材料は、せん断がないか又は低せん断速度では流体であり、柔軟性を有するが、高せん断速度では硬くなる。
【0005】
そのようなせん断増粘流体は、主に、せん断増粘流体を含浸させることにより、布地を主体とする可撓性を有するボディアーマーによって得られる防弾性を強化するために使用される。鈍的外傷による皮膚及び関節の損傷を防止するために、せん断増粘流体は、肘及び膝のパッドにも組み込まれる。更に、これらは、自転車、オートバイのヘルメット、ゴルフのクラブ及びボール並びに運動靴などのスポーツ用品;自動車;並びに飛行機で使用するための粗くてエネルギー吸収性の材料である発泡体、プラスチック及びナノコンポジットの設計にも使用することができる。
【0006】
近年、そのようなSTF材料は、ディスプレイなどのフレキシブル電子デバイスの保護層としての有用性が見出されている。STF層は、通常の操作中に可撓性を有するが、デバイスが外力にさらされると硬くなって保護する。しかしながら、STF材料は、不透明又は半透明であり、ディスプレイデバイスの表示領域に適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Colloid and Interface Science,26,62-29(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスプレイデバイス、特にフレキシブルディスプレイデバイスで使用することができ、外力による衝撃又は衝突下でディスプレイデバイスを保護することができる光学的に透明なSTF材料が継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に示される概念の理解を促進するために添付の図において実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の光学的に透明なせん断増粘流体を有するディスプレイデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図中の対象物が簡潔且つ明確にするために例示されたものであり、必ずしも縮図として描かれたものではないことは、当業者に明らかである。例えば、図中の対象物の一部の寸法は、実施形態の理解の向上を促進するために、他の対象物に対して誇張されている場合がある。
【0012】
本明細書の全体にわたって用いられるとき、以下の略語は、文脈が特に明確に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;及びmin.=分。特に明記しない限り、全ての量は、重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比は、モル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包含的であり、且つ任意の順で組み合わせ可能である。特に明記しない限り、全てのポリマー及びオリゴマーの分子量は、g/mol又はダルトン単位の重量平均分子量(「Mw」)であり、ポリスチレン標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0013】
本明細書において使用される「架橋可能基」という用語は、熱処理又は放射への曝露により別の化合物又はポリマー鎖に連結することができる化合物又はポリマー鎖上の基を指す。
【0014】
「架橋」、「架橋した」、「硬化」及び「硬化した」という用語は、化合物又はポリマー中の結合又は鎖を連結することを指し、本明細書の全体にわたって同じ意味で用いられる。
【0015】
「液体媒体」という用語は、室温(20~25℃)で液体であり、純粋な液体又は液体の組み合わせであり得る材料を指す。液体媒体という用語は、1種以上の液体が存在するか否かに関わらず使用される。
【0016】
「光学的に透明」という用語は、視覚的に透明であり、曇りがない材料又は層を指す。
【0017】
「透過率」という用語は、反対側で検出可能であるようにフィルム又は層を通過する、フィルム又は層に衝突する所与の波長の光のパーセントを指す。光透過率の測定は、可視領域(380nm~800nm)で行うことができる。
【0018】
「実質的に可溶性である」という用語は、ポリマーの少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%が液体媒体に可溶性であるであること、すなわちポリマーの5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下が固体状態で存在することを意味する。
【0019】
用語「フィルム」及び「層」は、本明細書の全体にわたって同じ意味で用いられる。
【0020】
本明細書では、特に明示的に述べられるか、又は使用に関連して反対のことが示されない限り、本明細書の主題の実施形態が特定の特徴又は要素を含むか、包含するか、含有するか、有するか、それらからなるか、又はそれらによって若しくはそれらから構成されると述べられるか又は記載される場合、明示的に述べられた又は記載されたものに加えて1つ以上の特徴又は要素が実施形態で存在し得る。本明細書の開示された主題の代わりの実施形態は、特定の特徴又は要素から本質的になると記載されるが、その実施形態では、操作の原理又は実施形態の際立った特性を実質的に変更する特徴又は要素は、その中に存在しない。本明細書の記載された主題の更なる代わりの実施形態は、特定の特徴又は要素からなると記載されるが、その実施形態又はその実態のない変形形態では、具体的に述べられた又は記載された特徴又は要素のみが存在する。
【0021】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を記載するために使用される。これは、便宜上及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためになされているに過ぎない。この記述は、1つ又は少なくとも1つを含むと解釈されなければならず、且つそれが別の意味を有することが明らかでない限り、単数は、複数も含む。
【0022】
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。更に、材料、方法及び実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図しない。
【0023】
本明細に記載されていない範囲について、特定の材料、処理動作及び回路に関する多くの詳細は、従来通りであり、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、太陽電池及び半導体部材技術の教科書及び他の情報源に見出すことができる。
【0024】
本開示は、100nm以下の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子;少なくとも1種のポリマー;及び液体媒体を含む光学的に透明なせん断増粘流体(「STF」)であって、少なくとも1種のポリマーは、液体媒体に実質的に可溶性である、透明なせん断増粘流体を提供する。
【0025】
少なくとも1種のポリマーは、光学的に透明且つ無色である。ポリマーは、ホモポリマーであり得るか、又は2種以上のモノマーから誘導されたコポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、架橋可能な基を含むことができる。架橋可能な基の例としては、限定するものではないが、ビニル、ヒドロキシル、カルボキシル、パーフルオロビニルエーテル、1-ベンゾ-3,4-シクロブタンなどのベンゾシクロブタン、o-キノジメタン、シロキサン、シアネート基、エポキシなどの環状エーテル、シクロアルケン、アセチレン基及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
架橋性基を有する少なくとも1種のポリマーは、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート-co-メタクリル酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート-co-2-カルボキシエチルアクリレート)、アクリレート官能基で部分的にキャップされたポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0027】
一実施形態では、2-ヒドロキシエチルアクリレートのコポリマーは、-20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。2-ヒドロキシテチルアクリレートのコポリマーを形成するために使用されるモノマーの例としては、限定するものではないが、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、iso-デシルアクリレート、iso-デシルメタクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、iso-トリデシルメタクリレート、n-プロピルアクリレート及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、2種以上のポリマーを含む。一実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、第1の架橋性基を有する第1のポリマーと、第2の架橋性基を有する第2のポリマーとを含む。第1のポリマーは、第2のポリマーと架橋されている。第1の架橋性基は、第2の架橋性基と同じであるか又は異なり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、光学的に透明なせん断増粘流体は、少なくとも1種のポリマーを架橋することができる架橋剤を更に含むことができる。架橋剤としては、限定するものではないが、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル;ヘキサメトキシメチルメラミン;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル;ブタンジグリシジルエーテル;コハク酸;プロパントリカルボン酸;イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート;Desmodur(登録商標)BL3475BA/SN、Desmodur(登録商標)PL340 BA/SN及びDesmodur(登録商標)BL350 MPA/SN(Covestro Deutscheland AGから市販)などのブロックイソシアネート;並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0030】
架橋剤によって架橋された少なくとも1種のポリマーとしては、限定するものではないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-co-(メタ)アクリル酸アクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)-co-2-カルボキシエチルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)及びこれらの組み合わせを挙げることができる。架橋剤は、ポリマーの重量を基準として5~25重量%又は10~20重量%の範囲で存在することができる。
【0031】
少なくとも1種のポリマーは、熱的に又は放射下で架橋され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、250℃未満、又は240℃未満、又は230℃未満、又は220℃未満、又は210℃未満、又は200℃未満の温度で熱的に架橋され得る。熱的な架橋を促進するために架橋触媒が存在し得る。架橋触媒は、酸又は塩基であり得る。
【0032】
架橋触媒の例としては、限定するものではないが、N,N-ジメチルベンジルアミン、2-エチルイミダゾール、2-エチルヘキサン酸、テトラメチルグアニジン、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、コバルトオクトエート、トリエタノールアミンキレートチタン、ジルコニウムオクトエート及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0033】
市販の架橋触媒の例としては、限定するものではないが、K-PURE TAG-2678、K-PURE TAG-2713及びK-PURE TAG-2678(King Industries,Incから市販)、
【化1】
(Heraeus Epurio LLCから市販)を挙げることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、ラジカル開始剤の存在下において、100~600nm、又は150nm~600nm、又は190nm~600nmの範囲(紫外~可視光の範囲)にピーク最大値を有する化学線下で架橋され得る。
【0035】
ラジカル開始剤としては、限定するものではないが、ベンゾフェノン、ベンジル(1,2-ジケトン)、チオキサントン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、オリゴマー状の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル)-1H-インデン及びビス-ベンゾフェノン、α-[(4-ベンゾイルフェノキシ)-アセチル]-ω-[[2-(4-ベンゾイルフェノキシ)-アセチル]オキシ]-ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル))、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
適切な放射は、例えば、太陽光又は人工光源からの光中に存在し得る。光源は、特に限定されず、目的に応じて適切に選択され得る。点光源とアレイ(「ランプカーペット」)とは、共に適している。その例としては、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、金属ハロゲン化物がドープされている場合がある低圧、中圧、高圧及び超高圧の水銀ランプ(金属-ハロゲンランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマーランプ、超化学線蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱灯、電子閃光、写真用投光ランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム及びX線が挙げられる。使用される具体的な波長は、STFで使用される具体的なラジカル開始剤に応じて変動する。そのような波長選択及び光量は、十分に当業者の能力内にある。本STFで使用される光量は、30~8,000mJ/cm2、200~8,000mJ/cm2、又は400~6,000mJ/cm2、又は500~5,000mJ/cm2、又は550~3,000mJ/cm2で変動することができる。一実施形態では、0.24m/sの速度のDランプを備えたFusion Systems紫外線(UV)ベルト式装置(Heraeus Noblelight American,LLC,Gaithersburg,MD)が使用される。
【0037】
少なくとも1種のポリマーは、STFの総重量を基準として10~25重量%又は15~20重量%の量で存在することができる。
【0038】
本明細書に記載の固体ナノ粒子は、100nm以下の平均粒子サイズを有する。固体ナノ粒子が100nmより大きい場合、STFは、ヘイズを生じ、光学的に透明でない。いくつかの実施形態では、固体ナノ粒子は、5~100nm、又は10~100nm、又は20~100nm、又は30~100nm、又は40~100nm、50~100nm、又は60~100nm、又は70~100nm、又は10~75nm、又は30~75nm、又は50~70nmの範囲の平均粒子サイズを有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、固体ナノ粒子は、1.3~2.0、又は1.3~1.8、又は1.3~1.7の屈折率(550nmで測定)を有する。一実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、固体ナノ粒子と同じ屈折率を有する。
【0040】
固体ナノ粒子は、無機ナノ粒子又は有機ナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態では、有機ナノ粒子は、ヒドロキシル化ビニル又はアクリレートポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、無機ナノ粒子は、シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄、カオリン粘土、酸化アルミニウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、無機ナノ粒子は、シリカナノ粒子であり得る。シリカナノ粒子は、単分散で均一なサイズのシリカナノ粒子であり得、アルコールなどの溶媒中でテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加水分解することによって合成され得る。アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はこれらの混合アルコールであり得る。酸触媒及び塩基触媒が合成のために存在し得る。塩基触媒は、アンモニアであり得る。単分散で均一なサイズのシリカナノ粒子の合成は、(非特許文献1)に開示されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。溶媒中のシリカナノ粒子は、光学的に透明なSTF流体中で直接使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、シリカナノ粒子は、有機ケイ素化合物によって変性され得る。有機ケイ素化合物は、オルガノアルコキシシラン又はメタリルシランであり得る。オルガノアルコキシシランは、以下に示されているようにケイ素に連結されている1つ、2つ又は3つのアルコキシ基を含むことができる。
【化2】
式中、Rは、アルキル又はアリールであり;X
1~X
3は、同じであるか又は異なり、それぞれ独立してR又はアルコキシである。オルガノアルコキシシランの例としては、限定するものではないが、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3-アミノプロピルトリメトキシ-エトキシエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシ-メトキシエトキシシラン、3-アミノプロピル-メチル-ジエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピル-トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(N-シクロヘキシルアミノメチル)メチルジ-エトキシシラン、(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(N-フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン、N-エチル-アミノイソブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、(3-クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン-トリメトキシシラン、3-アクリルオキシトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、8-メタクリルオキシルトリメトキシシラン又は上記の任意の組み合わせを挙げることができる。
【0044】
外力又は衝撃を受けた際にSTFがデバイスを十分に保護するために、固体ナノ粒子は、STFの総重量を基準として50~75重量%の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、固体ナノ粒子は、STFの総重量を基準として50~70重量%、又は54~70重量%、又は50~60重量%、又は60~70重量%の量で存在することができる。
【0045】
液体媒体は、光学的に透明である。液体媒体は、固体ナノ粒子と同じであるか又はそれに近い屈折率を有し、その中に固体ナノ粒子を分散させることができる。一実施形態では、液体媒体は、1.47±0.05の屈折率(550nmで測定)を有する。
【0046】
一実施形態では、液体媒体は、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。液体媒体の例としては、限定するものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを挙げることができる。
【0047】
存在する液体媒体の量は、固体ナノ粒子を分散させ、1種以上のポリマーを溶解させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、液体媒体は、STFの総重量を基準として25~50重量%又は15~25重量%の量で存在することができる。
【0048】
一実施形態では、STFは、固体ナノ粒子及び架橋性基を有する少なくとも1種のポリマー又は少なくとも1種のポリマー及び架橋剤を液体媒体に添加し、これらを一緒に混合することによって調製することができる。
【0049】
別の実施形態では、STFは、架橋性基を有する少なくとも1種のポリマー又は少なくとも1種のポリマー及び架橋剤を液体媒体に溶解させて、ポリマー溶液を形成することにより調製することができる。その後、固体ナノ粒子が添加され、ポリマー溶液中に分散される。
【0050】
本開示のSTFは、せん断応力の衝撃を受ける前に粘性を有する液体である。いくつかの実施形態では、STFは、せん断応力がない状態で2,000~200,000mPa.s、又は5,000~200,000mPa.s、又は10,000~200,000mPa.s、又は15,000~200,000mPa.s、又は20,000~150,000mPa.s、又は50,000~100,000mPa.sの粘度を有することができる。
【0051】
STFの上記の実施形態のいずれも、相互に排他的ではない限り、1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができる。当業者は、いずれの実施形態が相互に排他的であるかを理解し、その結果、本出願によって考えられる実施形態の組み合わせを容易に決定できるであろう。
【0052】
本開示は、保護アセンブリにも関する。保護アセンブリは、第1の光学的に透明な層と、第1の光学的に透明な層上に配置されたSTFとを含む。STFは、前述したものと同じである。いくつかの実施形態では、STFは、第1の光学的に透明な層上にコーティングされ、乾燥されて、溶媒が存在する場合にはそれが除去されることでSTF層を形成する。一実施形態では、STF層は、その後、架橋されて、架橋されたSTF層を形成する。
【0053】
保護アセンブリは、STF層上に配置された第2の光学的に透明な層を更に含むことができる。一実施形態では、第2の光学的に透明な層は、STF層の上に積層することができる。架橋されたSTF層を形成するために、第2の光学的に透明な層の積層前又は後に架橋を行うことができる。別の実施形態では、STFは、第1の光学的に透明な層と第2の光学的に透明な層との間に封入され、その後、架橋される。溶媒は、封入前に除去される。
【0054】
第1及び第2の光学的に透明な層は、同じ又は異なる材料から作られ得る。適切な材料としては、限定するものではないが、ポリイミド、ポリイミド-アミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー及びこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、光学的に透明な層は、10~400μm、25~400μm、又は25~350μm、又は25~300μm、又は25~250μm、又は30~100μm、又は40~75μm、又は50~70μmの厚さを有することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、STF層は、1~400μm、又は3~400μm、又は3~350μm、又は5~400μm、又は5~300μm、又は10~400μm、又は10~250μm、又は20~400μm、又は20~200μm、又は25~400μm、又は25~350μm、25~300μm、又は25~250μm、又は25~200μm、又は25~150μm、又は5~100μm、又は5~50μm、又は5~30μm、又は5~20μm、又は7~25μm、又は7~20μm、又は7~15μmの範囲の厚さを有することができる。
【0056】
本開示の保護アセンブリは、無色透明である。保護アセンブリの光学特性(透過率、ヘイズ、黄色度指数及びb*)は、UV-VIS分光計を用いて測定することができる。黄色度指数は、395~700nmの吸収スペクトルに基づいて計算することができる。b*(認識される黄変の程度に相関する)は、380~780nmの%透過率に基づいて計算することができる。
【0057】
本開示において、STF層を含む保護アセンブリの光学特性は、2つの透明なポリマーフィルム間にSTF層を配置することによって決定することができる。保護アセンブリは、5%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下のヘイズ値を有し得る。保護アセンブリは、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の透過率を有し得る。
【0058】
せん断応力下での硬化におけるSTFの有効性は、せん断速度の関数としてSTFの粘度を測定するためのひずみ制御レオメーターを使用して決定することができる。STFの有効性は、突き刺し試験でも確認することができる。突き刺し試験では、流体にプラスチック製のピペットが約10sec-1の速度で突き刺される。衝撃により即時に流体が固体に変わる場合、STFは、この試験に合格する。一般的に、STFが1sec-1未満の時間スケールで固体になることは、望ましくない。
【0059】
本開示は、保護アセンブリを作製する方法に更に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)架橋性基を有する少なくとも1種のポリマーを提供する工程;(b)少なくとも1種のポリマーを液体媒体に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程;(c)100nm以下の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子をポリマー溶液に分散させて、光学的に透明なせん断増粘流体(STF)を形成する工程;(d)せん断増粘流体を第1の光学的に透明な層上にコーティングして、STF層を形成する工程;及び(e)STF層をある量の硬化エネルギーに曝露して、硬化されたSTF層を形成する工程を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)少なくとも1種のポリマーと架橋剤とを提供する工程;(b)少なくとも1種のポリマーと架橋剤とを液体媒体に溶解させて、ポリマー溶液を形成する工程;(c)100nm以下の平均粒子サイズを有する固体ナノ粒子をポリマー溶液に分散させて、光学的に透明なせん断増粘流体(STF)を形成する工程;(d)せん断増粘流体を第1の光学的に透明な層上にコーティングして、STF層を形成する工程;及び(e)STF層をある量の硬化エネルギーに曝露して、硬化されたSTF層を形成する工程を含む。架橋剤は、前述したものと同じである。
【0061】
硬化エネルギーとしては、前述したような熱及び/又は化学線を挙げることができる。一実施形態では、上述した方法において、工程(e)前に工程(d’)を追加することができる。工程(d’)は、STF層の上面に第2の光学的に透明な層を付加することを含む。別の実施形態では、上述した方法は、硬化されたSTF層の上面に第2の光学的に透明な層を付加する工程(f)を更に含む。
【0062】
第1及び第2の光学的に透明な層は、同じ材料から作られるか又は異なる材料から作られ得、それらは、前述したものである。更に、STFは、前述したものと同じである。
【0063】
本開示は、上述した保護アセンブリを含むディスプレイデバイスにも関する。いくつかの実施形態では、ディスプレイデバイスは、フレキシブルディスプレイデバイスであり得る。例示的なデバイスを
図1に示す。デバイス1000は、可撓性基材100、ディスプレイパネル200及び保護アセンブリ300を有し、保護アセンブリは、ディスプレイパネルの表示側にある。保護アセンブリ300は、第1の透明な可撓性フィルム10、光学的に透明なSTF層20及び第2の透明な可撓性フィルム30を含む。透明な可撓性フィルム及びSTF層は、前述したものと同じである。可撓性基材100は、ポリマーフィルム又はガラス層であり得、当技術分野で周知である。ディスプレイパネル200は、任意の公知のタイプのディスプレイであり得る。例示的なディスプレイパネルとしては、限定するものではないが、LCD及びOLEDが挙げられる。
【実施例】
【0064】
本明細書に記載される概念は、以下の実施例において更に説明され、実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。別段の指示がない限り、温度の全ての単位は、室温(20~25℃)であり、圧力の全ての単位は、標準圧力又は101kPaである。
【0065】
材料
ORGANOSILICASOLTMMA-ST-ZL:30重量%の固体含有量の、メタノール中の70~100nmの粒子サイズのコロイダルシリカ単分散ナノ粒子、Nissan Chemical America Corporation,Houston,Texasから市販。
V65 HP:2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社(東京、日本)から市販。
【0066】
ポリマーの調製
実施例1
ヒドロキシエチルアクリレート(「HEA」)とグリシジルメタクリレート(「GMA」)とから誘導されるコポリマーを以下の通りに調製した。
【0067】
40mlのガラスバイアル内で1.6292gのGMAを18.4220gのHEA及び15.0123gのイソプロピルアルコール(「IPA」)と混合した。バイアルを氷/水浴中に入れて、浴との温度平衡に到達させた。次いで、0.6062gのV65 HPをバイアルに添加した。次いで、バイアルをシェーカーに入れ、V65 HPを溶解させて溶液を形成した。次いで、バイアルを浴に戻した。三口丸底フラスコの100ml反応器への供給プロセスにわたり、溶液を浴中で保持した。3つの口は、それぞれ熱電対、コンデンサー及び溶液の供給口に連結した。反応器は、加熱マントルにより加熱した。加熱マントルは、磁気撹拌子で反応器を撹拌するためにマグネチックスターラー上に乗せた。反応器に15.0gのIPAを入れた。次いで、反応器を80℃まで加熱し、80℃で維持した。溶液を90分かけて反応器に供給した。溶液を供給した後、反応器を80℃で2時間維持した。その後、反応器を20~25℃まで冷却した。反応器中でポリマー溶液が得られ、直接使用した。ポリマー溶液中のポリマー含有量は、41.6重量%であった。
【0068】
実施例2
カルボキシエチルアクリレート(「CEA」)とGMAとから誘導されるコポリマーを以下の通りに調製した。
【0069】
溶液を、2.0223gのCEA、18.0062gのGMA、14.8159gのIPA及び0.6039gのV65 HPを混合することによって調製したことを除いて、実施例1と同じ手順を行った。最終製品のポリマー溶液中のポリマー含有量は、38.3重量%であった。
【0070】
実施例3
HEAと、CEAと、GMAとから誘導されるコポリマーを以下の通りに調製する。
【0071】
5.772gのHEA、7.16gのCEA、7.064gのGMA、15gのIPA及び0.6gのV65 HPを混合することによって溶液を調製することを除いて、実施例1と同じ手順を行う。
【0072】
50μmのポリイミド(PI)フィルムの作製
実施例4
12.837kgのトリフルオロメチルベンジジン(TFMB、セイカ株式会社、和歌山精化工業株式会社、日本)及び107.5kgのジメチルアセトアミド(DMAC)を、撹拌しながら窒素パージされている80ガロンの反応器に入れた。溶液を撹拌して、TFMBをDMAC溶媒中に完全に溶解させ、全ての後続の工程中に撹拌を継続した。反応混合物を約40℃まで加熱した。1.11kgのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、三菱化学株式会社、日本)及び15.079kgの4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA、Synasia,Metuchen,NJ)を6時間かけて4つの別々のアリコートで添加した。1.831gのBPDA及び24.881gの6FDAの3つの追加のアリコートを約3時間かけて反応混合物に添加した。プレポリマーの粘度は、25℃で約89ポアズであった。ポリマーの一部を、窒素パージされた反応器内において、DMAC中の6重量%ピロメリット酸二無水物(PMDA)の混合物を使用して約1200~1300ポアズに重合した(「仕上げた」)。材料を40℃で約24時間かけてPMDA溶液と重合し、ポリアミック酸溶液を形成した。ポリアミック酸溶液を移動ベルト上にキャストし、約95~約150℃の範囲のオーブン温度で乾燥させた。自立膜をベルトから剥離し、約110~約675℃の温度(輻射ヒーター表面温度)のテンターオーブン内において輻射ヒーターで加熱して乾燥させ、ポリマーフィルムをイミド化した。50μmのPIフィルムを得た。
【0073】
STF、保護アセンブリの作製及び特性評価
実施例5
ORGANOSILICASOLTMMA-ST-ZL(MA-ST-ZL)、ジエチレングリコール並びに実施例1及び2から調製した合成コポリマーを、表1に記載の量で混合して混合物を形成した。30℃でロータリーエバポレーターを用いて混合物からメタノールを除去し、対照及びサンプル1~3として液体STF配合物を形成した。
【0074】
【0075】
対照及びサンプル1~3から調製した液体STF配合物を、実施例4から作製した第1の50μmの無色ポリイミドフィルム上にドローダウンバーコーターを用いてコーティングし、STF層を形成した。実施例4から作製した50μmの無色のポリイミドフィルムの第2のフィルムをSTF層上に配置して、保護アセンブリを形成し、次いでこれを約10sec-1の速度の突き刺し試験で試験した。結果を表2に示す。
【0076】
【0077】
サンプル1の透過率及びヘイズは、Agilent/Hewlett Packard 8453 UV-VIS分光計(Agilent Technologies Inc,Santa Clara,CAから市販)を使用して測定した。透過率は、400~800nmの波長で測定した。実施例4から作製した2つの50μmのPIフィルムを含み、2つのフィルム間にジエチレングリコールが充填されたブランクサンプルを400~800nmの波長で100%の透過率にベースライン設定した。サンプル1の透過率は、94%であり、ヘイズは、0.84未満であった。
【0078】
実施例6
57.4重量%のORGANOSILICASOLTMMA-ST-ZL、25.7重量%のジエチレングリコール、8.5重量%の実施例1から調製したコポリマー及び8.4重量%の実施例2から調製したコポリマーを混合して混合物を形成した。30℃でロータリーエバポレーターを用いて混合物からメタノールを除去し、液体STF配合物を形成する。
【0079】
STF配合物を、実施例4から作製された50μmのPIフィルム上にコーティングし、乾燥することでPIフィルム上にSTF層を形成する。STF層をPIフィルムと共に150℃で5~15分間ベークして、第1の50μmのPIフィルム上に架橋STF層を形成する。実施例4から作製した第2の50μmのPIフィルムを、架橋されたSTF層上に積層することで保護アセンブリを形成する。保護アセンブリは、10sec-1の速度での突き刺し試験に合格する。
【符号の説明】
【0080】
10 第1の透明な可撓性フィルム
20 光学的に透明なSTF層
30 第2の透明な可撓性フィルム
100 可撓性基材
200 ディスプレイパネル
300 保護アセンブリ
1000 デバイス