(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】防鳥装置、防鳥システム、防鳥方法、及び防鳥プログラム
(51)【国際特許分類】
A01M 29/10 20110101AFI20221108BHJP
【FI】
A01M29/10
(21)【出願番号】P 2021044197
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/061853(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0201525(US,A1)
【文献】登録実用新案第3215346(JP,U)
【文献】特開2020-184887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光パターンから、発光部を発光させる第一の発光パターンを選択し、
次に前記発光部を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する、
選択手段と、
選択された発光パターンで前記発光部を発光させる、
制御手段と、
前記発光部を発光させる発光パターンの使用履歴を記憶する、
記憶手段と
を備え、
前記選択手段は、
前記複数の発光パターンのすべての発光パターンを選択した後、
前記発光パターンの使用履歴を参照し、使用履歴の最も古いものから選択する、
防鳥装置。
【請求項2】
鳥類の飛来を認識する認識手段をさらに備え、
前記認識手段が、前記鳥類の飛来を認識すると、
前記選択手段が、前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択し、
前記制御手段が、選択された発光パターンで前記発光部を発光させる、
請求項1に記載の防鳥装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記認識手段が認識した前記鳥類の飛来の履歴を記憶し、
前記鳥類の飛来の履歴に基づいて、鳥類の飛来を予測する予測手段をさらに備え、
前記予測手段によって予測した鳥類の飛来の予測時刻に、
前記選択手段が、前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択し、
前記制御手段が、選択された発光パターンで前記発光部を発光させる、
請求項2に記載の防鳥装置。
【請求項4】
前記認識手段は、
監視対象の通常状態の温度分布データと、取得した温度分布データとを比較することにより
鳥類の飛来を認識する、
請求項2または3に記載の防鳥装置。
【請求項5】
前記認識手段は、
監視対象の通常状態の音データと、取得した音データとを比較することにより
鳥類の飛来を認識する、
請求項2乃至4のいずれかに記載の防鳥装置。
【請求項6】
ランダムな
発光パターンを生成する生成手段をさらに備え、
前記選択手段は、
前記生成手段が生成した複数のランダムな前記発光パターンから、
前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択する、
請求項1乃至5のいずれかに記載の防鳥装置。
【請求項7】
前記制御手段により制御されて発光する発光手段と、
請求項1乃至6のいずれかに記載の防鳥装置と、
を備える防鳥システム。
【請求項8】
複数の発光パターンから、発光部を発光させる第一の発光パターンを選択し
て前記発光部を発光させ、次に前記発光部を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択し
て前記発光部を発光させ、
前記発光部を発光させる前記発光パターンの使用履歴を記憶する、
防鳥方法において、
前記複数の発光パターンのすべての発光パターンを選択して前記発光部を発光させた後、
前記発光パターンの使用履歴を参照し、使用履歴の最も古いものから選択して前記発光部を発光させる、
防鳥方法。
【請求項9】
鳥類の飛来を認識すると、
前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択して前記発光部を発光させる、
請求項8に記載の防鳥方法。
【請求項10】
認識した前記鳥類の飛来の履歴を記憶し、
記憶した前記鳥類の飛来の履歴に基づいて、鳥類の飛来を予測し、
前記予測した鳥類の飛来の予測時刻に、
前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択して前記発光部を発光させる、
請求項9に記載の防鳥方法。
【請求項11】
監視対象の通常状態の温度分布データと、取得した温度分布データとを比較することにより
鳥類の飛来を認識する、
請求項9または10に記載の防鳥方法。
【請求項12】
監視対象の通常状態の音データと、取得した音データとを比較することにより
鳥類の飛来を認識する、
請求項9乃至11のいずれかに記載の防鳥方法。
【請求項13】
複数のランダムな発光パターンから、前記第一の発光パターンまたは前記第二の発光パターンを選択して前記発光部を発光させる、
請求項8乃至12のいずれかに記載の防鳥方法。
【請求項14】
コンピュータに、
請求項8乃至13のいずれかに記載の防鳥方法
を実行させる防鳥プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鳥を追い払い、鳥害を予防する防鳥装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
防鳥装置として、鳥の飛来を認識するセンサと発光ダイオードを利用する装置が知られている。
【0003】
防鳥装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された防鳥装置は、赤外線センサによって鳥類の存在を認識した場合、発光ダイオードを断続的に点灯させる装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された装置では、鳥を追い払うために適した断続的な発光の周期およびデューティ比が設定されている。しかしながら、特許文献1に記載された防鳥装置は、同じ発光パターンで発光ダイオードを発光することとなり、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下してしまう可能性があるという問題点がある。
【0006】
本開示の目的の一例は、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下することを防止する防鳥装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様における防鳥装置は、複数の発光パターンから、発光部を発光させる第一の発光パターンを選択し、次に前記発光部を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する、選択手段と、選択された発光パターンで前記発光部を発光させる制御手段と、を備える。
【0008】
本開示の一態様における防鳥システムは、発光手段と、複数の発光パターンから、発光手段を発光させる第一の発光パターンを選択し、次に前記発光手段を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する、選択手段と、選択された発光パターンで前記発光手段を発光させる制御手段と、を備える。
【0009】
本開示の一態様における防鳥方法は、複数の発光パターンから、発光部を発光させる第一の発光パターンを選択し、次に前記発光部を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択し、選択された発光パターンで前記発光部を発光させる。
【0010】
本開示の一態様における防鳥プログラムは、コンピュータに、複数の発光パターンから、発光部を発光させる第一の発光パターンを選択し、次に前記発光部を発光させる発光パターンとして、前記第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する、選択処理と、選択された発光パターンで前記発光部を発光させる制御処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果の一例は、鳥が発光に慣れてしまうことを防ぎ、防鳥性能が低下することを防止することが可能な防鳥装置等を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第一の実施形態における防鳥装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第二の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第二の実施形態における防鳥装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第三の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第三の実施形態における防鳥装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第四の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、各実施形態の防鳥装置の変形例1の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第三の実施形態または第四の実施形態のいずれかの防鳥装置の変形例2の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、各実施形態の防鳥装置をコンピュータ装置とその周辺装置で実現したハードウェア構成を示す図である。
【
図11】
図11は、各実施形態を防鳥システムとして実現した場合の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[第一の実施形態]
図1は、第一の実施形態における防鳥装置100の構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、防鳥装置100は、選択部101と制御部102と、を備える。また、発光部111は、防鳥装置100(本装置)内にあってもよいし、本装置とは別に存在して、有線通信または無線通信により本装置に接続されていてもよい。
【0015】
次に、第一の実施形態における防鳥装置100の構成について詳しく説明する。
【0016】
図1において、選択部101は、複数の発光パターンから、発光部111を発光させる第一の発光パターンを選択し、次に発光部111を発光させる発光パターンとして、第二の発光パターンを選択する。また、選択部101は、第二の発光パターンとして、第一の発光パターンとは異なる発光パターンを選択する。または、この第二の発光パターンを選択する際に、第一の発光パターンと同じものを選択しないだけでなく、類似のパターンを避けてもよい。
【0017】
具体的に、発光パターンは、発光部111を発光させるパターンの情報である。この情報は、発光有り(符号1)、発光無し(符号0)の断続的に発光するデータ列に限らず、これに加えて発光強度を示すデータが含まれ、発光パターンの中で、発光強度を変化させてもよい。さらに、発光パターンは、発光部111を発光させるパターンを指示するための番号情報や、パターンの識別番号でもよい。
【0018】
また、発光パターンは、例えば、鳥を追い払うために十分な時間の断続的な発光パターンである。また、鳥を追い払うために適した複数の発光パターンを採用してもよい。
【0019】
さらに、類似のパターンとは、例えば、選択前に使用していた発光パターンと7割以上が同じパターンである発光パターンであり、類似のパターンを連続で発光させることを避けることにより、鳥が発光パターンを学習することを防ぐ。
【0020】
制御部102は、選択部101が選択した発光パターンで、発光部111を発光させる制御を行う。制御部102は、選択された発光パターンで発光部111を発光させる発光コントロール回路を含んでもよい。
【0021】
発光部111は、例えば、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)など、光を発するものである。
【0022】
以上のように構成された防鳥装置100の動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
図2は、第一の実施形態における防鳥装置100での発光動作の概要を示すフローチャートである。
【0024】
図2に示すように、まず、選択部101は、一例として、指示信号あるいは命令を受けることを契機に、発光部111を発光させる発光パターンを選択する(ステップS101)。ステップS101において、選択部101は、第一の発光パターンを選択した後、次の発光パターンの選択する場合、前回選択した第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する。
【0025】
ステップS101の開始の契機の具体的な一例は、監視対象における1または複数の鳥類の飛来による滞留または監視対象への侵入の検出である。1または複数の鳥類の飛来による滞留または侵入の検出により、選択部101は、指示信号あるいは命令を受け、ステップS101を実行する。
【0026】
次に、制御部102は、選択部101が選択した発光パターンで、発光部111を発光させる制御を行う(ステップS102)。この場合、例えば、発光部111は、1または複数の鳥類の滞留または侵入が検知された監視対象に対し、発光を行う。
【0027】
以上で、防鳥装置100は、鳥を追い払う動作を終了する。
【0028】
次に、本開示の第一の実施形態の効果について説明する。
【0029】
上述した本実施形態における防鳥装置100は、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下することを防止することができる。その理由は、選択部101が、前回の発光とは異なる発光パターンを選択して、制御部102が発光部111を発光させることにより、鳥が発光パターンを学習しにくくするからである。
【0030】
[第二の実施形態]
次に、本開示の第二の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態の構成を含む。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0031】
図3は、本開示の第二の実施形態に係る防鳥装置200の構成を示すブロック図である。
【0032】
図3を参照すると、本実施形態における防鳥装置200は、第一の実施形態のそれと比べて、記憶部203を備える。
【0033】
記憶部203は、発光部111を発光させる発光パターンの使用履歴を格納する。発光パターンの使用履歴は、例えば、複数の発光パターンの情報、各発光パターンで発光部を発光させた日時、発光パターンの発光順を含む。使用履歴には、監視対象における鳥類の滞留または監視対象への侵入の状態を撮像したカメラから受信した画像データ、またはほかの情報を含んでよい。
【0034】
次に、本実施形態における防鳥装置の動作について
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
図4に示すように、まず、選択部101は、記憶部203に格納された、発光パターンの使用履歴を参照する(ステップS201)。
【0036】
次に、選択部101は、ステップS201で参照した使用履歴に基づいて、前回発光された第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する(ステップS202)。ステップS202において、本実施形態における防鳥装置200が初めて発光すると判断した場合、選択部101は、複数の発光パターンからランダムに発光パターンを第一の発光パターンとして選択する。防鳥装置200の発光が2回目以降であると判断した場合、選択部101は、使用履歴に基づいて、前回使用した発光パターンとは異なる発光パターン(第二の発光パターン)を選択する。さらに、防鳥装置200の発光回数が、複数の発光パターンの個数を超えたと判断した場合、選択部101は、発光パターンの使用履歴の最も古い発光パターンを選択する。
【0037】
制御部102は、ステップS202において選択された発光パターンで、発光部111を発光させる制御を行う(ステップS203)。
【0038】
なお、一つの発光パターンの使用期間は、例えば、予め決められた日数である。また、第一または第二の発光パターンによる発光は、指示信号あるいは命令を受けることを契機に行われてよい。また、発光パターンでの発光時刻は、例えば、早朝、夕方などの決められた時刻でもよいが、時刻は限定されない。
【0039】
制御部102は、ステップS203において発光部111を発光させた発光パターンを使用履歴として記憶部203に格納する(ステップS204)。
【0040】
以上で、防鳥装置200は、鳥を追い払う動作を終了する。
【0041】
次に、本開示の第二の実施形態の効果について説明する。
【0042】
上述した本実施形態における防鳥装置200は、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下することを防止することができる。その理由は、選択部101が、記憶部203に格納された発光パターンの使用履歴を参照して、前回の発光とは異なる発光パターンを選択して、制御部102が発光部111を発光させることにより、鳥が発光パターンを学習しにくくするからである。また、使用履歴の最も古い発光パターンを選択することにより、同じ発光パターンが短期間で繰り返し利用されることがなくなり、より鳥が発光パターンを学習しにくくなるという効果を奏する。
【0043】
[第三の実施形態]
次に、本開示の第三の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0044】
図5は、本開示の第三の実施形態に係る防鳥装置300の構成を示すブロック図である。
【0045】
図5を参照すると、本実施形態における防鳥装置300は、第一、第二の実施形態のそれと比べて、記憶部303、認識部304を備える。また、温度センサ312、および音センサ313は、防鳥装置300(本装置)内にあってもよいし、本装置とは別に存在して、有線通信または無線通信により本装置に接続されていてもよい。また、温度や音以外にも、鳥類の飛来を認識するためのセンサや装置を備えてもよい。
【0046】
記憶部303は、第二の実施形態の記憶部203と同様に、発光部を発光させる発光パターンの使用履歴を格納する。加えて、後述する温度分布データや音データ、鳥類の飛来の履歴等を格納する。
【0047】
認識部304は、鳥類の飛来を認識する。認識部304は、鳥類の飛来を認識すると、選択部101に発光パターンの選択を指示する信号を出力する。鳥類の飛来を認識する方法の一例として、監視対象箇所周辺の温度分布データおよび音データを用いる方法を以下に説明する。
【0048】
まず、温度分布データを用いる場合の認識部304の認識方法について説明する。予め、温度センサ312によって、防鳥を行いたい対象に鳥類が飛来していない時の温度分布データを取得し、取得した温度分布データを、通常状態の温度分布データとして、記憶部303に格納する。防鳥を行う対象は、特定の2次または3次元エリア、例えば、市街地、空港、住宅地の中のエリア、建物内部、建物周辺などである。
【0049】
温度センサ312は、例えば、赤外線カメラである。認識部304は、赤外線カメラで取得した画像データを用いて温度分布データを生成する。なお、温度分布データは赤外線カメラ内で生成されてもよい。この場合、認識部304は、温度分布データを受信する。以下、温度センサ312が、温度分布データを生成し、生成された温度分布データを認識部304が取得するものと仮定して説明する。
【0050】
防鳥装置300が動作を開始すると、温度センサ312が、防鳥を行いたい対象の温度分布データを生成する。認識部304は、温度センサ312が生成した温度分布データを取得し、取得した温度分布データと、予め記憶部303に格納された通常状態の温度分布データとを比較する。比較の結果に基づき、認識部304は、温度分布データが、通常状態と異なる温度分布、例えば、監視対象に鳥類が存在している異常状態の温度分布になっているかどうかを判別する。
【0051】
あるいは、比較の結果に基づき、認識部304は、温度分布データが通常状態または通常状態に近く、異常状態でない温度分布であれば、異常状態であると判別してもよい。具体的に、通常状態または通常状態に近い状態とは、鳥類が存在しない状態、または、鳥類が存在するが、数が少ないことである。例えば、通常状態または通常状態に近い状態は、認識部304が温度分布データと通常状態の温度分布データとの差分が閾値に達していない状態であることを検出することで識別される。差分が閾値を超えれば、認識部304は異常状態である(鳥類の飛来がある)と判別する。なお、差分は比較の結果に相当する。
【0052】
また、認識部304は、通常状態の温度分布データと、取得した温度分布データとの類似度を算出する方法によって、通常状態または異常状態を判別してもよい。例えば、認識部304は、温度センサ312から取得した温度分布データの特徴量を表す特徴ベクトルを抽出し、通常状態の温度分布データの特徴ベクトルと、取得した温度分布データの特徴ベクトルの類似度を算出し、類似度が所定の閾値を超えた時、通常状態であると判別し、類似度が所定の閾値以下の場合に異常状態である(鳥類飛来がある)と判別する。
【0053】
以上の動作により、温度分布データを用いて鳥類の飛来を認識する。
【0054】
次に、音データを用いる場合の認識部304の認識方法について説明する。予め、音センサ313によって、防鳥を行いたい対象に鳥類が飛来していない時の音データを取得し、取得した音データを基に認識部304が通常状態の音データの周波数成分として記憶部303に格納する。
【0055】
防鳥装置300が動作を開始すると、音センサ313が、防鳥を行いたい対象の音データを取得する。認識部304は、音センサ313から音データを受信し、音センサ313が取得した音データを周波数解析し、通常状態の音データの周波数成分と比較して、通常状態に近い周波数成分であれば、鳥類が飛来していないと判別する。また、通常状態と異なる周波数成分になっていれば、鳥類が飛来していると判別する。
【0056】
以上の動作により、音データを用いて鳥類の飛来を認識する。
【0057】
さらに、上記の温度分布データを用いる認識方法と、音データを用いる認識方法との両方を用いて、例えば、温度分布データと音データの周波数成分の両方が通常状態から逸脱しているときに鳥類が飛来していると判断するなど、鳥類の飛来を認識する精度を高めることができる。
【0058】
また、この取得された温度分布データまたは音データは、装置に具備されるカレンダー機能部によって取得日、取得時刻、および鳥類飛来の判別結果、さらに、本装置が複数箇所の防鳥を行うとき、取得場所などの情報を付与されて、鳥類飛来履歴として記憶部303に格納されてもよい。
【0059】
温度センサ312は、防鳥を行いたい対象(監視対象)の温度を検知する。検知した温度データは、認識部304に送られ、鳥類の飛来の認識に使用される。
【0060】
音センサ313は、防鳥を行いたい対象の音を検知する。検知した音データは、認識部304に送られ、鳥類の飛来の認識に使用される。
【0061】
次に、本実施形態における防鳥装置300の動作について
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0062】
図6に示すように、まず、認識部304は、鳥類の飛来を認識し、選択部101に発光パターンを選択するよう指示する(ステップS301)。例えば、温度分布データを用いる場合、温度センサ312が、防鳥を行いたい対象の温度分布データを生成する。認識部304は、温度センサ312が生成した温度分布データと、予め記憶部に格納された通常状態の温度分布データとを比較し、鳥類が飛来しているかどうかを判別する。
【0063】
また、音データを用いる場合、音センサ313が、防鳥を行いたい対象の音データを取得する。認識部304は、音センサ313が取得した音データを周波数解析し、予め記憶部に格納された通常状態の音データの周波数成分と比較して、鳥類が飛来しているかどうかを判別する。
【0064】
さらに、上記の温度分布データを用いる認識方法と、音データの周波数成分を用いる認識方法との両方が通常状態と異なる時に、鳥類が飛来していることを認識することもできる。
【0065】
次に、選択部101は、ステップS301で認識部304により鳥類の飛来が認識され、発光パターンを選択する指示を受けると、発光部111を発光させる発光パターンを選択する(ステップS302)。このとき、この防鳥装置300での発光が初めてであれば、発光パターンをランダムに選択する。また、初めてでなければ、前回発光した第一の発光パターンとは異なる第二の発光パターンを選択する。さらに、防鳥装置300の発光回数が、複数の発光パターンの個数を超えたと判断した場合、選択部101は、発光パターンの使用履歴の最も古い発光パターンを選択する。
【0066】
制御部102は、ステップS302において選択された発光パターンで、発光部111を発光させる制御を行う(ステップS303)。
【0067】
以上で、防鳥装置300は、鳥を追い払う動作を終了する。
【0068】
次に、本開示の第三の実施形態の効果について説明する。
【0069】
上述した本実施形態における防鳥装置300は、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下することを防止することができる。その理由は、防鳥を行いたい対象に鳥類が飛来したとき、認識部304が鳥類の飛来を認識し、選択部101が、前回の発光とは異なる発光パターンを選択して、制御部102が発光部111を発光させることにより、鳥が発光パターンを学習しにくくするからである。
【0070】
また、本実施形態における防鳥装置300は、認識部304を備えることにより、鳥類が飛来した時に発光動作を行うことができ、不要な発光をせず、節電効果がある。さらに、認識部304が鳥類の飛来を認識した時に、選択部101へ発光パターンを選択するための指示をすることが、防鳥装置300が発光して鳥を追い払う契機となるため、発光するタイミングを人が判断する必要がなく、人件費の削減ができる。
【0071】
[第四の実施形態]
また、第三の実施形態の認識部304の認識方法において、AI(Artificial Intelligence)を用いることもできる。
【0072】
本実施形態の、
図7に示す防鳥装置400のように、認識部404はAI処理部405をもつ。
【0073】
記憶部403は、鳥類の飛来を認識するために使用するセンサの検知データ、および発光パターンの使用履歴を格納する。また、記憶部403は、AI処理部405がAI処理に使用する参照用サンプルデータテーブルを複数格納する。参照用サンプルデータテーブルには、予め鳥類が飛来していない状態の、例えば温度分布データまたは音データの周波数成分を通常状態のデータとして格納する。例えば、参照用サンプルデータテーブルは、監視対象ごとに記憶部403に格納される。
【0074】
また、参照用サンプルデータテーブルは、AI処理部405の自己の学習機能によって独自に生成することも可能である。例えば、監視対象の環境温度または季節に応じて、通常状態でも監視対象の温度分布が変化する。AI処理部405は、環境温度または季節のデータを説明変数とする機械学習によって生成された、学習済みサンプルデータ生成用モデルを用いて、通常状態のサンプルデータから環境温度または季節に対応する、通常状態の参照用サンプルデータテーブルを生成する。そして、AI処理部405は、生成した参照用サンプルデータテーブルを記憶部403に格納する。
【0075】
AI処理部405は、温度分布データにより鳥類の飛来を認識する場合、温度センサ312が生成した温度分布データが送られてくると、予め参照用サンプルデータテーブルに格納された通常状態の温度分布データの画像解析を実行し、特徴量または特徴ベクトルを抽出する。さらに、AI処理部405は、温度センサ312が取得した温度分布データを画像解析し、特徴量または特徴ベクトルを抽出する。AI処理部405は、両者の特徴量または両者の特徴ベクトルを比較する。AI処理部405は、比較結果から、取得した温度分布データの画像解析による特徴量または特徴ベクトルが、通常状態の温度分布データまたは通常状態の温度分布データに近い温度分布になっているか(異常状態でないか)、あるいは温度分布が異常状態であるかを判別する。または、AI処理部405は、通常状態の温度分布であるか、あるいは通常状態とは異なる温度分布になっているか、すなわち対象に鳥類が存在している異常状態であるか否かを判別する。なお、比較結果は、例えば、第三の実施形態で説明した差分あるいは類似度である。
【0076】
また、AI処理部405が音データにより鳥類の飛来を認識する場合、音センサ313が取得した音データが送られてくると、予め参照用サンプルデータテーブルに格納された通常状態の音データの周波数解析を実行し、特徴量または特徴ベクトルを抽出する。さらに、AI処理部405は、音センサ313が取得した音データを周波数解析し、特徴量または特徴ベクトルを抽出する。AI処理部405は、両者の特徴量または両者の特徴ベクトルを比較し、比較結果から、取得した音データの周波数解析による特徴量または特徴ベクトルが、通常状態の音データの周波数成分または通常状態の音データに近い周波数成分になっているか(異常状態でないか)、あるいは周波数成分が異常状態であるかを判別する。または、AI処理部405は、通常状態の音データの周波数成分であるか、あるいは通常状態とは異なる周波数成分になっているか、すなわち対象に鳥類が存在している異常状態であるか否かを判別する。
【0077】
さらに、AI処理部405が温度分布データと音データの両方を用いて鳥類の飛来を認識する場合、上記の手順で温度分布データと音データによる解析結果が、どちらも異常状態であると判別されたとき、鳥類が存在すると判別する。
【0078】
また、この取得されたデータは、装置に具備されるカレンダー機能部によって取得日、取得時刻、および鳥類飛来の判別結果、さらに、本装置が複数箇所の防鳥を行うとき、取得場所などの情報を付与されて、鳥類飛来履歴として記憶部403に格納されてもよい。
【0079】
以上のようにAI処理部405が鳥類を認識すると、発光部111を発光させるための発光パターンを選択するための指示を選択部101に送り、第一の実施形態乃至第三の実施形態で述べた発光動作に移行する。
【0080】
次に、本開示の第四の実施形態の効果について説明する。
【0081】
上述した本実施形態における防鳥装置400は、発光パターンに鳥が慣れてしまい、防鳥性能が低下することを防止することができる。その理由は、認識部404が鳥類の飛来を認識すると、選択部101が、前回の発光とは異なる発光パターンを選択して、制御部102が発光部111を発光させることにより、鳥が発光パターンを学習しにくくするからである。
【0082】
また、本実施形態における防鳥装置400は、AI処理部405を具備する認識部404を備えることにより、鳥類が飛来した時に発光動作を行うことができ、不要な発光をせず、節電効果がある。さらに、認識部が鳥類の飛来を認識した時に、選択部101へ発光パターンを選択するための指示をすることが、防鳥装置400が発光して鳥を追い払う契機となるため、発光するタイミングを人が判断する必要がなく、人件費の削減ができる。
【0083】
[変形例1]
図8に示す防鳥装置500は、第一の実施形態乃至第四の実施形態のいずれかの選択部101の構成を有する選択部501に、生成部506を備える。ただし
図8は、説明のため、第一の実施形態の防鳥装置100の選択部101に生成部506を備えた、選択部501の構成を有する防鳥装置のみを示している。
【0084】
生成部506は、発光部111を発光させる第一の発光パターンまたは第二の発光パターンを、発光時間、発光間隔、および発光強度などランダムに生成する。発光パターンを生成するのは、発光部111を発光させる都度生成してもよいし、予め複数の発光パターンが生成されて記憶されてもよい。また、発光の都度発光パターンを生成する場合、生成して発光された発光パターンを使用履歴として記憶されてもよい。
【0085】
また、発光パターンをランダムに生成する際、予め、鳥類を追い払うために必要な発光時間、発光間隔、および発光強度の範囲を定めておいてもよい。
【0086】
選択部501は、生成部506が生成した発光パターンを選択し、制御部102は、選択された発光パターンで発光部111を発光させる。
【0087】
[変形例2]
図9に示す防鳥装置600は、第三の実施形態または第四の実施形態に、予測部607を備えたものである。記憶部603と認識部604は、それぞれ第二の実施形態乃至第四の実施形態のいずれかの記憶部と、第三の実施形態または第四の実施形態の認識部の構成を有する。
【0088】
予測部607は、上述した鳥類飛来履歴を解析し、鳥類が飛来する時刻を予測し、事前に発光動作や、樹木を振動させる等の防鳥対策を行う。鳥類飛来履歴の温度分布データや音データ、それに付与された取得日、取得時刻の情報を解析し、季節や時間帯ごとの鳥類の飛来を推定する。
【0089】
予測部607は、鳥類の飛来が予測される時間に、選択部101が発光パターンを選択するための指示を送る。
【0090】
選択部101が指示を受けると、防鳥装置600は発光動作を行う。
【0091】
予測部607の動作は、予測部607に具備される図示しないAI処理部または
図7のAI処理部405により、処理されてもよい。記憶部603に格納された鳥類飛来履歴の温度分布データと音データを、それぞれに付与された取得日時のタイムスタンプから、AI処理部が季節ごとの鳥類飛来の時刻を推測する。予測部607は、鳥類の飛来が予測される時間に、選択部101が発光パターンを選択するための指示を送り、防鳥装置600は、発光動作に移行する。
【0092】
この変形例2では、防鳥装置600は予測部607を備え、上述の動作を行うことにより、鳥類の飛来が発生する前に防鳥対策を行うことができ、鳥類による騒音、糞等の被害を未然に防止することが実現できる。
【0093】
[変形例3]
前述した第一の実施形態乃至第四の実施形態における、センサにより取得したデータを用いた鳥類の飛来を認識する動作、発光パターンを選択する動作、発光部を発光させる動作、発光パターンを生成する動作などの動作を、機械学習によって学習モデルを生成し、学習済みモデルを用いて、センサからの情報を入力として、無人で防鳥装置の動作を実行してもよい。
【0094】
[コンピュータによるハードウェア構成]
以上説明した、本開示の各実施形態における各構成要素は、機能的なブロックで表されており、その機能をハードウェア的に実現することはもちろん、プログラム制御に基づくコンピュータ装置、ファームウェアで実現することができる。
【0095】
図10は、本開示の防鳥装置100、200、300、400、500、および600を、プロセッサを含むコンピュータ装置10で実現したハードウェア構成の一例を示す図である。
図9に示されるように、コンピュータ装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、プログラムを格納するハードディスク等の記憶装置13、入力装置および出力装置接続用の入出力I/F(Interface)14、およびネットワーク接続用の通信I/F(Interface)15を含む。
【0096】
CPU11は、オペレーティングシステムを動作させて本発明の防鳥装置の全体を制御する。また、CPU11は、例えばドライブ装置などに装着された記憶媒体からメモリ12にプログラムやデータを読み出す。また、CPU11は、例えば第一の実施の形態における選択部101、制御部102の一部として機能し、プログラムに基づいて処理または命令を実行する。
【0097】
記憶装置13は、例えば光ディスク、フレキシブルディスク、磁気光ディスク、外付けハードディスク、または半導体メモリ等である。記憶装置の一部の記憶媒体は、不揮発性記憶装置であり、そこにプログラムを記録する。また、プログラムは、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからダウンロードされてもよい。
【0098】
入出力I/F(Interface)14に接続される入力装置は、例えばマウスやキーボード、内蔵のキーボタンなどで実現され、入力操作に用いられる。入力装置は、マウスやキーボード、内蔵のキーボタンに限らず、例えばタッチパネルや、温度や音等を感知するセンサでもよい。
【0099】
同様に入出力I/F(Interface)14に接続される出力装置は、例えばディスプレイで実現され、出力を確認するために用いられたり、LED(Light Emitting Diode)で実現され、CPU11の命令により発光したりする。
【0100】
以上のように、本開示の各実施形態および各変形例の防鳥装置は、
図10に示されるコンピュータ・ハードウェアによって実現される。ただし、各防鳥装置が備える各部の実現手段は、以上説明した構成に限定されない。また、各防鳥装置は、物理的に結合した一つの装置により実現されてもよいし、物理的に分離した二つ以上の装置を有線または無線で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。例えば、入力装置および出力装置は、コンピュータ装置10とネットワークを経由して接続されていてもよい。
【0101】
また、各実施形態は防鳥システムとして実現されてもよい。例えば、
図11に示す防鳥システム1000は、コンピュータ・ハードウェアによって実現される防鳥装置700と、有線通信または無線通信により接続される1または複数の発光装置711を備える。防鳥装置700は、各実施形態または各変形例の防鳥装置の構成を有する。ただし、
図11は説明のため、防鳥システム1000の防鳥装置として、第一の実施形態の防鳥装置100の選択部101と制御部102を備えた防鳥装置700のみを示している。さらに、防鳥システム1000は温度センサまたは音センサを1または複数具備してもよい。防鳥システム1000は、1または複数の防鳥を行いたい対象(監視対象)に対して、それぞれ発光装置711を備え、防鳥装置700によって防鳥のための発光動作を制御する。
【0102】
さらに、防鳥システム1000は、監視対象それぞれに対して温度センサまたは音センサを1または複数備え、鳥類の飛来を認識してもよい。温度センサまたは音センサは、有線通信または無線通信で、防鳥システム1000の防鳥装置700と接続される。
【0103】
以上、各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。第一の実施形態乃至第四の実施形態のいずれかの実施形態あるいは変形例を組み合わせてもよい。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しえる様々な変更をすることができる。
【0104】
例えば、複数の動作をフローチャートの形式で順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、各実施形態を実施するときには、その複数の動作の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 コンピュータ装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 入出力I/F
15 通信I/F
100 防鳥装置
101 選択部
102 制御部
111 発光部
200 防鳥装置
203 記憶部
300 防鳥装置
303 記憶部
304 認識部
312 温度センサ
313 音センサ
400 防鳥装置
403 記憶部
404 認識部
405 AI処理部
500 防鳥装置
501 選択部
506 生成部
600 防鳥装置
603 記憶部
604 認識部
607 予測部
700 防鳥装置
711 発光装置
1000 防鳥システム