(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エレベータ故障診断装置、およびエレベータ故障診断方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20221108BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B1/34 A
(21)【出願番号】P 2021101713
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高上 遼馬
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070478(JP,A)
【文献】特開2007-269413(JP,A)
【文献】特開2016-124648(JP,A)
【文献】特開2012-115081(JP,A)
【文献】特開2015-124038(JP,A)
【文献】特開2013-143830(JP,A)
【文献】特開2020-045217(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 5/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのパワーモジュールに印加される素子電圧、前記パワーモジュールに供給される電流値、および前記パワーモジュールのチップ温度を検出する検出部と、
前記エレベータの
据付時または初期の運転時に、前記電流値が所定電流値である場合における前記素子電圧および前記チップ温度のそれぞれの予測値を予測し、前記予測値と、前記エレベータの運転開始後、前記電流値が前記所定電流値である場合における前記素子電圧および前記チップ温度のそれぞれの実測値と、の差分に基づいて、前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定する故障検知部と、
前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命の推定の結果に基づいて前記エレベータの保護動作を実行する保護動作実行部と、
を備え
、
前記故障検知部は、前記差分が予め設定された低レベル閾値を超えているか否か、および前記差分が前記低レベル閾値より高い高レベル閾値を超えているか否かに基づいて、前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定し、
前記保護動作実行部は、前記差分が前記低レベル閾値を超えかつ前記高レベル閾値を超えていない場合、前記パワーモジュールの余寿命が短くなっていることを通知する保護動作を実行し、前記差分が前記高レベル閾値を超えている場合、前記エレベータを最寄りの階に停止させて前記パワーモジュールの交換を通知する保護動作を実行する、エレベータ故障診断装置。
【請求項2】
前記所定電流値は、前記エレベータに乗客が乗車していない走行時または前記エレベータの定期点検のブレーキの診断時における前記電流値である、請求項1に記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項3】
前記検出部は、さらに、前記パワーモジュールを冷却するフィンのサーミスタ温度を検出し、
前記故障検知部は、さらに、前記エレベータが運転開始後における、前記サーミスタ温度の実測値と、前記チップ温度の実測値と、の差分に基づいて、前記フィンの目詰まりを検知する、請求項1
または2に記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項4】
エレベータ故障診断装置で実行されるエレベータ故障診断方法であって、
検出部が、エレベータのパワーモジュールに印加される素子電圧、前記パワーモジュールに供給される電流値、および前記パワーモジュールのチップ温度を検出する工程と、
故障検知部が、前記エレベータの
据付時または初期の運転時に、前記電流値が所定電流値である場合における前記素子電圧、および前記チップ温度のそれぞれの予測値を予測し、前記予測値と、前記エレベータが運転開始後、前記電流値が前記所定電流値である場合における前記素子電圧、および前記チップ温度のそれぞれの実測値と、の差分に基づいて、前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定する工程と、
保護動作実行部が、前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命の推定の結果に基づいて前記エレベータの保護動作を実行する工程と、
を含
み、
前記故障検知部は、前記差分が予め設定された低レベル閾値を超えているか否か、および前記差分が前記低レベル閾値より高い高レベル閾値を超えているか否かに基づいて、前記パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定し、
前記保護動作実行部は、前記差分が前記低レベル閾値を超えかつ前記高レベル閾値を超えていない場合、前記パワーモジュールの余寿命が短くなっていることを通知する保護動作を実行し、前記差分が前記高レベル閾値を超えている場合、前記エレベータを最寄りの階に停止させて前記パワーモジュールの交換を通知する保護動作を実行する、エレベータ故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ故障診断装置、およびエレベータ故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、その使用状況が物件毎に異なるが、パワーモジュールが一定期間で交換されているため、その使用状況に応じた最適な交換時期の検出が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-162241号公報
【文献】特許第6684517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エレベータのパワーモジュールは、微細化の影響で破損モードが多岐に渡り、複雑化しているため、当該パワーモジュールの最適な交換時期を検出することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータ故障診断装置は、検出部と、故障検知部と、保護動作実行部と、を備える。検出部は、エレベータのパワーモジュールに印加される素子電圧、パワーモジュールに供給される電流値、およびパワーモジュールのチップ温度を検出する。故障検知部は、エレベータの据付時または初期の運転時に、電流値が所定電流値である場合における素子電圧およびチップ温度のそれぞれの予測値を予測し、予測値と、エレベータの運転開始後、電流値が所定電流値である場合における素子電圧およびチップ温度のそれぞれの実測値と、の差分に基づいて、パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定する。保護動作実行部は、パワーモジュールの劣化診断および余寿命の推定の結果に基づいてエレベータの保護動作を実行する。また、故障検知部は、差分が予め設定された低レベル閾値を超えているか否か、および差分が低レベル閾値より高い高レベル閾値を超えているか否かに基づいて、パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定する。保護動作実行部は、差分が低レベル閾値を超えかつ高レベル閾値を超えていない場合、パワーモジュールの余寿命が短くなっていることを通知する保護動作を実行し、差分が高レベル閾値を超えている場合、エレベータを最寄りの階に停止させてパワーモジュールの交換を通知する保護動作を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置を備える制御盤の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置が備える制御盤における変換素子の故障診断処理の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置を備える制御盤における変換素子の故障診断処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置、およびエレベータ故障診断方法の一例について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置を備える制御盤の構成の一例を示すブロック図である。まず、
図1を用いて、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置を適用した制御盤1の構成の一例について説明する。
【0009】
本実施形態にかかる制御盤1は、
図1に示すように、インバータ装置4と、制御装置5と、エレベータ故障診断装置6と、電流検出部41と、電圧検出部43と、温度検出部44と、を備える。
【0010】
インバータ装置4は、エレベータのパワーモジュールの一例である変換素子42a,42bを有する。変換素子42a,42bは、電源電力を駆動電力に変換する。インバータ装置4は、駆動電力によってエレベータのかごのドアを開閉させるトルクモータ(T/M)2等の電動機を駆動する装置である。ここで、変換素子42a,42bは、パワー半導体等で構成されるスイッチング素子である。
【0011】
電流検出部41は、変換素子42a,42bとトルクモータ2との間の電力ライン上に配置される。そして、電流検出部41は、変換素子42a,42bに供給される電流の電流値iを検出する検出部の一例として機能する。そして、電流値検出部411は、電流値iの検出結果を制御装置5に出力する。
【0012】
電圧検出部43は、変換素子42a,42bのそれぞれに印加される電圧(以下、素子電圧と言う)Ve1,Ve2を検出する検出部の一例として機能する。そして、電圧検出部43は、素子電圧Ve1,Ve2の検出結果を制御装置5に出力する。
【0013】
温度検出部44は、サーミスタ等であり、変換素子42a,42bの温度(以下、チップ温度と言う)TH1,TH2を検出する検出部の一例として機能する。そして、温度検出部44は、チップ温度TH1,TH2の検出結果を制御装置5に出力する。
【0014】
制御装置5は、エレベータのかごの速度を制御するための速度指令データを生成する。例えば、制御装置5は、利用者の呼び登録操作等に基づいて決定されたかごの運転モード(例えば、各階に停止するモード、行先階まで直通するモード)に基づいて、速度指令データを生成し、当該速度指令データに基づいて、かごの速度を制御する。
【0015】
また、制御装置5は、電流検出部41により検出される電流値i、電圧検出部43により検出される素子電圧Ve1,Ve2、および温度検出部44により検出されるチップ温度TH1,TH2を、エレベータ故障診断装置6に出力する。これにより、エレベータ故障診断装置6において、電流検出部41により検出される電流値i、電圧検出部43により検出される素子電圧Ve1,Ve2、および温度検出部44により検出されるチップ温度TH1,TH2を用いて、エレベータのパワーモジュール(例えば、変換素子42a,42b)の故障の検知が可能となる。
【0016】
エレベータ故障診断装置6は、故障検知部61、および保護動作実行部62を有する。本実施形態では、電流検出部41、電圧検出部43、および温度検出部44は、エレベータ故障診断装置6の外部に設けられているが、これに限定するものではなく、エレベータ故障診断装置6の内部に設けられていても良い。
【0017】
故障検知部61は、電流検出部41により検出される電流値i、電圧検出部43により検出される素子電圧Ve1,Ve2、および温度検出部44により検出されるチップ温度TH1,TH2に基づいて、エレベータのパワーモジュール(例えば、変換素子42a,42b)の故障を検知する。
【0018】
具体的には、故障検知部61は、エレベータの据付時または初期の運転時等、エレベータの運転前に、電流値iが所定電流値である場合における素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2に基づいて、素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの値(以下、予測値と言う)を予測する。
【0019】
ここで、所定電流値は、エレベータに乗客が乗車していない走行時、またはエレベータの定期点検のブレーキの診断時における電流値iである。すなわち、故障検知部61は、エレベータに乗客が乗車していない走行時、またはエレベータの定期点検のブレーキの診断時等、エレベータのパワーモジュールに対して一定通電時(一定の電流値の電流が流れている時)の素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの予測値を算出する。
【0020】
また、故障検知部61は、エレベータが運転開始後、電流値iが所定電流値である場合における素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値を蓄積(記憶)する。
【0021】
そして、故障検知部61は、素子電圧Ve1,Ve2および温度TH1,TH2のそれぞれの予測値と、電流値i、素子電圧Ve1,Ve2、および温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、の差分を算出する。次いで、故障検知部61は、算出した差分に基づいて、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定を行う。これにより、エレベータ毎に異なる予測値を基準にして、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定が可能となる。その結果、エレベータの使用状況に応じた変換素子42a,42bの最適な交換時期を検出することができる。
【0022】
本実施形態では、故障検知部61は、算出した差分が、低レベル閾値を超えた場合、変換素子42a,42bの劣化が進んで当該変換素子42a,42bの余寿命が短いと推定する。また、故障検知部61は、算出した差分が、高レベル閾値を超えた場合、変換素子42a,42bの劣化が進んで当該変換素子42a,42bが即時破損する可能性があると推定する。
【0023】
ここで、低レベル閾値は、予め設定された閾値であり、変換素子42a,42bの余寿命が短くなっていることを通知(発報)する値である。また、高レベル閾値は、予め設定されかつ低レベル閾値より高い閾値であり、エレベータを最寄りの階で停止させて、変換素子42a,42bの交換を通知(発報)する値である。すなわち、故障検知部61は、算出した差分が、予め設定される閾値を超えたか否かに基づいて、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定を行う。
【0024】
例えば、故障検知部61は、変換素子42a,42bにおいて発生するサージ電圧が悪化して、素子電圧Ve1,Ve2の実測値と、予測値と、の差分が大きくなった場合、変換素子42a,42bへの電流経路が細線化していることを検知する。また、例えば、故障検知部61は、三相通電時における状態ばらつきに基づいて、変換素子42a,42bの余寿命が短くなっていることを検知することも可能である。
【0025】
また、制御盤1が変換素子42a,42bを冷却するフィンの温度(以下、サーミスタ温度と言う)を検出可能なサーミスタ(検出部の一例)を有する場合、故障検知部61は、エレベータが運転開始後における、変換素子42a,42bを冷却するフィンのサーミスタ温度の実測値と、チップ温度TH1,TH2の実測値と、の差分に基づいて、当該フィンの目詰まり等の異常を検知することも可能である。例えば、故障検知部61は、サーミスタ温度の実測値とチップ温度の実測値との差分の経年変化、エレベータが休止状態におけるサーミスタ温度およびチップ温度の冷却速度の低下に基づいて、当該フィンの目詰まり等の異常を検知することも可能である。
【0026】
また、インバータ装置4が、変換素子42a,42bにより電源電力から変換された駆動電力によってエレベータの巻上機を駆動させる電動機を駆動する場合、故障検知部61は、算出した差分に基づいて、当該巻上機の経年変化を検知することも可能である。
【0027】
保護動作実行部62は、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定の結果に基づいて、エレベータの保護動作を実行する。ここで、保護動作は、変換素子42a,42bを破損から保護する動作である。例えば、保護動作は、変換素子42a,42bの余寿命が短くなっていることを通知したり、エレベータを最寄りの階に停止させて変換素子42a,42bの交換を通知したりする動作である。
【0028】
図2は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置が備える制御盤における変換素子の故障診断処理の一例を説明するための図である。
図2において、縦軸は、電流値i、チップ温度TH1,TH2、サーミスタ温度、および素子電圧V
e1,V
e2を表す。また、
図2において、横軸は、時間を表す。
【0029】
故障検知部61は、
図2に示すように、電流値iが所定電流値である場合における、チップ温度TH1,TH2、サーミスタ温度、および素子電圧V
e1,V
e2のそれぞれの実測値(実線で示す)と、予測値(太線で示す)と、の差分が、低レベル閾値または高レベル閾値である閾値(破線で示す)を超えた否かに基づいて、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定を行う。
【0030】
また、故障検知部61は、電流値iと、サーミスタ温度と、チップ温度TH1,TH2と、素子電圧Ve1,Ve2と、の関係に基づいて、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定を行うことも可能である。
【0031】
図3は、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置を備える制御盤における変換素子の故障診断処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図3を用いて、本実施形態にかかる制御盤1における変換素子42a,42bの故障診断処理の流れの一例について説明する。
【0032】
故障検知部61は、エレベータが運転開始後、電流値iが所定電流値である場合における素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2を蓄積する(ステップS301)。そして、素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2を予め設定されたデータ量蓄積する度に、故障検知部61は、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、予測値と、の差分が低レベル閾値を超えたか否かを判断する(ステップS302)。
【0033】
素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、予測値と、の差分が低レベル閾値を超えていない場合(ステップS302:No)、故障検知部61は、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2を、最新の素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2によって更新する(ステップS303)。
【0034】
さらに、故障検知部61は、予め設定した関係式を用いて、当該更新した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2に基づいて、低レベル閾値および高レベル閾値を更新する(ステップS303)。その後、制御装置5は、エレベータの運転を継続させる(ステップS304)。
【0035】
一方、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、予測値と、の差分が低レベル閾値を超えた場合(ステップS302:Yes)、故障検知部61は、当該差分が高レベル閾値を超えたか否かを判断する(ステップS305)。
【0036】
そして、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、予測値と、の差分が高レベル閾値を超えていない場合(ステップS305:No)、保護動作実行部62は、変換素子42a,42bの余寿命が短くなっていることを通知する保護動作を実行する(ステップS306)。さらに、制御装置5は、エレベータの運転を継続する(ステップS304)。
【0037】
一方、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2のそれぞれの実測値と、予測値と、の差分が高レベル閾値を超えた場合(ステップS305:Yes)、保護動作実行部62は、エレベータを最寄りの階に停止させて変換素子42a,42bの交換を通知する保護動作を実行する(ステップS307)。その後、変換素子42a,42bが交換されると、故障検知部61は、蓄積した素子電圧Ve1,Ve2およびチップ温度TH1,TH2を初期化する(ステップS308)。
【0038】
このように、本実施形態にかかるエレベータ故障診断装置によれば、エレベータ毎に異なる予測値を基準にして、変換素子42a,42bの劣化診断および余寿命の推定が可能となる。その結果、エレベータの使用状況に応じた変換素子42a,42bの最適な交換時期を検出することができる。
【0039】
なお、本実施形態の制御盤1で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の制御盤1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0040】
さらに、本実施形態の制御盤1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の制御盤1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0041】
本実施形態の制御盤1で実行されるプログラムは、上述した各部(故障検知部61および保護動作実行部62)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、故障検知部61および保護動作実行部62が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0042】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…制御盤、2…トルクモータ、4…インバータ装置、5…制御装置、6…エレベータ故障診断装置、41…電流検出部(検出部)、42a,42b…変換素子(パワーモジュール)、43…電圧検出部(検出部)、44…温度検出部(検出部)、61…故障検知部、62…保護動作実行部。
【要約】
【課題】エレベータの使用状況に応じたパワーモジュールの最適な交換時期を検出することを可能とする。
【解決手段】実施形態のエレベータ故障診断装置は、検出部と、故障検知部と、保護動作実行部と、を備える。検出部は、エレベータのパワーモジュールに印加される素子電圧、パワーモジュールに供給される電流値、およびパワーモジュールのチップ温度を検出する。故障検知部は、エレベータの運転前に、電流値が所定電流値である場合における素子電圧およびチップ温度のそれぞれの予測値を予測し、予測値と、エレベータの運転開始後、電流値が所定電流値である場合における素子電圧およびチップ温度のそれぞれの実測値と、の差分に基づいて、パワーモジュールの劣化診断および余寿命を推定する。保護動作実行部は、パワーモジュールの劣化診断および余寿命の推定の結果に基づいてエレベータの保護動作を実行する。
【選択図】
図1